(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
入口案内翼を備えた圧縮機と、燃料ノズルを備えた燃焼器と、前記圧縮機によって圧縮された空気が流入する車室と、前記車室から圧縮空気を抽気する抽気配管と、を備えたガスタービンの燃焼制御システムであって、
前記ガスタービンの運転中に負荷を切り離す負荷遮断信号を取得する負荷遮断信号取得部と、
前記燃料ノズルから噴射する燃料の供給量を制御する燃料制御部と、
前記圧縮空気の抽気量を調節するバイパス弁を制御するバイパス弁制御部と、
前記バイパス弁を開状態とする時間を示す開時間を記憶する記憶部と、
を備え、
前記開時間は、前記燃焼器に設けられた、燃料と空気とを予め混合した予混燃料ガスを噴射する予混パイロットノズルの燃空比が、前記負荷遮断時に前記予混パイロットノズルが供給し続ける燃料に対して火炎の失火が生じない値を保ちつつ、且つ前記燃空比の過度な増大を回避できるよう定められた時間であり、
前記負荷遮断信号取得部が負荷遮断信号を取得すると、前記燃料制御部は、前記燃料の供給量を、ガスタービンの回転数が所定の閾値を超えないように定められた供給量以下に制御し、前記バイパス弁制御部は、前記バイパス弁を閉状態から開状態に制御し、前記開状態を前記開時間だけ維持する、
ガスタービンの燃焼制御システム。
入口案内翼を備えた圧縮機と、燃料ノズルを備えた燃焼器と、前記圧縮機によって圧縮された空気が流入する車室と、前記車室から圧縮空気を抽気する抽気配管と、を備えたガスタービンの燃焼制御方法であって、
前記ガスタービンの運転中に負荷を切り離す負荷遮断信号を取得するステップと、
前記燃料ノズルから噴射する燃料の供給量を制御するステップと、
前記圧縮空気の抽気量を調節するバイパス弁を制御するステップと、
前記バイパス弁を開状態とする時間を示す開時間を記憶部から取得するステップと、
を備え、
前記開時間は、前記燃焼器に設けられた、燃料と空気とを予め混合した予混燃料ガスを噴射する予混パイロットノズルの燃空比が、前記負荷遮断時に前記予混パイロットノズルが供給し続ける燃料に対して火炎の失火が生じない値を保ちつつ、且つ前記燃空比の過度な増大を回避できるよう定められた時間であり、
前記負荷遮断信号を取得するステップにおいて負荷遮断信号を取得すると、前記燃料の供給量を制御するステップでは、前記燃料の供給量を、ガスタービンの回転数が所定の閾値を超えないように定められた供給量以下に制御し、前記バイパス弁を制御し、前記開状態を前記開時間だけ維持するステップでは、前記バイパス弁を閉状態から開状態に制御する、
ガスタービンの燃焼制御方法。
入口案内翼を備えた圧縮機と、燃料ノズルを備えた燃焼器と、前記圧縮機によって圧縮された空気が流入する車室と、前記車室から圧縮空気を抽気する抽気配管と、を備えたガスタービンの燃焼制御システムのコンピュータを、
前記ガスタービンの運転中に負荷を切り離す負荷遮断信号を取得する手段、
前記燃料ノズルから噴射する燃料の供給量を制御する手段、
前記圧縮空気の抽気量を調節するバイパス弁を制御する手段、
前記バイパス弁を開状態とする時間を示す開時間を記憶部から取得する手段、
として機能させるためのプログラムであって、
前記開時間は、前記燃焼器に設けられた、燃料と空気とを予め混合した予混燃料ガスを噴射する予混パイロットノズルの燃空比が、前記負荷遮断時に前記予混パイロットノズルが供給し続ける燃料に対して火炎の失火が生じない値を保ちつつ、且つ前記燃空比の過度な増大を回避できるよう定められた時間であり、
前記負荷遮断信号を取得する手段が負荷遮断信号を取得すると、前記燃料の供給量を制御する手段は、前記燃料の供給量を、ガスタービンの回転数が所定の閾値を超えないように定められた供給量以下に制御し、前記バイパス弁を制御する手段は、前記バイパス弁を閉状態から開状態に制御し、前記開状態を前記開時間だけ維持する、
プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第一実施形態>
以下、本発明の一実施形態によるガスタービン燃焼制御装置を
図1〜
図5を参照して説明する。
図1は、本発明に係る第一実施形態におけるガスタービンプラントの系統図である。
図示するように本実施形態のガスタービンプラント1は、ガスタービン2と、ガスタービン2によって駆動され発電する発電機3とを含む。ガスタービン2と発電機3はロータ16で連結されている。
ガスタービン2は、空気入口系統10から流入する空気量を調整するIGV(入口案内翼)11と、流入した空気を圧縮して圧縮空気を生成する圧縮機12と、圧縮機12によって圧縮された空気が流入する車室13と、複数の燃料ノズル21C〜25Cが噴射した燃料ガスおよび車室13から入流した圧縮空気を混合して燃料ガスを燃焼させ、高温の燃焼ガスを生成する燃焼器14と、燃焼ガスによりロータ16を回転し発電機3を駆動するタービン15と、圧縮機12を冷却する冷却空気を抽気する冷却配管17と、車室13から圧縮空気を抽気する抽気配管18と、燃料タンク26および複数の燃料系統(21〜25)と、圧力系統27が供給する燃料供給圧を制御する調整弁28及び調整弁29と、ガスタービン燃焼制御装置50とを含んで構成される。抽気配管18には、抽気空気の抽気量を調節するバイパス弁19が設けられている。また、空気入口系統10の付近には、温度センサ30が設けられている。また、廃棄系統20は、タービン15からの排ガスや抽気配管18からの圧縮空気などを廃棄する。
【0020】
燃料系統には、拡散パイロット系統21、予混パイロット系統22、メインA系統23、メインB系統24、トップハット系統25が含まれる。拡散パイロット系統21には、燃料タンク26からの燃料供給量を調整する調整弁21A、拡散パイロット用マニホールド21Bに接続された燃料ノズル21Cが含まれている。予混パイロット系統22には、燃料タンク26からの燃料供給量を調整する調整弁22A、予混パイロット用マニホールド22Bに接続された燃料ノズル22Cが含まれている。メインA系統23には、燃料タンク26からの燃料供給量を調整する調整弁23A、メインA用マニホールド23Bに接続された燃料ノズル23Cが含まれている。メインB系統24には、燃料タンク26からの燃料供給量を調整する調整弁24A、メインB用マニホールド24Bに接続された燃料ノズル24Cが含まれている。トップハット系統25には、燃料タンク26からの燃料供給量を調整する調整弁25A、トップハット用マニホールド25Bに接続された燃料ノズル25Cが含まれている。燃料ノズル21C、燃料ノズル22C、燃料ノズル23C、燃料ノズル24Cは、燃焼器14に燃料ガスを噴射する。燃料ノズル25Cは、燃焼器14のより上流で燃料ガスを噴射する。圧力系統27は、燃料タンク26へ燃料の供給圧を与える。調整弁28および調整弁29は、燃料タンク26への燃料の供給圧を調整する弁である。
【0021】
拡散パイロット系統21は、拡散燃焼を行って火炎の安定化を図る。予混パイロット系統22は、予混合燃焼を行って燃焼器14の低NOx化を向上する。メインA系統23、メインB系統24は、ガスタービン2の出力に応じた予混ガスを供給する主力の燃料系統である。トップハット系統25は、燃焼効率の向上や火炎の安定化を図るため、燃焼器14の上流(車室13側)から燃料ガスを噴射する。ガスタービン燃焼制御装置50は、ガスタービン2の出力や運転状態に応じて、これら複数の燃料系統21〜25から供給する燃料供給量を制御する。
【0022】
ここで、負荷遮断時における従来の燃焼制御方法による問題を、
図13を用いて説明する。
図13は、従来の従来の燃焼制御方法による問題点を説明する図である。
図13(a)、(b)は、負荷遮断時に燃料を投入しすぎた場合に生じる問題点を説明する図である。
図13(a)のグラフ121は、負荷遮断後の時間の経過に伴う、ガスタービンの回転数の変化を示したグラフである。グラフ12Tは、オーバースピードトリップ(OSP)の110%となる回転数を示している。図示するように、時刻t1から時刻t2までの間でグラフ121の値は、グラフ12Tの値を超えている。このとき、ガスタービンでは、OSPが発生している。
【0023】
図13(b)のグラフ122は、負荷遮断後の予混パイロット系統22の燃料ノズル22Cが噴出した燃料ガスの燃空比(予混パイロット燃空比)と、メインA系統およびメインB系統の燃料ノズル23C、燃料ノズル24Cが噴出した燃料ガスの燃空比(メイン燃空比)との関係を示している。グラフ12Cは、予混パイロット系統22の燃料ノズル22Cにおける火炎が失火するかどうかの閾値となる値(燃空比クライテリア)を示している。予混パイロット燃空比が少なくともある1点で燃空比クライテリア以上となると燃料ノズル22Cの失火を防ぐことができる。なお、燃空比とは、燃料供給量を空気量で除算した値である。
負荷遮断が生じると、メインA系統、メインB系統から供給する燃料を減らし、拡散パイロット系統21および予混パイロット系統22から供給する燃料を増加させることで、ガスタービン2の出力を抑えつつ燃焼器14の保炎を図る制御が行われる。グラフ122は、負荷遮断直後に予混パイロット燃空比が上昇し(グラフ122右端)、やがて、燃空比クライテリアに達する様子を示している。
図13(b)の場合、予混パイロット燃空比は、燃空比クライテリアを上回っているので失火は生じない。
図13(a)、
図13(b)の場合、燃料ノズル22Cから投入する燃料の量が多いため、失火は生じないが、回転数がOSP規定値の110%を超えてしまう。従って、この場合の負荷遮断後の運転は失敗と判定される。
【0024】
図13(c)、(d)は、燃料投入量が足りない場合に生じる問題点を説明する図である。
図13(c)のグラフ121は、負荷遮断後の時間の経過に伴う、ガスタービンの回転数の変化を示したグラフである。図示するようにグラフ121の値は、グラフ12Tの値以下のまま推移している。つまり、
図13(c)の例では、OSPが発生していない。
図13(d)のグラフ122は、ガスタービンの回転数が
図13(c)のような挙動を示したときの予混パイロット燃空比とメイン燃空比との関係を示している。図示するようにグラフ122の値は、グラフ12Cの値以下である。この場合、予混パイロット燃空比は、燃空比クライテリア以下となるため、燃料ノズル22Cにおいて失火が生じる可能性が高くなる。失火が生じると負荷遮断後の運転は失敗と判定される。
【0025】
上述のとおり、負荷遮断後は、ガスタービンの回転数を徐々に低下させていくため、メインA系統およびメインB系統から供給する燃料を少なくしてゆく。このとき、燃焼器14内の火炎は、拡散パイロット系統21と予混パイロット系統22から供給される燃料によって保持する。拡散パイロット系統21の燃料ノズル21Cからは、燃焼しやすい燃料ガスを噴射する。一方、予混パイロット系統22の燃料ノズル22Cからは、燃料と空気とを予め混合した予混燃料ガスを噴射する。そのため、燃料ノズル21Cに比べ、燃料ノズル22Cは失火しやすく、負荷遮断後の失火という観点からは、予混パイロット系統22の燃料ノズル22Cにおける保炎が課題となる場合が多い。つまり、燃料ノズル22Cの燃空比を燃空比クライテリア以上にする必要がある。
【0026】
ところで、ガスタービン2の回転数は、燃空比ではなく燃焼器14に供給される燃料の量に依存する。従って、負荷遮断後の燃料供給量を、OSTが発生しないような燃料供給量に制限すれば、燃空比によらず、ガスタービンの回転数をOST規定値の110%以下に制御することができる。しかし、OSTを発生させないような量の燃料を供給したとしても失火を防ぐことができる燃空比を保つことができない可能性がある。そこで、本実施形態のガスタービン燃焼制御装置50は、負荷遮断信号40を取得すると、ガスタービンの回転数がOST規定値の110%を超えないような所定量以下の燃料を各燃料ノズル21C〜25Cから供給するよう調整弁21B〜25Bの弁開度を制御するとともに、バイパス弁19を閉状態から開状態に制御する。バイパス弁19が開状態となると車室13の圧縮空気を廃棄系統20へ抽気する。これにより、燃焼器14に流入する圧縮空気が減少し、燃焼器14の燃空比を燃空比クライテリア以上に保つことができる。
【0027】
図2は、本発明に係る第一実施形態におけるガスタービン燃焼制御装置のブロック図である。
図示するようにガスタービン燃焼制御装置50は、負荷遮断信号取得部51と、燃料制御部52と、バイパス弁制御部53と、記憶部54を備えている。
【0028】
なお、ガスタービン燃焼制御装置50は、例えば、サーバ端末装置などのコンピュータによって構成され、負荷遮断信号取得部51、燃料制御部52、バイパス弁制御部53の少なくとも一部はガスタービン燃焼制御装置50の備えるCPUがハードディスクなどの記憶部54からプログラムを読み出し実行することで備わる機能である。また、負荷遮断信号取得部51、燃料制御部52、バイパス弁制御部53の全て又は一部は、マイコン、LSI(Large Scale Integration)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。ガスタービン燃焼制御装置50は、ガスタービン燃焼制御システムの一例である。
【0029】
負荷遮断信号取得部51は、ガスタービンの運転中に負荷を切り離す負荷遮断信号40を取得する。
燃料制御部52は、燃料ノズル21C〜25Cから噴射する燃料の供給量を制御する。特に本実施形態において燃料制御部52は、負荷遮断信号取得部51が負荷遮断信号40を取得すると、燃料ノズル21C〜25Cから噴射する燃料の供給量を、ガスタービンの回転数がOST規定値の110%を超えないような所定の供給量以下に制御する。
【0030】
バイパス弁制御部53は、抽気配管18から抽気される圧縮空気の抽気量を調節するバイパス弁19を制御する。具体的には、バイパス弁制御部53は、負荷遮断信号取得部51が負荷遮断信号40を取得すると、バイパス弁19を閉状態から開状態に制御し、燃焼器14における燃料ノズル22Cからの予混燃料ガスの燃空比が、失火が発生しないと定められた所定の燃空比(燃空比クライテリア)以上となるように抽気量を調整する。特に本実施形態においてバイパス弁制御部53は、バイパス弁19を所定の時間だけ100%開状態とする制御を行う。
【0031】
記憶部54は、負荷遮断時の回転数がOST規定値の110%を超えないように定められた所定の燃料供給量、バイパス弁19をどれだけの時間だけ開状態とするか等の種々の情報を記憶する。
なお、ガスタービン燃焼制御装置50は、これらの他にもさまざまな機能を備えているが、本実施形態に関係のない機能についての説明は省略する。
【0032】
図3は、本発明に係る第一実施形態におけるバイパス弁の制御方法を説明する図である。
圧縮機12で圧縮された圧縮空気は、車室13を経由して燃焼器14に流入する。燃焼器14では、燃料ガスが流入した圧縮空気と混合し燃焼する。この際、流入する空気流量は圧縮機12の回転数とIGV11の開度で決まるが、圧縮機12はタービン15と同軸となっており、ガスタービン2の出力は負荷遮断後の出力制御によって管理されるため、圧縮機12の回転数(タービン15の回転数)を変更して空気流量を操作することはできない。一方、IGV11は負荷遮断時に全閉に近い状態に制御されるが、既にIGV11を通過して流入した空気は、燃焼器14に投入されてしまう。そこで、車室13から抽気した空気を大気に排出する系統(抽気配管18)を追加する。また、抽気配管18にはバイパス弁19を設け、負荷遮断時の必要なときのみバイパス弁19を開状態とし、車室13の圧縮空気を廃棄系統20へ抽気する。これにより、自由に変更することができない圧縮機12の回転数およびIGVの開度によらず、燃焼器14に流入する圧縮空気の量を制御することができる。
【0033】
図3のスイッチ531は、このバイパス弁19の弁開度を制御し、負荷遮断時に車室13の圧縮空気を廃棄系統20へ抽気する。スイッチ531は、弁開度を100%(全開)とする弁開度指令信号と弁開度を0%(全閉)とする弁開度指令信号を切り替えてバイパス弁19へ出力する。スイッチ531は、負荷遮断信号取得部51を経由して負荷遮断信号(LRT)40を取得すると、バイパス弁19を所定の時間だけ全開にし、その後、全閉にする。所定の時間とは、弁開度を全開にして圧縮空気を抽気した場合に、燃料ノズル22Cの燃空比が燃空比クライテリア以上となり、かつ過度に上昇することがないように定められた時間である。なお、スイッチ531は、バイパス弁制御部53の具体的な構成の一例である。
【0034】
図4は、本発明に係る第一実施形態における燃焼制御処理のフローチャートである。
図4のフローチャートを用いて本実施形態における負荷遮断時の燃料供給制御およびバイパス弁19の開閉制御について説明する。
前提としてバイパス弁19は閉状態であるとする。また、ガスタービン2の運転中に負荷遮断が生じたものとする。すると、負荷遮断信号取得部51が負荷遮断信号(LRT)40を取得する(ステップS11)。負荷遮断信号取得部51は、燃料制御部52およびバイパス弁制御部53に負荷遮断の発生を通知し、負荷遮断時の燃焼制御を行うよう指示を行う。すると燃料制御部52は、回転数がOST規定値の110%以下となる燃料流量を決定する(ステップS12)。例えば、記憶部54には、ガスタービン2の回転数がOST規定値110%を超えないような燃料供給量の閾値が記録されている。この閾値は、実機での検証やシミュレーションで算出された値である。そして、燃料制御部52は、その閾値に基づいて、各燃料系統21〜25に配分する燃料の割合を算出する。燃料制御部52は、予混パイロット系統22に配分する燃料供給量の最大値を算出する。同様に、燃料制御部52は、拡散パイロット系統21、メインA系統23、メインB系統24、トップハット系統25への燃料供給量を算出する。燃料制御部52は、各燃料ノズル21C〜25Cから算出した燃料が噴出されるように、各燃料ノズルに対応する調整弁21B〜25Bそれぞれの弁開度を算出する。燃料制御部52は、算出した弁開度に応じた弁開度指令値を各調整弁21B〜25Bに出力する。これにより、各燃料系統21〜25からは、回転数がOST規定値110%以下となるような量の燃料ガスが噴射される。
【0035】
一方、バイパス弁制御部53は、バイパス弁19を閉状態から開状態に制御する。まず、バイパス弁制御部53は、バイパス弁19を全開にしておく時間Tc(例えば数秒)を決定する(ステップS13)。例えば、予混パイロット系統22の燃料ノズル22Cの燃空比が、火炎の失火が生じない燃空比となるようなバイパス弁19の全開時間が予め燃焼器14の単体試験、シミュレーション等で決定されており、その値が記憶部54に記録されている。バイパス弁制御部53は、この値を記憶部54から読み出して時間Tcに設定する。次に、バイパス弁制御部53は、バイパス弁19を全開(弁開度100%)とする弁開度指令値を、バイパス弁19に出力する(ステップS14)。これにより、バイパス弁19は全開となり、圧縮機12から車室13に送出された圧縮空気の一部が、抽気配管18を経由して廃棄系統20から大気へ放出される。車室13の圧縮空気の一部が失われることによって、車室13から燃焼器14に流入する圧縮空気の量が減少する。これにより、燃焼器14における燃空比が上昇する。ここで、時間Tcより長時間、車室13からの抽気を行うと、燃空比が過度に増大し、燃料ノズル21C〜25Cを含む燃焼器14の故障等を引き起こす可能性がある。そこで、バイパス弁制御部53は、失火が生じないように時間Tcの間だけバイパス弁19を全開にし、その後、全閉の状態に戻す制御を行う。バイパス弁制御部53は、時間Tcが経過したかどうかを監視する(ステップS15)。時間Tcが経過しない場合(ステップS15;No)、バイパス弁制御部53は、バイパス弁19を全開にしてから時間Tcが経過するまで待機する。時間Tcが経過した場合(ステップS15;Yes)、バイパス弁制御部53は、バイパス弁19を全閉(弁開度0%)とする弁開度指令値を、バイパス弁19に出力する(ステップS16)。これにより、車室13からの抽気が停止され、燃焼器14の燃空比が過度に上昇することを防ぐことができる。
【0036】
図5は、本発明に係る第一実施形態における燃焼制御処理の効果を説明する図である。
図5(a)、(b)は、本実施形態によるバイパス弁19の開閉制御を行った場合の負荷遮断後に生じる回転数および燃空比の挙動を示す図である。
図5(a)のグラフ121は、負荷遮断後の時間の経過に伴う、ガスタービンの回転数の変化を示したグラフである。図示するようにグラフ121の値は、グラフ12Tの値以下のまま推移しており、OSPが発生していない。
図5(b)のグラフ122は、予混パイロット燃空比とメイン燃空比との関係を示している。図示するようにグラフ122の値は、グラフ12Cの値を上回っている。予混パイロット燃空比が燃空比クライテリアを上回っているため失火は生じない。このように本実施形態によれば、負荷遮断後の運転は成功となる。
【0037】
本実施形態によれば、車室13の圧縮空気をバイパスする抽気配管18を設け、バイパス弁19の開閉制御により、負荷遮断時の必要なときのみ圧縮空気を抽気するよう制御する。車室13から圧縮空気を抽気することで、燃焼器14に流入する空気流量を減らすことができる。これにより、燃焼器14に供給する燃料流量を増やさずに燃焼器14の燃空比を高めることができる。燃焼器14への燃料供給量を増やさないためOSTの発生を防ぐことができる。また、無駄な燃料を消費することを防止することができる。燃空比を高めることができるので、燃焼器14における失火、ガスタービンの停止を防ぐことができる。本実施形態によるバイパス弁19の開閉制御は、比較的失火しやすい予混パイロット系統22に対して特に効果的である。このように本実施形態のガスタービン燃焼制御装置50によれば、ガスタービン2の回転数をOST以下とし、かつ失火を防ぐことができるので、負荷遮断後の運転を成功させることができる。
【0038】
<第二実施形態>
以下、本発明の第二実施形態によるガスタービン燃焼制御装置を
図6〜
図7を参照して説明する。
以下、
図1に例示したガスタービンプラントの系統図、
図2に例示したガスタービン燃焼制御装置のブロック図を前提に第二実施形態に係るガスタービン燃焼制御装置50aについて説明を行う。第一実施形態と同様の構成には同じ符号を付して説明を行う。ガスタービン燃焼制御装置50aは、第一実施形態と異なる方法でバイパス弁19の制御を行う。第二実施形態においてバイパス弁19の制御は、バイパス弁制御部53aが行う。第一実施形態では、バイパス弁制御部53がバイパス弁19を所定時間だけ全開とすることで車室13から抽気する圧縮空気の抽気量を制御した。この第二実施形態では、バイパス弁制御部53aが、バイパス弁19の弁開度を、負荷遮断信号取得部51が負荷遮断信号40を取得する直前のガスタービン2の出力値に応じて決定する。
【0039】
図6は、本発明に係る第二実施形態におけるバイパス弁の制御方法を説明する図である。
負荷遮断を行うと、急に負荷が無くなるので、それまでの回転動力の勢いによってガスタービン2の回転数は上昇傾向になる。負荷遮断時の回転数の上昇には、直前のガスタービン2の出力の大きさが支配的に影響する。例えば、負荷遮断直前の出力が小さい場合は、負荷遮断後の回転数の上昇が小さく、OSTが生じる可能性は少ない。また、ガスタービン2の出力に応じて、各燃料ノズル21C〜25Cから噴射される燃料供給量やIGV11の開度(圧縮機12への空気流入量)も異なるため、燃空比の制御もガスタービン2の出力に応じて行うことが好ましい。そこで、本実施形態では、負荷遮断直前のガスタービン2の出力値を用いてバイパス弁19の開度を決定する。
【0040】
図6のスイッチ532cは、負荷遮断直前のガスタービン2の出力値に応じた弁開度(X%)指令信号と、弁開度を0%(全閉)とする指令信号を切り替えてバイパス弁19へ出力する。スイッチ532cは、負荷遮断信号取得部51が負荷遮断信号(LRT)40を取得すると、バイパス弁19を所定の時間だけX%の開度で開状態とし、その後、閉状態(全閉)とする。
弁開度X%は、関数532bが算出する。関数532bは、ガスタービンの出力値と弁開度との対応関係を規定する関数である。グラフ532dは、関数532bの一例である。グラフ532dの横軸はガスタービン2の出力値、縦軸はバイパス弁19の弁開度である。グラフ532dが示すように、バイパス弁19の弁開度は、ガスタービン2の出力値が大きい程、大きくなるように規定されている。関数532bは、スイッチ532aからガスタービン2の出力値を取得し、グラフ532dで例示した関数に基づいてバイパス弁19の弁開度を算出する。関数532bは、バイパス弁19を所定の時間だけ開状態とすれば、燃料ノズル22C(予混パイロット系統22)における失火を防ぐ燃空比が維持できる分量の圧縮空気を抽気することができる弁開度X%を、ガスタービン出力値に対応付けて規定した関数である。関数532bは、予め実験、シミュレーション等により用意され、記憶部54に記録されている。なお、所定の時間とは、例えば第一実施形態の時間Tcである。
【0041】
スイッチ532aは、関数532bに出力する負荷遮断直前のガスタービン2の出力値を設定する。スイッチ532aにはガスタービン2の出力値(GTMW)が入力され、スイッチ532aはその値を関数532bに出力している。また、スイッチ532aには、負荷遮断信号取得部51を経由して負荷遮断信号40が入力される。スイッチ532aは、負荷遮断信号40を取得すると、その時出力しているGTMWを保持する。つまり、負荷遮断後、スイッチ532aは保持したGTMW(負荷遮断直前のGTMW)を関数532bに出力する。
このように負荷遮断が生じると、スイッチ532a、関数532b、スイッチ532cは連動し、スイッチ532cは、負荷遮断直前のガスタービン出力値に応じた弁開度でバイパス弁19の開度を制御する。なお、スイッチ532a、関数532b、スイッチ532cは、バイパス弁制御部53aの具体的な実装の一例を示している。
【0042】
例えば、負荷遮断直前のガスタービン2の出力値が小さい場合、燃焼器14へ供給される燃料は少ない。従って負荷遮断後の回転数がOST規定値の110%に達するまでに投入できる燃料の量には余裕がある(OSTとなる可能性は低い)。また、負荷遮断直前のガスタービン2の出力値が小さい場合、燃焼器14への燃料供給量だけでなく、圧縮機12へ流入する空気量も小さくなるようにIGV11の開度が制御される。従って、バイパス弁19の開度を大きくし過ぎると、元々少ない圧縮空気を余分に抽気することになり、燃空比が過度に上昇してしまうことになる。従って、第二実施形態では、ガスタービン出力値が低い場合、バイパス弁19の開度を絞り気味にする。一方、ガスタービン出力値が大きい場合、燃焼器14へ投入されている燃料供給量と圧縮機12へ流入する空気量は大きくなるよう制御される。従ってこの場合、圧縮空気の量が元々多いのでバイパス弁19の開度を大きくし、抽気を多く行うことで燃空比を維持する。
【0043】
図7は、本発明に係る第二実施形態における燃焼制御処理のフローチャートである。
図7のフローチャートを用いて本実施形態における負荷遮断時の燃料供給制御およびバイパス弁19の開閉制御について説明する。第一実施形態と同様の処理には同じ符号を付して簡単に説明を行う。
まず、負荷遮断信号取得部51が負荷遮断信号(LRT)40を取得する(ステップS11)。負荷遮断信号取得部51は、燃料制御部52およびバイパス弁制御部53aに負荷遮断の発生を通知し、負荷遮断時の燃焼制御を行うよう指示を行う。すると燃料制御部52は、回転数がOST規定値の110%以下となる燃料流量を決定する(ステップS12)。燃料制御部52は、決定した燃料流量に応じた弁開度指令値を各調整弁21B〜25Bに出力する。
【0044】
一方、バイパス弁制御部53aは、バイパス弁19を閉状態から開状態に制御する。まず、バイパス弁制御部53aは、バイパス弁19を開状態にしておく時間Tc(例えば数秒)を決定する(ステップS13)。例えば、バイパス弁制御部53aは、時間Tcの値を記憶部54から読み出す。次に、バイパス弁制御部53aは、ガスタービン2の出力値に応じたバイパス弁19の弁開度を算出する(ステップS141)。具体的な算出方法は、
図6を用いて説明したとおりである。つまり、バイパス弁制御部53aは、ガスタービン出力値と弁開度の関係を規定する関数等(例えば、グラフ532d)と、負荷遮断直前のガスタービン2の出力値に基づいて、ガスタービン2の出力値に応じた弁開度を算出する。バイパス弁制御部53aは、算出した弁開度に対応する弁開度指令値をバイパス弁19に出力する(ステップS142)。これにより、バイパス弁19が開状態となり、車室13から圧縮空気の一部が抽気される。そして、燃焼器14における燃空比が上昇する。
【0045】
ここで、燃空比が過度に上昇すると燃焼器14の故障等を引き起こす可能性があるのは第一実施形態と同様である。そのため、バイパス弁制御部53aは、時間Tcの間だけバイパス弁19をステップS141で算出した弁開度で開状態にし、その後、全閉の状態に戻す制御を行う。バイパス弁制御部53aは、時間Tcが経過したかどうかを監視し(ステップS15)、バイパス弁19を開状態にしてから時間Tcが経過するまで待機する。時間Tcが経過した場合(ステップS15;Yes)、バイパス弁制御部53aは、バイパス弁19を全閉(弁開度0%)とする弁開度指令値を、バイパス弁19に出力する(ステップS16)。これにより、車室13からの抽気が停止され、燃焼器14の燃空比が過度な上昇を防ぐことができる。
【0046】
本実施形態では、負荷遮断直前のガスタービン出力に応じてバイパス弁19の弁開度を調整可能である。例えば出力が高いときは弁開度を大きく,出力が低いときは弁開度を小さくする。これにより、車室13から抽気する圧縮空気の抽気量を、ガスタービン2の出力に応じて変化する燃料供給量および空気流入量に対して最適化することができる。本実施形態によれば第一実施形態の効果に加え、燃焼器14の燃空比をガスタービン出力値に応じてより適切に制御することで、負荷遮断時の失火をより確実に防ぐことができる。
【0047】
<第三実施形態>
以下、本発明の第三実施形態によるガスタービン燃焼制御装置を
図8〜
図9を参照して説明する。
以下、第二実施形態と同様に
図1のガスタービンプラント、
図2のガスタービン燃焼制御装置を前提に第三実施形態に係るガスタービン燃焼制御装置50bについて説明を行う。第一実施形態と同様の構成には同じ符号を付して説明を行う。ガスタービン燃焼制御装置50bは、第一実施形態、第二実施形態と異なる方法でバイパス弁19の制御を行う。第三実施形態おいてバイパス弁19の制御は、バイパス弁制御部53bが行う。バイパス弁制御部53bは、バイパス弁19の弁開度を、負荷遮断信号取得部51が負荷遮断信号40を取得する直前のIGV11の開度に応じて決定する。
【0048】
図8は、本発明に係る第三実施形態におけるバイパス弁の制御方法を説明する図である。
IGV11は、圧縮機12への空気流量を調整する翼である。空気流量が多いときはそれだけ多くの圧縮空気を車室13から抽気する必要がある。そこで、本実施形態では、バイパス弁19の開度を、IGV11の開度の関数として決定する。なお、負荷遮断時には、IGV11は全閉に近い状態に制御される。そのため、負荷遮断直前のIGV11の開度をパラメータとして用いる。
【0049】
図8のスイッチ533bは、負荷遮断直前のIGV11の開度に応じた弁開度(Y%)指令信号と、弁開度を0%(全閉)とする指令信号を切り替えてバイパス弁19へ出力する。
弁開度Y%は、関数533aが算出する。関数533aは、IGV11の開度と弁開度との対応関係を規定する関数である。グラフ533cは、関数533aの一例である。グラフ533cの横軸はIGV11の開度、縦軸はバイパス弁19の弁開度である。グラフ533cが示すように、バイパス弁19の弁開度は、IGV11の開度が大きい程、大きくなるように規定されている。これにより、IGV11の開度が大きく、多量の空気が流入した場合、それに応じて多量の圧縮空気を車室13から抽気することができる。関数533aは、IGV11の開度を制御する制御装置(図示せず)などからIGV開度を取得し、グラフ533cで例示した関数に基づいてバイパス弁19の弁開度を算出する。関数533aは、バイパス弁19を所定時間だけ開状態とすれば、燃料ノズル22C(予混パイロット系統22)における失火を防ぐ燃空比が維持できる分量の圧縮空気を抽気することができる弁開度Y%をIGV11の開度に対応付けて規定した関数である。関数533aは、予め実験、シミュレーション等により用意され、記憶部54に記録されている。なお、所定の時間とは、例えば第一実施形態の時間Tcである。
【0050】
スイッチ533bは、負荷遮断信号(LRT)40を取得すると、関数533aが算出した弁開度Y%を取得する。そして、スイッチ533bは、バイパス弁19を所定の時間だけY%の開度にし、その後、全閉にする。このように負荷遮断が生じると、関数533a、スイッチ533bは連動し、負荷遮断直前のIGV11の開度に応じた弁開度でバイパス弁19の開度を制御する。
なお、関数533a、スイッチ533bは、バイパス弁制御部53bの具体的な実装の一例を示している。
【0051】
図9は、本発明に係る第三実施形態における燃焼制御処理のフローチャートである。
図9のフローチャートを用いて本実施形態における負荷遮断時の燃料供給制御およびバイパス弁19の開閉制御について説明する。第一実施形態、第二実施形態と同様の処理には同じ符号を付して簡単に説明を行う。
まず、負荷遮断信号取得部51が負荷遮断信号40を取得する(ステップS11)。負荷遮断信号取得部51は、燃料制御部52およびバイパス弁制御部53bに負荷遮断の発生を通知し、負荷遮断時の燃焼制御を行うよう指示を行う。すると燃料制御部52は、回転数がOST規定値の110%以下となる燃料流量を決定する(ステップS12)。燃料制御部52は、決定した燃料流量に応じた弁開度指令値を各調整弁21B〜25Bに出力する。
【0052】
一方、バイパス弁制御部53bは、バイパス弁19を閉状態から開状態に制御する。まず、バイパス弁制御部53bは、バイパス弁19を開状態にしておく時間Tc(例えば数秒)を決定する(ステップS13)。例えば、バイパス弁制御部53bは、実験等に基づいて決定された時間Tcの値を記憶部54から読み出す。次に、バイパス弁制御部53bは、IGV11の開度に応じたバイパス弁19の弁開度を算出する(ステップS143)。具体的な算出方法は、
図8を用いて説明したとおりである。つまり、バイパス弁制御部53bは、IGV開度と弁開度の関係を規定する関数等(例えば、グラフ533c)と、負荷遮断直前のIGV11の開度に基づいて、IGV11の開度に応じた弁開度を算出する。バイパス弁制御部53bは、算出した弁開度に対応する弁開度指令値をバイパス弁19に出力する(ステップS142)。これにより、バイパス弁19が開状態となり、IGV11を介して圧縮機12に流入した空気量に応じた分量の圧縮空気が車室13から抽気される。そして、燃焼器14における燃空比が上昇する。
【0053】
バイパス弁制御部53bは、圧縮空気の過度な抽気を防ぐため時間Tcの間だけバイパス弁19を開状態にし、その後、全閉の状態に戻す制御を行う。バイパス弁制御部53bは、時間Tcが経過したかどうかを監視し(ステップS15)、時間Tcが経過するまで待機する。時間Tcが経過した場合(ステップS15;Yes)、バイパス弁制御部53bは、バイパス弁19を全閉(弁開度0%)とする弁開度指令値を、バイパス弁19に出力する(ステップS16)。これにより、車室13からの抽気が停止される。
【0054】
本実施形態によれば、IGV11の開度に応じて、バイパス弁19の開度も調整し、車室13からの抽気量を失火が生じないような量に制御することができる。これにより、車室13から抽気する圧縮空気の抽気量を、空気流入量に応じた適切な量に最適化することができる。本実施形態によれば第一実施形態の効果に加え、燃焼器14の燃空比をより適切に制御することで、負荷遮断時の失火をより確実に防ぐことができる。
なお、本実施形態は、第二実施形態と組み合わせ、負荷遮断直前のガスタービン2の出力値とIGV11の開度の両方の影響を考慮してバイパス弁19の弁開度を算出するようにしてもよい。
【0055】
<第四実施形態>
以下、本発明の第四実施形態によるガスタービン燃焼制御装置を
図10〜
図12を参照して説明する。第四実施形態は、第一実施形態〜第三実施形態の何れとも組み合わせることが可能であるが、第三実施形態と組み合わせた場合を例に説明を行う。
図10は、本発明に係る第四実施形態におけるガスタービン燃焼制御装置のブロック図である。
本発明の第四実施形態に係る構成のうち、本発明の第三実施形態に係るガスタービン燃焼制御装置50bを構成する機能部と同じものには同じ符号を付し、それぞれの説明を省略する。第四実施形態に係るガスタービン燃焼制御装置50cは、第三実施形態の構成に加えて、大気温度補正部55を備えている。
大気温度補正部55は、バイパス弁制御部53bが決定したバイパス弁19の弁開度を大気温度に応じて補正する。
【0056】
図11は、本発明に係る第四実施形態におけるバイパス弁の制御方法を説明する図である。
大気温度によって圧縮機12に流入する空気の質量流量は変化する。例えば大気温度が上昇すると空気の密度が低下し、圧縮機12に流入する空気の質量流量が減少する。空気の質量流量が減少すると同じ体積の空気が流入したとしても、燃焼器14での燃空比は低下する。そこで、本実施形態では、バイパス弁制御部53bが、大気温度によらず所望の質量流量の圧縮空気を抽気できるようバイパス弁19の開度を大気温度で補正する。
【0057】
図11の関数533a、スイッチ533b、グラフ533cは、第三実施形態と同様の機能を有している。つまり、関数533aはIGV11の開度に応じた弁開度(Y%)をグラフ533cに基づいて算出し、スイッチ533bは、負荷遮断信号取得部51を経由して負荷遮断信号(LRT)40を取得すると、関数533aが算出した弁開度Y%を取得する。スイッチ533bは、取得した弁開度Y%に対応する弁開度指令信号を出力する。本実施形態では、スイッチ533bは、弁開度指令信号をバイパス弁19へ出力するのではなく、大気温度補正部55へ出力する。
【0058】
大気温度補正部55は、温度センサ30から空気入口系統10付近の大気温度を取得する。大気温度補正部55は、補正係数テーブル55aから大気温度による弁開度補正係数を算出する。補正係数テーブル55aの横軸は大気温度、縦軸は弁開度補正係数である。大気温度が高ければ圧縮機12へ流入する空気の質量流量は減少する。それに応じて車室13からの抽気量も減少させる必要がある。従って、図示するように補正係数テーブル55aには、大気温度が高い程、弁開度補正係数の値が小さい値となるよう規定されている。補正係数テーブル55aは、例えばガスタービン2の設計時におけるヒートバランス計算等に基づいて決定されたものである。補正係数テーブル55aは、記憶部54に記録されている。大気温度補正部55は、温度センサ30から取得した大気温度と補正係数テーブル55aに基づいて弁開度補正係数を算出する。次に大気温度補正部55は、乗算器55bによって、スイッチ533bから取得した弁開度指令信号と補正係数テーブル55aに基づく弁開度補正係数を乗算する。大気温度補正部55は、乗算して求めた補正後の弁開度指令信号をバイパス弁19へ出力する。
【0059】
図12は、本発明に係る第三実施形態における燃焼制御処理のフローチャートである。
図12のフローチャートを用いて本実施形態における負荷遮断時の燃料供給制御およびバイパス弁19の開閉制御について説明する。第三実施形態と同様の処理には同じ符号を付して簡単に説明を行う。
まず、負荷遮断信号取得部51が負荷遮断信号(LRT)40を取得する(ステップS11)。負荷遮断信号取得部51は、燃料制御部52およびバイパス弁制御部53bに負荷遮断の発生を通知し、負荷遮断時の燃焼制御を行うよう指示を行う。すると燃料制御部52は、回転数がOST規定値の110%以下となる燃料流量を決定する(ステップS12)。燃料制御部52は、決定した燃料流量に応じた弁開度指令値を各調整弁21B〜25Bに出力する。
【0060】
一方、バイパス弁制御部53bは、バイパス弁19を閉状態から開状態に制御する。まず、バイパス弁制御部53bは、バイパス弁19を開状態にしておく時間Tc(例えば数秒)を決定する(ステップS13)。次に、バイパス弁制御部53bは、IGV11の開度に応じたバイパス弁19の弁開度を算出する(ステップS143)。バイパス弁制御部53bは、算出した弁開度を大気温度補正部55に出力する。次に大気温度補正部55は、大気温度に応じて弁開度を補正する(ステップS144)。具体的な算出方法は、
図11を用いて説明したとおりである。つまり、大気温度補正部55は、大気温度と弁開度補正係数の関係を規定する関数等(例えば、補正係数テーブル55a)と、温度センサ30から取得した大気温度に基づいて弁開度補正係数を算出する。大気温度補正部55は、バイパス弁制御部53bから取得した弁開度に弁開度補正係数を乗じて補正後の弁開度を求める。大気温度補正部55は、補正後の弁開度に対応する弁開度指令値をバイパス弁19に出力する(ステップS145)。次にバイパス弁制御部53bは、バイパス弁19を開状態にしてから時間Tcが経過したかどうかを監視し(ステップS15)、時間Tcが経過するまで待機する。時間Tcが経過した場合(ステップS15;Yes)、バイパス弁制御部53bは、バイパス弁19を全閉(弁開度0%)とする弁開度指令値を、バイパス弁19に出力する(ステップS16)。これにより、車室13からの抽気が停止される。
【0061】
本実施形態によれば、大気温度に応じて車室13からの抽気量を補正するので、より正確に燃空比を制御し、失火を防ぐことができる。また、例えば、ガスタービンプラント1が年間を通して大気温度差が大きい場所に設置されている場合でもバイパス弁19の弁開度を大気温度に応じて設定し直す必要がないという効果が得られる。なお、ここでは第三実施形態と組み合わせた場合を例に説明を行ったが、本実施形態は、第一実施形態または第二実施形態と組み合わせてもよい。
また、本実施形態では、大気温度に応じてバイパス弁19の弁開度を補正したが、さらに大気圧力や大気湿度などに応じて弁開度を補正するように構成してもよい。
【0062】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、燃空比を維持して失火を防ぐ対象を予混パイロット系統22の燃料ノズル22Cとしたが、これに限定されない。第一実施形態〜第四実施形態のバイパス弁19の制御を、拡散パイロット系統21やメインA系統23、メインB系統24、トップハット系統25における失火の防止のために適用することも可能である。
なお、燃料ノズル22Cは予混パイロットノズルの一例である。OSP規定値の110%の回転数は、ガスタービンの回転数の所定の閾値の一例である。燃空比クライテリアは、失火が発生しないよう定められた所定の燃空比の一例である。
【0063】
なお、上述のガスタービン燃焼制御装置50は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、上述したガスタービン燃焼制御装置50における各処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
【0064】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。