特許第6807539号(P6807539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807539
(24)【登録日】2020年12月10日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】車両用シート装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/14 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
   B60N2/14
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-165476(P2017-165476)
(22)【出願日】2017年8月30日
(65)【公開番号】特開2019-43200(P2019-43200A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2019年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村林 賢司
(72)【発明者】
【氏名】西川 慎哉
(72)【発明者】
【氏名】中川 茂
【審査官】 井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−254969(JP,A)
【文献】 特開2000−071824(JP,A)
【文献】 特開2009−090771(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3159009(JP,U)
【文献】 米国特許第05636884(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − B60N 2/90
A47C 1/02 − A47C 1/037
A47C 3/20 − A47C 3/40
A47C 7/02 − A47C 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持テーブルの左右両側に上下回動可能な状態で連結され、回動自由端側がシート本体の左右両側を支持する左右一対のリンクを一台の駆動装置により同時に等しい角度だけ回動させるシート移動機構を備える車両用シート装置であって、
前記駆動装置は、左側のリンクの回動中心からずれた位置で、その左側のリンクとリンク回動方向において係合する左側係合部と、右側のリンクの回動中心からずれた位置で、その右側のリンクとリンク回動方向において係合する右側係合部と、前記左側係合部と右側係合部とを前記左右一対のリンクの回動中心回りに円弧運動させる円弧運動機構とを有している車両用シート装置。
【請求項2】
請求項1に記載された車両用シート装置であって、
前記駆動装置は、左右方向に延びる軸状部材を備えており、前記軸状部材の一端側と他端側とに前記左側のリンクと係合する前記左側係合部と前記右側のリンクと係合する前記右側係合部とが設けられている車両用シート装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用シート装置であって、
前記駆動装置の円弧運動機構は、左右一対のリンクの回動中心と同軸に設けられた円板部と、前記円板部を軸心回りに回動させる駆動源とを有しており、
前記円板部の円周方向における一箇所には、前記軸状部材の途中部分を支持する支持部が設けられている車両用シート装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の車両用シート装置であって、
前記シート移動機構は、支持テーブルの左右両側で上下回動可能に連結された左右一対の前側リンクと、左右一対の後側リンクと、前記前側リンクと後側リンクとの回動自由端側をつなぐリンクで、前記シート本体を支持する左右一対の支持リンクとを備えており、
前記駆動装置の前記左側係合部と前記右側係合部とが左右一対の後側リンクと係合している車両用シート装置。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれかに記載の車両用シート装置であって、
左右一対のリンクには、回転中心の近傍位置から前記回転中心を通る仮想直線に沿って前記リンクと交差する方向に延びる係合溝が形成されており、
前記左右一対のリンクの係合溝と前記駆動装置の軸状部材の一端側と他端側とが係合している車両用シート装置。
【請求項6】
請求項4又は請求項5のいずれかに記載の車両用シート装置であって、
後側リンクの幅寸法が前側リンクの幅寸法よりも大きく設定されている車両用シート装置。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれかに記載の車両用シート装置であって、
前記前側リンクと前記支持テーブルとの連結位置は、前記後側リンクと前記支持テーブルとの連結位置よりも低い位置にあり、前記前側リンクの長さ寸法が後側リンクの長さ寸法よりも大きい値に設定されている車両用シート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右一対のリンクを一台の駆動装置により同時に等しい角度だけ回動させるシート移動機構を備える車両用シート装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これに関連する車両用シート装置が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の車両用シート装置におけるシート移動機構は、左右一対のリンクと、前記左右一対のリンクを同時に等しい角度だけ回動させる一台の駆動装置とを備えている。駆動装置は、左右一対のリンクの回動中心に連結される作動連結軸を備えており、その作動連結軸が車両用シート装置の固定フレームの左側、右側に設けられた左右の軸受に通されている。また、駆動装置は、作動連結軸を軸心回りに回転させるモータ及び歯車機構を備えている。これにより、モータが回転することで歯車機構を介して作動連結軸が軸心回りに回転し、左右一対のリンクが同時に等しい角度だけ回動するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−71824号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記車両用シート装置の駆動装置は、作動連結軸が固定フレームに設けられた左右の軸受に通された状態で、左右一対のリンクの回動中心に連結される構成である。このため、固定フレームの左右の軸受と作動連結軸との同軸度を確保する必要がある。したがって、モータ及び歯車機構と共に作動連結軸を位置調整可能な構造にしたり、あるいは部品の精度を上げる等の対策が必要となり、コストアップになる。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、駆動装置と左右一対のリンクとの位置決め精度を上げることなく、左右一対のリンクを良好に回動させられるようにして、コスト低減を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。請求項1の発明は、支持テーブルの左右両側に上下回動可能な状態で連結され、回動自由端側がシート本体の左右両側を支持する左右一対のリンクを一台の駆動装置により同時に等しい角度だけ回動させるシート移動機構を備える車両用シート装置であって、前記駆動装置は、左側のリンクの回動中心からずれた位置で、その左側のリンクとリンク回動方向において係合する左側係合部と、右側のリンクの回動中心からずれた位置で、その右側のリンクとリンク回動方向において係合する右側係合部と、前記左側係合部と右側係合部とを前記左右一対のリンクの回動中心回りに円弧運動させる円弧運動機構とを有している。
【0007】
本発明によると、駆動装置は、左側のリンクの回動中心からずれた位置で、その左側のリンクとリンク回動方向において係合する左側係合部と、右側のリンクの回動中心からずれた位置で、その右側のリンクとリンク回動方向において係合する右側係合部とを備えている。また、駆動装置の円弧運動機構は、前記左側係合部と右側係合部とを前記左右一対のリンクの回動中心回りに円弧運動させられるように構成されている。このため、駆動装置の円弧運動機構が動作することで、左側係合部と右側係合部とが左右一対のリンクをリンク回転方向に押圧して、左右一対のリンクが回動中心回りに回動するようになる。このとき、仮に、駆動装置の左側係合部と左側のリンクとの係合位置と、駆動装置の右側係合部と右側のリンクとの係合位置とがリンク回動半径方向にずれていても、左右一対のリンクを良好に回動中心回りに回動させることができる。即ち、駆動装置と左右一対のリンクとの位置決め精度を高くしなくても、左右一対のリンクを良好に回動させることができる。
【0008】
請求項2の発明によると、駆動装置は、左右方向に延びる軸状部材を備えており、前記軸状部材の一端側と他端側とに前記左側のリンクと係合する前記左側係合部と前記右側のリンクと係合する前記右側係合部とが設けられている。
【0009】
請求項3の発明によると、駆動装置の円弧運動機構は、左右一対のリンクの回動中心と同軸に設けられた円板部と、前記円板部を軸心回りに回動させる駆動源とを有しており、
前記円板部の円周方向における一箇所には、前記軸状部材の途中部分を支持する支持部が設けられている。このため、駆動源により円板部を軸心回りに回動させることで、支持部に支持された軸状部材の一端側と他端側とを左右一対のリンクの回動中心回りに円弧運動させることができる。
【0010】
請求項4の発明によると、シート移動機構は、支持テーブルの左右両側で上下回動可能に連結された左右一対の前側リンクと、左右一対の後側リンクと、前記前側リンクと後側リンクとの回動自由端側をつなぐリンクで、前記シート本体を支持する左右一対の支持リンクとを備えており、駆動装置の左側係合部と右側係合部とが左右一対の後側リンクと係合している。これにより、駆動装置が左右一対の後側リンクを回動させることで、シート本体が昇降スライドするようになる。
【0011】
請求項5の発明によると、左右一対のリンクには、回転中心の近傍位置から前記回転中心を通る仮想直線に沿って前記リンクと交差する方向に延びる係合溝が形成されており、前記左右一対のリンクの係合溝と前記駆動装置の軸状部材の一端側と他端側とが係合している。このため、軸状部材の一端側と他端側とが左右一対のリンクの係合溝と前記係合溝内のどの位置で係合していても、軸状部材が左右一対のリンクをリンク回動方向に押圧できるようになる。
【0012】
請求項6の発明によると、後側リンクの幅寸法が前側リンクの幅寸法よりも大きく設定されている。このため、駆動装置の軸状部材からリンク回転方向の押圧力を受ける左右一対の後側リンクの強度を前側リンクの強度よりも大きくできる。
【0013】
請求項7の発明によると、前側リンクと支持テーブルとの連結位置は、後側リンクと支持テーブルとの連結位置よりも低い位置にあり、前側リンクの長さ寸法が後側リンクの長さ寸法よりも大きい値に設定されている。このため、後側リンクを前方に回動させてシート本体を前方に移動させる際、前記シート本体を前傾させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、駆動装置と左右一対のリンクとの位置決め精度を上げることなく、左右一対のリンクを良好に回動させられるようになり、コスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態1に係る車両用シート装置においてシート本体が車両前向きの着座位置にある状態の模式斜視図である。
図2】前記車両用シート装置においてシート本体がドア開口部の乗降位置にある状態の模式側面図である。
図3】前記車両用シート装置の全体側面図である。
図4】前記車両用シート装置の動作側面図である。
図5】前記車両用シート装置の動作側面図である。
図6】前記車両用シート装置の4節リンク機構の分解斜視図である。
図7】前記車両用シート装置の4節リンク機構における駆動装置の分解斜視図である。
図8】前記車両用シート装置の4節リンク機構の側面図である。
図9】前記車両用シート装置の4節リンク機構の動作側面図である。
図10】前記車両用シート装置の4節リンク機構の動作側面図である。
図11】前記車両用シート装置の格納ストッパを表す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態1]
以下、図1図11に基づいて、本発明の実施形態1に係る車両用シート装置の説明を行なう。本実施形態に係る車両用シート装置は、図1等に示すように、乗用車Cの助手席等に使用されるシート装置である。ここで、図中に示す前後左右及び上下は、車両用シート装置10を備える乗用車Cの前後左右及び上下に対応している。また、図中のシート前後、シート左右は、車両用シート装置10のシート本体12における前後左右に対応している。
【0017】
<車両用シート装置10の概要について>
車両用シート装置10は、図1図2等に示すように、シート本体12と、そのシート本体12を車室内の着座位置とドア開口部Dの乗降位置間で移動させるシート移動装置200とから構成されている。シート本体12は、シートクッション14とシートバック16とを備えており、前記シートクッション14とシートバック16との連結位置にシートバック16の傾斜角度(リクライニング角度)を調整するリクライナ18が設けられている。シート移動装置200は、図3図5に示すように、車両フロアF上に設置された前後スライド機構20と、その前後スライド機構20の前後スライドベース21上に設置された回転機構30と、その回転機構30の回転テーブル35上に設置された4節リンク機構40とを備えている。そして、4節リンク機構40の支持リンク45等によってシート本体12が下方から支持されている。
【0018】
<前後スライド機構20について>
前後スライド機構20は、車室内でシート本体12を車両前後方向に移動させる機構である。前後スライド機構20は、図3等に示すように、車両フロアFの固定ベース23上で車両前後方向に延びる左右一対の固定側レール22と、左右一対の固定側レール22に沿って摺動する左右の摺動体22sとを備えている。そして、左右の摺動体22sが前後スライドベース21の下面に固定されている。また、固定ベース23と前後スライドベース21間には、固定ベース23に対して前後スライドベース21を前後スライドさせるための駆動部(図示省略)が設けられている。
【0019】
<回転機構30について>
回転機構30は、シート本体12を車両前向きの着座位置とドア開口部D側を向く横向き位置との間で約100°水平回転させる機構である。回転機構30は、図3等に示すように、前後スライドベース21上に固定された内輪31と、内輪31に対して回転可能に支持された外輪33と、外輪33上に固定された回転テーブル35とを備えている。そして、前後スライドベース21上に内輪31に対して外輪33を回転させる駆動部(図示省略)が設けられている。即ち、回転機構30は、回転テーブル35上の格納位置にあるシート本体12を車両前向きの着座位置とドア開口部D側を向く横向き位置間で水平回転させられるように構成されている。
【0020】
<4節リンク機構40について>
4節リンク機構40は、シート本体12を格納位置(前記横向き位置)とドア開口部Dの乗降位置間で移動させる機構であり、回転テーブル35の幅方向両側(シート左側と右側)とにそれぞれ設けられている。4節リンク機構40は、図3図5に示すように、シート本体12をシート前方向に移動させながら下降させ、さらにシート本体12を徐々に前傾させられるように構成されている。回転テーブル35上には、図6に示すように、幅方向両側(シート左右)にシート前側が低くシート後側高い山形の側壁部35wが設けられており、左右の側壁部35wが4節リンク機構40の固定リンクを構成している。
【0021】
そして、回転テーブル35における左右の側壁部35wのシート前端部35fには、前側リンク44の一端部44dが上下回動可能な状態で連結されている。また、左右の側壁部35wの後部位置の頂部35tには後側リンク43の一端部43dが上下回動可能な状態で連結されている。即ち、前側リンク44と回転テーブル35の側壁部35wとの連結位置は、後側リンク43と回転テーブル35の側壁部35wとの連結位置よりも低い位置にある。さらに、前側リンク44の長さ寸法は後側リンク43の長さ寸法よりも大きく設定されており、両リンク43,44が起立した状態で前側リンク44と後側リンク43との回動自由端側(他端部)はほぼ等しい高さになる。即ち、前記回転テーブル35が本発明の支持テーブルに相当する。
【0022】
前側リンク44の他端部44u(回動自由端側)は、図6図8に示すように、支持リンク45の中央部45cに上下回動可能な状態で連結されており、後側リンク43の他端部43u(回動自由端側)が前記支持リンク45の後端部45bに上下回動可能な状態で連結されている。そして、図8に示すように、前側リンク44が回転テーブル35に対して直角に起立した状態で、後側リンク43が回転テーブル35に対して後方に傾斜した状態で起立し、支持リンク45が水平に保持される。左右の支持リンク45の後端部は、図6に示すように、後梁部46によって連結されており、これにより平面コ字形の架台が形成される。そして、平面コ字形に形成された左右の支持リンク45と後梁部46とによってシート本体12が下方から支持されている。
【0023】
<4節リンク機構40の駆動装置50について>
回転テーブル35上には、左右一対の4節リンク機構40の後側リンク43を同時に上下回動させる一台の駆動装置50が設置されている。駆動装置50は、図7に示すように、回転テーブル35上を横断するように左右方向に延びる直線状のドライブシャフト51を備えている。そして、前記ドライブシャフト51の一端側51fと他端側51rとがそれぞれ左右一対の後側リンク43の係合溝43mとリンク回動方向において係合している。ドライブシャフト51は、補強ブラケット52によって補強されている。補強ブラケット52は、ドライブシャフト51と平行に設けられた補強板52bと、補強板52bとドライブシャフト51とを長さ方向において複数箇所で連結する連結板52cとから構成されている。
【0024】
また、駆動装置50は、左右一対の後側リンク43の一端部43d(回転中心43d)と同軸になるように配置された円板部54と、その円板部54を軸心回りに回動させるモータ55、及び歯車機構56とからなる駆動源を備えている。円板部54には、円周方向における一箇所にU字形の切欠54cが形成されており、その切欠54cにドライブシャフト51の長さ方向における中央部が径方向から嵌合している。これにより、駆動装置50の駆動源のモータ55が回転すると、歯車機構56を介して円板部54が軸心回りに回動し、水平に保持されたドライブシャフト51が円板部54の軸心を中心に円弧運動するようになる。即ち、ドライブシャフト51の一端側51fと他端側51rとが左右一対の後側リンク43の回転中心43d回りに円弧運動するようになる。このように、円板部54の切欠54cが本発明における円板部の支持部に相当する。
【0025】
駆動装置50のドライブシャフト51の一端側51fと他端側51rとが係合する左右一対の後側リンク43の係合溝43mは、図7図8に示すように、ドライブシャフト51が径方向から嵌め込まれるようにU字形の切欠状に形成されている。そして、係合溝43mは、後側リンク43の回動中心43dの近傍でその回動中心43dを通る直線に沿って後側リンク43と交差する方向に延びるように形成されて、前記回動中心43dと反対側が開放されている。即ち、係合溝43mは、後側リンク43のリンク回転半径方向に延びるように形成されている。このため、ドライブシャフト51の一端側51fと他端側51rとは、左右一対の後側リンク43における係合溝43mの深さ方向、即ち、リンク回転半径方向に変位可能な状態で、それぞれの係合溝43mとリンク回動方向において係合している。
【0026】
したがって、仮に、ドライブシャフト51の軸心が左右一対の後側リンク43の回転中心43dをむすぶ仮想直線と平行でなくても、即ち、ドライブシャフト51が若干傾いていてもドライブシャフト51の一端側51fと他端側51rとは左右一対の後側リンク43の係合溝43mとリンク回動方向において係合可能である。そして、駆動装置50のモータ55が回転して円板部54が軸心回りに回動すると、ドライブシャフト51の一端側51fと他端側51rとが左右一対の後側リンク43をリンク回動方向に押圧し、左右一対の後側リンク43が回転中心43d回りに回動するようになる。したがって、駆動装置50及びドライブシャフト51と左右一対の後側リンク43との位置決め精度を高くしなくても、左右一対の後側リンク43を良好に回動させることができる。
【0027】
ここで、後側リンク43の幅寸法は、係合溝43mの深さ寸法を考慮して前側リンク44の幅寸法の約2倍程度に設定されている。即ち、前記ドライブシャフト51が本発明の軸状部材に相当し、前記ドライブシャフト51の一端側51fと他端側51rとが本発明の駆動装置における左側係合部と右側係合部とに相当する。また、前記円板部54とモータ55、及び歯車機構56とが本発明の円弧運動機構に相当する。
【0028】
図8に示す状態から駆動装置50の円板部54が左回動すると、ドライブシャフト51の一端側51fと他端側51rとが左右一対の後側リンク43の回転中心43d回りに左回動方向に円弧運動する。これにより、ドライブシャフト51の一端側51fと他端側51rとが左右一対の後側リンク43を左回動方向に押圧し、左右一対の後側リンク43が回動中心43d回りに左回動する。これにより、図9に示すように、4節リンク機構40の前側リンク44と後側リンク43とが前方に徐々に倒伏し、支持リンク45及びシート本体12がシート前方向に移動しながら下降し、さらに徐々に前傾するようになる。そして、図10に示すように、4節リンク機構40の前側リンク44と後側リンク43とが支持リンク45とほぼ一直線になる位置まで倒伏した段階で、駆動装置50が停止し、4節リンク機構40の左回動が止められる。
【0029】
また、図10に示す状態から駆動装置50の円板部54が右回動すると、ドライブシャフト51が円板部54の軸心回りに右回動方向に円弧運動して後側リンク43を回動中心43d回りに右回動させる。これにより、図9に示すように、4節リンク機構40の前側リンク44と後側リンク43とが徐々に起立し、支持リンク45及びシート本体12がシート後方向に移動しながら上昇する。さらに、シート本体12は前傾の状態から徐々に水平状態まで戻るようになる。そして、図8に示すように、シート本体12が水平な横向き位置まで戻された状態で、図11に示すように、駆動装置50の補強ブラケット52の受け部Bが回転テーブル35の後壁部35sのストッパSに当接して、4節リンク機構40の右回動が止められる。また、シート本体12が水平な横向き位置(格納位置)まで戻された状態で、シートロック装置(図示省略)が動作し、シート本体12が回転テーブル35にロックされる。
【0030】
<車両用シート装置10の動作について>
次に、車両用シート装置10の動作について説明する。先ず、車室内の着座位置(図1参照)にあるシート本体12をドア開口部Dの乗降位置(図2参照)まで移動させる場合について説明する。ここで、シート本体12が車室内にある状態では、シート本体12は回転テーブル35の格納位置にあって、前記シートロック装置がロック状態に保持されている。また、図11に示すように、駆動装置50の補強ブラケット52の受け部Bが回転テーブル35の後壁部35sのストッパSに当接している。これにより、4節リンク機構40は、図3に示すように、前側リンク44が回転テーブル35に対して直角に起立した状態で、後側リンク43が回転テーブル35に対して後方に傾斜した状態で起立し、支持リンク45、及びシート本体12が水平に保持されている。
【0031】
この状態で、図1に示すように、乗用車Cのドア(図示省略)が開放され、降車スイッチ(図示省略)が操作されると、先ず、前後スライド機構20が動作して回転テーブル35及びシート本体12が回転位置まで車両前後方向にスライドする。次に、回転機構30が動作して回転テーブル35が水平回転し、シート本体12が車両前向きの着座位置からドア開口部D側を向いた横向き位置(図3参照)まで回転する。そして、この状態で、前記シートロック装置のロック状態が解除される。
【0032】
次に、4節リンク機構40の駆動装置50が駆動され、ドライブシャフト51が左回動方向に円弧運動して後側リンク43を回動中心43d回りに左回動させる。これにより、図4図5に示すように、4節リンク機構40の前側リンク44と後側リンク43とが前方に徐々に倒伏し、支持リンク45及びシート本体12がシート前方に移動しながら下降し、さらに徐々に前傾するようになる。そして、シート本体12の前傾に伴って、リクライナ18が動作してシートバック16がシートクッション14に対して後方に傾斜する。このようにして、図5に示すように、4節リンク機構40の前側リンク44と後側リンク43とが支持リンク45とほぼ一直線になる位置まで倒伏すると、駆動装置50が停止してシート本体12は乗降位置に保持される。
【0033】
ドア開口部Dの乗降位置にあるシート本体12を車室内の着座位置まで移動させる場合には、乗車スイッチ(図示省略)を操作する。これにより、図5の状態から駆動装置50のドライブシャフト51が右回動方向に円弧運動して後側リンク43を回動中心43d回りに右回動させる。これにより、図4等に示すように、4節リンク機構40の前側リンク44と後側リンク43とが徐々に起立し、支持リンク45及びシート本体12がシート後方に移動しながら上昇し、さらにシート本体12が前傾の状態から徐々に水平に戻される。そして、シート本体12が水平に戻されるのに伴って、リクライナ18が動作してシートバック16がシートクッション14に対して徐々に起立する。
【0034】
そして、図3に示すように、シート本体12が水平な横向き位置まで戻された状態で、図11に示すように、駆動装置50の補強ブラケット52の受け部Bが回転テーブル35の後壁部35sのストッパSに当接して、4節リンク機構40の右回動が止められる。また、シートロック装置(図示省略)が動作することで、シート本体12が回転テーブル35にロックされる。次に、回転機構30、及び前後スライド機構20が動作することでシート本体12が着座位置まで戻される。このように、前記4節リンク機構40及び駆動装置50が本発明のシート移動機構に相当する。
【0035】
<本実施形態に係る車両用シート装置10の長所について>
本実施形態に係る車両用シート装置10によると、駆動装置50のドライブシャフト51(軸状部材)は、一端側51f(左側係合部)が左の後側リンク43の回動中心からずれた位置で、その左の後側リンク43とリンク回動方向において係合している。また、ドライブシャフト51の他端側51r(右側係合部)が右の後側リンク43の回動中心からずれた位置で、その右の後側リンク43とリンク回動方向において係合している。さらに、駆動装置50の円板部54、モータ55、及び歯車機構56(円弧運動機構)は、ドライブシャフト51の一端側51fと他端側51rとを左右一対の後側リンク43の回動中心回りに円弧運動させられるように構成されている。このため、駆動装置50の円板部54が回動することで、左右一対の後側リンク43がドライブシャフト51の一端側51fと他端側51rとよりリンク回転方向に押圧されて、回動中心回りに回動するようになる。このとき、仮に、ドライブシャフト51の軸心が左右一対の後側リンク43の回動中心をむすぶ仮想直線と平行でなくても、即ち、ドライブシャフト51が若干傾いていても左右一対の後側リンク43を回動中心回りに回動させることが可能になる。
【0036】
したがって、駆動装置50、及びドライブシャフト51と左右一対の後側リンク43との位置決め精度を高くしなくても、左右一対の後側リンク43を良好に回動させることができる。また、ドライブシャフト51の一端側51fと他端側51rとが左右一対の後側リンク43の係合溝43mと前記係合溝43m内のどの位置で係合していても、ドライブシャフト51の一端側51fと他端側51rとが左右一対の後側リンク43をリンク回動方向に押圧できるようになる。
【0037】
<変更例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、左右一対の後側リンク43の係合溝43mをリンク回転半径方向に延びる切欠状に形成する例を示したが、長穴状に形成することも可能である。また、本実施形態では、ドライブシャフト51の長さ方向における中央部を円板部54のU字形の切欠54cに嵌合させ、前記円板部54を軸心回りに回動させることでドライブシャフト51の一端側51fと他端側51rとを円弧運動させる例を示した。しかし、円板部54を設ける代わりに、直線状の駆動シャフトの一端側と他端側とにアームを設け、駆動シャフトを軸心回りに回動させることで、前記左右一対のアームの先端部を円弧運動させることも可能である。これにより、前記左右一対のアームの先端部をそれぞれ左側係合部、右側係合部として左右一対の後側リンク43の係合溝43mとリンク回転方向に係合させることで、左右一対の後側リンク43を回動させることが可能になる。また、本実施形態では、駆動装置50により左右一対の後側リンク43を回動させる例を示したが、左右一対の前側リンク44を回動させる構成でも可能である。
【符号の説明】
【0038】
10・・・車両用シート装置
12・・・シート本体
35・・・回転テーブル(支持テーブル)
40・・・4節リンク機構(シート移動機構)
43m・・係合溝
43・・・後側リンク
43d・・回動中心(一端部)
44・・・前側リンク
45・・・支持リンク
50・・・駆動装置(シート移動機構)
51・・・ドライブシャフト(軸状部材)
51f・・一端側(左側係合部)
51r・・他端側(右側係合部))
54・・・円板部(円弧運動機構)
54c・・切欠(支持部)
55・・・モータ(円弧運動機構、駆動源)
56・・・歯車機構(円弧運動機構、駆動源)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11