特許第6807622号(P6807622)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6807622プリザーブド植物を用いた装飾体の作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6807622
(24)【登録日】2020年12月10日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】プリザーブド植物を用いた装飾体の作製方法
(51)【国際特許分類】
   B44C 5/06 20060101AFI20201221BHJP
   A41G 1/00 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   B44C5/06 B
   A41G1/00 Q
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-143436(P2020-143436)
(22)【出願日】2020年8月27日
(62)【分割の表示】特願2020-25885(P2020-25885)の分割
【原出願日】2020年2月19日
【審査請求日】2020年8月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510026976
【氏名又は名称】有限会社花工房
(74)【代理人】
【識別番号】100091834
【弁理士】
【氏名又は名称】室田 力雄
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 康子
【審査官】 正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−30314(JP,A)
【文献】 特開2015−182338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B44C 5/06
A41G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材とペーパーナプキンとを用いて、基材による装飾体の基地とその基地の表面にペーパーナプキンによる装飾体の下地とを構成する基地下地形成工程と、下地の上にプリザーブド植物を貼り付けるプリザーブド植物貼付工程とを、少なくとも有するプリザーブド植物を用いた装飾体の作製方法であって、
前記基地下地形成工程においては、基材として100℃以下の高温で変形可能に軟化する樹脂シートを用い、この樹脂シートの表面を基地として、その上にペーパーナプキンを貼り合わせて下地とし、
基地下地形成工程の後に、前記ペーパーナプキンを貼り合わせた前記樹脂シートを装飾体の外形となるカット片にカットするカット工程と、前記カット片を高温水で軟化させ、これを変形させて所定の三次元湾曲形状とし、その後、冷却して形状を安定させる軟化変形工程と、を有することを特徴とするプリザーブド植物を用いた装飾体の作製方法。
【請求項2】
基地下地形成工程においては、ペーパーナプキンとして予めデザインが施されたペーパーナプキンを用い、プリザーブド植物貼付工程においては、前記ペーパーナプキンのデザインを下地デザインとして、その上にプリザーブド植物を貼り付けて、組み合わせデザインを構成することを特徴とする請求項1に記載のプリザーブド植物を用いた装飾体の作製方法。
【請求項3】
基地下地形成工程の終了後、プリザーブド植物貼付工程の前に、ペーパーナプキンによる下地の上に肉盛材を積層して凹凸形状を構成する肉盛工程を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のプリザーブド植物を用いた装飾体の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリザーブド処理された花や葉等のプリザーブド植物を用いた装飾体の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、植物の生花や生葉等をグリセリン等により、いわゆるプリザーブド処理してなるプリザーブド植物(一般にプリザーブドフラワーと称される)を用いた種々の装飾物が作製され、提供されている。また、それら装飾物の作製方法が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−197549号公報
【特許文献2】特開2017−30314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1には、プリザーブドフラワーの花弁1から型抜きをした片を用いて異なる花に成形し、この成形したプリザーブドフラワーを上下から合成樹脂シート5、6でラミネートして、プリザーブドフラワーシート8を製造する技術が開示されている。シート状のプリザーブドフラワーとすることで、プリザーブドフラワーを用いた装飾の用途において、非常に扱い易くなる効果がある。
その一方、得られるシートが小さな花弁からなるシートであり、またシートが立体感のない花弁シートであるので、立体感があり且つ大きな面積のプリザーブドフラワーの装飾品を得るには時間と手間がかなり必要になるという問題がある。
また上記特許文献2には、プリザーブドフラワー23を金属線材等からなる輪郭体22の内側に配するようにしてなる装飾画材20が開示されている。
しかしながら、この装飾画材20では、構成要素とし輪郭体22を必ず用意しなければならない問題がある。また装飾画材が輪郭体22の範囲でしか存在できないので、広がりに欠けるという問題がある。
【0005】
そこで本発明は上記従来における問題点を解決し、プリザーブド植物を用いた装飾体の作製方法として、より広範囲な装飾用途に使い勝手よく使用でき、良好な装飾性を発揮することができる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明のプリザーブド植物を用いた装飾体の作製方法は、基材とペーパーナプキンとを用いて、基材による装飾体の基地とその基地の表面にペーパーナプキンによる装飾体の下地とを構成する基地下地形成工程と、下地の上にプリザーブド植物を貼り付けるプリザーブド植物貼付工程とを、少なくとも有するプリザーブド植物を用いた装飾体の作製方法であって、
前記基地下地形成工程においては、基材として100℃以下の高温で変形可能に軟化する樹脂シートを用い、この樹脂シートの表面を基地として、その上にペーパーナプキンを貼り合わせて下地とし、
基地下地形成工程の後に、前記ペーパーナプキンを貼り合わせた前記樹脂シートを装飾体の外形となるカット片にカットするカット工程と、前記カット片を高温水で軟化させ、これを変形させて所定の三次元湾曲形状とし、その後、冷却して形状を安定させる軟化変形工程と、を有することを第1の特徴としている。
また本発明のプリザーブド植物を用いた装飾体の作製方法は、上記第1の特徴に加えて、基地下地形成工程においては、ペーパーナプキンとして予めデザインが施されたペーパーナプキンを用い、プリザーブド植物貼付工程においては、前記ペーパーナプキンのデザインを下地デザインとして、その上にプリザーブド植物を貼り付けて、組み合わせデザインを構成することを第2の特徴としている。
また本発明のプリザーブド植物を用いた装飾体の製作方法は、上記第1又は第2の特徴に加えて、基地下地形成工程の終了後、プリザーブド植物貼付工程の前に、ペーパーナプキンによる下地の上に肉盛材を積層して凹凸形状を構成する肉盛工程を有することを第3の特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載のプリザーブド植物を用いた装飾体の製作方法によれば、作製方法は基地下地形成工程とプリザーブド植物貼付工程とからなる。基地下地形成工程では、基材とペーパーナプキンとを用いて、基材による装飾体の基地とその基地の表面にペーパーナプキンによる装飾体の下地とを構成する。そしてプリザーブド植物貼付工程では、前記装飾体の下地の上にプリザーブド植物を貼り付ける。
基材による基地の表面にペーパーナプキンによる下地を構成することで、基材の材質等の種類によらず、ペーパーナプキンを下地としてプリザーブド植物を容易、確実に貼り付けることができる。ペーパーナプキンとプリザーブド植物は植物由来であるので、接着し易い。またペーパーナプキンは表面に細かい皺の入った薄い紙であるため、基材の材質やその他の性状にかかわらず貼り合わせ易く、よって様々な基材と装飾片の基地として用いることができる。
加えて、基地下地形成工程においては、基材として100℃以下の高温で変形可能に軟化する樹脂シートを用い、この樹脂シートの表面を基地として、その上にペーパーナプキンを貼り合わせて下地とし、基地下地形成工程の後に行うカット工程では、前記ペーパーナプキンを貼り合わせた前記樹脂シートを装飾体の外形となるカット片にカットし、その後の変形工程では、前記カット片を高温水で軟化させ、これを変形させて所定の三次元湾曲形状とし、その後、冷却して形状を安定させるようにしているので、
基材として100℃以下の高温で変形可能に軟化する樹脂シートを用いることで、変形工程において、水道水のような普通の水を沸かした状態で、カット片を手等で容易に変形させることができ、所望の立体形状を細やかに且つ簡単にハンドメイドすることができる。
【0008】
請求項2に記載のプリザーブド植物を用いた装飾体の製造方法によれば、上記請求項1に記載の構成による作用効果に加えて、ペーパーナプキンとして予めデザインが施されたものを用いているので、プリザーブド植物の貼り付けは、それを貼り付けるべき下地のデザインの色味や色の組み合わせ或いは線模様を参考にして、新たなデザインを作製することができる。またペーパーナプキンのデザインと組み合わせたような新たなデザインを簡単、容易に作製することができる。
【0009】
請求項3に記載のプリザーブド植物を用いた装飾体の制作方法によれば、上記請求項1又は2に記載の構成による作用効果に加えて、基地下地形成工程の終了後、プリザーブド植物貼付工程の前に、ペーパーナプキンによる下地の上に肉盛材を積層して凹凸形状を構成する肉盛工程を行うことで、扱い易い扁平なプリザーブド植物を用いても、その扁平なプリザーブド植物を肉盛りした凹凸形状の上に貼り付けることで、容易に立体的なデザインからなる装飾体を作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のプリザーブド植物を用いた装飾体の作製方法において参考にする参考作製方法1を説明する図である。
図2】本発明のプリザーブド植物を用いた装飾体の作製方法において参考にする参考作製方法2を説明する図である。
図3】本発明のプリザーブド植物を用いた装飾体の作製方法において参考にする参考作製方法3を説明する図である。
図4】本発明に係るプリザーブド植物を用いた装飾体の作製方法の実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、各図面を参照して、本発明のプリザーブド植物を用いた装飾体の作製方法を説明し、本発明の理解に供する。ただし、以下の説明は特許請求の範囲に記載の本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0012】
まず図1を参照して、本発明のプリザーブド植物を用いた装飾体の作製方法において参考にする参考作製方法1を説明する。
参考作製方法1に係る装飾体10は、少なくとも、基材11とペーパーナプキン12とプリザーブド植物13を用いて構成される。
前記基材11は、装飾体10の基地11aとなる材料である。基材11としては、アクリル、塩ビ等のプラスチック、ガラス、紙、布、金属、アートフラワー、その他、種々の材料を用いることが可能である。また基材11の形状はシートの他、種々の平面形状、立体形状のものを用いることができる。また基材11は実際の製品やそのレプリカであってもよい。
【0013】
前記ペーパーナプキン12は、基材11の基地11aの表面に積層されることで、プリザーブド植物13を取り付けるための下地12aとなる。前記積層は、例えば基材11の上にペーパーナプキン12を貼り合わせることで行うことができる。
前記プリザーブド植物13はプリザーブドフラワーと一般に称されているもので、植物の生花や葉をグリセリン等が含まれる処理液に浸け、水分を抜いて作られるものである。本発明では、花や花弁、葉、茎を含む概念としてプリザーブド植物13としている。
前記ペーパーナプキン12は、表面に微細な皺が形成された薄い紙で、テーブル回りに使用される場合が多い使い捨ての紙ナプキンとして、テーブルナプキンとも称されるものである。紙の厚みは0.03〜0.08mmが好ましく、薄葉紙といえる領域を含んでいる。
テーブルナプキン12は、その用途として、前記テーブルナプキンの他、造花用材料やその他のクラフト用材料としても使用されているが、ここではペーパーナプキン12の新たな用途を提供するものでもある。
【0014】
即ち、ペーパーナプキン12は表面に微細な皺の入った薄い紙であるので、プラスチック材をはじめとする種々の材料に対して、その表面に容易、確実に貼り合わせることができる。従って普通ではプリザーブド植物13の貼り付けに適さないようなプラスチック材を基材11としても、ペーパーナプキン12を介在させることで、プリザーブド植物12を容易に貼り付けることができる。
更に表面に微細な皺のある薄い紙であるペーパーナプキン12を下地12aとすることで、種々のプリザーブド植物13に対しても、同じ植物由来の材料同士として、両者を容易に且つ確実に貼り付けて固定することができる。また表面に種々のコーティングがなされたプリザーブド植物13であっても、皺の入った表面を有するペーパーナプキン12を用いることで、両者を確実に貼り付けることができる。
もしペーパーナプキン12を介在させることなく、基材11の表面に直接プリザーブド植物13を貼り付けようとする場合には、樹脂材料を含む多くの種類の材料に対するプリザーブド植物13の貼り付けが容易でなくなり、装飾体10が形成できなくなる。
【0015】
図1を参照して、装飾体10の参考作製方法1は、先ず基材11とペーパーナプキン12とを用意し、基材11による基地11aとその表面にペーパーナプキン12による下地12aを構成する。これを基地下地形成工程(A)とする。
次に、前記ペーパーナプキン12による下地12aの上にプリザーブド植物13を貼り付ける。これをプリザーブド植物貼付工程(B)とする。
前記基地下地形成工程(A)では、基材11とペーパーナプキン12は何れもシート状のものを用いている。この場合は、シート状の基材11の上にシート状のペーパーナプキン12を、例えば貼り付けて、積層することで、基地下地形成工程(A)が完了する。
【0016】
プリザーブド植物貼付工程(B)において、プリザーブド植物13の貼り付けは、単種類のプリザーブド植物13の他、多種類のプリザーブド植物13を用いることができる。そしてプリザーブド植物13の貼り付けは、下地12aの全面に、又は部分的に貼り付けるようにしてもよい。また貼り付けは単層の他、多層に重層して貼り付けることができる。
なおプリザーブド植物貼付工程(B)では、プリザーブド植物13の貼り付けに加えて、種々の上塗り用絵具で適宜上塗りし、或いはジェッソ等の下塗り用絵具で下塗りすることができる。また他の装飾品を適宜取り付け、或いは貼り付けてもよい。最終的には表面に透明な被覆剤を塗って被覆するようにしてもよい。
【0017】
前記基地下地形成工程(A)とプリザーブド植物貼付工程(B)を経て作製されたプリザーブド装飾体10は、基材11をカットすることなく、そのままの装飾体10(10a)とすることができる。
また必要に応じてカット工程(C)を設けることができる。
このカット工程(C)では、装飾体10は、基材11をペーパーナプキン12の周縁に沿ってカットした装飾体(10b)や、もっと小さくカットした装飾体(10c)とすることができる。更に装飾要素として1つの花に沿ってカットした装飾体(10d)、1つの花弁に沿ってカットした装飾体(10e)、1つの葉に沿ってカットした装飾体(10f)、その他にカットして構成することができる。
【0018】
次に図2を参照して、本発明のプリザーブド植物を用いた装飾体の作製方法において参考にする参考作製方法2を説明する。
参考作製方法2に係る装飾体20は、ペーパーナプキン22として予めデザイン22bが施されたペーパーナプキン22を用いる点で、前記参考作製方法1の装飾体10と異なる。デザイン22bについては、自らペーパーナプキン22に描いて用いることもできるし、既にデザイン22bが描かれたペーパーナプキン22を購入して使用することもできる。ペーパーナプキン22のデザインとしては、色、色違い模様、線画、及びそれらの組み合わせが考えられる。
デザイン22bのあるペーパーナプキン22を用いることで、ペーパーナプキン22を下地22aにしてプリザーブド植物23を貼り付けてゆく際に、最終的な新たなデザインに向けての貼り付けの方向性の参考にすることができる。よってペーパーナプキン22の具体的な色味や色の組み合わせ或いは線模様を参照した新たなデザインを構成することができる。勿論、ペーパーナプキン22とプリザーブド植物23とによる組み合わせデザインを構成することも可能で、より魅力的なデザインの装飾体を提供することができる。
【0019】
図2を参照して、参考作製方法2の作製方法は、ペーパーナプキン22として予めデザイン22bが施されたペーパーナプキン22を用いる点以外は上記参考作製方法1と同じで、基地下地形成工程(A)、プリザーブド植物貼付工程(B)を有する。
即ち、先ず基材21とペーパーナプキン22とを用意し、基材21による基地21aとその表面にペーパーナプキン22による下地22aを構成する。これを基地下地形成工程(A)とする。次に、前記デザイン22bが描かれたペーパーナプキン22による下地22aの上に全面に、場合によっては部分的にプリザーブド植物23を貼り付ける。これをプリザーブド植物貼付工程(B)とする。
プリザーブド植物23の貼り付けは、創作する装飾体20のデザインに応じて、ペーパーナプキン22のデザイン22bを選び、そのデザイン22bを下地として参照しながら、貼り付けてゆくことで、目標とする新たなデザインの装飾体20を良好に、且つスムーズに作製することができる。
【0020】
前記基地下地形成工程(A)とプリザーブド植物貼付工程(B)を経て作製されたプリザーブド装飾体20は、基材21をカットすることなく、そのままの装飾体20(20a)とすることができる。
また上記参考作製方法1の場合と同様に、カット工程(C)を設けて、ペーパーナプキン22の周縁に沿ってカットした装飾体20bや、もっと小さくカットした装飾体20c、更に装飾要素として1つの花に沿ってカットした装飾体20d、1つの花弁に沿ってカットした装飾体20e、1つの葉に沿ってカットした装飾体20f、その他にカットして構成してもよい。
他の作製方法も上記参考作製方法1において既に述べているので、ここでは省略する。
【0021】
図3を参照して、本発明のプリザーブド植物を用いた装飾体の作製方法において参考にする参考作製方法3を説明する。
この参考作製方法3に係る装飾体30は、参考作製方法1の装飾体10や、参考作製方法2の装飾体20の特徴を残しつつ、更に肉盛材34を用いて、立体感のある装飾体30としたものである。
即ち、プリザーブド植物33の全部若しくは一部を、ペーパーナプキン32による下地32aの上に肉盛材34を介して積層する構成としている。得られる装飾体30では、基材31、ペーパーナプキン32、肉盛材34、プリザーブド植物33の4層から構成されることになる。
肉盛材34としては、紙粘土やその他の粘土、グルーガン等を用いて積層されるホットメルト接着樹脂、その他の接着樹脂、硬化型の固形糊、また接着剤や糊でなくてもペーパーナプキン32とその上に貼り付けるプリザーブド植物33との間に介在した状態で積層することができるものであれば(例えばティッシュ等)、それ自身接着性のないものであっても肉盛材34とすることが可能である。
【0022】
肉盛材34はペーパーナプキン32を下地32aとする表面の全面或いは部分面に施される。肉盛材34が施され、積層された部分の断面は起伏のある凹凸断面となる。よって肉盛材34の施された上に貼り付けられたプリザーブド植物33の表面も起伏のある状態となり、立体感のある装飾体30となる。
例えばシート状の基材31の上にシート状のペーパーナプキン32を積層し、その上にプリザーブド植物33を貼り付けて積層しても、なかなか立体感のある作品とはならない。
この参考作製方法3の装飾体30では、プリザーブド植物33の全部若しくは一部を、ペーパーナプキン32による下地32aの上に肉盛材34を介して貼り付け、積層する構成としているので、得られる装飾体30の表面に好ましい立体感のあるデザインを構成して現出させることができる。
【0023】
図3を参照して、参考作製方法3は、肉盛材34を積層して凹凸形状を構成する肉盛工程(AB)を有する点以外は、上記参考作製方法1や参考作製方法2と同じである。
即ち、先ず基材31とペーパーナプキン32とを用意し、基材31による基地31aとその表面にペーパーナプキン32による下地32aを構成し、基地下地形成工程(A)とする。
なお、図3の基地下地形成工程(A)では、基地31と、複数のバラRが描かれたデザイン32bが施されたペーパーナプキン32との全体を示した全体斜視図の他、バラRの部分を大きく拡大して示した拡大斜視図を示す。
基地下地形成工程(A)が完了すると、肉盛工程(AB)を行う。
【0024】
肉盛工程(AB)では、例えば前記描かれたバラRの部分を対象として、葉R1の部分に肉盛材34として、例えばペーパーナプキン32と同じ植物由来の紙粘土34aを用いる。同じ植物由来物として馴染み易く、接着もし易い。紙粘土34aは所望の厚みに積層することができる。また積層厚を相違させることにより、葉R1の重なり具合を表現することができる。また花弁R2の部分にもそれぞれ紙粘土34aを積層し、例えば葉R1の部分よりも花弁R2の部分が飛び出した状態とする。即ち、葉R1や花弁R2をより立体的となるように肉盛りする。勿論、肉盛材34を行わない下地32a部分があってもよい。このようにすることで、バラRとしての立体感のある肉盛りができる。
前記肉盛工程(AB)が終わると、プリザーブド植物貼付工程(B)を行う。プリザーブド植物貼付工程(B)では、前記肉盛りがなされたペーパーナプキン32上の表面にプリザーブド植物33を貼り付けていく。プリザーブド植物33は花弁、葉、その他の植物部分を用い、それらを自在に葉R1や花弁R2のところに単層、或いは多層に貼り付ける。勿論、プリザーブド植物33を貼り付けない部分があってもよい。
【0025】
プリザーブド植物貼付工程(B)が終わると、必要に応じて上記参考作製方法1において既述したカット工程(C)を行うことができる。例えば得られた装飾体30としてのバラRに従ってカットし、得られたバラRの装飾体30を装飾要素等として用いることができることは勿論である。
なお、プリザーブド植物33の貼り付けは、肉盛材34による肉盛りと同時的に行ってもよい。即ち、ペーパーナプキン32の下地32a上に肉盛材34を一部肉盛りし、その部分の肉盛りができたら、その上にプリザーブド植物33を貼り付けて、その部分を完成させるように作業を進める作製方法である。この場合は、肉盛工程(AB)とプリザーブド植物貼付工程(B)が同時進行することになる。
【0026】
図4を参照して、本発明の実施形態に係るプリザーブド植物53を用いた装飾体50の作製方法を説明する。
本発明に係る装飾体の作製方法は、上記した参考作製方法1、参考作製方法2、参考作製方法3を参考にして作製工程の一部に取り入れた作製方法である。
この実施形態の作製方法は、参考作製方法1、参考作製方法2、参考作製方法3の特徴を選択的に残しつつ、基材51そのものを特徴のある材料を用いて作製するようにした作製方法である。
即ち、基材51は100℃以下の高温で変形可能に軟化する樹脂シートで構成している。基材51として100℃以下の高温で変形可能に軟化する樹脂シートを用いることで、この基材51を高温水nに入れて軟化させ、適宜の形に湾曲させ、種々の好みの立体的に変形させることができる。
【0027】
前記基材51の100℃以下の高温で変形可能に軟化する樹脂シートは、例えば塩化ビニル樹脂シート、ポリオレフィン系樹脂シート等の熱可塑性樹脂で、100℃以下の高温で柔らかくなり、常温では硬化する樹脂シートを用いる。
また基材51シートは、0.5mm〜2.0mmの厚肉シートを用いるのがよい。立体感をもたらすのには、厚肉のものを湾曲変形させるのが好ましい。
本発明の実施形態に係る装飾体の作製方法により、立体的に作製された花弁形状、葉形状等、装飾要素、パーツとしての装飾用片は、他の装飾片と共にコサージュやアクセサリーの一部として用いる場合に適していると言える。
【0028】
図4を参照して、本発明の実施形態に係る装飾体50の作製方法は、上記参考作製方法1〜3の何れかの参考作製方法を選択的に残しつつ、カット工程(C)と軟化変形工程(D)に特徴を持つ。
即ち、基地下地形成工程(A)においては、基材51として100℃以下の高温で変形可能に軟化する樹脂シートを用い、この樹脂シートの表面を基地51aとして、その上にペーパーナプキン52を貼り合わせて下地52aとする。ペーパーナプキン52にデザイン52bを施したものを用いてもよいことは、既述した場合と同様である。
基地下地形成工程(A)が終わると、プリザーブド植物貼付工程(B)を行う。
プリザーブド植物貼付工程(B)が終わると、カット工程(C)を行う。このカット工程(C)では、基材51のシートをプリザーブド植物53が貼り付けられた個々の装飾体50の外形形状にカットして、プリザーブド植物53貼り付け済みのカット片56とする。
【0029】
なお前記カット工程(C)は、プリザーブド植物貼付工程(B)等に先立って行うようにしてもよい。この場合、ペーパーナプキン52を貼り付けた基材51シートを、所望の個々の装飾体50片の外形形状にカットして、プリザーブド植物53貼り付け前のカット片56とする。そしてこのカット片56にプリザーブド植物53を貼り付けて、プリザーブド植物53貼り付け済みのカット片56とする。
軟化変形工程(D)において、前記カット片56は高温水n中に浸されることで軟化し、手等によって所望の形状に変形され、冷却されて安定した形状を保つ。これにより所定の三次元湾曲形状の装飾体50が作製される。
ところで装飾体50の作製は、基地下地形成工程(A)の後、カット工程によりカット片56を作製し、このカット片56を軟化変形工程(D)により所望の三次元湾曲形状にし、その後、前記プリザーブド植物貼付工程(B)で、プリザーブド植物53や絵具、その他の装飾要素を施すようにすることも可能である。
本発明の実施形態に係る装飾体の作製方法では、基材51として100℃以下の高温で変形可能に軟化する樹脂シートを用いることで、軟化変形工程(D)において、水道水のような普通の水を沸かした状態で、装飾体50を手等で容易に変形させることができ、所望の立体形状を細やかに且つ簡単にハンドメイドすることができる。
【0030】
上記の実施形態において得られた装飾体50は、それ自体を装飾要素とすることができる。この場合、装飾体50に対して、他の装飾要素が組み合わされることで、別の新たな装飾体が創作される。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のプリザーブド植物を用いた装飾体の作製方法は、プリザーブドフラワーを扱う装飾品や装飾品パーツの製造、販売分野や、プリザーブド植物を用いた作品創作に関する各種学校、教育産業の分野における産業上の利用性が高い。
【符号の説明】
【0032】
10 装飾体
10a〜10f 装飾体
11 基材
11a 基地
12 ペーパーナプキン
12a 下地
13 プリザーブド植物
20 装飾体
21 基材
21a 基地
22 ペーパーナプキン
22a 下地
22b デザイン
23 プリザーブド植物
30 装飾体
31 基材
31a 基地
32 ペーパーナプキン
32a 下地
32b デザイン
33 プリザーブド植物
34 肉盛材
34a 紙粘土
R バラ
R1 葉
R2 花弁
50 装飾体
51 基材
51a 基地
52 ペーパーナプキン
52a 下地
52b デザイン
53 プリザーブド植物
56 カット片
n 高温水
(A) 基地下地形成工程
(AB) 肉盛工程
(B) プリザーブド植物貼付工程
(C) カット工程
(D) 軟化変形工程
【要約】
【課題】広範囲な装飾用途に良好な装飾性を発揮させることができるプリザーブド植物を用いた装飾体の作製方法を提供することを課題とする。
【解決手段】基材51による基地51aとペーパーナプキン52による下地52aとを構成する基地下地形成工程(A)と、下地52aの上にプリザーブド植物53を貼り付けるプリザーブド植物貼付工程(B)とを有し、工程(A)においては、基材51として100℃以下の高温で変形可能に軟化する樹脂シートを用い、この表面を基地51aとし、その上にペーパーナプキン52を貼り合わせて下地52aとし、前記工程(A)の後に、ペーパーナプキン52を貼り合わせた樹脂シートをカット片56にカットするカット工程(C)と、カット片56を高温水nで軟化、変形させて所定の三次元湾曲形状とし、その後、冷却して形状を安定させる軟化変形工程(D)とを有する。
【選択図】 図4
図1
図2
図3
図4