(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807631
(24)【登録日】2020年12月10日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】スリット蓋の設置高さ調整装置
(51)【国際特許分類】
E03F 5/04 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
E03F5/04 D
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-217743(P2016-217743)
(22)【出願日】2016年11月8日
(65)【公開番号】特開2018-76672(P2018-76672A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2019年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】391013416
【氏名又は名称】ゴトウコンクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082658
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 儀一郎
(72)【発明者】
【氏名】松林 秀佳
【審査官】
東 芳隆
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−219960(JP,A)
【文献】
特開平10−306490(JP,A)
【文献】
特開2012−246734(JP,A)
【文献】
特開2014−122533(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0247312(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設U字溝の上部開口に敷設される蓋の設置高さが調整できる蓋の高さ調整装置であり、
前記蓋の高さ調整装置は、ある面で低くなり、ある面で通常の高さとなって、一定の高さではない前記既設U字溝の蓋かかり面と、
前記既設U字溝の蓋かかり面に載置される蓋と、
前記蓋の少なくとも蓋の四隅部であって、その長手方向端部側近傍位置に各々上下方向に向かうよう設けられた凹溝状切り欠きと、
前記凹溝状切り欠きに、該凹溝状切り欠きと略直交するよう取り付けられるプレートと、
該プレートに設けられたねじ穴と、
ねじ穴に螺挿する高さ調整部材と、を備え、
前記高さ調整部材の先端部と該先端部が当接する前記既設U字溝の蓋かかり面との間隔を各々調整自在として前記蓋の設置高さ調整が行える、
ことを特徴とするスリット蓋の設置高さ調整装置。
【請求項2】
前記プレートはあらかじめ蓋の前記凹溝状切り欠きに取り付けられてある、
ことを特徴とする請求項1記載のスリット蓋の設置高さ調整装置。
【請求項3】
前記プレートは、あらかじめ前記凹溝状切り欠きに設けられた切り溝にスライドさせて蓋に取り付け可能とされた、
ことを特徴とする請求項1記載のスリット蓋の設置高さ調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスリット側溝などいわゆるU字溝の上部開口に敷設されるスリット蓋の設置高さ調整装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本件出願人は、すでに既設水路へスリット蓋をモルタルで固定する工法を提案し、特許を取得して実用化している(特許第3943114号)。
【0003】
しかしながら実際の施工に際しては、既設水路へスリット蓋をモルタルで固定する施工につき、いくつかの課題が発生した。
【0004】
たとえば、既設水路の「蓋かかり面」が、新設側溝の場合と同様に、平滑できれいな面であれば問題ないが、経年劣化により、多くの既設水路の蓋かかり面は荒れており、すべての蓋かかり面は一定の高さではなくなって、ある面では極端に低くなっていたり、ある面では通常の高さであったりしていた。
【0005】
この場合の施工方法として、二つの方法が考えられる。一つ目は、一般的な調整プレート(四角い薄い鉄板)を蓋かかり面の上に設置し、スリット蓋を載せる。それでも正しい高さにならない場合は、スリット蓋を持ち上げ、追加の調整プレートを介在させ、ふたたび蓋を載せる。
【0006】
しかし、前述の様な方法であると、正しい高さとなるまで、これらを繰り返すため、手間と時間がかかってしまい、設置がスムーズに出来ない課題があった。
【0007】
二つ目の方法は、低くなってしまった蓋かかり面をモルタルで補修する方法である。まず、側溝の内側に型枠を設置し、蓋かかり面にモルタルを所定の高さまで塗る。その後、モルタルが硬化した後にスリット蓋を設置する。しかしながら、この工法では型枠設置や養生に時間がかかり、スリット蓋設置工事がスムーズに出来ないとの課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3943114号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
かくして、本発明は前記従来の課題に対処すべく創案されたものであって、経年劣化により、多くの既設水路の蓋かかり面が荒れ、すべての蓋かかり面が一定の高さではなくなって、ある面では極端に低くなっていたり、ある面では通常の高さであったりしたときにおいても、手間と時間がかからず、設置がスムーズに出来、また新たな型枠を設置してコンクリートを打設したり、その後のコンクリートの養生を必要としないスリット蓋の設置高さ調整装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
既設U字溝の上部開口に敷設される蓋の設置高さが調整できる蓋の高さ調整装置であり、
前記蓋の高さ調整装置は、
ある面で低くなり、ある面で通常の高さとなって、一定の高さではない前記既設U字溝の蓋かかり面と、
前記既設U字溝の蓋かかり面に載置される蓋と、
前記蓋の少なくとも蓋の四隅部であって、その長手方向端部側近傍位置に各々上下方向に向かうよう設けられた凹溝状切り欠きと、
前記凹溝状切り欠きに、該凹溝状切り欠きと略直交するよう取り付けられるプレートと、
該プレートに設けられたねじ穴と、
ねじ穴に螺挿する高さ調整部材と、を備え、
前記高さ調整部材の先端部と該先端部が当接する
前記既設U字溝の蓋かかり面との間隔を各々調整自在として前記蓋の設置高さ調整が行える、
ことを特徴とし、
または、
前記プレートはあらかじめ蓋の
前記凹溝状切り欠きに取り付けられてある、
ことを特徴とし、
または、
前記プレートは、あらかじめ
前記凹溝状切り欠きに設けられた切り溝にスライドさせて蓋に取り付け可能とされた、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるスリット蓋の設置高さ調整装置であれば、
経年劣化により、多くの既設水路の蓋かかり面が荒れ、すべての蓋かかり面が一定の高さではなくなって、ある面では極端に低くなっていたり、ある面では通常の高さであったりしたときにおいても、手間と時間がかからず、設置がスムーズに出来、また新たな型枠を設置してコンクリートを打設したり、その後のコンクリートの養生を必要としないとの優れた効果を奏する。
【0012】
すなわち、全高さ調整のアジャスターを組み込んで、正しい高さとなるように、簡単にレベル施工ができる固定型スリット蓋を提供できるとの優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を図に基づいて説明する。
【0015】
図において、符号1は、スリット型側溝を示す。該スリット型側溝1は、上部に開口を有するU字溝2と、このU字溝2の上部開口に敷設されるスリット3が設けられた蓋4を有して構成されている。
【0016】
ところで、長期にわたる使用によって既設側溝に経年劣化が生じ、多くの既設水路の蓋かかり面5が荒れてしまっている。
すなわち、蓋かかり面5が一定の高さではなくなってしまっており、
図1に示すように、ある面では極端に低くなっていたり、ある面では通常の高さであったりしている。
【0017】
次に、符号6は設置高さ調整装置示す。該設置高さ調整装置6は、略平板方形状をなす金属製のプレート7を有している。そして、
図3に示すように、該プレート7は、該プレート7の表裏面に貫通して設けられたねじ穴8を有している。
符号9は、前記ねじ穴8に螺挿する高さ調整部材を示す。この高さ調整部材9は、雄ねじ状の基部10とナット頭状の頭部11とを有している。
【0018】
図から理解されるように、スリット蓋4の幅方向両端にはその長手方向端部側近傍位置に各々上下方向に向かう凹溝状切り欠き12が設けられており、この凹溝状切り欠き12内において前記プレート7は水平に取り付けられる。
【0019】
この取付については、何ら限定されないが、あらかじめ型枠内にプレート7をセットしておき、その状態からコンクリートを型枠内に打設し、次いで脱型したとき、前記プレート7の端部は前記凹溝状切り欠き12内でコンクリートに埋設された状態で固定されるものとなる。この固定されたプレート7のねじ穴8に高さ調整部材9を螺挿させて高さ調整することになる。
【0020】
尚、
図3、
図5に示すように、プレート7または設置高さ調整装置6をあらかじめスリット蓋4の幅方向両側に取り付けておかなくともよい。
【0021】
即ち、
図4のように、あらかじめスリット蓋4につき、その幅方向両側に形成した凹溝状切り欠き12に、該凹溝状切り欠き12と略直交するように切り溝13を設けておくだけでよい。
そして、スリット蓋4の設置高さを調整する際に、前記切り溝13内に高さ調整部材9を螺挿したプレート7を差し込むだけでよいのである。
【0022】
以上において、本発明の使用状態につき説明する。
【0023】
まず、高さ調整用のボルト、すなわち高さ調整部材9を螺挿するねじ穴8を設けたプレート7を用意する。
そして、実施例1では、
図3に示すように、スリット蓋4を製造する時に、該プレート7を埋め込んで製造するものとする。
型枠の脱型後には、スリット蓋4に埋め込んだ前記プレート7に高さ調整部材9をねじ込んで取り付けておく。
こうして、形成した設置高さ調整装置6付きのスリット側溝1を、既設の側溝に設置する。
【0024】
このときあらかじめ、既設水路であるスリット側溝1の蓋かかり面5に、厚みのある大きめの伸縮性スポンジなどの緩衝材14を接着剤で張り付けておくものとする。
【0025】
そして、この上に設置高さ調整装置6付きのスリット蓋4を設置し、ラチェットレンチやインパクトレンチ等で高さ調整部材9を回転させ、スリット蓋4の上面の高さを正しい高さに調整する。
【0026】
調整した後は、
図2に示すように、隙間15より無収縮モルタルなどの充填材16を注入する。この時、緩衝材14が、型枠の役目をはたし、充填材16が流れ出るのを防ぐことができる。
【0027】
尚、
図4及び
図5は実施例2の構成説明図であり、実施例2では、スリット蓋4を製造するときに、前記プレート7が差し込める切り溝13が設けられるように型枠を配置し製造する。型枠脱型後、例えばあらかじめ高さ調整部材9をねじ込んであるプレート7を前記切り溝13に差し込めば高さ調整が出来るものとなる。
【0028】
ここで、実施例2のタイプのスリット蓋4については、例えば高さ調整を必要としない場合に、設置高さ調整装置6の付いていない
図4に示すスリット蓋4を用意すればよく、その場合にコストが高くなる設置高さ調整装置つきスリット蓋4に比較して安価なスリット蓋4を提供できるものとなる。
【符号の説明】
【0029】
1 スリット側溝
2 U字溝
3 スリット
4 スリット蓋
5 蓋かかり面
6 設置高さ調整装置
7 プレート
8 ねじ穴
9 高さ調整部材
10 基部
11 頭部
12 凹溝状切り欠き
13 切り溝
14 緩衝材
15 隙間
16 充填材