特許第6807466号(P6807466)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6807466分析顕微鏡の寸法較正システムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807466
(24)【登録日】2020年12月9日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】分析顕微鏡の寸法較正システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/34 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
   G02B21/34
【請求項の数】33
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-545729(P2019-545729)
(86)(22)【出願日】2017年11月7日
(65)【公表番号】特表2019-537075(P2019-537075A)
(43)【公表日】2019年12月19日
(86)【国際出願番号】US2017060419
(87)【国際公開番号】WO2018089369
(87)【国際公開日】20180517
【審査請求日】2019年7月8日
(31)【優先権主張番号】62/418,969
(32)【優先日】2016年11月8日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509027021
【氏名又は名称】サーモ エレクトロン サイエンティフィック インストルメンツ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】デック フランシス ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ドレイパー カーラ エス
(72)【発明者】
【氏名】ローネマス アラン
(72)【発明者】
【氏名】キーフィー ウィリアム ロバート
【審査官】 岡田 弘
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2016/0282598(US,A1)
【文献】 特開平02−141601(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3188019(JP,U)
【文献】 特開2004−070036(JP,A)
【文献】 特開平05−183916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 19/00−21/00
G02B 21/06−21/36
G01B 11/00−11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に明るい特徴と実質的に暗い特徴の実質的に非周期的なパターンに配置された大きい特徴の配列を備え、前記大きい特徴の各々が実質的に非周期的な行および列のパターンに配置された複数の小さい特徴を備える、多寸法特徴構造を備えた分析顕微鏡用の較正要素であって、
前記実質的に明るい特徴の前記小さい特徴は、50%を超える確率で出現する光反射構造を含み、前記実質的に暗い特徴の前記小さい特徴は、50%を超える確率で出現する光吸収構造又は光透過構造を含み、さらに前記実質的に明るい特徴と前記実質的に暗い特徴は、光ビームによって照明されたときにコントラストを示す、較正要素
【請求項2】
前記光ビームが、レーザ光ビームを含む、請求項1に記載の較正要素。
【請求項3】
前記ビームが、赤外光ビームを含む、請求項1に記載の較正要素。
【請求項4】
前記コントラストが、前記光ビームの反射において示される、請求項1に記載の較正要素。
【請求項5】
前記大きい特徴が、約40μmの正方形の寸法範囲を含み、前記小さい特徴が、約8μmの正方形の寸法範囲を含む、請求項に記載の較正要素。
【請求項6】
前記光反射構造が、金属被覆された特徴を含む、請求項に記載の較正要素。
【請求項7】
前記光吸収構造が、ブラッククロム被覆された特徴を含む、請求項に記載の較正要素。
【請求項8】
前記光吸収構造が、フォトレジスト被覆された特徴を含む、請求項に記載の較正要素。
【請求項9】
前記実質的に非周期的なパターンが、十字線をさらに含む、請求項1に記載の較正要素。
【請求項10】
前記大きい特徴と小さい特徴の実質的に非周期的なパターンが、対物レンズの視野と関連付けられた少なくとも2つの領域にわたって繰り返されない、請求項1に記載の較正要素。
【請求項11】
第1の領域が、50〜600μmの範囲の寸法を含み、第2の領域が、5〜60μmの範囲の寸法を含む、請求項10に記載の較正要素。
【請求項12】
前記多寸法特徴構造が、スライド上に配設されている、請求項1に記載の較正要素。
【請求項13】
前記多寸法特徴構造が、前記スライドを通して上方から撮像されるように、前記スライドの底面上に配設されている、請求項12に記載の較正要素。
【請求項14】
倍率測定システムであって、
既知の距離にわたって並進するように構成された顕微鏡ステージと、
前記顕微鏡ステージ上に配設された較正要素であって、実質的に明るい特徴と実質的に暗い特徴の実質的に非周期的なパターンに配置された大きい特徴の配列を備え、前記大きい特徴の各々が実質的に非周期的な行および列のパターンに配置された複数の小さい特徴を備える、多寸法特徴構造を備え、前記実質的に明るい特徴の前記小さい特徴は、50%を超える確率で出現する光反射構造を含み、前記実質的に暗い特徴の前記小さい特徴は、50%を超える確率で出現する光吸収構造又は光透過構造を含み、さらに前記実質的に明るい特徴と前記実質的に暗い特徴は、光ビームによって照明されたときにコントラストを示す、較正要素と、
対物レンズを通して前記多寸法特徴構造の複数の画像を収集する1つ以上の検出器と、
並進の前後の前記多寸法特徴構造の画像の相関に基づいて、前記対物レンズの倍率レベルを決定するように構成されたコンピュータと、を備える、倍率測定システム。
【請求項15】
前記コンピュータが、決定された倍率レベルと、対物レンズの実施形態と各々関連付けられた複数の倍率レベルのうちの1つとの間の最も近い一致に基づいて、前記画像を取得した前記対物レンズを識別するようにさらに構成されている、請求項14に記載の倍率測定システム。
【請求項16】
前記検出器が、分光計を含む、請求項14に記載の倍率測定システム。
【請求項17】
前記検出器が、光学カメラを含む、請求項14に記載の倍率測定システム。
【請求項18】
前記コントラストが、前記光ビームの反射において示される、請求項14に記載の倍率測定システム。
【請求項19】
前記光反射構造が、金属被覆された特徴を含む、請求項14に記載の倍率測定システム。
【請求項20】
前記光吸収構造が、ブラッククロム被覆された特徴を含む、請求項14に記載の倍率測定システム。
【請求項21】
前記光吸収構造が、フォトレジスト被覆された部分を含む、請求項14に記載の倍率測定システム。
【請求項22】
前記較正要素が、十字線要素を含む、請求項14に記載の倍率測定システム。
【請求項23】
前記大きい特徴と小さい特徴の実質的に非周期的なパターンが、対物レンズの視野と関連付けられた少なくとも2つの領域にわたって繰り返されない、請求項14に記載の倍率測定システム。
【請求項24】
第1の領域が、50〜600ミクロンの範囲の寸法を含み、第2の領域が、5〜60ミクロンの範囲の寸法を含む、請求項23に記載の倍率測定システム。
【請求項25】
前記較正要素が、前記顕微鏡ステージ上に取り付けられたサンプルスライド上に配設されている、請求項14に記載の倍率測定システム。
【請求項26】
前記較正要素が、前記サンプルスライドを通して上方から撮像されるように、前記サンプルスライドの底面上に配設されている、請求項25に記載の倍率測定システム。
【請求項27】
前記較正要素が、前記顕微鏡ステージ上に取り付けられている、請求項14に記載の倍率測定システム。
【請求項28】
倍率を測定するための方法であって、
実質的に明るい特徴と実質的に暗い特徴の実質的に非周期的なパターンに配置された大きい特徴の配列を備え、前記大きい特徴の各々が実質的に非周期的な行および列のパターンに配置された複数の小さい特徴を備える、多寸法特徴構造の画像を取得するステップであって、前記実質的に明るい特徴の前記小さい特徴は、50%を超える確率で出現する光反射構造を含み、前記実質的に暗い特徴の前記小さい特徴は、50%を超える確率で出現する光吸収構造又は光透過構造を含み、さらに前記実質的に明るい特徴と前記実質的に暗い特徴は、光ビームによって照明されたときにコントラストを示し、かつ前記多寸法特徴構造が分析顕微鏡のステージ上に配設されている、取得するステップと、
前記ステージを既知の距離にわたって並進させるステップと、
前記多寸法特徴構造の第2の画像を取得するステップと、
第1の画像および第2の画像を取得した対物レンズの倍率レベルを、第1の画像および第2の画像内の前記多寸法特徴構造の相関に基づいて決定するステップと、を含む、方法。
【請求項29】
決定された倍率レベルと、対物レンズの実施形態と各々関連付けられた複数の倍率レベルのうちの1つとの間の最も近い一致に基づいて、前記第1の画像および前記第2の画像を取得した前記対物レンズを識別するステップをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記第1の画像および前記第2の画像が、分析画像を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記第1の画像および前記第2の画像が、光学画像を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
画像間のシフトを決定するための方法であって、
実質的に明るい特徴と実質的に暗い特徴の実質的に非周期的なパターンに配置された大きい特徴の配列を備え、前記大きい特徴の各々が実質的に非周期的な行および列のパターンに配置された複数の小さい特徴を備える、多寸法特徴構造の光学画像を取得するステップであって、前記実質的に明るい特徴の前記小さい特徴は、50%を超える確率で出現する光反射構造を含み、前記実質的に暗い特徴の前記小さい特徴は、50%を超える確率で出現する光吸収構造又は光透過構造を含み、さらに前記実質的に明るい特徴と前記実質的に暗い特徴は、光ビームによって照明されたときにコントラストを示し、かつ前記多寸法特徴構造が分析顕微鏡のステージ上に配設されている、取得するステップと、
前記多寸法特徴構造の分析画像を取得するステップと、
前記光学画像と前記分析画像との間のシフトを、前記光学画像および前記分析画像内の前記多寸法特徴構造の相関に基づいて決定するステップと、を含む、方法。
【請求項33】
前記シフトが、光検出器と分析検出器との間の相対的なアライメントの差を示す、請求項32に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年11月8日に出願された、米国仮特許出願第62/418,969号の利益を主張する。この出願の内容は、その全体が参照によって組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、分析顕微鏡の較正のための改善された較正目盛および方法を対象とする。
【背景技術】
【0003】
分析顕微鏡の異なる実施形態が、様々な用途に使用され、典型的には、サンプルの試験のための共有ビーム経路を通して複数の動作モードを提供することが一般的に理解されている。例えば、化学または材料分析用に構成された分析顕微鏡の実施形態は、可視光観察、および化学または材料分析のために関心のある波長でサンプルを試験するための分析ビームの使用を含む、2つ以上の動作モードを提供し得る。当業者は、化学または材料分析が、赤外光、ラマン散乱光、または関連技術で典型的に使用される他の手法を使用して達成され得ることを理解する。
【0004】
分析顕微鏡の典型的な実施形態は、画像内のサンプルの詳細な分析を可能にする物理単位で正確な寸法および座標を用いて様々な倍率レベルでサンプルの撮影された画像を生成する。使用される物理単位の例は、当業者には周知である(例えば、ミクロン(μm)等のメートル単位、インチ等の帝国単位、比率(例えば、μm:ピクセル)等)。一般に、各画像に提供される寸法目盛は、ユーザによって選択された光学構成(例えば、倍率レベル、付属品等)に依存し、各画像に提供される寸法目盛は、任意の所与の構成の顕微鏡の実際の倍率に忠実であることが重要である。顕微鏡ステージの絶対位置基準が、例えば、ユーザが将来の試料に対する所望される関心領域に確実に戻ることができるように、画像内の寸法目盛を顕微鏡ステージの物理的位置に相関させることを可能にするために重要であることもまた理解されている。
【0005】
正確な倍率および絶対座標を取得および適用するプロセスは、一般的に分析顕微鏡の「較正」と呼ばれる。いくつかの場合において、較正は、位置基準として、較正された「対物ミクロメータ(ステージマイクロメータ)」を使用して、面倒かつ誤差を生じやすいプロセスによって達成される。例えば、対物ミクロメータは、典型的には、対物レンズを通して見られ得るか、または顕微鏡を通して光学撮像構成要素(例えば、ビデオカメラ)を使用して撮像され得る、正確な目盛を備えるレチクルを含む。標準的なレチクルの実施形態は、接眼レンズを通して、または画像内で見られたときに、1つ以上の基準要素を提供し得る、単一軸に並べられた規則的に間隔を有する一連の区画(例えば、線または他の視覚インジケータ)を含む。現在説明されている例において、2つのレチクル区画は、ピクセルでの距離値(例えば、レチクル上の2つの選択された点の間の)を計算するために使用される基準点を提供し得る。レチクルの区画の間隔は、倍率レベルに基づく変換係数が特定の顕微鏡構成(例えば、μm:ピクセルにおける)で寸法目盛を決定するために使用され得るように、精密に較正され、既知とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
レチクルを使用する視覚ベースの較正プロセスが、特定の倍率での距離の尺度を基礎付けるために使用されるレチクル上の点(レチクル目盛の線の縁)をユーザが手動で選択する必要があるため、誤差を生じやすいことが一般的に理解されている。プロセスはまた、異なる軸での較正が所望される場合、異なるレチクル配向で繰り返されなければならない。例えば、ユーザがどの点を選択するかは、特定のユーザの個々の裁量および意見次第であり、必ずしもレチクル目盛によって提供される正確な位置に忠実であるか、またはそれと一致するわけではない。ユーザが選択した点の変動は、次いで、計算されたピクセル数の誤差、およびそのピクセル計算から決定された結果として生じる情報に換算される。かかる誤差の考えられる結果の例としては、それぞれの画像と関連付けられた目盛の不正確さに起因して複数の画像を正確に整列(例えば、結合または重ね合わせ)させることができないことを指す。
【0007】
また、標準的なレチクルの実施形態が、広範囲の倍率にわたって、かつ複数の軸にわたって使用することが困難である、単一の周期的な目盛レベルに制限されるという事実に悩まされることもまた一般的に理解されている。例えば、分析顕微鏡のいくつかの実施形態で利用可能な全範囲の倍率は、単一の標準的なレチクルが全範囲にわたる区画の正確な解像度を可能にするために十分な目盛を有しない、約20倍の倍率変化に及ぶ場合がある。言い換えると、標準的なレチクルの目盛の単一の周期性は、特定の倍率範囲に対しては有効であり得るが、より高い倍率での視野内の区画数の厳密な制限を有すると共に、より低い倍率で区画を分割することができない。それゆえに、異なる目盛を有する標準的なレチクルの複数の実施形態を使用しなければならないか、または単一の標準的なレチクルの実施形態の限られた倍率範囲内で有効であるように選択しなければならない。
【0008】
標準的なレチクルの実施形態の周期性が、正確な較正結果を生成するために必要な目盛上の全てのマークを典型的には認識することができない較正ソフトウェアを使用する自動化に適していないことに留意することもまた重要である。本例において、標準的なレチクルの画像のフーリエ変換を採用する較正ソフトウェアは、典型的には、画像の寸法目盛を較正するために正確に使用され得る単一最大値の代わりに複数の最大値(例えば、ピーク)を生成する。
【0009】
倍率にわたって、かつ広範囲の倍率に有効に較正することができないことから生じ得るさらに別の問題としては、分析顕微鏡の倍率設定のレベルを自動的に検出すること(例えば、対物レンズの倍率レベルを識別すること)ができないことが挙げられる。例えば、顕微鏡の倍率設定がいくつかの機構によって変化したとき、コンピュータソフトウェアまたはユーザに知らせる自動化された指示は、一般的に存在しない。当業者は、倍率の変化がユーザを介して(例えば、対物レンズの手動変更を通して)、経時的な構成要素特性の変化(例えば、光学構成の劣化)を介して、または環境変化(例えば、温度)に応答して起こり得ることを理解する。いくつかの場合において、システム内の構成要素を自動的に識別する精巧な手段が、倍率レベルが予想されたレベルと異なる、いくつかの指示を提供することができるが、かかる手段でさえも誤差の対象となり得る。例えば、不正確な倍率レベルの使用は、対物レンズとサンプルまたはステージとの間の物理的接触等の有害な結果をもたらし得、それは潜在的に、構成要素を損傷させるか、またはサンプルを使用不可能にし得る。さらに、想定されるものとは異なる倍率設定を使用する分析は、ユーザまたはソフトウェアに、サンプル上の所望される関心領域を見失わせ得る。
【0010】
異なる倍率レベルを有する異なる対物レンズが、一般的に、互いに対する焦点(焦点スポットと呼ばれることもある)の精密な位置に、いくらかの差を有することになることもまた理解されよう。さらに、同一対物レンズは、対物レンズが光路から外に移動し、次いで、光路に戻るときに焦点スポット位置にある程度の差を有し得る(例えば、2.5μmの位置の差を含み得る)。これらの差は、「焦点誤差」と呼ばれ得、これは、オフセット補正値の正確な測定および計算なしで結果として得られる画像内の要素の位置の差を引き起こし得る。
【0011】
それゆえに、自動化に適しており、かつ広範囲の倍率レベルにわたって使用可能である、改善された較正目盛に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらおよび他の必要性に対処するシステム、方法、および製品は、例示的、非限定的な実装に関して本明細書に説明される。様々な代替、変更および等価物が可能である。
【0013】
光ビームによって照明されたときにコントラストを示す実質的に非周期的なパターンの特徴を含む、分析顕微鏡用の較正要素の実施形態が説明される。
【0014】
また、既知の距離にわたって並進するように構成された顕微鏡ステージと、顕微鏡ステージ上に配設された較正要素であって、光ビームによって照明されたときにコントラストを示す実質的に非周期的なパターンの特徴を含む、較正要素と、対物レンズを通して非周期的なパターンの特徴の複数の画像を収集する1つ以上の検出器と、並進の前後の非周期的なパターンの画像の相関に基づいて対物レンズの倍率レベルを決定するように構成されたコンピュータと、を備える、倍率測定システムの実施形態が説明される。
【0015】
さらに、光ビームによって照明されたときにコントラストを示す非周期的なパターンの特徴の画像を取得することであって、較正要素が、非周期的なパターンを含み、かつ分析顕微鏡のステージ上に配設されている、取得することと、ステージを既知の距離にわたって並進させることと、非周期的なパターンの第2の画像を取得することと、第1の画像および第2の画像を取得した対物レンズの倍率レベルを、第1の画像および第2の画像内の非周期的なパターンの相関に基づいて決定することと、を含む、倍率を測定するための方法の実施形態が説明される。
加えて、光ビームによって照明されたときにコントラストを示す非周期的なパターンの特徴の光学画像を取得することであって、較正要素が、非周期的なパターンを含み、かつ分析顕微鏡のステージ上に配設されている、取得することと、非周期的なパターンの分析画像を取得することと、光学画像と分析画像との間のシフトを、光学画像および分析画像内の非周期的なパターンの相関に基づいて決定することと、を含む、画像間のシフトを決定するための方法の実施形態が説明される。
【0016】
上記の実施形態および実装は、必ずしも互いに包含的または排他的ではなく、それらが、同一または異なる、実施形態または実装と関連して提示されているか否かにかかわらず、矛盾せず、かつ別様に可能な任意の様式で組み合わせられ得る。一実施形態または実装の説明は、他の実施形態および/または実装に関して限定することを意図するものではない。また、本明細書の他の箇所に説明されている任意の1つ以上の機能、ステップ、動作、または技術は、代替的な実装において、発明の概要に説明された任意の1つ以上の機能、ステップ、動作、または技術と組み合わせられ得る。したがって、上記の実施形態および実装は、限定ではなく例示的である。
【0017】
上記およびさらなる特徴は、添付の図面と併せて読まれたときに、以下の詳細な説明からより明確に理解されよう。図面において、類似の参照番号は、類似の構造、要素、または方法ステップを示し、参照番号の左端の数字は、参照要素が最初に現れる図の番号を示す(例えば、要素120は、図1の最初に現れる)。しかしながら、これらの規則の全ては、限定ではなく、典型的または例示的であることを意図している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】分析顕微鏡の一実施形態および関連するコンピュータシステムの簡略化された図解表現である。
図2】ステージおよび較正要素を備える、図1の分析顕微鏡の一実施形態の簡略化された図解表現である。
図3図2の較正要素の一実施形態の一例である。
図4A】異なる特徴寸法を例示する、図2の較正要素の一実施形態の例である。
図4B】異なる特徴寸法を例示する、図2の較正要素の一実施形態の例である。
図5】互いに対してある程度シフトされた、図2の較正要素のパターンの2つの画像の例である。
図6A図5のシフトの程度を識別する相互相関関数の結果の一実施形態の例である。
図6B図5のシフトの程度を識別する相互相関関数の結果の一実施形態の例である。
図7】互いに対してある程度だけシフトされた、図2の較正要素のパターンの2つの画像の例である。
図8A図7のシフトの程度を識別する相互相関関数の結果の一実施形態の例である。
図8B図7のシフトの程度を識別する相互相関関数の結果の一実施形態の例である。
図9図2の光学画像および較正要素のパターンの分析画像の例である。
図10A図9の画像を取得した検出器間のシフトの程度を識別する相互相関関数の結果の一実施形態の例である。
図10B図9の画像を取得した検出器間のシフトの程度を識別する相互相関関数の結果の一実施形態の例である。
図11A】十字線要素の場所を識別する機能の結果の一実施形態の例である。
図11B】十字線要素の場所を識別する機能の結果の一実施形態の例である。
図12】倍率レベルを決定するための方法の一実施形態の機能ブロック図である。
図13】光学画像と分析画像との間のシフトの程度を決定するための方法の一実施形態の機能ブロック図である。
図14A】並進後のサンプルステージの位置を表すデータ点の一実施形態の例である。
図14B】位置エンコーダを使用する並進後のサンプルステージの位置を表すデータ点の一実施形態の例である。
図15A】位置エンコーダを使用する並進後のサンプルステージの位置を表すデータ点の一実施形態の例である。
図15B】位置エンコーダおよび較正要素を使用する並進後のサンプルステージの位置を表すデータ点の一実施形態の例である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
同様の参照番号は、図面のいくつかの図全体にわたって、対応する部分を指す。
【0020】
以下により詳細に説明されるように、説明される本発明の実施形態は、広範囲の倍率レベルにわたって分析顕微鏡の較正を可能にする実質的に非周期的なパターンの特徴を備える較正要素を含む。より具体的には、実質的に非周期的なパターンは、特に目視検査を必要とする手動の方法と比較したときに、較正ソフトウェアがプロセスを自動化し、かつ優れた結果をもたらすことを可能にする多寸法の特徴を備える。
【0021】
図1は、コンピュータ110およびサンプル130と相互作用することができる(例えば、分析顕微鏡120内に装填するために)ユーザ101、ならびにコンピュータ110と分析顕微鏡120との間のネットワーク接続の簡略化された例示的な例を提供する。図1の例が、要素間の直接ネットワーク接続(例えば、稲妻の図形で表される有線または無線データ伝送を含む)を示すが、代表的なネットワーク接続はまた、他のデバイス(例えば、スイッチ、ルータ、コントローラ等)を介した間接通信も含み、したがって、限定と見なされるべきではないことが理解されよう。
【0022】
コンピュータ110は、ワークステーション、パーソナルコンピュータ、タブレット、「スマートフォン」、サーバ、算出クラスタ(ローカルまたはリモート)、または他の現在もしくは将来のコンピュータもしくはコンピュータのクラスタ等の、任意のタイプのコンピュータプラットフォームを含み得る。コンピュータは、典型的には、1つ以上のプロセッサ、オペレーティングシステム、システムメモリ、メモリ記憶デバイス、入出力コントローラ、入出力デバイス、およびディスプレイデバイス等の既知の構成要素を含む。コンピュータ100の1つよりも多い実装が、異なる実施形態において様々な動作を実行するために使用され得、したがって、図1のコンピュータ110の表現が、限定と見なされるべきではないこともまた理解されよう。
【0023】
いくつかの実施形態において、コンピュータ110は、制御ロジック(プログラムコードを含むコンピュータソフトウェアプログラム)をその中に記憶しているコンピュータ使用可能媒体を備えるコンピュータプログラム製品を採用し得る。制御ロジックは、プロセッサによって実行されたとき、プロセッサに本明細書に説明されている機能を実施させる。他の実施形態において、いくつかの機能は、例えば、ハードウェアステートマシンを使用して、主にハードウェアに実装される。本明細書に説明されている機能を実施するためのハードウェアステートマシンの実装は、当業者にとって明らかであろう。また同一または他の実施形態において、コンピュータ110は、ネットワークを介してリモート情報にアクセスすることを可能にされた専用ソフトウェアアプリケーションを含み得るインターネットクライアントを採用し得る。ネットワークは、当業者に周知の多くの様々なタイプのネットワークのうちの1つ以上を含み得る。例えば、ネットワークは、通信するために一般にTCP/IPプロトコルスイートと呼ばれるものを採用するローカルまたはワイドエリアネットワークを含み得る。ネットワークは、一般にインターネットと呼ばれる相互接続されたコンピュータネットワークのワールドワイドシステムを含むネットワークを含んでもよく、または様々なイントラネットアーキテクチャを含んでもよい。当業者はまた、ネットワーク環境内の一部のユーザが、一般的に「ファイアウォール」(パケットフィルタ、または境界保護デバイスとも呼ばれる)と呼ばれるものを採用して、ハードウェアおよび/またはソフトウェアシステムに出入りする情報トラフィックを制御することを好み得ることを理解するであろう。例えば、ファイアウォールは、ハードウェアもしくはソフトウェア要素、またはそれらの組み合わせを含み得、典型的には、例えば、ネットワーク管理者等のユーザによって設定されたセキュリティポリシーを執行するように設計されている。
【0024】
本明細書に説明された実施形態において、分析顕微鏡120は、現在利用可能であるか、または将来利用可能であり得る任意の分析顕微鏡を含み得る。例えば、分析顕微鏡120は、一辺に対して4.65ミクロンの大きさの正方形ピクセルを有する0.5倍ビデオカメラアダプタおよび1/4インチ対角CCDビデオカメラ(例えば、Sen−Tech STC−C83USB−AT−B)を備え得るOlympus BX51顕微鏡を含み得る。また説明された実施形態において、ステージ210は、電動化され位置的に較正されている(例えば、Prior H7550T)。
【0025】
図2に示される例示的な例において、分析顕微鏡120は、既知の距離にわたって並進するように構成されたステージ210、およびステージ210上に配設された較正要素220を含む。本明細書に説明される実施形態において、ステージ210は、電動化され、かつ1つ以上のソフトウェアおよび/またはファームウェアの実施形態の動作制御下にあり得る。さらに、ステージ210の並進は、並進距離が極めて正確になるように精密に較正される。較正要素220の実施形態は、限定されるものではないが、ステージ210と連結するように構成された透明/不透明スライドまたは「ウェハ」(例えば、シリコンウェハ等)等の非付着要素、または顕微鏡ステージ210(例えば、取り付けられたプレート、ステッカ、印刷された要素、塗装された要素等)と直接関連付けられた要素を含む、様々な物理的構成を含み得る。例えば、較正要素220は、上から撮像され得る(例えば、パターンがスライドを通して撮像され得る)ように、透明スライドの底面上に配設され得る(例えば、印刷/塗装、エンボス加工、エッチング、または関連技術で知られている他の様式で付される)。いくつかの用途において、スライドの上面の焦点面とスライドの底面の焦点面との間の距離(例えば、スライドの厚さに起因する)が有用であり得る。さらに、サンプル130が分析顕微鏡120による分析のためにスライドの上面上に配置されたとき、較正要素220の1つ以上の領域は、較正要素220の特徴が、例えば、サンプル130の画像を取得するプロセス中にリアルタイム分析のために採用され得るように、視認可能(例えば、サンプル130に妨害されない)であり得る。較正要素220がスライドの上面上に配設されてもよく、したがって本例が限定と見なされるべきではないこともまた理解されよう。
【0026】
較正要素220の実施形態は、可視光(例えば、ヒトの目に可視である波長範囲を含む光を含んでもよく、または単一可視波長を有する単色光を含んでもよい)ビームまたは分析光ビームによって照明されたときにコントラストを示す特徴を含む、多寸法の実質的に非周期的なパターン230を含む。分析顕微鏡120の実施形態は、典型的には可視光に応答して顕微鏡対物レンズ240の実施形態を通して較正プレート220と関連付けられたパターン230の画像を収集する1つ以上の光学画像検出器(例えば、ビデオカメラ)を含む。一般的に、分析顕微鏡120の実施形態は、各々が、異なる倍率レベルを提供する、対物レンズ240の複数の実施形態(例えば、2、4、6等)を含む。重要なことに、対物レンズ240のいくつかの実施形態は、それらのそれぞれの倍率レベルで別の実施形態と重なる視野を提供し得、分析顕微鏡120と関連付けられた対物レンズ240の全ての実施形態の組み合わせは、広範囲の倍率レベルを提供する。さらに、分析顕微鏡120の実施形態は、典型的には分析光に応答して顕微鏡対物レンズ240の実施形態を通して較正プレート220と関連付けられた実質的に非周期的なパターン230の画像を収集する1つ以上の分析画像検出器(例えば、分光計)を含む。
【0027】
較正要素220の代表的な実施形態は、光の波長を反射および吸収する異なる特徴を含む、図3に例示される。例えば、較正要素220は、多寸法レベルの実質的に非周期的な特徴構造を含むパターン230を備え、個々の特徴は、可視光ビームまたは分析光ビームによって照明されたときにコントラストを示す。本明細書に使用される「非周期的」という用語は、一般的に、他の特徴タイプに対して規則的な間隔で実質的に繰り返さない特徴タイプ(例えば、明るい特徴タイプまたは暗い特徴タイプ)の出現を指す。上記のように、化学または材料分析に適切な任意の光ビームは、レーザ光ビーム(例えば、ラマン散乱の分析に典型的に有用)等の分析光ビーム、または赤外光ビームに適切である。具体的には、図3は、実質的に非周期的な配置で各々出現する、粗い特徴構造および細かい特徴構造と呼ばれ得るものを備える較正要素220を示す。説明された実施形態において、パターン230は、対物レンズ240の実施形態の視野と関連付けられた較正要素220の少なくとも2つの領域にわたって実質的に非周期的であり得る。いくつかの実施形態において、第1の領域は、50〜600μm(例えば、500μm)の範囲の寸法を含み、第2の領域は5〜60μm(例えば、50μm)の範囲の寸法を含み得る。例えば、領域に採用されるステージ210の並進距離は、画像を取得するために使用される対物レンズ240の視野を含む画像内で少なくとも1ピクセル距離を進行するように十分に大きいべきである。さらに、採用される並進距離は、画像内の全視野の約1/2を超えるべきではない。現在説明されている例において、以下に説明される相関関数は、範囲の限界を超えたとき、ますます有効ではなくなり得る。
【0028】
図3はまた、較正要素220と関連付けられた位置基準として採用され得る十字線315も含む。例えば、以下により詳細に説明されるように、較正ソフトウェアは、関心領域および/または較正要素220内の位置的な場所を決定するために、位置基準として十字線315を使用し得る。
【0029】
図4Aは、実質的に正方形の明るいエリア(範囲)、および実質的に正方形の暗いエリア(範囲)の両方として出現する大きい特徴420の配列を備えるパターン230の別の例を示す。いくつかの実施形態において、明るいエリアは、反射構造(例えば、鏡のような)を含み、暗い領域は、吸収構造(例えば、レンガ壁のような)を含み得、またはいくつの実施形態において、透過構造(例えば、窓のような)を含み得る。図4Aはまた、大きい特徴420の境界を示す、パターン230の縁に沿った大きい目盛453の例を提供する。例えば、図4Aの例に例示される実施形態において、パターン230は、80行および80列の大きい特徴420を有する正方形の寸法範囲を含む。しかしながら、パターン230が様々な要因および条件に応じて異なる数の行および列を有してもよく、したがって図4Aの例が限定と見なされるべきではないことが理解されよう。
【0030】
大きい特徴420が、例えば、パターン230内の光反射構造または光吸収構造が実質的に繰り返しパターンを示さない場合、実質的に非周期的な構造を備えることも図4Aから明らかであろう。さらに、説明された実施形態において、大きい特徴420の各々の組成は、光反射構造または光吸収構造を等確率でランダムに有するが、ある程度の周期性が許容され得、本発明の範囲内であると見なされることが理解されよう。例えば、パターン230のある程度の周期性は、いくつかの追加のピークを結果としてもたらし得る(例えば、以下の説明されるように相互相関関数によって計算された「最大値」に加えて)。追加のピーク、したがって周期性の程度は、ピークが、計算された最大値と関連付けられたピークよりも小さく、かつ暗い(例えば、最大値と容易に区別可能である)限り、一定の実施形態で許容され得る。また本例において、パターン230は、関心領域(例えば、較正動作に使用される2つ以上の視野を含む)から距離目盛だけ離れた領域でのいくつかの繰り返しを含み得る。言い換えると、第1の領域からの繰り返しを含む領域は、パターン230の第1の領域の複数の視野を使用する較正動作に対する影響が存在しないように、十分な距離だけ分離される。本明細書に説明された実施形態において、大きい特徴420および小さい特徴430の寸法に一貫性が存在し、これもまた許容されることが理解されよう。しかしながら、大きい特徴420および/または小さい特徴430の寸法の変化もまた、パターン230の実質的に非周期的な性質をさらに高めるために採用され得、したがって、説明された発明の範囲内と見なされる。
【0031】
さらに、図4Aに視認可能な大きい特徴420の各々の中に識別可能な細かい構造寸法が存在し、これは、図4Aの領域460の拡大図を提供する図4Bにさらに例証されている。細かい構造寸法は、図4Bの例に例示されるように、光反射構造および光吸収構造の実質的に非周期的なパターンで再配置される、小さい特徴430を備える。図4Bはまた、大きい特徴420の各出現内の小さい特徴430の境界を例示する、領域460の縁に沿った小さい目盛457の例を提供する。大きい特徴420の実質的に明るい実施形態において、小さい特徴430の実質的に明るい実施形態が、本質的には依然として実質的に非周期的ではあるが、暗い実施形態よりも高頻度で出現することが理解されよう。例えば、小さい特徴430の明るい実施形態は、大きい特徴420の実質的に明るい実施形態において、約75%の確率(例えば、>50%かつ<100%)で出現し得る。同様に、大きい特徴420の実質的に暗い実施形態において、小さい特徴430の実質的に暗い実施形態が、明るい実施形態よりも高頻度で出現する。重ねて、本例において、小さい特徴430の暗い実施形態は、大きい特徴420の実質的に暗い実施形態において、約75%の確率(例えば、>50%かつ<100%)で出現し得る。
【0032】
図4Bの例を続けると、小さい特徴430の各実施形態は、既知の寸法の正方形形状を含み得るが、他の形状も可能である(例えば、六角形等)。例えば、小さい特徴430の実施形態は、分析顕微鏡120の最高倍率における検出器実施形態と関連付けられたピクセルよりも大きいべきである。したがって、最高倍率レベルのピクセルが較正要素220上の物理的距離の1μmにほぼ等しい場合、小さい特徴430の寸法は、1μmよりも大きいべきである。典型的には、各大きい特徴420は、設定された数の行および列の小さい特徴430を含む。例えば、いくつかの実施形態において、大きい特徴420は、図4Bに見られるように8行および8列の小さい特徴430を含む正方形形状を含み得る(例えば、基準として目盛453および457を使用する)。重ねて、大きい特徴420は、様々な要因および条件に応じて異なる数の行および列を有してもよく、したがって図4Bの例は、限定と見なされるべきではない。
【0033】
本明細書に説明される実施形態において、ソフトウェアプログラムが、較正要素220のパターン230を生成するために採用され得る。例えば、ソフトウェアプログラムは、分析顕微鏡120と関連付けられたコンピュータ110、または任意の他のコンピュータ上で実行され得、プログラムの各実行がパターン230の異なる構成を生成するようにパラメータを変化させるように構成され得る。例えば、ソフトウェアプログラムは、乱数発生器の「再シード」手法を採用して、パターン230のための特有の特徴構成を生成し得る。
【0034】
また、パターン230内の個々の特徴は、分析顕微鏡120と関連付けられた対物レンズ240の実施形態の倍率レベルの各々で較正要素220から取得された画像の視野内に少なくとも3つの明確に区別可能な特徴(例えば、大きい特徴430または小さい特徴420)が存在するように適切に寸法決めされるべきである。それゆえに、較正要素220上のパターン230の多寸法の態様は、標準的なレチクルの実施形態に対して明らかな利点を提供する。重要なことに、パターン230の実質的に非周期的な多寸法構造は、広範囲の倍率レベルにわたって本明細書に説明される較正およびアライメントプロセスを支援する。例えば、較正要素220の単一実施形態は、約38:1の範囲にわたって使用され得る。本例において、その範囲は、分析顕微鏡120と共に採用され得る4倍、100倍、および150倍の対物レンズによって提供される倍率レベルを含み得るが、対物レンズ240の実施形態によって提供される他の組み合わせおよび範囲もまた使用され得ることが理解されよう。また、較正ソフトウェアは、大きい特徴420、小さい特徴430、またはその両方を使用して、様々な較正動作を実施し得る。
【0035】
いくつかの実施形態において、コントラストは、可視光ビームまたは分析光ビームの反射において示され得る。説明される実施形態において、較正要素220の非周期的な多寸法パターンは、可視光ビームおよび分析光ビームの両方を反射する特徴(例えば、金属被覆された特徴)、ならびに可視光ビームおよび分析光ビームの両方を吸収する特徴(例えば、ブラッククロム被覆された特徴、またはフォトレジスト被覆された特徴)を含む。例えば、較正要素220のパターン230は、溶融シリカ上のブラッククロム被覆された特徴のパターンとして製造され得る。本例において、較正要素220は、一辺が約3.2mmの正方形の寸法範囲を含み得、パターン230は、一辺が約40μmの大きい特徴420および一辺が約8μmの小さい特徴430を備え得る。重要なことに、いくつかの実施形態において、物理的距離の絶対的な正確さのためにパターン230の個々の特徴の寸法を較正する必要はない。例えば、電動化ステージ210の実施形態は、典型的には、精密な移動および位置を提供するように較正されている。したがって、パターン230の多寸法目盛は、移動した実際の物理的距離(例えば、ステージ210からの正確な並進距離)を有する画像内の基準点(例えば、特徴420および/または430)間の測定されたピクセル数の使用によって、分析顕微鏡120によって採用される任意の倍率レベルの正確な計算を可能にする。対物レンズ240の各実施形態についてμm/ピクセルの物理的距離の比を知ることによって、倍率レベルは、容易に計算され、パターン230と関連付けられた特徴の正確な物理的寸法の知識を必要としない。
【0036】
上記のように、コンピュータ110は、プロセッサと、その上で実行するために記憶されたソフトウェアとを含む。ここに説明される発明の実施形態は、いくらかの距離による較正要素220の並進前後のパターン230の2つ以上の画像の相関に基づいて、較正要素220の物理的距離のシフトおよび対物レンズ240の倍率レベルを決定するように構成された1つ以上のソフトウェアアプリケーションを含む。例えば、いくつかの実施形態において、ソフトウェアアプリケーションは、第2の画像内の較正要素220と関連付けられた特徴の位置が第1の画像内の位置からある程度変化した場合、2つの画像内の特徴の相対位置を比較することを含む。図5は、視野内の特徴505(小さい特徴430の一実施形態)の画像を各々含む第1の画像510および第2の画像520の例示的な例を提供する。本例において、特徴505の左縁は、第2の画像520内のx軸上の約0ピクセル位置の特徴505の左縁の場所に対して、第1の画像510内のx軸上の約+200ピクセル位置に位置する。シフトの方向(例えば、X/Y、+/−)および大きさが変化してもよく、したがって図5が限定と見なされるべきではないことが理解されよう。
【0037】
本明細書に説明される実施形態のいくつかまたは全てにおいて、ステージ210の較正は、寸法基準として信頼されている。いくつかの実施形態において、画像シフトは、XまたはY軸のいずれかにおける特定の倍率での画像の視野の最大約50%までとすることができ、最小画像シフトは、ピクセルの分数(例えば、1ピクセルの1/2、1/3、または1/4)を含み得る。ピクセル単位で画像シフトの大きさを見つけることは、例えば、以下に説明される相互相関関数による等の、様々な手法を使用して実施され得る。また説明される実施形態において、第2のシフトが、第2の軸で行われてもよく(例えば、X軸の第1のシフトおよびY軸の第2のシフト)、これは、各軸に対する別個の較正を可能にする。例えば、本手法は、正方形ピクセル形状を有していないビデオカメラに有用である。
【0038】
例えば、画像間でxおよび/またはy方向に互いに対して変位された特徴を含む2つの画像g1およびg2を使用すると、フーリエ相関関数Cは、次式であり:
C=||F−1(F(g1)F(g2)*)|| 式1
式中:
g1およびg2は、2次元ピクセル配列g1(x、y)およびg2(x、y)を含み、
F(g)は、2次元フーリエ変換であり、
F−1(G)は、2次元逆フーリエ変換であり、
*は、複素共役であり、
||g||は、絶対値である。
【0039】
図6Aは、第2の画像520に対する第1の画像510内の特徴間のピクセルの変位に等しい画像内の位置(x、y)に位置する算出された最大値610(例えば、明るいスポットは、相互相関関数の最大値に対応する)の例示的な例を提供する。本明細書に説明されるように、結果として相互相関関数の最大値が1つのみ存在することを確実にするために、パターン230が実質的に非周期的であることが有利である。図6Bは、精密に算出されたシフト値と共に、計算された最大値610と関連付けられたピークの水平および垂直のプロファイルをさらに示す。本例において、図6Bは、垂直0.73ピクセルおよび水平209.67ピクセルの画像シフトを示している。本例において、ピクセルの算出されたシフト値が、1ピクセル未満に分解され、これらは、次いで、本例において水平ステージ上で10μmの水平シフトを含む、物理的距離測定値に変換される。1ピクセル未満の画像内の意図されない小さい垂直シフトは、第1の画像の取得と第2の画像の取得との間に起こった、ステージの座標軸に対する分析顕微鏡120の光軸の周りのビデオカメラの回転に起因する。この回転を見分ける能力は、自動化されたシステムの有益かつ重要な特徴である。画像間のパターン230のいくらかの回転が考えられ(例えば、ステージ並進による誤差、ユーザの介入等)、回転が同様に識別されることもまた理解されよう。
【0040】
上記のように、ソフトウェアアプリケーションは、顕微鏡対物レンズ240の倍率レベルを算出し得る。例えば、相互相関関数の算出後、ソフトウェアは、ピクセル数の算出されたシフト(例えば、相互相関関数からの)をカメラピクセルサイズ(例えば、μm/ピクセル単位)と乗算し、結果をステージ210上の較正要素220の実際の並進距離で除算し、その結果が、次いで、任意のカメラリレーレンズ倍率(例えば、画像を反転させ、光学筒を延長するレンズまたはレンズ群)で除算される。図5図6Aおよび図6Bからの例を続けると、対物レンズ240の計算された倍率レベルは、次のとおりである:
(209.67×4.65)/10/1=97.49
【0041】
本例を続けると、ソフトウェアは、次いで、計算された倍率レベルと、リスト内の対物レンズ240の実施形態の各々についての倍率レベルを提供する表に列挙された対物レンズ240の実施形態との間の最も近い一致に基づいて、分析顕微鏡120の対物レンズ240を識別し得る。本例において、ソフトウェアは、対物レンズ240を分析顕微鏡120内に設置された対物レンズ240の100倍の実施形態として識別する。これは、対物レンズ240の不正確な識別が不正確なパラメータの使用をもたらし得る(例えば、対物レンズ240の異なる実施形態の特性に基づいて)、オートフォーカスルーチンを利用する分析顕微鏡120の実施形態において重要であり得る。いくつかの場合において、これは、誤ったパラメータを使用して画像を焦点合わせする試行によって対物レンズ240をステージ210と衝突させることによって、1つ以上の構成要素(例えば、対物レンズ240、顕微鏡ステージ210、較正要素220)に損傷が生じ得る悲惨な結果をもたらし得る。
【0042】
別の例において、10倍の倍率レベルおよび0.5倍のカメラリレーレンズ倍率を含む対物レンズ240の実施形態を使用して、較正要素220の第1の画像710を保存し、較正要素220を物理的距離100μmだけ並進させ、続いて、図7の例に提供されるように較正要素220の第2の画像720を保存した。本例において、ソフトウェアアプリケーションは、図8Aおよび図8Bに示されるように、大きい特徴420を使用して、画像720に対する画像710の垂直0.565ピクセルおよび水平108.056ピクセルの画像シフトを含む最大値810を算出した。それゆえに、本例において、ソフトウェアアプリケーションは、対物レンズ240の倍率レベルを次のように計算する:
(108.056×4.65)/100/0.5=10.05
【0043】
さらに、本明細書に説明されるように、分析顕微鏡120のいくつかの実施形態は、分析光ビームを提供する1つ以上の要素、および対物レンズ240を通して較正要素220の分析画像を収集する分光計等の関連する検出要素を含み得る。説明された実施形態のいくつかまたは全てにおいて、ソフトウェアアプリケーションは、上記の光学画像について説明されたようにシフトを算出するための方法と同一の様式で分析画像を使用し得る。加えて、ソフトウェアアプリケーションは、較正要素220の同一実施形態を使用して光学画像と分析画像との組み合わせを使用し得る。例えば、本明細書に説明される方法を使用して、ソフトウェアアプリケーションは、シフト値を算出して、ビデオカメラと分光検出器との間の相対的なアライメントを測定し、相対的なアライメントは、次いで、機械的に2つの検出器を整列するか、またはソフトウェアで画像を再処理することによって、2つの検出器を整列するために使用される。これは、ビデオ画像がスペクトル分析のためにサンプル130上の関心点を識別するために頻繁に使用されるため、重要である。また、良好なレジストレーションは、スペクトル測定値がサンプル130の空間的特徴を忠実に表す信頼性をユーザ101に提供する。
【0044】
図9は、分析画像910およびビデオ画像920の例示的な例を提供し、両方、較正要素220のほぼ同一領域から取得されている。較正要素220の照明は、下から提供され、分光計は、50倍の倍率レベル(例えば、約2μmのスポットサイズを使用)を使用して対物レンズ240を通る透過光を収集した。ソフトウェアアプリケーションは、次いで、「ケミグラム」を計算し、これは、各スポットで収集された光の全強度を表すスペクトル画像である。本例において、分光計は、分析画像910の粗い外観を結果としてもたらすビデオ画像と比較したとき、限られた空間的分解能を有する。その外観にもかかわらず、画像シフト計算は、計算された最大値1010を示す図10Aおよび図10Bの例に例示されるように、比較的影響を受けなかった。それゆえに、2つの画像が異なる方式、かつ異なるレベルの分解能およびノイズで収集された事実にもかかわらず、図10Aおよび図10Bに提供される例が示すように、ソフトウェアアプリケーションは、0.31ピクセルの垂直シフトおよび22.05ピクセルの水平シフトを正確に報告した。
【0045】
また、上記のように、説明された実施形態は、対物レンズ240に対する較正プレート220の絶対位置、およびいくつかの場合においてステージ210の位置を決定する能力を含む。例えば、図3に例示されるように、十字線315の位置は、光学画像内の強度値のフィールド内の「俯角」によって表され得る。いくつかの場合において、これは、ソフトウェアアプリケーションによって識別され得るパターン230にわたるコントラストの約50%の差を含み得る。例えば、ソフトウェアアプリケーションは、図11Aに例示されるタイプ等のプロファイルを生成するために、X軸(例えば、水平方向)およびY軸(例えば、垂直方向)に沿ったフィールド強度値を合計し得る。ソフトウェアは、図11BのX軸について例示されたように、ピクセルの分数内に測定され得る各俯角の重心を識別するためにプロファイルをさらに分析し得る。本例において、X軸またはY軸の重心は、画像内の十字線315の場所を表すゼロ(例えば、0)位置からいくらかの距離だけ離れて位置し得る。例えば、ピクセル数における、X軸に対する0からの十字線315の垂直距離、Y軸に対する0からの十字線315の水平距離。ソフトウェアアプリケーションは、次いで、ステージ210を使用してある所望される程度だけ較正要素220の位置をシフトさせて、所望される場所内に対物レンズ240の視野を整列させ得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、十字線315は、「ホーム」位置と呼ばれ得るものを見つけるために使用され得る。例えば、低倍率レベルを有する対物レンズ240の実施形態は、十字線315が視野内にあるために使用され得る(例えば、ステージ210もまた、1つ以上の方向に並進され得る)。ビデオ目盛(ピクセル/単位距離)は、上記の相互相関方法を使用して較正され、十字線の位置は、画像の「俯角」の重心から決定される。ステージ210は、次いで、十字線315がビデオ画像内の中心にくる位置に移動され、このステージ210の位置が「ホーム」位置として記録される。同一または別の実施形態において、十字線315は、対物レンズ240の各実施形態に対して異なる「ホーム」位置を見つけるために使用され得る。例えば、対物レンズ240のいくつかの実施形態は、「同心」として識別され得る(例えば、互いに正確に同中心ではないが、対物レンズ240がそれらの視野の一部分を共有することを単に保証する)。十字線315は、各対物レンズ240の焦点が同一位置に位置し、それによってセンタリング誤差の自動化された除去を可能にするように、各対物レンズに対する別個の「ホーム」位置を決定するために使用され得る。いくつかの実施形態において、X/Yオフセット値は、各対物レンズ240について予め計算され、かつレンズの特定の特性についての画像処理に使用され得る。さらに、対物レンズ240の同一実施形態に対する焦点が同一位置に繰り返し戻らないように、同心誤差が対物レンズ240の実施形態の移動を通して生じた場合、次いで、パターン230は、対物レンズ240の変化が存在する度に、オフセット値を動的に計算するために使用され得る。
【0047】
図12は、較正要素220がステージ210上に配設された状態でステップ1200から始まる、対物レンズ240の倍率レベルを決定するための方法の例示的な例を提供する。ステップ1205において、較正要素220の領域(例えば、領域は、対物レンズ240の視野に依存する)からパターン230の画像(例えば、光学または分析画像)が取得され、ステップ1210において、ステージ210がX軸および/またはY軸にある程度並進され、ステップ1215において、較正要素220の第2の領域でパターン230の第2の画像(例えば、光学または分析画像)を取得する。次に、ステップ1220において、対物レンズ240の倍率レベルが、上記のように第1および第2の画像内のパターン230の態様を相関させることによって決定される。判断要素1230に例示されるように、対物レンズ240を識別することを所望する場合、次いで、決定された倍率レベルと分析顕微鏡120と関連付けられた対物レンズ240の実施形態の既知の倍率との間の最も近い一致である対物レンズ240の実施形態が選択され、方法は、ステップ1299で終了する。
【0048】
図13はまた、較正要素220がステージ210上に配設された状態でステップ1300から始まる、光学画像と分析画像との間のシフトの程度を決定するための方法の例示的な例を提供する。ステップ1305において、較正要素220の領域(例えば、領域は、対物レンズ240の視野に依存する)からパターン230の光学画像が取得され、ステップ1315において、較正要素220の同一領域でパターン230の分析画像が取得される。次いで、ステップ1320において、上記のように光学画像および分析画像内のパターン230の態様を相関させることによってシフトの程度が決定され、方法は、ステップ1399で終了する。
【0049】
実施例
いくつかの実施形態において、分析顕微鏡120は、ステージ210の位置を並進させるために使用されるモータ(例えば、ステッピングモータ)の実施形態による駆動誤差をゼロに制御するために1つ以上の「位置エンコーダ」(「位置センサ」とも呼ばれる)を採用し得る。例えば、図14Aは、ステージ210を設定された数の「ステップ」だけ移動させるステッピングモータを使用する並進後のステージ210の位置を表すデータ点を例示する。図14Bに例示されるデータ点に例示されるように、位置エンコーダによって改善される、位置間の距離における高度の変動性が存在することが容易に理解され得る。
【0050】
しかしながら、位置エンコーダを使用しても、ステージ210が正しい位置にあることをエンコーダが示しているときでさえ、ステージ位置の正確さに著しく影響を及ぼし得る条件に対してステージ210は不安定である。例えば、図15Aは、位置エンコーダを使用するときにステージ210の位置から得られたデータ点を例示する。しかしながら、温度変化によって引き起こされる「熱ドリフト」に起因して、ステージ210の実際の位置は、著しく変動し得る。図15Bは、較正要素220を使用して測定された図15Aに例示されているものと同一のステージ位置に対するデータ点を例示する。ステージ210の位置が、位置エンコーダによって識別された位置から着実にドリフトして離れていたことが容易に理解され得る(例えば、図15BのY軸において)。さらに、図15Bはまた、分析顕微鏡120が、最後の3本の線のデータ点を互いに接近させる、ある種の物理的影響を受けた可能性があることも示す(例えば、図15BのX軸において)。本例において、較正要素220の使用は、位置エンコーダの使用と相補的であり、いくつかの実施形態において、位置エンコーダの代わりとして使用され得る。
【0051】
様々な実施形態および実装を説明してきたが、上述のものが例示的なものにすぎず、限定ではなく、単なる例として提示されたものであることが当業者に理解されるべきである。例示された実施形態の様々な機能要素間で機能を分散するための多くの他の体系が可能である。任意の要素の機能は、代替的な実施形態において様々な方式で実行され得る。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B