(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
<ポリアミド(a)>
本発明におけるポリアミド(a)は、アミド形成性モノマー(a0)を開環重合又は重縮合したものが挙げられる。
アミド形成性モノマー(a0)としては、ラクタム(a01)、アミノカルボン酸(a02)、およびジアミン(a03)/ジカルボン酸(a04)が挙げられる。
【0008】
また、ポリアミド(a)は、好ましくは1×10
11Ω・cmを超える体積固有抵抗値を有するポリマーである。
【0009】
なお、本発明における体積固有抵抗値は、ASTM D257(1984年)に準拠し、23℃、50%RHの雰囲気下で測定して得られた数値のことである。
【0010】
ラクタム(a01)としては、炭素数[以下、Cと略記することがある]4〜20のラクタム(カプロラクタム、エナントラクタム、ラウロラクタム及びウンデカノラクタム等)等が挙げられる。
(a01)の開環重合体としては、例えばナイロン4、ナイロン5、ナイロン6、ナイロン8およびナイロン12が挙げられる。
【0011】
アミノカルボン酸(a02)としては、C6〜12、例えばω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペラルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸及びこれらの混合物が挙げられる。
【0012】
ジアミン(a03)としては、C2〜40、例えば脂肪族、脂環式および芳香(脂肪)族ジアミン、並びにこれらの混合物が挙げられる。
脂肪族ジアミンとしてはC2〜40、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミンおよび1,20−エイコサンジアミンが挙げられる。
脂環式ジアミンとしては、C5〜40、例えば1,3−および1,4−シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン4,4’−ジアミノシクロヘキシルメタンおよび2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパンが挙げられる。
芳香脂肪族ジアミンとしては、C7〜20、例えばキシリレンジアミン、ビス(アミノエチル)ベンゼン、ビス(アミノプロピル)ベンゼンおよびビス(アミノブチル)ベンゼンが挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、C6〜40、例えばp−フェニレンジアミン2,4−および2,6−トルイレンジアミンおよび2,2−ビス(4,4‘−ジアミノフェニル)プロパンが挙げられる。
【0013】
ジカルボン酸(a04)としては、C2〜40のジカルボン酸、例えば脂肪族ジカルボン酸、芳香環含有ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸、これらの。ジカルボン酸の誘導体〔例えば酸無水物、低級(C1〜4)アルキルエステルおよびジカルボン酸塩[アルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウムおよびカリウム)]〕およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0014】
脂肪族ジカルボン酸としては、C2〜40(帯電防止性の観点から好ましくは4〜20、さらに好ましくは6〜12)、例えばコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸が挙げられる。
芳香環含有ジカルボン酸としてはC8〜40(帯電防止性の観点から好ましくは8〜16、さらに好ましくは8〜14)、例えばオルト−、イソ−およびテレフタル酸、2,6−および2,7−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4,4‘−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、トリレンジカルボン酸、キシリレンジカルボン酸および5−スルホイソフタル酸アルカリ金属(上記に同じ)塩が挙げられる。
脂環式ジカルボン酸としては、C5〜40(帯電防止性の観点から好ましくは6〜18、さらに好ましくは8〜14)、例えばシクロプロパンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキセンジカルボン酸、ジシクロヘキシル−4,4‘−ジカルボン酸およびショウノウ酸が挙げられる。
【0015】
上記アミド形成性モノマー(a0)のうち、帯電防止性の観点から好ましいのはカプロラクタム、12−アミノドデカン酸およびアジピン酸/ヘキサメチレンジアミンである。
【0016】
ポリアミド(a)の製造法としては、上記ジカルボン酸(C2〜40、好ましくは4〜20)または上記ジアミン(C2〜40、好ましくは4〜20)の1種またはそれ以上を分子量調整剤として使用し、その存在下に上記アミド形成性モノマーを開環重合あるいは重縮合させる方法が挙げられる。
【0017】
上記分子量調整剤の使用量は、アミド形成性モノマーと分子量調整剤合計の重量に基づいて、帯電防止性の観点から、好ましくは2〜80%、さらに好ましくは4〜75%である。
【0018】
(a)の数平均分子量[以下、Mnと略記。測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]は、帯電防止性および成形性の観点から、好ましくは200〜5,000、さらに好ましくは500〜4,000、とくに好ましくは800〜3,000である。
【0019】
本発明におけるポリマーのMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定することができる。
装置(一例) :「HLC−8120」[東ソー(株)製]
カラム(一例):「TSKgelGMHXL」[東ソー(株)製](2本)
「TSKgelMultiporeHXL−M」[東ソー(株)製] (1本)
試料溶液:0.3重量%のオルトジクロロベンゼン溶液
溶液注入量:100μl
流量:1ml/分
測定温度:135℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン(TSKstandardPOLYSTYRENE)
12点(分子量:500、1,050、2,800、5,970、
9,100、18,100、37,900、96,400、
190,000、355,000、1,090,000、
2,890,000)[東ソー(株)製]
【0020】
<親水性ポリマー(b)>
本発明における親水性ポリマー(b)としては、特許第3488163号に記載の親水性ポリマーが挙げられ、具体的には、ポリエーテル(b1)、ポリエーテル含有親水性ポリマー(b2)等が挙げられる。帯電防止性及び樹脂物性の観点から望ましいのはポリエーテル(b1)である。
【0021】
ポリエーテル(b1)としては、ポリエーテルジオール(b1−1)、ポリエーテルジアミン(b1−2)及びこれらの変性物(b1−3)が挙げられる。
ポリエーテルジオール(b1−1)としては、ジオール(b0)にアルキレンオキサイド(以下AOと略記する。)を付加反応させることにより得られるものが挙げられ、具体的には一般式(1)で表されるものが挙げられる。
H−(OR
1)
a−O−E
1−O−(R
2O)
b−H (1)
一般式(1)におけるE
1は、ジオール(b0)からすべての水酸基を除いた残基であ
る。
ジオール(b0)としては、炭素数2〜12の脂肪族2価アルコール、炭素数5〜12の脂環式2価アルコール、炭素数6〜18の芳香族2価アルコール及び3級アミノ基含有ジオール等が挙げられる。
【0022】
炭素数2〜12の脂肪族2価アルコールとしては、エチレングリコール(以下EGと略記する。)、1,2−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,12−ドデカンジオールが挙げられる。
炭素数5〜12の脂環式2価アルコールとしては、1,4−ジ(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び1,5−ジ(ヒドロキシメチル)シクロヘプタン等が挙げられる。
炭素数6〜18の芳香族2価アルコールとしては、単環芳香族2価アルコール(キシリレンジオール、ハイドロキノン、カテコール、レゾルシン及びウルシオール等)及び多環芳香族2価アルコール(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ジヒドロキシジフェニル−2,2−ブタン、ジヒドロキシビフェニル、ジヒドロキシナフタレン及びビナフトール等)等が挙げられる。
3級アミノ基含有ジオールとしては、炭素数1〜12の脂肪族又は脂環式1級アミン(メチルアミン、エチルアミン、シクロプロピルアミン、1−プロピルアミン、2−プロピルアミン、ペンチルアミン、イソペンチルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン及びドデシルアミン等)のビスヒドロキシアルキル化物及び炭素数6〜12の芳香族1級アミン(アニリン及びベンジルアミン等)のビスヒドロキシアルキル化物が挙げられる。
これらのうち、ビスヒドロキシアルキル化物との反応性の観点から好ましいのは、炭素数2〜12の脂肪族2価アルコール及び炭素数6〜18の芳香族2価アルコールであり、更に好ましいのはEG及びビスフェノールAである。
【0023】
一般式(1)におけるR
1及びR
2は、それぞれ独立に炭素数2〜4のアルキレン基である。炭素数2〜4のアルキレン基としては、エチレン基、1,2−又は1,3−プロピレン基及び1,2−、1,3−、1,4−又は2,3−ブチレン基等が挙げられる。
一般式(1)におけるa及びbは、それぞれ独立に1〜300の数であり、好ましくは2〜250、更に好ましくは10〜100である。
一般式(1)におけるa、bがそれぞれ2以上の場合のR
1、R
2は、同一でも異なっていてもよく、(OR
1)
a、(R
2O)
b部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。
【0024】
ポリエーテルジオール(b1−1)は、ジオール(b0)にAOを付加反応させることにより製造することができる。
AOとしては、炭素数2〜4のAO[エチレンオキサイド(以下EOと略記する。)、1,2−又は1,3−プロピレンオキサイド、1,2−、1,3−、1,4−又は2,3−ブチレンオキサイド、及びこれらの2種以上の併用系が用いられるが、必要により他のAO[炭素数5〜12のα−オレフィンオキサイド、スチレンオキサイド及びエピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等)等]を少しの割合(AOの全重量に基づいて30重量%以下)で併用することもできる。
2種以上のAOを併用するときの結合形式は、ランダム結合、ブロック結合のいずれでもよい。AOとして好ましいのは、EO単独及びEOと他のAOとの併用である。
【0025】
AOの付加反応は、公知の方法、例えばアルカリ触媒の存在下、100〜200℃の温度で行なうことができる。
一般式(1)で表されるポリエーテルジオール(b1−1)の重量に基づく、(OR
1)
a及び(R
2O)
bの含有率は、好ましくは5〜99.8重量%であり、更に好ましくは8〜99.6重量%、特に好ましくは10〜98重量%である。
一般式(1)における(OR
1)
a及び(R
2O)
bの重量に基づくオキシエチレン基の含有率は、好ましくは5〜100重量%であり、更に好ましくは10〜100重量%、特に好ましくは50〜100重量%、最も好ましくは60〜100重量%である。
【0026】
ポリエーテルジアミン(b1−2)としては、一般式(2)で表されるものが挙げられる。
H
2N−R
3−(OR
4)
c−O−E
2−O−(R
5O)
d−R
6−NH
2 (2)
一般式(2)におけるE
2は、ジオール(b0)からすべての水酸基を除いた残基であ
る。
ジオール(b0)としては、前記のものと同様のものが挙げられ、好ましい範囲も同様
である。
一般式(2)におけるR
3、R
4、R
5及びR
6は、それぞれ独立に炭素数2〜4のアルキレン基である。炭素数2〜4のアルキレン基としては、一般式(1)におけるR
1及びR
2として例示したものと同様のものが挙げられる。
一般式(2)におけるc及びdは、それぞれ独立に1〜300の数であり、好ましくは2〜250、更に好ましくは10〜100である。
一般式(2)におけるc、dがそれぞれ2以上の場合のR
4、R
5は、同一でも異なっていてもよく、(OR
4)
c、(R
5O)
d部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。
【0027】
ポリエーテルジアミン(b1−2)は、ポリエーテルジオール(b1−1)が有するすべての水酸基を、アルキルアミノ基に変換することにより得ることができる。例えば(b1−1)とアクリロニトリルとを反応させ、得られたシアノエチル化物を水素添加することにより製造することができる。
【0028】
変性物(b1−3)としては、(b1−1)又は(b1−2)のアミノカルボン酸変性物(末端アミノ基)、イソシアネート変性物(末端イソシアネート基)及びエポキシ変性物(末端エポキシ基)等が挙げられる。
アミノカルボン酸変性物は、(b1−1)又は(b1−2)と、アミノカルボン酸又はラクタムとを反応させることにより得ることができる。
イソシアネート変性物は、(b1−1)又は(b1−2)と、ポリイソシアネートとを反応させるか、(b1−2)とホスゲンとを反応させることにより得ることができる。
エポキシ変性物は、(b1−1)又は(b1−2)と、ジエポキシド(ジグリシジルエーテル、ジグリシジルエステル及び脂環式ジエポキシド等のエポキシ樹脂:エポキシ当量85〜600)とを反応させるか、(b1−1)とエピハロヒドリン(エピクロロヒドリン等)とを反応させることにより得ることができる。
【0029】
親水性ポリマー(b)のMnは、耐熱性及びポリアミド(a)との反応性の観点から、好ましくは150〜20,000であり、更に好ましくは300〜18,000、特に好ましくは1,000〜15,000、最も好ましくは1,200〜8,000である。
【0030】
<ブロックポリマー(A)>
本発明におけるブロックポリマー(A)は、前記ポリアミド(a)のブロックと親水性ポリマー(b)のブロックとを構成単位として有する。
(A)のうち、帯電防止性の観点から好ましいのは、ポリアミド(a)であり、(b)がポリエーテル(b1)ブロックであるポリエーテルエステルアミドである。
【0031】
(A)を構成する(a)のブロックと、(b)のブロックの重量比[(a)/(b)]は、帯電防止性及び耐水性の観点から、好ましくは10/90〜80/20であり、更に好ましくは20/80〜75/25である。
【0032】
(A)を構成する(a)のブロックと、(b)のブロックとが結合した構造には、(a)−(b)型、(a)−(b)−(a)型、(b)−(a)−(b)型及び[(a)−(b)]n型(nは平均繰り返し数を表す。)が含まれる。
ブロックポリマー(A)の構造としては、導電性の観点から(a)と(b)とが繰り返し交互に結合した[(a)−(b)]n型のものが好ましい。
[(a)−(b)]n型の構造におけるnは、帯電防止性および機械物性の観点から、好ましくは2〜50であり、更に好ましくは2.3〜30、特に好ましくは2.7〜20、最も好ましくは3〜10である。nは、ブロックポリマー(A)のMn及び
1H−NMR分析により求めることができる。
【0033】
(A)のMnは、後述する成形品の機械物性(機械的強度)及び帯電防止性の観点から、好ましくは2,000〜100,000、さらに好ましくは5,000〜60,000、特に好ましくは10,000〜40,000である。
【0034】
(A)が、(a)のブロックと(b)のブロックとが、エステル結合、アミド結合、エーテル結合又はイミド結合を介して結合した構造を有するものである場合、下記の方法で製造することができる。
上記結合のうち、工業的な観点から、好ましいのは、エステル結合、アミド結合である。
【0035】
(a)と(b)を反応容器に投入し、撹拌下、反応温度100〜250℃、圧力0.003〜0.1MPaで、アミド化反応、エステル化反応又はイミド化反応で生成する水(以下生成水と略記する。)を反応系外に除去しながら、1〜50時間反応させる方法が挙げられる。(a)と(b)の重量比[(a)/(b)]は、帯電防止性及び耐水性の観点から、10/90〜80/20であり、更に好ましくは20/80〜75/25である。
エステル化反応の場合、反応を促進させるために、(a)及び(b)の合計重量に基づいて、0.05〜0.5重量%の触媒を使用することが好ましい。触媒としては、無機酸(硫酸及び塩酸等)、有機スルホン酸(メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸及びナフタレンスルホン酸等)、アンチモン触媒(三酸化アンチモン等)、錫触媒(モノブチル錫オキサイド及びジブチル錫オキサイド等)、チタン触媒(テトラブチルチタネート、ビストリエタノールアミンチタネート及びシュウ酸チタン酸カリウム等)、ジルコニウム触媒(テトラブチルジルコネート、酢酸ジルコニル等)及び亜鉛触媒(酢酸亜鉛等)等が挙げられる。触媒を使用した場合は、エステル化反応終了後必要により触媒を中和し、吸着剤で処理して触媒を除去・精製することができる。生成水を反応系外に除去する方法としては、以下の方法が挙げられる。
(1)水と相溶しない有機溶媒(例えばトルエン、キシレン及びシクロヘキサン等)を使用して、還流下、有機溶媒と生成水とを共沸させて、生成水のみを反応系外に除去する方法。
(2)反応系内にキャリアガス(例えば空気、窒素、ヘリウム、アルゴン及び二酸化炭素等)を吹き込み、キャリアガスと共に生成水を反応系外に除去する方法。
(3)反応系内を減圧にして生成水を反応系外に除去する方法。
【0036】
<アミド形成性モノマー(c)>
アミド形成性モノマー(c)としては、前記アミド形成性モノマー(a0)と同じものが挙げられる。すなわち、該(c)としては、ラクタム(a01)、アミノカルボン酸(a02)、およびジアミン(a03)/ジカルボン酸(a04)が挙げられる。
上記(c)のうち、連続成形性(金型汚染性、脱型性)の観点から、好ましいのはラクタム(a01)、アミノカルボン酸(a02)、さらに好ましいのはラクタム(a01)、とくに好ましいのは炭素数6〜12のラクタムである。
【0037】
<帯電防止剤(Z)>
本発明の前記ブロックポリマー(A)と、アミド形成性モノマー(c)とを含有してなる。前記(c)と(A)との重量比[(c)/(A)]は、2/98〜12/88であり、好ましくは3/97〜10/90、さらに好ましくは4/96〜8/92である。
上記重量比[(c)/(A)]が、2/98未満では、脱型性、帯電防止に劣り、12/88を超えると金型汚染性、機械的強度に劣る。
帯電防止剤(Z)には、帯電防止性を向上させるため、さらに後述のイミダゾリウム塩(S)を含有してもよい。
上記(S)の重量は、前記(c)と(A)との合計重量に基づいて、帯電防止性および連続性成形性の観点から、好ましくは1〜10重量%、さらに好ましくは2〜8重量%、とくに好ましくは3〜6重量%である。
【0038】
帯電防止剤(Z)は、例えば、以下の方法により、製造できる。
(1)(a0)を反応して、(a)を得る。ここで、(a0)を、適宜、残存させることにより、(a)と(c)との混合物を得る。これと(b)とを反応して、(A)と(c)とを含有する(Z)を得る。必要により(S)は、(A)と(c)とを含有したものと混合する。
(2)(a0)を反応して、(a)を得る。(a)と(b)とを反応して、(A)を得る。さらに(c)を加えて、(A)と(c)とを含有する(Z)を得る。必要により(S)と、(A)と(c)とを含有したものとを混合する。
(3)(a0)を反応して、(a)を得る。(a)と(b)とを反応して、(A)を得る。さらに、(c)と(S)との混合物と、(A)とを混合する。
上記(1)〜(3)のうち、塩(S)を含有する場合には、(3)の方法が好ましい。
【0039】
<イミダゾリウム塩(S)>
本発明におけるイミダゾリウム塩(S)は、後述のイミダゾリウムカチオンとアニオンとから構成される。
【0040】
前記塩(S)を構成するイミダゾリウムカチオンとしては、C5〜15、例えば、1,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3−エチル−イミダゾリウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−フェニルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−ベンジルイミダゾリウム、1−ベンジル−2,3−ジメチル−イミダゾリウム、4−シアノ−1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、3−シアノメチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム、2−シアノメチル−1,3−ジメチル−イミダゾリウム、4−アセチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、3−アセチルメチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム、4−メチルカルボオキシメチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、3−メチルカルボオキシメチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム、4−メトキシ−1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、3−メトキシメチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム、4−ホルミル−1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、3−ホルミルメチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム、3−ヒドロキシエチル−1,2−ジメチルイミダゾリウム、4−ヒドロキシメチル−1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、2−ヒドロキシエチル−1,3−ジメチルイミダゾリウムが挙げられる。
上記イミダゾリウムカチオンのうち、帯電防止性の観点から、好ましいのは1−アルキル(アルキルの炭素数1〜3)3−アルキル(アルキルの炭素数1〜3)、さらに好ましいのは1−エチル−3−メチルイミダゾリウムである。
【0041】
前記塩(S)を構成するアニオンとしては、例えば、炭素数1〜20スルホン酸のアニオン(例えば、メタンスルホン酸のアニオン、ドデシルベンゼンスルホン酸のアニオン)、アルキル(アルキルの炭素数1〜8)硫酸エステルのアニオン(例えば、メチル硫酸エステルアニオン、エチル硫酸エステルアニオン、オクチル硫酸エステルアニオン)が挙げられる。
上記アニオンのうち、帯電防止性の観点から、好ましいのは炭素数1〜20スルホン酸のアニオン、さらに好ましいのはドデシルベンゼンスルホン酸のアニオンである。
【0042】
<帯電防止性樹脂組成物(Y)>
本発明の帯電防止性樹脂組成物は、前記帯電防止剤(Z)と、後述の熱可塑性樹脂(E)とを含有してなる。
帯電防止剤(Z)と熱可塑性樹脂(E)との重量比[(Z)/(E)]は、帯電防止性および機械物性の観点から、好ましくは3/97〜20/80、さらに好ましくは5/95〜15/85である。
【0043】
熱可塑性樹脂(E)としては、ポリフェニレンエーテル樹脂(E1);ビニル樹脂〔ポリオレフィン樹脂(E2)[例えばポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂]、ポリ(メタ)アクリル樹脂(E3)[例えばポリメタクリル酸メチル]、ポリスチレン樹脂(E4)[ビニル基含有芳香族炭化水素単独またはビニル基含有芳香族炭化水素と、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリルおよびブタジエンからなる群から選ばれる少なくとも1種とを構成単位とする共重合体、例えばポリスチレン、スチレン/アクリロニトリル共重合体(AN樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン共重合体(MBS樹脂)、スチレン/メタクリル酸メチル共重合体(MS樹脂)]等〕;ポリエステル樹脂(E5)[例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリブチレンアジペート、ポリエチレンアジペート];ポリアミド樹脂(E6)[例えばナイロン66、ナイロン69、ナイロン612、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン6/66、ナイロン6/12];ポリカーボネート樹脂(E7)[例えばポリカーボネート、ポリカーボネート/ABSアロイ樹脂];ポリアセタール樹脂(E8)、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0044】
これらのうち、後述する成形品の機械物性および帯電防止性の観点から、好ましいのは(E2)、(E4)、(E7)、さらに好ましいのは(E4)である。
【0045】
本発明の帯電防止性樹脂組成物(Y)には、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要により、前記(A)、(c)、(S)、(E)以外に、公知の樹脂用添加剤(G)を含有してもよい。
樹脂用添加剤(G)としては、相溶化剤(カルボン酸変性ポリプロピレン等)、難燃剤(グアナミン等)、顔料(酸化チタン等)、染料(アゾ系染料等)、核剤(タルク等)、滑剤(カルバナロウワックス等)、可塑剤(ジオクチルフタレート等)、酸化防止剤(トリフェニルホスファイト等)、紫外線吸収剤[2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等]が挙げられる。
樹脂用添加剤(G)の含有量は、用途によって異なるが、帯電防止剤(Z)と熱可塑性樹脂(D)との合計重量に基づいて、例えば45重量%以下、添加効果の観点から、好ましくは0.01〜30重量%、さらに好ましくは0.1〜10重量%である。
【0046】
本発明の帯電防止性樹脂組成物(Y)は、前記帯電防止剤(Z)、熱可塑性樹脂(E)および必要により(G)を溶融混合することにより得られる。
溶融混合する方法としては、一般的にはペレット状または粉体状の成分を適切な混合機
、例えばヘンシェルミキサー等で混合した後、押出機で溶融混合してペレット化する方法
が適用できる。
溶融混合時の各成分の添加順序には特に限定はないが、例えば、
(1)帯電防止剤、(E)および必要により(G)を一括して溶融混合する方法、
(2)本発明の帯電防止剤、および(E)の一部を予め溶融混合して帯電防止剤の高濃度樹脂組成物(マスターバッチ樹脂組成物)を作成し、その後、残りの(E)並びに必要により(G)を溶融混合する方法、が挙げられる。
【0047】
<成形品>
本発明の成形品は、上記帯電防止性樹脂組成物(Y)を成形して得られる。該成形方法としては、射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形、発泡成形、フィルム成形(キャスト法、テンター法、インフレーション法等)等が挙げられ、目的に応じて任意の方法で成形できる。
【0048】
本発明の帯電防止剤(Z)は、熱可塑性樹脂に優れた帯電防止性を付与する。また、成形品は、機械的強度に優れ、成形時の連続成形性(金型汚染性、脱型性)に優れる。
このため、各種成形法[射出成形、圧縮成形、カレンダ成形、スラッシュ成形、回転成形、押出成形、ブロー成形、発泡成形およびフィルム成形(例えばキャスト法、テンター法およびインフレーション法)等]で成形されるハウジング製品[家電・OA機器、ゲーム機器および事務機器用等]、プラスチック容器材[クリーンルームで使用されるトレー(ICトレー等)、その他容器等]、各種緩衝材、被覆材(包材用フィルム、保護フィルム等)、床材用シート、人工芝、マット、テープ基材(半導体製造プロセス用等)、並びに各種成形品(自動車部品等)用材料とし幅広く用いることができ、極めて有用である。
【実施例】
【0049】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特に定めない限り、%は重量%、部は重量部を示す。
【0050】
<製造例1>
[ポリアミド(a−1)の製造]
撹拌機、温度計、加熱冷却装置、窒素導入管及び減圧装置を備えたステンレス製耐圧反応容器に、ε−カプロラクタム79.4部、テレフタル酸11.5部、酸化防止剤[「イルガノックス1010」、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製]0.3部及び水6部を投入し、窒素置換後、密閉下、撹拌しながら220℃まで昇温し、同温度(圧力:0.2〜0.3MPa)で4時間撹拌し、両末端にカルボキシル基を有するポリアミド(a−1)を得た。
(a−1)の酸価は78、Mnは1,400であった。
【0051】
<製造例2>
[ポリアミド(a−2)の製造]
製造例1と同様の耐圧反応容器に、ω−ラウロラクタム82.5部、テレフタル酸16.3部、酸化防止剤[「イルガノックス1010」、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製]0.3部及び水10部を投入し、窒素置換後、密閉下、撹拌しながら220℃まで昇温し、同温度(圧力:0.2〜0.3MPa)で4時間撹拌し、両末端にカルボキシル基を有するポリアミド(a−2)を得た。
(a−2)の酸価は109、Mnは1,000であった。
【0052】
<製造例3>
[ポリアミド(a−3)の製造]
製造例1と同様の耐圧反応容器に、ヘキサメチレンジアミン17.7部、アジピン酸37.1部、酸化防止剤[「イルガノックス1010」、チバスペシャリティーケミカルズ(株)製]0.3部及び水160部を投入し、窒素置換後、密閉下、撹拌しながら270℃まで昇温し、同温度(圧力:1.7〜1.8MPa)で4時間撹拌し、両末端にカルボキシル基を有するポリアミド(a−3)を得た。
(a−3)の酸価は132、Mnは850であった。
【0053】
<製造例11>
[ブロックポリマー(A−1)]
撹拌機、温度計及び加熱冷却装置を備えた反応容器に、(a−1)223部、ビスフェノールAのEO付加物(Mn:1,800)279部、および酢酸ジルコニル7部を投入し、撹拌しながら240℃に昇温し、減圧下(0.013MPa以下)同温度で6時間重合させて、ブロックポリマー(A−1)を得た。
なお、(A−1)のMnは22,000、重量比[(a)/(b)]は44/56であった。
【0054】
<製造例12>
[ブロックポリマー(A−2)]
撹拌機、温度計及び加熱冷却装置を備えた反応容器に、(a−2)253部、ポリエチレングリコール(Mn:1,000)253部、および酢酸ジルコニル7部を投入し、撹拌しながら240℃に昇温し、減圧下(0.013MPa以下)同温度で6時間重合させて、ブロックポリマー(A−2)を得た。
なお、(A−2)のMnは50,000、重量比[(a)/(b)]は50/50であった。
【0055】
<製造例13>
[ブロックポリマー(A−3)]
撹拌機、温度計及び加熱冷却装置を備えた反応容器に、(a−1)155.5部、(a−3)38.9部、ポリエチレングリコール(Mn:2,000)307.7部、および酢酸ジルコニル7部を投入し、撹拌しながら240℃に昇温し、減圧下(0.013MPa以下)同温度で6時間重合させて、ブロックポリマー(A−4)を得た。
なお、(A−3)のMnは15,000、重量比[(a)/(b)]は39/61であった。
【0056】
<実施例1>
撹拌機、温度計及び加熱冷却装置を備えた反応容器に、ブロックポリマー(A−1)98部と、ε−カプロラクタム(c−1)2部と、塩(S−1)0部とを仕込み、220℃で1時間混合、撹拌した後、ベルト上にストランド状で取出し、ペレット化し、帯電防止剤(Z−1)を得た。
【0057】
<実施例2〜8、比較例1〜2>
実施例1において、表1の配合組成(部)にしたがった以外は、実施例1と同様にして、各帯電防止剤(Z)を得た。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
<実施例11〜21、比較例11〜12>
表2に示す配合組成に従って、帯電防止剤(Z)、熱可塑性樹脂(E)をヘンシェルミキサーで3分間ブレンドした後、ベント付き2軸押出機にて、回転速度100rpm、滞留時間3分間の条件で、260℃で溶融混錬して、各帯電防止性樹脂組成物(Y)を得た。
得られた各帯電防止性樹脂組成物(Y)について、後述の<評価方法>にしたがって、評価した。結果を表2に示す。
【0060】
<評価方法>
1.金型汚染性
各樹脂組成物について射出成形機[ 商品名「PS40E5ASE」、日精樹脂工業(株)]を用い、シリンダー温度260℃、金型温度80℃、成形サイクル30秒にて、平板試験片(縦70mm、横70mm、厚さ2mm) を1000ショット射出成形後、下記の<評価基準>により金型汚染性の評価を行った。
<評価基準>
◎:金型表面に変化がみられない。
○:金型表面に汚れがわずか。
△:金型表面に汚れが認められる。
×:金型表面が極めて汚れ、成形品の外観が悪い。
【0061】
2.脱型性
各樹脂組成物について射出成形機[ 商品名「PS40E5ASE」、日精樹脂工業(株)]を用い、シリンダー温度260℃、金型温度80℃、成形サイクル30秒にて、平板試験片(縦70mm、横70mm、厚さ2mm) を1000ショット射出成形後、下記の<評価基準>により脱型性の評価を行った。
1ショット目の脱型に要する抵抗力(単位:N)を(D1)、1000ショット目の脱
型に要する抵抗力を(D1000)として、脱型性を下記式(1)に基づいて評価した。
脱型性(%)=(D1000)×100/(D1) (1)
<評価基準>
◎:110%未満
○:110%以上、120%未満
△:120%以上、130%未満
×:130%以上
【0062】
3.表面固有抵抗値(単位:Ω)
各樹脂組成物について射出成形機[ 商品名「PS40E5ASE」、日精樹脂工業(株)]を用い、シリンダー温度260℃、金型温度80℃にて、平板試験片(縦100mm、横100mm、厚さ2mm)を作製した。平板試験片について、超絶縁計「DSM−8103」[東亜電波工業(株)製]を用いて23℃、湿度40%RHの雰囲気下で測定した。
【0063】
4.アイゾット衝撃強度(単位:J/m)
各樹脂組成物について射出成形機[商品名「PS40E5ASE」、日精樹脂工業(株
)]を用い、シリンダー温度260℃、金型温度80℃にて、試験片を作製、ASTM D256 Method A(ノッチ付き、3.2mm厚)に準拠して測定した。
【0064】
【表2】
【0065】
熱可塑性樹脂
(E−1):
ABS樹脂[商品名「セビアン−V320」、ダイセルポリマー(株)製]
(E−2):
耐衝撃性PS樹脂[商品名[HIPS 433]、PSジャパン(株)製]
(E−3):
ポリカーボネート樹脂[商品名[パンライト L−1225L]、帝人化成(株)製]
【0066】
表1、2の結果から、本発明の帯電防止剤(Z)は、比較のものと比べて、帯電防止性に優れ、成形品に優れた機械的強度を付与し、さらに成形時の連続成形性(金型汚染性、脱型性)に優れることが分かる。
【解決手段】 ポリアミド(a)のブロックと親水性ポリマー(b)のブロックとを構成単位として有するブロックポリマー(A)と、アミド形成性モノマー(c)とを含有してなり、前記(c)と(A)との重量比[(c)/(A)]が、2/98〜12/88である帯電防止剤;該帯電防止剤(Z)と、熱可塑性樹脂(E)とを含有してなる帯電防止性樹脂組成物(Y);該帯電防止性樹脂組成物(Y)を成形した成形品。