特許第6807375号(P6807375)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807375
(24)【登録日】2020年12月9日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】3Dプリンタ用レベリング装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/218 20170101AFI20201221BHJP
   B29C 64/124 20170101ALI20201221BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20201221BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20201221BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20201221BHJP
【FI】
   B29C64/218
   B29C64/124
   B33Y30/00
   B33Y10/00
   B33Y40/00
【請求項の数】29
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-502018(P2018-502018)
(86)(22)【出願日】2016年7月13日
(65)【公表番号】特表2018-520920(P2018-520920A)
(43)【公表日】2018年8月2日
(86)【国際出願番号】IL2016050753
(87)【国際公開番号】WO2017009832
(87)【国際公開日】20170119
【審査請求日】2019年6月14日
(31)【優先権主張番号】62/191,632
(32)【優先日】2015年7月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513131464
【氏名又は名称】ストラタシス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】グラチ, ウリ
(72)【発明者】
【氏名】カールソン, アンドリュー ジェームズ
【審査官】 関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】 特表平10−513130(JP,A)
【文献】 特開2012−096430(JP,A)
【文献】 米国特許第06305769(US,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0104241(US,A1)
【文献】 特表2007−503342(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第104742376(CN,A)
【文献】 米国特許第05437820(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0165969(US,A1)
【文献】 特開平06−179243(JP,A)
【文献】 米国特許第08875976(US,B2)
【文献】 特開2010−072034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00−64/40
B33Y 10/00、30/00、40/00
B22F 3/00− 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造(AM)システムによって堆積された1層の材料層をスキミングするように構成されたローラと、ローラに蓄積された材料を掻き取るように構成されたブレードと、ブレードによって掻き取られた材料を回収するように構成された槽と、槽内に回収された材料を、ローラの長さを超えて延在する槽の部分に移送するように構成されたオーガとを含む装置。
【請求項2】
オーガは槽の全長にわたって延在する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
オーガは槽内に収容される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
オーガは、オーガを長手軸線に沿って回転させるように構成されたモータと係合されている、請求項1〜3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
ブレードはローラの全長にわたって延在する、請求項1〜4のいずれかに記載の装置。
【請求項6】
ブレードの幅はローラからオーガまで延在する、請求項1〜5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
ローラの長さを超えて延在する槽の部分は、槽のその部分を密閉するように構成された蓋を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
槽は、ローラの長さを超えて延在する槽の部分と、ローラの長さに沿って延在する槽の第2部分との間に、圧力差が生じるように構成される、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
オーガは可変ピッチねじ山を含む、請求項1〜8のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
槽の部分は、逆流がローラに向かって放出されるのを防止するように構成された逆流チャネルを含む、請求項1〜のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
槽の筐体は、逆流がローラに向かって放出されるのを防止するように構成されたウィッキングチャネルを含む、請求項1〜10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
AMシステムは回転式3Dインクジェットプリンタである、請求項1〜11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
ローラは回転構築トレイから層をスキミングして落とすように構成される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
ローラは回転構築トレイの半径方向に延在する、請求項12又は13に記載の装置。
【請求項15】
ローラは、トレイの印刷ゾーン全体にわたって半径方向に延在する、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
ローラは、トレイの印刷ゾーンの一部分だけで半径方向に延在する、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
ローラは半径方向に静止している、請求項15又は16に記載の装置。
【請求項18】
ローラは、半径方向に移動するように構成されたステージに取り付けられている、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
各々がトレイの印刷ゾーンの異なる部分で半径方向に延在する、複数のローラを含む、請求項16に記載の装置。
【請求項20】
複数のローラは各々、異なる直径を有する、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
ローラは円錐形のローラである、請求項1218のいずれかに記載の装置。
【請求項22】
構築材料を1層ずつ吐出して物体を製造するように構成された吐出ユニットと、
吐出される構築材料を受け取るように配置された構築トレイであって、吐出ユニットが構築材料を吐出する間、回転するように構成される構築トレイと、
トレイ上に吐出された材料を平準化するように構成されたレベリングアセンブリであって、吐出された構築材料をスキミングするように構成され、構築トレイの半径方向に整列するローラと、ローラに蓄積された材料を掻き取るように構成されたブレードと、ブレードによって掻き取られた材料を回収するように構成された槽と、槽内に回収された材料をローラの長さを超えて延在する槽の部分に移送するように構成されたオーガとを含むレベリングアセンブリとを備えた、付加製造(AM)システム。
【請求項23】
オーガは槽の全長にわたって延び、かつ槽内に収容される、請求項22に記載の付加製造(AM)システム。
【請求項24】
オーガは、オーガを長手軸線に沿って回転させるように構成されたモータと係合されている、請求項22又は23に記載の付加製造(AM)システム。
【請求項25】
ローラは、トレイの印刷ゾーン全体にわたって半径方向に延在する、請求項2224のいずれかに記載の付加製造(AM)システム。
【請求項26】
ローラは、トレイの印刷ゾーンの一部分だけで半径方向に延在する、請求項2224のいずれかに記載の付加製造(AM)システム。
【請求項27】
ローラは半径方向に静止している、請求項25又は26に記載の付加製造(AM)システム。
【請求項28】
ローラは、半径方向に移動するように構成されたステージ上に取り付けられている、請求項26に記載の付加製造(AM)システム。
【請求項29】
各々がトレイの印刷ゾーンの異なる部分で半径方向に延在する、複数のローラを含む、請求項26に記載の付加製造(AM)システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2015年7月13日出願の米国仮特許出願第62/191632号の優先権の利益を、米国特許法第119条(e)項の下で主張するものであり、この仮出願の内容全体を参照によって本書に援用する。
【0002】
本願は、本願と同時に出願され、同時係属中であり、かつ本願と同一譲受人に譲渡された、Guy MENCHIKらによる「METHOD AND SYSTEM FOR 3D PRINTING」と題する米国仮特許出願(代理人整理番号63081)、Scott Wayne BEAVERらによる「WASTE DISPOSAL FOR 3D PRINTING」と題する米国仮特許出願(代理人整理番号63080)、Andrew James CARLSONらによる「OPERATION OF PRINTING NOZZLES IN ADDITIVE MANUFACTURE」と題する米国仮特許出願(代理人整理番号63083)、およびGuy MENCHIKらによる「METHOD AND SYSTEM FOR ROTATIONAL 3D PRINTING」と題するPCT特許出願(代理人整理番号62993)に関連し、それらの開示内容を参照によって本書に援用する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、その一部の実施形態では、自由造形製造に関し、さらに詳しくは、自由造形製造システム用のレベリング装置に関するが、それに限定されない。
【0004】
付加製造(AM)とは一般的に、物体のコンピュータモデルを利用して3D物体を製造するプロセスである。そのようなプロセスは、視覚化、デモンストレーション、および機械的プロトタイピングのみならず、ラピッドマニュファクチャリングをも目的として設計関連分野など様々な分野で使用される。
【0005】
任意のAMシステムの基本的動作は、3Dコンピュータモデルを薄い切片にスライスすること、その結果を二次元位置データに変換すること、および3D構造を1層ずつ構築するシステムのコントローラにデータを供給することで構成される。
【0006】
AMは、3D印刷、例えば3Dインクジェット印刷、積層物体製造、熱溶融堆積モデリング等を含め、数多くの異なる手法の製作方法を必然的に伴う。
【0007】
例えば3D印刷プロセスでは、1組のノズルを有する吐出ヘッドから構築材料を吐出して、支持構造上に層を堆積する。構築材料に応じて、層は次いで、適切な装置を用いて硬化または凝固させることができる。構築材料は、物体を形成するモデル材、および物体が構築されるときに物体を支持するサポート材を含むことができる。
【0008】
印刷プロセス中に、構築材料は従前の層の上に噴射され、高さが蓄積される。3D物体の高さを制御し、かつ水平面を維持するために、新たに噴射された未硬化の構築材料はスキミングローラの下を通過する。材料の一部分はローラによって除去され、回収槽に集積される。ローラアセンブリは通常、ローラ、掻取りブレード、回収槽、および吸引ポンプを含む。より長いローラの場合、材料を局所的に回収するために、複数の吸引点が使用される。ローラ槽要素の保守は、槽をアセンブリから取り外すことによって達成される。
【0009】
様々な3D印刷技術が存在し、全て同一出願人の例えば米国特許第6259962号明細書、第6569373号明細書、第6658314号明細書、第6850334号明細書、第7183335号明細書、第7209797号明細書、第7225045号明細書、第7300619号明細書、第7364686号明細書、第7500846号明細書、第7658976号明細書、第7962237号明細書、および第9031680号明細書、ならびに米国特許公開出願第20130040091号明細書に開示されており、それらの内容を参照によって本書に援用する。
【0010】
例えば米国特許第9031680号明細書は、複数の吐出ヘッドを有するAM装置と、複数の構築材料を製作装置に供給するように構成された構築材料供給装置と、製作および供給装置を制御するように構成された制御ユニットとを備えたシステムを開示している。このシステムは幾つかの動作モードを有する。1つのモードでは、製作装置の単一の構築走査サイクル中に全ての吐出ヘッドが動作する。別のモードでは、単一の構築走査サイクル中またはその一部分の間、吐出ヘッドの1つ以上が動作しない。
【発明の概要】
【0011】
本発明の一部の実施形態の態様では、アセンブリの槽に回収されたデブリをアセンブリの単一の出力部に向かって移送するための移送機構付きローラアセンブリを提供する。本発明の一部の実施形態では、移送機構は回収されたデブリをアセンブリから排出するための圧力を発生し、任意選択的にポンプの代わりに使用される。
【0012】
本発明の一部の実施形態の態様では、回転式3D印刷システムで動作するように適応されたローラアセンブリを提供する。本発明の一部の実施形態によれば、アセンブリの1つ以上のローラは、回転式3D印刷システムの半径方向に沿って整列される。一部の例示的実施形態では、ローラは、プリンタの回転軸線から異なる距離で、略同一線速度で層をスキミングするように適応される。
【0013】
本発明の一部の実施形態の態様では、付加製造(additive manufacturing)(AM))システムによって堆積された1層の材料層をスキミングするように構成されたローラと、ローラに蓄積された材料を掻き取るように構成されたブレードと、ブレードによって掻き取られた材料を回収するように構成された槽と、槽内に回収された材料を、ローラの長さを超えて延在する槽の部分に移送するように構成されたオーガ(auger)とを含む装置を提供する。
【0014】
任意選択的に、オーガは槽の全長にわたって延在する。
【0015】
任意選択的に、オーガは槽内に収容される。
【0016】
任意選択的に、オーガは、オーガを長手軸線に沿って回転させるように構成されたモータと係合されている。
【0017】
任意選択的に、ブレードはローラの全長にわたって延在する。
【0018】
任意選択的に、ブレードの幅はローラからオーガまで延在する。
【0019】
任意選択的に、ローラの長さを超えて延在する槽の部分は、槽のその部分を密閉するように構成された蓋を含む。
【0020】
任意選択的に、槽は、ローラの長さを超えて延在する槽の部分と、ローラの長さに沿って延在する槽の第2部分との間に、圧力差が生じるように構成される。
【0021】
任意選択的に、オーガは可変ピッチねじ山を含む。
【0022】
任意選択的に、ローラの長さ全体に延在するオーガのピッチは、槽の部分に延在するオーガのピッチより広い。
【0023】
任意選択的に、槽の部分は、逆流がローラに向かって放出されるのを防止するように構成された逆流チャネルを含む。
【0024】
任意選択的に、槽の筐体は、逆流がローラに向かって放出されるのを防止するように構成されたウィッキングチャネルを含む。
【0025】
任意選択的に、AMシステムは回転式3Dインクジェットプリンタである。
【0026】
任意選択的に、ローラは回転構築トレイから層をスキミングして落とすように構成される。
【0027】
任意選択的に、ローラは回転構築トレイの半径方向に延在する。
【0028】
任意選択的に、ローラは、トレイの印刷ゾーン全体にわたって半径方向に延在する。
【0029】
任意選択的に、ローラは、トレイの印刷ゾーンの一部分だけで半径方向に延在する。
【0030】
任意選択的に、ローラは半径方向に静止している。
【0031】
任意選択的に、ローラは、半径方向に移動するように構成されたステージに取り付けられている。
【0032】
任意選択的に、装置は、各々がトレイの印刷ゾーンの異なる部分で半径方向に延在する、複数のローラを含む。
【0033】
任意選択的に、複数のローラは各々、異なる直径を有する。
【0034】
任意選択的に、ローラは円錐形のローラである。
【0035】
本発明の一部の実施形態の態様では、構築材料を1層ずつ吐出して物体を製造するように構成された吐出ユニットと、吐出される構築材料を受け取るように配置された構築トレイであって、吐出ユニットが構築材料を吐出する間、回転するように構成されて成る構築トレイと、トレイ上に吐出された材料を平準化するように構成されたレベリングアセンブリであって、吐出された構築材料をスキミングするように構成され、構築トレイの半径方向に整列するローラと、ローラに蓄積された材料を掻き取るように構成されたブレードと、ブレードによって掻き取られた材料を回収するように構成された槽と、槽内に回収された材料をローラの長さを超えて延在する槽の部分に移送するように構成されたオーガとを含んで成るレベリングアセンブリとを備えた、AMシステムを提供する。
【0036】
任意選択的に、オーガは槽の全長にわたって延び、かつ槽内に収容される。
【0037】
任意選択的に、オーガは、オーガをその長手軸線に沿って回転させるように構成されたモータと係合されている。
【0038】
任意選択的に、ローラは、トレイの印刷ゾーン全体にわたって半径方向に延在する。
【0039】
任意選択的に、ローラは、トレイの印刷ゾーンの一部分だけで半径方向に延在する。
【0040】
任意選択的に、ローラは半径方向に静止している。
【0041】
任意選択的に、ローラは、半径方向に移動するように構成されたステージ上に取り付けられている。
【0042】
任意選択的に、装置は、各々がトレイの印刷ゾーンの異なる部分で半径方向に延在する、複数のローラを含む。
【0043】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0044】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1A図1Aは、本発明の一部の実施形態に係るAMシステムの略図である。
図1B-1C】図1B−1Cは、本発明の一部の実施形態に係るAMシステムの略図である。
図1D図1Dは、本発明の一部の実施形態に係るAMシステムの略図である。
【0046】
図2A-2C】図2A−2Cは、本発明の一部の実施形態に係る印刷ヘッドの略図である。
【0047】
図3A-3B】図3A−3Bは、本発明の一部の実施形態に係る座標変換を実証する略図である。
【0048】
図4A-4B】図4A−4Bは、本発明の一部の実施形態に係る例示的レベリングアセンブリの斜視図および正面図である。
【0049】
図5図5は、本発明の一部の実施形態に係る例示的レベリングアセンブリの長さに沿って切断した断面図である。
【0050】
図6A-6B】図6A−6Bは、本発明の一部の実施形態に係る例示的レベリングアセンブリの長さの一部分に沿って切断した断面図の詳細および同レベリングアセンブリの圧力差領域を切断した断面図である。
図6C図6Cは、本発明の一部の実施形態に係る回収槽の筐体を横切って切断した断面図である。
【0051】
図7A-7B】図7A−7Bは、本発明の一部の実施形態に係るオーガの長さに沿って切断した2つの例示的断面図である。
【0052】
図8A-8C】図8A−8Cは、本発明の一部の実施形態に係る、印刷ゾーンをカバーするレベリングアセンブリの略図である。
【0053】
図9図9は、本発明の一部の実施形態に係る構築トレイ上の円錐形のローラの略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明は、その一部の実施形態では、自由造形製造に関し、さらに詳しくは、自由造形製造システム用のレベリング装置に関するが、それに限定されない。
【0055】
本発明の一部の実施形態では、ローラから材料を掻き落とすためのブレードと、ローラによってスキミングされた材料をブレードから取り除き、かつローラから掻き落とされた材料を1つの領域、例えばローラの一端に移送するためのオーガとを含む、ローラアセンブリを提供する。本発明の一部の実施形態によれば、オーガは槽をきれいにし、ローラアセンブリの清掃に必要な保守時間の長さを短縮する。デブリが回収される単一の出力部は、複数の吸引点を制御するために通常使用される領域選択弁スイッチを不要にしてもよい。
【0056】
本発明の一部の実施形態によれば、オーガはローラアセンブリと共に、回収された構築材料をアセンブリから排出するための圧力を発生するように設計される。移送機構と容積変位ポンプ作用の組合せは、槽からデブリを除去するために通常使用される吸引ポンプを排除するために使用することができる。
【0057】
本発明の一部の実施形態によれば、ローラは回転式3D印刷システムに一体化され、かつシステムの回転運動中に構築材料を平準化するように適応される。通常、ローラはモータによってその長手軸を中心に回転する。
【0058】
本発明の一部の実施形態によれば、ローラは、放射状の印刷ゾーン全体に沿って延在する、例えば回転式3Dプリンタの全印刷パスに延在する、長さを有するように定められる。本発明の別の実施形態では、ローラアセンブリは、回転式3Dプリンタの1つ以上の(ただし全パスより少ない)パスだけに延在するローラを含み、放射状印刷ゾーン全体は、半径方向に移動する移動ステージ上にローラを軸線方向に取り付けることによってカバーされる。
【0059】
本発明のさらに別の実施形態では、ローラアセンブリは、例えば半径方向に異なる位置に配置された複数のローラを含む。
【0060】
任意選択的に、複数のローラが使用される場合、吐出された材料の層から材料をスキミングして落とすときのローラの線速度が、回転軸線から異なる距離で略同一になるように、回転軸線からより遠くの平準化パスにはより大きい直径のローラが使用され、かつ回転軸線により近い平準化パスにはより小さい直径のローラが使用される。一部の例示的実施形態では、ローラは、印刷ゾーンの中心に向かってテーパする円錐形の形状を有するように定められる。テーパ角度は通常、印刷ゾーンの回転軸線から異なる距離で同一線速度がもたらされるように選択される。代替的に、円筒形のローラを使用することができる。
【0061】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるか、および/または図面において例示される構成要素および/または方法の組み立ておよび構成の細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。
【0062】
本実施形態の方法およびシステムは、物体の形状に対応する構成パターン状に複数の層を形成することによって、3D物体をコンピュータ・オブジェクト・データに基づいて1層ずつ製作する。コンピュータ・オブジェクト・データは、標準テッセレーション言語(STL)またはステレオリソグラフィ輪郭(SLC)フォーマット、仮想現実モデリング言語(VRML)、付加製造ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴン・ファイル・フォーマット(PLY)、またはコンピュータ支援設計(CAD)に適したいずれかの他のフォーマットを含め、それらに限らず、任意の公知のフォーマットにすることができる。
【0063】
本書で使用する用語「物体」は、物体全体またはその一部分を指す。
【0064】
各層は、二次元表面を走査してそれをパターン化するAM装置によって形成される。走査中に、装置は二次元の層または表面上の複数の目標位置を訪れ、各目標位置または1群の目標位置について、目標位置または目標位置群が構築材料によって占有されるべきか否か、かつどのタイプの構築材料をそこに送達すべきかを決定する。決定は、表面のコンピュータ画像に従って行われる。
【0065】
本発明の好適な実施形態では、AMは3D印刷を、さらに好ましくは3Dインクジェット印刷を含む。これらの実施形態では、構築材料は1組のノズルを有する吐出ヘッドから吐出され、構築材料を支持構造上に層状に堆積する。AM装置はこうして、占有すべき目標位置に構築材料を吐出し、かつ他の目標位置を空所のままにする。装置は通常、複数の吐出ヘッドを含み、各吐出ヘッドは異なる構築材料を吐出するように構成することができる。したがって、異なる目標位置を異なる構築材料が占有することができる。構築材料の種類は主に、モデル材およびサポート材の2つのカテゴリに分類することができる。サポート材は、製作プロセス中に物体もしくは物体の一部分を支持するため、かつ/または他の目的で、例えば中空物体もしくは多孔質物体を提供するために、支持マトリクスまたは支持構造として働く。支持構造は、例えば支持強度を高めるために、さらにモデル材要素を含んでよい。
【0066】
モデル材は一般的に、AM用に調合された組成物であり、それ自体で、すなわち他の物質と混合または結合する必要なく、3D物体を形成することができる。
【0067】
最終的な3D物体はモデル材、またはモデル材の組合せ、またはモデル材とサポート材もしくはそれらの改質(例えば硬化後)との組合せから作製される。これらの作業は全て、立体自由造形の当業者にはよく知られている。
【0068】
本発明の一部の例示的実施形態では、物体は2つ以上の異なるモデル材を吐出することによって製造され、各材料はAMシステムの異なる吐出ヘッドから吐出される。材料は、任意選択的にかつ好ましくは、印刷ヘッドの同一パス中に層状に堆積される。層内の材料および材料の組合せは、物体の所望の性質に従って選択される。
【0069】
本発明の一部の実施形態に係る、物体112のAMに適したシステム110の代表的かつ非限定的実施例を、図1Aに示す。システム110は、複数の吐出ヘッドを含む吐出ユニット16を有するAM装置114を備える。各ヘッドは、下述する図2A図2Cに示すように、1つ以上のノズル122のアレイを含み、液状構築材料124がそれを介して吐出されることが好ましい。任意選択的に、構築材料は、ポリマー材料、例えば光ポリマー材料である。任意選択的に、他の材料が使用される。
【0070】
装置114は3D液滴付着、例えばインクジェット印刷装置であることが好ましいが、必須ではない。その場合、吐出ヘッドは印刷ヘッドであり、構築材料はインクジェット技術を介して吐出されることが好ましい。用途によっては、AM装置は3Dインクジェット印刷技術を採用する必要がない場合があるので、これは必ずしも該当しない。本発明の様々な例示的実施形態に従って構想されるAM装置の代表的実施例は、熱溶解積層造形装置および熱溶解材料堆積装置を含むが、それらに限定されない。
【0071】
各吐出ヘッドは任意選択的にかつ好ましくは構築材料リザーバを介して供給され、リザーバは任意選択的に、温度制御ユニット(例えば温度センサおよび/または加熱装置)および材料レベルセンサを含んでよい。構築材料を吐出するために、例えば圧電式インクジェット印刷技術の場合のように、吐出ヘッドノズルを介して材料の液滴が選択的に堆積されるように、電圧信号が吐出ヘッドに印加される。各ヘッドの吐出率は、ノズルの個数、ノズルの種類、および印加電圧の信号レート(周波数)に依存する。そのような吐出ヘッドは、立体自由造形の当業者には知られている。
【0072】
吐出ノズルまたはノズルアレイの総数は、吐出ノズルの半数がサポート材を吐出するように設計され、かつ吐出ノズルの半数がモデル材を吐出するように設計され、すなわちモデル材を噴出するノズルの個数がサポート材を噴出するノズルの個数と同数になるように、選択されることが好ましいが、必須ではない。図1Aの代表的実施例には4つの吐出ヘッド16a、16b、16c、および16dが示される。ヘッド16a、16b、16c、および16dの各々がノズルアレイを有する。この実施例では、ヘッド16aおよび16bはモデル材用に設計することができ、ヘッド16cおよび16dはサポート材用に設計することができる。こうして、ヘッド16aは第1モデル材を吐出することができ、ヘッド16bは第2モデル材を吐出することができ、ヘッド16cおよび16dは両方ともサポート材を吐出することができる。代替的実施形態では、例えばヘッド16cおよび16dは、サポート材を吐出するための2つのノズルアレイを有する単一のヘッドに組み合わされてよい。
【0073】
それにも関わらず、それは本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、モデル材吐出ヘッド(モデルヘッド)の個数およびサポート材吐出ヘッド(サポートヘッド)の個数は異なってもよいことを理解されたい。一般的に、モデルヘッドの個数、サポートヘッドの個数、およびそれぞれのヘッドまたはヘッドアレイの各々におけるノズルの個数は、サポート材の最大吐出率とモデル材の最大吐出率との間に所定の比率αがもたらされるように選択される。所定の比率αの値は、形成される各層において、層中のモデル材の高さが同じ層中のサポート材の高さに等しいことを確実にするように選択されることが好ましい。αの典型値は約0.6〜約1.5である。
【0074】
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
【0075】
例えばα=1の場合、全てのモデルヘッドおよび支持ヘッドが作動しているときに、サポート材の総吐出率はモデル材の総吐出率と略同一である。
【0076】
好適な実施形態では、ノズルp個のアレイm個を各々有するモデルヘッドM個、およびノズルq個のアレイs個を各々有するサポートヘッドS個が存在するので、M×m×p=S×s×qとなる。M×m個のモデルアレイおよびS×s個のサポートアレイの各々は、別個の物理ユニットとして製造することができ、それをアレイ群に組み立てたり、そこから分解したりすることができる。この実施形態では、そのようなアレイの各々は、任意選択的にかつ好ましくは、それ自体の温度制御ユニットおよび材料レベルセンサを含み、かつその動作のために個々に制御された電圧を受け取る。
【0077】
AM装置114は硬化装置324をさらに含むことができ、それは、堆積された材料を硬化させる光、熱などを放出するように構成された任意の装置を含むことができる。例えば硬化装置324は1つ以上の放射源を含むことができ、それは、使用されるモデル材に応じて、例えば紫外線もしくは可視光もしくは赤外線ランプ、または他の電磁放射源、または電子ビーム源とすることができる。本発明の一部の実施形態では、硬化装置324はモデル材を硬化または凝固させるように働く。
【0078】
一部の例示的な実施形態では、吐出ヘッドおよび放射源は、作業面として働くトレイ及び/又は印刷プラテン360上を往復運動するように動作することが好ましいフレームまたはブロック128に取り付けられることが好ましい。本発明の一部の実施形態では、放射源は、吐出ヘッドによって吐出されたばかりの材料を少なくとも部分的に硬化または凝固するために、放射源が吐出ヘッドの後に追従するようにブロックに取り付けられる。トレイ360は水平に配置される。一般的な取決めに従って、X‐Y‐Zデカルト座標系はX‐Y面がトレイ360と平行になるように選択される。トレイ360は、垂直方向に(Z方向に沿って)、通常は下方に移動するように構成されることが好ましい。本発明の様々な例示的実施形態では、AM装置114は1つ以上のレベリング装置132、例えばローラ326をさらに備える。レベリング装置326は、新たに形成された層の厚さを、その上に次の層が形成される前に矯正し、平準化し、かつ/または確立するように働く。レベリング装置326は、レベリング中に発生した余分な材料を回収するために、廃棄物回収装置136を含むことが好ましい。廃棄物回収装置136は廃棄物タンクまたは廃棄物カートリッジに材料を送達する何らかの機構を含んでよい。
【0079】
一部の例示的な実施形態における使用中に、ユニット16の吐出ヘッドは、本書ではX方向と呼ぶ走査方向に移動し、それらがトレイ360上を通過する過程で所定の構成に構築材料を選択的に吐出する。構築材料は通常、1種類以上のサポート材および1種類以上のモデル材を含む。ユニット16の吐出ヘッドの通過に続いて、放射源126によるモデル材の硬化が行われる。堆積されたばかりの層のためのヘッドの出発点に戻るヘッドの逆方向の通過中に、所定の構成に従って構築材料の追加吐出が実行されてよい。吐出ヘッドの順方向または逆方向の通過中に、こうして形成された層は、レベリング装置の順方向および/または逆方向の移動中に好ましくは吐出ヘッドの経路に従うレベリング装置326によって矯正される。吐出ヘッドがX方向に沿ってそれらの出発点に戻ると、吐出ヘッドは、本書ではY方向と呼ぶ割出し方向に沿って別の位置に移動し、X方向に沿った往復運動によって同じ層を構築し続けてよい。代替的に、吐出ヘッドは、順方向および逆方向の移動の間に、または2回以上の順方向‐逆方向移動の後に、Y方向に移動してよい。単一の層を完成させるために吐出ヘッドによって実行される一連の走査は、本書で単一走査サイクルと呼ばれる。
【0080】
層が完成すると、次に印刷される層の所望の厚さに応じて、トレイ360はZ方向に所定のZレベルまで下降する。この手順は3D物体112が層毎に形成されるように繰り返される。
【0081】
別の実施形態では、トレイ360は、層内で、ユニット16の吐出ヘッドの順方向および逆方向の通過の間に、Z方向に変位されてよい。そのようなZ変位は、レベリング装置を1方向に表面と接触させ、かつ他の方向の接触を防止するために実行される。
【0082】
システム110は任意選択的にかつ好ましくは、構築材料容器またはカートリッジを含みかつ複数の構築材料をAM装置114に供給する、構築材料供給システム330を備える。
【0083】
制御ユニット340はAM装置114および任意選択的にかつ好ましくは供給システム330をも制御する。制御ユニット340は通常、制御動作を実行するように構成された電子回路を含む。制御ユニット340は、コンピュータ・オブジェクト・データ、例えば標準テッセレーション言語(STL)フォーマットなどの形式でコンピュータ可読媒体に表されたCAD構成に基づいて、製作命令に関するデジタルデータを送信するプロセッサ154と通信することが好ましい。通常、プロセッサ154は、コンピュータ・オブジェクト・データを記憶するため及びコンピュータ・オブジェクト・データに基づく製作指示に関するデータを記憶するための記憶ユニット及び/又は記憶能力を含む。通常、制御ユニット340は、各吐出ヘッドまたはノズルアレイに印加される電圧、およびそれぞれの印刷ヘッドの構築材料の温度を制御する。
【0084】
製造データが制御ユニット340にロードされると、制御ユニットはユーザの介入なしに動作することができる。一部の実施形態では、制御ユニット340は、例えばデータプロセッサ154を用いて、あるいはユニット340と通信するユーザインタフェース116を用いて、オペレータから追加の入力を受信する。ユーザインタフェース116は、例えばキーボード、タッチスクリーンなど、しかしそれらに限らず、当業界で公知の任意の種類とすることができる。例えば制御ユニット340は、追加の入力として、1つ以上の構築材料の種類および/または属性、例えば色、特性歪み、および/または転移温度、粘度、電気特性、磁気特性などを受信することができるが、それらに限定されない。他の属性および属性群も考えられる。
【0085】
本発明の一部の実施形態に係る物体のAMに適した回転システム10の別の代表的かつ非限定的実施例を図1B図1Dに示す。図1B図1Dは、システム10の上面図(図1B)、側面図(図1C)、および等角図(図1D)を示す。
【0086】
本実施形態では、システム10は、トレイ及び/又は印刷プラテン12と、各々が複数の分離したノズルを有する複数のインクジェット印刷ヘッド16とを備える。トレイ12は円板の形状を有することができ、あるいは環状とすることができる。垂直軸線を中心に回転することができることを前提として、非円形の形状も考えられる。通常、システム10はまた、1つ以上の放射線源18及び1つ以上のレベリング装置32を含む。
【0087】
トレイ12およびヘッド16は、任意選択的にかつ好ましくは、トレイ12とヘッド16との間の相対的回転運動ができるように取り付けられる。これは、(i)トレイ12がヘッド16に対して垂直軸線14を中心に回転するようにトレイを構成することによって、(ii)ヘッド16がトレイ12に対して垂直軸線14を中心に回転するようにヘッドを構成することによって、または(iii)トレイ12およびヘッド16の両方が垂直軸線14を中心に、しかし異なる回転速度で回転(例えば逆方向に回転)するように構成することによって、達成することができる。以下の実施形態は、トレイが、ヘッド16に対して垂直軸線14を中心に回転するように構成された回転トレイである構成(i)を特に重点的に記載するが、本願は構成(ii)および(iii)をも企図していることを理解されたい。本書に記載する実施形態はいずれも、構成(ii)および(iii)のいずれかに適用できるように調整することができ、本書に記載する詳細を前提として、そのような調整をどのように行うかが当業者には分かるであろう。
【0088】
以下の説明では、トレイ12と平行で軸線14から外向きの方向を半径方向rと呼び、トレイ12と平行で半径方向rに垂直な方向をここでは方位角方向φと呼び、トレイ12に直角な方向をここでは垂直方向zと呼ぶ。
【0089】
本書で使用する用語「半径方向位置」とは、軸線14から特定の距離にあるトレイ12上またはトレイ12より上の位置を指す。この用語が印刷ヘッドに関連して使用される場合、この用語は、軸線14から特定の距離にあるヘッドの位置を指す。この用語がトレイ12上の点に関連して使用される場合、この用語は、半径が軸線14から特定の距離にあってその中心が軸線14にある円を描く点の軌跡に属する任意の点に対応する。
【0090】
本書で使用する用語「方位角位置」は、所定の基準点に対して特定の方位角にあるトレイ12上またはトレイ12より上の位置を指す。したがって、半径方向位置は、基準点に対して特定の方位角を形成する直線を描く点の軌跡に属する任意の点を指す。
【0091】
本書で使用する用語「垂直位置」は、特定の点で垂直軸線14と交差する面全体の位置を指す。
【0092】
トレイ12は3D印刷のための支持構造として働く。1つ以上の物体が印刷される作業領域は通常、トレイ12の総面積より小さいが、必ずしもそうである必要はない。本発明の一部の実施形態では、作業領域は環状である。作業領域は符号26で示される。本発明の一部の実施形態では、トレイ12は物体の形成中ずっと、同一方向に連続的に回転し、本発明の一部の実施形態では、トレイは物体の形成中に少なくとも1回(例えば振動するように)回転方向を逆転する。トレイ12は任意選択的にかつ好ましくは取外し可能である。トレイ12の取外しは、システム10の保守のために、あるいは希望する場合には、新しい物体を印刷する前にトレイを交換するために、行うことができる。本発明の一部の実施形態では、システム10には1つ以上の異なる交換トレイ(例えば交換トレイのキット)が提供され、2つ以上のトレイが異なる種類の物体(例えば異なる重量)、異なる動作モード(例えば異なる回転速度)等のために設計される。トレイ12の交換は希望通り手動または自動にすることができる。自動交換が採用された場合、システム10は、トレイ12をヘッド16の下にあるその位置から取り外して、それを交換トレイ(図示せず)と交換するように構成されたトレイ交換装置36を含む。図1Bの代表図では、トレイ交換装置36は、トレイ12を引っ張るように構成された可動アーム40を持つドライブ38として示されるが、他の種類のトレイ交換装置も考えられる。
【0093】
印刷ヘッド16の例示的実施形態を図2A図2Cに示す。これらの実施形態は、システム110およびシステム10を含め、それらに限らず、上述したAMシステムのいずれかに採用することができる。
【0094】
図2A図2Bは、1つ(図2A)および2つ(図2B)のノズルアレイ22を持つ印刷ヘッド16を示す。アレイにおけるノズルは直線に沿って線状に並ぶことが好ましい。特定の印刷ヘッドが2つ以上のリニア・ノズル・アレイを有する実施形態では、ノズルアレイは、任意選択的にかつ好ましくは、相互に平行にすることができる。
【0095】
システム110と同様のシステムが使用される場合、全ての印刷ヘッド16は、任意選択的にかつ好ましくは、走査方向に沿ったそれらの位置が互いにずらされ、割出し方向に沿って向き付けられる。
【0096】
システム10と同様のシステムが使用される場合、全ての印刷ヘッド16は、任意選択的にかつ好ましくは、それらの方位角位置が互いにずらされ、放射状に(放射方向と平行に)向き付けられる。したがって、これらの実施形態では、異なる印刷ヘッドのノズルアレイは互いに平行ではなく、むしろ互いに角度を成しており、その角度はそれぞれのヘッド間の方位角のずれに略等しい。例えば1つのヘッドは放射状に向き付け、かつ方位角位置φに配置することができ、別のヘッドは放射状に向き付け、かつ方位角位置φに配置することができる。この実施例では、2つのヘッド間の方位角のずれはφ−φであり、2つのヘッドのリニア・ノズル・アレイ間の角度もまたφ−φである。
【0097】
一部の実施形態では、2つ以上の印刷ヘッドを組み立てて、1ブロックの印刷ヘッドにすることができる。その場合、そのブロックの印刷ヘッドは一般的に、互いに平行である。幾つかのインクジェット印刷ヘッド16a、16b、16cを含むブロックが図2Cに示される。
【0098】
一部の実施形態では、システム10は、トレイ12が支持構造30とヘッド16との間にくるように、ヘッド16の下に位置する支持構造30を含む。支持構造30は、インクジェット印刷ヘッド16が作動している間発生することのあるトレイ12の振動を防止または低減するように働く。印刷ヘッド16が軸線14を中心に回転する構成では、支持構造30が常にヘッド16の真下にくるように(トレイ12と共にヘッド16とトレイ12の間で)支持構造30も回転することが好ましい。
【0099】
トレイ12および/または印刷ヘッド16は、任意選択的にかつ好ましくは、トレイ12と印刷ヘッド16との間の垂直距離が変動するように垂直方向zに沿って垂直軸線14と平行に移動するように構成される。トレイ12を垂直方向に沿って移動させることによって垂直距離が変動する構成では、支持構造30もトレイ12と共に垂直方向に移動することが好ましい。トレイ12の垂直位置は固定されたままで、垂直距離がヘッド16によって垂直方向に沿って変動する構成では、支持構造30もまた固定垂直位置に維持される。
【0100】
垂直移動は垂直ドライブ28によって確立することができる。ある層が完成すると、次に印刷される層の所望の厚さに応じて所定の垂直間隔だけ、トレイ12とヘッド16との間の垂直距離を増大させることができる(例えばヘッド16に対してトレイ12を下降させる)。この手順は3D物体112が層毎に形成されるように繰り返される。
【0101】
インクジェット印刷ヘッド16の向き、および任意選択的にかつ好ましくは、システム10の1つ以上の他の構成部品の向き、例えばトレイ12の移動の向きも、コントローラ20によって制御される。コントローラは電子回路および回路によって読出し可能な不揮発性記憶媒体を有することができ、記憶媒体は、回路によって読み出されたときに、以下でさらに詳述するように制御動作を回路に実行させるプログラム命令を格納する。
【0102】
コントローラ20はまた、例えば標準テッセレーション言語(STL)またはステレオリソグラフィ輪郭(SLC)フォーマット、仮想現実モデリング言語(VRML)、付加製造ファイル(AMF)フォーマット、図面交換フォーマット(DXF)、ポリゴン・ファイル・フォーマット(PLY)、またはコンピュータ支援設計(CAD)に適したいずれかの他のフォーマットの形のコンピュータ・オブジェクト・データに基づいて、製作命令に関するデジタルデータを送信するホストコンピュータ24と通信することもできる。オブジェクト・データ・フォーマットは一般的に、デカルト座標系に従って構成される。
【0103】
このような場合、コンピュータ24は、コンピュータ・オブジェクト・データにおける各スライスの座標をデカルト座標系から極座標系に変換するための手順を実行することが好ましい。コンピュータ24は、任意選択的にかつ好ましくは、変換された座標系で製作命令を送信する。代替的に、コンピュータ24は、コンピュータ・オブジェクト・データによって提供された元の座標系で、製作命令を送信することができ、その場合、座標の変換はコントローラ20の回路によって実行される。
【0104】
座標の変換は回転トレイ上の3D印刷を可能にする。従来の3D印刷では、印刷ヘッドは静止トレイ上を直線に沿って往復運動する。そのような従来のシステムでは、ヘッドの吐出率が均一であることを前提として、印刷解像度はトレイ上のどの点でも同じである。従来の3D印刷とは異なり、ヘッド点の全てのノズルが同時にトレイ12全体で同一距離をカバーするわけではない。座標の変換は、任意選択的にかつ好ましくは、異なる半径方向位置における過剰な材料の均等な量が確保されるように実行される。本発明の一部の実施形態に係るコンピュータ・オブジェクト・データの座標変換の代表的実施例が、物体のスライスを示す図3A図3Bに提示される(各スライスは物体の異なる層の製作命令に対応する)。図3Aはスライスをデカルト座標系で示し、図3Bは、座標変換手順がそれぞれのスライスに適用された後の同じスライスを示す。
【0105】
通常、コントローラ20は、製作命令に基づき、かつ下述する格納されたプログラム命令に基づいて、システム10のそれぞれの構成部品に印加される電圧を制御する。
【0106】
一般的に、コントローラ20は、トレイ12の回転中に、トレイ12上で3D物体を印刷するために構築材料の液滴を層状に吐出するように、印刷ヘッド16を制御する。
【0107】
システム10は、任意選択的にかつ好ましくは、1つ以上の放射源18を備え、それは、使用するモデル材に応じて、例えば紫外線もしくは可視光もしくは赤外線ランプ、または他の電磁放射源、または電子ビーム源とすることができる。放射源は、発光ダイオード(LED)、デジタル・ライト・プロセシング(DLP)システム、抵抗ランプ等をはじめ、それらに限らず、任意の種類の放射線放出素子を含むことができる。放射源18はモデル材を硬化または凝固させるように働く。本発明の様々な例示的実施形態では、放射源18の動作はコントローラ20によって制御され、それは、放射源18を作動させたり停止させたりすることができ、かつ任意選択的に放射源18によって発生する放射線の量も制御することができる。
【0108】
本発明の一部の実施形態では、システム10は、ローラまたはブレードとして製造することのできる1つ以上のレベリング装置32をさらに備える。レベリング装置32は、新たに形成された層を、次の層がその上に形成される前に矯正するのに役立つ。一部の実施形態では、レベリング装置32は円錐ローラの形状を有し、その対称軸線34がトレイ12の表面に対して傾斜し、かつその表面がトレイの表面と平行になるように配置される。この実施形態をシステム10の側面図に示す(図1C)。
【0109】
円錐ローラは円錐または円錐台の形状を有することができる。
【0110】
円錐ローラの開き角は、その軸線34に沿った任意の位置における円錐の半径と、その位置と軸線14との間の距離との比率が一定になるように選択されることが好ましい。ローラが回転する間、ローラの表面上の点pはどれも、点pの鉛直下方に位置する点のトレイの線速度に比例する(例えば同一の)線速度を有するので、この実施形態はローラ32が層を効率的に平準化することを可能にする。一部の実施形態では、ローラは高さh、軸線14から最も近い距離位置における半径R、および軸線14から最も遠い距離位置における半径Rを有する円錐台の形状を有する。ここでパラメータh、R、およびRは、R/R=(R−h)/hの関係を満たし、ここでRは軸線14からのローラの最遠距離である(例えばRはトレイ12の半径とすることができる)。
【0111】
レベリング装置32の動作は、任意選択的にかつ好ましくは、コントローラ20によって制御される。コントローラは、レベリング装置32を作動させたり停止させたりすることができ、かつ任意選択的に、垂直方向(軸線14と平行)に沿ったその位置、および/または放射方向(トレイ12と平行に、軸線14に近づくかまたはそれから離れる方向)に沿ったその位置をも制御することができる。
【0112】
本発明の一部の実施形態では、印刷ヘッド16は、径方向rに沿ってトレイに対して往復運動するように構成される。これらの実施形態は、ヘッド16のノズルアレイ22の長さがトレイ12上の作業領域26の径方向に沿った幅より短いときに、有用である。径方向に沿ったヘッド16の運動は、任意選択的にかつ好ましくはコントローラ20によって制御される。
【0113】
一部の実施形態は、異なる吐出ヘッドから異なる材料を吐出することによって物体を製作することを企図している。これらの実施形態は、とりわけ、所与の数の材料から材料を選択し、かつ選択された材料およびそれらの性質の所望の組合せを画定する能力を提供する。本実施形態によれば、異なる材料による異なる3D空間位置の占有を達成するか、あるいは2つ以上の異なる材料による略同一の3D位置または隣接する3D位置の占有を達成するように、層における各材料の堆積の空間位置が画定され、層内の材料の堆積後の空間的組合せが可能になり、それによってそれぞれの位置(単数または複数)で複合材料を形成することが可能になる。
【0114】
モデル材の任意の堆積後の組合せまたは混合が企図される。例えば特定の材料が吐出された後、それはその元の性質を維持することができる。しかし、別のモデル材または他の吐出材料と同時に、同じ位置あるいは近傍位置で吐出された場合、吐出された材料とは異なる性質を有する複合材料が形成される。
【0115】
こうして本実施形態は、広範囲の材料の組合せの堆積を可能にし、かつ物体の各部分を特徴付けるために望ましい特性に応じて、物体の異なる部分を複数の異なる材料の組合せから構成することのできる物体の製作を可能にする。
【0116】
本実施形態に適したAMシステムの原理および動作のさらなる詳細は米国特許第9031680号に見られ、その内容を参照によって本書に援用する。
【0117】
次に、本発明の一部の実施形態に係る例示的レベリングアセンブリの斜視図および正面図を示す図4A図4Bを参照する。本発明の一部の実施形態によれば、レベリングアセンブリ100はローラ110、掻取りブレード130、回収槽120、およびオーガ150を含む。ローラ110が3D物体を構築するために堆積された層の表面をスキミングするにつれて、構築材料はローラ110に蓄積される。通常ローラ110の全長にわたって延在するブレード130は、ローラ110から材料を掻き落とす。ブレード130で掻き落とされた材料は通常、槽120内に回収される。本発明の一部の実施形態によれば、槽120は、ローラ110の全長に沿って、かつローラ110を超えて画定される距離にも延在する。本発明の一部の実施形態によれば、槽120内に配置されかつその全長に沿って延在するオーガ150は、回転しながら、槽120内の全材料を1つの方向に、例えば方向115に移送する。本発明の一部の実施形態によれば、オーガ150は、レベリングアセンブリに含まれるモータによって回転する。
【0118】
本発明の一部の実施形態によれば、ブレード130の一端がローラ110に押し当てられると、ブレード130の他端はオーガ150と略接触状態になる。これはオーガ150が、ローラ110から回収された略全部の材料をブレード130から取り除くことを可能にする。一部の例示的実施形態では、ブレード130は槽120の底まで延在して、材料がブレード130と槽120との間に集まらないように、ローラ110、ブレード130、およびオーガ150の間に継ぎ目の無い表面を提供する。任意選択的に、ブレード130は、参照によって本書に援用する例えば米国特許第7500846号明細書に記載されたブレードと同様である。
【0119】
次に、本発明の一部の実施形態に係る例示的レベリングアセンブリの長さに沿って切断した断面図を示す、図5を参照する。通常、オーガ150はローラ110より長いので、ローラ110の全長と重なり、かつ方向115にローラ110を超えて延在する。ローラ110の長さに沿って、槽120は、ローラ110から掻き取られた材料250が槽120に流入できるように、開いている。材料250は通常、槽120内のオーガ150のねじ山153の間に蓄積し、オーガ150の回転により方向115に機械的に移送される。本発明の一部の実施形態によれば、オーガ150は材料250をポンプチャンバ領域280に向かって移送し、材料250は弁290を介して槽120から除去される。一部の例示的実施形態では、槽120の領域280は、圧力を発生するように密閉される。通常、密閉されたポンプチャンバ領域280とローラ110の長さに沿って延在する開放領域との間の境界面220に、圧力差が発生する。一部の例示的実施形態では、蠕動ポンプ295は材料250を槽120から積極的に取り除く。
【0120】
次に、本発明の一部の実施形態に係る例示的レベリングアセンブリの長さの一部分に沿って切断した断面図の詳細、および同レベリングアセンブリの圧力差の境界面に沿って切断した断面図を示す、図6Aおよび図6Bを参照する。オーガ150の長さに沿った圧力差領域220は、公称圧力に開かれた境界面を介して領域280から遠ざかる材料250の逆流を導くことがある。本発明の一部の実施形態によれば、逆流チャネル320は、逆流がローラ110付近および槽120の外に放出されることを防止する。この制御された放出点は逆流を槽120の安全な領域に向かわせ、漏出の潜在的可能性を低減する。一部の例示的実施形態では、逆流チャネル320はまた、オーガ150に沿って槽120の前部液面300より低い充填空間260をも含む。任意選択的に、充填空間260は槽120の容積を増大して、漏出を防止する。
【0121】
次に、本発明の一部の実施形態に係る回収槽の筐体を横切って切断した断面図を示す、図6Cを参照する。一部の例示的実施形態では、複数のウィッキングチャネル325が、逆流チャネル300に代わるものとして回収槽120の筐体(または蓋)125の長さに導入される。任意選択的に、ウィッキングチャネルは逆流チャネル300に追加して設けられる。ウィッキングチャネル325は、樹脂をオーガ上に捕捉することによって、樹脂を漏出点から離れるように移動させてもよい。これで、樹脂が筐体125のローラ側の開口に向かって移動することを防止してもよい。
【0122】
次に、本発明の一部の実施形態に係るオーガの長さに沿って切断した2つの例示的断面図を示す、図7Aおよび図7Bを参照する。本発明の一部の実施形態によれば、オーガ150は可変ピッチねじ山を有する。一部の例示的実施形態では、ローラ110の長さに沿ったねじ山153には、より迅速に材料を移送するために、より広いピッチが使用され、領域280のねじ山153には、より多くの圧力を発生させるために、より狭いピッチが使用される。代替的に、オーガ151はその全長にわたって一定のピッチを有する。通常、オーガ150は、任意選択的にオーガ150に接続された、プーリおよび/またはタイミングベルト付きモータにより回転する。
【0123】
次に、本発明の一部の実施形態に係る、印刷ゾーンをカバーするレベリングアセンブリの略図を示す、図8A図8B、および図8Cを参照する。図8Aに関連して、本発明の一部の実施形態によれば、回転式3Dプリンタ用の構築トレイ400は、印刷ゾーン405および非印刷ゾーン410を含む。通常、非印刷ゾーンはトレイ400の中心部分である。本発明の一部の実施形態によれば、ローラ110の長さは印刷ゾーン405の半径方向距離全体に沿って延在するので、単一のローラが全印刷パスをカバーする(図8A)。通常、ローラ110は半径方向に静止しており、モータによってローラの長手軸線に沿って回転する。
【0124】
次に図8Bに関連して、他の例示的実施形態では、印刷ゾーン405の半径距離より短い距離をカバーするローラ105が使用され、ローラ105は半径方向に移動可能である。通常、ローラ110は、材料が吐出される位置に合致するように半径方向に前進する。
【0125】
図8Cに関連して、本発明のさらに別の実施形態では、印刷ゾーンをカバーするために2つ以上のローラが使用される。任意選択的に、トレイ400の中心により近い位置のローラ107は、中心からより遠い位置のローラ106より小さい直径を有するように選択される。回転式印刷の場合、トレイ400に対するローラの相対速度は、半径方向の位置に依存する。トレイ400の大きさによっては、相対速度のこの変動は部品の品質および機械の全体的な機能に影響を及ぼすことがある。一部の例示的実施形態では、相対速度の変動を補償するために異なる直径が選択される。
【0126】
次に、本発明の一部の実施形態に係る構築トレイ上の円錐形のローラの略側面図を示す、図9を参照する。本発明の一部の実施形態によれば、AM製造中にトレイ400上に吐出された材料を平準化するために、円錐形の形状を有するローラ111が使用される。本発明の一部の実施形態によれば、円錐形の形状は、トレイ400に対するローラの相対速度の変動を補償する。通常、円錐形の直径は、トレイ400の中心からの距離が増大するにつれて増大する。本発明の代替的実施形態では、トレイ400の印刷ゾーン全体にわたって延在する円筒形のローラは、高い印刷品質を生み出すのに充分である。本発明のさらに別の実施形態では、トレイ400の印刷ゾーンをカバーするために、2つ以上の円錐形のローラが使用される。
【0127】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
図1A
図1B-1C】
図1D
図2A-2C】
図3A-3B】
図4A-4B】
図5
図6A-6B】
図6C
図7A-7B】
図8A-8C】
図9