(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
記憶部に記憶された対象商品のN日(「N」は2以上の整数)間の需要実績を加算することで算出したN日合計需要実績に基づいてN日間の合計需要予測であるN日合計需要予測を行い、少なくとも前記対象商品の在庫量及びN日合計需要予測を用いて前記対象商品に対する推奨発注量を算出する予測部と、
前記推奨発注量を出力する出力部と、
を備え、
前記予測部は正規分布を用いずにN日合計需要予測を行う、情報処理装置。
前記予測部は、前記N日合計需要実績に基づいて第一予測モデルを生成し、前記記憶部に記憶された対象商品の在庫量及び前記第一予測モデルを用いて前記N日合計需要予測を行う、請求項1に記載の情報処理装置。
前記予測部は、N日合計需要実績とN日合計需要予測とから需要予測誤差に関する第二予測モデルを生成し、前記第一予測モデル及び前記第二予測モデルを用いて、前記対象商品に対する推奨発注量を算出する、請求項2に記載の情報処理装置。
前記予測部は、前記N日合計需要予測に関し、ある需要量と当該ある需要量が生じる確率を用いた第三予測モデルを生成し、前記記憶部に記憶された対象商品の在庫量及び前記第三予測モデルを用いて、前記対象商品に対する推奨発注量を算出する、請求項1に記載の情報処理装置。
予測部によって、記憶部に記憶された対象商品のN日(「N」は2以上の整数)間の需要実績を加算することで算出されたN日合計需要実績に基づいてN日間の合計需要予測であるN日合計需要予測を行う工程と、
予想部によって、少なくとも前記対象商品の在庫量及びN日合計需要予測を用いて推奨発注量を算出する工程と、
出力部によって前記推奨発注量を出力する工程と、
を備え、
前記予測部は正規分布を用いずにN日合計需要予測を行う、情報処理方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような技術も提案されているが、未だ精度よく在庫管理するに至っていない。
【0005】
本発明は、精度よく発注を行うことで在庫管理を精度よく行うことができる情報処理装置、情報処理方法及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による情報処理装置は、
記憶部に記憶された対象商品のN日(「N」は2以上の整数)間の需要実績を加算することで算出したN日合計需要実績に基づいてN日間の合計需要予測であるN日合計需要予測を行い、少なくとも前記対象商品の在庫量及びN日合計需要予測を用いて前記対象商品に対する推奨発注量を算出する予測部と、
前記推奨発注量を出力する出力部と、
を備えてもよい。
【0007】
本発明による情報処理装置において、
前記予測部は、前記N日合計需要実績に基づいて第一予測モデルを生成し、前記記憶部に記憶された対象商品の在庫量及び前記第一予測モデルを用いて前記N日合計需要予測を行ってもよい。
【0008】
本発明による情報処理装置において、
前記予測部は、N日合計需要実績とN日合計需要予測とから需要予測誤差に関する第二予測モデルを生成し、前記第一予測モデル及び前記第二予測モデルを用いて、前記対象商品に対する推奨発注量を算出してもよい。
【0009】
本発明による情報処理装置において、
前記予測部は、N日合計需要実績とN日合計需要予測とから需要予測誤差を算出し、
前記需要予測誤差が第一値である場合と第二値である場合(但し第一値>第二値)において、第一値である場合の安全在庫量は第二値である安全在庫量よりも大きくなる前提のもと、前記予測部は前記対象商品に対する推奨発注量を算出してもよい。
【0010】
本発明による情報処理装置において、
前記予測部は、前記N日合計需要予測に関し、ある需要量と当該ある需要量が生じる確率を用いた第三予測モデルを生成し、前記記憶部に記憶された対象商品の在庫量及び前記第三予測モデルを用いて、前記対象商品に対する推奨発注量を算出してもよい。
【0011】
本発明による情報処理装置において、
前記記憶部は前記対象商品の納品先における特別販売予定情報を記憶し、
前記予測部は、前記特別販売予定情報を用いて、前記対象商品に対する推奨発注量を予測してもよい。
【0012】
本発明による情報処理装置において、
前記記憶部は対象納品先との取引条件情報を記憶し、
前記予測部は、前記取引条件情報を用いて、前記対象商品に対する推奨発注量を予測してもよい。
【0013】
本発明による情報処理装置は、
前記出力部から出力された推奨発注量に対して承認する旨の入力が行われると、前記記憶部に記憶されている所定の発注先に前記対象製品を前記推奨発注量だけ発注する発注情報を送信する送信部を備えてもよい。
【0014】
本発明による情報処理装置において、
前記予測部は前記対象製品の1日後の需要も予測してもよい。
【0015】
本発明による情報処理方法は、
予測部によって、記憶部に記憶された対象商品のN日(「N」は2以上の整数)間の需要実績を加算することで算出されたN日合計需要実績に基づいてN日間の合計需要予測であるN日合計需要予測を行う工程と、
予想部によって、少なくとも前記対象商品の在庫量及びN日合計需要予測を用いて、推奨発注量を算出する工程と、
出力部によって前記推奨発注量を出力する工程と、
を備えてもよい。
【0016】
本発明によるプログラムは、
情報処理装置にインストールするためのプログラムであって、
プログラムをインストールされた情報処理装置は、
記憶部に記憶された対象商品のN日(「N」は2以上の整数)間の需要実績を加算することで算出したN日合計需要実績に基づいてN日間の合計需要予測であるN日合計需要予測を行い、少なくとも前記対象商品の在庫量及びN日合計需要予測を用いて前記対象商品に対する推奨発注量を算出する予測機能と、
前記推奨発注量を出力する出力部と、
を備えてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明において、予測部が、対象製品のN日(「N」は2以上の整数)間の需要実績を加算することで算出されたN日合計需要実績に基づいて、対象商品に対する推奨発注量を出力する態様を採用した場合には、予測誤差を低減させたうえで、推奨発注量を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態による情報処理装置の構成を示す概略ブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施の形態における予測態様の第1の例を説明するための図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施の形態における情報の流れを説明するための図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施の形態における予測態様の第2の例を説明するための図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施の形態において学習データを生成する工程を示したフローである。
【
図6】
図6は、本発明の第1の実施の形態において、推奨発注量計算するまでの工程を示したフローである。
【
図7】
図7は、本発明の第1の実施の形態における予測態様の第3の例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、本発明の第1の実施の形態で用いられうる店別・商品別・日別の販売実績の情報を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の第1の実施の形態の実施例において学習データ1を生成する工程を示したフローである。
【
図10】
図10は、本発明の第1の実施の形態の実施例において学習データ2を生成する工程を示したフローである。
【
図11】
図11は、本発明の第1の実施の形態の実施例において予測データを生成する工程を示したフローである。
【
図12】
図12は、本発明の第1の実施の形態の実施例において予測1及び予測2を行う工程を示したフローである。
【
図13】
図13は、本発明の第1の実施の形態の実施例において推奨発注量の算出を行う工程を示したフローである。
【
図14】
図14は、本発明の第1の実施の形態の実施例における、予測需要量、目標在庫量及び上限在庫量の関係を示したグラフである。
【
図15】
図15は、本発明の第2の実施の形態における予測態様の一例を説明するための図である。
【
図16】
図16は、本発明の第2の実施の形態において、予測モデルを構築する工程を示したフローである。
【
図17】
図17は、本発明の第2の実施の形態において、推奨発注量計算するまでの工程を示したフローである。
【
図18】
図18は、本発明の第2の実施の形態の実施例において予測3を行う工程を示したフローである。
【
図19】
図19は、本発明の第2の実施の形態の実施例において推奨発注量の算出を行う工程を示したフローである。
【
図20】
図20は、本発明の第2の実施の形態で用いられうる商品別の発注先情報を示す図である。
【
図21】
図21は、本発明の第2の実施の形態で用いられうる発注先別の発注可不可情報及び発注先別の納品リードタイムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の実施の形態
《構成》
以下、本発明に係る情報処理装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
本実施の形態の情報処理装置は、一つの装置から構成されてもよいし複数の装置から構成されてもよい。また、複数の装置から情報処理装置が構成される場合には、各装置が同じ部屋等の同じ空間に設けられる必要はなく、異なる部屋、異なる建物、異なる地域等に設けられてもよい。また、複数の装置から情報処理装置が構成される場合には、その一部をある機関が所有及び/又は管理し、残りを別の機関が所有及び/又は管理してもよい。
【0021】
図1に示すように、情報処理装置は、対象商品の在庫量及び当該対象商品に対する過去の需要実績を記憶する記憶部20と、過去の需要実績から対象商品の需要を予測する予測部10であって、対象製品のN日(「N」は2以上の整数)間の需要実績を加算することで算出されたN日合計需要実績に基づいて対象製品のN日間の合計需要予測であるN日合計需要予測を行い、対象商品の在庫量及び当該N日合計需要予測から対象商品に対する推奨発注量を算出する予測部10(
図2参照)と、予測部10で予測された推奨発注量を出力する出力部30と、を有してもよい。
図2では、過去の需要実績とその他の説明変数とからN日合計需要予測が行われている態様が示されている。N日としては、例えば3週間=21日程度を用いることができ、一例として2週間(14日)〜4週間(28日)の範囲で設定されてもよい。
【0022】
図2に示すように、予測部10は、N日合計需要予測の他に対象製品の1日後の需要も予測してもよい。
【0023】
図3に示すように、外部装置から店別・商品別・日別の販売実績が転送サーバ110を介して情報処理装置に送付されてもよい。この際、転送サーバ110からの情報は送受信部60(
図1参照)で受信され、記憶部20で記憶されてもよい。このような転送は夜間にバッチ処理として行われてもよい。また、利用者の利用する外部装置から、商品別の発注先情報、商品別・日別の特売情報(又は、商品別の商品カテゴリーコードと、商品カテゴリー別及び日別の特売情報の組み合わせ)、日別のカレンダー情報、発注先別の発注可不可情報(発注の可否を示す情報)、発注先別・発注日別の納品リードタイム、安全係数、上限在庫日数等の情報が情報処理装置に送信されてもよい。これらの情報は更新時にその都度、情報処理装置に送信されてもよい。また、当該送信は自動で行われてもよいし手動で行われてもよい。店別・商品別・日別の販売実績の情報は例えば
図8に示すような態様となっており、どの商品が、いつ、いくつ、どの取引先に売れたかが関連付けて記録されている。送受信部60は送信部と受信部の両方の機能を兼ねている。
【0024】
記憶部20で記憶されているデータが予測部10で読み出されて予測モデルが構築され、予測が実施されてもよい。後述する第一予測モデル及び第二予測モデルのような予測モデルの構築は第一期間(例えば一か月)毎に実施されてもよい。また予測モデルを用いた予測は第二期間(例えば1日)毎に実施されてもよいし、記憶部20で記憶されている発注可能日の前日に自動で実施されてもよい。予測が実施されると、需要・在庫予測結果ファイルが出力され、当該需要・在庫予測結果ファイルに基づいて利用者の端末で発注数量入力画面が表示されることになる。一例としては、発注数量入力画面に予測された発注数量が表示され、発注ボタン等の入力ボタンを利用者がクリックする等して承認することで当該発注数量の商品が発注されてもよい。また、発注数量入力画面に予測された発注数量が表示され、利用者が当該発注数量を参考にして発注数量を決定して入力するようにしてもよい。
【0025】
出力部30から出力された推奨発注量に対して承認する旨の入力が利用者から行われると、当該情報が送受信部60によって受信され、記憶部20に記憶されている所定の発注先に対象製品を推奨発注量だけ発注する発注情報が送受信部60によって送信されてもよい(
図8参照)。
【0026】
予測部10は、N日合計需要実績とN日合計需要予測とから需要予測誤差を算出してもよい(
図4参照)。そして、出力部30は、需要予測誤差を用いて対象商品に対する推奨発注量を出力してもよい。この態様を採用した場合には、「1日後の需要量」「1日後と2日後の合計需要量」・・・「1日後からN日後の需要量」をそれぞれ予測する需要予測モデルである第一予測モデルを構築した後に、「1日後の予測需要量と需要実績の誤差」「1〜2日後の合計需要予測量と合計需要実績の誤差」・・・「1〜N日後の合計需要予測量と合計需要実績の誤差」を用いて、予測誤差の予測を行うための需要予測誤差の予測モデルである第二予測モデルが予測部10によって構築されることになる。
【0027】
需要予測誤差が第一値である場合と第二値である場合(但し第一値>第二値)において、第一値である場合の安全在庫量は第二値である安全在庫量よりも大きくなってもよい。予測部は、この前提のもと対象商品に対する推奨発注量を算出してもよい。安全在庫量を一定の値とすることも考えられるが、この態様のように、需要予測誤差が大きい場合には予測が困難であると判断し、安全在庫量を多くするようにしてもよい。逆に需要予測誤差が小さい場合には、予測が容易であると判断し、安全在庫量を少なくしてもよい。このように安全在庫量を少なくすることで、実際に持つべき在庫量を少なくすることができ、在庫を持つことによるコストを抑えることができる。なお、価格の高い商品に関しては安全在庫を低く設定してもよく、第一価格以上の価格からなる商品に対する安全在庫量は第一価格未満の価格からなる商品に対する安全在庫量よりも少なくなってもよい。
【0028】
図5に示すように、第一予測モデルを構築する際には学習データ1をデータ生成部40が生成し、当該学習データ1を用いて予測部10が第一予測モデルを生成してもよい。また、第二予測モデルを構築する際には学習データ2をデータ生成部40が生成し、当該学習データ2を用いて予測部10が第二予測モデルを生成してもよい。ここでのデータ生成部40によるデータ生成は、過去の実績データに関し、必要な情報を抽出したり整理したりすることによって行われてもよい。実績データを整理する際には特殊なデータを除外するようにしてもよい。
【0029】
このようにして第一予測モデル及び第二予測モデルが生成されると、
図6に示すように、データ生成部40によって生成された予測データを用いて、第一予測モデルを用いた予測1と、第二予測モデルを用いた予測2とを実施し、推奨発注量計算1を算出部50が算出してもよい。ここでのデータ生成部40によるデータ生成は、予測対象となるデータに関し、必要な情報を抽出したり整理したりすることによって行われてもよい。
【0030】
前述したとおり、利用者の利用する外部装置から特売情報が送信される場合には(
図3参照)、記憶部20は対象商品の小売店等の納品先における(特売の予定情報である)特別販売予定情報を記憶しており、当該特別販売予定情報をモデル構築の際の説明変数の一つとして利用してもよい(
図7参照)。予測部10は、特別販売予定情報を用いて、対象商品に対する推奨発注量を予測してもよい。小売店等の納品先における特売の計画日と納品先から納品者である利用者への注文日にはタイムラグが存在するが、そのタイムラグは品目・小売業者によって様々である。このため、納品先毎のタイムラグを記憶部20が記憶し、当該タイムラグを説明変数の一つとして利用して、予測部10が予測してもよい。これらの態様では、第一予測モデルは、タイムラグ予測及び/又は特売影響予測を含む需要予測モデルとなってもよい。また、小売業者等の利用者が特売日を含む特売情報を記入することで、特売情報が需要予測モデルの生成に自動的に利用されるようになってもよい。特売情報は、特売対象となる商品、割引率、割引後の価格等が含まれてもよい。なお、販売の際の割引率が同じ値であっても納品先によって需要量に与える影響が異なることがある。このため、対象商品及び発注業者である納品先に応じて推奨発注量を変えるように予測部10が予測することは、この意味からしても有益である。
【0031】
記憶部20は対象納品先との取引条件情報を記憶してもよい。予測部10は、取引条件情報を用いて、対象商品に対する推奨発注量を予測してもよい。例えば欠品が許されない顧客(納品先)へ納品する第一商品では安全在庫量を多くし、他方、欠品がある程度許される顧客(納品先)へ納品する第二商品では安全在庫量を少なくして推奨発注量を予測してもよい。なお、予測部10は、N日合計需要実績とN日合計需要予測とから需要予測誤差を算出し、需要予測誤差及び取引条件情報に基づいて安全在庫量を算出してもよい。
【0032】
予測部10は人工知能機能を有してもよい。予測部10は、人工知能機能を用いて、過去の需要実績から対象商品の需要を予測してもよく、第一予測モデル及び第二予測モデルの各々が機械学習によって生成されてもよい。予測部10は、過去の実績データから生成される説明変数及び当該説明変数に対する係数を用いて、対象商品の需要を予測してもよい。説明変数は日付、曜日を含むカレンダー情報、気温、天候を含む気象情報等を含んでもよい。
【0033】
上記人工知能機能の一例として、機械学習の手法を用いた分類器を用いることができる。この分類器によれば、ある過去期間の条件と需要実績から説明変数及び当該説明変数に対する係数が決定される。つまり、機械学習技術によって、利用する説明変数(要素)と、その係数(重み)が定められる。そして、定められた説明変数(要素)と、その係数(重み)を、対象商品に関するデータに適用することで、対象商品の需要を予測してもよい。
【0034】
《作用・効果》
次に、上述した構成からなる本実施の形態による作用・効果であって、未だ説明していないものを中心に説明する。なお、「作用・効果」で述べるあらゆる構成は、本実施の形態の構成として利用することができる。
【0035】
予測部10が、対象製品のN日(「N」は2以上の整数)間の需要実績を加算することでN日合計需要実績を算出し、当該N日合計需要実績に基づいて、対象商品に対する推奨発注量を出力する態様を採用した場合には、予測誤差を低減させたうえで、推奨発注量を出力することができる(
図2参照)。つまり、需要予測の予測対象を「1日後の需要量」「2日後の需要量」・・・「N日後の需要量」とするのではなく、「1日後の需要量」「1日後と2日後の合計需要量」・・・「1日後からN日後の需要量」とすることで、予測誤差を低減することができる。需要が発生する日をx日後と特定して予測することは困難であるが、ある量の需要を1日〜N日後というように「期間の幅」をもって予測することで予測精度を高めることができる。なおこの効果を得るに際しては、1日後、2日後、・・・に必要な需要量を単純に足し合わせるのではなく、1日〜N日後というように「期間の幅」をもって需要予測モデル(第一予測モデル)を生成することが極めて有益である。
【0036】
予測部10がN日合計需要予測の他に対象製品の1日後の需要も予測する態様を採用した場合には、1日後の需要も(仮情報として)予測することができる。
【0037】
予測部10がN日合計需要実績とN日合計需要予測とから需要予測誤差を算出し、需要予測誤差を用いて対象商品に対する推奨発注量を算出する態様を採用した場合には(
図4参照)、一定程度ならした特殊要因等によってずれる在庫の量を、さらに需要予測誤差を用いて修正したうえで推奨発注量を得ることができる点で極めて有益である。つまり、本態様では需要予想の誤差までも加味して推奨発注量を出力するので、かなり高い精度で需要量を予想でき、精度の高い推奨発注量を提供できる。
【0038】
需要予測誤差が第一値である場合と第二値である場合(但し第一値>第二値)において、第一値である場合の安全在庫量は第二値である安全在庫量よりも大きくなる前提のもと、予測部10が対象商品に対する推奨発注量を出力する態様を採用した場合には、需要予測誤差が大きい場合には多めの在庫を保持できるようになる。需要予想誤差が大きい場合には必要な在庫量が予想外に多くなる可能性が高まる。このため、需要予測誤差が大きい場合には安全在庫量を多く設定することで、在庫量が不足するという事態が発生することを防止できる。
【0039】
予測部10が特別販売予定情報を用いて対象商品に対する推奨発注量を予測する態様を用いた場合には(
図7参照)、バーゲン等で出荷量が多くなる、すなわち必要な在庫量が多くなる可能性を加味して推奨発注量を予測することができるようになる。なお、対象商品及び割引率だけではなく、集客力や客層の異なる納品先によっても必要な在庫量が変わってくることから、納品先、対象商品及び割引率を加味して推奨発注量を予測することは非常に有益である。
【0040】
予測部10が取引条件情報を用いて対象商品に対する推奨発注量を予測する態様を採用した場合には、取引条件も加味して推奨発注量を予測することができる。つまり、納品先との取引条件を加味して、在庫をギリギリの量で持つことができるのか、または在庫を余裕をもって持つ必要があるのかという条件を加味することができる。この結果、取引継続のために在庫不足を起こしてはならない納品先と、必要な在庫量を極力抑えてコストを抑えることができる納品先とを区別したうえで必要な在庫量を算出し、推奨発注量を予測できる。
【0041】
予測部10が、N日合計需要実績とN日合計需要予測とから需要予測誤差を算出し、需要予測誤差及び取引条件情報に基づいて安全在庫量を算出する態様を採用した場合には、需要予測誤差の大小と顧客(納品先)との取引条件との両方を用いて安全在庫量を算出し、推奨発注量を予測できる点で有益である。
【0042】
出力部30から出力された推奨発注量に対して承認する旨の入力が行われると、記憶部20に記憶されている所定の発注先に対象製品を推奨発注量だけ発注する発注情報を送信する態様を採用した場合には、出力部30から出力された推奨発注量を承認するだけで、所定の発注先に商品を発注できるようになる。
【0043】
発注点を算出するためには、以下のような計算式を用いることも考えられる。
【0044】
発注点=販売数量(過去平均又は予測値)×発注リードタイム+安全在庫(式1)
安全在庫=安全係数×1日の販売数量のばらつき×√発注リードタイム(式2)
上記式中の「安全係数」に関しては「受注量が正規分布に従う」と仮定することが考えられるが、実際にはマイナスの受注量になることはなく正規分布には従っていない点で、当該仮定は誤っている。上記式中の「発注リードタイム」に関しては、「一定の需要が持続的に生じ、一日あたりの需要量に日数を乗じれば期間需要量を求められる」と仮定することが考えられるが、単純な日数倍で需要を表すことはできない点で当該仮定は誤っている。上記式中の「1日の販売数量のばらつき」に関しては、「1日の販売数量のばらつきがほぼ一定である」と仮定することが考えられるが、実際には販売数量のばらつきは変動している点で当該仮定は誤っている。上記式中の「√発注リードタイム」については、「翌日の販売数量のばらつきと翌々日の販売数量のばらつきが独立(無相関)である」と仮定することが考えられるが、実際にはばらつきとばらつきの間には相関が存在している点で当該仮定は誤っている。
【0045】
この点、予測部10が人工知能機能を有し、予測部10が人工知能機能を用いて過去の需要実績から第一予測モデル及び/又は第二予測モデルの各々を生成する態様を採用した場合には、上記の誤った仮定を採用することがない点で有益である。
【0046】
《実施例》
次に本実施の形態による実施例についての説明を行う。
【0047】
本実施例では、店別・商品別・日別の販売実績、商品別の商品カテゴリーコード、商品カテゴリー別・日別の特売情報及び日別のカレンダー情報を用いて、学習データ1を生成している(
図9参照)。この学習データは基準日毎、商品毎に作成されることになる。より具体的には、第一商品について第一基準日の予測が終了すると、第一商品について第二基準日の予測が行われ、その工程が繰り返される。そして、第一商品についての予測が終了すると、第二商品について同様の予測が繰り返される。この一連の工程で、需要予測モデルである第一予測モデルを生成するための学習データ1が作成される。
【0048】
図9に示す態様では、説明変数として、商品gの対象日i−m、・・・、対象日i−1における販売実績、商品gの対象日i−m、・・・、対象日i−1における特売情報、商品gのカテゴリー、基準日iの曜日、基準日iの属する週、基準日iが祝日か否か等用いられ、目的変数として商品gの基準日i、・・・、基準日i〜基準日i+nにおける販売実績の合計が用いられている。なお、「目的変数」は「予測したい変数」のことを意味している。
【0049】
次に、学習データ1と第一予測モデルとを用いて、学習データ2が作成される(
図10参照)。より具体的には学習データ1の説明変数を第一予測モデルに適用し、商品gの基準日i、基準日i〜基準日i+1、・・・、基準日i〜基準日i+nにおける販売量の予測値を算出する。当該予測値と学習データ1の目的変数とから誤差を算出する。より具体的には、商品gの基準日iにおける販売実績と商品gの基準日iにおける販売量の予測値の誤差、商品gの基準日i〜基準日i+1における販売実績と商品gの基準日i〜基準日i+nにおける販売量の予測値の誤差を算出し、これらを学習データ2の目的変数の目的値とする。なお、用いられる誤差は絶対誤差であってもよいし二乗誤差であってもよいし、その他の誤差であってもよい。また、学習データ2の説明変数は学習データ1の説明変数と同じ内容となってもよい。
【0050】
この学習データ2も基準日毎、商品毎に作成されることになる。より具体的には、第一商品について第一基準日の予測が終了すると、第一商品について第二基準日の予測が行われ、その工程が繰り返される。そして、第一商品についての予測が終了すると、第二商品について同様の予測が繰り返される。この一連の工程で、予測誤差の予測を行う需要予測誤差の予測モデルである第二予測モデルを生成するための学習データ2が作成される。
【0051】
次に、予測データを作成する。本実施例では、店別・商品別・日別の販売実績、商品別の商品カテゴリーコード、商品カテゴリー別・日別の特売情報及び日別カレンダー情報を用いて、予測データを生成している(
図11参照)。説明変数としては、学習データ1を生成する際と同じく、販売実績、特売情報、商品カテゴリー、曜日、週、祝日であるか否か等が用いられてもよい。この予測データは発注可能な商品毎に作成されることになる。
【0052】
次に、予測を行う(
図12参照)。本実施例では、予測データの説明変数を予測モデル1に適用し、予測値1を算出している。予測値1としては、商品gの発注日tにおける販売量の予測値、商品gの発注日t〜t+1における販売量の予測値、・・・、商品gの発注日t〜t+nにおける販売量の予測値が算出される。
【0053】
その後、予測データの説明変数を予測モデル2に適用し、予測値2を算出している。予測値2としては、商品gの発注日tにおける販売量予測値の誤差の予測値、商品gの発注日t〜t+1における販売量予測値の誤差の予測値、・・・、商品gの発注日t〜t+nにおける販売量予測値の誤差の予測値が算出される。販売量の予測値及び販売量予測値の誤差の予測値の各々は発注可能な商品毎に算出される。
【0054】
次に、推奨発注量を計算する(
図13参照)。
【0055】
商品別の発注先情報、発注先別の発注可不可情報及び発注先別の納品リードタイムを用いて、ある商品gの発注先と、発注日tより、発注日tの次に発注可能日oと当該発注可能日oに発注した際に納品される納品日dを算出する(S131)。
【0056】
次に、予測値1より、ある商品gの発注日tから納品日dにおける合計販売量の予測値を算出し、これらを予測需要量aとする(S132)。
【0057】
次に、予測値2より、ある商品gにおける発注日t〜t+1における合計販売量予測値の誤差の予測値eを算出する(S133)。
【0058】
そして、目標在庫量q1をq1=a+λ×eによって算出する(S134)。λは安全係数であり、安全係数λは、どの程度欠品が起きる確率を許容できるか、その許容水準から定まる値である。安全係数λは安全在庫数と紐づけられてもよく、安全在庫数が多い場合には安全係数λが大きくなり、安全在庫数が少ない場合には安全係数λが小さくなってもよい。
【0059】
予測値1から、ある商品gの発注日t〜t+rにおける合計販売量の予測値を算出し、当該予測値を上限在庫量q2とする(S135)。ここでrは上限在庫日数であり、在庫回転日数がどのぐらい長くなっても許容できるかを示すものであり、その許容日数となっている。
【0060】
そして、目標在庫量q1及び上限在庫日数q2と、在庫量及び発注は済んでいるが未入庫である商品の量である発注残とを用い、算出部50が推奨発注量を算出する(S136)。一例としては、在庫量+発注残<min(q1,q2)であれば、min(q1,q2)−(在庫量+発注残)をある商品gの推奨発注量として算出部50が算出する。他方、(在庫量+発注残)≧min(q1,q2)であれば推奨発注量が0であるとして、算出部50が算出する。min(q1,q2)とはq1及びq2のうち、小さいほうの値を意味している。
【0061】
以上の工程が、発注可能な商品に対して繰り返し行われる。
【0062】
このようにして算出された予測需要量、目標在庫量及び上限在庫量の関係は例えば
図14に示すような態様となる。
第2の実施の形態
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
【0063】
第1の実施の形態では絶対誤差、二乗誤差等の一定の仮定を用いていたが、本実施の形態では、誤差を確率的に出して用いている。本実施の形態では、予測部10が、N日合計需要予測に関し、ある需要量と当該ある需要量が生じる確率を用いた第三予測モデルを生成し、記憶部20に記憶された対象商品の在庫量及び第三予測モデルを用いてN日合計需要予測を行い、当該N日合計需要予測を用いて対象商品に対する推奨発注量を算出する、態様となっている(
図15参照)。そして、出力部30は、対象商品に対する推奨発注量を出力するようになっている。本実施の形態では、第1の実施の形態で説明したあらゆる態様を採用することができる。第1の実施の形態で説明した部材については同じ符号を用いて説明する。
【0064】
本実施の形態のように、予測部10がN日合計需要予測に関してある需要量と当該ある需要量が生じる確率を予測し、出力部30がある需要量及び確率を用いて対象商品に対する推奨発注量を出力する態様を採用した場合には、対応する需要量毎の発生確率を予測したうえで、推奨発注量を提供できるようになる。この態様では、利用する情報量が第1の実施の形態と比べて大きくなるが、より正確な予測を期待できる。
【0065】
予測対象となる需要量は、非負・離散であり、かつ、その分布は実際には既知の確率分布に従わないことが多いが、需要予測では(正規分布等の)既知の確率分布に従うことを仮定することが考えられる。しかしながら、本実施の形態では、実際の需要量の分布にしたがい、需要量の確率分布を任意の形状のまま取り扱うことで、より一層合理的な需要予測と在庫管理を実現できるようになる。
【0066】
本実施の形態では、予測部10が、第M需要量(「M」は1以上の整数である。)と、第M需要量が生じる第M確率を予測し、第M需要量と第M確率を掛けた数値を合計することで、対象商品に対する需要予測量を予測するようにしてもよい。そして、この需要予測量に関してN日間の情報を加算することで、N日合計需要予測を行ってもよい。
【0067】
図16に示すように、確率的需要予測モデルである第三予測モデルを構築する際には学習データ1を準備し、当該学習データ1を用いて予測部10が第三予測モデルを生成する。このようにして第三予測モデルが生成されると、
図17に示すように、作成された予測データを用いて、予測3を実施し、推奨発注量計算2を算出部50が算出する。ここで用いられる学習データ1は第1の実施の形態と同じものであってもよいし、別のデータであってもよい。学習データの生成及び予測データの生成は第1の実施の形態で述べたのと同様の態様が用いられる。
【0068】
予測3を実施する場合には、予測データの説明変数を第三予測モデルに適用し、予測分布3を算出してもよい(
図18参照)。予測3は発注可能な商品毎に作成されてもよい。より具体的には、予測データの説明変数を第三予測モデルに適用して、予測分布3を予測部10が予測する。予測分布3では、商品gの発注日tにおいて販売量がmとなる確率(確率分布)p(g,t|m)、商品gの発注日t〜t+1における販売量がmとなる確率(確率分布)p(g,t+1|m)、・・・、商品gの発注日t〜t+nにおける販売量がmとなる確率(確率分布)p(g,t+n|m)が予測される。p(g,t+n|m)は、ある商品gの発注日t〜t+nにおける合計販売量がmとなる確率を示している。
【0069】
《実施例》
次に本実施の形態による実施例についての説明を行う。
【0070】
本実施例では、
図19に示すように、商品別の発注先情報、発注先別・日別の発注可不可情報及び発注先別・日別の納品リードタイムを用いて、ある商品gの発注先と、発注日tより、発注日tの次に発注可能日oと当該発注可能日oに発注した際に納品される納品日dを算出している(S191)。なお、商品別の発注先情報は例えば
図20に示すようになっており、商品コードと発注先コード(仕入先コード)との対応が記録されている。発注先別(仕入先別)の発注可不可情報及び発注先別の納品リードタイムに関しては、発注先コード(仕入先コード)と各曜日の発注可及び不可、納品リードタイム、各曜日の納品可及び不可が関連付けて記録されてもよい(
図21参照)。
【0071】
予測分布3と許容欠品率γより
を満たす最小のq3を求める(S192)。次に、予測分布3と上限在庫日数r、許容長期在庫率ξより
を満たす最大のq4を求める(S193)。ここでp(g,t+d|m)は、ある商品gの発注日t〜t+dにおける合計販売量がmとなる確率を示し、p(g,t+r|m)は、ある商品gの発注日t〜t+rにおける合計販売量がmとなる確率を示している。許容欠品率γとは、どの程度欠品が起きる確率を許容できるかを示す値であり、許容長期在庫率ξとは、どの程度長期在庫が発生する確率を許容できるかを示す値である。
【0072】
そして、q3とq4とを比較し、q3>q4となる場合にはq3を修正してq3≦q4となるようにする(S195)。q3の修正は利用者が入力することで行ってもよいし、例えば算出部50が自動で行ってもよい。
【0073】
q3≦q4となる場合には、q3と在庫量+(発注は済んでいるが未入庫である商品の量である)発注残を比較し、在庫量+発注残<q3であれば、q3−(在庫量+発注残)を商品gの推奨発注量とする(S196)。他方、在庫量+発注残≧q3であれば推奨発注量=0とする。
【0074】
上述した各実施の形態の記載及び図面の開示は、特許請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎず、上述した実施の形態の記載又は図面の開示によって特許請求の範囲に記載された発明が限定されることはない。また、当然ながら、出願当初の特許請求の範囲の記載は本件特許明細書の範囲内で適宜変更することもでき、その範囲を拡張することもできる。