(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
  以下、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の塗膜転写具1の第1実施形態を示す斜視図であり、(a)は上方斜視図(b)は下方斜視図である。
図2は、
図1に示す塗膜転写具1の上方斜視分解図である。
図3は、
図1に示す塗膜転写具1の下方斜視分解図である。
 
【0018】
  なお、本明細書において、塗膜転写具1の長手方向における転写が行われる方向を前、逆方向を後として説明する。
  また、長手方向と直交する方向であって、後述の転写ヘッド5において塗膜転写前の転写テープ3が通る側を下、塗膜転写後の転写テープ3が通る側を上として説明する。
  また、前後方向と上下方向と直交する方向であって、塗膜転写具1を正面(前面)からみたときの左右となる方向を左右方向として説明する。
 
【0019】
  塗膜転写具1は、右筐体部材21と左筐体部材22とからなる1対の筐体部材により構成される筐体2を備える。筐体2の内部(右筐体部材21と左筐体部材22との間)には、転写テープ3が巻かれた供給リール4と、この供給リール4から引出される転写テープ3を被転写面に転写する転写ヘッド5の一部と、転写後の転写テープ3を巻き取る巻取リール6と、供給リール4と巻取リール6を連動させる動力伝達機構16(
図3に図示)とが配置されている。
 
【0020】
  図2に示すように左筐体部材22の内面には、2本の結合筒2bと、供給リール用支軸8と、巻取リール用支軸13と、ベース部材用支軸18とが、右筐体部材21に向かって延びるように立設されている。
 
【0021】
  一方、
図3に示すように右筐体部材21の内面には、結合筒2bが外挿される2つの結合筒受部2b1と、供給リール用支軸8が内挿される供給リール用支軸受部8aと、巻取リール用支軸13が内挿される巻取リール用支軸受部13aと、ベース部材用支軸18が外挿されるベース部材用支軸受部18aとが設けられている。
 
【0022】
  左筐体部材22の内面に設けられた2本の結合筒2bが、右筐体部材21の内面に設けられた2つの結合筒受部2b1に外挿されることによって左右1対の右筐体部材21と左筐体部材22とが結合されて筐体2が形成される。
 
【0023】
  左筐体部材22の内面に設けられた供給リール用支軸8は、供給リール用ギア7と、供給リール4と、フランジ20とが回転可能に外挿された状態で供給リール用支軸受部8aに内挿される。
 
【0024】
  供給リール用ギア7は、端部に係止部7aが設けられた筒状の回転軸7bを備える。回転軸7bには、圧縮スプリング9、環状の第1スペーサ10、環状の弾性体ストッパ11、環状の第2スペーサ12が順次挿入され、係止部7aによって抜け止めされている。
 
【0025】
  また、弾性体ストッパ11の外周面には、係止突起11aが設けられている。一方、供給リール4の内周面には、その係止突起11aが係止するリブ状被係止部4aが設けられている。そして、係止突起11aがリブ状被係止部4aに係止することにより、弾性体ストッパ11と供給リール4とが一体的に回転する。
 
【0026】
  供給リール用ギア7の回転軸7bの上半部は、外周面がほぼ等間隔に切削されて4箇所の平面部7cが形成されている。一方、第1スペーサ10と第2スペーサ12の内孔10a、12aは平面視において角部が弧状の四辺形状となっている。
  回転軸7bの平面部7cと、第1スペーサ10及び第2スペーサ12の内孔10a、12aの四辺形の辺とが接することにより、第1スペーサ10及び第2スペーサ12が、供給リール用ギア7の回転軸7bに回転不能に嵌合される。これにより供給リール用ギア7と圧縮スプリング9と第1スペーサ10と第2スペーサ12とが一体的に回転する。
 
【0027】
  左筐体部材22の内面に立設された巻取リール用支軸13には、巻取リール6が外挿されている。
図3に示すように、巻取リール6の左側側面には巻取リール用ギア14が設けられている。供給リール用ギア7と巻取リール用ギア14間には、小ギア15が設けられている。小ギア15は、供給リール用ギア7と巻取リール用ギア14とに歯合している。
 
【0028】
  塗膜の転写作業により、供給リール4に巻かれた転写テープ3が繰出されると、供給リール4の回転力は、第2スペーサ12の側面と弾性体ストッパ11の側面との間、弾性体ストッパ11の側面と第1スペーサ10の側面との間、及び供給リール4の側面と供給リール用ギア7と間の側面に生ずる摩擦力によって、供給リール用ギア7に伝達される。
 
【0029】
  供給リール用ギア7が回転すると、供給リール用ギア7、小ギア15、巻取リール用ギア14からなる動力伝達機構16を介して、巻取リール6に回転力が伝達される。
 
【0030】
  図4は、第1実施形態の転写ヘッド5の拡大図であり、(a)は上方斜視図、(b)は下方斜視図、(c)は平面図、(d)は(c)におけるd−d線矢視縦断面図、(e)は右側面図、(f)は前面図、(g)は背面図である。
  
図5は、筐体2内に収容された収容部材であるベース部材17に転写ヘッド5を取付けた状態を示す図面であり、(a)は上方斜視図、(b)は右側面図、(c)は平面図、(d)は(b)におけるd−d線矢視横断面図、(e)は(d)におけるe−e線矢視縦端面図をベース部材17が鉛直となる方向で示した図面、(f)は転写ヘッド5が回動した状態の、(e)に対応する縦端面図である。
  
図6は、転写ヘッド5における本体部5bと押圧部5cを、後述の非弾性体として形成したときの非弾性体の程度を拡大して示す図面であり、
図5(c)におけるVI一VI線矢視の拡大縦断面図である。
 
【0031】
  転写ヘッド5は、本体部5bと、本体部5bから後方に延びる軸部5aと、本体部5bの左右に互いに離間して配置される右テープガイド51と左テープガイド52と、を備える。
 
【0032】
  本体部5bは、
図4(c)に示すように、平面視でT字型に形成される。本体部5bの前端には、左右に延びる押圧部5cが設けられている。押圧部5cは、塗膜の付いた転写テープ3を間に挟んだ状態で被転写面に押圧される部分である。
  押圧部5cは、後述するように、被転写面に接触すると、本体部5bが軸部5aを中心として回動(以下、左右に回動という)することによって被転写面と平行になる。その状態で、間に転写テープ3を挟んだ状態で被接触面に対して押圧されて被接触面上を移動すると、転写テープ3に保持されている塗膜が被転写面に転写される。
 
【0033】
  なお、転写ヘッド5における、少なくとも本体部5bと押圧部5cとは、非弾性体として形成されていることが好ましい。非弾性体として形成することにより、被転写面に対して塗膜を一層均一且つ良好に転写することができる。
  本発明における非弾性体とは、転写ヘッド5の押圧部5cを被転写面に当接して、使用時における通常の転写荷重を負荷したときに、本体部5bの取付端を基点とする、
図6における変形角度θが、5度以下、さらには3度以下のものをいう。
 
【0034】
  軸部5aは、本体部5bから後方に延びる棒状部材で、ベース部材17に対して、所定の角度範囲で回動自在に取付けられている。
  軸部5aの回動により、転写ヘッド5の押圧部5cを左右に回動させて、被転写面に対して容易に平行とすることができる。したがって、転写ヘッド5の押圧部5cを被転写面と平行にするために、使用者が転写ヘッド5を強く押圧して押圧部5cを弾性変形させる必要がない。ゆえに、軽い転写荷重で均一に塗膜を転写することができる。
  なお、本実施形態では転写ヘッド5の軸部5aは、ベース部材17に取り付けられる形態について説明するが、これに限らず、筐体2に直接取り付けられてもよい。
 
【0035】
  また、本体部5bの左右に、右テープガイド51と左テープガイド52とからなる一対のテープガイドが、互いに平行となるように配置されている。
  右テープガイド51と左テープガイド52とは、それぞれ、本体部5bの上部に位置する上側テープガイド51u、52uと、下部に位置する下側テープガイド51d、52dとを備える。
 
【0036】
  図4(f)、(g)に示すように左右に設けられた一対の下側テープガイド51d、52dの互いの間隔ddは、例えば、転写テープ3の幅に対して−0.03mm〜+0.3mmである。
  
図4(d)、(e)等に示すように下側テープガイド51d、52dの前端は、上側テープガイド51u、52uの前端よりも後方に位置し、押圧部5cから一定の距離離れている。
  そして、下側テープガイド51d、52dの前辺は、前端から後方に向かうにつれて下方に向かうように斜めに傾いており、下側テープガイド51d、52dは略直角二等辺三角形形状を有する。
  このように、下側テープガイド51d、52dの前端が押圧部5cから一定の距離離れ、さらに下側テープガイド51d、52dの前辺が斜めに形成されているため、押圧部5cの被転写面との接触が妨げられず、下側テープガイド51d、52dは転写の支障とならない。
 
【0037】
  左右に設けられた一対の上側テープガイド51u、52uの前端における間隔duは、下側テープガイド51d、52dの間隔ddよりも広く、例えば、テープの幅に対して0.5mm以上であることが好ましく、1mm以上3mm以下であることがより好ましい。
  上側テープガイド51u、52uは、その前端が下側テープガイド51d、52dよりも前側の押圧部5c近傍にある。上側テープガイド51u、52uの前辺は、前端から上方に向かうにつれて後方に向かうような円弧状であって、上側テープガイド51u、52uは扇型形状を有する。
  本実施形態では、上側テープガイド51u、52uの前端は、押圧部5cの前端のわずかに後方(つまり、押圧部5cからほとんど後退していない位置)に位置している。
  ここで、上側テープガイド51u、52uの前端とは、上側テープガイド51u、52uにおいて、テープ経路に対応する位置のうち最も前に位置する部分を示す。
 
【0038】
  なお、上側テープガイド51u、52uの前端の間隔duは、下側テープガイド51d、52dのテープ経路に対応する位置における最も間隔が狭い位置の間隔よりも広い。また、上側テープガイド51u、52uの前端の間隔duは、下側テープガイド51d、52dのテープ経路に対応する位置における最も間隔が広い位置の間隔よりも広いことが好ましい。
 
【0039】
  転写テープ3は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等のプラスチックフィルムまたは紙からなる厚さ3μm〜60μmの長尺状体の片面もしくは両面にシリコーン樹脂等の離型層を形成して基材とし、この基材の片面に、公知の方法で粘着剤等を塗布することにより作製される。
  粘着剤としては、アクリル樹脂系、ビニル樹脂系、ロジン系、ゴム系等の粘着剤、あるいはこれらの粘着剤に架橋剤、粘着付与剤、可塑剤、老化防止剤、充填剤、増粘剤、pH調整剤、消泡剤等の助剤を適宜配合したものが用いられる。具体的には、基材の片面に粘着層を設けたものが粘着テープ(テープ糊)、基材の片面に隠蔽力のある顔料とバインダとしての高分子樹脂等からなる隠蔽層を設け、その上に粘着層を設けたものが修正テープ、基材の片面に蛍光着色層を設け、その上に粘着層を設けたものが蛍光テープである。基材の片面に形成される層の厚さは、例えば、乾燥後において0.3μm〜60μmである。
  また、一般に、転写テープ3としては、2mm〜15mm程度の幅のものが使用される。
 
【0040】
  転写ヘッド5が取り付けられるベース部材17は、
図5に示すように側面視において後端の下半部が斜めに切断された前後方向に長い板状体であり、周縁の一部には補強用のリブ17aが設けられている。ベース部材17の前端近傍には、支軸用挿通孔17bが形成されている。
 
【0041】
  ベース部材17の支軸用挿通孔17bは、左筐体部材22の内面に立設されたベース部材用支軸18に挿通される。これによりベース部材17は、ベース部材用支軸18を中心として、所定の範囲で回動(以下、上下に回動という)可能となっている。
 
【0042】
  支軸用挿通孔17bの後方には係止歯用挿通孔17cが設けられている。係止歯用挿通孔17cの下部には、係止歯19に係止する弾性ラチェット爪17dが設けられている。
  一方、巻取リール6には、係止歯19(
図2参照)が形成されている。
  そして、係止歯用挿通孔17cに巻取リール6に形成された係止歯19が挿通され、巻取リール6の逆回転が制止され、不使用時における転写テープ3の緩みが防止される。
 
【0043】
  図2、
図3に示すように、ベース部材17の前端には、転写ヘッド5の軸部5aを取付けるためのヘッド受け部17eが設けられている。
  ヘッド受け部17eは、ベース部材17と一体に成形された受け部本体17fと、別体のカバー材17gとを備える。
  受け部本体17fには、前方と左側が開口した開口部17hが設けられている。開口した左側から開口部17h内に転写ヘッド5の軸部5aを挿入した後に、カバー材17gを受け部本体17fに装着することにより、転写ヘッド5がベース部材17に取付けられる。
 
【0044】
  図5(c)から(f)に示すように、受け部本体17fとカバー材17gには、それぞれ縦溝171f,171gが設けられている。一方、転写ヘッド5の軸部5aには、突起5eが設けられている。突起5eは、縦溝171f,171gに摺動自在に挿入され、転写ヘッド5は、所定範囲で左右に回動自在、且つ脱落することのないように、ベース部材17のヘッド受け部17eに取付けられる。
 
【0045】
  図5(e)は、転写ヘッド5が左右に回動していない状態の端面図であり、
図5(f)は、転写ヘッド5が左右に回動した状態の端面図である。
  
図5(f)に示すように、転写ヘッド5が左右に回動すると、軸部5aの角部が、ベース部材17のヘッド受け部17eにおける開口部17hの内壁面に当接し、転写ヘッド5の左右に回動角度が制限される。
 
【0046】
  また、
図5(a)、(b)等に示すように係止歯用挿通孔17cは、ベース部材17の上下の回動に支障とならないように、長孔に形成されている。
 
【0047】
  ベース部材17における供給リール4と対面する左側の後部には、
図3に示すように、供給リール4の回転を制止するための回転制止部としての係止爪17jが設けられている。
  一方、供給リール4には、係止爪17jが係止可能な被係止歯20a(
図2参照)が円周縁に設けられたフランジ20が一体的に取付けられている。フランジ20は、供給リール4の成形時に一体的に形成されてもよい。本明細書においては、フランジ20が供給リール4に取付けられる場合も含めて、供給リール4にフランジ20が一体的に形成されると称する。また、一体的に形成とは、供給リール4とフランジ20とが一体として回転することも意味する。
 
【0048】
  図7は、フランジ20を供給リール4に組付ける形態を示す図であり、(a)は組付け前の上方斜視図、(b)は組付け後の上方斜視図、(c)は(b)におけるc−c線矢視縦断面斜視図である。
  フランジ20の左面には、切欠き20cを有する取付片20bが設けられている。この取付片20bの切欠き20cに、供給リール4のリブ状被係止部4aを係止させることにより、供給リール4とフランジ20とは一体として回転するように組付けられる。
 
【0049】
  図8(a)は塗膜転写具1の使用前の状態を示す右側面図、(b)は使用時の状態を示す右側面図である。なお、(a)、(b)においては、ベース部材17を一部切欠いて係止爪17jを示してある。
 
【0050】
  ベース部材17における支軸用挿通孔17bの周囲には、ばね用ボス17kが設けられている。
 
【0051】
  ばね用ボス17kには、ばね部材21が取り付けられている。ばね部材21は弾性復帰機構として、ベース部材17の係止爪17jを、フランジ20の被係止歯20aに係止させる方向に回転するように付勢する。
 
【0052】
  塗膜転写具1の不使用時においては、
図8(a)に示すように、ばね部材24の弾性力により、ベース部材17は、ベース部材用支軸18を中心として上方向(右側から見て反時計回り)に付勢される。
  そうすると係止爪17jがフランジ20の被係止歯20aに係止し、フランジ20と一体的に回動する供給リール4の回転が制止される。
 
【0053】
  また、ベース部材17の弾性ラチェット爪17dは、巻取リール6と一体的に回転する係止歯19と係止しており、転写テープ3の緩みを防止するための巻取リール6の逆回転も制止されている。
 
【0054】
  塗膜転写具1の使用時においては、(b)に示すように、転写ヘッド5の押圧部5cが被転写面Sに押圧される。
  そうすると、ベース部材17がフランジ20の被係止歯20aと係止爪17jとの係止が解除される方向上下に回動して供給リール4が回転可能となり、供給リール4に巻装された転写テープ3の引出しができるようになる。
 
【0055】
  また、ベース部材17の上下の回動によって、弾性ラチェット爪17dと係止歯19との係止も解除され、巻取リール6の回転抵抗を軽減することができるとともに、弾性ラチェット爪17dが当接状態のときに生ずる音の発生を防止することができる。
 
【0056】
  筐体2の前方の下部にはヘッドカバー23が回転可能に取り付けられており、使用後は、転写テープ3の塗膜を保護するために、転写ヘッド5の下方を、ヘッドカバー23で覆うことができる。
 
【0057】
  さらに、ベース部材17の前端に取付けられた転写ヘッド5の前端から、ベース部材用支軸18までの距離L1(
図8(a)参照は、ベース部材用支軸18から係止爪17jまでの距離L2よりも短くなるように設定してある。
  これにより、係止爪17jを被係止歯20aとの係止から解除するための転写ヘッド5の可動量を少なくすることができ、良好な使用感で塗膜転写具1を使用することができる。
 
【0058】
  本実施形態において、転写ヘッド5は左右に回動可能であり、また右テープガイド51及び左テープガイド52が本体部5bの側面に沿って配置されている。右テープガイド51及び左テープガイド52は、それぞれ上側テープガイド51u、52uと、下側テープガイド51d、52dとを備える。
 
【0059】
  そして、押圧部5cに近い側にある上側テープガイド51u、52uの間の幅duが、押圧部5cから離れた側にある下側テープガイド51d、52dの間の幅ddより広い。
  下側テープガイド51d、52dの間の幅ddは、転写テープ3の幅と略等しく、転写テープ3の幅に対して−0.03mm〜+0.3mmである。
 
【0060】
  本実施形態によると、塗膜転写具1の使用時において、転写テープ3が繰り出されて下側テープガイド51d、52dの間を通る際、転写テープ3は、下側テープガイド51d、52dによって左右へのずれが規制される。
  ここで、転写ヘッド5が左右に回動した場合、下側テープガイド51d、52dの間隔ddは転写テープ3の幅と略等しいので、下側テープガイド51d、52dが転写テープ3と接触し、転写テープ3の縁部が若干よれる(撓む、変形する、歪む)可能性がある。
  しかし、転写テープ3の縁部は若干よれたとしても、転写テープ3が下側テープガイド51d、52dと接触する位置からさらに繰り出されて前方に移動すると、転写テープ3の復元力や張力によって元に戻る。
 
【0061】
  つぎに、転写テープ3の押圧部5c通過時について説明するが、まず、比較形態として、上側テープガイド51u、52uの間の幅が、転写テープ3の幅と略同じだった場合について説明する。
  比較形態では、転写テープ3が押圧部5cを通過する際に、転写ヘッド5が左右に回動して傾いていると、押圧部5cの近傍に設けられている上側テープガイド51u、52uと転写テープ3の縁部とが接触して、転写テープ3がよれる可能性がある。
  このように押圧部5c近傍において転写テープ3がよれると、押圧の際に転写テープ3の縁部が折れ曲がった状態で転写される可能性がある。
  そうすると、塗膜において被転写面Sと接しない部分が発生し、その部分が被転写面Sに転写されず、塗膜の幅が狭くなったり、また、塗膜に一部欠損が生じたりする可能性がある。
 
【0062】
  しかし、本実施形態では、押圧部5c近傍に配置された上側テープガイド51u、52uの互いの幅が、下側テープガイド51d、52dの互いの幅よりも広い。したがって、転写ヘッド5が傾いても、上側テープガイド51u、52uとが接触する可能性が低い。
  ゆえに、転写テープ3を被転写面に転写する際に、塗膜の幅が狭くなったり一部欠損が生じたりする可能性が低減する。
 
【0063】
  また別の比較形態として、上側テープガイド51u、52uの互いの幅のみならず下側テープガイド51d、52dの互いの間の幅も広くすることも考えられる。しかし、この場合、下側テープガイド51d、52dを通過する際の転写テープ3の左右方向のずれ幅が大きくなりうる。
  そうすると、押圧部5cでの転写テープ3の左右方向へのずれ幅がさらに大きくなる。そのままの状態で放置した場合、次に使う際に、押圧部5cの中心から転写テープ3が大きくずれた状態から使用を開始するので、非常に使いにくい。
 
【0064】
  これに対して、本実施形態の場合、上述のように下側テープガイド51d、52dの幅は、転写テープ3の幅と略同様で、転写テープ3の左右へのずれが規制されている。したがって、押圧部5cでの転写テープ3の左右方向へのずれ幅が大きくなることがないので、次に使う場合も使用しやすい。
  また、転写テープ3が押圧部5cの中心から大きくずれていないため、転写が終わって転写ヘッド5の被転写面Sへの押圧力が解除されると、転写テープ3の復元力または張力によって、転写ヘッド5は規定位置(転写ヘッド5が回転していない位置、押圧部5cが、転写テープ3の進行方向に対して垂直となる方向)に戻されるので、より使い勝手が向上する。
 
【0065】
(第2実施形態)
  
図9は、本発明の第2実施形態の転写ヘッド5の拡大図であり、第1実施形態の
図4に相当し、(a)は上方斜視図、(b)は下方斜視図、(c)は平面図、(d)は(c)におけるd−d線矢視縦断面図、(e)は右側面図、(f)は前面図、(g)は背面図である。第2実施形態においては、第1実施形態と同様の部分には同一の符号を付し、同一の部分の説明は省略する。
 
【0066】
  第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、以下である。
  
図9(d)、(e)等に示すように、下側テープガイド51d、52dの前端だけでなく、上側テープガイド51u、52uの前端も、押圧部5cから所定距離、離れた後方位置にある。
  そして、上側テープガイド51u、52uの前端は、下側テープガイド51d、52dの前端よりもさらに後方に位置している。
 
【0067】
  また、
図9(f)、(g)に示すように、上側テープガイド51u、52uの間隔duは、下側テープガイド51d、52dの間隔ddと略等しく、例えば、転写テープ3の幅に対して−0.03mm〜+0.3mmである。
 
【0068】
  本実施形態においても、転写ヘッド5が左右に回動すると、転写テープ3の左右は、下側テープガイド51d、52dによって押さえられるので、転写テープ3の左右への移動が規制される。
  下側テープガイド51d、52dが転写テープ3と接触し、転写テープ3の縁部が若干よれる可能性があるが、転写テープ3が下側テープガイド51d、52dと接触する位置から移動すると、転写テープ3の変形は、転写テープの復元力や張力によって元に戻る。
 
【0069】
  転写テープ3が押圧部5cを通過する際、転写ヘッド5、すなわち押圧部5cが左右に回動して傾いている可能性がある。
  しかし、本実施形態では、上側テープガイド51u、52uが押圧部5cから離れた位置にあるので、押圧部5c近傍において、転写テープ3の縁部が上側テープガイド51u、52uとの接触によりよれる可能性が低い。
  したがって、押圧の際に転写テープ3の縁部が折れ曲がった状態で転写される可能性が低い。
 
【0070】
  転写テープ3は転写後に押圧部5cの位置からさらに繰り出されると、転写テープ3と略同じ幅の上側テープガイド51u、52uの間を通る。これにより転写テープ3の蛇行が防止される。
  また、本実施形態においても、転写が終わって転写ヘッド5の被転写面への押圧力が解除されると、転写テープ3の張力によって、転写ヘッド5は規定位置(転写ヘッド5が回転していない位置、押圧部5cが、転写テープ3の進行方向に対して垂直となる方向)に戻される。
 
【0071】
  以上、本発明の塗膜転写具の好ましい各実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
  例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、転写ヘッド5を、この転写ヘッド5の回動軸となる軸部5aを含んで構成し、この軸部5aをベース部材17に対して回動可能に連結したが、これに限らない。即ち、軸部をベース部材から前側に突出するように形成し、この突出した軸部に転写ヘッドを回動可能に連結してもよい。
  また、例えば、転写ヘッドを筐体により幅方向から保持させて転写ヘッドを筐体に対して回動可能に連結してもよい。即ち、転写ヘッドは、この転写ヘッドや軸部材の弾性力を利用して回動可能とされている構成を除いた構成(即ち、軽い力で転写ヘッドを回動可能とする構成)であればよい。