(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
X方向に延びる前記第1の鉄筋とその両端を保持する前記第1および第2の保持プレートとの高さ間隔と、Y方向に延びる前記第2の鉄筋とその両端を保持する前記第3および第4の保持プレートとの高さ間隔とは、鉄筋1本相当分、異なっている、請求項1〜4のいずれかに記載の鉄筋骨組み構造。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0018】
(受圧板の概略構成)
はじめに、
図1を参照して、本実施の形態に係る受圧板の概略構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る受圧板1の設置状態を模式的に示す断面図である。
図1の矢印Aは、地山の傾斜方向下方側を示す。地山の法面91と平行な面上において地山の傾斜方向と直交(交差)する方向を、以下「左右方向」という。
【0019】
受圧板1は、グラウンドアンカー92の緊張力を地山の法面91に伝達するために、グラウンドアンカー92の頭部93と法面91との間に設置される構造物である。グラウンドアンカー92は、水平面(
図1において一点鎖線で示す)に対し所定の角度θとなるように、地山に差し込まれている。所定の角度θは、典型的には30°〜40°である。
【0020】
受圧板1は、平面視矩形形状のコンクリート製の受圧板であり、現場にて成形される。受圧板1は、主に、複数の鉄筋が組まれて形成された鉄筋骨組み構造10と、鉄筋骨組み構造10を取り囲む型枠90と、型枠90内に打設されたコンクリート11とで構成される。ここでのコンクリート11は、モルタルまたはコンクリートなど、セメントを含む液状材料が固化した固形物である。
【0021】
(鉄筋骨組み構造の概要)
図2を参照して、受圧板1の鉄筋骨組み構造10の概要について説明する。
図2は、受圧板1の鉄筋骨組み構造10を模式的に示す平面図である。
【0022】
鉄筋骨組み構造10は、受圧板1の外郭を形成するために矩形枠状に組まれる第1〜第4の外側鉄筋部材21〜24を備えている。第1〜第4の外側鉄筋部材21〜24によって、鉄筋骨組み構造10の外枠が構成されている。
【0023】
第1および第4の外側鉄筋部材21,24は、X方向に延びる鉄筋31,34をそれぞれ含み、第2および第3の外側鉄筋部材22,23は、Y方向に延びる鉄筋32,33をそれぞれ含む。X方向およびY方向は、法面91と平行な面上において互いに直交する。本実施の形態では、Y方向が地山の傾斜方向に対応し、X方向が地山の左右方向に対応するものとする。また、
図2の紙面下側が、地山の傾斜方向下方側を示すと仮定する。この場合、第1の外側鉄筋部材21の鉄筋31が第4の外側鉄筋部材24の鉄筋34よりも地山の傾斜方向上側に配置され、第2および第4の外側鉄筋部材22,23の鉄筋32,33が地山の傾斜方向に沿って配置される。
【0024】
本実施の形態において、鉄筋31〜34(以下「外側鉄筋」という)は、Z方向に2段ずつ設けられる。
図1に示されるように、Z方向は、法面91に対する角度が略90°の方向であり、以下、上下方向ともいう。
【0025】
鉄筋骨組み構造10は、外側鉄筋31〜34と交差するように格子状に配置される複数の鉄筋(以下「内側鉄筋」という)35,36をさらに備えている。Y方向(地山の傾斜方向)に延在する内側鉄筋35は、その両端が外側鉄筋31,34に支持されている。X方向に延在する内側鉄筋36は、その両端が外側鉄筋32,33に支持されている。なお、
図2では、平面視において内側鉄筋35,36が4本ずつ設けられた例が示されているが、内側鉄筋35,36の個数や間隔は、受圧板1の大きさ等に応じて適宜定められる。
【0026】
鉄筋骨組み構造10の中央には、箱抜き管94を受け入れるための中央空間12が形成される。箱抜き管94は、グラウンドアンカー92挿通用の筒体である。鉄筋骨組み構造10を規定する平面に対する箱抜き管94の角度を調整することで、法面91へのグラウンドアンカー92の差し込み角度が定められる。
【0027】
鉄筋骨組み構造10は、平面視正方形状の型枠90により取り囲まれており、この型枠90内にモルタルが吹き付けられることで、受圧板1が形成される。
【0028】
受圧板1は、通常、
図12に示す手順によって形成される。
図12は、受圧板1の大まかな施工手順を示すフローチャートである。受圧板1を形成する際には、まず、外側鉄筋31〜34を配置する(工程P1)。外側鉄筋31〜34の配置によって鉄筋骨組み構造10の外枠が形作られると、内側鉄筋35,36の配置(工程P2)、箱抜き管94の設置(工程P3)、型枠90の配置(工程P4)、モルタルの吹き付け(工程P5)、グラウンドアンカー92の施工(工程P5)が順に行われる。
【0029】
このように、現場にて受圧板1を形成する際には、はじめに、鉄筋骨組み構造10の外枠を形作るため、受圧板1を精度良く形成するためには、外側鉄筋31〜34を精度良く組み立てることが重要である。
【0030】
本実施の形態における第1〜第4の外側鉄筋部材21〜24は、各々、外側鉄筋の両端部を保持する保持部材を一体的に含んでおり、鉄筋骨組み構造10の各コーナー部10a〜10dに配置される2個の保持部材のうちの一方に他方を係合させる構成としている。これにより、施工者の技術に依存することなく、外側鉄筋31〜34を簡易かつ精度良く組み立てることが可能である。以下に、第1〜第4の外側鉄筋部材21〜24の構成および組立方法について詳細に説明する。
【0031】
(外側鉄筋部材の構成について)
図3〜
図6はそれぞれ、第1〜第4の外側鉄筋部材21〜24の構成を模式的に示す図である。
図3〜
図6において、(A)には側面図が示され、(B)には上面図が示されている。なお、
図3(A)の側面図は、第1の外側鉄筋部材21を
図2のIII方向から(鉄筋骨組み構造10の内側(地山の傾斜方向下方側)から)見た状態を示す。
図4(A)の側面図は、第2の外側鉄筋部材22を
図2のIV方向から(鉄筋骨組み構造10の内側から)見た状態を示す。
図5(A)の側面図は、第3の外側鉄筋部材23を
図2のV方向から(鉄筋骨組み構造10の内側から)見た状態を示す。
図6(A)の側面図は、第4の外側鉄筋部材24を
図2のVI方向から(鉄筋骨組み構造10の外側(地山の傾斜方向下方側)から)見た状態を示す。
【0032】
第1の外側鉄筋部材21は、上下2段の外側鉄筋31と、外側鉄筋31の両端を保持する一対の保持部材41a,41bとを一体的に含む。第2の外側鉄筋部材22は、上下2段の外側鉄筋32と、外側鉄筋32の両端を保持する一対の保持部材42a,42bとを一体的に含む。第3の外側鉄筋部材23は、上下2段の外側鉄筋33と、外側鉄筋33の両端を保持する一対の保持部材43a,43bとを一体的に含む。第4の外側鉄筋部材24は、上下2段の外側鉄筋34と、外側鉄筋34の両端を保持する一対の保持部材44a,44bとを一体的に含む。第1〜第4の外側鉄筋部材21〜24はそれぞれ別体である。
【0033】
第1〜第4の外側鉄筋部材21〜24のそれぞれにおいて、上下2段の外側鉄筋は一定間隔(D)で配されている。
【0034】
図2に示されるように、鉄筋骨組み構造10の紙面右上のコーナー部10aに、第1の外側鉄筋部材21の一方(
図3の紙面右側)の保持部材41aと、第2の外側鉄筋部材22の一方(
図4の紙面左側)の保持部材42aとが配置される。鉄筋骨組み構造10の紙面左上のコーナー部10bには、第1の外側鉄筋部材21の他方(
図3の紙面左側)の保持部材41bと、第3の外側鉄筋部材23の一方(
図5の紙面右側)の保持部材43aとが配置される。鉄筋骨組み構造10の紙面右下のコーナー部10cには、第2の外側鉄筋部材22の他方(
図4の紙面右側)の保持部材42bと、第4の外側鉄筋部材24の一方(
図6の紙面右側)の保持部材44aとが配置される。鉄筋骨組み構造10の紙面左下のコーナー部10dには、第3の外側鉄筋部材23の他方(
図5の紙面左側)の保持部材43bと、第4の外側鉄筋部材24の他方(
図6の紙面左側)の保持部材44bとが配置される。
【0035】
図3を参照して、第1の外側鉄筋部材21の保持部材41a,41bは、各々、地山に載置されるベースプレート511と、ベースプレート511よりも上方位置において外側鉄筋31の端部を保持する保持プレート513と、保持プレート513の高さを調整するための高さ調整ボルト512とを含む。ベースプレート511および高さ調整ボルト512は、保持プレート513を高さ調整可能に下方から支持するベース部として機能する。
【0036】
ベースプレート511には、アンカーボルト(図示せず)用の貫通孔511aが複数個(たとえば2個)設けられている。アンカーボルトが貫通孔511aを貫通して地山に差し込まれることで、ベースプレート511が地山に固定される。高さ調整ボルト512は、ベースプレート511から上方に延び、保持プレート513を貫通する。高さ調整ボルト512は、ベースプレート511と保持プレート513との間隔L1を調整する。高さ調整ボルト512の構成例については後述する。
【0037】
2本の外側鉄筋31の一方端部は連結部31aに連結されており、他方端部は連結部31bに連結されている。連結部31a,31bは上下方向に延びる棒状部材により構成されている。連結部31aの下端が第1の保持プレートとしての保持プレート513の上面に接合され、連結部31bの下端が第2の保持プレートとしての保持プレート513の上面に接合されている。
【0038】
保持プレート513は、ベースプレート511と略平行に配置されている。ベースプレート511および保持プレート513は、平面視においてたとえば長方形状である。この場合、設置状態において、ベースプレート511は長手方向がY方向に沿うように配置され、保持プレート513は長手方向がX方向に沿うように配置される。
【0039】
保持プレート513には、板厚方向に真直ぐ貫通する貫通孔513aが設けられており、この貫通孔513aに高さ調整ボルト512(具体的には、
図7に示す軸部512a)が通されている。
図3(B)に示されるように、貫通孔513aは、Y方向において連結部31aよりも若干内側(つまり、地山の傾斜方向下側)に位置し、X方向において連結部31aよりも外側に位置している。
【0040】
保持プレート513の上面には、上方に突出した係合ピン514が設けられている。つまり、保持部材41aは、突起部としての係合ピン514を含んでいる。係合ピン514の形状は、たとえば円柱形状である。係合ピン514は複数個(たとえば2個)設けられていることが望ましい。本実施の形態では、2個の係合ピン514が、鉄筋骨組み構造10の対角線上に位置するように設けられており、2個の係合ピン514の間に貫通孔513aが配置されている。
【0041】
第1の外側鉄筋部材21の両端の保持部材41a,41bはいずれもベース部(ベースプレート511および高さ調整ボルト512)を有しているため、第1の外側鉄筋部材21の外側鉄筋31は、保持部材41a,41bを法面91上に載置することにより(必要に応じて保持プレート513の高さを調整することにより)、法面91に対して略平行に配置される。
【0042】
図4を参照して、第2の外側鉄筋部材22の一方の保持部材42aは、地山の傾斜方向上側に位置し、他方の保持部材42bは、地山の傾斜方向下側に位置する。傾斜方向下側に位置する保持部材42bは、上述の保持部材41a,41bと同様に、アンカーボルト(図示せず)用の貫通孔521aが設けられたベースプレート521と、連結部32bを介して2本の外側鉄筋32の端部を保持する保持プレート(第3の保持プレート)523と、保持プレート523の貫通孔523aに通されて保持プレート523の高さを調整するための高さ調整ボルト522と、保持プレート523の上面に設けられた係合ピン524とを含む。ベースプレート521および高さ調整ボルト522は、保持プレート523を高さ調整可能に下方から支持するベース部として機能する。
【0043】
地山の傾斜方向上側に位置する保持部材42aは、連結部32aを介して2本の外側鉄筋32の端部を保持する保持プレート(第4の保持プレート)611を含むが、保持プレート611を支持するベース部を含まない。
図2に示されるように、設置状態において、保持プレート611は、第1の外側鉄筋部材21の保持部材41aの保持プレート513上に重ねられる。これにより、保持プレート611は、第1の外側鉄筋部材21のベース部(ベースプレート511および高さ調整ボルト512)によって間接的に支持される。
【0044】
保持部材42aの保持プレート611には、切り欠き部612および受け入れ穴613が設けられている。切り欠き部612は、設置状態において、第1の外側鉄筋部材21の保持部材41aに設けられた高さ調整ボルト512(軸部)を内部に受け入れる。切り欠き部612は、保持プレート611の4つの側面のうち第3の外側鉄筋部材23に対面する側面の一部がX方向に沿って切り欠かれて形成されている。
図4(B)に示されるように、切り欠き部612は、Y方向において連結部32aよりも外側(つまり、地山の傾斜方向上側)に位置し、X方向において連結部32aよりも若干外側に位置している。
【0045】
設置状態において、受け入れ穴613は、第1の外側鉄筋部材21の保持部材41aに設けられた係合ピン514を内部に受け入れる。本実施の形態では、2個の受け入れ穴613が、係合ピン514に対応する位置に設けられている。受け入れ穴613は、典型的には、板厚方向に真直ぐに貫通する貫通孔である。
【0046】
このように、保持プレート611には、高さ調整ボルト512を嵌め入れるための切り欠き部612とともに、係合ピン514を受け入れる受け入れ穴613が設けられている。そのため、保持プレート513に対する保持プレート611の(X方向およびY方向における)位置決めを、容易かつ正確に行うことができる。
【0047】
また、保持プレート513はベース部によって高さ調整可能に支持されているため、保持プレート611を保持プレート513に重ねるだけで、外側鉄筋32を法面91に対して略平行となるように配置することができる。
【0048】
図5を参照して、第3の外側鉄筋部材23の一方の保持部材43aは、地山の傾斜方向上側に位置し、他方の保持部材43bは、地山の傾斜方向下側に位置する。傾斜方向下側に位置する保持部材43bは、上述の保持部材41a,41b,42bと同様に、アンカーボルト(図示せず)用の貫通孔531aが設けられたベースプレート531と、連結部33bを介して2本の外側鉄筋33の端部を保持する保持プレート(第5の保持プレート)533と、保持プレート533の貫通孔533aに通されて保持プレート533の高さを調整するための高さ調整ボルト532と、保持プレート533の上面に設けられた係合ピン534とを含む。ベースプレート531および高さ調整ボルト532は、保持プレート533を高さ調整可能に下方から支持するベース部として機能する。
【0049】
傾斜方向上側に位置する保持部材43aは、上述の保持部材42aと同様に、ベース部を含まず、連結部33aを介して2本の外側鉄筋33の端部を保持する保持プレート(第6の保持プレート)621と、保持プレート621に設けられた切り欠き部622および受け入れ穴623とを含む。
【0050】
図2に示されるように、設置状態において、保持プレート621は、第1の外側鉄筋部材21の保持部材41bの保持プレート513上に重ねられる。これにより、保持プレート621は、第1の外側鉄筋部材21のベース部(ベースプレート511および高さ調整ボルト512)によって間接的に支持される。
【0051】
設置状態において、切り欠き部622は、第1の外側鉄筋部材21の保持部材41bに設けられた高さ調整ボルト512(軸部)を内部に受け入れる。切り欠き部622は、保持プレート621の4つの側面のうち第2の外側鉄筋部材22に対面する側面の一部がX方向に沿って切り欠かれて形成されている。
図5(B)に示されるように、切り欠き部622は、Y方向において連結部33aよりも外側(つまり、地山の傾斜方向上側)に位置し、X方向において連結部33aよりも若干外側に位置している。受け入れ穴623は、第1の外側鉄筋部材21の保持部材41bに設けられた係合ピン514を内部に受け入れる。
【0052】
このように、保持プレート621にも、高さ調整ボルト512を嵌め入れるための切り欠き部622とともに、係合ピン514を受け入れる受け入れ穴623が設けられる。そのため、保持プレート513に対する保持プレート621の(X方向およびY方向における)位置決めを、容易かつ正確に行うことができる。
【0053】
また、保持プレート513はベース部によって高さ調整可能に支持されているため、保持プレート621を保持プレート513に重ねるだけで、外側鉄筋33を法面91に対して略平行となるように配置することができる。
【0054】
図6を参照して、第4の外側鉄筋部材24の保持部材44a,44bは各々、上述の保持部材42a,43aと同様に、ベース部を含まない。保持部材44aは、連結部34aを介して2本の外側鉄筋34の一方端部を保持する保持プレート(第7の保持プレート)631を含み、保持部材44bは、連結部34bを介して2本の外側鉄筋34の他方端部を保持する保持プレート(第8の保持プレート)631を含む。
【0055】
図2に示されるように、設置状態において、保持部材44aの保持プレート631は、第2の外側鉄筋部材22の保持部材42bの保持プレート523上に重ねられる。これにより、第2の外側鉄筋部材22のベース部(ベースプレート521および高さ調整ボルト522)によって間接的に支持される。また、保持部材44bの保持プレート631は、第3の外側鉄筋部材23の保持部材43bの保持プレート533上に重ねられる。これにより、第3の外側鉄筋部材23のベース部(ベースプレート531および高さ調整ボルト532)によって間接的に支持される。
【0056】
各保持プレート631には、切り欠き部632および受け入れ穴633が設けられている。保持部材44aの切り欠き部632は、第2の外側鉄筋部材22の保持部材42bに設けられた高さ調整ボルト522(軸部)を内部に受け入れる。保持部材44aの受け入れ穴633は、第2の外側鉄筋部材22の保持部材42bに設けられた係合ピン524を内部に受け入れる。保持部材44bの切り欠き部632は、第3の外側鉄筋部材23の保持部材43bに設けられた高さ調整ボルト532(軸部)を内部に受け入れる。保持部材44bの受け入れ穴633は、第3の外側鉄筋部材23の保持部材43bに設けられた係合ピン534を内部に受け入れる。
【0057】
各切り欠き部632は、保持プレート631の4つの側面のうち、第1の外側鉄筋部材21に対面する側面(地山の傾斜方向上側の側面)の一部がY方向に沿って切り欠かれて形成されている。切り欠き部632は、X方向において連結部34a,34bよりも外側に位置し、Y方向において連結部34a,34bよりも若干外側(地山の傾斜方向下側)に位置している。
【0058】
このように、第4の外側鉄筋部材24の保持部材44a,44bの保持プレート631にも、高さ調整ボルト522(532)を嵌め入れるための切り欠き部632とともに、係合ピン524(534)を受け入れる受け入れ穴623が設けられる。そのため、保持プレート523(533)に対する保持プレート631の(X方向およびY方向における)位置決めを、容易かつ正確に行うことができる。
【0059】
また、保持プレート523,533はベース部によって高さ調整可能に支持されているため、一対の保持プレート631を保持プレート523,533にそれぞれ重ねるだけで、外側鉄筋34を法面91に対して略平行となるように配置することができる。
【0060】
(外側鉄筋部材の組立方法について)
次に、第1〜第4の外側鉄筋部材21〜24の組立方法について説明する。
【0061】
はじめに、外側鉄筋31が地山の左右方向(X方向)に沿うように、第1の外側鉄筋部材21を設置する。つまり、一対の保持部材41a,41bを法面91上に載置して、各保持部材41a,41bのベースプレート511をアンカーボルトで固定する。
【0062】
ベースプレート511が地山に固定されると、必要に応じて、保持部材41a,41bの保持プレート513の高さを調整する。これにより、法面91に凹凸があったとしても、外側鉄筋31を適切に配置することができる。
【0063】
高さ調整ボルト512については、
図7および
図8を参照して説明する。
図7は、第1の外側鉄筋部材21の保持部材41aの斜視図である。
図8は、
図7のVIII方向から見た保持部材41aの側面図である。
【0064】
高さ調整ボルト512は、ボルト本体を構成する軸部512aと、軸部512aの下端部に溶接等により固定されたナット515およびフランジ部516とを含む。本実施の形態において、ベースプレート511は、その中央部の下方に空間510ができるように折り曲げられており、この中央部の上にナット515が載置され、中央部の下、すなわち空間510にフランジ部516が配置されている。ベースプレート511の中央部下面とフランジ部516との間には隙間が設けられている。ナット515は、高さ調整ボルト512をベースプレート511上に支持するための支持部として機能し、フランジ部516は、抜け止めとして機能する。
【0065】
ベースプレート511の中央部が、軸部512aに相対回転不能に固定されたナット515およびフランジ部516に挟まれているため、軸部512aの回転時、ナット515およびフランジ部516はベースプレート511に対して空回りする。このように、軸部512aは、ベースプレート511に対して空回りするように取り付けられたナット515に支持されている。
【0066】
保持プレート513には、軸部512aに螺合するナット517が固定されている。ナット517は、上記ナット515とは異なり、軸部512aの回転に伴って相対回転する。これにより、軸部512aが回転すると、保持プレート513がナット517とともに上下方向に移動する。ナット517は、保持プレート513の下面に溶接されており、保持プレート513の上方には軸部512aだけが露出している。
【0067】
高さ調整ボルト512をこのような構成とすることで、
図9に示されるような簡易な冶具80によって、保持プレート513の高さを調整可能である。冶具80は、たとえばT字形状のハンドル部81と、ハンドル部81の下端部に固定されたキャップ部82とで構成されている。キャップ部82は、上下方向に延びる円筒部821と、円筒部821の上端を閉鎖する天壁部822とを有している。円筒部821の内壁面に雌ねじが切られている。ハンドル部81は、キャップ部82の天壁部822を貫通して上下方向に延びる棒状部811を有している。本実施の形態では、棒状部811の下端面811aが、軸部512aの上端面512bに接触するように構成されている。
【0068】
保持プレート513の高さを調整する場合、キャップ部82を高さ調整ボルト512の軸部512aの上端に嵌め込んでハンドル部81を回転させる。棒状部811の下端面811aが軸部512aの上端面512bに突き当たるまでは、軸部512aは回転せず、キャップ部82だけが回転しながら下方に移動する。棒状部811の下端面811aが軸部512aの上端面512bに突き当たると、摩擦力によって軸部512aがキャップ部82と一体となって回転する。つまり、ナット517が相対回転することにより、保持プレート513が下方に移動する。
【0069】
ハンドル部81を逆方向に回転させると、キャップ部82を軸部512aから取り外すことができるため、冶具80を使い回しすることができる。なお、高さ調整の際に、ハンドル部81と外側鉄筋31とが干渉することを防止するために、軸部512aの上端位置は外側鉄筋31の高さよりも高いことが望ましい。
【0070】
第1の外側鉄筋部材21の設置が完了すると、外側鉄筋32が地山の傾斜方向(Y方向)に沿うように、第2の外側鉄筋部材22を設置する。第2の外側鉄筋部材22の設置の際、ベース部を有さない保持部材42aを地山の傾斜方向上側とし、保持部材42aを第1の外側鉄筋部材21の保持部材41aに取り付ける(係合させる)。保持部材42aの取り付け方法については、
図10を参照しながら説明する。
【0071】
図10(A)〜(C)は、第1の外側鉄筋部材21の(ベース部を有する)保持部材41aに対して、第2の外側鉄筋部材22の(ベース部を有さない)保持部材42aを取り付ける手順を模式的に示す斜視図である。
【0072】
作業者は、地山の傾斜方向下側に位置する保持部材42bを法面91に仮置きした状態で、
図10(A)に示されるように、保持部材42aの保持プレート611に設けられた切り欠き部612を、高さ調整ボルト512の軸部512aに外側方から嵌め込む。
図10(B)に示されるように、高さ調整ボルト512の軸部512aは切り欠き部612の奥まで嵌め込まれる。
【0073】
その後、保持部材42a(保持プレート611)を軸部512aに沿って降下させ、保持プレート611に設けられた受け入れ穴613を、保持部材41aの係合ピン514に嵌め合わせて、
図10(C)に示されるように、保持プレート611を保持部材41aの保持プレート513上に載置する。これにより、保持プレート611が保持プレート513に重ねられる。この状態において、2個の係合ピン514が2個の受け入れ穴613にそれぞれ嵌め入れられているため、保持プレート611の位置ずれを防止できる。したがって、簡易かつ正確に保持部材42aを保持部材41aに取り付けることができる。
【0074】
なお、保持プレート513に設けられる突起部は係合ピン514に限定されない。また、保持プレート513上に重ねられる保持プレート611の位置ずれを防止できれば、突起部の個数は一つであってもよい。また、本実施の形態では、受け入れ穴613が貫通孔で構成されることとしたが、限定的ではなく、凹部により構成されてもよい。このような変形例は、他の保持プレートにおいても適用可能である。
【0075】
保持部材42aの取り付けが完了すると、第2の外側鉄筋部材22の他方の保持部材42bのベースプレート521を、アンカーボルトで地山に固定する。保持部材42bの固定および保持プレート523の高さ調整は、上記と同じ手順で実行される。
【0076】
第2の外側鉄筋部材22の設置が完了すると、外側鉄筋33が地山の傾斜方向(Y方向)に沿うように、第3の外側鉄筋部材23を設置する。第3の外側鉄筋部材23の設置は、第2の外側鉄筋部材22と同様の手順で行われる。すなわち、ベース部を有さない保持部材43aを第1の外側鉄筋部材21の保持部材41bに取り付けて、ベース部を有する保持部材43bを地山に固定する。
【0077】
なお、第2の外側鉄筋部材22および第3の外側鉄筋部材23の設置順序は特に限定されず、第3の外側鉄筋部材23を第2の外側鉄筋部材22よりも前に設置してもよいし、複数の作業者によってこれらを同時に設置してもよい。
【0078】
第1〜第3の外側鉄筋部材21〜23が設置されると、最後に第4の外側鉄筋部材24を設置する。第4の外側鉄筋部材24の保持部材44a,44bはいずれもベース部を有していないため、保持部材44a,44bのそれぞれを、第2および第3の外側鉄筋部材22,23の保持部材42b,43bに取り付ける。この際、保持部材44a,44bの保持プレート631に設けられた切り欠き部632を内側(地山の傾斜方向上側)に向けて、保持部材42b,43bの高さ調整ボルト522,532の軸部に、切り欠き部632を外側方(地山の傾斜方向下側)から嵌め込む。保持部材44a,44b双方の切り欠き部632に、高さ調整ボルト522,532の軸部を嵌め入れた状態で、外側鉄筋34を把持して第4の外側鉄筋部材24を降下させることで、保持部材44a,44bを第2および第3の外側鉄筋部材22,23の保持部材42b,43bに一度で取り付けることができる。
【0079】
このように、本実施の形態によれば、少ない(たとえば一人の)作業者によって簡易かつ精度良く外側鉄筋31〜34を配置することが可能である。つまり、外側鉄筋31〜34の組み立て作業(
図12の工程P1)を簡素化することができる。
【0080】
また、本実施の形態では、各外側鉄筋31〜34に、
図11に示されるような連結具70が予め固定されているため、その後の内側鉄筋35,36の配置作業(
図12の工程P2)も簡素化することができる。
【0081】
連結具70は、たとえば、平坦な上面を有する下地金具71と、下地金具71の上面に固定された略U字状断面の受け入れ凹部72とを含む。下地金具71は、各外側鉄筋31〜34に予め溶接固定されている。受け入れ凹部72は、その受け入れ溝が、取り付け対象の外側鉄筋と直交する方向に延びるように、下地金具71に溶接固定される。
【0082】
受け入れ凹部72の一対の内側面にはそれぞれ、受け入れた内側鉄筋の抜け防止のための少なくとも一対(たとえば二対)の爪部73が設けられている。また、受け入れ凹部72の底面にも一対の爪部74が設けられている。一対の爪部74は、受け入れ凹部72に嵌め入れられた内側鉄筋の節に引っ掛かるように互いに向き合う。これにより、内側鉄筋の長手方向のずれを防止できる。
【0083】
本実施の形態では、このような連結具70が外側鉄筋31〜34に予め固定されているため、内側鉄筋35,36の端部を連結具70の受け入れ凹部72に嵌め入れるだけで、結束することなく両者の連結が可能となる。したがって、外側鉄筋31〜34と内側鉄筋35,36との連結を、容易かつ正確に行うことができる。
【0084】
さらに、本実施の形態では、内側鉄筋35,36を直交状態で適切に配置できるようにするために、X方向に延びる外側鉄筋31,34とそれらの端部を保持する保持プレートとの高さ間隔と、Y方向に延びる外側鉄筋32,33とそれらの端部を保持する保持プレートとの高さ間隔とを、鉄筋1本相当分、異ならせている。
【0085】
具体的には、
図3(A)に示されるように、相対的に下側に位置する外側鉄筋31は保持プレート513との間に隙間なく配置されており、保持部材41a,41bそれぞれにおいて、外側鉄筋31と保持プレート513との高さ間隔は略ゼロに等しい。同様に、
図6(A)に示されるように、相対的に下側に位置する外側鉄筋34は保持プレート631との間に隙間なく配置されており、保持部材44a,44bそれぞれにおいて、外側鉄筋34と保持プレートと631の高さ間隔は略ゼロに等しい。
【0086】
これに対し、
図4(A)に示されるように、相対的に下側に位置する外側鉄筋32は、各保持プレート523,611との間に、鉄筋1本相当分の隙間、すなわち鉄筋の直径L2に相当する隙間をあけて配置されている。つまり、保持部材42a,42bそれぞれにおいて、外側鉄筋32と保持プレート523,611との高さ間隔は、鉄筋の直径L2に相当する。同様に、
図5(A)に示されるように、相対的に下側に位置する外側鉄筋33は、各保持プレート533,621との間に、鉄筋1本相当分の隙間、すなわち鉄筋の直径L2に相当する隙間をあけて配置されている。つまり、保持部材43a,43bそれぞれにおいて、外側鉄筋33と保持プレート533,621との高さ間隔は、鉄筋の直径L2に相当する。なお、外側鉄筋31〜34の直径と内側鉄筋35,36の直径とが異なる場合には、この直径L2は内側鉄筋35,36の直径に対応していればよい。
【0087】
このように、外側鉄筋31〜34と各保持プレートとの高さ間隔を予め調整しておくことで、内側鉄筋35,36を容易に配設することができる。
【0088】
以上説明した鉄筋骨組み構造10によれば、従来よりも簡易かつ精度良く、受圧板1を形成することが可能となる。
【0089】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。