特許第6807588号(P6807588)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807588
(24)【登録日】2020年12月10日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】植物緑葉の乾燥粉末の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 19/00 20160101AFI20201221BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20201221BHJP
   A01H 4/00 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   A23L19/00 A
   A23L33/10
   A01H4/00
【請求項の数】9
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2020-56903(P2020-56903)
(22)【出願日】2020年3月26日
(65)【公開番号】特開2020-162598(P2020-162598A)
(43)【公開日】2020年10月8日
【審査請求日】2020年5月13日
(31)【優先権主張番号】特願2019-67833(P2019-67833)
(32)【優先日】2019年3月29日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517411357
【氏名又は名称】田中 節三
(73)【特許権者】
【識別番号】520358380
【氏名又は名称】凍結解凍覚醒技術株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】田中 節三
【審査官】 澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2018−183112(JP,A)
【文献】 起業家&投資家募集サイト「Founder」に掲載された、起業家TAKUMA氏の投資募集「もんげーバナナ(糖度26度)の温室無農薬栽培事業で権利収入永久版!」, [online],2018年12月26日,[令和2年8月4日検索]、インターネット,URL,https://found-er.com/entrepreneurs/10071/
【文献】 TAKAGI, H. et al, 国際農業研究叢書, 2000, No.8, pp.178-193
【文献】 PANIS, B. et al., Plant Sci., 1996, Vol.121, No.1, pp.95-106
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L5/40−5/49,19/00−19/20,31/00−33/29,
A01H1/00−17/00
CAPLUS/WPIDS/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物組織を凍結する凍結工程と、
凍結された植物組織を解凍する解凍工程と、
解凍された植物組織から植物を発生させる発生工程と、
を含む方法により生産された植物の緑葉を原料とし、
前記凍結工程における凍結時最低温度が−20℃以下であり、
前記凍結工程において、0.8℃/日以下の速度で温度降下させながら前記植物組織を凍結し、前記凍結工程の期間が100日以上であり、
前記発生工程において、前記植物組織を竹炭の存在下で組織培養を行うことを特徴とする、植物緑葉の乾燥粉末を製造する方法。
【請求項2】
前記凍結工程において、糖類水溶液中に浸漬した状態で前記植物組織を凍結することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記糖類がトレハロースであることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項4】
竹炭を添加した固体培地上で組織培養を行うことを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
固体培地上に竹炭を含む組成物を積層した培地で組織培養を行うことを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記組織培養がカルス培養であることを特徴とする、請求項の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
抗生物質の非存在下で組織培養を行うことを特徴とする、請求項の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記発生工程により得られたクローン苗を殺虫剤及び殺菌剤から選ばれる農薬を用いずに土壌栽培する栽培工程を含むことを特徴とする、請求項の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記植物が、パパイヤ、パイナップル、バナナ、コーヒー、羅漢果、グアバ、スターフルーツ、いちじく、カカオ、セイロンシナモン、パッションフルーツ、ライチ、マンゴスチン、ブラックサポテ、ホワイトサポテ、棘葉シュガーアップル、デーツ椰子、レッドドラゴンフルーツ、アーモンドから選ばれる植物であることを特徴とする、請求項1〜の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物緑葉の乾燥粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、青汁用の原料として、ケールや大麦若葉などの植物緑葉が知られている(例えば、特許文献1)。これらは、各種ビタミンやミネラルを豊富に含むことから、健康食品の代表とも言える青汁の原料として広く知られている。
【0003】
また、野菜や果物を多く摂取することができる飲料形態として、特許文献2には、ファイトケミカル及び酵素が残存する野菜及び/又は果物の含有率が70%以上のスムージー用粉末が開示され、原料としてバナナ、リンゴ、レモン、ニンジン、かんきつ類、ブルーベリーのいずれかを含むことが示されている。
【0004】
このように、近年の健康志向の高まりにも後押しされ、種々の野菜及び/又は果物を原料とする乾燥粉末が、健康食品という位置づけで普及し、多くの消費者に日常的に摂取されている。
【0005】
ところで、栄養価が高いことで知られるバナナを使用した健康食品には、特許文献2のスムージー以外にも、プランティン種バナナ粉末を有効成分として含有する免疫力強化組成物(特許文献3)や、バナナの皮の抽出物を含有する健康食品などがある(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6449503号公報
【特許文献2】再公表2017/146250号公報
【特許文献3】特開2002−165578号公報
【特許文献4】登録実用新案第3186153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
バナナをはじめとする植物を土壌で栽培するに際しては、通常、農薬の使用を欠かすことができないという問題があった。一方で、上述したように、健康志向の高まりから、より栄養価の高い健康食品が望まれると共に、残留農薬のリスクが無い、安全性の高さも求められていた。
【0008】
このような実情に鑑み、本発明の解決しようとする課題は、栄養価が高く、無農薬栽培により生産可能な安全性の高い植物緑葉の乾燥粉末の製造技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明は、
植物組織を凍結する凍結工程と、
凍結された植物組織を解凍する解凍工程と、
解凍された植物組織から植物を発生させる発生工程と、
を含む方法により生産された植物の緑葉を原料とすることを特徴とする、植物緑葉の乾燥粉末を製造する方法である。
上記工程を含む方法により生産された植物の緑葉を原料として使用することで、栄養価の高い植物緑葉の乾燥粉末を得ることができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記凍結工程における凍結時最低温度が−20℃以下である。
凍結工程において、凍結時最低温度を−20℃以下とすることにより、より栄養価の高い植物緑葉の乾燥粉末を得ることができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記凍結工程において、0.5℃/日以下の速度で温度降下させながら前記植物組織を凍結する。
このように緩慢に温度降下をさせることにより、解凍工程後の植物組織の生存率を向上させることができ、原料となる植物緑葉を効率よく生産することができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記凍結工程の期間が180日以上である。
上記期間をかけて植物組織を凍結することによって、より栄養価の高い植物緑葉の乾燥粉末を得ることができる。
【0013】
本発明の好ましい形態では、前記凍結工程において、糖類水溶液中に浸漬した状態で前記植物組織を凍結する。
このような形態とすることによって、解凍工程後の植物組織の生存率を向上させることができ、原料となる植物緑葉を効率よく生産することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記糖類がトレハロースである。
トレハロースを用いることによって、解凍工程後の植物組織の生存率をより向上させることができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記発生工程において、前記植物組織を竹炭の存在下で組織培養を行う。
竹炭の存在下で組織培養を行うことで、後述する栽培工程において無農薬栽培が可能となり、安全性の高い植物緑葉の乾燥粉末を提供することができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、竹炭を添加した固体培地上で組織培養を行う。
液体培地では培地中に酸素を行渡らせるため、また竹炭を培地中に分散するために攪拌の必要が生じるが、固体培地であれば攪拌のような操作を加えずに簡便に組織培養を行うことができる。
【0017】
また本発明は、固体培地上に竹炭を含む組成物を積層した培地で組織培養を行うことを特徴とする。
このような簡易な培地構成であっても本発明は効果を有効に発揮する。
【0018】
本発明の好ましい形態では、前記組織培養がカルス培養である。
本発明を適用しカルスを再分化することで得られたクローン苗は、後述する栽培工程において無農薬栽培が適用可能となるほどに耐虫性や耐菌性などの抵抗力に優れる。
【0019】
本発明の好ましい形態では、抗生物質の非存在下で組織培養を行う。
本発明によれば、抗生物質を加えずともコンタミネーションのリスクが低い。また、抗生物質不使用の形態とすることによって、より抵抗性に優れたクローン苗を得ることができる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、前記発生工程により得られたクローン苗を殺虫剤及び殺菌剤から選ばれる農薬を用いずに土壌栽培する栽培工程を含む。
本発明により生産されたクローン苗は抵抗性に優れるため、土壌栽培において無農薬栽培の適用が可能である。
【0021】
本発明の好ましい形態では、前記植物が、パパイヤ、パイナップル、バナナ、コーヒー、羅漢果、グアバ、スターフルーツ、いちじく、カカオ、セイロンシナモン、パッションフルーツ、ライチ、マンゴスチン、ブラックサポテ、ホワイトサポテ、棘葉シュガーアップル、デーツ椰子、レッドドラゴンフルーツ、アーモンドから選ばれる植物である。
本発明は、上記に列挙された植物の緑葉を原料とすることが好ましい。
【0022】
本発明は、上述の方法により製造した、植物緑葉の乾燥粉末にも関する。
本発明の植物緑葉の乾燥粉末は栄養価が高い。
【0023】
本発明の好ましい形態では、殺虫剤及び殺菌剤が残留していないことを特徴とする。
かかる形態の植物緑葉の乾燥粉末は安全性が高い。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、栄養価が高く、無農薬栽培により生産可能な安全性の高い植物緑葉の乾燥粉末の製造技術を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、所定の工程を経て生産された植物の緑葉を原料とすることを特徴とする、植物緑葉の乾燥粉末を製造する方法である。
以下、本発明の製造方法に係る各工程を詳細に説明するが、本発明は以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。
【0026】
[1.原料とする植物の生産]
本発明の製造方法に係る原料の種類は、特に限定されるものではないが、例えばパパイヤ科(Caricaceae)、パイナップル科(Bromeliaceae)、バショウ科(Musaceae)、ウリ科(Cucurbitaceae)、フトモモ科(Myrtaceae)、カタバミ科(Oxalidaceae)、クワ科(Moraceae)、アオイ科(Malvaceae)、アカネ科(Rubiaceae)、クスノキ科(Laureaceae)、トケイソウ科(Passifloraceae)、ムクロジ科(Sapindaceae)、フクギ科(Clusiaceae)、カキノキ科(Ebenaceae)、ミカン科(Rutaceae)、バンレイシ科(Annonaceae)、ヤシ科(Arecaceae)、サボテン科(Cactaceae)、バラ科(Rosaceae)に属する植物を例示することができる。
【0027】
より具体的には、パパイヤ属(Carica)、アナナス属(Ananas)、バショウ属(Musa)、ラカンカ属 Siraitia、バンジロウ属(Psidium)、ゴレンシ属(Averrhoa)、イチジク属(Ficus)、カカオ属(Theobroma)、コーヒーノキ属(Coffea)、ニッケイ属(Cinnamomum)、トケイソウ属(Passiflora)、レイシ属(Litchi)、フクギ属(Garcinia)、カキノキ属(Diospyros)、カシロミア属(Casimiroa)、バンレイシ属(Annona)、ナツメヤシ属(Phoenix)、ヒモサボテン属(Hylocereus)、サクラ属(Cerasus)に属する植物などを例示することができる。
【0028】
<凍結工程及び解凍工程>
凍結工程に供する植物組織としては、植物より得られる、該植物とは独立した植物個体を発生可能な植物組織が好ましく例示できる。
【0029】
植物は全能性を有するため、植物のどの部位であっても「植物より得られる、該植物とは独立した植物個体を発生可能な植物組織」に該当するが、具体的には、植物の種子、根、芽、茎、葉、花弁などを例示でき、好ましくは種子、根及び芽を挙げることができる。
凍結工程に供する際にこれら組織は、そのまま凍結してもよいし、一部を切除し、切片の形態で凍結してもよい。
【0030】
凍結工程においては、植物組織を液体に浸漬した状態で凍結することが好ましい。植物組織を浸漬する液体としては、DMSO(ジメチルスルホキシド)、グリセリン、エチレングリコール、糖類などの水溶液からなる凍害防御剤を用いることが好ましい。中でも糖類水溶液、特にトレハロース水溶液を用いることが好ましい。
【0031】
凍結工程における凍結時最低温度の上限は、好ましくは−20℃以下、より好ましくは−30℃以下、さらに好ましくは−40℃以下、さらに好ましくは−50℃以下、さらに好ましくは−55℃以下である。
また、凍結時最低温度の下限は、好ましくは−200℃以上、より好ましくは−150℃以上、さらに好ましくは−100℃以上、さらに好ましくは−80℃以上、さらに好ましくは−70℃以上、さらに好ましくは−65℃以上である。
【0032】
凍結工程においては急速に凍結時最低温度に降下させるのではなく、緩慢に温度降下させることが好ましい。温度降下の速度は、解凍後の生存率の観点から、好ましくは0.8℃/日以下、より好ましくは0.6℃/日以下、より好ましくは0.5℃/日以下、さらに好ましくは0.3℃/日以下、さらに好ましくは0.2℃/日以下、さらに好ましくは0.1℃/日以下である。
このように緩慢に温度降下させる場合には、凍結工程においてはプログラムフリーザーを用いることが好ましい。
【0033】
凍結工程の期間の下限は、好ましくは100日以上、より好ましくは120日以上、さらに好ましくは150日以上、さらに好ましくは160日以上、さらに好ましくは180日以上である。
なお、「凍結工程の期間」とは、植物組織の温度降下を開始した時点から、解凍工程を開始するまでの期間である。
【0034】
解凍工程における解凍方法は特に制限されない。凍結状態の植物組織を常温に放置することで自然解凍してもよいし、凍結状態の植物組織を流水ですすぎながら解凍してもよい。
【0035】
<発生工程>
凍結工程及び解凍工程に供した植物組織が植物の種子である場合には、これを常法に従い播種し、植物個体を発生させることができる。他方、凍結工程及び解凍工程に供した植物組織が種子以外の植物部位である場合には、これをそのまま土壌や培地に移し発芽させてもよいし、また、細かく細断し常法に従い細胞培養を行い、カルス誘導、不定胚誘導、不定芽誘導を行うことで、植物個体を発生させることができる。
【0036】
組織培養を行う場合、培養方法は特に限定されず、茎頂を培養する茎頂培養、葯を培養する葯培養、プロトプラストを培養するプロトプラスト培養、葉などの器官を培養する器官培養、未熟胚を培養する胚培養などが挙げられる。
特に茎頂培養、葯培養、プロトプラスト培養など、採取した植物組織をカルス誘導し、このカルスを再分化させることでクローン苗を生産する、いわゆるカルス培養に本発明を適用することが好ましい。
【0037】
また、本発明に係る発生工程において、組織培養は、竹炭の存在下で行うことが好ましい。竹炭の形態は限定されないが、好ましくは粉末状である。
竹炭としては真竹、孟宗竹、黒竹、篠竹、千島笹、圏紋竹、矢竹、おかめ笹、支那竹、蓬莱竹、淡竹、布袋竹、亀甲竹、四方竹、唐竹、隈笹、都笹、女竹など、何れの竹由来のものでも構わないが、好ましくは孟宗竹由来の竹炭である。
【0038】
竹炭の製法も限定されず、炭化温度は好ましくは200℃以上、より好ましくは500℃以上、さらに好ましくは800℃以上、さらに好ましくは1000℃以上、さらに好ましくは1100℃以上、さらに好ましくは1100℃〜1300℃である。
【0039】
一般的に組織培養によりクローン苗を生産する工程は、組織からカルスを誘導するカルス誘導工程、カルスを培養するカルス培養工程、シュートを形成させるシュート形成過程、根を発生させる発根工程など、複数の工程を含む。本発明においては、何れの工程を竹炭存在下で行ってもよい。
【0040】
組織培養における培地は、液体培地であっても固体培地であってもよい。生産する植物種、組織培養における各工程の目的などにより適宜選択できる。
培地の組成も特に限定されず、無機成分、ビタミン類、炭素源を含む一般的に植物の組織培養に用いられる基本培地、これに必要に応じてアミノ酸類、植物ホルモン類、ココナッツミルク、イーストエキスなどを加えた培地を用いることができる。
【0041】
無機成分としては、窒素、リン、カリウム、硫黄、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、亜鉛、ホウ素、モリブデン、塩素、ヨウ素、コバルト等の元素や、これらを含む無機塩が例示される。無機塩としては例えば、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸ナトリウム、リン酸1水素カリウム、リン酸2水素ナトリウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第1鉄、硫酸第2鉄、硫酸マンガン、硫酸亜鉛、硫酸銅、硫酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、ホウ酸、三酸化モリブデン、モリブデン酸ナトリウム、ヨウ化カリウム、塩化コバルト等やこれらの水和物が挙げられる。無機成分として、上記具体例の中から1種又は2種以上を選択して用いることができる。
【0042】
炭素源としては、ショ糖等の炭水化物とその誘導体;脂肪酸等の有機酸;エタノール等の1級アルコール、などの化合物を使用することができる。炭素源として、上記具体例の中から1種又は2種以上を選択して用いることができる。
【0043】
ビタミン類としては、例えば、ビオチン、チアミン(ビタミンB1)、ピリドキシン(ビタミンB4)、ピリドキサール、ピリドキサミン、パントテン酸カルシウム、イノシトール、ニコチン酸、ニコチン酸アミドおよび/またはリボフラビン(ビタミンB2)等を使用することができる。ビタミン類として、上記具体例の中から1種又は2種以上を選択して用いることができる。
【0044】
アミノ酸類としては、例えば、グリシン、アラニン、グルタミン酸、システイン、フェニルアラニンおよび/またはリジン等を使用することができる。アミノ酸類として、上記具体例の中から1種又は2種以上を選択して用いることができる。
【0045】
植物ホルモン類としては、例えば、オーキシン類、サイトカイニン類を使用することができる。
オーキシン類としては、ナフタレン酢酸(NAA)、インドール酢酸(IAA)、p−クロロフェノキシ酢酸、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4D)、インドール酪酸(IBA)およびこれらの誘導体等が例示され、これらから選択される1種以上または2種以上を組み合わせて用い得る。
また、サイトカイニン類としてはベンジルアデニン(BA)、カイネチン、ゼアチンおよびこれらの誘導体等が例示され、これらから選択される1種以上または2種以上を組み合わせて用い得る。
植物ホルモン類としては、オーキシン類のみ、サイトカイニン類のみ、又はオーキシン類とサイトカイニン類の両方を組み合わせて用いうる。
【0046】
基本培地としては、例えば、MS培地、リンスマイヤースクーグ培地、ホワイト培地、ガンボーグのB−5培地、ニッチニッチ培地等を挙げることができる。
【0047】
カルス誘導工程、カルス培養工程、シュート形成過程、発根工程など組織培養を構成する各工程における培地組成は、常法により植物ホルモン類の濃度調整などによって適宜設計することができる。
【0048】
竹炭の存在下で液体培地により組織培養を行う場合には、竹炭を分散させた竹炭分散液体培地により培養を行うことが好ましい。竹炭分散液体培地を使用する場合には、液中に酸素を供給する必要があり、また、培地中に竹炭を均一に分散させる観点から、回転培養器や振とう培養器などにより培養を行うことが好ましい。
【0049】
一方、固体培地は液体培地と異なり攪拌などの操作が必要ないので好ましい。本発明に用いる固体培地としては寒天、アガロース、カラギーナン、ゲランガム等のゲル化剤により固化した固体培地が好適に例示できる。
竹炭の存在下で固体培地により組織培養を行う場合には、竹炭を含有する固体培地を用意し、この竹炭含有固体培地上で培養を行ってもよい。
【0050】
本発明においては、固体培地上に竹炭を含む組成物を積層した竹炭積層固体培地にて組織培養を行ってもよい。
「竹炭を含む組成物」としては竹炭が分散された水又は水溶液などの分散液組成物や、竹炭又は竹炭と竹炭以外の粉末からなる粉末組成物が挙げられる。
【0051】
なお、本明細書においては上述した竹炭分散液体培地、竹炭含有固体培地、及び竹炭積層固体培地の何れの培地組成物を用いて培養を行っても良いが、竹炭積層固体培地が特に好ましく使用できる。
【0052】
培地組成物全体に対する竹炭の含有量は、好ましくは1〜10重量%、より好ましくは2〜5重量%、さらに好ましくは3〜4重量%であるが、これらの濃度範囲に限定されない。
【0053】
一般的に組織培養においては例えばカルベニシリン、バンコマイシン、セフォタキシム等、種々の抗生物質を用いるが、本発明においては組織培養において抗生物質を用いないことが好ましい。本発明の方法によれば、抗生物質を用いずとも抵抗性に優れたクローン苗ないしクローン植物を得ることができる。
【0054】
<栽培工程>
上述した方法で組織培養し、植物を再分化することで得られたクローン苗は土壌栽培に供することができる。クローン苗を栽培する栽培工程の具体的な方法は、植物の種類により常法により適宜選択することができる。
【0055】
栽培工程においては一般的に農薬を用いることが多い。しかし、本発明の方法により生産されたクローン苗ないしクローン植物は、殺虫剤や殺菌剤といった農薬を使用することなく、無農薬栽培に供することができる。
【0056】
[2.植物緑葉の乾燥粉末の製造]
本発明は、上述の各工程を経て生産された植物の緑葉を原料として、その乾燥粉末を得るものである。本発明において、植物の「緑葉」には、葉身、新葉、葉柄、托葉を含む植物体の葉の他、果軸、葉鞘、茎、偽茎、葉鞘なども含まれる。また、これらの抽出物を原料とすることもできる。
通常、植物の緑葉は廃棄されるものであるが、本発明は、このような副産物を食用に供し有効利用するものである。また、本発明の製造方法に係る各工程を経て生産された植物を原料とする乾燥粉末は、極めて栄養価が高く、健康食品として有用である。
【0057】
まず、土壌にて栽培されたクローン植物から、原料となる緑葉を採取する。採取した緑葉は、水道水などで洗浄し、不純物をあらかじめ除去することが好ましい。
【0058】
洗浄した植物緑葉は、乾燥処理することが好ましい。乾燥処理の方法は特に制限されず、公知の何れの方法を用いてもよいが、熱風乾燥、高圧蒸気乾燥、凍結乾燥などを例示することができる。また、天日干しにして乾燥しても構わない。
【0059】
乾燥した植物緑葉は、公知の粉砕機を用いて粉砕処理することが好ましい。粉砕処理については、粉砕物を乾燥状態で得ることができる観点から、乾式粉砕とすることが好ましい。例えば、ミキサー、ミル、クラッシャー、ブレンダー、石臼など、公知の粉砕機を用いて粉砕処理を行うことができる。
【0060】
粉砕した植物緑葉の乾燥粉末の粒度は、飲食品として摂取した際の舌触りないしのどごしを著しく劣悪にするものでなければ特に制限されないが、目安として、30〜270メッシュの篩を通過する粒度であることが好ましく、50〜200メッシュの篩を通過する粒度であることがより好ましい。
【0061】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末は、その粉末の水分含有量が、10重量%以下となるように処理することが好ましく、7重量%以下となるように処理することがより好ましく、5重量%以下となるように処理することがさらに好ましい。
水分含有量を上記の上限値以下とすることで、製品としての取り扱い易さが向上する。水分含有量は、加熱乾燥法により測定することができる。
【0062】
また、植物緑葉の抽出物から乾燥粉末を得る場合、常法により原料である植物緑葉を抽出処理し、抽出液を噴霧乾燥することで乾燥粉末を得ることができる。噴霧乾燥の方法は特に制限されるものではなく、スプレードライ等、公知の方法を用いることができる。
【0063】
噴霧乾燥の温度としては、所望の形態の乾燥粉末が得られる限り特に限定されないが、通常80〜180℃程度、好ましくは100〜180℃、より好ましくは130〜180℃である。
【0064】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末は、顆粒状又は粉末状の飲食品組成物の形態として、液体に分散又は溶解して経口的に摂取することが好ましい。このような形態で本発明の乾燥粉末を摂取する際は、水と混合して摂取してもよいし、ぬるま湯と混合して摂取してもよいが、粉っぽさを排除する観点から、ぬるま湯と混合して摂取することが好ましい。また、水やぬるま湯だけでなく、牛乳、豆乳、果汁飲料、乳飲料、清涼飲料、茶飲料等に添加して摂取してもよい。
【0065】
水又はぬるま湯と混合する場合の温度としては、42℃未満であることが好ましく、40℃未満であることがより好ましく、37℃未満であることがより好ましく、35℃未満であることがさらに好ましい。
このような温度の水又はぬるま湯と植物緑葉の乾燥粉末を混合することで、酵素の失活を防止することができる。
【0066】
また、水又はぬるま湯の温度は、25℃以上であることが好ましく、27℃以上であることがより好ましい。
このような温度の水又はぬるま湯と植物緑葉の乾燥粉末を混合することで、溶解性が向上し、飲料として摂取した際の舌触りないしのどごしが良好となる。
【0067】
本発明の方法により製造された植物緑葉の乾燥粉末は、非常に栄養価が高い。
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりの水分含量は、好ましくは2g以上、より好ましくは3g以上、より好ましくは3.5g以上である。
【0068】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのたんぱく質含量は、好ましくは10g以上、より好ましくは15g以上、より好ましくは17g以上である。
【0069】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりの脂質含量は、好ましくは3g以上、より好ましくは4g以上、より好ましくは5g以上、より好ましくは5.5g以上である。
【0070】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりの灰分含有量は、好ましくは12g以上、より好ましくは15g以上、より好ましくは16g以上、より好ましくは16.5g以上である。
【0071】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりの炭水化物含量は、より好ましくは40g以上、より好ましくは45g以上、より好ましくは50g以上、より好ましくは55g以上である。
【0072】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのエネルギーは、好ましくは300kcal以上、より好ましくは330kcal以上、より好ましくは340kcal以上である。
【0073】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのリン含有量は、好ましくは120g以上、より好ましくは130g以上、より好ましくは140g以上、より好ましくは145g以上である。
【0074】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりの鉄含有量は、好ましくは5mg以上、より好ましくは7mg以上、より好ましくは9mg以上、より好ましくは10mg以上である。
【0075】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのカルシウム含有量は、好ましくは1500mg以上、より好ましくは1600mg以上、より好ましくは1700mg以上、より好ましくは1800mg以上、より好ましくは1850mg以上である。
【0076】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのカリウム含有量は、好ましくは2500mg以上、より好ましくは2700mg以上、より好ましくは2900mg以上、より好ましくは2950mg以上である。
【0077】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのマグネシウム含有量は、好ましくは300mg以上、より好ましくは330mg以上、より好ましくは340mg以上、より好ましくは345mg以上である。
【0078】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりの銅含有量は、好ましくは0.5mg以上、より好ましくは0.55mg以上、より好ましくは0.6mg以上、より好ましくは0.62mg以上である。
【0079】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりの亜鉛含有量は、好ましくは2mg以上、より好ましくは2.2mg以上、より好ましくは2.4mg以上、より好ましくは2.45mg以上である。
【0080】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのマンガン含有量は、好ましくは50mg以上、より好ましくは52mg以上、より好ましくは54mg以上、より好ましくは55mg以上である。
【0081】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのクロム含有量は、好ましくは90μg以上、より好ましくは100μg以上、より好ましくは105μg以上である。
【0082】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのモリブテン含有量は、好ましくは80μg以上、より好ましくは90μg以上、より好ましくは95μg以上である。
【0083】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのビタミンA含有量は、好ましくは1700μg以上、より好ましくは1800μg以上、より好ましくは1850μg以上である。
【0084】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのα−カロテン含有量は、好ましくは13000μg以上、より好ましくは13500μg以上、より好ましくは14000μg以上、より好ましくは14200μg以上である。
【0085】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのβ−カロテン含有量は、好ましくは14000μg以上、より好ましくは15000μg以上、より好ましくは15500μg以上、より好ましくは15600μg以上である。
【0086】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのビタミンB含有量は、好ましくは0.25mg以上、より好ましくは0.28mg以上、より好ましくは0.3mg以上である。
【0087】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのビタミンB含有量は、好ましくは0.8mg以上、より好ましくは0.9mg以上、より好ましくは1mg以上である。
【0088】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのビタミンB含有量は、好ましくは2mg以上、より好ましくは2.1mg以上、より好ましくは2.2mg以上、より好ましくは2.3mg以上である。
【0089】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのビタミンC含有量は、好ましくは2.5mg以上、より好ましくは2.7mg以上、より好ましくは2.9mg以上である。
【0090】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのビタミンE含有量は、好ましくは100mg以上、より好ましくは105mg以上、より好ましくは110mg以上である。
【0091】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのβ−トコフェロール含有量は、好ましくは0.3mg以上、より好ましくは0.35mg以上、より好ましくは0.38mg以上である。
【0092】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのγ−トコフェロール含有量は、好ましくは16mg以上、より好ましくは18mg以上、より好ましくは19mg以上、より好ましくは19.5mg以上である。
【0093】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのδ−トコフェロール含有量は、好ましくは1.3mg以上、より好ましくは1.4mg以上、より好ましくは1.45mg以上である。
【0094】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのビタミンK含有量は、好ましくは6300μg以上、より好ましくは6600μg以上、より好ましくは6700μg以上、より好ましくは6800μg以上、より好ましくは6900μg以上である。
【0095】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのビオチン含有量は、好ましくは30μg以上、より好ましくは32μg以上、より好ましくは33μg以上、より好ましくは34μg以上である。
【0096】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのイノシトール含有量は、好ましくは130mg以上、より好ましくは140mg以上、より好ましくは143mg以上である。
【0097】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりの総アミノ酸含有量は、好ましくは10g以上、より好ましくは13g以上、より好ましくは14g以上である。
【0098】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのアルギニン含有量は、好ましくは0.6g以上、より好ましくは0.7g以上、より好ましくは0.75g以上である。
【0099】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのリジン含有量は、好ましくは0.6g以上、より好ましくは0.7g以上、より好ましくは0.75g以上である。
【0100】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのヒスチジン含有量は、好ましくは0.2g以上、より好ましくは0.25g以上、より好ましくは0.3g以上、より好ましくは0.33g以上、より好ましくは0.35g以上である。
【0101】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのフェニルアラニン含有量は、好ましくは0.6g以上、より好ましくは0.7g以上、より好ましくは0.75g以上である。
【0102】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのチロシン含有量は、好ましくは0.35g以上、より好ましくは0.38g以上、より好ましくは0.4g以上、より好ましくは0.43g以上である。
【0103】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのロイシン含有量は、好ましくは0.9g以上、より好ましくは1g以上、より好ましくは1.1g以上である。
【0104】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのイソロイシン含有量は、好ましくは0.4g以上、より好ましくは0.5g以上、より好ましくは0.55g以上、より好ましくは0.6g以上である。
【0105】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのメチオニン含有量は、好ましくは0.15g以上、より好ましくは0.18g以上、より好ましくは0.2g以上、より好ましくは0.22g以上である。
【0106】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのバリン含有量は、好ましくは0.6g以上、より好ましくは0.7g以上、より好ましくは0.8g以上、より好ましくは0.82g以上である。
【0107】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのアラニン含有量は、好ましくは0.6g以上、より好ましくは0.7g以上、より好ましくは0.8g以上、より好ましくは0.81g以上である。
【0108】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのグリシン含有量は、好ましくは0.5g以上、より好ましくは0.6g以上、より好ましくは0.65g以上、より好ましくは0.7g以上である。
【0109】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのプロリン含有量は、好ましくは0.5g以上、より好ましくは0.55g以上、より好ましくは0.6g以上、より好ましくは0.65g以上である。
【0110】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのグルタミン酸含有量は、好ましくは1.7g以上、より好ましくは1.8g以上、より好ましくは1.85g以上である。
【0111】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのセリン含有量は、好ましくは0.5g以上、より好ましくは0.6g以上、より好ましくは0.65g以上、より好ましくは0.67g以上である。
【0112】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのスレオニン含有量は、好ましくは0.5g以上、より好ましくは0.6g以上、より好ましくは0.65g以上、より好ましくは0.67g以上である。
【0113】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのアスパラギン酸含有量は、好ましくは2g以上、より好ましくは2.1g以上、より好ましくは2.15g以上である。
【0114】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのトリプトファン含有量は、好ましくは0.25g以上、より好ましくは0.3g以上、より好ましくは0.35g以上である。
【0115】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのシスチン含有量は、好ましくは0.15g以上、より好ましくは0.17g以上、より好ましくは0.19g以上、より好ましくは0.21g以上である。
【0116】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのγ−アミノ酪酸含有量は、好ましくは140mg以上、より好ましくは150mg以上、より好ましくは160mg以上、より好ましくは165mg以上である。
【0117】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりの葉酸含有量は、好ましくは400μg以上、より好ましくは450μg以上、より好ましくは470μg以上である。
【0118】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのパントテン酸含有量は、好ましくは3mg以上、より好ましくは3.5mg以上、より好ましくは3.7mg以上、より好ましくは3.9mg以上である。
【0119】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりのナイアシン含有量(ニコチン酸相当量)は、好ましくは4.5mg以上、より好ましくは5mg以上、より好ましくは5.2mg以上、より好ましくは5.4mg以上である。
【0120】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりの食物繊維の総含有量は、好ましくは35g以上、より好ましくは40g以上、より好ましくは45g以上、より好ましくは48g以上、より好ましくは49g以上である。
【0121】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりの水溶性食物繊維含有量は、好ましくは1g以上、より好ましくは1.2g以上、より好ましくは1.4g以上、より好ましくは1.45g以上である。
【0122】
本発明の植物緑葉の乾燥粉末100g当たりの不溶性食物繊維含有量は、好ましくは35g以上、より好ましくは40g以上、より好ましくは45g以上、より好ましくは48g以上である。
【0123】
本発明の乾燥粉末を飲食品組成物とする場合、植物緑葉以外の任意の食品添加剤を含んでもよい。例えば、甘味料、着色料、保存料、増粘剤、安定剤、酸化防止剤、酸味料、香料、膨張剤、乳化剤、矯味剤、栄養強化剤などを例示することができる。その中でも、顆粒状又は粉末状の形態とした際の摂取のし易さ等の観点から、甘味料、香料、乳化剤の1又は複数を含有することがより好ましい。これらの含有量は、本発明の効果を妨げない範囲で適宜決定することができる。
【実施例】
【0124】
バナナの親株の株元より発生した子株を掘り上げ、この子株の根を輪切りにし、トレハロース水溶液に浸漬した状態で、プログラムフリーザー内に静置し凍結した。凍結は0.5℃/日の温度降下速度で180日間かけて緩慢に行い、凍結時最低温度が−60℃となるように行った。
【0125】
凍結した子株の根を流水ですすぐことにより解凍し、解凍後の子株の根を細断した。この断片化した生長細胞塊を初代培養し発芽させ、発生した芽を切り分け、これをバイオフラスコ中に敷いた寒天培地に置床した。発芽細胞が置床された寒天培地上に竹炭粉末を分散した水を添加し、竹炭積層固体培地とした。
【0126】
ここで使用した竹炭粉末は、孟宗竹を炭化温度1200℃で炭化して得たものである。竹炭粉末は培地全体の3〜4重量%となるように添加した。また、竹炭積層固体培地には抗生物質を加えなかった。
【0127】
その後、竹炭積層固体培地上でバナナの発芽細胞の組織培養を継続し、ある程度成長した苗を160℃のスチーム処理を行った無菌培養土に移し土壌栽培を行った。定植から100日はバイオフラスコでの培養条件と同様の湿度に調整し、さらに紫外線を調整する目的で肥培管理して栽培を行った。定植から100日後に育苗鉢へ植え替え、直接太陽光に当たる環境に置き、バナナのクローン植物を栽培した。なお、この栽培過程では一切の農薬を用いなかった。
【0128】
このようにして栽培されたバナナのクローン植物から緑葉を採取し、流水で洗浄後に天日干しにして乾燥した。乾燥した緑葉を、市販のミキサーを用いて粉砕処理し、植物緑葉の乾燥粉末を得た。その後、得られた乾燥粉末を民間の第三者機関に提供し、成分分析を行った。結果を表1〜3に示す。
【0129】
【表1】

【表2】

【表3】
【0130】
表1〜3に示されるように、本発明に係る製造方法により生産された植物の緑葉を原料として生産された乾燥粉末は、カリウム、カルシウム、マグネシウム等のミネラル類、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、B2、B6等のビタミン類などが豊富に含まれる、栄養価の高いものであることが確認された。
なお、本実施例と同様の方法により生産されたパパイヤの緑葉を原料として用いた乾燥粉末も、表1〜3と同様に、ミネラル類やビタミン類等が豊富に含まれる、栄養価の高いものであった。
【0131】
また、表4に、本発明に係る製造方法により生産された植物の緑葉を原料として生産された乾燥粉末と、ケールを原料とする青汁飲料(日本食品標準成分表2015年版(七訂))の成分を比較した表を示す。
【0132】
【表4】
【0133】
表4から明らかなように、本発明に係る製造方法により生産された植物の緑葉を原料として生産された乾燥粉末(表中の『バナナ葉青汁』)は、ケールを原料とする一般的な青汁飲料と比較して、極めて栄養価の高いものであった。
【0134】
本発明に係る製造方法に依らずにバナナを生産するにあたっては、組織培養の段階で抗生物質の使用が欠かせないことから、土壌栽培では農薬の使用が必須であるとされている。現に、表5〜9に示すように、そのような方法で生産されたバナナ(キャベンディッシュ、台湾産)の緑葉を、第三者機関にてGC−MS(ガスクロマトグラフ質量分析器)及びLC−MS/MS(高速液体クロマトグラフタンデム質量分析器)を用いて分析したところ、残留農薬の存在が確認された。なお、表5〜9は、443項目に及ぶ残留農薬一斉分析の結果から、検出された項目を含むものを抜粋したものである。また、表中の「ND」は、検出されなかったことを表す。
一方、本発明の実施例のバナナ緑葉より製造した乾燥粉末には、栽培過程で農薬を使用していないことから、当然のことながら残留農薬は検出されなかった。
【0135】
【表5】
【0136】
【表6】
【0137】
【表7】
【0138】
【表8】
【0139】
【表9】
【0140】
上述したように、通常、バナナの生産において、土壌栽培時に農薬が使用されることは当業者の共通の認識であった。そのため、安全性の観点から、バナナの緑葉そのものを食用に供するという発想には至らなかった。
【0141】
本発明は、このような既成概念を根本から覆し、バナナの緑葉が高い栄養価を有することを見出すとともに、安全性の高いその乾燥粉末の提供を可能にするものである。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明によれば、栄養価が高く、無農薬栽培により生産可能な安全性の高い植物緑葉の乾燥粉末の製造技術を提供することができる。