(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1又は2に記載のマット調バリアポリアミドフィルムを製造する方法であって、(1)、(2)の工程を順に行うことを特徴とするマット調バリアポリアミドフィルムの製造方法。
(1)未延伸フィルムの水分率が3〜9%になるように温水槽で吸水させた後、未延伸フィルムの少なくとも一方の面にポリ塩化ビニリデン系共重合体を含有するバリア層形成用塗料を塗布する。
(2)予熱温度180〜250℃で予熱を行い、温度170〜230℃で延伸を行い、さらに温度180〜230℃で熱固定を行う。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
〔ポリアミドフィルム(X)〕
本発明のマット調バリアポリアミドフィルムのポリアミドフィルム(X)は、シリカを含有するポリアミド樹脂からなるものである。
【0011】
本発明において、ポリアミド樹脂とは、その分子内にアミド結合(−CONH−)を有する溶融成形可能な熱可塑性樹脂であり、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリアミノウンデカミド(ナイロン11)、ポリラウリルアミド(ナイロン12)および、これらの共重合体、混合物等が挙げられるが、特にナイロン6が好ましい。また、ポリアミドには、フィルムの性能を損なわない範囲においてタルク、シリカ、アルミナ、マグネシア、炭酸カルシウム、エチレンビスステアリルアミド、ステアリン酸カルシウム等の滑剤や、顔料、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、難燃剤、可塑剤、離型剤を配合することもできる。
【0012】
ポリアミド樹脂の分子量の指標となる相対粘度は、機械物性の面から1.5〜5.0の範囲が好ましく、2.5〜4.0の範囲がより好ましい。ここで、相対粘度は96質量%硫酸中、濃度1g/dl、温度25℃で測定された値である。
【0013】
本発明において、マット調バリアポリアミドフィルムのフィルム表面光沢度を50%以下とするためにはポリアミド樹脂中にシリカを添加する必要がある。
【0014】
シリカを添加する方法としては、ポリアミド樹脂の重合開始前または重合開始後の任意の時期に内部添加する方法、ポリアミド樹脂とシリカを押出機中で溶融混錬する方法、ポリアミド樹脂とシリカをドライブレンドする方法が挙げられる。中でも、シリカのポリアミド樹脂への添加は、フィルム中でのシリカの分散性の観点から、重合開始時または重合開始後の任意の時期に内部添加する方法が好ましい。
【0015】
シリカには、分散性や耐候性、耐熱性、ポリマーとの密着性等を向上させるために、無機処理や有機処理などの表面処理を施してもよい。
【0016】
本発明のポリアミドフィルム(X)中のシリカの含有量は、0.1〜12質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、さらに好ましくは1.5〜7質量%である。ポリアミドフィルム(X)中のシリカの含有量が0.1質量%未満の場合、フィルム表面の光沢度が高くなり、表面が艶消し状態であるマット調を有するものとすることが困難となる。一方、含有量が12質量%を超える場合、空隙の発生が多大になり、衝撃強度を含む機械的特性が低下する。
【0017】
シリカの平均粒子径は1.0〜5.0μmの範囲であることが好ましい。1.0μmより小さいと、フィルム表面の突起を形成することが困難となるため、マット調が低下する。一方、5.0μmを超えると、フィルム中の空隙が多大になり、衝撃強度を含む機械的特性低下の原因となるため好ましくない。
【0018】
〔バリア層(Y)〕
本発明のマット調バリアポリアミドフィルムは、ポリアミドフィルム(X)とバリア層(Y)を含む複層構成のポリアミドフィルムであり、バリア層(Y)は、ポリアミドフィルム(X)の少なくとも一方の面に設けられるものである。バリア層(Y)は、ポリ塩化ビニリデン系共重合体で形成されてなるものであることが好適である。
【0019】
ポリ塩化ビニリデン系共重合体は、原料としての塩化ビニリデン50〜99質量%と塩化ビニリデンと共重合可能な1種以上の他の単量体を公知の乳化重合方法によって重合され、媒体へ分散状態であるラッテクスとして得られるものであることが好ましい。共重合可能な他の単量体の割合が1質量%未満であると樹脂内部の可塑化が不十分となり被膜の造膜性が低下し、また他の単量体の割合が50質量%を超えるとガスバリア性が低下するため、ともに好ましくない。また、塩化ビニリデンの比率が高いほど結晶融点が高いポリ塩化ビニリデン系共重合体が得られるので、塩化ビニリデン比率を上記上限に近い比率、例えば、塩化ビニリデンが95〜99質量%の範囲で重合することによりポリ塩化ビニリデン系共重合体を得ることができる。
【0020】
塩化ビニリデンと共重合可能な単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、2−エチルへキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート等のアクリル酸エステル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル等のメタクリル酸エステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル類、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、塩化ビニルが挙げられる。これらの単量体は単独で用いてもよいし、併用してもよい。
【0021】
ポリ塩化ビニリデン系共重合体は、水中に分散した状態でバリア層形成用塗料(ラテックス)として用いられ、ポリアミドフィルム(X)の少なくとも片面にコートされる。バリア層形成用塗料中のポリ塩化ビニリデン系共重合体の平均粒径は0.05〜0.5μmであることが好ましく、0.07〜0.3μmであることが特に好ましい。ポリ塩化ビニリデン系共重合体には、本発明の効果を損なわない範囲で、例えばアンチブロッキング剤、架橋剤、撥水剤、帯電防止剤などの各種添加剤を併用しても良い。
【0022】
コートの方法は特に限定されるものではなく、例えば、グラビアロール法、リバースロール法、エアーナイフ法、リバースグラビア法、マイヤーバー法、インバースロール法、またはこれらの組み合わせによる各種コート方式や、各種噴霧方式などを採用することができる。
ポリアミドフィルム(X)には、コートの直前でコロナ放電処理などが行われても良い。
【0023】
ポリ塩化ビニリデン系共重合体で形成されるバリア層(Y)の厚みは、0.5μm〜3.5μmの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.7μm〜3.0μmの範囲であり、特に好ましくは1.0μm〜2.5μmの範囲である。このバリア層(Y)が0.5μmよりも薄いと十分なバリア性(酸素バリア性や水蒸気バリア性)が発現しにくい。一方、バリア層(Y)が3.5μmよりも厚いと、効果が飽和するばかりでなく、フィルムの物性が損なわれることがある。
【0024】
ポリアミドフィルム(X)とバリア層(Y)との密着強力は、0.3N/cm以上であることが好ましい。密着強力がこの値よりも低いと、ボイル処理やレトルト処理時にポリアミドフィルム(X)とバリア層(Y)とが剥離したり、十分なシール強力が出なくなったりする可能性がある。
【0025】
このようにして得られる、バリア層(Y)が積層された構造のマット調バリアポリアミドフィルムは、ポリアミドフィルムとしての優れた強度、機械的物性に加えて、優れた酸素バリア性、水蒸気バリア性に優れるため、包装材料として好適に使用できる。
【0026】
また、バリア層(Y)は、蒸着層であってもよい。蒸着層には無機物または有機物からなる化合物が用いられる。無機物としてはアルミニウムなどの金属やアルミニウム、珪素、マグネシウム、チタンなどの無機酸化物が用いられる。
このような無機物の層を形成する方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、化学的気相成長(CVD)法、物理的気相成長(PVD)法などが挙げられる。特に真空蒸着法が実用性に優れている。
【0027】
ポリアミドフィルム(X)に蒸着加工を施す際には、ポリアミドフィルム(X)と蒸着層との接着性を高めるために、ポリアミド樹脂層に、予め、コロナ処理、プラズマ処理または無機あるいは有機化合物によるコーティング処理などを行ってもよい。
真空蒸着の場合には、蒸着原材料として、アルミニウム(Al)、アルミナ(Al
2O
3)、珪素(Si)、シリカ(SiO
2)またはこれらの組合せが用いられる。原料の加熱方法としては、抵抗加熱法、高周波誘導加熱法、電子ビーム加熱法、レーザー加熱法などがあげられる。また、加熱の際に酸素などのガスを並存させたり、オゾンを添加したり、イオンアシスト法を採用したりすることもできる。
【0028】
蒸着層からなるバリア層(Y)の厚みは、1〜1000nm程度が好ましい。1nm以下ではバリア性(酸素バリア性や水蒸気バリア性)が発現せず、1000nm以上では加工したフィルム全体としての可塑性が失われ、実用性が低下する。
【0029】
〔ポリアミドフィルムの特性〕
本発明のマット調バリアポリアミドフィルムは、上記した(1)〜(6)の特性値を全て満足するものである。
まず、光沢度は、50%以下であることが必要であり、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることがさらに好ましい。光沢度が50%を超えると、表面が艶消し状態であるマット調とすることができず、目的とする高級感や和紙風合いが得られない。
【0030】
本発明のマット調バリアポリアミドフィルムの空隙率は、0.1〜5%であることが必要であり、好ましくは0.1〜4%であり、更に好ましくは0.3〜3%である。フィルム中の空隙率が0.1%未満の場合、空隙が少なく、シリカの配合のみでは必要とする光沢度を得られない場合がある。一方、フィルム中の空隙率が5%を超えると、衝撃強度や強伸度が低下し、さらには延伸工程及び二次加工工程で破断が生じやすくなる。
【0031】
本発明のマット調バリアポリアミドフィルムの衝撃強度は、20℃条件下で測定される衝撃強度が0.35J以上であることが必要であり、好ましくは0.4J以上であり、更に好ましくは0.45J以上である。衝撃強度が0.35Jより小さいと、印刷工程等の二次加工工程で破断が生じ易く、十分な実用性を兼ね備えていないため使用困難である。また、製袋後に落下することでフィルムが破袋したり、フィルムにクラックが生じたりして、内容物がこぼれる懸念がある。
【0032】
さらには、本発明のマット調バリアポリアミドフィルムは、フィルムの幅方向(TD方向)に対して45度の方向と135度の方向における熱水収縮率の差(以下、「熱水収縮率の斜め差」と略することがある)が2.0%以下である必要があり、1.8%以下であることが好ましく、1.6%以下であることがより好ましい。
【0033】
本発明における「熱水収縮率の斜め差」は以下のようにして測定するものである。
まず、フィルムの幅方向(TD方向)を特定し、幅方向を0度とした時に、0度に対し45度と135度の方向を長さ方向としてそれぞれ短冊状の試験片をカットする。試験片の寸法は幅10mm×長さ100mmとする。得られた45度方向の試験片および135度方向の試験片について、それぞれ100℃熱水中で5分間ボイル処理した後、23℃、50%RH下、2時間放置した後の長さ方向の寸法を測定し、下記式により45度方向の試験片の熱水収縮率、135度方向の試験片の熱水収縮率を求める。さらに両方向の試験片の熱水収縮率より、熱水収縮率の斜め差を算出する。
【0034】
なお、原長とは熱水処理を行う前の試験片の長さであり、本発明においては(L0
45)、(L0
135)ともに100mmである。
45度方向の熱水収縮率(%)={原長(L0
45)−処理後長(L
45)}/原長(L0
45)×100
135度方向の熱水収縮率(%)={原長(L0
135)−処理後長(L
135)}/原長(L0
135)×100
熱水収縮率の斜め差(%)=|(45度方向の熱水収縮率)−(135度方向の熱水収縮率)|
【0035】
熱水収縮率の斜め差が2.0%を超えると、得られるマット調バリアポリアミドフィルムの寸法安定性が不足し、印刷時の色合わせにズレを生じる。また、包装袋とした際、雰囲気の温度や湿度の影響によりひねりや反りを生じ平面性に劣る。また、内容物充填時に充填機の掴み部で掴みミスが生じたり、シール不良が生じたりする。さらには、包装袋の歪みに起因し、外部から衝撃を受けた際の破袋率が高まる。
【0036】
本発明のマット調バリアポリアミドフィルムの酸素透過度は、20℃、65%RH下で、100ml/m
2・day・MPa以下であることが必要であり、中でも80ml/m
2・day・MPa以下であることが好ましい。
【0037】
さらに、本発明のマット調バリアポリアミドフィルムの水蒸気透過度は、40℃、90%RH下で、20g/m
2・day以下であることが必要であり、中でも15g/m
2・day以下であることが好ましい。
本発明のマット調バリアポリアミドフィルムの酸素透過度と水蒸気透過度が上記の値を満足しない場合、内容物保存性に劣るものとなり、食品、医療品および薬品等の包装用途に用いることが困難となる。
【0038】
また、本発明のマット調バリアポリアミドフィルムの引張強度については、フィルムの長さ方向(MD)と幅方向(TD)共に175MPa以上であることが好ましい。フィルムの引張強度が175MPa未満であると、食品、医療品および薬品等の包装用として求められる強度が不足するという不都合が生じやすくなる。
【0039】
本発明のマット調バリアポリアミドフィルムの引張伸度については、フィルムの長さ方向(MD)と幅方向(TD)共に65%以上であることが好ましい。フィルムの引張伸度が65%未満であると、引張強度と同様に、食品、医療品および薬品等の包装用として求められる強度が不足するという不都合が生じやすくなる。
【0040】
本発明のマット調バリアポリアミドフィルムの厚みは、衝撃強度及び寸法安定性が両立できれば特に限定されないが、10〜30μmが好ましく、12〜18μmであることがより好ましい。厚みが10μm未満であると衝撃強度が非常に低くなりやすく、一方、厚みが30μmを超えるとコスト高となるため好ましくない。
【0041】
次に、本発明のマット調バリアポリアミドフィルムの製造方法について説明する。
前記したように、シリカ等の無機粒子を含有するポリアミド樹脂を用いて製膜すると、未延伸フィルムの延伸時に延伸応力が高くなり、空隙の発生やボーイング現象の増大につながるものとなる。本発明においては、このような現象を解消すべく、ポリアミドフィルム(X)の製造において、(1−a)未延伸フィルムを特定の水分率となるように調整した後、未延伸のフィルムの少なくとも一方の面にポリ塩化ビニリデン系共重合体を含有するバリア層形成用塗料を塗布すること、(1−b)特定の温度条件で延伸を行うことを重要なポイントとするものである。そして、このような(1−a)、(1−b)の条件を見出したことによって、前記したような特性値を満足するポリアミドフィルムを得ることが可能となった。
【0042】
ポリアミドフィルム(X)の製造方法としては、チューブラー法、テンター式同時二軸延伸法、テンター式逐次二軸延伸法が一般に知られている。チューブラー法は装置の設備コストが他の方法より安い点で有利であるが、フィルムの厚み精度を高めることが難しく、品質安定性や寸法安定性の面でもテンター式二軸延伸法の方が優れている。本発明のマット調バリアポリアミドフィルムを製造する方法としては、テンター式同時二軸延伸法が好ましい。
【0043】
まず、ホッパーに原料樹脂ペレットを供給し、溶融押出機で可塑化溶融し、溶融した樹脂を押出機の先端に取り付けられたTダイよりシート状に押し出し、キャストロールで冷却固化する。このとき、空気によりポリアミド樹脂をキャストロールに押し付けて未延伸フィルムを得る。
【0044】
そして、(1−a)の条件で未延伸フィルムの水分率の調整と、バリア層形成用塗料の塗布を行う。具体的には、未延伸フィルムの水分率が3〜9%になるように温水漕で吸水させる。温水槽の温度は45〜90℃とすることが好ましい。45℃未満ではポリアミドへの吸水速度が遅いため吸水時間を長くする必要があり不経済である。90℃を超えると、ポリアミドの結晶化が進み、延伸が困難になる。さらには、温度が高いことでフィルムのコシがなくなり、温水層でのフィルムシワが発生し易く、操業性が著しく低下する。
【0045】
吸水工程による未延伸フィルムの水分率は3〜9%とすることが必要であり、中でも3.5〜8.5%とすることが好ましい。水分率が3%未満であると、可塑剤となる水分が少ないため、延伸応力が高くなる。そのため、ボーイングが大きくなるため、熱水収縮率斜め差が大きくなる。また、フィルム中の空隙率が高くなるため、フィルムの衝撃強度が低下したり、切断が多発する。一方、水分率が9%を超えると、幅方向(TD方向)での吸水率が不均一となり、フィルムの厚み不良が発生する。さらには延伸で必要とするフィルム温度が得られにくくなるため、ネック延伸が発生したり、切断が多発する。
【0046】
次に、未延伸のフィルムの少なくとも一方の面にポリ塩化ビニリデン系共重合体を含有するバリア層形成用塗料(ラテックス)を塗布する。具体的には、未延伸フィルムにバリア層形成用塗料を塗布したのち、そのまま延伸処理と皮膜形成処理を同時に施す方法や、塗布したのちドライヤーなどによる熱風の吹き付けや赤外線照射などによりバリア層形成用塗料の水分を蒸発乾燥、熱融着させる工程を経たうえで、延伸処理と皮膜形成処理を同時に施す方法などを用いることができる。延伸処理前にあらかじめポリ塩化ビニリデン系共重合体の結晶化を促進させることができる後者の方法が、耐ブラッシング性の点でより好ましい。
また、バリア層形成用塗料の塗布によるバリア層(Y)の形成については、延伸工程前のインラインコートではなく、延伸・巻き取り・スリット後の工程でコートを行なうポストコートにてバリア層(Y)を形成しても良い。ただし、コスト面、ポリアミドフィルム(X)とバリア層(Y)との密着性を考慮すると、延伸工程処理前にバリア層形成用塗料を塗布し、延伸処理にてポリ塩化ビニリデン系共重合体の皮膜を形成するインラインコートの方が好ましい。
【0047】
バリア層形成用塗料の水分を蒸発乾燥させる工程の温度は、70℃〜150℃であることが好ましく、より好ましくはポリ塩化ビニリデン系共重合体の造膜性が良い80℃〜120℃の範囲である。乾燥温度が70℃未満であると造膜性が低下し、また150℃を超えると、バリア層形成用塗料の温度上昇が激しく突沸などの現象が生じて、均一な皮膜が得られにくくなる。水分蒸発乾燥工程は異なる温度分布に区切られていてもよく、そのなかの最高温度を示す処理工程にかける時間は、未延伸フィルムやポリ塩化ビニリデン系共重合体の厚み、バリア層形成用塗料の固形分量や比熱などによって、任意に選択される。その時間は、通常は0.01〜120秒、好ましくは1〜80秒である。0.01秒未満であるとバリア層形成用塗料の水分蒸発性に劣ったり、あるいはポリ塩化ビニリデン系共重合体の造膜が不十分であったりする傾向がある。また120秒を超えると、場合によってはポリアミドフィルム(X)の結晶化が促進されすぎることにより延伸フィルム製造が不可能となったり、バリア層(Y)との密着性に不利となったりする傾向がある。
【0048】
ポリ塩化ビニリデン系共重合体のバリア層形成用塗料をポリアミドフィルム(X)に塗布する方法は、特に限定されないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、エアーナイフコーティング、ダイコーティング、カーテンダイコーティング等の通常の方法を用いることができる。
【0049】
次に、(1−b)の条件で延伸を行う。吸水処理が施され、水分率が3〜9%であり、ポリ塩化ビニリデン系共重合体の皮膜が形成された未延伸フィルムを、フィルムの端部をクリップで把持して、MD方向とTD方向にそれぞれ2.0〜4.0倍に延伸することが好ましい。延伸倍率は、中でも2.5〜3.8倍であることが好ましく、MD方向の延伸倍率とTD方向の延伸倍率の比(TD/MD)は、0.9〜1.2であることが好ましい。
【0050】
そして、延伸する際の予熱温度は180〜250℃とすることが必要であり、中でも200〜245℃とすることが好ましく、さらに好ましくは210〜240℃である。予熱温度が180℃未満では、フィルム中の水分を蒸発させる熱量が少なくなる。そのため、延伸応力が高くなり、ボーイングが大きくなったり、空隙率が高くなったりする。また、延伸に必要とするフィルム温度が得られにくくなるため、ネック延伸が発生したり、切断が多発したりする。250℃を超えた場合、吸水した水分の蒸発速度が速くなりすぎる。そのため、フィルム温度が高くなりすぎるため、ポリアミドの結晶化が進み延伸が困難になる。
【0051】
なお、ポリアミドフィルムを上記の温度に予熱するには、延伸機の予熱ゾーンを走行するフィルムに吹き付ける熱風の温度を上記の温度範囲に設定することによって行うことが好ましい。そして、ポリアミドフィルムが予熱ゾーンを走行する時間(予熱時間)は、0.5〜5秒間とすることが好ましい。
【0052】
延伸温度については、170〜230℃が必要であり、180〜220℃とすることが好ましく、さらに好ましくは190〜210℃である。延伸温度が170℃未満では、TD方向で均一なフィルム温度が得られにくく、ネック延伸や厚み不良が発生したり、切断が多発したりする。一方、延伸温度が230℃を超えた場合、フィルム温度が高くなりすぎるためドロー延伸となり、分子配向がされにくいため衝撃強度や強伸度が低下する。
【0053】
そして、二軸延伸されたフィルムを引き続き熱処理して二軸配向を固定させる。この熱固定の温度条件は、温度180〜230℃が必要であり、好ましくは195〜220℃であり、さらに好ましくは205〜215℃である。熱固定の処理時間は1〜10秒間とすることが好ましく、幅方向の弛緩率は0.3〜7%の範囲とすることが好ましい。このような熱固定(弛緩熱処理)を行うことによって、マット調バリアポリアミドフィルムの寸法安定性を高めることができる。
【0054】
熱固定の処理温度が180℃未満であるとフィルムの寸法安定性の悪化、熱水収縮率の斜め差が2.5%を超えたり、ポリ塩化ビニリデン系共重合体からなるバリア層(Y)の溶解融着性が劣ることによるバリア性の低下、ポリアミドフィルム(X)とバリア層(Y)の密着性が低下する。一方、熱固定の処理温度が230℃を超えるとフィルムの熱劣化が発生し、衝撃強度や強伸度が低下する。さらには熱固定処理中に溶断するなどのトラブルにより操業性が低下したり、ポリ塩化ビニリデン系共重合体の結晶核がすべて溶解されてしまい、耐ブラッシング効果に劣るものとなる。
【0055】
上記のような延伸温度、熱固定温度とするには、延伸機の延伸ゾーンや熱固定ゾーンを走行するフィルムに吹き付ける熱風の温度を上記の温度範囲に設定することによって行うことが好ましい。
【0056】
本発明のマット調バリアポリアミドフィルムのポリアミドフィルム(X)またはバリア層(Y)に、必要に応じて、コロナ放電処理等の表面処理を施してもよい。
【0057】
本発明のマット調バリアポリアミドフィルムは、シーラント等の樹脂層を積層することにより、種々の積層フィルムとすることができる。
【0058】
シーラントとして用いる樹脂としては、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸/メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸/メタクリル酸エステル共重合体、ポリ酢酸ビニル系樹脂等が挙げられ、ヒートシール強度や材質そのものの強度が高いポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン/ポリプロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂が好ましい。これらの樹脂は、単独で用いても、また他の樹脂と共重合や溶融混合して用いても、さらに酸変性等が施されていてもよい。
【0059】
シーラント層をマット調バリアポリアミドフィルムにラミネートする方法としては、シーラント樹脂からなるフィルムまたはシートを、接着剤を介して、マット調ガスバリアポリアミドフィルムにラミネートする方法や、シーラント樹脂をマット調ガスバリアポリアミドフィルムに押出ラミネートする方法等が挙げられる。前者の方法においては、シーラント樹脂からなるフィルムまたはシートは、未延伸状態であっても低倍率の延伸状態でもよいが、実用的には、未延伸状態であることが好ましい。
なお、マット調バリアポリアミドフィルムに接着剤を塗布する際には、ポリアミドフィルム(X)またはバリア層(Y)のどちらの面でもかまわないが、ラミネート後のフィルムを包装袋に加工した際に、ポリアミドフィルム(X)が外側となるように、バリア層(Y)の面に接着剤を塗布するほうが好ましい。
【0060】
シーラント層の厚みは、特に限定されないが、20〜100μmであることが好ましく、40〜70μmであることがより好ましい。
【0061】
本発明のマット調バリアポリアミドフィルムを用いて包装用袋を作製することができ、この包装用袋は、例えば、飲食品、果物、ジュ−ス、飲料水、酒、調理食品、水産練り製品、冷凍食品、肉製品、煮物、餅、液体ス−プ、調味料、その他の各種の飲食料品、液体洗剤、化粧品、化成品といった内容物を充填包装することができる。
【実施例】
【0062】
次に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例および比較例の評価に用いた原料および測定方法は次のとおりである。
【0063】
(1)光沢度(%)
得られた複層構成のポリアミドフィルムの表面を、村上色彩技術研究所社製(GROSS METER GM−26 PRO)を用い、JIS K 7105に準じて、入射角20°で測定した。
(2)空隙率(%)
得られた複層構成のポリアミドフィルムを用い、イオンポリッシング(IP)によりフィルム断面を作製し、FE−SEMにて断面観察を実施した。そのSEM画像を、画像解析ソフト(ImageJ.)を用いて、画像処理(閾値95設定の自動2値化処理)を施し、フィルム全体の断面の空隙面積の総和を算出し、下記式より空隙率(%)を求めた。
空隙率(%)=(空隙面積の総和(μm
2)/フィルム全体の断面積(μm
2))×100
(3)衝撃強度(J)
得られた複層構成のポリアミドフィルムを用い、フィルムインパクトテスター(東洋精機社製)を使用し、20℃の雰囲気下で、直径7cmのリング状フィルムの打ち抜きに要した衝撃強度を測定することにより行った。測定には、重量30kg、直径12.7mm(0.5インチ)のインパクトヘッドを用いた。
【0064】
(4)熱水収縮率の斜め差
前記の方法で測定、算出した。
(5)酸素透過度
得られた複層構成のポリアミドフィルムを用い、モコン社製酸素バリア測定器(OX−TRAN 2/20MH)を用いて、JIS K7126−2法に基づいて、温度20℃、相対湿度65%の雰囲気下における酸素透過度を測定した。
(6)水蒸気透過度
得られた複層構成のポリアミドフィルムを用い、JIS K−7129に記載の方法に準じて、温度40℃、湿度90%RHにおいて、モコン社製PERMATRAN−W 3/33により水蒸気透過度を測定した。単位はg/(m
2・day)。
【0065】
(7)製造方法における水分率(%)
吸水後の未延伸フィルムから切り出したサンプル片の質量Wと、それを減圧下80℃で24時間乾燥した後の質量Wdから次式により求めた。
水分率(%)=(W−Wd)/W×100
(8)引張強伸度
得られた複層構成のポリアミドフィルムを用い、オートグラフAG-1(島津製作所社製)を用いて測定した。試験片は幅10mm、長さ150mmの短冊状で、使用セルは100kg、試験速度は500mm/min、チャック間隔は100mmであった。
引張強度、引張伸度ともに、試験片は、フィルムの長さ方向(MD)と幅方向(TD)についてそれぞれ採取した。
【0066】
(9)厚み測定
得られた複層構成のポリアミドフィルムを用い、0.5μm以上の厚みは、市販のデジタル厚み計(接触式厚み計、商品名:超高精度デシマイクロヘッド MH−15M、日本光学社製)により測定した。一方、0.5μm未満の厚みは、重量分析法(一定面積のフィルムの重量測定値をその面積で除し、更に組成物の比重で除した)により測定した。
(10)延伸性
各例で示す製造条件にて24時間連続して製造を行った際の生産性を評価した。その際の延伸時に生じたフィルムの破断回数が1回以下の場合は○、切断回数が2〜4回の場合を△、切断回数が5回以上の場合を×と評価した。評価×の条件については、操業性が非常に低く、製品の安定生産は困難である。
【0067】
[使用原料]
[シリカ含有マスターチップ(M1)]
容積30リットルのオートクレーブに、10kgのε−カプロラクタムと、1kgの水と、500gのシリカ(富士シリシア化学社製、製品名:サイリシア310P、平均粒径2.7μm)を投入し、100℃に保持して、その温度で反応系内が均一になるまで撹拌した。引き続き、撹拌しながら260℃に加熱し、1.5MPaの圧力を1時間維持し、さらに1時間かけて常圧まで放圧し、さらに1時間重合した。重合が終了した時点で、上記反応生成物をストランド状に払い出し、冷却、固化後、切断して、ポリアミド樹脂からなるペレットを得た。次いで、このペレットを95℃の乾熱で8時間精錬し、未反応モノマー等を除去した後、乾燥した。得られたポリアミド樹脂の相対粘度は2.7、シリカ含有量は5.2質量%であった。
【0068】
[シリカマスターチップ(M2)]
容積30リットルのオートクレーブに、10kgのε−カプロラクタムと、1kgの水と、1.5kgのシリカ(富士シリシア化学社製、製品名:サイリシア310P、平均粒径2.7μm)を投入し、100℃に保持して、その温度で反応系内が均一になるまで撹拌した。引き続き、撹拌しながら260℃に加熱し、1.5MPaの圧力を1時間維持し、さらに1時間かけて常圧まで放圧し、さらに1.5時間重合した。重合が終了した時点で、上記反応生成物をストランド状に払い出し、冷却、固化後、切断して、ポリアミド樹脂からなるペレットを得た。次いで、このペレットを95℃の乾熱で8時間精錬し、未反応モノマー等を除去した後、乾燥した。得られたポリアミド樹脂の相対粘度は2.6、シリカ含有量は15.6質量%であった。
【0069】
・バリア層形成用塗料(ラテックス)(1)
ガラスライニングを施した耐圧反応容器中に水85質量部、アルキルスルホン酸ソーダ0.15質量部および過硫酸ソーダ0.10質量部を仕込み、脱気した後内容物の温度を55℃に保った。これとは別の容器に塩化ビニリデン97質量部とアクリル酸メチル2質量部とアクリル酸1質量部を計量混合してモノマー混合物を作製した。前記反応容器中にモノマー混合物の10質量部を仕込み攪拌下反応を進行させた。反応容器の内圧が降下することにより反応がほとんど進行したことを確認した後、15質量%水溶液のアルキルスルホン酸ソーダ10質量部を圧入し、その後、モノマー混合物の残り全量を15時間にわたって連続して定量添加した。得られたモノマー混合物に、20℃における液表面張力が42mN/mとなるように15質量%水溶液のアルキルスルホン酸ソーダを加え、バリア層形成用塗料(I)を得た。
【0070】
・バリア層形成用塗料(ラテックス)(2)
旭化成ケミカルズ社製のL536B(固形分濃度50質量%)のポリ塩化ビニリデンラテックス
【0071】
実施例1
ナイロン6樹脂(ユニチカ社製、商品名:A1030BRF、相対粘度3.1)に、表1で示すシリカ含有量になるように、シリカ含有マスターチップM1を混合し、シリンダ温度260℃に設定した単軸押出機に供給し、Tダイより押出し、設定温度20℃の冷却ロールに接触させて、厚さ150μmの未延伸フィルムを得た。得られた未延伸フィルムが、水分率3.5%となるように、65℃に調整した温水層に浸漬した。
次いで、未延伸フィルムの片面に、バリア層形成用塗料(1)をエアーナイフコーティング法により塗布し、温度110℃の赤外線照射機により30秒間乾燥処理を行って、バリア層形成用塗料中の水分を蒸発乾燥した。
【0072】
次に、このバリア層形成用塗料(1)を塗布した未延伸フィルムに230℃の熱風を1秒間吹き付けることにより予熱を行い、温度200℃に調整したテンター式の同時2軸延伸機でMD方向に3倍、TD方向に3.3倍延伸した。続いて、延伸シートに210℃の熱風を3秒間吹き付けながら、TD方向に5%弛緩して、熱固定処理を行った。そして、冷却を行い、厚さ15μmのポリアミドフィルム(X)、厚み1.2μmのバリア層(Y)から成る複層構成のポリアミドフィルムを得た。
【0073】
実施例2〜9、比較例5〜11
未延伸シートの水分率、予熱温度、延伸温度、熱固定温度を表1に示す値に変更した以外は、実施例1と同様にして厚さ15μmのポリアミドフィルム(X)、厚み1.2μmのバリア層(Y)から成る複層構成のポリアミドフィルムを得た。
【0074】
実施例10
表1で示すシリカ含有量になるように、シリカ含有マスターチップM1の混合量を変更した以外は、実施例2と同様にして厚さ15μmのポリアミドフィルム(X)、厚み1.2μmのバリア層(Y)から成る複層構成のポリアミドフィルムを得た。
【0075】
実施例11、12、比較例12
シリカ含有マスターチップM2を用い、表1に示すシリカ含有量となるように、シリカ含有マスターチップM2の混合量を変更した以外は、実施例2と同様にして厚さ15μmのポリアミドフィルム(X)、厚み1.2μmのバリア層(Y)から成る複層構成のポリアミドフィルムを得た。
【0076】
実施例13
未延伸シートの厚みを250μmとなるように変更した以外は、実施例2と同様に行い、厚さ25μmのポリアミドフィルム(X)、厚み1.2μmのバリア層(Y)から成る複層構成のポリアミドフィルムを得た。
【0077】
実施例14
バリア層形成用塗料(2)を使用した以外は、実施例2と同様に行い、厚さ15μmのポリアミドフィルム(X)、厚み1.2μmのバリア層(Y)から成る複層構成のポリアミドフィルムを得た。
【0078】
実施例15〜18、比較例15
バリア層(Y)の厚みを、表1にした以外は、実施例2と同様に行い、厚さ15μmのポリアミドフィルム(X)、バリア層(Y)から成る複層構成のポリアミドフィルムを得た。
【0079】
比較例1
シリカ含有マスターチップM1を混合しなかった以外は、実施例2と同様にして厚さ15μmのポリアミドフィルム(X)、厚み1.2μmのバリア層(Y)から成る複層構成のポリアミドフィルムを得た。
【0080】
比較例2
未延伸フィルムに、バリア層形成用塗料(1)を塗布しなかった以外は、実施例2と同様にして厚さ15μmのポリアミドフィルムを得た。
【0081】
比較例3
未延伸シートを温水層に浸漬することなく延伸を行った以外は、実施例1と同様に行い、厚さ15μmのポリアミドフィルム(X)、厚み1.2μmのバリア層(Y)から成る複層構成のポリアミドフィルムを得た。
【0082】
比較例4
未延伸シートの厚みを250μmとなるように変更した以外は、比較例3と同様に行い、厚さ25μmのポリアミドフィルム(X)、厚み1.2μmのバリア層(Y)から成る複層構成のポリアミドフィルムを得た。
【0083】
比較例13
ナイロン6樹脂(ユニチカ社製、商品名:A1030BRF、相対粘度3.1)に、表1で示すシリカ含有量になる様にシリカ含有マスターチップM1を混合し、シリンダ温度260℃に設定した単軸押出機に供給し、Tダイより押出し、設定温度20℃の冷却ロールに接触させて、厚さ150μmの未延伸シートを得た。次に、この未延伸フィルムを周速の異なる加熱ローラ群からなる縦延伸機により、温度55℃、延伸倍率2.5でMD方向に延伸した。次に、縦延伸したフィルムに、バリア層形成用塗料(1)をエアーナイフコーティング法により塗布し、温度110℃の赤外線照射機により30秒間乾燥処理を行って、バリア層形成用塗料中の水分を蒸発乾燥した。
【0084】
次に、このバリア層形成用塗料(1)を塗布したフィルムをテンターに導入し、予熱部にて60℃の熱風を1秒間吹き付けることにより予熱を行い、温度80℃に調整した延伸部にて延伸倍率4倍でTD方向に延伸した。続いて、延伸シートに210℃の熱風を3秒間吹き付けながら、TD方向に5%弛緩して、熱固定処理を行った。そして、冷却を行い、厚さ15μmのポリアミドフィルム(X)、厚み1.2μmのバリア層(Y)から成る複層構成のポリアミドフィルムを得た。
【0085】
比較例14
延伸倍率を、MD方向3倍、TD方向3.3倍に変更した以外は比較例13と同様に行い、厚さ15μmのポリアミドフィルム(X)、厚み1.2μmのバリア層(Y)から成る複層構成のポリアミドフィルムを得た。
【0086】
実施例1〜18、比較例1〜15における製造条件と、得られた複層構成のポリアミドフィルムの特性値、延伸性の評価結果を表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
実施例1〜18においては特定の製造条件を満足するものであったため、得られた複層構成のポリアミドフィルムは、本発明で規定する特性値(1)〜(6)の全てを満足するものであり、表面が艶消し状態であるマット調を有し、かつ、衝撃強度、寸法安定性、酸素バリア性、水蒸気バリア性ともに優れたものであった。
【0089】
一方、比較例1ではシリカを含有しないポリアミド樹脂を用いたため、得られた複層構成のポリアミドフィルムは光沢度が高く、マット調を有するものではなかった。
比較例2は、バリア層(Y)を形成していないため、必要とする酸素透過度及び水蒸気透過度が得られなかった。比較例3〜5では、未延伸フィルムの水分率が低すぎたため、延伸応力が高くなり、得られた複層構成のポリアミドフィルムは、熱水収縮率斜め差が大きくなり、空隙率が高く、衝撃強度が低いものとなった。さらには延伸性も悪かった。比較例6〜11では、予熱温度、延伸温度、熱固定温度のいずれかが好適な範囲ではなかったため、本発明で規定する特性値(2)〜(4)を満足するものではなかった。また、比較例12では、シリカの含有量が多いポリアミド樹脂を用いたため、空隙率が大きくなり、衝撃強度の低いものとなった。さらには、引張強度や引張伸度の低いものとなり、延伸性も悪かった。比較例13〜14では、未延伸フィルムの水分率が低く、かつ予熱温度、延伸温度ともに低いものであったため、熱水収縮率斜め差が大きくなり、空隙率が高いものであった。比較例15では、バリア層(Y)の厚みが、薄すぎたため、得られた複層構成のポリアミドフィルムは、本発明で規定する特性値(5)〜(6)を満足するものではなかった。