(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807377
(24)【登録日】2020年12月9日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】ニッケルとホスフィンタイプのリガンドとを含む新規触媒組成物、およびオレフィンのオリゴマー化方法におけるその使用
(51)【国際特許分類】
C07C 2/36 20060101AFI20201221BHJP
B01J 23/755 20060101ALI20201221BHJP
B01J 31/24 20060101ALI20201221BHJP
C07C 11/08 20060101ALI20201221BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20201221BHJP
【FI】
C07C2/36
B01J23/755 Z
B01J31/24 Z
C07C11/08
!C07B61/00 300
【請求項の数】11
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-503651(P2018-503651)
(86)(22)【出願日】2016年7月26日
(65)【公表番号】特表2018-522895(P2018-522895A)
(43)【公表日】2018年8月16日
(86)【国際出願番号】EP2016067756
(87)【国際公開番号】WO2017017087
(87)【国際公開日】20170202
【審査請求日】2019年7月19日
(31)【優先権主張番号】1557247
(32)【優先日】2015年7月29日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】ブルイユ ピエール−アラン
(72)【発明者】
【氏名】ショーメ−マルタン オリヴィア
【審査官】
池上 佳菜子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭50−009592(JP,A)
【文献】
特公昭49−021121(JP,B1)
【文献】
特表2013−527858(JP,A)
【文献】
国際公開第97/037954(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 2/36
C07C 11/02
B01J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンの1−ブテンへのダイマー化のための方法であって、エチレンを触媒組成物と接触させる工程を含み、該組成物は、
− 酸化数(II)を有する少なくとも1種のニッケル前駆体と、
− 式PR1R2R3を有する少なくとも1種のホスフィンリガンドであって、ここで、基R1、R2およびR3は、同一であっても異なってもよく、一緒に結合されてもされてなくてもよく、
・芳香族基;置換されてもされてなくてもよく、ヘテロ原子を含有してもしてなくてもよい、および/または
・ヒドロカルビル基;環状であってもなくてもよく、置換されてもされてなくてもよく、ヘテロ原子を含有してもしなくてもよい
から選択される、ホスフィンリガンドと、
− 少なくとも1種の活性化剤であって、単独でまたは混合物として用いられる、塩素化されたおよび臭素化されたヒドロカルビルアルミニウム化合物によって形成される群から選択される、活性化剤と
を含み、
該ニッケル前駆体は、ニッケル(II)クロリド、ニッケル(II)(ジメトキシエタン)クロリド、ニッケル(II)ブロミド、ニッケル(II)(ジメトキシエタン)ブロミド、ニッケル(II)フルオリド、ニッケル(II)ヨージド、ニッケル(II)スルファート、ニッケル(II)カルボナート、ニッケル(II)ジメチルグリオキシム、ニッケル(II)ヒドロキシド、ニッケル(II)ヒドロキシアセタート、ニッケル(II)オキサラート、ニッケル(II)カルボキシラート、π−アリルニッケル(II)クロリド、π−アリルニッケル(II)ブロミド、メタリルニッケル(II)クロリドダイマー、η3−アリルニッケル(II)ヘキサフルオロホスファート、η3−メタリルニッケル(II)ヘキサフルオロホスファートおよびニッケル(II)1,5−シクロオクタジエニルから選択され、それらの水和型または非水和型の形態にあり、単独でまたは混合物として用いられ、
前記組成物のホスフィンリガンド対ニッケル前駆体のモル比は、5〜30の範囲内であり、活性化剤対ホスフィンリガンドのモル比は、1以上であり、
20℃超の値から+250℃までの範囲内の温度で行われる、方法。
【請求項2】
前記ホスフィンリガンドの基R1、R2およびR3は、同一である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ホスフィンリガンドPR1R2R3の芳香族基R1、R2およびR3は、以下の群:フェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、メシチル、 3,5−ジメチルフェニル、4−n−ブチルフェニル、4−メトキシフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2−イソプロポキシフェニル、4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェニル、4−クロロフェニル、3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル、ベンジル、ナフチル、ビスナフチル、ピリジル、ビスフェニル、フラニル、およびチオフェニルによって形成される群から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ホスフィンリガンドPR1R2R3のヒドロカルビル基R1、R2およびR3は、1〜20個の炭素原子を含有する、請求項1〜3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
ホスフィンリガンドPR1R2R3のヒドロカルビル基R1、R2およびR3は、以下の群:メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジルおよびアダマンチルによって形成される基から選択される、請求項1〜4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
ホスフィンリガンド対ニッケル前駆体のモル比は、5〜25の範囲内である、請求項1〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記組成物は、ルイス塩基も含む、請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
ルイス塩基は、ジエチルエーテル、メチル tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、イソキサゾール、ピリジン、ピラジンおよびピリミジンから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記活性化剤は、メチルアルミニウムジクロリド(MeAlCl2)、エチルアルミニウムジクロリド(EtAlCl2)、エチルアルミニウムセスキクロリド(Et3Al2Cl3)、ジエチルアルミニウムクロリド(Et2AlCl)、ジイソブチルアルミニウムクロリド(iBu2AlCl)、およびイソブチルアルミニウムジクロリド(iBuAlCl2)によって形成される群から選択され、単独でまたは混合物として用いられる、請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
ニッケル前駆体は、ニッケル(II)スルファート、ニッケル(II)カルボナート、ニッケル(II)ジメチルグリオキシム、ニッケル(II)ヒドロキシド、ニッケル(II)ヒドロキシアセタート、ニッケル(II)オキサラート、ニッケル(II)カルボキシラート、π−アリルニッケル(II)クロリド、π−アリルニッケル(II)ブロミド、メタリルニッケル(II)クロリドダイマー、η3−アリルニッケル(II)ヘキサフルオロホスファート、η3−メタリルニッケル(II)ヘキサフルオロホスファートおよびニッケル(II)1,5−シクロオクタジエニルから選択され、それらの水和型または非水和型の形態にあり、単独でまたは混合物として用いられる、請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
閉鎖系、半開放系、連続的にまたはバッチ式で行われる、請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン供給原料のオリゴマー化のための方法であって、前記供給原料を本発明によるニッケルベースの組成物と接触させる工程を含む方法、特に、前記ニッケルベースの組成物を用いるエチレンの1−ブテンへのダイマー化のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
均一系ニッケル触媒を用いるエチレンの変換は、1950年から研究されてきた。この研究は、種々の方法の開発および商業化という結果につながった。
【0003】
エチレンをブテンにダイマー化することができる触媒系の開発は、適切な金属およびリガンドを選択することを伴う。既存の系の中で、ホスフィンタイプのリガンドを用いるいくつかのニッケルベースの触媒系が開発された。
【0004】
それ故に、特許文献1には、オリゴマー化のための方法であって、酸化数0を有するニッケル化合物と、ニッケル化合物に対して変動する割合のホスフィンリガンドとを含む触媒組成物を用いる方法が記載されている。当該特許は、オリゴマー化方法を行うための有機フッ素化された酸の使用も記載する。
【0005】
特許文献2には、オレフィンのダイマー化のための方法が記載され、塩素化されたニッケル化合物であって、+2の酸化数を有するものをベースとする触媒系と、ハロゲン化アルキルアルミニウムタイプの活性化剤とが採用されている。当該特許の目的は、2−ブテンの製造にある。
【0006】
特許文献3には、第VIII族からの金属と、電子供与体、例えば、ホスフィンと、アルミニウム化合物とをベースとする触媒組成物の存在下でのオレフィンのオリゴマー化のための方法が記載されている。組成物中のホスフィンと金属との間のモル比は、0.5〜18の範囲内である。しかしながら、特許文献3には、20℃未満、好ましくは0℃未満の温度で行われる方法が記載されている。
【0007】
特許文献4には、オリゴマー化のための方法であって、ハロゲン化ニッケルと、ホスフィンとをベースとする触媒組成物を用い、活性触媒を調製するために組成物の事前還元が必要とされる、方法が記載されている。ブテンの収率は、C4 63%程度であり、3%の1−ブテンを含む。
【0008】
特許文献5には、C2〜C4オレフィンのダイマー化のための方法であって、ニッケル化合物と、ホスフィンと、特にハロゲン化アルキルとを含む触媒系を採用し、ブテン収率は80%程度である、方法が記載されている。組成物中のホスフィンと、金属との間のモル比は、1〜5の範囲内であるが、当該特許の目的は、2−ブテンの製造にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5237118号明細書
【特許文献2】米国特許第4242531号明細書
【特許文献3】英国特許出願公開第1282305号明細書
【特許文献4】仏国特許出願公開第1547921号明細書
【特許文献5】仏国特許出願公開第1588162号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、エチレンの1−ブテンへのダイマー化のための新規な方法であって、その性能は、収率および1−ブテンの製造についての選択性に関してより良好であるものを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本出願人の研究は、(+II)の酸化数を有するニッケル前駆体と、少なくとも1種のホスフィンリガンドと、任意のルイス塩基と、少なくとも1種の活性化剤とを含む触媒組成物を採用する新規な方法であって、20℃超の値から+250℃にわたる範囲内の温度で行われる点で特徴付けられる方法の開発に至った。驚くべきことに、本発明による方法は、1−ブテンの選択的製造において良好な収率/触媒選択性の組み合わせを有することが発見された。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
(本発明による組成物)
本発明の方法において用いられる触媒組成物は、
− (+II)の酸化数を有する少なくとも1種のニッケル前駆体と、
− 式PR
1R
2R
3を有する少なくとも1種のホスフィンリガンドであって、ここで、R
1、R
2およびR
3の基は、同一であっても異なってもよく、一緒に結合されてもされてなくてもよく、
・芳香族化合物基;置換されてもされてなくてもよく、ヘテロ原子を含有してもしてなくてもよい、および/または
・ヒドロカルビル基;環状であってもなくてもよく、置換されてもされてなくてもよく、ヘテロ原子を含有してもしてなくてもよい、
から選択される、リガンドと
− 少なくとも1種の活性化剤であって、単独でまたは混合物として用いられる、塩素化されたおよび臭素化されたヒドロカルビルアルミニウム化合物によって形成される群から選択される、活性化剤と
を含み、前記組成物のホスフィンリガンド対ニッケル前駆体のモル比は、5〜30の範囲内であり、活性化剤対ホスフィンリガンドのモル比は、1以上、好ましくは1.5以上、好ましくは2以上であり、当該方法が行われる際の温度は、20℃超の値から+250℃にわたる範囲内の温度である。
【0013】
有利には、本発明によると、触媒組成物は、式PR
1R
2R
3を有し、R
1、R
2およびR
3の基は、同一である、少なくとも1種のホスフィンリガンドを含む。
【0014】
ホスフィンリガンドPR
1R
2R
3の芳香族化合物基R
1、R
2およびR
3は、好ましくは、以下の群によって形成される群から選択される:フェニル、o−トリル、m−トリル、p−トリル、メシチル、3,5−ジメチルフェニル、4−n−ブチルフェニル、4−メトキシフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2−イソプロポキシフェニル、4−メトキシ−3,5−ジメチルフェニル、3,5−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェニル、4−クロロフェニル、3,5−ジ(トリフルオロメチル)フェニル、ベンジル、ナフチル、ビスナフチル、ピリジル、ビスフェニル、フラニル、およびチオフェニル。
【0015】
ホスフィンリガンドPR
1R
2R
3のヒドロカルビル基R
1、R
2およびR
3は、有利には1〜20個の炭素原子、好ましくは2〜15個の炭素原子、より好ましくは3〜10個の炭素原子を含有する。好ましくは、ホスフィンリガンドPR
1R
2R
3のヒドロカルビル基R
1、R
2およびR
3は、以下の群によって形成される群から選択される:メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ベンジル、アダマンチル。
【0016】
本発明により用いられる触媒組成物は、ルイス塩基を含んでもよい。本発明の状況の中で、用語「ルイス塩基(Lewis base)」は、一成分が1つ以上の非共有電子対または非結合電子対を有するあらゆる化学実体を意味するとして用いられる。本発明のルイス塩基は、特に、非共有電子対または非結合電子対を有する酸素または窒素の原子、またはニッケルとη
2型配位を形成することができるπ二重結合を含むあらゆるリガンドに対応する。
【0017】
前記ルイス塩基は、好ましくは、ジエチルエーテル、メチル tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、イソキサゾール、ピリジン、ピラジンおよびピリミジンから選択される。
【0018】
本発明によると、触媒組成物において用いられる活性化剤は、塩素化されたおよび臭素化されたヒドロカルビルアルミニウム化合物によって形成される群から選択され、単独でまたは混合物として用いられる。
【0019】
有利には、前記活性化剤は、メチルアルミニウムジクロリド(MeAlCl
2)、エチルアルミニウムジクロリド(EtAlCl
2)、エチルアルミニウムセスキクロリド(Et
3Al
2Cl
3)、ジエチルアルミニウムクロリド(Et
2AlCl)、ジイソブチルアルミニウムクロリド(iBu
2AlCl)、およびイソブチルアルミニウムジクロリド(iBuAlCl
2)によって形成される群から選択され、単独でまたは混合物として用いられる。
【0020】
有利には、ホスフィンリガンド対ニッケル前駆体のモル比は、5〜25の範囲内、好ましくは5〜20の範囲内、より好ましくは5〜15の範囲内である。好ましくは、このモル比は、6〜30の範囲内、好ましくは6〜25の範囲内、より好ましくは6〜20の範囲内、さらにより好ましくは6〜15の範囲内、一層より好ましくは7〜12の範囲内である。
【0021】
有利には、活性化剤対ホスフィンリガンドのモル比は、好ましくは1.5以上、好ましくは2以上である。
【0022】
活性化剤対ニッケル前駆体のモル比は、好ましくは5以上、より好ましくは6以上、かつ、好ましくは30以下、好ましくは25以下、より好ましくは20以下である。
【0023】
本発明において挙げられる、特にニッケル前駆体に対するモル比は、触媒組成物中に提供されたニッケルのモル数に対して表されるものであると理解されるべきである。
【0024】
本発明による方法において用いられる組成物は、溶媒を任意に含んでもよい。有機溶媒から選択される溶媒が用いられてよく、エーテル、アルコール、および飽和または不飽和の、芳香族性または非芳香族性の、環状または非環状の炭化水素から選択される。好ましくは、溶媒は、高純度または混合物としての、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、ブタンまたはイソブタンまたは任意の他の炭化水素留分であって、70℃以上、好ましくは70℃〜200℃の範囲内、好ましくは90℃〜180℃の範囲内の沸点を有するもの、モノオレフィンまたはジオレフィンであって、好ましくは4〜20個の炭素原子を含有するもの、シクロオクタ−1,5−ジエン、ベンゼン、オルト−キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、メタノール、およびエタノール、およびイオン液から選択される。溶媒がイオン液である場合、それは、有利には、特許US 6 951 831 B2 およびFR 2 895 406 B1において記載されたイオン液から選択される。好ましくは、溶媒は、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、ブタンおよびイソブタンまたは任意の他の非芳香族性炭化水素留分であって、70℃以上、好ましくは70℃〜200℃の範囲内、好ましくは90℃〜180℃の範囲内の沸点を有するものから選択される。
【0025】
本発明による方法において用いられる組成物のニッケル前駆体は、+IIの酸化数を有する。それは、好ましくは、ニッケル(II)クロリド、ニッケル(II)(ジメトキシエタン)クロリド、ニッケル(II)ブロミド、ニッケル(II)(ジメトキシエタン)ブロミド、ニッケル(II)フロリド、ニッケル(II)ヨージド、ニッケル(II)スルファート、ニッケル(II)カルボナート、ニッケル(II)ジメチルグリオキシム、ニッケル(II)ヒドロキシド、ニッケル(II)ヒドロキシアセタート、ニッケル(II)オキサラート、ニッケル(II)カルボキシラート、例えば、ニッケル 2−エチルヘキサノアート、ニッケル(II)フェナート、ニッケル(II)ナフテナート、ニッケル(II)アセタート、ニッケル(II)トリフルオロアセタート、ニッケル(II)トリフラート、ニッケル(II)アセチルアセトナート、ニッケル(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、π−アリルニッケル(II)クロリド、π−アリルニッケル(II)ブロミド、メタリルニッケル(II)クロリドダイマー、η
3−アリルニッケル(II)ヘキサフルオロホスファート、η
3−メタリルニッケル(II)ヘキサフルオロホスファートおよびニッケル(II)1,5−シクロオクタジエニルから選択され、それらの水和型または非水和型の形態にあり、単独でまたは混合物として用いられる。
【0026】
有利には、ニッケル前駆体は、ハロゲン化化合物を含まない。好ましくは、ニッケル前駆体は、ニッケル(II)スルファート、ニッケル(II)カルボナート、ニッケル(II)ジメチルグリオキシム、ニッケル(II)ヒドロキシド、ニッケル(II)ヒドロキシアセタート、ニッケル(II)オキサラート、ニッケル(II)カルボキシラート、例えば、ニッケル 2−エチルヘキサノアート、ニッケル(II)フェナート、ニッケル(II)ナフテナート、ニッケル(II)アセタート、ニッケル(II)トリフルオロアセタート、ニッケル(II)トリフラート、ニッケル(II)アセチルアセトナート、ニッケル(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、π−アリルニッケル(II)クロリド、π−アリルニッケル(II)ブロミド、 メタリルニッケル(II)クロリドダイマー、η
3−アリルニッケル(II)ヘキサフルオロホスファート、η
3−メタリルニッケル(II)ヘキサフルオロホスファートおよびニッケル(II)1,5−シクロオクタジエニルから選択され、それらの水和型または非水和型の形態にあり、単独でまたは混合物として用いられる。
【0027】
上記の組成物は、エチレンの1−ブテンへのダイマー化のための方法において用いられる。
【0028】
本発明によるダイマー化の方法は、溶媒の存在下に操作されてよい。この場合、溶媒は、有機溶媒から、好ましくは、飽和型、不飽和型、環状または非環状の炭化水素から選択されてよい。特に、前記溶媒は、高純度または混合物としての、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、ブタンおよびイソブタン、モノオレフィンまたはジオレフィンであって、好ましくは4〜20個の炭素原子を含有するもの、または、任意の他の非芳香族性炭化水素留分であって、70℃以上、好ましくは70℃〜200℃の範囲内、より好ましくは90℃〜180℃の範囲内の沸点を有するものから選択される。好ましいバリエーションにおいて、本方法から得られた生成物の少なくとも一部は、プロセス溶媒として本発明によるダイマー化方法に再循環させられる。
【0029】
本方法のための溶媒は、イオン液から選択されてもよい。前記反応溶媒がイオン液である場合、それは、有利には、特許US 6 951 831 B2およびFR 2 895 406 B1において記載されたイオン液から選択される。
【0030】
有利には、触媒組成物の種々の成分、特に、酸化数(+II)を有するニッケル前駆体、ホスフィンリガンドおよび活性化剤は、本発明によるダイマー化方法に直接的に注入される。すなわち、活性化期間がない。好ましくは、各成分は、本発明によるエチレンのダイマー化方法に別々に注入される。特定の実施において、一方のニッケル(II)前駆体と、ホスフィンリガンドとの混合物と、他方の活性化剤とが、エチレンのダイマー化方法に別々に注入される。
【0031】
本発明による方法において供給原料として用いられるオレフィンは、単独で、または、有利には、1種以上のアルカンまたは任意の他のオイルカット、例えば、石油の精製のための方法からまたは石油化学、例えば、接触分解または水蒸気分解から得られた「留分」において見出されるものにより希釈されて用いられてよい。
【0032】
好ましくは、オリゴマー化方法において供給原料として用いられるオレフィンは、エチレンである。
【0033】
供給原料として用いられる前記オレフィンは、非化石供給源、例えば、バイオマスに由来してよい。例として、本発明による方法において用いられるオレフィンは、アルコールから、特に、アルコールの脱水によって製造されてよい。
【0034】
触媒組成物、すなわち、本発明による方法における触媒組成物中のニッケルの濃度は、有利には、1×10
−8〜1mol/Lの範囲内、好ましくは1×10
−6〜1×10
−2mol/Lの範囲内である。
【0035】
エチレンの1−ブテンへのダイマー化のための方法が操作される際の全圧は、有利には、大気圧から20MPaまでの範囲内、好ましくは0.1〜8MPaの範囲内、より好ましくは3〜8MPaの範囲内である。エチレンの1−ブテンへのダイマー化のための方法の温度は、有利には−40℃〜+250℃の範囲内、好ましくは20℃超の値から250℃までの範囲内、より好ましくは45℃〜250℃の範囲内、一層より好ましくは45℃〜70℃の範囲内である。
【0036】
驚くべきことに、エチレンの1−ブテンへのダイマー化のための方法が本発明の条件下に操作されかつ本発明による組成物により実施される場合に、良好な収率/選択性の組み合わせで1−ブテンを生じさせるという利点を有することが発見された。有利には、本発明による方法は、収率:最低91%および1−ブテン(1−C4)についての選択性:最低62%でブテン留分(C4)を得るために用いられ得る。
【0037】
反応により生じた熱は、当業者に知られているあらゆる手段を用いて除去されてよい。
【0038】
ダイマー化方法は、閉鎖系、半開放系または連続的に、1以上の反応段階で行われてよい。激しい撹拌が、有利には、1種または複数種の試薬と、触媒系との間の良好な接触を保証するために行われる。
【0039】
ダイマー化方法は、バッチ式で行われてよい。この場合、本発明の方法において用いられる組成物を含む選択される容積の溶液が反応器に導入され、この反応器は、好ましくは、通常の撹拌、加熱および冷却の機器を備えている。
【0040】
ダイマー化方法は、連続的に行われてもよい。この場合、本発明による組成物の成分は、反応器に注入され、この反応器において、オレフィン、特にエチレンは、好ましくは温度コントロール下に反応する。
【0041】
本発明の方法において用いられる触媒組成物は、当業者に知られている通常の手段のいずれかによって破壊され、次いで、反応生成物並びに溶媒が、例えば、蒸留によって分離される。変換されなかったオレフィン、特にエチレンは、反応器に再循環させられてよい。
【0042】
本発明による方法は、直列の1段以上の反応段を有する反応器において行われてよく、オレフィン性供給原料および/または触媒組成物の成分は、第1の段または第1および任意の他の段のいずれかに連続的に導入される。反応器の出口において、触媒組成物は、失活させられてよく、これは、例えば、希釈されてもされなくてもよいアミン、および/または塩基性水溶液および/または酸性水溶液を注入することによって行われる。供給原料中に存在し得る未転化オレフィンおよびアルカンは、次いで、蒸留によってオリゴマーから分離される。
【0043】
本方法の生成物は、例えば、自動車のための燃料の成分、アルデヒドおよびアルコールの合成のためのヒドロホルミル化方法における供給原料、化学製品、医薬または香料産業のための成分および/またはプロピレンの合成のためのメタセシス方法における供給原料および/または例えば酸化的脱水素または金属触媒作用の工程を介したブタジエンの製造のための方法のための供給原料としての適用のものであってよい。
【0044】
以下の実施例は、本発明を例証するが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0045】
(実施例)
(触媒試験の実施)
反応器は、最初に、真空下に乾燥させられ、エチレンの雰囲気下に置かれた。n−ヘプタン93mLが、エチレンの雰囲気下に反応器に導入された。ニッケル前駆体Ni(2−エチルヘキサノアート)
2(Ni(2−EH)
2と表記する)、5または10μmolのホスフィン トリ−n−ブチルホスフィン、すなわちP(nBu)
3、トリシクロヘキシルホスフィン、すなわちPCy
3またはトリ−イソプロピルホスフィン、すなわち、P(iPr)
3(10、20、50または100μmol)を含有する溶液6mLが、次いで、反応器に導入された。エチレン1〜2gが、次いで、反応器中に溶解させられ、撹拌が開始され、温度は、40℃にプログラムされた。反応器を脱気した後、温度は、45℃(試験温度)にプログラムされた。エチルアルミニウムジクロリド(75または150μmol)の溶液1mLが、次いで、導入された。反応器は、試験圧力(2MPa)とされた。エチレンの消費は、エチレン50gの導入までモニタリングされた。エチレンの供給が次いで締め切られた。気相クロマトグラフィー(GC)によって気相が定量および定性の分析に付され、液相は計量され、中和され、GCによって定性分析に付された。
【0046】
(触媒試験)
(実施例1−2:リガンド トリ−n−ブチルホスフィンP(nBu)
3の評価)
【0048】
(実施例3−7:リガンド トリシクロヘキシルホスフィン(PCy
3)の評価)
【0050】
(実施例8−9:リガンド トリ−イソプロピルホスフィン(P(iPr)
3)の評価)
【0052】
理解され得ることは、本発明による触媒組成物(流入物2、6、7および9)は、ブテン留分(C4)を、収率:最低93%および1−ブテン(1−C4)についての選択率:最低62%で得るために用いられ得、本発明に合致しない触媒組成物(流入物1、3、8)と比較すれば、これらの最大収率はC4 91%であり、1−ブテン(1−C4)についての選択性は、47%〜59%の範囲内であることである。