(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
測距光を射出する測距光射出部と、反射測距光を受光して測距を行う測距部と、前記測距光、前記反射測距光の共通光路に設けられ、前記測距光、前記反射測距光の光軸を同一の偏角、同一の方向で偏向する光軸偏向部と、該光軸偏向部を前記測距光の射出光軸を中心に回転させるモータと、該光軸偏向部による偏角、偏向方向を検出する射出方向検出部と、演算制御部とを具備し、前記測距光は前記光軸偏向部の回転により測定対象面に円状に走査され、前記演算制御部は、前記測定対象面上で取得された座標データに基づき正弦曲線を求め、該正弦曲線をフーリエ変換し、前記光軸偏向部の回転速度と一致する周波数成分の振幅、位相に基づき前記測定対象面の前記射出光軸に対する傾斜を測定する測定装置。
前記光軸偏向部は、楔プリズムと、該楔プリズムを前記射出光軸と直交する軸心を中心に傾動させる偏向角調整モータとを具備し、該偏向角調整モータの駆動により測距光の偏角を変更可能とした請求項1に記載の測定装置。
前記光軸偏向部は、独立して回転可能な重なり合う一対の円形の光学プリズムで構成され、各光学プリズムは中心部に形成され、前記測距光を所要の偏角、所要の方向で偏向する測距光軸偏向部と、外周部に形成され、該測距光軸偏向部と同一の偏角、方向で前記反射測距光を偏向する反射測距光軸偏向部とを有し、前記演算制御部は前記光学プリズムを一体に等速回転させる請求項1に記載の測定装置。
水平又は鉛直に対する傾斜角、傾斜方向を検出可能な姿勢検出装置を更に具備し、前記座標データ及び姿勢検出結果に基づき前記測定対象面の水平又は鉛直に対する傾斜を測定する請求項1〜請求項3のうちいずれか1項に記載の測定装置。
前記演算制御部は、前記モータを所定速度で回転し、所定時間間隔毎に該モータの目標回転角と実際の回転角との差分を演算し、該差分を基に前記モータの目標回転速度を修正し、修正した目標回転速度と実際の回転速度を基に前記モータを制御する請求項1〜請求項4のうちいずれか1項に記載の測定装置。
測距光を光軸偏向部により偏向させて射出させる工程と、前記光軸偏向部を前記測距光の射出光軸を中心に回転させ、測定対象面を円状に走査させる工程と、該測定対象面上で取得された座標データに基づき正弦曲線を求め、該正弦曲線をフーリエ変換し、前記光軸偏向部の回転速度と一致する周波数成分の振幅、位相に基づき前記測定対象面の前記射出光軸に対する傾斜を測定する工程とを有する測定方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0020】
先ず、
図1に於いて、本発明の第1の実施例に係る測定装置について説明する。
【0021】
測定装置1内には、測距光射出部2、受光部3、測距部4、射出方向検出部6、モータドライバ7、ジンバル機構を有する姿勢検出装置8、測定制御部である演算制御部9が収納され、一体化されている。又、前記測定装置1には、操作部11、表示部12が設けられている。
【0022】
尚、該表示部12をタッチパネルとし、前記操作部11と兼用させてもよい。又、前記測定装置1は、片手で携帯(ハンドヘルド)可能となっている。
【0023】
前記測距光射出部2は、射出光軸13を有し、該射出光軸13上に発光素子14、例えばレーザダイオード(LD)が設けられている。又、前記射出光軸13上に投光レンズ15が設けられている。更に、前記射出光軸13上に設けられた偏向光学部材としての第1反射鏡16と、受光光軸17(後述)上に設けられた偏向光学部材としての第2反射鏡18とによって、前記射出光軸13は前記受光光軸17と合致する様に偏向される。尚、前記第1反射鏡16と前記第2反射鏡18とで射出光軸偏向部が構成される。
【0024】
前記受光部3は、前記受光光軸17を有している。前記受光部3には、測定対象物、プリズムや反射鏡等の再帰反射性を有するターゲットからの反射測距光を受光する。
【0025】
前記受光光軸17上に受光素子19、例えばフォトダイオード(PD)が設けられ、又結像レンズ21が配設されている。該結像レンズ21は、反射測距光を前記受光素子19に結像する。該受光素子19は反射測距光を受光し、受光信号を発する。該受光信号は、前記測距部4に入力される。
【0026】
更に、前記受光光軸17(即ち、前記射出光軸13)上で、前記結像レンズ21の対物側には、光軸偏向部である楔プリズム22が配設されている。該楔プリズム22は、前記射出光軸13と前記受光光軸17とを所定の角度だけ偏向する様になっている。尚、前記楔プリズム22による偏向角は既知となっている。
【0027】
該楔プリズム22の外周にはリングギア23が嵌設されている。該リングギア23には駆動ギア24が噛合し、該駆動ギア24はモータ25の出力軸に固着されている。該モータ25は、前記モータドライバ7に電気的に接続されている。
【0028】
前記モータ25は、回転角を検出することができるもの、或は駆動入力値に対応した回転をするもの、例えばパルスモータが用いられる。或は、モータの回転量(回転角)を検出する回転角検出器、例えばエンコーダ等を用いて前記モータ25の回転量を検出してもよい。検出された回転量に基づき、前記モータドライバ7により前記モータ25が制御される。
【0029】
前記駆動ギア24と前記モータ25は、前記測距光射出部2と干渉しない位置、例えば前記リングギア23の下側に設けられている。
【0030】
前記測距部4は、前記発光素子14を制御し、測距光としてレーザ光線を発光させる。前記楔プリズム22により、前記測距光が測定点に向う様前記射出光軸13が偏向される。
【0031】
測定対象物から反射された反射測距光は、前記楔プリズム22、前記結像レンズ21に入射し、前記受光素子19に受光される。該受光素子19は、受光信号を前記測距部4に送出し、該測距部4は前記受光素子19からの受光信号に基づき測定点(測距光が照射された点)の測距を行う。
【0032】
前記射出方向検出部6は、前記モータ25に入力される駆動パルスをカウントすることで、前記モータ25の回転角を検出する。或は、エンコーダ(図示せず)からの信号に基づき、前記モータ25の回転角を検出する。又、前記射出方向検出部6は、前記モータ25の回転角に基づき、前記楔プリズム22の回転位置を演算する。
【0033】
更に、前記射出方向検出部6は、前記楔プリズム22の屈折率と回転位置に基づき、測距光の偏角、射出方向を演算し、演算結果は前記演算制御部9に入力される。尚、前記楔プリズム22にエンコーダを設け、該エンコーダの検出結果を基に前記楔プリズム22の回転位置を演算してもよい。
【0034】
前記演算制御部9は、入出力制御部、演算器(CPU)、記憶部等から構成されている。該記憶部には測距作動を制御する測距プログラム、測距結果に基づき測定対象面に楕円をフィッティングさせるフィッティングプログラム、フィッティングさせた楕円に基づき前記楔プリズム22の回転軸心に対する測定対象面の傾斜角と傾斜方向を演算する傾斜測定プログラム、前記モータドライバ7に前記モータ25を制御させる為のプリズム制御プログラム、前記射出方向検出部6からの測距光の射出方向の演算結果に基づき前記射出光軸13の方向角(水平角、鉛直角)を演算する方向角演算プログラム、前記姿勢検出装置8に姿勢検出を行わせる為の姿勢検出プログラム、前記表示部12に画像データ、測距データ等を表示させる為の画像表示プログラム等のプログラムが格納されている。
【0035】
測定の態様としては、前記楔プリズム22を所定の回転角に固定して測距を行うことで、特定の測定点について測距を行うことができる。更に、前記楔プリズム22の回転角を変更しつつ測距を実行することで、測距光を前記第1反射鏡16と前記第2反射鏡18とで偏向された前記射出光軸13(前記受光光軸17)を中心とした円で走査しつつ測距が実行され、走査軌跡に沿って測距データ(スキャンデータ)を取得することができる。
【0036】
又、各測距光の射出方向角は、前記モータ25の回転角により検出でき、射出方向角と測距データとを関連付けることで、3次元の測距データを取得することができる。
【0037】
次に、
図2を用い、前記姿勢検出装置8について説明する。
図2は、該姿勢検出装置8の平面図であり、矩形枠形状の外フレーム28の内部に、矩形枠形状の内フレーム29が軸受31、第1水平軸32を介して回転自在に設けられている。又、前記内フレーム29の内部に傾斜検出ユニット33が軸受34、第2水平軸35を介して回転自在に設けられている。
【0038】
前記内フレーム29は前記第1水平軸32,32を中心に360°回転自在であり、前記傾斜検出ユニット33は前記第2水平軸35を中心に360°回転自在となっている。
【0039】
従って、前記傾斜検出ユニット33は、前記外フレーム28に対して2軸方向に回転自在に支持されており、前記内フレーム29を回転自在に支持する機構、前記傾斜検出ユニット33を回転自在に支持する機構はジンバル機構を構成する。前記傾斜検出ユニット33は、前記外フレーム28に対してジンバル機構を介して支持され、前記傾斜検出ユニット33は回転の制約を受けることなく、前記外フレーム28に対して全方向に自在に回転し得る様になっている。
【0040】
前記第1水平軸32の一端部には第1被動ギア36が嵌着され、該第1被動ギア36には第1駆動ギア37が噛合している。前記外フレーム28の下面には第1モータ38が設けられている。前記内フレーム29は、前記第1駆動ギア37及び前記第1被動ギア36を介して前記第1モータ38によって回転される。
【0041】
前記第1水平軸32の他端部には第1エンコーダ39が設けられ、該第1エンコーダ39は前記内フレーム29の前記外フレーム28に対する前記第1水平軸32,32を中心とする回転角を検出する。
【0042】
前記第2水平軸35の一端部には第2被動ギア41が嵌着され、該第2被動ギア41には第2駆動ギア42が噛合している。又、前記内フレーム29の側面(図示では左側面)には第2モータ43が設けられている。前記傾斜検出ユニット33は、前記第2駆動ギア42及び前記第2被動ギア41を介して前記第2モータ43によって回転される。
【0043】
前記第2水平軸35の他端部には第2エンコーダ44が設けられ、該第2エンコーダ44は前記内フレーム29に対する前記傾斜検出ユニット33の前記第2水平軸35を中心とする回転角を検出する。
【0044】
前記第1エンコーダ39、前記第2エンコーダ44によって検出される回転角は、傾斜演算処理部45に入力される。
【0045】
前記傾斜検出ユニット33は、第1傾斜センサ46、第2傾斜センサ47を有しており、前記第1傾斜センサ46、前記第2傾斜センサ47からの検出信号は、前記傾斜演算処理部45に入力される。
【0046】
前記第1傾斜センサ46は水平を高精度に検出するものであり、例えば水平液面に検出光を入射させて反射光の反射角度の変化で水平を検出する傾斜検出器、或は封入した気泡の位置変化で傾斜を検出する気泡管である。又、前記第2傾斜センサ47は傾斜変化を高応答性で検出するものであり、例えば加速度センサである。
【0047】
尚、前記第1傾斜センサ46、前記第2傾斜センサ47のいずれも、前記第1エンコーダ39が検出する回転方向(傾斜方向)、前記第2エンコーダ44が検出する回転方向(傾斜方向)の2軸方向の傾斜を個別に検出可能となっている。
【0048】
前記傾斜演算処理部45は、前記第1傾斜センサ46、前記第2傾斜センサ47からの検出結果に基づき、傾斜角、傾斜方向を演算し、更に該傾斜角、傾斜方向に相当する前記第1エンコーダ39の回転角、前記第2エンコーダ44の回転角を演算する。前記第1エンコーダ39、前記第2エンコーダ44の演算結果は、前記演算制御部9に入力される。
【0049】
尚、前記姿勢検出装置8は、前記外フレーム28が水平に設置された場合に、前記第1傾斜センサ46が水平を検出する様に設定され、更に前記第1エンコーダ39の出力、前記第2エンコーダ44の出力が共に基準位置(回転角0°)を示す様に設定される。
【0050】
以下、前記姿勢検出装置8の作用について説明する。
【0051】
先ず、高精度に傾斜を検出する場合について説明する。高精度に傾斜を検出する場合としては、例えば前記姿勢検出装置8が設置式の測定装置に設けられた場合であり、応答性が要求されない場合である。
【0052】
前記姿勢検出装置8が傾斜すると、前記第1傾斜センサ46が傾斜に応じた信号を出力する。
【0053】
前記傾斜演算処理部45は、前記第1傾斜センサ46からの信号に基づき、傾斜角、傾斜方向を演算する。更に、前記傾斜演算処理部45は、演算結果に基づき傾斜角、傾斜方向を0にする為の、前記第1モータ38、前記第2モータ43の回転量を演算し、前記第1モータ38、前記第2モータ43を回転駆動させる駆動指令を発する。
【0054】
前記第1モータ38、前記第2モータ43の駆動により、演算された傾斜角、傾斜方向の逆に傾斜する様、前記第1モータ38、前記第2モータ43が駆動され、モータの駆動量(回転角)は前記第1エンコーダ39、前記第2エンコーダ44によって検出され、回転角が前記演算結果となったところで前記第1モータ38、前記第2モータ43の駆動が停止される。
【0055】
更に、前記第1傾斜センサ46が水平を検出する様、前記第1モータ38、前記第2モータ43の回転が微調整される。
【0056】
この状態では、前記外フレーム28が傾斜した状態で、前記内フレーム29と前記傾斜検出ユニット33が水平に制御される。
【0057】
従って、前記傾斜検出ユニット33を水平とする為に、前記第1モータ38、前記第2モータ43により、前記内フレーム29、前記傾斜検出ユニット33を傾斜させた傾斜角、傾斜方向は、前記第1エンコーダ39、前記第2エンコーダ44で検出した回転角に基づき求められる。
【0058】
前記傾斜演算処理部45は、前記第1傾斜センサ46が水平を検出した時の、前記第1エンコーダ39、前記第2エンコーダ44の検出結果に基づき前記姿勢検出装置8の傾斜角、傾斜方向を演算する。この演算結果が、前記姿勢検出装置8の傾斜後の姿勢を示す。
【0059】
前記傾斜演算処理部45は、演算された傾斜角、傾斜方向を前記姿勢検出装置8の検出信号として前記演算制御部9に出力する。
【0060】
次に、前記姿勢検出装置8が携帯される機器に装備され、携帯された状態でデータを取得する場合の、前記姿勢検出装置8の作用について説明する。
【0061】
携帯された状態では、前記姿勢検出装置8の姿勢は刻々と変化する。従って、高応答性の前記第2傾斜センサ47の検出結果に基づき、姿勢検出が行われる。
【0062】
先ず、水平状態を前記第1傾斜センサ46により検出し、その後の姿勢変化を高応答性の前記第2傾斜センサ47により求める。該第2傾斜センサ47からの検出結果に基づき姿勢検出をする様に制御すれば、前記姿勢検出装置8の傾斜、傾斜方向をリアルタイムで検出することが可能となる。
【0063】
更に、前記傾斜検出ユニット33、前記内フレーム29の回転を制約するものがなく、前記傾斜検出ユニット33、前記内フレーム29は共に360°以上の回転が可能である。即ち、前記姿勢検出装置8がどの様な姿勢となろうとも(例えば、前記姿勢検出装置8の天地が逆になった場合でも)、全方向での姿勢検出が可能である。
【0064】
従って、傾斜センサの測定範囲の制限がなく、広範囲、全姿勢での姿勢検出が可能である。
【0065】
高応答性を要求する場合は、前記第2傾斜センサ47の検出結果に基づき姿勢検出が行われるが、前記第2傾斜センサ47は前記第1傾斜センサ46に比べ検出精度が悪いのが一般的である。
【0066】
高精度の前記第1傾斜センサ46と、高応答性の前記第2傾斜センサ47を具備し、該第2傾斜センサ47による検出結果を前記第1傾斜センサ46の検出結果で較正することで、前記第2傾斜センサ47のみの検出結果に基づき高精度の姿勢検出が可能となる。
【0067】
更に、前記第2傾斜センサ47が検出した傾斜角に基づき、該傾斜角が0になる様にモータを駆動し、更に前記第1傾斜センサ46が水平を検知する迄モータの駆動を継続する。前記第1傾斜センサ46が水平を検知した時のエンコーダの値、即ち実際の傾斜角と前記第2傾斜センサ47が検出した傾斜角との間で偏差を生じれば、該偏差に基づき前記第2傾斜センサ47の傾斜角を較正することができる。
【0068】
従って、予め、前記第2傾斜センサ47の検出傾斜角と、前記第1傾斜センサ46による水平検出とエンコーダの検出結果に基づき求めた傾斜角との関係を取得しておけば、前記第2傾斜センサ47に検出された傾斜角の較正(キャリブレーション)をすることができ、前記第2傾斜センサ47による高応答性での姿勢検出の精度を向上させることができる。
【0069】
又、前記演算制御部9は、傾斜の変動が大きい時、傾斜の変化の速い時は、前記第2傾斜センサ47からの信号に基づき、前記第1モータ38、前記第2モータ43を制御する。又、前記演算制御部9は、傾斜の変動が小さい時、傾斜の変化が緩やかな時、即ち前記第1傾斜センサ46が追従可能な状態では、該第1傾斜センサ46からの信号に基づき、前記第1モータ38、前記第2モータ43を制御する。
【0070】
尚、前記演算制御部9の記憶部には、前記第1傾斜センサ46の検出結果と、前記第2傾斜センサ47の検出結果との比較結果を示すデータテーブルである対比データが格納されている。前記第2傾斜センサ47からの信号に基づき、前記第1モータ38、前記第2モータ43を制御する場合、前記演算制御部9は前記対比データに基づき前記第2傾斜センサ47による検出結果を補正する。この補正により、該第2傾斜センサ47による検出結果を前記第1傾斜センサ46の検出精度迄高めることができる。よって、前記姿勢検出装置8による傾斜検出に於いて、高精度を維持しつつ高応答性を実現することができる。
【0071】
演算された前記第1エンコーダ39の回転角、前記第2エンコーダ44の回転角を合成することで、傾斜角と傾斜方向が演算される。該傾斜角と傾斜方向は、前記姿勢検出装置8が取付けられる前記測定装置1の、鉛直に対する傾斜角、傾斜方向に対応する。
【0072】
次に、
図3、
図4に於いて、前記測定装置1を用いた測定対象面48の傾斜測定について説明する。尚、該測定対象面48は平面となっている。
【0073】
前記測定装置1を前記測定対象面48に向けた状態で、前記楔プリズム22を回転させつつ測距光を照射する。この時、円状に回転照射される測距光の軌跡49が、全て前記測定対象面48上に位置する様、前記測定装置1と前記測定対象面48との距離を調整する。尚、前記測定対象面48上の前記軌跡49の径は、できるだけ大きくするのが望ましい。
【0074】
前記測距部4により、所定のスキャン間隔で測距された前記軌跡49上の測定点(点群)の測距データが取得される。前記演算制御部9は、各測定点の測距データと測距時の前記楔プリズム22の回転角を基に、前記測定装置1を基準とした前記軌跡49上の3次元の座標データを演算する。
【0075】
前記演算制御部9は、演算した座標データを基に、例えば最小二乗法により、
図4に示される様な楕円フィッティングを行う。尚、本実施例に於いて、円も楕円に含まれるものとする。
【0076】
前記演算制御部9は、座標データにフィッティングさせた楕円51の短軸ベクトル52と長軸ベクトル53とを演算すると共に、前記短軸ベクトル52と前記長軸ベクトル53との交点Oを求める。更に、前記演算制御部9は、前記短軸ベクトル52と前記長軸ベクトル53の外積を基に前記交点での法線ベクトル54を演算する。
【0077】
該法線ベクトル54の、前記楔プリズム22の回転軸心、即ち前記受光光軸17(前記射出光軸13)に対する傾斜角と傾斜方向を演算することで、前記測定装置1に対する前記測定対象面48の傾斜角、傾斜方向が測定される。
【0078】
又、前記姿勢検出装置8により、水平又は鉛直に対する前記測定装置1の傾斜角、傾斜方向が検出される。
【0079】
従って、前記測定装置1に対する前記測定対象面48の傾斜角と傾斜方向、及び水平又は鉛直に対する前記測定装置1の傾斜角と傾斜方向を基に、前記演算制御部9が前記測定対象面48の水平に対する傾斜角、傾斜方向を演算し、該測定対象面48の傾斜測定が完了する。尚、前記測定装置1により壁面等の傾斜を測定する際には、鉛直に対する傾斜が測定され、天井等の傾斜を測定する際には、水平に対する傾斜が測定される。
【0080】
上述の様に、第1の実施例では、前記測定装置1を前記測定対象面48に向け、測距光の前記軌跡49が全て前記測定対象面48に位置する様に前記測定装置1と前記測定対象面48との距離を調整するだけでよい。前記軌跡49上の3次元の座標データが取得されることで、該座標データを基に前記測定装置1に対する前記測定対象面48の傾斜を測定することができる。
【0081】
従って、座標データ取得後の後処理工程等の、煩雑な処理が省略でき、短時間で前記測定対象面48の傾斜測定を行うことができる。又、使用する距離計(前記測距部4)は1つでよいので、装置構成が簡略化され、製作コストの低減を図ることができる。
【0082】
又、前記楔プリズム22を介して測距光が高速で走査され、1周分の前記軌跡49上の座標データが取得される毎に、即ち短時間で前記測定対象面48の傾斜測定が行われる。従って、後処理を行うことなくその場で前記測定対象面48の傾斜測定ができるので、土木測量、室内測量、設備設置等、各種測量に適用することができ、又作業時間の短縮を図ることができる。
【0083】
又、傾斜測定が短時間で連続して実行されることから、前記測定対象面48の傾斜状態が刻々と変化する場合であっても、傾斜状態の変化に追従して前記測定対象面48の傾斜を測定することができる。
【0084】
又、取得された1周分の座標データを全て用いて楕円フィッティングを行い、フィッティングされた楕円に基づき前記法線ベクトル54を求めることで、前記測定装置1に対する前記測定対象面48の傾斜を測定する。楕円フィッティングの際に多数の測定点の測定値が用いられることで、各測定点の測定値の誤差が平均化されるので、高精度な楕円フィッティングが可能となり、傾斜測定の精度を向上させることができる。
【0085】
更に、前記測定装置1は前記姿勢検出装置8を有し、水平又は鉛直に対する前記測定装置1の傾斜を測定可能となっている。従って、作業者が前記測定装置1を手に持った状態で傾斜測定を行なう場合等、該測定装置1の姿勢が安定しない場合であっても、水平又は鉛直に対する前記測定対象面48の測定が可能となり、作業性を向上させることができる。
【0086】
図5、
図6は、第1の実施例の変形例を示している。
【0087】
該変形例では、測定対象面48に照射された測距光の軌跡49上で得られた座標データのうち、少なくとも3点の測定点55を選択する。選択した該測定点55の測定値を基に、前記測定対象面48の前記受光光軸17に対する傾斜、傾斜方向を演算し、該受光光軸17と前記測定対象面48の交点に於ける法線ベクトル54を演算する。更に、該法線ベクトル54を基に、測定装置1に対する前記測定対象面48の傾斜、水平又は鉛直に対する該測定対象面48の傾斜を測定する。
【0088】
上記変形例では、前記軌跡49が全て前記測定対象面48上に位置する必要がないので、前記測定装置1と前記測定対象面48との位置を調整する必要がない。従って、傾斜測定を行なう際の作業性を向上させることができる。
【0089】
次に、
図7に於いて、本発明の第2の実施例に係る測定装置1について説明する。尚、
図7中、
図1中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0090】
第2の実施例では、楔プリズム22を回転軸57を介して回転可能に設け、前記楔プリズム22を偏向角調整モータ58により傾動片59を介して前記回転軸57を中心に傾動可能としている。更に、前記楔プリズム22、前記偏向角調整モータ58等を光軸偏向部56としてユニット化している。該光軸偏向部56はモータ25により受光光軸17(偏向された射出光軸13)を中心に回転される。前記回転軸57は、
図7中紙面に対して垂直な軸心を有し、該軸心は前記モータ25により回転される前記楔プリズム22の回転軸心(即ち前記射出光軸13)と直交する。
【0091】
前記偏向角調整モータ58は、例えば超音波リニアモータである。該偏向角調整モータ58は、モータドライバ7と電気的に接続され、該モータドライバ7により駆動が制御される。尚、前記回転軸57に回転モータを連結し、該回転軸57を介して前記楔プリズム22を回転させる様にしてもよい。
【0092】
前記偏向角調整モータ58が駆動されることで、前記楔プリズム22が前記回転軸57を介して回転し、前記楔プリズム22の光軸が前記射出光軸13に対して傾斜する。前記楔プリズム22が前記射出光軸13に対して傾斜することで、前記楔プリズム22の偏向角(偏角)が調整される。
【0093】
前記光軸偏向部56が前記モータ25によって回転されることで、前記楔プリズム22に対する測距光の入射状態が変化し、測距光の前記射出光軸13に対する偏角が変化する。即ち、前記偏向角調整モータ58が駆動されることで、測定対象面48に照射される測距光の軌跡49の径が変化する。
【0094】
射出方向検出部6は、前記偏向角調整モータ58の駆動量を検出し、偏向角を演算し、前記モータ25の回転量を検出する。又、前記射出方向検出部6は、前記光軸偏向部56の回転位置と、前記楔プリズム22の前記回転軸57を中心とする回転位置とに基づき、測距光の偏角、射出方向を演算する。
【0095】
第2の実施例では、前記楔プリズム22と前記偏向角調整モータ58とを前記光軸偏向部56としてユニット化し、該光軸偏向部56を前記射出光軸13に対して傾斜させ、測距光の偏角、射出方向を変更可能としている。
【0096】
従って、前記射出光軸13の偏角、即ち前記軌跡49の径が変更可能となるので、前記測定装置1と前記測定対象面48との距離を調整することなく、全ての前記軌跡49を前記測定対象面48上に位置させることができ、測定精度、作業性を向上させることができる。
【0097】
尚、演算される面精度向上の為、前記測定対象面48上の前記軌跡49の径はできるだけ大きい方が望ましい。
【0098】
従って、前記偏向角調整モータ58を駆動させ、前記測定対象面48に全ての前記軌跡49が位置し、且つ該軌跡49の径が最大限となる様、偏角を調整するのが望ましい。前記偏向角調整モータ58の駆動は、作業者が手動で行ってもよく、或は前記演算制御部9に自動で行わせてもよい。
【0099】
前記偏向角調整モータ58の駆動を前記演算制御部9に自動で行わせる場合には、例えば、測距光の偏角(前記軌跡49の径)を1周毎に漸次拡大していき、前記測定対象面48で測定結果が得られなくなる(前記軌跡49が途切れる)直前の偏角に於ける座標データを用いる様にしてもよい。
【0100】
或は、測距光の偏角を1周毎に漸次縮小していき、前記測定対象面48上で1周分の測定結果(1周分の前記軌跡49)が全て得られた時点の偏角に於ける座標データを用いる様にしてもよい。
【0101】
次に、
図8、
図9に於いて、本発明の第3の実施例について説明する。尚、
図8中、
図1中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0102】
第3の実施例では、光軸偏向部は、一対の光学プリズム61a,61bから構成される。該光学プリズム61a,61bは、それぞれ円板状であり、受光光軸17上に該受光光軸17と直交して配置される。又、前記光学プリズム61a,61bは重なり合い、平行に配置されている。該光学プリズム61a,61bとしては、それぞれフレネルプリズムが用いられることが、装置を小型化する為に好ましい。
【0103】
前記光学プリズム61a,61bの中心部は、測距光が透過する第1光軸偏向部である測距光軸偏向部となっており、中心部を除く部分は反射測距光が透過する第2光軸偏向部である反射測距光軸偏向部となっている。
【0104】
前記光学プリズム61a,61bとして用いられるフレネルプリズムは、それぞれ平行に配置されたプリズム要素62a,62bと多数のプリズム要素63a,63bによって構成され、板形状を有する。各プリズム要素62a,62b及びプリズム要素63a,63bは同一の光学特性を有する。
【0105】
前記プリズム要素62a,62bは、前記測距光軸偏向部を構成し、前記プリズム要素63a,63bは前記反射測距光軸偏向部を構成する。
【0106】
前記フレネルプリズムは光学ガラスから製作してもよいが、光学プラスチック材料でモールド成形したものでもよい。光学プラスチック材料でモールド成形することで、安価なフレネルプリズムを製作できる。
【0107】
前記光学プリズム61a,61bは、それぞれ前記受光光軸17を中心に独立して個別に回転可能に配設されている。前記光学プリズム61a,61bは、回転方向、回転量、回転速度を独立して制御されることで、射出される測距光の射出光軸13を任意の方向に偏向し、受光される反射測距光の前記受光光軸17を前記射出光軸13と平行に偏向する。
【0108】
前記光学プリズム61a,61bの外径形状は、それぞれ前記受光光軸17を中心とする円形であり、反射測距光の広がりを考慮し、充分な光量を取得できる様、前記光学プリズム61a,61bの直径が設定されている。
【0109】
又、前記光学プリズム61aの外周にはリングギア64aが嵌設され、前記光学プリズム61bの外周にはリングギア64bが嵌設されている。
【0110】
前記リングギア64aには駆動ギア65aが噛合し、該駆動ギア65aはモータ66aの出力軸に固着されている。同様に、前記リングギア64bには、駆動ギア65bが噛合し、該駆動ギア65bはモータ66bの出力軸に固着されている。前記モータ66a,66bは、モータドライバ7に電気的に接続されている。
【0111】
前記駆動ギア65a,65b、前記モータ66a,66bは、測距光射出部2と干渉しない位置、例えば前記リングギア64a,64bの下側に設けられている。
【0112】
前記モータ66a,66bは、回転角を検出することができるもの、或は駆動入力値に対応した回転をするもの、例えばパルスモータが用いられる。或は、モータの回転量(回転角)を検出する回転角検出器、例えばエンコーダ等を用いてモータの回転量を検出してもよい。前記モータ66a,66bの回転量がそれぞれ検出され、前記モータドライバ7により前記モータ66a,66bが個別に制御される。
【0113】
検出された該モータ66a,66bに基づき、射出方向検出部6は前記光学プリズム61a,61bの回転位置を演算する。更に、前記射出方向検出部6は、前記光学プリズム61a,61bの屈折率と回転位置に基づき、測距光の偏角、射出方向を演算し、演算結果は前記演算制御部9に入力される。尚、前記光学プリズム61aと前記光学プリズム61bの協働により、測距光は、例えば0°〜20°の範囲で偏向される。
【0114】
尚、前記投光レンズ15、前記測距光軸偏向部等は、投光光学系を構成し、前記反射測距光軸偏向部、前記結像レンズ21等は受光光学系を構成する。又、前記光学プリズム61a,61b、前記モータ66a,66b等は、光軸偏向ユニット60を構成する。
【0115】
発光素子14から発せられた測距光は、投光レンズ15で平行光束とされ、前記プリズム要素62a,62bで所要の方向に偏向され、測定対象面48等に照射される。
【0116】
又、該測定対象面48等で反射された反射測距光は、前記プリズム要素63a,63bによって偏向され、結像レンズ21により受光素子19に集光される。
【0117】
ここで、前記光学プリズム61aと前記光学プリズム61bの回転位置の組合わせにより、照射する測距光を±20°の範囲で任意の偏向方向、偏角で偏向できる。又、前記光学プリズム61aと前記光学プリズム61bとの位置関係を固定した状態で(前記光学プリズム61aと前記光学プリズム61bとで得られる偏角を固定した状態で)、前記モータ66a,66bにより、前記光学プリズム61aと前記光学プリズム61bとを一体に回転させることで、前記プリズム要素62a,62bを透過した測距光が描く軌跡は前記射出光軸13を中心とした円となる。
【0118】
以下、
図10に於いて、前記光学プリズム61aと前記光学プリズム61bとを一体に回転させる為の前記モータ66a,66bの制御について説明する。尚、前記モータ66aと前記モータ66bに対しては同様の制御が実行されるので、以下では、前記モータ66aの制御を行う場合について説明する。
【0119】
前記演算制御部9は、前記モータ66aを所定速度で駆動する。該モータ66aの駆動が開始されると、所定時間間隔毎に、経過時間(信号a)を目標角度演算部67aに送信する。
【0120】
該目標角度演算部67aは、前記演算制御部9から受信した経過時間を基に、所定時間経過時に回転しているはずの前記モータ66aの目標回転角を演算し、目標回転角(信号b)を出力する。同時に、エンコーダ68aは、所定時間経過時の前記モータ66aの実際の回転角を検出し、実際の回転角(信号c)を出力する。
【0121】
目標回転角(信号b)と実際の回転角(信号c)との差分が演算され、該差分(信号d)が速度修正値演算部69aに入力される。該速度修正値演算部69aは、回転角の差分を基に、速度修正値を演算し、該速度修正値(信号e)を出力する。該速度修正値は、実際の回転角が目標回転角よりも小さかった場合に前記モータ66aの回転速度を増加させ、実際の回転角が目標回転角よりも大きかった場合に前記モータ66aの回転速度を減少させる為の修正値である。
【0122】
前記演算制御部9からは、前記モータ66aの目標回転速度(信号f)が出力され、該目標回転速度に速度修正値が加算又は減算され、修正目標回転速度(信号g)が出力される。又、実際の回転角(信号c)は、回転速度演算部71aにも入力され、該回転速度演算部71aは実際の回転角度から実際の回転速度を演算し、該実際の回転速度(信号h)を出力する。
【0123】
モータドライバ7aは、修正目標回転速度(信号g)と、実際の回転速度(信号h)を基に、前記モータ66aが修正目標回転速度で回転する様、該モータ66aを回転速度制御する。該モータ66aの回転速度制御が継続されることで、速度修正値(信号e)が次第に0に近づき、修正目標回転速度(信号g)が目標回転速度(信号f)に次第に近づき、前記モータ66aの目標回転速度での等速回転が実現する。
【0124】
モータ66bに対しても、上記と同様の制御を行うことで、該モータ66bの目標回転速度での等速回転が実現される。従って、前記モータ66aと前記モータ66bとを等速で一体に回転させ、前記光学プリズム61aと前記光学プリズム61bとを一体に回転させることができる。
【0125】
尚、目標回転角と実際の回転角との差分ではなく、前記エンコーダ68aで検出された前記モータ66aの実際の回転角と、前記エンコーダ68bで検出された前記モータ66bの実際の回転角との差分を基に速度修正値を演算し、修正目標回転速度を演算して、前記モータ66aと前記モータ66bとを同期制御してもよい。
【0126】
上記した様に、第3の実施例では、前記発光素子14よりレーザ光線(測距光)を発光させつつ、前記光学プリズム61a,61bを等速で一体に回転させることで、測距光を円の軌跡で照射することができる。
【0127】
従って、測定対象面48(
図3参照)に対して、測距光を円状の軌跡49(
図3参照)で走査させることができ、前記測定装置1に対する前記測定対象面48の傾斜、水平又は鉛直に対する前記測定対象面48の傾斜を測定することができる。
【0128】
又、前記光学プリズム61aと前記光学プリズム61bとの回転位置関係を変更することで、測距光の偏角を変更即ち前記軌跡49の円軌跡の径を変更できるので、前記測定対象面48の大きさ、該測定対象面48との距離に拘わらず、全ての前記軌跡49を前記測定対象面48上に位置させることができ、作業性を向上させることができる。
【0129】
尚、
図10中では、前記目標角度演算部67a,67b、前記速度修正値演算部69a,69b、前記回転速度演算部71a,71bが独立した構成として記載されているが、実際には、前記目標角度演算部67a,67b、前記速度修正値演算部69a,69b、前記回転速度演算部71a,71bは前記演算制御部9の一部となっている。
【0130】
次に、
図11に於いて、本発明の第4の実施例について説明する。尚、
図11中、
図1中と同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0131】
第4の実施例は、第3の実施例に於ける測定装置に撮像部5を設けた構成となっている。
【0132】
該撮像部5は、例えば50°の画角を有するカメラであり、測定対象物を含む画像データを取得する。該撮像部5は、測定装置1が水平姿勢で水平方向に延出する撮像光軸26を有し、該撮像光軸26と射出光軸13及び受光光軸17とは平行となる様に設定されている。又、前記撮像光軸26と前記受光光軸17との距離は既知となっている。
【0133】
前記撮像部5の撮像素子27は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は画像素子上での位置が特定できる様になっている。例えば、各画素は、前記撮像光軸26を原点とした座標系での位置が特定される。
【0134】
前記撮像部5を設けたことで、測定対象面48(
図3参照)上に全ての軌跡49(
図3参照)が位置するかどうかを、画像上で判断することができる。従って、前記測定対象面48迄の距離が遠い、或は該測定対象面48が小さい等、目視が困難な場合であっても、該測定対象面48上に全ての前記軌跡49が位置するかどうかの判断を正確に行うことができる。
【0135】
尚、形成された前記軌跡49の径は、演算により求めることができる。従って、該軌跡49を含む画像を取得すれば、画像中の該軌跡49の径と演算した該軌跡49の径を基に、画像中の距離を実測値へと変換することができる。例えば、前記測定対象面48に形成されたクラック等の測定対象と前記軌跡49とを含む画像を取得すると、変換された該軌跡49の実測値を基に、クラックの実際の長さを測定することができる。
【0136】
又、前記軌跡49上の座標データの測定結果を基に、前記測定装置1に対する前記測定対象面48の傾斜が測定できるので、前記測定装置1が前記測定対象面48に対して傾斜していた場合であっても、傾斜を補正した画像を取得することができる。
【0137】
第4の実施例に於ける前記測定装置1は、UAV等の飛行体に取付けてもよい。前記撮像部5が画像を取得するタイミング毎に、即ち取得時間間隔で少なくとも1回転する様測距光を回転走査し、例えば1フレーム毎に前記測定装置1に対する前記測定対象面48の傾斜測定を実行すれば、前記撮像部5に取得される画像を、全て前記測定装置1に対する前記測定対象面48の傾斜情報を有する画像とすることができる。即ち、各画像を高精度に傾斜が補正された画像とすることができる。
【0138】
従って、UAVの姿勢に拘わらず、写真測量やトラッキングを高精度に行うことができる。
【0139】
尚、第4の実施例では、第3の実施例の測定装置に前記撮像部5を設けた場合について説明したが、第1の実施例、第2の実施例の測定装置に前記撮像部5を設けてもよいのは言う迄もない。
【0140】
又、第1の実施例〜第4の実施例では、前記測定装置1を作業者が手で保持する等、姿勢が安定しない状態で傾斜を測定する場合について説明したが、加工機等に前記測定装置1を設け、加工品の面精度を測定する場合等にも適用可能である。この場合、姿勢検出装置8は省略することができる。
【0141】
尚、第1の実施例〜第4の実施例では、前記軌跡49上の座標データの測定結果を基に、最小二乗法により楕円フィッティングを行い、フィッティングさせた楕円を基に前記測定対象面48の傾斜を測定していたが、該測定対象面48の傾斜は他の方法により求めてもよい。
【0142】
以下、
図12(A)、
図12(B)〜
図15(A)、
図15(B)に於いて、前記測定対象面48の傾斜を測定する他の方法について説明する。尚、
図12(A)、
図13(A)、
図14(A)、
図15(A)は、前記測定装置1と前記測定対象面48との関係を示している。又、
図12(B)、
図13(B)、
図14(B)、
図15(B)は、縦軸を距離データD(前記測定装置1の測定結果)とし、横軸を測距光が測定基準点72(後述)を通過した時点を0とする計測時間tとしたグラフである。
【0143】
図示では、前記測定装置1が水平に保持され、前記射出光軸13(前記受光光軸17)が水平となっている。又、
図12(A)では、前記測定対象面48が鉛直状態となっている。
【0144】
前記測定装置1により、前記射出光軸13を中心に測距光で前記測定対象面48を円状に走査すると、測定結果である距離データDの軌跡は、前記測定基準点72から該測定基準点72迄を1周期とする正弦波73(
図12(B)、
図13(B)、
図14(B)、
図15(B)では、73a〜73d)となる。
【0145】
尚、前記測定基準点72は、測距光が所定の方向に偏向された際に照射された前記軌跡49上の点である。例えば、前記姿勢検出装置8により検出された水平に対して、或は前記測定装置1を水平に保持した状態で、前記射出光軸13に関して測距光を鉛直上方に偏向した際の前記軌跡49上の点を前記測定基準点72として設定する。又、前記正弦波73の周期は、光軸偏向部を回転させるモータの回転速度により決定される。
【0146】
図12(A)は、前記測定対象面48が傾斜していない状態を示している。該測定対象面48が前記測定装置1と正対している場合には、距離データDの値は全周に亘って一定となる。即ち、正弦波73aは、
図12(B)に示される様に、振幅0の正弦波、即ち直線となる。
【0147】
図13(A)は、前記測定対象面48が前記射出光軸13を通過する鉛直軸を中心に、右縁が手前側に、左縁が奥側となる様に傾斜した場合(水平方向に回転した場合)を示している。測距結果は、前記測定基準点72を0とし、右側では測距結果は小さく、左側では測距結果は大きくなり、
図13(B)に示される様に、正弦波73bは距離データDの最大値と最小値との差を振幅とする正弦波となる。
【0148】
図14(A)は、前記測定対象面48を
図13(A)の場合と同方向に傾斜させ、傾斜角をより大きくした場合を示している。
図14(B)に示される正弦波73cと前記正弦波73bを比較すると、前記正弦波73cは前記正弦波73bと同位相であり、該正弦波73bよりも振幅が大きくなっている。従って、前記測定対象面48の傾斜角により、前記正弦波73の振幅が変化する。尚、前記測定対象面48が逆方向に水平回転すると、右側で測距結果が大きく、左側で測距結果が小さくなり、得られる正弦波は180°位相が異なるものとなる。
【0149】
又、
図15(A)は、前記測定対象面48を前記射出光軸13を通過する水平軸を中心に、下側が手前側に、上側が奥側となる様に傾斜させ、傾斜角を等しくさせた場合(前記測定対象面48を水平軸を中心に鉛直方向に回転させた場合)を示している。この時、前記測定対象面48の上側では測距結果は大きく、下側では測距結果は小さくなる。
図15(B)に示される正弦波73dと前記正弦波73cを比較すると、前記正弦波73dは前記正弦波73cに対して位相が90°進み、該正弦波73cと同等の振幅となっている。
【0150】
又、前記測定対象面48を
図15(A)に示した状態とは逆方向に回転させると、前記正弦波73dは前記正弦波73cに対して位相が90°遅れたものとなる。従って、前記測定対象面48の傾斜方向の変化は、前記正弦波73の位相の変化として現れ、傾斜角(傾斜量)の大きさは振幅の大きさとして現れる。
【0151】
上記した様に、前記測定対象面48の傾斜角が変化すると、前記正弦波73の振幅が変化し、前記測定対象面48の傾斜方向が変化すると、前記正弦波73の位相が変化する。従って、前記正弦波73の波形形状、即ち振幅の大きさと位相のズレを基に、前記測定装置1に対する前記測定対象面48の傾斜角、傾斜方向を測定することができる。
【0152】
又、
図16に示される様に、距離データDと計測時間tとの関係から得られた正弦波74に対して、1周期分の正弦波75をフィッティングさせ、フィッティングさせた正弦波を基に前記測定装置1に対する前記測定対象面48の傾斜を測定してもよい。この場合、前記測定基準点72は設定しなくてもよい。
【0153】
図16中、dを前記測定対象面48迄の平均距離、Aを該測定対象面48の傾斜量を表す係数、ωを光軸偏向部の回転速度、θを前記測定装置1と前記測定対象面48の位置関係を示す係数(位相)とした場合、前記正弦波74にフィッティングさせる前記正弦波75は以下の式で表すことができる。尚、ωは前記測定装置1で制御可能な変数であり、その他の値は測定値となっている。
【0155】
上記した式のうち、フィッティング計算で得られたAとθの値を基に、前記測定装置1に対する前記測定対象面48の角度関係(傾斜量、傾斜方向)を測定することができる。
【0156】
更に、
図17に示される様に、前記正弦波74に対してフーリエ変換を実行し、変換結果から求めた振幅Aと位相θとから前記測定装置1に対する前記測定対象面48の傾斜を測定してもよい。
【0157】
図17中では、主成分の周波数成分76は光軸偏向部の回転速度と一致する周波数成分である。該周波数成分76の振幅、位相値から、前記測定対象面48の法線ベクトル54(
図4参照)が求められ、該法線ベクトル54を基に前記測定装置1に対する前記測定対象面48の傾斜を演算することができる。
【0158】
尚、フーリエ変換にて前記測定対象面48の計測を行う場合、該測定対象面48の傾斜を決める前記周波数成分76は、光軸偏向部の回転速度で決まるパラメータであり、前記測定装置1で制御可能な値である。従って、前記測定対象面48に微小な凹凸がある場合であっても、高精度に前記測定対象面48の傾斜を測定することができる。即ち、フーリエ変換を微小な凹凸に対するフィルタとして機能させることができる。
【0159】
又、微小な凹凸に対するフィルタは、移動平均等のスムージング手法により実行してもよい。