(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
(1)濾布を用いる圧搾式脱水装置の濾布からのケーキの剥離性向上剤
本発明の濾布を用いる圧搾式脱水装置の濾布からのケーキの剥離性向上剤(以下、「剥離性向上剤」ともいう)は、分子量10,000〜200,000のポリジアリルジメチルアンモニウム塩と、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤および両性界面活性剤から選択される1種以上の界面活性剤とを有効成分として含有することを特徴とする。
【0019】
(ポリジアリルジメチルアンモニウム塩)
本発明において用いられる分子量10,000〜200,000のポリジアリルジメチルアンモニウム塩は、一般式(I):
【化1】
(式中、Xはハロゲン原子または鉱酸アニオン、nは整数)で表される。
【0020】
一般式(I)におけるXの「ハロゲン原子」としては、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素などが挙げられ、塩素が特に好ましい。また、Xの鉱酸アニオンとしては、硫酸、硝酸、リン酸および炭酸などのアニオン、すなわちHSO
4―、NO
3―、H
2PO
4―およびHCO
3―などが挙げられる。一般式(I)におけるnは、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩の分子量が10,000〜200,000となり得るような整数である。
ポリジアリルジメチルアンモニウム塩の分子量は、剥離性向上効果の点で20,000〜100,000が好ましく、30,000〜80,000が特に好ましい。
【0021】
一般式(I)で表されるポリジアリルジメチルアンモニウム塩としては、具体的にはポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ポリジアリルジメチルアンモニウムブロマイド、ポリジアリルジメチルアンモニウムナイトレート、ポリジアリルジメチルアンモニウムサルフェートおよびポリジアリルジメチルアンモニウムホスフェートなどが挙げられ、本発明ではこれらの1種を単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。また、これらの中でも、剥離性向上効果の点で、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドが特に好ましい。
上記のポリジアリルジメチルアンモニウム塩は、カチオン界面活性剤として用いられる化合物であり、市販のものを使用することができる。
【0022】
(界面活性剤)
本発明において用いられる界面活性剤は、カチオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤および両性界面活性剤から選択される1種以上である。
前述のようにポリジアリルジメチルアンモニウム塩は、カチオン界面活性剤としても用いられる化合物であり、アニオン界面活性剤との共存下では凝集により製剤化ができず、アニオン界面活性剤は、本発明の界面活性剤の選択肢から除外される。
【0023】
(カチオン界面活性剤)
本発明において用いられるカチオン界面活性剤としては、例えば、炭素数12〜18のアルキル基を有するアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩のような4級アンモニウム化合物が挙げられる。
具体的には、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムブロマイド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムブロマイド、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルジメチルベンジルアンモニウムブロマイド、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライドおよびオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムブロマイドなどが挙げられ、本発明ではこれらの1種を単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。また、これらの中でも、剥離性向上効果の点で、炭素数12〜16のアルキル基を有するアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドの混合物が特に好ましい。
上記の4級アンモニウム化合物は、いずれも公知のカチオン界面活性剤であり、市販のものを使用することができる。
【0024】
(ノニオン界面活性剤)
本発明において用いられるノニオン界面活性剤としては、例えば、高級脂肪族アミンのエチレンオキサイドまたはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加物が挙げられる。特に、炭素数10〜20の飽和または不飽和の脂肪族アミンに、エチレンオキサイドを15〜30モル付加させたもの、プロピレンオキサイドを0〜15モル付加させたものが、剥離性向上効果の点で好ましく、エチレンオキサイドを15〜20モル付加させたもの、プロピレンオキサイドを0〜5モル付加させたものがさらに好ましい。
【0025】
炭素数10〜20の飽和または不飽和の脂肪族アミンとしては、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、牛脂アルキルアミン、およびヤシアルキルアミンが挙げられる。ここで、牛脂アルキルアミン、ヤシアルキルアミンとは、そのアミンがヤシ油もしくはヤシ脂肪、牛脂などから公知の手段により製造された炭素数12〜20の直鎖状または分枝状の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基がその主要成分を占めるアミンの混合物(混合アルキルアミン)であることを意味する。
本発明ではこれらの1種を単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。
具体的には、ステアリルアミン・エチレンオキサイド20モル付加物および牛脂アミン・エチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加比85/15(エチレンオキサイド31モルプロピレンオキサイド4モル付加物)が挙げられ、これらは、剥離性向上効果の点で特に好ましい。
上記の付加物は、いずれも公知のノニオン界面活性剤であり、市販のものを使用することができる。
【0026】
(両性界面活性剤)
本発明において用いられる両性界面活性剤としては、例えば、炭素数10〜18の飽和または不飽和のアルキル基を有するアルキルジメチルアミノ酢酸ベタインが挙げられる。
具体例としては、デシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ドデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、テトラデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヘキサデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、オクタデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどが挙げられ、本発明ではこれらの1種を単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。また、これらの中でも、剥離性向上効果の点で、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインが特に好ましい。
上記のアルキルジメチルアミノ酢酸ベタインは、いずれも公知のノニオン界面活性剤であり、市販のものを使用することができる。
【0027】
本発明の剥離性向上剤は、剥離性向上効果の点で、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩がポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドであり、かつ界面活性剤がアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ステアリルアミン・エチレンオキサイド付加物またはラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインであるのが好ましい。
また、本発明の剥離性向上剤は、剥離性向上効果の点で、界面活性剤がノニオン界面活性剤であるのが好ましい。
【0028】
(ポリジアリルジメチルアンモニウム塩および界面活性剤の配合割合)
本発明の剥離性向上剤におけるポリジアリルジメチルアンモニウム塩と界面活性剤との好ましい配合割合は、それらの化合物の種類や添加対象の性状により異なるが、通常、それらの重量比で1:9〜9:1程度である。
界面活性剤がポリジアリルジメチルアンモニウム塩に対して10重量%未満である場合には、十分な剥離効果が得られないことがある。一方、界面活性剤がポリジアリルジメチルアンモニウム塩に対して90重量%を超える場合には、十分な剥離効果が得られないことがある。
より好ましい配合割合は、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩と界面活性剤との重量比で1:3〜5:1である。
【0029】
(製剤)
本発明の剥離性向上剤は、水溶液の形態にあるのが好ましく、具体的には、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩と界面活性剤との水に溶解した液剤形態で製剤化して用いるのが好ましい。
一液製剤の場合、両成分の合計濃度は、溶解度やpHなどに左右され特に限定されるものではないが、通常1〜50重量%程度であり、製剤安定性や経済性の点で5〜40重量%程度が特に好ましい。
【0030】
(ホスホン酸化合物)
本発明の剥離性向上剤は、有効成分としてホスホン酸化合物をさらに含有するのが、剥離性向上効果の点で特に好ましい
本発明において用いられるホスホン酸化合物としては、例えば、アミノトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、トリメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチルホスホン酸、ジエチレントリアミン(ペンタメチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、1−ヒドロキシプロパン−1,1−ジホスホン酸、1−アミノプロパン−1,1−ジホスホン酸および1,2,4−トリカルボキシブタン−2−ホスホン酸ならびにそれらのアルカリ金属塩が挙げられる。アルカリ金属塩としては、ナトリウム塩およびカリウム塩などが挙げられる。本発明ではこれらの1種を単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。また、これらの中でも、剥離性向上効果の点で、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸および1,2,4−トリカルボキシブタン−2−ホスホン酸が好ましく、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸が特に好ましい。
【0031】
ホスホン酸化合物の併用割合は、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩1重量部に対して、0.1〜3重量部、好ましくは0.2〜2重量部である。併用割合が上記の範囲であれば、良好な剥離性向上効果が得られる。
【0032】
(他の配合成分)
本発明の剥離性向上剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の機能を有する薬剤を含有していてもよく、例えば、殺菌剤、防カビ剤、防食剤およびスケール分散剤などが挙げられる。
本発明においては、これら他の機能を有する薬剤の1種を単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。
これらの薬剤の配合割合は、処理対象やその性状などにより適宜設定すればよく、例えば、剥離性向上の有効成分1重量部に対して、0.1〜2重量部程度である。
【0033】
(適用対象)
本発明の剥離性向上剤は、例えば、製紙パルプの蒸解薬液の回収工程、顔料の製造工程、油脂の精製工程、浄水場での汚泥の脱水工程などの各種工業分野の固液分離工程に用いられる濾布を用いる圧搾式脱水装置に適用される。具体的には、濾布を用いる圧搾式脱水装置の濾布に塗布や散布することにより適用される。
濾布を用いる圧搾式脱水装置としては、ベルトプレス型脱水機、フィルタープレス型脱水機(加圧脱水機)、真空脱水機、遠心脱水機および水平ベルトフィルター型脱水機などが挙げられ、これらの中でも、ベルトプレス型脱水機、フィルタープレス型脱水機が好ましく、ベルトプレス型脱水機が特に好ましい。
また、本発明の剥離性向上剤は、濾布を用いる圧搾式脱水装置の対象水が凝集剤を含有する汚泥である場合に、凝集剤のみの添加では得られない特に優れた効果を発揮する。
【0034】
(2)濾布を用いる圧搾式脱水装置の濾布からのケーキの剥離方法
本発明の濾布を用いる圧搾式脱水装置の濾布からのケーキの剥離方法(以下、「剥離方法」ともいう)は、本発明の剥離性向上剤を、前記濾布を用いる圧搾式脱水装置のケーキが直接接触する濾布の表面に散布することを特徴とする。
【0035】
(適用)
本発明の剥離性向上剤の好適な使用場面としては、「濾布を用いる圧搾式脱水装置のケーキが直接接触する濾布」が挙げられる。
例えば、ベルトプレス型脱水機およびフィルタープレス型脱水機について説明する。
ベルトプレスは、濾布上に対象物を載置して重力により固液分離する重力脱水と、2枚の濾布で対象物を挟み込み、濾布の張力により生じる面圧を徐々に高くして対象物中の液体成分を搾り出す圧搾脱水とを連続して行う脱水方式であり、例えば、
図5に示されるような汚泥の脱水処理が挙げられる。
【0036】
図5は、汚泥処理のベルトプレス型脱水機の一例を示す模式図である。
まず、凝集反応槽の第1槽および第2槽に汚泥が投入され、モータMで撹拌下の汚泥に凝集剤が添加され、フロックが形成される。次に、凝集処理された汚泥が、ベルトプレス型脱水機の濾布A上に送られ、重力脱水に付される。次に、濾布上の汚泥が、濾布Aと、加圧ベルトにより張力を与えられた、もう1つの濾布Bとに挟まれ、圧搾脱水に付される。その後、脱水された汚泥が脱水ケーキとしてスクレーパーAにより掻き取られて回収される。
【0037】
一方、2系統の濾布AおよびBは、それぞれ濾過機からポンプPを介して送液される洗浄水の洗浄シャワーAおよびBにより洗浄される。濾布Bの洗浄前には、スクレーパーBにより残留する脱水ケーキが掻き取られる。
なお、凝集反応槽の第1槽および第2槽にはバルブを介して排水の設備、洗浄水タンクにはバルブを介して補給水および排水の設備が付帯する。
【0038】
本発明の剥離方法において、本発明の剥離性向上剤を散布する濾布のポイントは、剥離性向上剤がケーキに直接散布されない限り特に限定されないが、
図5の薬剤添加AおよびBに示されるように、洗浄シャワーAおよびBの洗浄水(シャワー水)に剥離性向上剤を添加して散布するのが好ましい。この方法であれば、剥離性向上剤用のバッファ槽を設けるだけで、特に大掛かりな新たな設備を必要とせず、作業性および希釈性の点でも好ましい。
また、剥離性向上剤の濾布への散布は連続的であっても、間欠的であってもよいが、剥離性向上効果の点で、連続的であるのが好ましい。
【0039】
剥離性向上剤の散布にあたっては、適用対象やその処理の程度などにも因るが、通常、その有効成分の濃度が100〜10,000mg/L程度になるように、すなわち剥離性向上剤を0.05〜5重量%程度に水で希釈すればよい。
また、剥離性向上剤を洗浄水に添加して散布する場合には、剥離性向上剤の有効成分の濃度が洗浄水中で100〜10,000mg/L、好ましくは150〜5,000mg/Lとなるように添加すればよい。
剥離性向上剤の有効成分の濃度が洗浄水中で100mg/L未満では、汚泥の剥離効果が十分に得られないことがある。一方、剥離性向上剤の有効成分の濃度が洗浄水中で10,000mg/Lを超えると、経済的な損失が生まれることがある。
【0040】
本発明の剥離方法においては、本発明の剥離向上剤の各有効成分を含有する一液製剤として用いるのが好ましいが、各有効成分を含有する単一製剤として別々に添加してもよい。
【0041】
フィルタープレスは、濾布を張った濾板を複数直列に密着させ、濾板の中心に対象物を圧入し、濾布の外に液体成分を排出させて、2枚の濾布間のケーキ状の対象物を回収する、基本的にバッチ方式の脱水方式である。
したがって、本発明の剥離方法としては、例えば、本発明の剥離性向上剤を添加した洗浄液で濾布を洗浄する方法、本発明の剥離性向上剤の希釈液を洗浄後の濾布に塗布もしくは散布する方法が挙げられる。その他の条件については、ベルトプレスに準ずる。
【実施例】
【0042】
本発明を製剤例および試験例により具体的に説明するが、本発明はこれらの製剤例および試験例により限定されるものではない。
なお、下記の製剤例1、4および6ならびに実施例3および4は参考例である。
【0043】
製剤例および試験例において次の化合物および水を用いた。
[ポリジアリルジメチルアンモニウム塩]
ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド(PdAdMAC)
(分子量5万〜7万、センカ株式会社製、製品名:ユニセンスFPA100L)
[カチオン界面活性剤]
炭素数12〜16のアルキル基を有するアルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドの混合物
(和光純薬工業株式会社製、塩化アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド(塩化ベンザルコニウム)50%w/w水溶液)
「ノニオン界面活性剤]
ステアリルアミン・エチレンオキサイド20モル付加物(ポリオキシエチレンステアリルアミン)
※以下、エチレンオキサイドを「EO」と略す。
(青木油脂工業株式会社製、製品名:ブラウノンS220)
牛脂アミン・エチレンオキサイドプロピレンオキサイド付加比85/15(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン牛脂アミン)
※以下、エチレンオキサイドプロピレンオキサイドを「EOPO」と略す
(青木油脂工業株式会社製、製品名:ブラウノンSAP−3004)
[両性界面活性剤]
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン
(第一工業製薬株式会社製、製品名:アモーゲンS−H)
【0044】
[ホスホン酸化合物]
1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸
(キシダ化学株式会社製、特級試薬)
「アニオン界面活性剤]
アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム
(花王株式会社製、製品名:ペレックスNBL)
[公知の凝集剤]
ポリマー系凝集剤
(株式会社片山化学工業研究所製、製品名:フロクランC1430)
ポリ塩化アルミニウム(PAC)
(多木化学株式会社製、製品名:ポリ塩化アルミニウム)
ポリ硫酸第二鉄(ポリ鉄)
(多木化学株式会社製、製品名:ダンパワー)
[水]
大阪市水
【0045】
製剤例1〜6では、それぞれ下記の化合物(有効成分)がその配合割合(含有量)になるように水に添加混合し液体製剤を得た。同様にして、比較製剤例1でも製剤化を試みたが、有効成分が凝集して製剤が得られなかった。
(製剤例1:カチオン界面活性剤)
PdAdMAC 5%
アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド 13.5%
(製剤例2:ノニオン界面活性剤)
PdAdMAC 5%
ステアリルアミンEO20モル付加物 13.5%
(製剤例3:ノニオン界面活性剤)
PdAdMAC 5%
牛脂アミンEOPO付加比85/15 13.5%
【0046】
(製剤例4:両性界面活性剤)
PdAdMAC 5%
ラウリルジメチルアミン酢酸ベタイン 13.5%
(製剤例5:ノニオン界面活性剤+ホスホン酸化合物)
PdAdMAC 5%
ステアリルアミンEO20モル付加物 13.5%
HEDP 5%
(製剤例6:カチオン界面活性剤+ホスホン酸化合物)
PdAdMAC 5%
アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド 13.5%
HEDP 5%
(比較製剤例1:アニオン界面活性剤)
PdAdMAC 5%
アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム 13.5%
【0047】
(試験例1)
某食品工場の汚泥廃水から採取した、ベルトプレス型脱水機で処理される汚泥濃度20g/Lの汚泥を汚泥サンプルとして使用した。
容量500mLのシリンダーに汚泥200mLを入れ、ポリマー系凝集剤を、汚泥に対して300ppm加えた。凝集剤の添加濃度は、汚泥の汚泥濃度などの影響を受けるため、予めその濃度から最適な添加濃度を設定しておいた。
次いで、シリンダーの開放口を密閉し、シリンダーの長尺方向の天地が逆になるように10回動作してシリンダーの内容物を撹拌し、汚泥のフロックを形成させた。その後、プラスチック樹脂製漏斗(内径130mm)の上に濾布(汚泥を採取した実機のベルトプレス型脱水機用濾布、株式会社相模商会製、品番:SF600、厚さ1.2mm)を置き、さらにその上に60meshの金網ふるい(内径80mm)を置いた中に汚泥を流し入れて汚泥ケーキ(乾燥重量で約4g)を得た。
【0048】
予め、
図3に示す市販の果汁用の手絞りジューサー(有限会社アイデアセキカワ製、製品名:18−8ステンレスビタミンジューサー)を改造して、試験例1のケーキ圧搾機を準備しておいた。
図4に示すように、手絞りジューサーの持ち手にステンレス製寸切りボルトを貫通させて装着し、濾布剥離性向上剤無添加時の汚泥ケーキの含水率が実機と同程度になるように、ナットの位置を設定した。すなわち、
図4に示すように、手絞りジューサー内にケーキを設置して、その上部の持ち手を下部の持ち手に下降したときに、ナットがストッパーになり、ケーキに掛かる圧力が一定になるようにした。
【0049】
次いで、表1に示す化合物(有効成分)がその配合割合(含有量)になるように水に添加混合して液体製剤を得、さらに得られた液体製剤が1重量%になるように水で希釈して濾布浸漬用水溶液を得た。
得られた水溶液に、ケーキ圧搾機に合わせて外径85mmに切断しておいた上記の実機用濾布2枚を30分間浸漬した。
次いで、
図4に示すように、2枚の濾布でケーキを挟み込み(a)、ケーキ圧搾機に設置し(b)、ケーキ圧搾機の上部の持ち手をナットの位置まで下降させ1分間保持して、ケーキを圧搾した(c)。ケーキの挟み込みでは、1枚の濾布上の略中心に、プラスチック製円筒(外径約20mm×高さ約15mm×厚さ約2mm)を設置し、この円筒に摺切り一杯になるように汚泥ケーキを充填し、円筒を除いてもう1枚の濾布浸漬用水溶液に浸漬した濾布で汚泥ケーキを挟んだ圧搾後、濾布からケーキを剥離し(d)、濾布のケーキとの接触面の光学写真を撮った。
【0050】
下記の条件とすること以外は、上記の実施例と同様にして試験した(比較例1〜5)。
比較例1(ブランク):濾布を水に浸漬
比較例2:濾布をPdAdMAC1850mg/L水溶液に浸漬
比較例3:濾布をノニオン界面活性剤1850mg/L水溶液に浸漬
比較例4:濾布をPAC1850mg/L水溶液に浸漬
比較例5:濾布をポリ鉄1850mg/L水溶液に浸漬
【0051】
図1および
図2に、それぞれ実施例1〜4および比較例1〜5におけるプレス後の濾布表面の外観を示す。これらの濾布は、手絞りジューサーに設置したケーキの上側の濾布である。
試験例1の卓上試験では、ケーキの圧搾条件がベルトプレス型脱水機の実機とは異なるため、ケーキの上側の濾布表面に付着する傾向にあり、剥離性の評価においては、剥離性の向上効果が顕著に表れるケーキの上側の濾布を用いて評価した。
得られた写真から、濾布をケーキの濾布への貼り付き面積を計測し、圧搾により広がった剥離前のケーキの付着面積を基準として、ケーキの濾布への貼り付き面積の割合を求め、下記の基準で剥離性を評価した。
濾布への貼り付き面積の割合
◎:十分な剥離性 0%以上10%未満
○:貼り付き僅かで、実用可 10%以上30%未満
×:貼り付きが多く、実用不可 30%以上100%未満
得られた結果を、使用化合物とその含有量と共に表1に示す。
【0052】
圧搾後の濾布とケーキとを秤量し、次いでそれらを温度105℃に設定した恒温槽に10時間以上静置して乾燥させ、秤量した。
乾燥前後の濾布とケーキとの合計重量の差から含水率を求めた。
得られた結果を、使用化合物とその含有量と共に表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1の結果から次のことがわかる。
・剥離性については、PdAdMACとノニオン界面活性剤(実施例1および2)、PdAdMACとカチオン界面活性剤(実施例3)、PdAdMACと両性界面活性剤(実施例4)のいずれの組み合わせとも十分にケーキが剥離され、良好であり、これらの中でもノニオン界面活性剤を配合した実施例1および2が特に良好であること
・含水率についても同様の傾向が見られ、実施例1〜4では良好な結果が得られ、PdAdMACとノニオン界面活性剤にさらにHEDPを配合した実施例2では剥離性および含水率が共に最も良好な結果が得られること
【0055】
(試験例2)
某食品工場において稼働する濾布を用いる圧搾式脱水装置(
図5に示されるベルトプレス型脱水機)および供試薬剤として試験例1の実施例2の薬剤(PdAdMAC5%+ステアリルアミンEO20モル付加物13.5%+HEDP3%の水溶液)を用いて実機試験を実施した。
具体的には、まず、
図5に示されるベルトプレス型脱水機において、濾布の洗浄用に設置されている洗浄シャワーの配管の下流側に配管を設置して薬剤添加ラインとした。薬剤添加ライン中の水中の供試薬剤の有効成分濃度が215mg/L、161mg/Lおよび107mg/Lになるように、添加ライン水に供試薬剤を添加した(濾布単位面積あたりの添加量で、それぞれ0.6g/m
2、0.5g/m
2および0.3g/m
2)。
【0056】
ベルトプレス型脱水機が駆動中であり、汚泥供給も継続されている状態で、シャワー水にて濾布を洗浄後、濾布が2回転する時間(14分間)、薬剤添加水流量10L/分で添加して、濾布に薬剤を接触させた。薬剤添加終了後から10分後、20分後、30分後および40分後における濾布への汚泥付着量、汚泥剥離状況を目視で観察し、各濃度による効果継続時間を検証した。
濾布の目視観察は、
図5の濾布Bについて実施した。
汚泥剥離状況を濾布への汚泥ケーキの貼り付き状態により下記の基準で評価した。
○:貼り付きが観察されない
△:濾布面積の30〜60%程度で濾布にしみついたように貼り付きが観察される
×:濾布のほぼ全面で貼り付きが観察される
得られた結果を、薬剤有効成分濃度とその濾布単位面積あたりの添加量と共に表2に示す。
表中の濾布単位面積あたりの添加量(g/m
2)は、希釈前薬剤量(g)を2回転分の濾布面積、すなわち濾布の面積の2倍(m
2)で除することにより求めた。
【表2】
【0057】
表2の実機試験の結果から次のことがわかる。
・薬剤有効成分濃度215mg/Lの添加で汚泥処理開始から40分間、薬剤有効成分濃度161mg/Lの添加で汚泥処理開始から30分間、薬剤有効成分濃度107mg/Lの添加で、汚泥処理開始から10分間、濾布の剥離性向上効果が得られること。
・圧搾式脱水装置の機構や規模、連続運転(操業)条件、脱水処理対象の汚泥の性状、脱水処理されたケーキの付着し易さなどにより、薬剤の添加濃度やその添加頻度を適宜設定する必要があり、試験例2の場合には、濾布の剥離性向上効果を得るためには、通常161mg/L以上の薬剤有効成分濃度が必要であること
・試験例2では、薬剤添加(濾布への薬剤接触)と汚泥の脱水処理とを段階的に実施したが、薬剤有効成分濃度を適宜設定して、それらを同時に実施することにより、連続的な濾布の剥離性向上効果が期待できること