(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フレームの横側の両側部上の複数のヘッドギアコネクタが、前記ヘッドギアを前記フレームに接続するように構成される、請求項1または2に記載の患者用インタフェース。
前記クッションは、使用時に、前記患者の両頬と前記患者の鼻の両側部との間の皺における封止を提供するように構成された一対の頬領域を備える、請求項1から5の何れか一項に記載の患者用インタフェース。
前記クッションは、使用時に、前記患者の鼻の下および前記患者の上唇の上での密閉を提供するように構成された唇領域を備える、請求項1から6の何れか一項に記載の患者用インタフェース。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態はクレームにかかる発明を限定するものではなく、又実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0041】
好ましい実施形態の詳細な説明
図面には2つの主要な実施形態が記載されている。各実施形態の特徴および/あるいは部品の多くは同一であるが、異なっている部品および/あるいは要素がいくつかある。例えば、
図1は本発明によるエルボーアセンブリ60の一実施形態を示しており、
図6a〜6bはエルボーアセンブリ60の他の構成を示している。実施形態間の他の差異は以下で述べることとする。また、さまざまな部品および/あるいは要素に関して、いくつかの代替的なアプローチも説明する。これらの代替的なアプローチは、本発明のさらなる好ましい実施形態として考えられるべきである。
【0042】
図1〜4に示すように、本発明の好ましい実施形態の一つによる鼻用マスクアセンブリ10は、フレーム20と、フレーム20に好ましくは取り外し可能に接続されたクッション40とを備えている。あるいは、クッション40は、例えば同時に成型する技術か上から成型する技術、接着および/あるいは機械的な締め付け手段を用いて、フレーム20に取り外せないように取り付けられてもよい。
フレーム20には、旋回エルボーアセンブリ60とヘッドギアアセンブリ80とが取り付けられる。
図1は、人間の頭部に装着されるための鼻用マスクアセンブリ10を大まかに示している。もちろん、理解を容易にするために、
図1における描写は頭からわずかに離れている、すなわち「浮いている」。
図1bは、フラットに置かれたヘッドギアアセンブリを、フレーム20を外した状態で示している。
図2はマスクアセンブリ10を左側から見た図、
図3は正面から見た図、そして
図4は上から見た図である。
図2〜4において、ヘッドギアアセンブリ80の背面部分は明確にするために省かれている。
【0043】
マスクフレーム
図5に示すように、フレーム20は、旋回エルボーアセンブリ60との接続のための中央孔24を有する細長い部分22を備えている。
図5aはフレーム20を上から見た図であり、クッション40、エルボーアセンブリ60およびヘッドギアアセンブリ80は取り外されている。フレーム20は、クッション40に対応するように設計されている本体20aと、フレーム20の本体20aと好ましくは一体として形成される一対のサイドフレーム部材20bとを有している。
図5aは、好ましくは同一形状を有するサイドフレーム部材を両方とも示している。本体20aおよびサイドフレーム部材20bは、鼻のそれぞれの側で患者の顔の輪郭にだいたい沿うような湾曲を有するように設計されている。本発明の一実施形態によると、この湾曲は2つのサイド部材からの滑らかな移行に従っており、120°の角度を有している。クッション40が所定の位置にあるときには、本体20aは、患者の鼻に接触するのを防ぐように鼻の領域において患者の顔面から離れており、サイドフレーム部材20bは頬の領域に略平行である。各サイドフレーム部材20bと患者の頬との間には、この領域における接触は好ましくないために空間が保たれている。しかしながら、望めば、サイドフレーム部材20bを、患者の頬の領域と係合するパッド構造のような快適な特徴を有するように構成してもよい。そのようなパッドは、治療モードにおいて圧力が加えられたときに頬を支持するのに役立つという利点を有している。
【0044】
フレーム20の湾曲した設計、および他の特徴に基づいて、マスクアセンブリ10の重心CG1(
図5b)を患者の顔により近づけて形成することができる。したがって、例えば、マスクアセンブリの重量のせいで垂直面内で生じる回転トルクまたはモーメントを減らすことができる。例えば、患者が
図5bに示すように頭を起こした姿勢で座っているとき、マスクアセンブリ10の重量は、水平面内で患者の鼻を横切る軸A(ページに向かう)の回りでトルクを生じ得る。そのトルクは、クッションの上唇の領域にだいたい沿っている軸Aの回りで矢印Bの方向にマスクアセンブリ10を回転させるような力を生成する。そのようなトルクは、上唇領域沿いに患者に不快感をもたらす、ならびに/あるいは、鼻の下側の鼻梁部分の周りおよび/または頬の部分で密閉度が減少するという結果につながり得る。具体的には、顔に近い位置にある重心CG1は、顔からより遠くにある重心CG2を有するマスクよりも少ないトルクを生じる。これは、重心CG1、CG2と顔面との距離d1、d2がトルク測定に用いられるレバーアームを規定するからである(トルク=力×レバーアームの距離)。したがって、力またはレバーアームの距離が減少すれば、トルクは減少する。同様に患者が横向きに横たわっているときも類似のトルクが発生する。トルクは、クッションの関連で、長さおよび高さといった特徴を含むエルボーの幾何形状に影響される。他の物事の中でもエルボーの形状に依存するアセンブリの実効レバーアーム長を最小限にすることが望ましい。
【0045】
マスクアセンブリの重心と顔との距離を減らすことに寄与する他のファクターには、クッション40の設計、フレーム20の設計およびエルボーアセンブリ60の設計が含まれる。マスクの安定性に影響を及ぼし得るトルクの他の発生源は、エルボーアセンブリ60をガス供給チューブに接続する部分である。事実上、ガス供給チューブはエルボーアセンブリ60に力を伝え、それが患者に対してマスクアセンブリをシフトさせるようなトルクを生成する。エルボーアセンブリとガス供給チューブとの接続のために患者に印加されるトルクの量は、
図16a〜19c−2に関連して後で説明するエルボーアセンブリ60を用いれば低減することができる。簡単に言えば、エルボーアセンブリは、いくつかの先行技術において現在用いられているようなエルボーアセンブリとガス供給チューブ310(
図26)との間の中間の旋回コネクタ部材300(
図6bおよび23)を必要とせずに、ガス供給チューブ310に直接接続されるように設計されているため、エルボーアセンブリのレバーアームを事実上短くすることができる。あるいは、旋回装置(スイベル)をチューブ内に設けてもよい。このようにして、望ましくないトルクを増やすことなく、動きの自由度をさらに増やしてもよい。またクッション40は、少なくともその唇の領域および頬の領域に沿って圧力を分散するように設計されているので、垂直面内における回転の可能性あるいは傾向をさらに減らすことができる。またクッション40の頬の領域のそれぞれは、接触圧力を受ける面を規定する。この圧力を受ける面は、垂直方向に細長く、水平方向に広がっている比較的大きな面である。したがってクッション40は、少なくとも頬の領域において、垂直および/あるいは水平面内における回転運動に耐え、それがクッション40を患者上の一貫した位置に保持する助けとなる。クッション40のさらなる詳細は、
図24a〜25iに関連して後述する。
図5cを参照すると、フレーム20は、クッション40を接続するための略台形の形状を有するチャネル26を備えている。チャネル26は内壁28、外壁30およびチャネル床部32を有する。チャネル26については、さらに詳しく後で説明する。
【0046】
図6aは、
図1〜5cに示されたフレーム20およびエルボーアセンブリ60とはわずかに異なるフレーム20およびエルボーアセンブリ60を示している。実施形態間の主な差異はエルボーアセンブリ60にあるが、さまざまな図面を比較すれば容易にわかる、あるいは以下のさまざまなセクションにおける説明に関連して理解されるように、フレーム20、クッション40等にも他の差異がある。
【0047】
図6aおよび6bにおいて、エルボーアセンブリ60は、レスメッド社のULTRA MIRAGE(登録商標)マスク上で設けられているものと類似しており、かつ米国特許出願第09/594,775号(ドリューら)において記載されている機構を用いて、フレーム20に向けて突出しているエルボーアセンブリ60の一部分の上に設けられた円周状の溝25内に嵌まるように広がったり縮んだりすることができるCクリップ23(
図6b)を用いてマスク20に取り付けられている。クッション40、フレーム20、エルボーアセンブリ60およびガス供給チューブの分解図を
図6bに示す。Cクリップ23はフレーム20の内側表面と係合する表面を有しており、フレーム20からエルボーアセンブリ60が望まないのに外れてしまうことを防ぐ。エルボーアセンブリ60は、とりわけ、呼気中の二酸化炭素のガスを流し出すために、大気中に向けて開いている一つ以上のベント開口部61を有してもよい。ベント開口部61は、治療圧力が鼻腔内で保たれるように構成される。ベント開口部61は、シェル部材65によって覆われてもよい。シェル部材65は、エルボーアセンブリ60の外側表面上に弾性的に取り外し可能にクリップ留めされる。
図6aにおけるベント開口部61は、透明なシェル部材65を通して見ることができる。シェル部材65およびCクリップの詳細は、レスメッド社の米国特許出願第09/502,745号、第09/594,775号あるいはPCT出願第PCT/AU00/00097(WO 00/78384)号に記載されており、これらの全てをここに援用する。
【0048】
図6aに示すように、チャネル26の内壁28は、好ましくは、外壁30がフレーム20から伸びている距離よりも長い距離フレーム20から伸びている。
図5cおよび32dも、内壁28は、外壁30がフレーム20から伸びている距離よりも長い距離フレーム20から伸びていることを示している。
図32dに示すように、内壁28の厚さは、約1〜2mmの範囲、好ましくは1.4mmであり、外壁30の厚さは約1〜2mmの範囲、好ましくは1.4mmであり、内壁28および外壁30の頂部間の距離は0.5〜10mmの範囲、好ましくは2mmである。さらに、
図32dに示すように、互いに面している内壁28および外壁30の立ち上がっている面の間のチャネル26の幅は、約2〜10mm、好ましくは5mmである。
【0049】
内壁28と外壁30との間にこの相対距離を採用することによって、クッション40のフレーム20への係合は容易になる。クッションとマスクフレームとが一緒に動くと、内壁28はクッションの位置合わせに対して目で見て、および/あるいは触って認識できる手がかりを与え、そして、
図27a〜29dおよび32a−1〜32c−2を参照して十分に説明するように、クッション40の側壁の縁あるいは中央部215(
図24eおよび27a)をチャネル26内に導くことによって、係合プロセスの持続を容易にする。チャネル26の形状、例えば
図5cに見られるような略台形の形状は、正三角形、円、正方形あるいは長方形のようなより対称的な形状の場合にそうであるように付加的なガイド片を必要とせずに、チャネル26に対するクッションの向きを補正するようなガイドを実現するように、選択される。にもかかわらず、クッションチャネル26には、これらの形状のいずれを採用してもよい。
【0050】
図5cおよび6aからわかるように、フレーム20は、ヘッドギアアセンブリ80のそれぞれのロッククリップ82(
図9aおよび10a)への接続のために、フレーム20の各側部に位置しているロッククリップレシーバアセンブリ34を備えている。各ロッククリップレシーバアセンブリ34は係合面35(
図5c)と、中央支持スロット36と、中央支持スロット36の両側に位置する2つのロックスロット38とを備えている。中央支持スロット36およびロックスロット38は略矩形状の断面を有している。ロックスロット38のそれぞれは、以下に述べるように、ロッククリップ82の一つのそれぞれのロックタブ116(
図9aおよび9b)との係合のために、外壁に位置するロックフランジ39(
図7)を備えている。チャネル38は、ロックフランジ39(
図7)に加えて、あるいはロックフランジ39の代わりに、フレーム20の外壁にスロット71(
図10a)を備えていてもよい。
図5aにはフレーム20の底部にあるスロット71を示し、
図4にはフレーム20を上から見てスロット71を示している。スロット71は、フレーム20の側壁を貫いていなくてもよい。
【0051】
ヘッドギアアセンブリ
図1bは、発明の一実施形態によるヘッドギアアセンブリ80を示している。フレーム20やクッション40は外されている。
図1bにおいて、ヘッドギアアセンブリはフラットに置かれた状態で示されている。
【0052】
ストラップおよびヨーク
図1〜4を参照すると、ヘッドギアアセンブリ80は、一対のフロントストラップ84を有している。好ましくは左側のフロントストラップ84と右側のフロントストラップ84とは互いに鏡像となるように配置されている。各フロントストラップ84は、ほぼ「Y」字状であり、ストラップ正面端部86、ストラップ上端部88、およびストラップ背面端部90を有している。これらのストラップ端部86、88、90の全ては一体として形成されているか、あるいは機械的に止めること等によって一体になるように相互に連結されている。ストラップは層状の繊維および発泡体から形成される。市販の材料の一つに、アキュームド インク ユーエスエー社製造の「Breath-O-Prene」(商標)がある。ストラップを留めるのに、VELCRO(登録商標)のようなフックおよびループ材料を用いてもよい。しかしながら、ストラップがフックおよびループの留め具を備えている必要はない。なぜならストラップは、後でより詳細に述べるように、ロッククリップ82を用いてフレーム20に留められるからである。
図1〜3および8に示すように、ヨーク92は各フロントストラップ84に取り付けられている。各ヨーク92は、対応するフロントストラップ84と略同一の形状を有しており、正面端部94、上端部96および背面端部98を備えている。各ヨーク92は、いくらか剛性のある材料、例えばプラスチックから構成され、0.3mm〜2.0mmの範囲、好ましくは1mmの厚さを有する。プラスチックの例としては、ナイロン11やポリプロピレンが挙げられる。ヨーク92は接着剤、縫い合わせ、あるいは他の公知の取り付け方法によって対応するフロントストラップ94に取り付けられる。ストラップおよびヨークの構成は、異なる方向では異なるフレキシビリティを有することが可能である。例えば、第一の方向では硬い(例えば、旋回エルボー、関連する管等の重量による変形に耐えるほど硬い)のに対して、第一の方向にほぼ直交する方向ではやわらかい。マスクをユーザの頭部に装着すると、ヨークの相対的な硬さにより、フレームおよびクッションはユーザ上の正しい位置に配置される。フロントストラップ84と略同一の形状を有しているが、本実施形態における上端部96および背面端部98は、フロントストラップ84のストラップ上端部88およびストラップ背面端部90ほど遠くまでは伸びていない。しかし他の実施形態においては上端部96はストラップ上端部88の全長に沿って伸びて、コネクタ素子128(
図1)と一体的にあるいは一片として形成されていてもよい。また、ヨーク92とフロントストラップ84とが一緒に取り付けられたときに、フロントストラップ84のよりやわらかい材料がヨークのより硬い材料よりも外側に出るように、ヨーク92はフロントストラップ84よりも狭い幅に形成されている。それによって、ユーザがより硬い材料のヨーク92に接触して刺激を受けたり、不快に感じたりする機会を防ぐ、あるいは少なくとも減らすことができる。ストラップおよび関連するヨークは多層構成、例えば二層から形成されているが、患者の快適さと適切な硬さ/やわらかさが維持されれば、ストラップ84とヨーク92とを単一の材料から形成してもよい。
【0053】
ヨーク92はある面および方向において、ストラップ84の硬さを加え、それにより使用中にマスクアセンブリ10を患者の頭部上で安定させる。他の面および方向では、ヨークおよびストラップのアセンブリは異なる硬さを有する。例えば、ストラップおよびヨークは、患者の顔の方に、あるいは顔から離れる方へ折れたり、曲がったりするのに抵抗することができなければならない。一般的に、ストラップ84およびヨーク92は、フレーム20に接続されたときに患者の頭部に対してそれらの位置を維持することができなければならない。またマスクフレーム20は額支持部アセンブリを備えている必要はない。それにより患者の視野は額支持部つきのマスクに比べて邪魔が少なくなるので、患者の快適さはさらに向上する。もちろん、さらなる安定性や快適さを望むのであれば、上述したタイプの額支持部を備えてもよい。また、さらなる安定性や快適さを望む場合には顎ストラップを備えていてもよいが、マスクフレーム20は備えている必要はない。また額支持部の除去を越えて、ストラップ84およびヨーク92の形状は患者の視野に干渉しないように選択される。特に適合すると、各ヨーク92の正面端部94が患者の目の下でフレーム20に接続され、好ましくは頬の領域を横切って置かれる湾曲した弧に沿って伸びる。各ストラップ84の上端部88および各ヨークの上端部96は、患者の頭部のこめかみの領域に沿ってYの字の交差部から伸びている。ヨーク92の背面端部98およびストラップ84の背面端部90は下向きに伸び、後で詳述する背面ストラップ部材138との接続のために患者の耳のあたりで湾曲している。ヨーク92によって提供される硬さのおかげで、ストラップ84は所定の形状をよりよく維持することができる。一方、患者の生理現象の変化にある程度まで対応できるように、ヨーク92およびストラップ84にはある程度のやわらかさが備わっている。ヨークの厚さを、やわらかさの特性を改変するように、例えば厚いほど硬いというように、ヨークの外形にわたって変化させてもよい。
【0054】
図8に示すように、各ヨーク92は正面端部94上にマウントフランジ100を有する。マウントフランジ100は、孔103に達する開口またはキーホール101を有する。
図8a参照。2つの半環状フランジ102がスロット104によって隔てられている。半環状フランジ102の半径方向の内壁が中央孔103を形成する。ヨーク92はまた、マウントフランジ100の後方に位置するスプリングタブ106を有している。スプリングタブの正面の部分はヨーク92に接続されており、背面の部分は空間107によってヨーク92から隔てられており、圧力がスプリングタブ106に加えられるとヨーク92に対して曲がることができる。スプリングタブ106は、好ましくは、マウントフランジ100の軸の周りの弧に位置する複数の盛り上がった歯108を有している。またスプリングタブ106は、ユーザがスプリングタブ106を配置し、係合させ、操作するのに役立つように、タブ106の自由端に織り目加工をされた表面110(
図8)あるいは盛り上がった位置決め部材110a(
図8a)を有している。
図8aは、
図8に示されているような、右側のヨーク92とストラップ84との拡大図であり、ヨーク92がヘッドストラップ84に縫い合わせられる方法を含むようにヨーク92をより詳しく示している。ロックあるいは摩擦といった他の固定方法を用いてもよい。
【0055】
ロッククリップ
ロッククリップ82は、各マウントフランジ100に調節可能に取り付けられる。
図9aおよび9bに示すように、各ロッククリップ82は本体112を備えている。2つのスプリングアーム114が本体112の両側に取り付けられており、略平行に本体から伸びている。各スプリングアーム114の自由端にはラッチフック116が取り付けられる。
【0056】
図10aに示すように、クリップ82は、フレーム20のロッククリップ係合レシーバ34に、外すことのできる係合となるように挿入され得る。
図10aにおいて、クリップ82は一つだけ示されており、ヨーク92には取り付けられていない。各ラッチフック116を受けるのは、フレームの各チャネル38(
図5c)である。
図10aでは、ラッチフック116の遠い方の端を、それらがチャネル38のくぼみ71に向けて外側に曲がる直前の位置で示している。
図4にはくぼみ71内の係合位置にあるラッチフックの遠い方の端を示している。もちろん、クリップ82あるいは少なくともそのラッチフック116は、フレーム20内に形成され得、チャネル38あるいは少なくともくぼみ71はストラップおよび/あるいはヨーク上に形成され得る。
【0057】
また
図4および10aは、接続されたときに何の割り込みもないほぼ連続した表面を好ましくは形成するロッククリップ82およびフレーム20の外側の表面も示している。好ましくは、ロッククリップ82はそれぞれの端でフレーム20と同じくらいの幅を有しており、それにより患者がロッククリップを触った感覚で位置を見つけることが容易になる。スプリングアーム114はロッククリップの本体の面内で曲がるように設計されており、それにより、ロッククリップ82を取り付けたり外したりするのがより簡単になる。この位置決めによって、リリース機構のエルゴノミクス(人間工学)を向上させる。患者の親指とそれに対向する指とを用いてロッククリップ82の位置を容易に見つけ、それを操作することができる。また、大きくなったサイズのおかげで、患者は最小限の器用さでロッククリップ82を操作することが可能となる。さらに、ロッククリップ82は、ロッククリップ82とストラップ84および/またはヨーク92との間の長さの調整が不要になるように、ストラップ84/ヨーク92に接続される。
【0058】
ロッククリップ82は、本体112から外側に横方向に伸びている保持フランジ118(
図9b)を備えている。保持フランジ118は、保持フランジ118の軸に沿って伸びている中央ハブ119と、中央ハブ119の両側に中央ハブ119から横方向に伸びている2つの保持タブ120とを備えている。
図10b〜10dは
図10aに示されているロッククリップ82の詳細を示しており、これらは
図9aおよび9bに示されている特徴と類似している。ロッククリップ82はヨーク92から隔てられて示されているが、もし両者の間の相対的な動きおよび/あるいは取り外しが必要でなければ、クリップおよびヨーク92を一体のものとして形成することも可能である。反対に、クリップ82とフレーム20とを一体のユニットとして形成し、クリップ部分をヨークに接続することもできる。
【0059】
保持フランジ118は、保持タブ120をスロット104に一致するように並べ、かつ保持フランジ118をヨーク92のマウントフランジ100に挿入することができるようなサイズおよび形状に形成される。中央ハブ119は、ロッククリップ82およびヨーク92が互いによって回転方向に支持されるように中央孔103に対して精密な許容差を有するようなサイズで形成される。保持フランジ118が一旦マウントフランジ100に挿入されると、ロッククリップ82は、保持タブ120をフランジ102の内側表面に係合するようにヨーク92に対して回転することが可能となり、それによってヨーク92に対してロッククリップ82を軸方向にロックする。
図10e〜10gはヨーク92に対してさまざまな位置にあるロッククリップ82を示している。
図10eにおいて、クリップ82のタブ120はヨーク92の開口104を貫いて挿入されており、クリップ82は、タブ120の上側表面が半環状部分102の内側表面にぴったりと係合するように矢印Aの方向に沿ってわずかに回転されている。曲がるアーム114がヨーク92の正面端部94に対して約90度に位置するようにクリップ82を取り付けると、クリップ82をヨーク92から外すことが可能となる。本実施形態では、取り外しを行うことが可能である2つの位置があり、これらの位置の両方を、マスクが通常の使用状態にあるときにはそれらの位置にはならないように選択することができる。そうしなければ、クリップ82は何かのはずみでヨーク92から外れてしまう可能性がある。
図10fおよび10gはヨーク92に対して異なる回転の向きであるクリップ82を示している。
【0060】
図9bおよび10bからわかるように、ロッククリップは、保持フランジ118の軸の周りの弧に配置された複数の盛り上がった歯122も有している。歯122は、スプリングタブ106上の歯108に係合するように構成され、配置されている。一旦スプリングタブ106を下側の歯108の方に押し下げると、ロッククリップ82はヨーク92に対して所望の位置に回転することができる。そしてスプリングタブ106は、歯108が(歯のピッチ内で)所望の位置にある歯122に係合し、ヨーク92に対してロッククリップ82を回転方向にロックするように、開放され得る。一実施形態においては、所定のトルクがロッククリップ82に加わったときに、歯122が自動的に歯108およびスプリングタブ106を下方に押しやって、トルクが除去されて歯108が歯122と再び係合するまでロッククリップ82を回転させるように、歯108および122を構成することができる。したがってロッククリップ82は、歯108と歯122との係合の位置に応じて、約50〜100°の角度内で、好ましくは75°の角度内でヨーク92に対して回転調節可能である。回転調節可能な角度は、歯108および122の数および配置を変更することによって、望むように変更可能である。調節角度の範囲は顔面上で必要とされる相対的なクッション位置を反映している。上述した歯つきのシステムによる回転調節によって、患者はより簡単に調節することが可能となり、また、幅広い範囲の位置が幅広い範囲で患者の顔に対応することが可能となる。例えば、患者は両方のロッククリップ82を調整して、ヨーク92に対して同じ角度となるようにしてもよい。あるいは、患者は、ロッククリップ82のそれぞれがヨーク92に対して異なる角度を有するようにロッククリップ82を調整してもよい。歯つきのシステムにより、患者は、各ロッククリップ82について所望の角度を容易に設定し、再現することが可能である。例えば、歯つきのシステムは、例えば5つの位置における各ロッククリップとヨークとの間の相対的な動きを可能とし、これは大半の顔に対応するはずである。もちろん、用途に応じて5つよりも少ない位置を用いることもできる。また、ヨーク92に対する各ロッククリップ82の特定の角度が望まれていると一旦判断されれば、マスクシステムは、ヨーク92に対してロッククリップの回転位置を固定する調整不可能なクリップ構造を備えてもよい。歯は、ヨークに対するロッククリップの相対位置を容易に患者が判断することが十分にできる大きさである。
【0061】
さらに、スプリングタブ106は、患者が何かのはずみで、例えば睡眠中にロッククリップ/ヨーク上で寝返りをうつことによって、スプリングタブ106を押し下げてロッククリップ82をヨーク92に対して動かすことがないように構成・配置される。例えば、
図10e〜10gおよび
図36(異なる実施形態)に示すように、ロッククリップ82はヨーク92から、スプリングタブ106よりもさらに外側に伸びている。つまり、スプリングタブ106は、ロッククリップ82の外側の縁よりも低い位置に配置される。したがって、スプリングタブ106に対するロッククリップ82の位置決めは、スプリングタブ106が何かのはずみで作動することを防ぐ。また、スプリングタブ106は、スプリングタブ106の歯108がロッククリップ82の歯122から離合することなくヨーク92がスプリングタブ106の方やスプリングタブ106から離れる方向に曲がることができるように、ヨーク92に接続される。
【0062】
他の調節アセンブリは、いくつか、あるいは全てのサブアセンブリの単なる転換によって実現される。例えば、中央ハブ119をヨーク92上に配置し、その逆のヨーク中央孔103をロッククリップ82上に配置してもよい。同様に、それぞれのサブアセンブリとその相手とを逆にしてもよい。あるいは、ヨーク92およびロッククリップ82を、ねじ、あるいはクランプ機構、例えば、複数の所望の位置においてヨーク92およびクリップ82を選択的に連結するのに用いることができるヨークおよびクリップとは別の部品によって、調節可能に連結してもよい。さらに、中央孔103を、ヨークとクリップとの取り外しおよび取り付けを可能にするどのような方法で成形してもよい。また、ロッククリップに対して固定された角度を可能にする交換ヨークのシステムを用いてもよい。
【0063】
またロッククリップ82は、スプリングアーム114の間でスプリングアーム114に対して略平行に本体112から外方向に伸びている中央支持タブ124も備えている。中央支持タブ124は、中央支持スロット36と緊密な嵌合を有するように形成されており、それにより、中央支持タブ124が中央支持スロット36に挿入されると、ロッククリップ82とロッククリップレシーバアセンブリ34との間では、回転、揺れ動き、あるいは左右の動きはほとんど起こらない。中央支持タブ124はフレームとの位置合わせに役立つようにアーム114よりも長い。ロッククリップ82はまた、ロッククリップ82がロッククリップレシーバアセンブリ34に挿入されるときに係合面35(
図5c)と係合してロッククリップ82のためのさらなる支持を与える係合面125も有している。ラッチフック116および/または中央支持タブ124は、スロット36、38に簡単に入ることができるように、徐々に減っていく幅および/または厚さを有していてもよい。またラッチフック116および/または中央支持タブ124は、スロット36、38に簡単に入ることができるように、丸められた、あるいは形に合わせた縁を有していてもよい。さらに、中央支持タブ124は、中央支持タブ124が中央支持スロット36に入るのを容易にするように、中央支持スロット36に設けられた突起に係合する溝を有してもよい。あるいは、中央支持タブ124は、中央支持スロット36に設けられた溝に係合する突起を有してもよい。
【0064】
ロッククリップ82をロッククリップレシーバアセンブリ34に挿入すると、ラッチフック116がくぼみ71(
図4)に挿入され、あるいはロックフランジ39(
図7)の上に乗るために、スプリングアーム114は互いに押しやられる。一旦ラッチフック116がロックフランジ39あるいはくぼみ71を開放すると、スプリングアーム114は外側にはねることが可能となり、それによってラッチフック116とロックフランジ39および/またはくぼみ71とのロックする係合を提供する。十分な隙間がスロット38に設けられており、ラッチフック116の必要な動きがロックフランジ39を開放するのを可能とする。
【0065】
このようにして、フロントストラップ84、ヨーク92およびロッククリップ82を含む左側と右側のストラップアセンブリは、フレーム20に取り付け可能であり、ヨーク92およびフロントストラップ84は約50〜100°の角度内で、好ましくは75°の角度内でフレーム20に対して回転調節可能である。
【0066】
好ましい実施形態において、ロッククリップ82は、射出成型によって形成された一つのプラスチック片である。プラスチックの例には、ナイロン、アセタール、ポリカーボネイト、およびポリプロピレンがある。ある実施形態では、保持タブ120は、ロッククリップ82の本体112を貫いて伸びる孔126を残す射出によって成型プロセス中に形成され、それにより保持タブ120の下面を本体112から離すことができる。
【0067】
磁力による相互接続
図33〜37は、フレーム420とヘッドギアアセンブリ480とを取り外し可能に連結するための他の実施形態を示している。具体的には、フレーム420およびヨーク492は、ヨーク492が磁力によってフレーム420に連結されるように構成されている。
【0068】
図33に示すように、フレームは本体420aと一対のサイドフレーム部材420bとを備えている。フレーム20の実施形態と同様に、本体420aは取り外し可能にクッション40と連結されるように構成されている。各サイドフレーム部材420bは、ヘッドギアアセンブリ480のヨーク492によって提供される第二のコネクタ部435と接続するための第一のコネクタ部434を有している。図示されている実施形態では、第一のコネクタ部434は、サイドフレーム部材420bから外側に伸びている保持構造418を有している。保持構造418は磁石419を保持するように構成されている。一実施形態において、磁石419はネオジムから形成されており、直径6.35mm、厚さ6.35mmの円柱形状を有している。しかしながら、保持構造418は、適したいかなるサイズおよび形状の磁石を保持するように構成されてもよい。さらに、サイドフレーム部材420bの外側の縁はそれぞれ、弧内に配置された複数の盛り上がった歯422を有している。
【0069】
図34および35に示すように、ヘッドギアアセンブリ480のヨーク492のそれぞれは、ヘッドギアアセンブリ80のヨーク92に類似した構造を有している。具体的には、ヨーク492はそれぞれ、その正面端部494上に位置するマウントフランジ400を有する第二のコネクタ部435を備えている。マウントフランジ400は孔403に達する開口あるいはキーホール401を有している。2つの半環状フランジ402はスロット404によって互いから隔てられている。半環状フランジ402の半径方向で内側の表面が中央孔403を形成している。またヨーク492は、マウントフランジ400の後方に位置するスプリングタブ406も有している。スプリングタブ406の正面部分はヨーク492に接続され、後方部分は空間407によってヨーク492から隔てられていて、スプリングタブ406に圧力がかかったときにヨーク492に対して曲がることができる。スプリングタブ406は好ましくは、マウントフランジ400の軸の回りの弧内に位置する複数の持ち上がった歯408を有している。またスプリングタブ406は、ユーザがスプリングタブ406の位置を特定し、係合させ、操作する際に役立つように、その自由端に持ち上がった位置決め部材410も有している。
【0070】
ヨーク92とは対照的に、ヨーク492は、孔403内にしっかりと固定された鉄類のディスク412を備えている。一実施形態において、金属ディスク412は、直径14mmで厚さ1mmの鋼鉄のワッシャである。しかしながら、金属ディスク412は、ヨーク492の孔403内に搭載可能である適したいかなるサイズおよび形状を有していてもよい。さらに、適したサイズおよび形状の磁石を金属ディスク412の代わりに用いてもよい。
【0071】
図36および37に示すように、フレーム420の第一のコネクタ部434は、磁石419が磁力によって金属ディスク412と連結されるようにヨーク492の第二のコネクタ部435と係合される。具体的には、磁石419が金属ディスク412に隣接して位置するように、あるいは金属ディスク412と係合するように、磁石419が孔403に軸方向に挿入される。これにより、磁石419と金属ディスク412との間の磁石の引力がヨーク402をフレーム420に軸方向に保持することを可能にする。上述したように、金属ディスク412を磁石で置き換えることによって、ヨーク492とフレーム420との間の磁石の引力の強さを強くしてもよい。保持構造418は、フレーム420およびヨーク492が互いによって回転方向に支持されるように、孔403と緊密な許容差を有するようなサイズである。
【0072】
さらに、フレーム420上の歯422は、フレーム420が磁力によってヨーク492と連結されたときにスプリングタブ406上の歯408と係合するように構成され、配置される。一旦スプリングタブ406が歯408まで押し下げられると、ヨーク492はフレーム420に対して所望の位置まで回転することができるようになる。そしてスプリングタブ406は、歯408が所望の位置(歯の一ピッチ内)で歯422と係合してヨーク492に対するフレーム420の回転をロックするように、開放される。一実施形態によると、歯408および422は、所定のトルクがヨーク492にかかると、歯422が自動的に歯408およびスプリングタブ406を下方に押しやって、トルクが除かれて歯408が歯422に再び係合するまで、ヨーク492が回転することを可能にする。したがってヨーク492は、歯408と歯422との係合位置に応じて、約50〜100°の角度内で、好ましくは75°の角度でフレーム420に対して回転調節可能である。
【0073】
各サイドフレーム部材420bの磁石419は、間違った取り付け(例えば、左側のヨーク492が右のサイドフレーム部材420bに取り付けられている)が磁力の反発によって示されるような向きに向けられてもよい。具体的には、一方のサイドフレーム部材420b上の磁石419がヨーク492の一方とのみ磁力によって連結するような向きに向けられ、もう一方のサイドフレーム部材420b上の磁石419がヨーク492のもう一方とのみ磁力によって連結されるような向きに向けられる。したがって、正しく対にされたヨーク492およびサイドフレーム部材420bの磁石の引力によって、フレーム420をヘッドギアアセンブリ48に正しく取り付けたことが感覚的に示されることになる。この構成により、ヘッドギアアセンブリ480とフレーム420とが正しく組み立てられることが確実になる。さらにこの構成により、磁石410は金属ディスク412に対して正しい位置に自らを自動的に配置するので、暗い中であっても、フレーム420をヘッドギアアセンブリ480に容易に連結することが可能となる。磁石419と金属ディスク412との間の引っ張り合う磁力よりも大きな適切な離合力をかけることによって、フレーム420からヘッドギアアセンブリ480を容易に取り外してもよい。
あるいは、フレーム420上の第一のコネクタ部434が鉄類の部材を提供し、ヨーク492上の第二のコネクタ部435が磁石を提供してもよい。
【0074】
ストラップ
各フロントストラップ84は、トップストラップ88に取り付けられてトップストラップ88を交差ストラップ138のトップストラップ140に接続するはしご状のバックル128を有している。
図1〜3および11を参照。バックル128は接着剤、縫い合わせ、および/あるいは、ストラップと一体的に製造するというような他の公知の方法でトップストラップ88に取り付けることができる。
図11に示す実施形態では、バックル128は、バックルをトップストラップ88に縫い合わせることを可能にするような正方形の形状である取付タブ132の周りに等間隔に配置されている複数の孔130を有している。バックルはさらに、クロスバー134および136を有している。それらにトップストラップ140が公知の方法で通され、トップストラップ140はクロスバー136の周りに巻きつき、トップストラップ140の自由端はクロスバー134とトップストラップ140の残りの部分との間に配置される。したがって、張力がバックル128とトップストラップ140との間にかかると、トップストラップの自由端はクロスバー134とトップストラップ140の他の部分との間に摩擦力によって保持され、バックル128とトップストラップ140との間の接続が張力下で自己保持される。ストラップを定位置に保持するためのストラップループとともに用いるのであれば、クロスバーを一つしか持たないタイプのバックルを用いることもできる。当然のことながら、この分野では知られているように、バックルの代わりに他の接続具を使用してもよい。
【0075】
図12に示すように、交差ストラップ138は、解放された状態ではほぼ細長い形状であり、端部44を有するクロスストラップ142から上の方に伸びている2本のトップストラップ140を有している。交差ストラップ138を装着時の構成にするためには、2本のトップストラップ140を交差バックル146に通し、それらを交差した状態で保持されるようにする。
図13および14を参照されたい。このようにして、交差ストラップ138の左側のトップストラップ140が右側のトップストラップ88のバックル128とつながるように交差し、交差ストラップ138の右側のトップストラップ140が左側のトップストラップ88のバックル128とつながるように交差する。それぞれのストラップの交差によって、ヘッドギアアセンブリ80および鼻用マスクアセンブリ10をユーザ上の所望の調整された位置に維持することができる。各ストラップの自由端を下に下げておくために、ストラップループ148を使用することもできる。
図15を参照されたい。発明の一形態においては、大き過ぎるサイズのストラップが与えられて、一人一人に合うような長さにカットされる。
【0076】
バックル128およびトップストラップ88と同様に、バックル150(
図1)をクロスストラップの端部144に取り付けて、端部144をフロントストラップ84のそれぞれのストラップ背面端部90に接続することもできる。
【0077】
旋回エルボーアセンブリ
図6aの旋回エルボーアセンブリ60は、レスメッド社のULTRA MIRAGE(登録商標)マスクにおいて現在使用されているものと同一であってもよい。それは上述したように、内側のCクリップ部材を使用している。
図6aのエルボーアセンブリ60はコネクタチューブ300(
図23)とともに用いられるように提供される。コネクタチューブ300はエルボーアセンブリ60とガス供給チューブ310(
図26)との間に設けられる。
あるいは、旋回エルボーアセンブリは、
図1〜4および16〜22にしたがって構成されてもよい。このような旋回エルボーアセンブリ60は、旋回エルボー160とベントカバー180とを有している。旋回エルボー160は回転可能にフレーム20に連結されている。
【0078】
発明の他の代替的な形態においては、
図6bに示すように、チューブ310の端部にさらなる旋回部を接続する。
【0079】
図16a〜19c−2に示されているように、旋回エルボー160は吸気ポート162と排気ポート164とを備えている。エアチューブ310(
図26)は好ましくは、加圧された呼吸可能な空気またはガスを患者の呼吸のために加圧供給源からエアチューブ310、吸気ポート162を通してクッション40に供給するように、旋回エルボー160のステム166に(コネクタチューブ300なしで)直接接続されている。
【0080】
排気ポート164は、例えばエルボー160の内側の部分に設けられたバッフル161を用いて吸気ポート162から隔てられる。
図18および19a−1を参照されたい。図示されている実施形態では、バッフル161は略平面状の構成を有している。しかしながらバッフル161は、吸気ポート162から排気ポート164を隔てるための曲面を有する構成、あるいは他の適した構成を有していてもよい。吸気ポート162および排気ポート164の向きは、吸気ポート162内で方向を示す矢印によって示されている入ってくるガスが排気ポート164に沿って出されるガスの流れに与える影響がより直接的ではないように、選択される。さらに、エルボー160に入ってくるガスは直接排気ポート164に向かっては流れにくい。なぜなら入ってくる空気は、バッフル161によって、排気ポート164を通して出ていく前に、曲がりくねった経路をとる、例えば約180度回転させられるように強制されるからである。
【0081】
エルボー160は、フレーム20に設けられた開口24に係合するようにされた端部169を有しており、それによりフレーム20とクッション40とによって形成される鼻腔にガスを供給する。バッフル161はエルボーの端部169のちょうど内側で終わる。柔軟性のあるクイックリリース機構はつば部173とエプロン170とを備えている。つば部173は、
図16bに示すように略T字状の部材を有しており、これがエルボー160の端部169を取り囲む。好ましくはエルボー160の端部169は、フレーム20にまとめられるときの整合性を向上するためにつば部173を越えて伸びている。つば部173は同心状の関係で端部169から離して配置されており、
図18に示すようにつば部173と端部169との間に受けるための空間183を形成する。エプロン170は好ましくは、エルボー160の一体的な部分として形成され、T字状のつば部173の下側の脚の部分に接続される。つば部173とエプロン170との間には2つの溝167が設けられている。溝167の部分167aがあることで、T字状のつば部173の下側の脚部分はエプロン170に対して曲がることができる。また溝の部分167bがあることで、T字状のつば部173のクロス部分はエルボー160の端部169に対して外側および内側に曲がることができる。
【0082】
図19a−1〜19c−2はエルボー160とフレーム20との接続を示している一連の図である。
図19a−1〜19a−2は、マスクフレーム20と接続される直前のエルボー160の断面を示している。
図19b−1〜19b−2は、ほぼ接続された状態でのエルボー160とフレーム20とを示しており、
図19c−1〜19c−2は完全に接続された状態でのエルボー160とフレーム20とを示している。
【0083】
フレーム20は、開口24を規定する壁25の遠い側の端に設けられたフランジ21を有している。
図5および5aはフランジ21を示しているが、
図6aの実施形態はこのようなフランジを示していない、あるいは有していない。なぜなら
図6aの実施形態は異なるエルボーアセンブリ160を使用しているからである。フランジ21は空間183内に挿入されると、つば部173の内表面に形成された突起181に係合する。この実施形態では、突起181は2つだけ設けられている。突起181は、フランジ21が溝の部分167bと整合してその内部に受けられるまで(
図19c−1〜19c−2)、フランジ21との係合によってT字状のつば部173のクロス部分の各端が外側に曲がる(
図19b−1〜19b−2)ように傾斜がつけられ、あるいは傾けて構成されている。フランジ21が部分167bに受けられた状態では、フレーム20にエルボー160が固定され、つば部173は曲がっていない状態へと戻る。フランジ21の一部は、空間183内に設けられたラグ165に支えられている。
【0084】
エルボー160とフレーム20とのスナップ接続の間、つば部173とフランジ21とが係合すると、カチッという音あるいは係合を示す音が聞こえる。この音による表示は、エルボー160がしっかりとフレーム20に取り付けられたことをユーザに知らせるのに有用である。
【0085】
フレーム20からエルボー160を解放するには、突起181を半径方向に外側に持ち上げてフランジ21を通すことができるように、つば部173の各側部上の部分185をお互いに向けて曲げる。このようにして、エルボー160は、Cクリップを用いて接続されたエルボー(
図6b)の場合のように鼻用の空洞の内側にアクセスしたりせずに、フレーム20から素早くかつ簡単に取り外すことができる。
図16bに示すように、エルボー160の好ましい形態は加工された突起185を有しており、それによりユーザが外すためのポイントを特定するのを助ける。対向する加工部分185の距離、すなわち、つば部173の直径は、約35〜45mmであり、好ましくは40mmである。
【0086】
またエルボー160は、
図23に示されているコネクタ300なしでガス供給チューブ310(
図26)に直接つながるようにされている(
図1参照)。
図6bはエルボーとガス供給チューブ310との間のコネクタ300を示している。コネクタ300を取り除くことは有用である。なぜなら、接続されたエルボーとコネクタ300(
図6b)との実効的なレバーアームの長さは、患者の頭部/顔に対してフレーム20またはマスクアセンブリ10に望ましくないレベルのトルクがかかる可能性を増やすからである。コネクタ300を使用する必要性をなくすことで、レバーアームの実効長を減らすことができ、それによりマスクアセンブリにかかるトルクを小さくすることができ、結果として安定性の向上につながる。安定性が向上すると、患者の快適さも向上し、追従性も増す。
【0087】
接続された状態で、フレーム20の壁25の内側表面は、
図19a−1〜19c−2に示すように管の端部169の外側表面と密閉状態で係合する。これらの表面は約1〜10mm、好ましくは6mmの距離で互いに係合し、密閉に役立つとともに、エルボー160とフレーム20との間の接続を安定させる。
図19c−1〜19c−2に示すように、壁25の一部はマスク20の内側で伸びており、エルボー160とフレーム20との接触領域をさらに増加させる。接続された状態で、つば部173の端部173aは、
図19c−1〜19c−2に示すように、フレーム20の外側表面と平らである。壁25は、端部169の挿入に対するストップ(stop)を形成し、またエルボー160とフレーム20との間で制御された漏れを許すべくフランジ25a(
図19c−2)を備えている。一実施形態において、エルボー160とフレーム20との間の漏れは最小限である。他の実施形態では、エルボー160とフレーム20との間では密閉が実現され、漏れは防がれる。
【0088】
このシステムによって、エルボー160とフレーム20との素早い正確な接続が可能となる。また簡単に分解することも可能である。また、エルボー160は、患者が片手でエルボー160をフレーム20に取り付けたり、フレーム20から外したりできるように構成されている。これは、マスクを洗う時や、患者がセッション中に治療を中断することを選ばなければならないが、すぐ後に治療を再開することを考えているような場合に有利である。エルボーアセンブリ60とフレーム20との接続によって、患者は、治療を中断しているわずかの間に患者の顔の適切な位置上にマスクフレーム、クッションおよびヘッドギアを保持したまま送風機のガス供給チューブからエルボー160を迅速に外すことが可能となる。開口24は抵抗を下げるのに十分な大きさを有しており、それにより患者が快適に呼吸することを可能とする。十分な量のガスが開口24によって提供されるからである。具体的には、開口24は少なくとも180mm2の面積を有している。一実施形態においては、開口24は20〜30mmの範囲、好ましくは27mmの直径を有しており、200〜600mm2の範囲、好ましくは500〜600mm2の範囲の面積を有している。図示するように、開口は略円形の形状を有している。しかしながら開口は円形でない形状であってもよい。さらにフレームは、それを貫く複数の開口を有し、エルボーはそれら複数の開口を取り囲むようにフレームに連結されていてもよい。この点において、本発明の実施形態によるマスクは、より狭い開口を有するクイックリリース機構を含んでいた先行技術のマスク構成とは異なっている。このようなより狭い開口が設けられたクイックリリース機構は、患者に不快感、例えば不安や閉所恐怖症をもたらす可能性があった。不快感はCO2の再呼吸の増加や流れの抵抗の増加によってさらに悪化する。
【0089】
ベントカバー
ベントカバー180は、下側孔184、湾曲部186および上部188を有する本体182を備えている。
図20〜22を参照されたい。本体182はまた、少なくとも一つのベント190を有しており、好ましい実施形態においては、ベントカバーの内部からベントカバーの外部へ伸びている複数のベント190を有している。ベントカバー180の上部188は、旋回接合部160のラッチ168と係合するフランジまたは開口部192を有している。図示された実施形態では、ベントカバー180は開口部192を有している。ベントカバー180は、旋回接合部160のステム166をベントカバー180の下側孔184を通して配置することによって旋回接合部160と接続される。そしてベントカバー180は、
図1に示すように、ラッチ168が開口部192を通って伸びるまで旋回接合部160に向かって動かされる。この構成によって、ベントカバー180は、エルボー160またはガス供給管によってつかまえられているので、エルボーアセンブリ160および/あるいはマスクアセンブリ10の近傍にとどまることが可能となる。これは、ベントカバー180が洗浄中に、あるいはうっかりして外されたときに、マスクアセンブリによって保持されるので、落ちてなくなったりしないという点で便利である。
【0090】
ベントカバーの湾曲部186は、旋回接合部160の隣接するエプロン170に適合してベントカバー180の内部と旋回接合部160との間にほぼ気密封止を提供する。このようにして、マスクの内部から吐き出されるガスは旋回接合部160の排気ポート164を通って、ベントカバー180の内部を通って、ベント190を通して大気中へと流れることができる。
図19c−1は、ベントカバーが適切な位置にあるときに排気ガスがたどる経路を大まかに示している矢印Bを含んでいる。この構成には、ベントの方向が患者と一緒に寝ている人がマスクからの気体の流れによっていらいらすることを減らす、あるいは防ぐというさらなる利点がある。
図1〜4は、接続された状態でのエルボー160およびベントカバー180を示している。ベントカバー180をエルボー160の外部の表面から十分に確実に離すためにスペーサ163が設けられている。これは特に、ベントカバーは好ましくは弾力的な柔軟性のある材料から形成されているので、空気の隙間が崩壊することを防ぐのに役立つ。もちろん、ベントカバーを、望むのであればUltra Mirage(登録商標)で用いられているカバーにやや似ているプラスチック部材から形成することもできる。さらに、このベントの構成を、例えばここに全体として援用する米国特許出願第09/021,541号に開示されているレスメッド社のベントアセンブリを用いて置き換え、あるいは補完することができる。
【0091】
図18b〜18dは、360として示されている旋回エルボーの他の実施形態を示している。これは
図22b〜22eに図示されているベントカバー380に接続されるように適応されている。
図18b、18cおよび18eに示すように、旋回エルボー360は、排気ポート364の出口を取り囲む壁362の遠い側の端に設けられているフランジ361を有している。
図18dおよび18eは、吸気ポート365、排気ポート364、および吸気ポート365と排気ポート364とを隔てるバッフル369を示している。
図18eに示すように、バッフル369は湾曲した形状を有している。具体的には、バッフル369は、排気ポート364の入口から排気ポート364の出口まで伸びる際にほぼ下方向に湾曲している。しかしながら、バッフル369は、
図19a−1に示されているバッフル161と類似したほぼ平面状の形状を有していてもよい。あるいは、バッフルは、吸気ポート365と排気ポート364とを隔てる何らかの他の適した構造を有していてもよい。
図22b〜22eに示すように、ベントカバー380は、下側孔384、中間部386および上部388を有する本体382を備えている。また本体382は、ベントカバーの内部からベントカバーの外部へと伸びている複数のベントホール390を有している。ベントカバー380の上部388は、旋回エルボー360のフランジ361に契合するつば部392を有している。ベントカバー380は、旋回エルボー360のステム366をベントカバー380の下側孔384に通すことによって旋回エルボー360に接続される。そしてベントカバー380は、つば部392が旋回エルボー360のフランジ361にひっかかるまで、旋回エルボー360に向かって動かされる。つば部392はフランジ361を乗り越えるように引っ張られ、そしてその弾力性と弾性とのためにフランジ361をしっかりとつかむ。図示されている実施形態では、つば部392は、フランジ361および壁362にかかる応力(「フープ応力(hoop stress)」)が均一に分散されるように、略円形の形状を有している。ベントカバー180の実施形態と同様に、この構成によって、ベントカバー380は、エルボー360またはガス供給管につかまれているので、旋回エルボー360および/またはマスクアセンブリの近傍で接続されたままの状態でいることが可能となる。ベントカバーは、付加的な固定機構なしで排気通路を覆うようにエルボー上の適切な位置で保持され得るという点で、自己保持されると考えることができる。またベントカバーは、患者がフランジ361を越えてつば部392を引っ張る時に環状の下側孔184を介してエルボー上に保持されており、これにより最初の組み立ての企てが成功しなかった場合にベントカバーを紛失する機会を最小限とすることができる。
【0092】
図22fは、接続された状態の旋回エルボー360およびベントカバー380を示している。
図18cおよび18eに示すように、旋回エルボー360は壁363を有しており、壁363がベントカバー380を旋回エルボー360の外部表面から十分に離すことを確実にする。これは特に、ベントカバー380が好ましくは弾力のある柔軟性を有する材料から形成されているので、空気の隙間が崩壊することを防ぐのに役立つ。ベントカバー380は、壁363と係合する上部388の内部表面上にくぼみ389(
図22c)を有している。
【0093】
マスククッション
クッションは、顔の上で静止し、その周辺部で圧力をかけつつ、顔の圧力に対して敏感な領域との接触を最小限にする、および/あるいは避けるように設計されている。顔には、圧力と封止とのバランスを得るために特別な注意を払う必要がある部分がある。また、安定性を向上させることによって患者の快適さのレベルを向上させ、かつ患者の顔に対してマスクを回動させるような力を減らすために薄型のマスクを提供することが望ましい。特性を、うまくいく設計を作り出すためにとられた手法とともに以下に列挙する。
【0094】
クッションは、間に壁を挟んで、顔に接触する側と顔に接触しない側とを有している。クッションの顔に接触しない側はマスクフレームと係合する。発明の一形態において、顔と接触する側のクッションの形状は、
図24cに示す図のように、略台形である。この特徴に関して、顔上のクッション形状は、略三角形状であった先行技術のクッションと対照的である。この台形形状の有利なところは、患者またはユーザの鼻の出口(つまり、鼻の外側軟骨の領域および鼻のそれぞれの側の鼻骨のすぐ下の領域)を通る流れを邪魔することなく、鼻よりも下の点で封止することに役立つということである。したがって、クッションは患者の鼻梁部分の下側の部分上に配置される。またクッションは、鼻の出口上における接触圧力が最小限あるいはなくなるように構成され、配置される。クッションの形状は、下側の鼻梁領域に圧力点の集中ならびに鼻の出口がふさがれることを防がなければならないということを念頭において、変更してもよく、例えば、三角形状あるいは他の台形ではない形状を使うこともできる。先行技術のマスククッションの中には、鼻の出口を押さえて鼻の出口の空気の流れに対する抵抗を増やしてしまうものもある。クッションの好ましい形態では、クッションの顔に接触する側も顔に接触しない側も、同じ略台形形状を有する。
【0095】
発明の一形態では、クッションの顔と接触する側のある領域において、支持構造と封止構造との組み合わせが提供される。支持および封止構造は、クッションの一部として提供されてもよく、あるいは別の構成要素を用いて提供されてもよい。支持および封止構造がクッションの一部分として提供される場合、クッションは一つの壁を有するタイプ、二つの壁を有するタイプ、あるいは三つ、それ以上の壁を有する構成のいずれであってもよい。クッションの好ましい形態においては、封止構造は薄い膜によって提供されるのに対して、支持構造はより厚いフレームによって提供される。
【0096】
鼻梁の中央部および側部は特に接触の圧力に対して敏感である。したがって、クッションはこの部分においてはできるだけ軽く封止することが重要となる。クッションの不安定さが鼻梁領域での圧力を増やすことにつながり得、したがってこの部分において余計な挑戦を提示する。支持要素(例えば
図24aに示されているフレーム200)は、上に横たわっている顔に接触する要素(例えば
図24aに示されている膜205)の隣接する部分との接触を完全に避けるように設計することができ、それにより膜205だけを封止することが可能である。接触圧力の点の集中は鼻梁領域、特に下側の鼻梁領域と接触するその敏感な頂上部分では避けるべきである、封止は維持しなければならない。下側の鼻梁領域は、ほぼ、鼻梁の骨の領域がより軟骨を含む鼻の部分に移行する部分に位置する。また顔にかかる力は、クッション40の周辺全体に実質的に均等に分散される必要がある。本発明の一局面では、顔の接触圧力は顔中に制御された状態で分散される。当然のことながら、唇および頬の領域における力を少しだけ集中させつつ、例えば幅方向においてはより短い距離内に広げつつ、下側の鼻梁領域にかかる力を膜205の比較的広いほうの部分に沿って広げて力の集中を避けることができる。なぜなら力は、唇および、特に、頬の領域においてより快適に収容され得るからである。また、患者の顔へ比較的一定に全体的な力を分散しつつ、膜と下側の鼻梁領域に顔との接触領域あるいは幅を膜と唇および頬の領域との接触領域あるいは幅よりも大きくしてもよい。これにより快適さが向上する。この構成を用いると、患者は、たとえ接触している領域への実際の力が均等に分散されていないとしても、圧力は接触している領域中に均等に分散していると認知する。
【0097】
他の利点は、患者に対するクッションの角度を封止効率に悪影響を及ぼすことなく変えることができるということである。例えば、クッションを患者の顔の形状に基づいて異なる角度で異なる患者に接触させてもよく、患者が眠っている時の動いている間は顔に対してクッションの角度を動かすことができる。密閉素子(例えば膜205)は、大きな実質的に反転した部分(大きな半径)を有しており、患者の顔に対するマスクのある程度の動きあるいは回転を可能にし、膜の遠い側の縁が患者の顔および/または鼻を刺激することを防ぐ。この密閉素子(例えば膜)は、鼻の側部で鼻梁の下側の部分の周りに適合するこ
とによって鼻に対してしっかりと密閉する。強固な密閉と膜の緊張/鼻を横切っての引き伸ばしとの間で妥協に達しなければならない。膜に、縁の堅固さなしで最大引き伸ばし距離を可能にするように切り込みを入れることもできる。引き伸ばしは、材料によっても実現され、例えばより柔らかい材料および/あるいはより薄い材料、例えばエラストマー、シリコーン、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、発泡性エラストマーおよび/あるいは混合物によって実現することができる。
【0098】
密閉素子(例えば膜)は、膜が鼻梁の下側の領域を容易に越えて広がることができるように、0.1から2.0mmの範囲、好ましくは0.35mmの厚さを有する好ましくはエラストマー系である。膜の厚さを変える、リブのような強化構造を付加する、あるいは複合体を用いることによって、膜の広がりを異なる領域で異ならせてもよい。
【0099】
顔の皺は、鼻の側部と頬との間の顔または鼻の皺(鼻唇溝としても知られている)において最もよく現れ、効果的な密閉を行う際には難問を提示する。下にあるクッション(例えば
図24aに示すフレーム200)はできるだけ鼻の側部に近づけて置かれる。このようにして、クッションは最も平坦な部分を可能な限り密閉する。顔の皺に位置するように設計される湾曲した部分は、できるだけ現実に近いように小さい半径でなければならない。膜205は、クッションの縁(例えばリム225)よりも遠くに内側および/または下側に伸びて、鼻の側部で外側の縁のあたりを丸まらせる。これにより、粗い縁に起因する刺激の可能性は減少し、内側のクッションリム225が患者の顔および/あるいは鼻に対する刺激の源となることを防ぐことができる。
【0100】
クッションの設計とマスク自身の重さを受けてのマスクの垂直方向の回転との両方によって、あるいは、例えばチューブのひきずりや、マスクに取り付けられている構成要素の重さのためにマスクにかかる望ましくない力によって、上唇を横切る余計な圧力が生じる。上述したように、ヘッドギアの設計は、マスク自身の重さを受けてのマスクの垂直な回転のために唇領域に望ましくない圧力が付加される可能性を減少することに役立つ。唇領域42は、
図24gに示すように、密閉性および快適さを向上させるために、患者の鼻の隔壁の底部を収容するノッチを有していてもよい。隔壁ノッチ264は、
図24cに示すように領域265に設けられる。
図24aおよび24bはクッションの正面図および背面図を示している。代わりの実施形態では、隔壁ノッチを下にあるフレーム上に設けてもよい。
【0101】
クッション40は本実施形態では、好ましくは略台形の形状を有している。しかしながら、クッション40は例えば三角形のような台形ではない形状を有していてもよい。クッション40は、頬と鼻の側部との間の皺における封止を提供するための一対の頬領域41、患者の鼻の下および上唇の上での密閉を提供するように設けられた唇領域42、および鼻梁領域43を有している。鼻梁領域43は、鼻梁の下側部分ならびに、頬と鼻の側部との間に形成された鼻のひだと交差する鼻梁の傾斜している側部にわたる。唇領域42と各頬領域41との移行部は、クッション40が鼻の底部のあたり鼻の側部に向かって向きを変え始める部分にある。鼻梁領域43と各頬領域41との移行部は、各頬領域41が鼻梁に向けて上向きに広がる部分にある。言い換えると、鼻梁領域43は、頬領域が上向きにある角度に曲がり始める部分で始まる。
図24dを参照。
【0102】
鼻梁領域43は、例えば
図1に示すように、患者の鼻と接触するように設計される。
図1では鼻梁の下側の部分が接触のために選ばれている。
図1はフレームから離されたクッション40を示していることに留意されたい。しかしながら、援用されたムーアらの米国仮出願第60/402,509号の付録Cの図面は、さらに下で述べている、2つのモデル鼻に取り付けられた鼻用マスクアセンブリを示している。より具体的に述べると、鼻は、鼻梁の上部に比較的骨の多いセクションと、鼻の先端に柔軟性のある軟骨とを有している。グレイのアナトミー第38版(1995年)の
図6.133A、B、6.135Aおよび11.3A、Bを参照されたい。これらの領域を示す図面をここに援用する。鼻の骨ばった領域に沿って圧力点が集中するのを避け、患者の快適さを向上させることが望ましい。逆に言えば、鼻の軟骨部分のみとのマスクの接触を避けることが望ましい。なぜならその柔軟性によって可能となるクッションの使用時における望ましくない動きは多すぎるかもしれず、また患者の鼻の気道をふさぐかもしれず、さらに安定した適合を提供しないかもしれないからである。また、鼻の先端での配置は、患者の顔とマスクアセンブリの重心との距離を増やす可能性があり、これは望ましくない結果である。
【0103】
したがって、クッションと鼻梁との間の封止係合の最適な領域は、最上部の骨ばった領域と下側の鼻の軟骨領域との間のどこかである。最適には、接触領域は鼻上の軟骨の真上である。一般的に、クッションは鼻の中心に沿った骨上に位置し得るが、鼻の側部の軟骨の部分は裂ける必要がある。鼻の長さおよび他の適切な寸法を、鼻のふもとおよび移行部分から計測することができ、あるいは人間の解剖学的な構造に関する統計学的な情報から得ることができる。考えられる典型的な寸法の例は、
図30および31に見られる1以上の寸法を含んでいる。しかしながら、クッションは、どの場合においても、個々の患者の顔の輪郭の違いのために、下側の鼻梁領域(だいたい、鼻梁の骨の部分がより軟骨を含む鼻の部分に移行するところに位置する)においては患者と接触しない。
【0104】
クッション40は、一つ以上のサイズで、好ましくは一つ〜三つのサイズで患者人口の大半(例えば、患者人口の80%)に対応するように設計される。鼻のふもとから鼻梁のてっぺんまでの距離は、鼻のふもとから骨と軟骨との移行部分までの距離よりも長い。クッション40は鼻の全長を収容する必要はないので、コンパクトかつ/あるいは軽量に形成することができる。これにより、設計者は自由にクッション40の他の領域を最適化あるいは向上させることができ、また、マスクを着けているときに患者の視野を増加させることができる。ある顔の寸法が、対応可能な人口の部分を最大にする最適なマスク設計として特定されている。一実施形態においては、一連の色分けされたクッションが使用される。クッションは、例えばタイプあるいはサイズごとに色分けされる。
【0105】
図24a〜24gはクッション40のさらなる図である。
図24eに示すように、クッション40は、フレーム200と、フレームに取り付けられた膜205とを有している。フレーム200および膜205は、例えば40ジュロメーター硬さのSILASTIC(商標)のようなシリコーンを用いて、例えば、この分野で知られているワンショット射出成型で形成される。当然のことながら、フレーム200および膜205を、一つに接続されるおよび/あるいはフレーム20に接続される二つの部分から形成することもできる。フレーム200は、エッジ210を有しており、これは
図27a〜29dに関連して述べられるように、フレーム20のチャネル26に取り付けられ得る。フレーム200のエッジ210は、この分野で知られているようにクリップ、ストラップ、摩擦力あるいは干渉、フレームへ直接ぴったりくっつけること、接着剤および/あるいは溝型の構成によって、フレーム200に取り付けられ得る。エッジ210およびエッジ210の上の中央部あるいは側壁215は、クッション40がフレームのチャネル26と係合するように配置された時にかかる座屈力に耐えることができる厚さを有している。一形態では、中央部215は2〜10mm、好ましくは5mmの厚さを有している。中央部215は、フレーム200と膜205との間で、エッジ210から、膜205が下にあるフレーム200と合流する移行線220まで延びている。好ましい実施形態では、フレーム200の中央部215の高さは、頬の領域41で最も高く、唇領域42および鼻梁領域43では低い。
【0106】
移行線220を越えて、フレーム200はリム225を有している。好ましい形態では、リム225は、クッション40の鼻用の空洞に向けて内側に湾曲している形状を有している。他の形態では、リムは、ほぼ丸くなった断面を有する頑丈な部品によって提供されてもよい。膜205は、下側の鼻梁領域、頬領域および唇領域41〜43で患者と接触する密閉形成部270(
図24e)を形成する。リム225は、フレーム200の中央部215よりも好ましくは薄い厚さを有しているが、好ましくは膜205よりも厚い。例えば、膜205は、約0.1〜2.0mmの範囲、好ましくは0.35mmの厚さを有しているのに対して、リム225は、約0.5〜2.0mmの範囲、好ましくは1.35mmの厚さを有している。膜205はリム225よりも薄いことが好ましいが、それらを同じ厚さとすることもできる。膜205は、
図25に示すように、フレーム200のリム225を完全に覆って取り囲む。膜205の内側表面はリム225の外側表面から離されており、患者に沿った密閉を形成する。このような密閉によって、膜205は、必要以上の力なしで患者の顔/鼻の特徴の形状の小さな変化に対応することができ、また有効な密閉を維持しつつ、使用時に患者に対するマスクの小さな動きをとらえることができる。好ましくは膜205は、少なくとも鼻梁領域43で、特に鼻梁領域43の頂上近くの領域43a(
図24c)でリム225から隔てられている。これは、患者のその領域が集中した接触圧力に対して最も敏感であるからである。別の言い方をすれば、好ましくは膜205は、鼻梁領域43の下側部分において患者に密閉力を印加するように患者に接触するクッション40の唯一の部分である。膜205は、より軽い圧力を印加しながら、鼻梁全体にわたってより均一に力を分散することができ、それにより快適さを向上させる。当然のことながら、鼻の骨の領域と軟骨の領域との移行部分にかかる密閉力は、鼻の出口を部分的にあるいは完全にふさぐほど大きくはない。
【0107】
鼻梁領域、特に鼻梁領域の頂上におけるリム225は、下側の鼻梁領域上の点あるいは領域に圧力が集中するのを避けるように膜205から十分な距離離されている。また、リム225は、膜205をリム225に接触させる力を均等に分散するように内側に湾曲していなければならない。このような力は、ヘッドギア80を堅く締め過ぎたこと、あるいは患者の動きに起因する不安定さの結果であり得る。クッション40は、たとえヘッドギア80をきつく締め過ぎたとしても下側の鼻梁領域においてリム225と膜205とが接触しないように設計されている。その場合には、下側の鼻梁領域(少なくとも頂上43a)におけるリム225は、クッション40の構造的な完全性が妥協されない限りは、材料および重量を節約するために省いてもよい。また、リム225は、その周辺全体に沿って湾曲している必要はなく、特に使用時に膜205と接触しないように設計されていればよい。
【0108】
頬領域および唇領域41、42において膜205とリム225とを離して配置する必要はないが、こうすれば快適さが増し、また、従順な膜205のおかげで幅広い範囲の患者にクッション40が適合することが可能となる。
【0109】
本発明によるクッションは、先行技術のクッションに対して、向上された安定性を提供する。占有面積、すなわち接触面積は、特に鼻の側部に沿った部分では最大となる、クッションの側部の接触領域は最大となる。これによりさらに2つの利点が生じる。まず、本発明によるクッションの側壁はいくつかの先行技術のクッションよりも長いので、鼻の出口より上で鼻梁の上側領域よりも下を密閉するマスクを設計することができる。第二に、より大きな占有面積、すなわち接触面積にわたって接触圧力を分散することによって、マスクアセンブリの安定性は向上する。したがって、唇領域の実質的に上方の軸の回りを回転しがちである先行技術のマスクと比べて、クッション40は直交面内で回転する可能性はあまりない。
【0110】
図25d〜25iはクッション40の断面を示している。
図25dに示すように、鼻梁領域における縁部と膜との距離は、約5〜14mmの範囲、好ましくは9mmである。
図25eに示すように、縁部と膜との距離は約7〜16mm、好ましくは11mmである。
図25f、25g、25hおよび25dおよび25iに示すように唇領域においては、その距離は約1〜6mm、好ましくは4mmである。
【0111】
また、
図25d〜25iは、好ましい一実施形態における他のさまざまな寸法、例えば曲率半径、膜が伸びている角度等を示している。例えば、鼻梁領域の頂上において、
図25dでは、膜の曲率半径は約5〜14mmの範囲、好ましくは9mmであり、角度は約70〜90度、好ましくは80度である。
図25eでは、曲率半径は約4〜10mm、好ましくは7mmであり、角度は約50〜70度、好ましくは60度である。一般的に、鼻梁領域43における間隔は、頬および唇領域41、42における間隔よりも大きくなければならない。もちろん、組み合わせられた膜およびリムを有するクッションを同様に、例えば一層構造で提供することができる。逆に、リム225の支持機能を、膜205を支持する2つ以上の支持リムを用いて実現することができるし、あるいは2つ以上の膜を1つのリムの上方に設けることもできる。他の代替例では、縁部の支持機能および膜の密閉機能を2つの異なる部材に分けて、それらを異なる材料から形成してもよい。
【0112】
図24eは、膜205が、患者の鼻梁領域の下側部分の特徴的な外形にほぼ合うような形状に合わせて成型されたノッチ255を鼻梁領域43に備えていることを示している。フレーム200は、ノッチ205と同一位置に配置されたノッチ260を備えている。ノッチ255の形状は略U字状であり、ノッチ260の形状はノッチ255よりも概して広く、略U字状である。
図24fに示すように、ノッチ255は、12〜27mmの範囲の深さd1を有している。
【0113】
図24a〜24cからわかるように、膜205の内側のエッジ230が膜205の開口235を規定する。この好ましい形態では、開口235の形状は略台形であり、約31〜45mmの幅の底部w、20〜22mmの長さの側部s、および約5〜10mmの長さであり、底部に対して略平行である上部tを有している。
図24cを参照されたい。角度αは45°〜55°の範囲にあり、好ましくは50°である。膜205の底部から上部までの高さhは19〜22mmの範囲内にある。さらに、クッション40の全体の高さh0は、45〜55mmの範囲、好ましくは50〜51mmの範囲にあり、クッション40の全体の幅w0は65〜75mmの範囲、好ましくは69〜71mmの範囲にある。また、
図24fに示すように、クッションの寸法d2は29〜31mmの範囲にあり、寸法d3は41〜43mmの範囲にある。「標準的なサイズ」のクッション40の一実施形態では、クッション40の膜205は31〜34mmの範囲、好ましくは33mmの幅wと、19〜28mmの範囲、好ましくは22mmの高さhとを有しており、ノッチ255は19〜23mmの範囲、好ましくは21.5mmの深さd1を有している。クッションが「深い」サイズである他の実施形態では、クッション40の膜205は31〜34mmの範囲、好ましくは33mmの幅wと、19〜28mmの範囲、好ましくは22mmの高さhとを有しており、ノッチ255は22〜27mmの範囲、好ましくは24mmの深さd1を有している。クッションがより広く、かつ/あるいは深さが浅い(「広い/浅い」)ようなさらに他の実施形態では、クッション40の膜205は35〜45mmの範囲、好ましくは41mmの幅wと、19〜28mmの範囲、好ましくは22mmの高さhとを有しており、ノッチ255は12〜20mmの範囲、好ましくは16mmの深さd1を有している。これらの寸法は、本発明の特定の実施形態について述べているものであり、同一形状を有しながらもサイズの異なるマスク(例えば、「小さい」サイズ対「大きい」サイズ)は異なる寸法を有するが、本発明の範囲内であるということが理解されるべきである。また、「標準」サイズのクッション、「深い」サイズのクッションおよび「広い/浅い」サイズのクッションを個別に提供してもよいが、これらのクッションを一セットのクッションとして一緒に提供してもよい。このクッションのセットにより、過剰な在庫なしで幅広い患者に良好な適合を提供することができる。
【0114】
開口235に隣接する膜205の側部sは、鼻梁領域43と唇領域41との間に湾曲部250(
図24c)を有している。湾曲部250は、開口235に向かって内側に湾曲している膨らんだ部分としてあらわされる。
図24fにおいて、湾曲部250は隣接する表面に対して外側に膨らんだようにあらわされている。また
図24eは、上方から見たときの、鼻梁領域における膜205に設けられたノッチ255の深さを示している。
図24dは、湾曲部250のさらに他の図と、下にあるリム225の形状に対する膜205の形状とを示している。湾曲部250は、頬が鼻に出会うひび割れにおいて鼻の側部に沿って良好な密閉を提供するのに役立つ。例えば、
図24cに示すように、湾曲部250は、皺において、ならびに鼻の側部に沿って密閉するためのより多くのゆとりが提供されるようにリム225のエッジから離されて配置される。頬領域41におけるリム225のエッジ240および膜205のエッジ230は、
図24cに示すように、お互いから遠ざかるように角度をなして広がり始める。膜205のエッジ230とリム225のエッジ240との間隔は、
図25e〜25iに示すように、唇領域42で最小となり、頬領域41で徐々に大きくなり、湾曲部250および鼻梁領域43で最大となる。
【0115】
開口245を規定するリム225の内側のエッジ240を
図24bに示す。開口245の底部の幅Wは38〜45mmの範囲にある。各側部の長さSは20〜23mmの範囲にある。上部の長さTは15〜20mmの範囲にある。低部から上部までの高さHは32〜36mmの範囲にある。これらの寸法、およびここで与えられる他の全ての寸法は、好ましい寸法であり、特定の用途に応じて帰ることができる。開口の形状は略台形形状として特徴付けられているが、この台形は、膜205の開口235の台形形状と同一の比率ではない。開口235は開口245よりも小さい。
【0116】
さらに、開口235および245は三角形状、あるいは他の台形ではない形状を有してもよい。またクッションの全体の形状は三角形状、あるいは他の台形ではない形状であってもよい。開口235および245ならびにクッションの形状は、互いに類似していてもよいし、異なっていてもよい。例えば、開口235は台形形状であり、開口245は三角形状であってもよい。
【0117】
移行線220から膜205のエッジまで測定した膜205の幅は、湾曲部250および鼻梁領域43において最大であり、頬領域41では小さくなり、唇領域42では最小となる。膜205は概して、鼻梁領域43、頬領域41および唇領域42において移行線220から遠ざかるように上向きに伸びている。鼻梁領域43において、膜205は、略一定の半径で内側に湾曲して、エッジ230で終わる。頬領域41において、膜205は、リム225のあたりで湾曲して、その後だいたいフレーム200の対向する底部に向けて角度をなしてリム225から遠ざかるように内側に曲がる。唇領域41では、リム225および膜は実質的に同一形状を有する。
図25d〜25iを参照されたい。
【0118】
マスクフレームとクッションとの接続システム
本発明のマスクは、マスクフレームとマスククッションとを互いに取り外せないように取り付けるというやり方で作製されてもよい。例えば、マスクフレームおよびクッションを、エルボーが別の部分として取り付けられることになる一つの部分として同一の材料から形成してもよい。あるいは、マスクフレームおよびクッションを同一あるいは異なる材料から二つの部分として形成してもよい。この場合、クッションおよびマスクシェルは取り外せない方法で取り付けられる。取り外せない方法での取り付けは、ともに成型することや、接着剤によって、またクリップや他の機械的な手段を用いることによって実現される。
【0119】
あるいは、マスクフレームとクッションとを、下で述べるような、マスクの寿命がくるまで、繰り返し、取り外してから再び取り付けることが可能であるような方法によって取り付けてもよい。これにより、効果的な洗浄および整備のための分解が可能である。あるいは、部品を使い古した場合の交換が可能である。
【0120】
本発明のマスクシェルとクッションとの接続システムは、マスクフレームとクッションとの組み合わせの製造を可能にし、これにより、クッションの係合のための力とクッションをフレームから離合させるための力とを独立して決定することが可能となる。この能力のおかげで、係合力が離合力と等しい、あるいは係合力が離合力よりも小さい、あるいは係合力が離合力よりも大きいマスク接続システムを製造することができる。
治療圧力が最大である時にマスクシステムに行使される力よりも小さい、あるいは大きい離合力を実現するように、接続システムを設計してもよい。
好ましくは、離合力(すなわちクッションをマスクフレームから取り外す力)は、最大の治療圧力がマスクチャンバ内で実現されている時にマスクシェルとクッションとの組み合わせに対して行使される力よりも大きい。フレームとクッションとの組み合わせに対してかかる力を参照して離合力の下限を設定することによって、治療圧力を加えている間にマスクが外れる可能性が減少する。
【0121】
最小の離合力は好ましくは、治療圧力によってかかる力を参照して決定されるが、最大の離合力は、不慮に外れるたり、ユーザをいらいらさせたりすることを防ぐように、マスクを手動ではずす時にユーザが楽に行使することができるような力と同じくらいの力であるべきである。好ましくは、移動の力は、ユーザが楽に行使するような力と同じくらいの大きさである。
クッションに対する係合力(これはクッションをマスクシェルに正しく接続するのに必要な力である)を予め定めておき、本発明の密閉および保持機構を採用することによって実現してもよい。
好ましくは、係合力はユーザが楽に行使する力と同じくらいの大きさである。本発明は大量生産された製品の範囲内での用途を有するので、好ましくは最大の係合力は対象となるユーザの人々によって行使される力と同じくらいの大きさである。臨床治療の設定では、対象となる人々は、患者にマスクを嵌めて利用する医療スタッフである。臨床治療以外の設定では、対象となる人々はエンドユーザの人々である。好ましくは、目標とする係合力は、マスクシェルとクッションとを都合のいいやり方で操作する際に対象となる人々が行使するであろう好ましい係合力を考慮して決定される。当然のことながら、これらの原則は離合力にも同様に適用される。
【0122】
鼻用マスクアセンブリ10の一実施形態においては、クッション40をフレーム20に係合させる、すなわち保持して密閉させるために改良された機構が用いられる。
図27a〜29dを参照されたい。保持および密閉機構があれば、クッション40を保持し、フレーム20に対してしっかりした密閉を形成するような一つの動きで、クッション40をマスクフレーム20に嵌めることができる。フレーム20上のチャネル26の外壁30は、その周りに複数の切り下げ部33が間隔をあけて配置されるように設けられている。切り下げ部33は部分的にあるいは完全に外壁30を貫通することができる。内壁28および外壁30の内部表面には軽いテーパが設けられており、フレーム20へのクッション40の取り付けを容易にする。クッション40は側壁215を有している。
図25dに示すように、側壁215は約5mmの幅bを有する。側壁215は複数のリップ44を有している。これらは切り下げ部33を整合するように側壁215の周りに間隔をあけて配置されている。各保持リップ44は、クッション40をチャネル26に挿入しやすくするためにテーパがつけられた先端45と保持面431を有している。保持面431は、切り下げ部33をつかまえ、かつクッション40とフレーム20との間に所定の分離力がかかるまでフレーム20からクッション40が離れるのを防ぐように形成されている。好ましくは、所定の分離力は、クッション40をチャネル26に挿入するための力よりも大きく設計される。側壁215上には、端の方に上側密閉リップ46および下側密閉リップ47が配置されている。上側および下側密閉リップ46および47は、側壁215から外側に伸びており、側壁42の周囲を通っている。密閉リップ46および47に対向して上側および下側密閉リップ49および48が設けられており、これらは側壁215から内側に伸びており、側壁215の内側の周辺部を通っている。保持リップ44の反対側に側壁215の内側表面は解放部50を有しており、それによりクッションの壁とチャネルとの間に、
図27bおよび27eに示すようにクッション40の壁が解放部50に曲がることを可能にする空間を作り出し、クッション40の挿入をより簡単にする。解放部50は各保持リップ44のちょうど反対に配置することができる。あるいは解放部50は側壁215の内側の周辺部にずっと伸びていてもよい。
【0123】
本発明の一実施形態によるクッション40のフレーム20への組み立てをここで説明する。まずクッション40をチャネル26にだいたい整合させる。
図27a参照。内壁28は外壁30よりもわずかに高く、クッション40をチャネル26に入れる前にチャネル26に対してクッションを位置合わせするのに役立つ。続いてクッション40をチャネル26に向けて動かす。
図27b参照。各保持リップ44の先端45が外壁30の上部と係合し、変形し始める。側壁215の解放部50によって、クッション40をフレーム20に挿入するのに必要な力を大きく増やさなくてもこの変形が可能となる。密閉リップ46〜49がチャネル26の内壁28および外壁30のそれぞれの表面と接触する。クッション40を、チャネル床部32にクッションの底が着くまでチャネル26にさらに挿入する。
図27c参照。密閉リップ46〜49は内壁28および外壁30と完全に接触している。各保持リップ44はそれぞれの切り下げ部33に入っているが、まだ側壁215の変形は残っており、これは解放部50に収容される。そして、エラストマー(Silastic(商標))の圧縮がチャネル26から緩くなるのでクッション40はわずかに引き戻され、各保持リップ44の保持面431をそれぞれの切り下げ部33に接触した状態で定位置に着く。このとき密閉リップ46〜49は内壁28および外壁30の周りで連続した密閉位置にある。
図27d参照。この引き戻しと定位置に着くこととが、クッション40がチャネル26内で適切に位置に着いたという触感でわかる信号をユーザに与える。切り下げ部33がこの位置でユーザから見えるように形成されていれば、保持面431が位置に着いたという視覚的な表示も提供されることになる。側壁215の変形は、一般的には、この時点でなくなって、解放部50は緩められた形状に戻る。クッション40をフレーム20からはずすためにチャネル26からクッション40をさらに引き戻すと、保持リップ44が下向きに変形する。
図27e参照。この側壁215の変形はここでも解放部50に収容される。保持リップ44の形状のおかげで、ユーザによる組み立て力と比べて、好ましいもっと強固な取り外し力が生じる。
【0124】
さらに、クッションの密閉リップまたは保持リップまたはこれら両方が、シリコーンであるような材料といった、時間が経つと例えば化学的な洗浄にさらされて膨張する(すなわち、少なくとも一方向においてサイズが増える)ような材料から形成されている場合、材料の広がりから生じる余分なサイズまたは体積はチャネル26内、つまり曲がっている密閉リップあるいは保持リップによって収容される。本発明のこの局面は、クッション材料の広がりはマスクシェルおよびクッションの密閉を危うくすべきではなく、それにより膨張し得る材料から形成された構成要素が使い物になる期間を長くするという点で、先行技術に対して有利である。
【0125】
先行技術は一般的には、クッション材料がフレームにしっかりと嵌まり、フレームとクッションとの間の一つ以上の経路を介してマスクチャンバから気体が漏れるのを防ぐ必要がある。また、いくつかのマスクは内部あるいは外部クリップを使用して、クッションをクリップとフレームとの間に挟む。このようなクッションクリップは、レスパイロニクスのコンフォートセレクトマスクおよび、個々に援用される米国特許第6,412,487号に記載されているレスメッド社のUltra Mirage(商標)マスクにおいて見られる。
【0126】
先行技術では、クッションは時間とともに広がる材料から形成されなければならず、材料が少なくとも一つの面内で、マスクフレームチャネルに嵌まったり、マスクフレームチャネルから外れることが困難となる、あるいはそうでなければクッションクリップを使用することが困難となる程度まで増えるという傾向がある。また、マスクチャンバから気体が逃げるのを防ぐための封止は、クッションの密閉部とマスクフレームチャネルとの間に現れる隙間のために妥協されている。先行技術の制約は、フレーム内に配置された密閉チャネルとクッション上に配置された密閉エッジとを有するマスクに言及して述べられている。しかしながら、同様の制約がこれらの特徴の配置を反対にした場合、言い換えると、密閉チャネルがクッション上に配置され、密閉エッジがマスクシェル上に配置される場合だけでなく、クッションとマスクシェルとのインタフェースが平坦な面状である場合にも当てはまる。
【0127】
マスクチャンバ内の治療圧力はマスク組み立て中には実現されていないので、係合圧力の選択は、必ずしも治療中に行使される力を参照して決定されなくてもよい。それよりもむしろ、本発明の接続システムを、離合力よりも小さい係合力を実現するように作製することが可能である。係合力が離合力よりも小さいというこのような構成は、いかなる任意の人口母集団でも、一般的には、押す力を発揮する(つまり物体をつかみながら、定まった点の方に片手あるいは両手で動かず場合)能力よりもむしろ、引く力を発揮する(つまり、物体をつかみながら開始点から片手あるいは両手で動かす場合)能力があるというデータに一致する。
上述の実施形態は、例えば、クッションが時間が経つと膨張する例えばシリコーンのような材料から形成されている場合のように、構成要素の寸法が時間が経つと変化し得るにもかかわらず、離合力が係合力よりも大きいという関係を保つことができる。
【0128】
また本発明の実施形態は、クッションのような少なくとも一つの構成要素が、時間が経つと摩擦特性を失っていく傾向にある材料、例えば、化学変化や患者の皮脂といった周囲の汚染物質の吸収のために「脂ぎって」くるようになるシリコーンで形成されている場合において、摩擦による適合が失われるという先行技術の制約も克服する。したがって、本発明は、時間が経つとフレームとクッションとの係合効果がなくなってくるという先行技術の問題点に、それらの間の摩擦が失われていくにもかかわらず、対処することができる。
本発明はストラップ、クリップあるいは他の付加的な保持装置の必要性を教示してはいないが、フレームとクッションとの係合をよりしっかりとしたものにするために、このような装置を製造時に含めることができる。あるいは、最大の治療圧力がかかっている間係合を維持しつつ、対象となる人々について適切であると考えられる上限に一致している離合力を実現するのに必要とされる設計上の許容差を減少するために、このような装置を製造時に含めてもよい。
【0129】
クッション40は少なくとも1つの密閉リップを含んでおり、この密閉リップがフレームとクッションとの境界面を介してマスクチャンバから気体が抜けるのを防ぐように働く。好ましくは密閉リップは2つあり、密閉リップのそれぞれとフレームチャネル26との接触点は、クッションをフレームに取り付けたり、フレームから外したりする際に生じる摩擦を、封止を妥協することなく最小限にするように比較的小さい。
1つの密閉リップが用いられている場合には、適切な密閉状態を実現するための密閉リップの構成は、一旦それが定位置に配置されたら、同一材料からなる2つ以上の密閉リップを採用した場合よりも大きな摩擦力を行使することが必要となる。
【0130】
摩擦の源を制御することで、係合力および離合力、すなわちクッションとフレームを係合させたり離したりするのに必要な力に影響を及ぼすことができる。好ましい目的は、予想されるクッションを使うことができる寿命の間、これらの力に定まった限界を持たせ続けることである。
【0131】
側壁の解放部50も、クッション40とフレーム20とを組み立てたり分解したりする際の側壁215の変形に対応し、それによって組み立て/分解に必要な力を低減する。これは、クッション40が、例えばシリコーンのように、柔軟ではあるが一般的にはわずかに圧縮され得る材料から形成されている場合に特に重要である。あるいは側壁215の変形に対応するために、内壁28が、それぞれの切り下げ部33の反対に切り下げ部29を備えることもできる。
図28参照。切り下げ部29(および/あるいは解放部50)は、予想される側壁の変形に最もよく対応するという要望通りのサイズで構成することができる。あるいは異なる組み合わせの密閉リップ46〜49を用いることもできる。例えば、
図29a(密閉リップ47および48)、
図29b(密閉リップ46および49)、
図29c(密閉リップ48および49)、ならびに
図29d(密閉リップ46および47)を参照されたい。密閉リップおよび保持リップのほかの構成を用いることもできる。この構成は、クッションをフレームに密閉する機能をクッションとフレームとの係合機能および保持機能から分離し、それぞれは、装置の構成および製造において独立して制御され、最適化されることになる。
【0132】
図32a−1〜32c−2は、本発明の他の実施形態による、フレーム20とクッションとの係合を示している。この実施形態において、側壁215が変更されており、同様に側壁215を受けるチャネル216も変更されている。
図32a−1〜32a−2は係合前のフレームとクッションとを示し、
図32b−1〜32b−2は係合中のフレームとクッションとを示し、
図32c−1〜32c−2は完全に係合したフレームとクッションとを示す。
【0133】
この実施形態では、好ましくは側壁215は、側壁215の遠い側の端に一体ラグ215aを有している。側壁215は、ラグ215aが側壁215の方に曲がることを可能にする切り下げ部215bを有している。挿入時(
図32b−1〜32b−2)には、ラグ215aは、チャネル26内の突起26aを越えて押し進められるまで、切り下げ部215b内に曲がる。したがって、ラグの先端は正しい位置で弾性的にロックされるように配置されて、クッション40が完全にしっかりとフレーム20に接続される。接続された状態では、鼻の空洞から加圧されたガスが逃げないように、側壁215がフレーム20との間にしっかりした密閉を提供する。ラグ215aの先端と突起26aとの係合により、クッションをフレームに係合した状態に維持する保持力が与えられる。離すためには、患者は、ラグ215aを変形させて突起26aを乗り越えさせるのに十分な力で、側壁215をチャネル26から引っ張る。係合および離合はともに、チャネル26の壁と側壁215との間の摩擦性の接触を克服するのに十分な力を必要とする。突起26aの角度は挿入方向から実質的に遠ざかっているので、突起26aは、クッションをマスクフレームから分解する分解力と比べて好ましいより低い挿入力を可能にする「とげ」とほとんど同じように作用する。
【0134】
図示された実施形態では、側壁215の遠い端にあるラグ215aは、クッションの呼吸用空洞の方に、ほぼ内側に伸びている。しかしながら、
図32eに示すように、ラグ215aはクッション40の呼吸用空洞からほぼ外側に伸びて、フレーム20の外壁30上に設けられた突起26aと係合してもよい。
【0135】
図40〜41はフレーム20の他の実施形態を示している。このフレームは、フレーム20とクッション40との係合を容易にするように構成されている。具体的には、フレームの本体20aは、外壁30の外側表面上に位置合わせ用標識A1、例えばダイヤモンド、線、色、矢印等を有している。
図40は外壁30の上側の部分に設けられた単一の位置合わせ用標識A1を示しており、
図41は外壁30の下側の部分に設けられた一対の位置合わせ用標識A1を示している。
【0136】
クッション40は、その外側の表面に、クッション40とフレーム20とが互いに係合したときにフレーム20上に設けられた位置合わせ用標識A1と整合するように配置された位置合わせ用標識A2、例えばダイヤモンド、線、色、矢印等を有している。
図38B、39Bおよび42は、鼻梁領域のクッション40の外側表面に設けられた単一の位置合わせ用標識A2を示しており、
図43は唇領域のクッション40の外側表面に設けられた一対の位置合わせ用標識A2を示している。クッション40とフレーム20とが互いに整合すると、フレーム20の上側部分の位置合わせ用標識A1がクッション40の鼻梁領域の位置合わせ用標識A2と整合する。同様に、フレーム20の下側部分に設けられた一対の位置合わせ用標識A1はクッション40の唇領域の一対の位置合わせ用標識A2と整合する。フレーム20およびクッション40上の位置合わせ用標識A1、A2の整合によって、フレーム20とクッション40とが正しく位置合わせされ、互いに対して正しく向けられることが確実となる。つまり、患者は、確実にフレーム20およびクッション40上の位置合わせ用標識A1、A2を正しく整合させることで、フレーム20とクッション40とを正しく係合することができる。
【0137】
位置合わせ用標識A1、A2は、いかなる適切な構成、例えばダイヤモンド、線、色、矢印等を有してもよい。またフレーム20およびクッション40上に、数が対応していれば位置合わせ用標識A1、A2を何個設けてもよい。図示された実施形態では、フレーム20の上側部分およびクッション40の鼻梁部分は、フレーム20の下側部分およびクッション40の唇部分とは異なる数の位置合わせ用標識A1、A2を有している。しかしながら、位置合わせ用標識A1、A2が、フレーム20とクッション40とを正しい向きで正しく係合させることを容易にするように配置されている限り、フレーム20の上側部分と下側部分とが同じ数の位置合わせ用標識A1を、クッション40の鼻梁領域と唇領域とが同じ数の位置合わせ用標識A2を有してもよい。またフレーム20とクッション40との係合を容易にするために、位置合わせ用標識A1、A2をフレーム20およびクッション40の外側表面のいかなる適切な位置に配置してもよい。
【0138】
図40に示すように、フレーム20は、例えばダイヤモンド、線、色、矢印等の位置合わせ用標識A1を、フレーム20とヘッドギアアセンブリ80との係合を容易にするように構成されたサイドフレーム部材20b上に有してもよい。具体的には、ヘッドギアアセンブリ80のロッククリップ82が、その外側表面上に、ロッククリップ82とフレーム20とが係合する時にフレーム20上に設けられた位置合わせ用標識A1と整合するように配置された位置合わせ用標識A2、例えばダイヤモンド、線、色、矢印等を有してもよい。
【0139】
他の局面
鼻用クッションは、上唇、頬といった患者の鼻の周囲の顔の特徴とともに、鼻の形状およびサイズを考慮に入れて設計されていた。
図30〜31を参照されたい。ある種のNPPV治療を使いそうな、あるいは必要とする患者のサイズおよび形状に関する統計学的な情報はほとんどないが、出願人は、精選された量の基準を、患者人口の圧倒的多数(例えば患者人口の80%)に適合するクッション40のひな型を統計的に作るために用いることができることを発見した。例えば、クッション40を、年齢、性別あるいは人種にかかわらず、患者人口の60〜90%に対応するように構成してもよい。しかしながら、クッション40は、例えば患者人口の70%まで、あるいは80%までに対応するように構成されてもよい。鼻の幅、鼻の先端の突起および鼻の高さを用いれば、出願人は、鼻用マスクを必要とするであろう人々の多くの割合に、同じサイズのクッション/マスクで快適に対応することができるようなクッションを設計することができる。他の部分の人々に対応するためには、一つか二つのクッション/マスクをさらに設計することができる。患者の年齢、人種および性別は、クッションのひな型をコンピュータによって作製する際のファクターであり得る。また、鼻梁の上側部分とは接触しないようなクッションを設計することによって、出願人は、一般的にクッションの設計を制限していたファクターの一つをなくすことができる。
【0140】
図30および31に示すように、鼻の幅はクッション40の開口部分の幅を決定する。鼻の先端の突起は、組み合わされたクッションおよびマスクフレームの最小の深さを示す。これは鼻のふもとから計測する。深すぎるマスクは、鼻用の空洞内で極端なデッドスペースを生じさせ、これが望ましくないCO2の再呼吸や、マスクアセンブリの重心の顔から遠くなる方への動きを増加させて、安定性を低くする。鼻の高さは、幅/深さの寸法のセットの両方の間の距離を反映する。
【0141】
一般的に、クッションは、一つ以上の最大の寸法に適合するようなサイズとされる。しかしながら、鼻の出口での空きを実証する際にユーザによるテストが重要である。大きすぎたら、クッションは目の領域に干渉する。クッションは鼻梁上で低くとどまるように設計される。つまり可能性のあるこの領域での干渉は最小限にされる。クッションが小さすぎると、例えばクッションが軟骨であるかもしれないような鼻のやわらかい部分に沿って圧力をかけると、鼻の出口は部分的にあるいは完全にふさがれてしまい、レスパイロニクスシンプリシティマスクのようないくつかの先行技術のマスクで生じる可能性のある呼吸の制限を引き起こすかもしれない。鼻の幅、高さおよび先端の突起には、身体を計測して得られたデータの表を参照して到達することができる。
【0142】
マスクシステムの一実施形態において、マスクシステムは、フレームと複数のクッションとを含むように設計される。複数のクッションはそれぞれがフレームに接続可能である。各クッションは、複数のクッション、好ましくは1〜3個のクッションがあわせて患者人口の最大で95〜100%に対応するような人口比率に対応するように形成される。 したがって、複数のクッションは、それぞれ、フレームに接触する側では類似しているが、顔に接触する側では異なることになる。各クッションは、顔に接触する側で、複数のクッションの残りとは異なっている少なくとも1つのパラメータを有する。一実施形態において、各クッションは鼻梁領域で異なる。例えば、
図38A〜38Dに示すクッション40aは鼻梁領域において、
図39A〜39Dに示すクッション40bの鼻梁領域における形状に沿ったノッチ255bよりも深い形状に合わせたノッチ255aを有する。具体的には、ノッチ255aは22〜27mmの範囲、好ましくは24mmの深さdを有し、ノッチ255bは19〜23mmの範囲、好ましくは21.5mmの深さdを有する。図示されているように、ノッチ255aはノッチ255bの曲率半径よりも小さい曲率半径を有している。他の実施形態では、各クッションは膜の開口の幅が異なる。複数のクッションは、互いに対して区別するのに役立つように色分けされていてもよい。
【0143】
援用されたムーアらによる米国仮出願第60/402,509号の付録Aは、本発明の好ましい一実施形態によるマスクシステムのさまざまな写真を含んでいる。また付録Aは、本発明の他の実施形態によるマスクシステムのさまざまな写真も含んでいる。例えば、フレームの一実施形態は、酸素あるいは圧力ポートを有するフレームを示すように提供される。例えば、
図41を参照されたい。フレームにおける酸素あるいは圧力ポートのさらなる詳細は、ここに全体を援用する米国特許出願第09/504,234号に含まれている。また付録Aはマスクシステムについての教育的な情報も含んでいる。援用されたムーアらによる米国仮出願第60/402,509号の付録Bは、本発明において議論した2つの先行技術のマスクの写真を含んでいる。援用ムーアらによる米国仮出願第60/402,509号の付録Cは、2つのテストモデル(A+B)の写真を幅広く変化する鼻および顔の特徴と含んでおり、また、本発明のマスクアセンブリだけでなく、各モデルに接続された一つの先行技術のマスクを含んでいる。また付録Cは、本発明の一実施形態をMIRAGE(登録商標)マスクに用いられているクッションと比較している一連の写真も含んでいる。例えば、個々に援用するクオックらの米国特許第6,112,746号を参照されたい。一般的に言えば、本発明のマスクアセンブリは、サイズおよび形状が大いに異なるとしても、両方の鼻のモデルにだいたい一致した。マスククッション40は、モデルB上の変形にもつつがなく対応できた。先行技術のマスクアセンブリは鼻のモデルの形状、特に著しい隙間が見られる場合の小さい方の鼻のモデルの形状には適合しない傾向があった。一つの先行技術のモデル(米国特許第5,724,965号)は比較的不安定であり、モデルの頬で、特に小さい方の鼻のモデルの頬で揺れ動く傾向にあった。
【0144】
上述したさまざまな実施形態の構成要素、要素および特徴は、新しいマスクの実施形態を作り出すためのいかなる組み合わせ組み合わせや置換においても一緒に用いることができる。例えば、本発明は鼻用マスクに関連して述べられているが、その教示は、同様に、口―鼻用マスクおよびフルフェイスマスクにも適用可能である。
【0145】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることができる。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。