特許第6807359号(P6807359)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807359
(24)【登録日】2020年12月9日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】スケール回収装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 21/24 20060101AFI20201221BHJP
   C02F 1/00 20060101ALI20201221BHJP
   B01D 21/18 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   B01D21/24 M
   C02F1/00 L
   B01D21/18 K
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-154848(P2018-154848)
(22)【出願日】2018年8月21日
(65)【公開番号】特開2020-28833(P2020-28833A)
(43)【公開日】2020年2月27日
【審査請求日】2019年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100118625
【弁理士】
【氏名又は名称】大畠 康
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【弁理士】
【氏名又は名称】奥西 祐之
(72)【発明者】
【氏名】大谷 憲司
(72)【発明者】
【氏名】岩本 匡弘
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭49−121201(JP,A)
【文献】 実公昭50−014977(JP,Y1)
【文献】 特開2012−024721(JP,A)
【文献】 特開2005−246272(JP,A)
【文献】 特開2001−300208(JP,A)
【文献】 米国特許第05534155(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00−21/34
C02F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材のスケールを回収するスケール回収装置であって、
スケールを炉排水と共に蓄積するピットと、
前記ピットから炉排水と共にスケールを吸引して前記ピット外に向けて排出するサンドポンプと、
前記サンドポンプによって排出されたスケール及び炉排水を前記ピット外に排出する排出流路と、
前記サンドポンプの吸引口近傍と前記排出流路の中間部とを連通する循環流路と、
前記ピット内に設けられ、スケールを下方から支持して、スケールを前記サンドポンプの吸引口の下方の近傍に誘導する誘導部材と、を備え、
前記誘導部材は、スケールは通過できず、炉排水は通過できる構造であって、板形状を有しており、前記吸引口の下方に向かって、下方に傾斜するように設けられている、スケール回収装置。
【請求項2】
前記サンドポンプの吸引口近傍と前記誘導部材の下方に位置する下方空間とを連通する筒状の連通流路を備えている、請求項1記載のスケール回収装置。
【請求項3】
前記連通流路の吸引口側開口端は、前記サンドポンプの吸引口の直下に位置している、請求項2記載のスケール回収装置。
【請求項4】
前記循環流路の先端部は、前記サンドポンプの吸引口の中心から所定距離だけ離れている、請求項1〜3のいずれか1つに記載のスケール回収装置。
【請求項5】
前記循環流路の先端部は、前記スケール回収装置の上面視で、前記サンドポンプの吸引口の中心に向かって延びている、請求項1〜4のいずれか1つに記載のスケール回収装置。
【請求項6】
前記循環流路の先端部は、前記スケール回収装置の側面視で、前記サンドポンプの吸引口の下方に位置している、請求項1〜5のいずれか1つに記載のスケール回収装置。
【請求項7】
前記循環流路の前記排出流路への接続部には、炉排水を通過させ、スケールを通過させないフィルタが取り付けられている、請求項1〜6のいずれか1つに記載のスケール回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材のスケールを回収するスケール回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1、2に示されるように、炉において鋼材の処理を行うことにより発生するスケールは、炉排水と共にピットに蓄積されており、サンドポンプによって、ピット外に向けて排出されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭50−14977号公報
【特許文献2】特開2012−24721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ピットでは、スケールと炉排水とが混在して蓄積されており、スケールをピット外に向けて排出するサンドポンプは間欠運転であるため、ポンプ停止時にポンプ周辺にスケールが凝集し、ポンプ稼働時にスケールを吸引することが難しいという課題が存在する。
【0005】
そこで本発明では、スケールをピット外に向けて円滑に排出することができるスケール回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
鋼材のスケールを回収するスケール回収装置であって、
スケールを炉排水と共に蓄積するピットと、
前記ピットから炉排水と共にスケールを吸引して前記ピット外に向けて排出するサンドポンプと、
前記サンドポンプによって排出されたスケール及び炉排水を前記ピット外に排出する排出流路と、
前記サンドポンプの吸引口近傍と前記排出流路の中間部とを連通する循環流路と、を備える。
【0007】
前記構成によれば、排出流路を流れる炉排水を、循環流路を介して吸引口近傍に送ることができ、排出流路の炉排水によってスケールをピット外に向けて円滑に排出することができる。
【0008】
本発明は、さらに、次のような構成を備えるのが好ましい。
【0009】
(1)前記循環流路の先端部は、前記サンドポンプの吸引口の中心から所定距離だけ離れている。
【0010】
(2)前記循環流路の先端部は、前記スケール回収装置の上面視で、前記サンドポンプの吸引口の中心に向かって延びている。
【0011】
(3)前記循環流路の先端部は、前記スケール回収装置の側面視で、前記サンドポンプの吸引口の下方に位置している。
【0012】
(4)前記循環流路の前記排出流路への接続部には、炉排水を通過させ、スケールを通過させないフィルタが取り付けられている。
【0013】
前記構成(1)によれば、循環流路の先端部は、サンドポンプの吸引口の中心から所定距離だけ離れているので、サンドポンプが循環流路からの炉排水を吸引する際、サンドポンプの吸引口周辺のスケールを巻き込みやすくすることができる。
【0014】
前記構成(2)によれば、循環流路の先端部は、スケール回収装置の上面視で、サンドポンプの吸引口の中心に向かって延びているので、循環流路からの炉排水をサンドポンプの吸引口に向けて搬送しやすくすることができる。
【0015】
前記構成(3)によれば、循環流路の先端部は、スケール回収装置の側面視で、サンドポンプの吸引口の下方に位置しているので、循環流路からの炉排水をサンドポンプによって吸引しやすくすることができる。
【0016】
前記構成(4)によれば、循環流路の排出流路への接続部には、炉排水を通過させ、スケールを通過させないフィルタが取り付けられているので、スケールが排出流路から循環流路に流れることを防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、スケールをピット外に向けて円滑に排出することができるスケール回収装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るスケール回収装置の概略図である。
図2】サンドポンプの吸引口近傍の上面概略図である。
図3】循環流路の変形例を示す、サンドポンプの吸引口近傍の上面概略図である。
図4図3の側面概略図である。
図5】循環流路の変形例を示す、サンドポンプの吸引口近傍の上面概略図である。
図6図5の側面概略図である。
図7】本発明の実施形態を含むスケール回収装置の総合概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係るスケール回収装置の概略図であり、本発明の実施形態を含むスケール回収装置の総合概略図を図7に示す。図1及び図7に示されるように、スケール回収装置10は、熱処理により鋼材の表面に形成されたスケールを、鋼材を冷却する冷却水と共に回収しており、スケール回収装置10に一定量のスケールが蓄積すると、外部に排出するようになっている。スケール回収装置10は、スケールを炉排水と共に蓄積するピット1と、ピット1から炉排水と共にスケールを吸引してピット1外に向けて排出するサンドポンプ2と、を備えている。
【0020】
サンドポンプ2は、下部に吸引口21を備え、上部に排出口22を備える縦型ポンプである。排出口22は、排出流路3の一端部に接続されており、排出流路3の他端部31は、ピット1外に開口している。スケール回収装置10は、サンドポンプ2の吸引口21からピット1内の炉排水及びスケールを吸引し、排出口22及び排出流路3を介して、ピット1外に炉排水及びスケールを排出するようになっている。サンドポンプ2は、通常、間欠運転で運用される。
【0021】
ピット1内には、スケールを下方から支持して、スケールを所望の位置に誘導する誘導部材4が設けられている。所望の位置とは、具体的には、サンドポンプ2の吸引口21の下方の近傍である。
【0022】
誘導部材4は、板形状を有しており、スケールは通過できないが、炉排水は通過できる構造となっている、例えば、スケールを通過させず炉排水を通過させる程度のメッシュ粗さを有するメッシュ部材で形成したり、ピット1の内壁と誘導部材4との間に炉排水が通過する隙間を設けるように構成される。なお、板形状を構成する板材の継ぎ目等の隙間を利用して、炉排水を通過させてもよい。このため、スケールは誘導部材4の上面4aの上に位置し、誘導部材4の上面4aの傾きによってスケールを所望の位置に誘導するようになっている。そして、誘導部材4の下方に位置する下方空間5には、スケールを含まない炉排水が存在している。誘導部材4の上面4aは、サンドポンプ2の吸引口21の下方に向かって、下方に傾斜するよう延びており、上面4aの水平面に対する傾きは、スケールの安息角より大きく設定されている。その結果、誘導部材4の上面4aの直上に位置するスケールは、誘導部材4の上面4aに沿って下方に向かうよう誘導される。
【0023】
また、ピット1内には、サンドポンプ2の吸引口21近傍と下方空間5とを連通する連通流路6が設けられている。連通流路6は、一端である吸引口側開口端61が吸引口21の直下で開口し、他端である下方空間側開口端62が下方空間5で開口している。なおここで、「直下」というのは、サンドポンプ2の吸引口21の直下であればよく、吸引口21の中心の直下でなくてもよい。連通流路6は、下方空間側開口端62から吸引口側開口端61に向かって、水平面に対して少し下方に傾斜するように設けられており、その結果、連通流路6は、下方空間5の炉排水を吸引口21に供給するようになっている。なお、連通流路6の傾きは、誘導部材4の上面4aの傾きよりも小さくなっており、水平面に対する傾斜角度は10度以下となっている。また、連通流路6の内径は、排出流路3の内径より小さくなっており、連通流路6は筒状であり、その断面形状は角状でも丸状でもよく、その数は1本でも複数でもよい。
【0024】
ピット1内には、サンドポンプ2の吸引口21近傍と排出流路3の中間部32とを連通する循環流路7が設けられている。循環流路7は、排出流路3の上下方向の略中央部に接続されており、循環流路7の排出流路3への接続部72は、ピット1の上端より下方に位置し、ピット1に蓄積された炉排水の上端位置より上方に位置するようになっている。また、循環流路7の内径は、排出流路3の内径の半分以下となっており、連通流路6の内径より大きくなっている。
【0025】
循環流路7の排出流路3への接続部72には、炉排水を通過させ、スケールを通過させないフィルタ73が取り付けられている。フィルタ73は、スケールを通過させず炉排水を通過させる程度のメッシュ粗さを有するメッシュ部材でできている。
【0026】
図2は、サンドポンプ2の吸引口21近傍の上面概略図である。図2に示されるように、スケール回収装置10の上面視において、連通流路6は、吸引口21の中心21cに向かって延びており、連通流路6の吸引口側開口端61は、吸引口21の中心21cから一定距離だけ離れた位置で開口している。
【0027】
循環流路7の先端部71は、スケール回収装置10の上面視において、サンドポンプ2の吸引口21の中心21cに向かって延びており、スケール回収装置10の側面視で、サンドポンプ2の吸引口21の下方に位置している。循環流路7の先端部71の開口端71aは、サンドポンプ2の吸引口21の外縁21aから距離Xだけ離れている。距離Xは、好ましくは、100〜200mmである。
【0028】
なお、連通流路6の吸引口側開口端61は、循環流路7の先端部71の開口端71aより、吸引口21に近接しており、また、開口端71aより下方に位置している。
【0029】
前記構成のスケール回収装置10によれば、次のような効果を発揮できる。
【0030】
排出流路3を流れる炉排水を、循環流路7を介して吸引口21近傍に送ることができ、排出流路3の炉排水によってスケールをピット外に向けて円滑に排出することができる。
【0031】
循環流路7の先端部71の開口端71aは、サンドポンプ2の吸引口21の外縁から所定距離である距離X(100〜200mm)だけ離れているので、サンドポンプ2が循環流路7からの炉排水を吸引する際、サンドポンプ2の吸引口21周辺のスケールを巻き込みやすくすることができる。
【0032】
循環流路7の先端部71は、スケール回収装置10の上面視で、サンドポンプ2の吸引口21の中心に向かって延びているので、循環流路7からの炉排水をサンドポンプ2の吸引口21に向けて搬送しやすくすることができる。
【0033】
循環流路7の先端部71は、スケール回収装置10の側面視で、サンドポンプ2の吸引口21の下方に位置しているので、循環流路7からの炉排水をサンドポンプ2によって吸引しやすくすることができる。
【0034】
循環流路7の排出流路3への接続部72には、炉排水を通過させ、スケールを通過させないフィルタ73が取り付けられているので、スケールが排出流路3から循環流路7に流れることを防止できる。
【0035】
循環流路7は、排出流路3の上下方向の略中央部に接続されており、ピット1の上端より下方に位置しているので、排出流路3を流れる炉排水を循環流路7に流れやすくすることができる。
【0036】
循環流路7の内径は、排出流路3の内径の半分以下となっているので、排出流路3を流れる炉排水が所定量より多く循環流路7に流れることを防止できる。また、スケールが排出流路3から循環流路7に流れることを抑制できる。
【0037】
循環流路7の排出流路3への接続部72は、ピット1に蓄積された炉排水の上端位置より上方に位置するようになっているので、排出流路3から循環流路7への炉排水の流れを円滑にすることができる。
【0038】
誘導部材4の下方に位置する下方空間5には、スケールが存在しないので、吸引口21近傍と下方空間5とを連通する連通流路6によって、サンドポンプ2の吸引力で、下方空間5の炉排水を吸引口21近傍に送ることができる。その結果、サンドポンプ2の停止時に凝集したスケールに水分を多く含ませることができ、下方空間5の炉排水によってサンドポンプ2がスケールを吸引しやすくなり、スケールをピット1外に向けて円滑に排出することができる。
【0039】
誘導部材4の上面4aの水平面に対する傾斜角度は、スケールの安息角より大きいので、誘導部材4の上面4aの上にスケールが溜まりやすくなるのを防止することができる。
【0040】
連通流路6の吸引口側開口端61は、サンドポンプ2の吸引口21の直下に位置しているので、大きな吸引力が得られ、連通流路6からの炉排水をサンドポンプ2によって吸引しやすくすることができる。
【0041】
また、連通流路6の吸引口側開口端61がサンドポンプ2の吸引口21の中心21cに近接しすぎると、炉排水がスケールをほとんど巻き込まずにサンドポンプ2に吸引されてしまうおそれがあり、連通流路6の吸引口側開口端61は、サンドポンプ2の吸引口21の中心21cから所定距離だけ離れていることが好ましい。
【0042】
連通流路6は、下方空間5からサンドポンプ2の吸引口21に向けて下方に傾斜しているので、下方空間5の炉排水が流れやすくなり、サンドポンプ2で吸引しないとき、スケールが連通流路6を通じて下方空間5に逆流するのを防ぐことができる。
【0043】
上記実施形態では、循環流路7の先端部71は、スケール回収装置10の上面視で、サンドポンプ2の吸引口21の中心に向かって延びているが、異なる方向に向かって延びていてもよい。図3は、循環流路7の変形例を示す、サンドポンプ2の吸引口21近傍の上面概略図であり、図4は、図3の側面概略図である。
【0044】
図3及び図4に示されるように、循環流路7の先端部71は、スケール回収装置10の上面視で、サンドポンプ2の吸引口21近傍で上下方向に延びており、先端部71の開口端71aは、下方に向かって開口し、上下方向において、吸引口21と一致、又は、吸引口21より下方に設けられることが好ましい。また、先端部71の開口端71aは、サンドポンプ2の吸引口21の外縁から距離X1だけ離れている。
【0045】
図5は、図3とは異なる循環流路7の変形例を示す、サンドポンプ2の吸引口21近傍の上面概略図であり、図6は、図5の側面概略図である。図5及び図6に示されるように、循環流路7の先端部71は、スケール回収装置10の上面視で、サンドポンプ2の吸引口21近傍で、吸引口21の中心を通る径方向に平行に延びていてもよい。この場合、先端部71の開口端71aは、側方に向かって開口し、スケール回収装置10の側面視で、上下方向において吸引口21の下方に設けられることが好ましい。このような構成とすることによって、スケールが渦を形成しながら吸い込まれるので、直線的に吸い込まれるよりも多くのスケールを水分と一緒に吸い込むことができる。
【0046】
特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、各種変形及び変更を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明では、スケールをピット外に向けて円滑に排出することができるスケール回収装置を提供できるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0048】
1 ピット
2 サンドポンプ
21 吸引口 21c 中心
22 排出口
3 排出流路
31 他端部 32 中間部
4 誘導部材
4a 上面
5 下方空間
6 連通流路
61 吸引口側開口端 62 下方空間側開口端
7 循環流路
71 先端部 71a 開口端
72 接続部 73 フィルタ
10 スケール回収装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7