(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
フッ素化合物は、撥水・撥油性、酸素透過性、低屈折率などの特徴を活かして塗料や化粧品等への応用が期待できる。しかしながら、フッ素系化合物は撥水・撥油性が高すぎるため、非フッ素原料に対して分散安定性を保持させることが難しい。
【0003】
また、空気中で高い撥油性を発現するフッ素化合物は、水中では逆に撥油性が消失し、油が濡れ拡がるという欠点がある。
【0004】
油分を含んだ廃水は、環境を汚染する大きな原因となり、適切に処理することが求められている。従来、油水分離処理には、比重分離等の静置分離、遠心分離、吸着分離等の方法が用いられている。
【0005】
しかし、静置分離は多大な時間を要し、遠心分離は大がかりな装置を必要とし、吸着分離は大量の油水混合液の処理に不向きである。
【0006】
本発明者らは、先にフルオロアルキル基含有オリゴマーを用い、フルオロアルキル基含有オリゴマーに起因した優れた特性を付与した各種の新しい機能性材料を提案している(例えば、特許文献1〜3等参照)。
【0007】
また、本発明者らは、先に4、4’―ジフェニルメタンジイソシアネートの存在下、アルコキシシリル基を有するフルオロアルキル基含有オリゴマーのアルカリ性条件下若しくは酸性条件下におけるゾル−ゲル反応により、得られるナノコンポジット粒子を提案した(非特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
混合液が、例えば油分の割合が多いものや、利用価値の高い油分を含む場合は、水のみ又は油のみが油水分離材を通過するタイプのものが使用者にとって有利な場合がある。このタイプの油水分離材は、親水性及び撥油性に優れているか、又は親油性及び撥水性に優れていることが条件である。非特許文献1に記載のナノコンポジット粒子は、撥水性に優れたものではあるが、超親油性及び超撥水性に優れたものは未だ得られていない。
【0011】
したがって本発明の課題は、油水分離材として好適に利用することができる超親油性及び超撥水性に優れたコンポジット粒子、その工業的に有利な製造方法、並びに該コンポジット粒子を用いた油水分離材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、フルオロアルキル基含有オリゴマーを用いた新しい機能性材料の開発を進める中で、特定のフルオロアルキル基含有オリゴマーを縮合させた縮合物と、モノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンポリマーとを含むコンポジット粒子は超親油性及び超撥水性を有し、油水分離材として好適に利用できるものであることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0013】
すなわち、本発明が提供しようとする第一の発明は、下記一般式(1)で表されるアルコキシシリル基を有するフルオロアルキル基含有オリゴマーを縮合させた縮合物と、モノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンポリマーとを含有するコンポジット粒子である。
【0014】
【化1】
【0015】
式中、R
1及びR
2は、−(CF
2)p−Y基、又は−CF(CF
3)−[OCF
2CF(CF
3)]q−OC
3F
7基を示し、R
1及びR
2は、同一の基であっても異なる基であってもよい。
Yは水素原子、フッ素原子又は塩素原子を示し、p及びqはそれぞれ独立に0以上10以下の整数である。
R
3、R
4及びR
5は、炭素数1以上5以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示し、R
3、R
4及びR
5は、同一の基であっても異なる基であってもよい。
mは2〜3の整数である。
【0016】
また、本発明が提供しようとする第二の発明は、下記一般式(1)で表されるアルコキシシリル基を有するフルオロアルキル基含有オリゴマーを縮合させた縮合物と、モノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンを含む反応原料溶液に、アルカリを加えて、該アルコキシシリル基の加水分解反応を行うとともに、モノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンの重合を行う反応工程を有するコンポジット粒子の製造方法である。
【0017】
【化2】
【0018】
式中、R
1及びR
2は、−(CF
2)p−Y基、又は−CF(CF
3)−[OCF
2CF(CF
3)]q−OC
3F
7基を示し、R
1及びR
2は、同一の基であっても異なる基であってもよい。
Yは水素原子、フッ素原子又は塩素原子を示し、p及びqはそれぞれ独立に0以上10以下の整数である。
R
3、R
4及びR
5は、炭素数1以上5以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基を示し、R
3、R
4及びR
5は、同一の基であっても異なる基であってもよい。
mは2〜3の整数である。
【0019】
また、本発明が提供しようとする第三の発明は、前記第一の発明のコンポジット粒子を用いた油水分離材である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、超親油性及び超撥水性を有するコンポジット粒子を提供することができる。また、該コンポジット粒子は水と油を分離する油水分離材として好適に利用することができる。
また、本発明によれば、該コンポジット粒子を工業的に有利な方法で提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明する。本発明に係るコンポジット粒子は、前記一般式(1)で表されるアルコキシシリル基を有するフルオロアルキル基含有オリゴマー(以下、「フルオロアルキル基含有オリゴマー」ということもある)を縮合させた縮合物と、モノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンポリマーとを含有するものである。
【0023】
本発明に係るコンポジット粒子は、フルオロアルキル基含有オリゴマーの縮合物100質量部に対して、モノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンポリマーを5質量部以上200質量部以下、特に10質量部以上100質量部以下含むことが、超親油性及び超撥水性を発現する観点から好ましい。
【0024】
本発明のコンポジット粒子は、平均粒子径が好ましくは10nm以上1000nm以下であり、更に好ましくは20nm以上900nm以下である。平均粒子径がこの範囲内にあると、種々の分散溶媒、樹脂材料及び各種基材等への分散性が良好になる。前記平均粒子径は、動的光散乱法により求めることができ、例えばメタノール又はエタノール等の溶媒に分散させたコンポジット粒子を、粒子径測定装置(大塚電子株式会社製ELSZ−2000)を用いることにより測定できる。
【0025】
本発明のコンポジット粒子は、モノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンポリマーの粒子の表面に、該粒子よりも小径である、フルオロアルキル基含有オリゴマーの縮合物の粒子が分散配置されている構造を有することが好ましい。フルオロアルキル基含有オリゴマーの縮合物の粒子は、芯材であるモノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンポリマーの粒子の表面に均一に分散していることが好ましい。「均一に分散」とは、(i)芯材であるモノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンポリマーの粒子の表面が露出するように、疎らで且つ均一にフルオロアルキル基含有オリゴマーの縮合物の粒子が配置されている場合、及び(ii)芯材であるモノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンポリマーの粒子の表面が露出しないように、緻密に且つ均一にフルオロアルキル基含有オリゴマーの縮合物の粒子が配置されている場合の双方の分散状態を包含する。本発明のコンポジット粒子が超親油性及び超撥水性を容易に発現する観点からは、フルオロアルキル基含有オリゴマーの縮合物の粒子は、芯材であるモノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンポリマーの粒子の表面に、(i)の状態で分散配置されていることが好ましい。
【0026】
本発明に係るコンポジット粒子は、フルオロアルキル基含有オリゴマー及びモノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンを含む反応原料溶液にアルカリを加え、アルコキシシリル基の加水分解反応を行うとともに、モノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンの重合を行う反応工程によって得られるものであることが好ましい。
【0027】
フルオロアルキル基含有オリゴマーは、前記一般式(1)で表され、加水分解可能なアルコキシシリル基を有するものである。一般式(1)中のR
3、R
4及びR
5で示される炭素数1以上5以下の直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基及びペンチル基等が挙げられる。
【0028】
一般式(1)中のR
1及びR
2の−(CF
2)p−Y基、又は−CF(CF
3)−[OCF
2CF(CF
3)]q−OC
3F
7基のp及びqはそれぞれ独立に0以上10以下の整数であり、好ましくはそれぞれ独立に0以上3以下の整数である。特にR
1及びR
2は、−CF(CF
3)OC
3F
7であることが好ましい。
【0029】
一般式(1)で表されるフルオロアルキル基含有オリゴマーは、例えば、トリメトキシビニルシラン等のトリアルコキシビニルシランを過酸化フルオロアルカノイルと反応させることにより製造される(例えば、特開2002−338691号公報及び特開2010−77383号公報参照を参照のこと)。得られるフルオロアルキル基含有オリゴマーはナノレベルの微小な粒子である。
【0030】
本発明に係るコンポジット粒子に含まれるモノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンポリマーは、本発明のコンポジット粒子に、優れた親油性を付与し、また優れた油水分離能を付与するものである。
【0031】
モノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンポリマーは、以下の式(2)で表されるモノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンの重合物(架橋体)である。
【0033】
式(2)中、CDで表される環は、シクロデキストリンを表す。Y
+は一価のカチオンを表す。nはシクロデキストリンに導入されたモノクロロトリアジノ基の数を表す。mは、シクロデキストリン中の水酸基の数を表す。モノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンは、シクロデキストリンの水酸基の水素原子がモノクロロトリアジノ基で置換されたものである。シクロデキストリンはグルコース単位を6〜12個含んだオリゴ糖であり、6個のグルコース単位からなるα−シクロデキストリン、7個のグルコース単位からなるβ−シクロデキストリン、及び8個のグルコース単位からなるγ−シクロデキストリンなどがよく知られている。これらのシクロデキストリンのうち、本発明においては、β−シクロデキストリンを用いる。モノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンにおいては、シクロデキストリンの構成グルコース当たりモノクロロトリアジノ基が好ましくは0.3〜0.5個、更に好ましくは0.35〜0.45個置換している。したがって、β−シクロデキストリン1分子当たり平均して好ましくは2.1〜3.5個、更に好ましくは2.1〜3.15個のモノクロロトリアジノ基を有する。
【0034】
式(2)で表されるモノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンは、例えば塩化シアヌルを0℃以上5℃以下の温度条件下でアルカリ水溶液に加え、ジクロロトリアジンナトリウム塩とした後、β−シクロデキストリンを5℃以上15℃以下の温度条件下でアルカリ水溶液に加えて撹拌することで得られる。式(2)で表されるモノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンの製造方法は、例えば特開平8−67702号公報等に記載されている。また、式(2)で表されるモノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンは例えば株式会社シクロケムから入手できる。
【0035】
式(2)で表されるモノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンの重合物であるモノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンポリマーは、シクロデキストリンのOH基と、モノクロロトリアジノ基のClとの縮合反応によって生じるものであり、例えば以下の式(3)で表される。式(3)中、kは繰り返し単位数を示す。
【0037】
式(2)及び式(3)から明らかなとおり、モノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンポリマーは、モノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンの架橋体からなる。モノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンの重合によってモノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンポリマーを得るには、例えばモノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンにアルカリを加えて反応させればよい。
【0038】
本発明に係るコンポジット粒子を製造するときに用いられる反応溶媒としては、フルオロアルキル基含有オリゴマー及びモノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンが溶解できるものが挙げられる。反応溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール及びイソプロピルアルコール等の低級アルコールが挙げられ、これらは単独で使用してもよく、あるいは2種以上の混合溶媒であってもよい。この中で、メタノールが特に好ましい。
【0039】
反応原料溶液中のモノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンの含有量は、5質量部以上200質量部以下であることが好ましく、10質量部以上100質量部以下であることが更に好ましい。モノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンの含有量がこの範囲内であることを条件として、一般式(1)で表されるフルオロアルキル基含有オリゴマーの含有量は、50質量部以上300質量部以下であることが好ましく、100質量部以上200質量部以下であることが更に好ましい。反応原料溶液中での両者の含有量がこの範囲内であることにより、本発明のコンポジット粒子は超親油性及び超撥水性を呈する。
【0040】
反応工程において、反応原料溶液に加えるアルカリとしては、アルコキシシランの加水分解を行うことができ、且つモノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンのポリマー化を行うことができるものであれば特に制限されず、例えば水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等が挙げられる。これらのうち、反応性が高い点で、水酸化アンモニウムが好ましく用いられる。
【0041】
反応原料溶液に加えるアルカリの混合量は特に制限されず適宜選択される。また、反応原料溶液にアルカリを混合して反応を行う際の反応温度は、好ましくは−5℃以上50℃以下であり、更に好ましくは0℃以上30℃以下である。反応温度を−5℃以上に設定することで、アルコキシシリル基の加水分解速度が過度に遅くなることを防止でき、十分な反応効率が得られ、また50℃以下に設定することで、コンポジット粒子の分散安定性の過度の低下を抑制できる。反応原料溶液にアルカリを混合して反応を行う際の反応時間は特に制限されず適宜選択されるが、好ましくは1時間以上72時間以下であり、特に好ましくは1時間以上24時間以下である。
【0042】
前記反応は、必要により液を撹拌することによって十分な反応効率が得られる。また、反応時に液を撹拌することによって、微小なコンポジット粒子、例えば平均粒子径が好ましくは10nm以上1000nm以下であり、更に好ましくは20nm以上900nm以下であるコンポジット粒子を得ることができる。
【0043】
反応終了後、析出物を常法により濾別後、必要により洗浄、乾燥等の精製を行って目的とするコンポジット粒子を得る。
【0044】
以上の方法で得られた前記コンポジット粒子は、これを例えば油水分離材として用いることができる。詳細には、本発明のコンポジット粒子を油水分離材として用い、該油水分離材と、水及び油を含む混合液とを接触させることにより水と油を分離することができる。
【0045】
本発明のコンポジット粒子は、例えば、以下の2つの方法により油水分離材として用いることができる。
(A)水に不溶な基材を本発明のコンポジット粒子で改質する方法。
(B)本発明のコンポジット粒子自体をそのまま濾過材として用いる方法。
【0046】
前記(A)に係る基材としては、水に不溶である無機物や有機物を用いることができる。無機物としては、例えば、ガラス繊維、シリカ、シリカゲル、アルミナ、スラグウール、モレキュラーシーブ、ゼオライト、活性炭、珪藻土、砂、石綿等が挙げられる。有機物としては、天然高分子又は合成高分子であってもよい。天然高分子としては、例えば、セルロース、羊毛、綿、絹等が挙げられる。合成高分子としては、ポリウレタン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリカーボネート等の縮合系又は付加系重合高分子重合体や、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル等のエチレン系不飽和高分子重合体等が挙げられる。
【0047】
特に前記(A)に係る基材として天然高分子を用いる場合、グルコース分子のOH基とモノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリンポリマーのモノクロロトリアジノ基のClとの反応で、容易に且つ強固に天然高分子に固定化できるため、より安定性の高い油水分離材を得ることができる。
【0048】
基材の形状は特に制限されるものではなく、例えば細片状、海綿状、リボン状、フィブリル状、ウェブ状、マット状、綿布状及び不織布状等が挙げられる。
【0049】
本発明においては、市販の濾紙等を改質する基材として用いてもよい。この場合、濾紙の孔径は好ましくは5μm以下、更に好ましくは0.1μm以上3μm以下とすることが効率的に油水分離を行う観点から有利である。
【0050】
前記(A)において、基材を本発明のコンポジット粒子で改質する方法としては、本発明のコンポジット粒子を基材の表面や内部に固定あるいは担持することができる方法であれば特に制限はなく公知の方法を用いることができる。その一例を挙げると、本発明のコンポジット粒子が1質量%以上50質量%以下の濃度で分散した分散液に基材を接触させた後、乾燥する方法等がある。また、分散液と基材との接触は、基材を分散液へ浸漬する方法、スプレーによって基材に吹き付ける方法、あるいは基材へ分散液を塗布する方法等により行うことができる。
【0051】
図1は、本発明のコンポジット粒子により改質を行った濾紙を用いて、水と油の混合液を分離処理する場合の一つの実施形態を示す概略図である。同図に示す実施形態の分離システムAは、改質した濾紙1a及びカラム1bを備えている。改質した濾紙1aは本発明のコンポジット粒子により改質を行った濾紙である。
【0052】
カラム1bの途中に、改質した濾紙1aを介在させることで、カラム1bに投入された水と油の混合液1は、改質した濾紙1aと接触する。油1’は、改質した濾紙1aを通過する一方、水は、改質した濾紙1aを通過することができないので、水と油を分離することができる。必要に応じ分離効率を高めるために、分離操作中に圧力を加えることや、あるいは減圧することが可能である。この場合は、初めに油1’が、改質した濾紙1aを選択的に通過し、次いで強い外力の関係で水は遅れて改質した濾紙を通過する場合がある。そして、油1’が溶出した後に、油水分離操作を終える等の手段によって、油水分離材を介して水と油を分離することができる。
【0053】
図2は、本発明のコンポジット粒子を濾過材として用いて、水と油の混合液を分離処理する場合の一つの実施形態を示す概略図である。同図に示す実施形態の分離システムBは、カラム2b、及び濾過材2cを含む濾過材層2aを備えている。
【0054】
カラム2bには濾過材2cとして本発明のコンポジット粒子が充填されて濾過材層2aが形成されている。カラム2bに水と油の混合液1を投入することにより、濾過材2cと混合液を接触させることができる。油1’は濾過材層2aを通過する一方、水は濾過材層2aを通過することができないので、水と油を分離することができる。必要に応じ分離効率を高めるために、分離操作中に圧力を加えることや、あるいは減圧することが可能である。また、目詰まり等を抑制するために、濾過材層2aの上部及び/又は下部に濾過助剤を充填した層を必要により設けることができる。
【0055】
用いることができる濾過助剤としては、特に制限はなく公知のものを広く用いることができる。例えば、珪藻土、砂粒子、真珠岩、アンスラサイト、セルロース、羊毛、綿、絹、炭素質濾過助剤、酸性白土、ベントナイト、セライト、タルク、マイカ及びカオリナイト等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
本発明に係る油水分離材で処理対象する水と油の混合液は、溶液状態のものであってもエマルションであってもよい。
【0057】
本発明に係る油水分離材は、例えば、油を含んだ廃水処理、各種産業分野での生産現場での水と油の分離あるいは精製手段等に利用することができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を実施例により説明する。しかしながら本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。特に断らない限り「%」は「質量%」を表す。
【0059】
<フルオロアルキル基含有オリゴマー試料>
以下の実施例及び比較例で用いたフルオロアルキル基含有オリゴマー(以下、「VM」という)は、以下の表1に示すものである。同表中、分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC、ポリスチレン換算)による数平均分子量を表す。
【0060】
【表1】
【0061】
<平均粒子径>
以下の実施例及び比較例で得られたコンポジット粒子の平均粒子径は、動的光散乱式粒子径測定装置(大塚電子株式会社製ELSZ−2000)により測定した。
【0062】
<ドデカンとの接触角、及び水と接触角の評価>
以下の実施例及び比較例で得られたコンポジット粒子20mgを、2mlのメタノールに加えて懸濁液を調製し、ガラス板に0.35ml滴下して平坦に塗布させた後、自然乾燥させ、更に同じ操作を2回繰り返した。このようにして得られた改質ガラス板の表面について、ドデカンとの接触角、及び水との接触角を協和界面科学製のDrop Master.300を使用して測定した。その結果を表3に示す。同表中、「−」は接触角に変化がなかったことを示す。
【0063】
〔実施例1及び実施例2〕
以下の表2に示す量のVMをメタノール5mlに溶解した溶液に、同表に示す量のモノクロロトリアジニル−β−シクロデキストリン(株式会社シクロケム製、以下「MCT−β−CD」という。)を純水1mlに溶解した溶液を添加し、マグネティックスターラーにより10分間撹拌を行った。次いで、25%アンモニア水溶液1mlを添加し、マグネティックスターラーを用いて室温(25℃)で5時間撹拌を行い析出物を得た。この析出物を濾別後、純水で撹拌洗浄を3回行い、更に濾別した後、メタノール中で再分散を行い、遠心分離することにより、白色粉末を得た。この白色粉末を50℃で真空乾燥後、目的物であるコンポジット粒子を得た。得られたコンポジット粒子の平均粒子径は、表2に示すとおりであった。得られたコンポジット粒子について、前記の接触角の測定を行った。その結果を以下の表3に示す。同表中、「−」は接触角に変化がなかったことを示す。
【0064】
〔比較例1〕
MCT−β−CDとのコンポジット化を行わなかったVMについて、前記の接触角の測定を行った。その結果を以下の表3に示す。同表中、「−」は接触角に変化がなかったことを示す。
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
表2及び表3に示す結果から明らかなとおり、各実施例のコンポジット粒子によって表面が改質された板ガラスは、比較例1と比較して、超親油性であり且つ超撥水性の性能を有することが分かる。