【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.平成27年9月4日、2015年度日本建築学会大会(関東)学術講演会 東海大学 湘南キャンパスにて公開 2.平成27年7月20日、2015年度日本建築学会大会(関東)学術講演会の梗概集が発行 3.平成27年9月18日、公益社団法人 空気調和・衛生工学会 平成27年度大会(大阪) 大阪大学 豊中キャンパスにて公開 4.平成27年9月2日、平成27年度 空気調和・衛生工学会大会の梗概集が発行
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記他方の上階外壁部は、平面視において、前記第1開口部及び前記第2開口部を挟んで前記第1通風開口と反対側の位置に、開閉可能な建具が設けられた通風開口を有することを特徴とする、請求項1に記載の建物。
前記一方の下階外壁部は、平面視において、前記第1開口部及び前記第2開口部を挟んで前記第2通風開口と反対側の位置に、開閉可能な建具が設けられた通風開口を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の建物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の建物では、隙間部により1階と2階とが連通しているため、1階又は2階の冷気や熱気が、隙間部を通じて2階から1階、又は1階から2階へと時間をかけて緩やかに移動し、夏季や冬季に1階及び2階を均一な温度で管理し得るという利点がある。
【0005】
その一方で、特許文献1に記載の建物では、外壁に設けられた窓等の通風開口から取り込んだ外気の屋内での通風性については考慮されておらず、外気取り込み時の通風性においては改善の余地があるものである。
【0006】
本発明は、屋内に取り込んだ外気の通風性を向上可能な建物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様としての建物は、複数の階層を有する建物であって、上階屋内空間と下階屋内空間とに隔てる仕切体と、前記仕切体の平面視における一端側及び他端側にそれぞれ設けられ、前記上階屋内空間を外部空間と区画する対向した一対の上階外壁部と、前記仕切体の平面視における前記一端側及び前記他端側にそれぞれ設けられ、前記下階屋内空間を外部空間と区画する対向した一対の下階外壁部と、を備え、前記仕切体には、前記上階屋内空間と前記下階屋内空間とを連通する第1開口部及び第2開口部が形成されており、前記第1開口部は、前記一対の上階外壁部及び前記一対の下階外壁部のうち、前記一端側に位置する一方の上階外壁部及び一方の下階外壁部よりも、前記他端側に位置する他方の上階外壁部及び他方の下階外壁部に近く、前記第2開口部は、前記他端側に位置する前記他方の上階外壁部及び前記他方の下階外壁部よりも、前記一端側に位置する前記一方の上階外壁部及び前記一方の下階外壁部に近く、前記一方の上階外壁部は、平面視において、前記第2開口部を挟んで前記第1開口部と反対側の位置に、開閉可能な建具が設けられた第1通風開口を有し、前記他方の下階外壁部は、平面視において、前記第1開口部を挟んで前記第2開口部と反対側の位置に、開閉可能な建具が設けられた第2通風開口を有することを特徴とするものである。
【0008】
本発明の1つの実施形態として、前記他方の上階外壁部は、平面視において、前記第1開口部及び前記第2開口部を挟んで前記第1通風開口と反対側の位置に、開閉可能な建具が設けられた通風開口を有することが好ましい。
【0009】
本発明の1つの実施形態として、前記一方の下階外壁部は、平面視において、前記第1開口部及び前記第2開口部を挟んで前記第2通風開口と反対側の位置に、開閉可能な建具が設けられた通風開口を有することが好ましい。
【0010】
本発明の1つの実施形態として、前記仕切体は、複数の開口を有する格子床部を備え、前記第1開口部及び前記第2開口部の少なくとも一方は、前記格子床部に形成された前記複数の開口により構成されていることが好ましい。
【0011】
本発明の1つの実施形態として、前記格子床部は、間隔を空けて配置された複数の棒状の桟材を備え、前記複数の開口は、前記複数の桟材間に形成された複数の間隙であることが好ましい。
【0012】
本発明の1つの実施形態として、前記複数の桟材は、平面視において、前記一対の上階外壁部と直交する方向に延在することが好ましい。
【0013】
本発明の1つの実施形態として、前記第1開口部及び前記第2開口部の少なくとも一方は開閉可能であることが好ましい。
【0014】
本発明の1つの実施形態として、前記仕切体は、低位水平部と、前記低位水平部から起立した起立部と、前記起立部から水平方向に延在する高位水平部と、を有し、前記第1開口部及び前記第2開口部の一方は、前記高位水平部の位置に形成されていることが好ましい。
【0015】
本発明の1つの実施形態として、前記起立部には、前記上階屋内空間と前記下階屋内空間とを連通する第3開口部が形成されていることが好ましい。
【0016】
本発明の1つの実施形態として、前記起立部は、前記一対の上階外壁部のいずれか一方と対向していることが好ましい。
【0017】
本発明の1つの実施形態として、前記第3開口部は開閉可能であることが好ましい。
【0018】
本発明の1つの実施形態として、前記仕切体は、低位水平部と、前記低位水平部から起立した起立部と、前記起立部から水平方向に延在する高位水平部と、を有し、前記第1開口部及び前記第2開口部の一方は、前記起立部に形成されていることが好ましい。
【0019】
本発明の1つの実施形態として、前記起立部は、平面視において、前記第1開口部及び前記第2開口部の他方に対向していることが好ましい。
【0020】
本発明の1つの実施形態として、前記上階屋内空間及び前記下階屋内空間には、平面視において、前記第1開口部と前記第2開口部との間で空間を区画する区画壁がない、又は、前記第1開口部と前記第2開口部との間で空間を区画する区画壁があり、かつ、前記区画壁のすべてに開閉可能な建具が設けられた開口が形成されていることが好ましい。
【0021】
本発明の1つの実施形態として、前記上階屋内空間及び前記下階屋内空間の少なくとも一方に、放射式空調装置が配置されていることが好ましい。
【0022】
本発明の1つの実施形態として、前記放射式空調装置は、前記上階屋内空間又は前記下階屋内空間を仕切る仕切部材を兼ねることが好ましい。
【0023】
本発明の1つの実施形態としての建物は、熱損失係数が1.9以下又は外皮平均熱貫流率が0.6以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、屋内に取り込んだ外気の通風性を向上可能な建物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る建物の実施形態について、
図1〜
図4を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0027】
図1、
図2は、本発明に係る建物の一実施形態としての建物1を示す図である。具体的に、
図1は、建物1の1階平面図であり、
図2は建物1の2階平面図である。また、
図3は、
図1及び
図2のI−I断面図である。
【0028】
まず、建物1の全体構成について説明する。
図1〜
図3に示すように、建物1は、鉄骨造の軸組みを有する2階建ての工業化住宅である。換言すれば、建物1は複数の階層として2層を有するものである。
【0029】
図1に示すように、建物1の1階には、玄関11、廊下12、リビング・ダイニング・キッチン(LDK)13、部屋14、収納室15、階段室16等が配置されている。また、
図2に示すように、建物2の2階には、廊下17、リビング18、複数の部屋19a〜19c、洗面室20、屋根付き屋外空間21等が配置されている。
【0030】
建物1は、地盤に固定された鉄筋コンクリート造の基礎構造体(図示省略)と、柱部材や梁部材などの軸組部材で構成された軸組架構を有し、基礎構造体に固定された上部構造体と、で構成されている。なお、軸組架構を構成する軸組部材は、規格化(標準化)されたものであり、予め工場にて製造されたのち建築現場に搬入されて組み立てられる。
【0031】
基礎構造体は、軸組架構の下方に位置し、軸組架構を支持している。具体的に、基礎構造体は、鉄筋コンクリート造の断面T字状の布基礎であり、フーチング部と、基礎梁としての立ち上がり部とを備える。また、基礎構造体の立ち上がり部の上端部には、露出型固定柱脚工法により軸組架構の柱部材の柱脚を固定するための柱脚固定部が設けられ、アンカーボルトが立ち上がり部の上面から突出している。
【0032】
上部構造体は、複数の柱部材及び柱部材間に架設された複数の梁部材から構成される軸組架構と、この軸組架構の外周部に配置される外周壁2と、階層間を上階屋内空間と下階屋内空間とに隔てる仕切体3と、を備えている。なお、本実施形態の建物1は2階建ての住宅であるため、本実施形態の上階屋内空間は2階の屋内空間であり、本実施形態の下階屋内空間は1階の屋内空間である。
【0033】
外周壁2は、外装部材と、断熱部材と、内装部材と、を含んでいる。外装部材は、例えば、軽量気泡コンクリート(以下、「ALC」と記載する。「ALC」とは「autoclaved light weight concrete」の略である。)のパネルにより構成することができ、軸組架構の周囲にALCパネルを複数連接させることにより、外周壁2の外層を形成することができる。断熱部材は、例えば、フェノールフォーム、ポリスチレンフォーム、ウレタンフォーム等の発泡樹脂系の材料で形成することができ、上述の外装部材により形成された外層の内面に沿って連接することにより、外周壁2の断熱層を形成することができる。更に、内装部材は、例えば、石膏ボードを用いることができ、断熱層の内側に連接することにより、外周壁2の内層を形成することができる。なお、
図1〜
図3では、外周壁2の外装部材、断熱部材及び内装部材を区別せずに一体として描いている。
【0034】
仕切体3は、床支持部材を含んでいる。床支持部材は、例えば、ALCパネルにより構成することができる。床支持部材は、梁部材間に架設され、梁部材により直接的又は間接的に支持される。なお、仕切体3のうち後述する格子床部40a及び40bについては、床支持部材として、鋼材又は木材で形成された複数の桟材41が用いられている。格子床部40a及び40bの詳細は後述する(
図2等参照)。
【0035】
ここで、「仕切体」とは、上階屋内空間と下階屋内空間とを仕切るものであり、軸組架構を除く、下階屋内空間の天面から上階屋内空間の床面までの間に位置する部材の集合体を意味するものである。従って、仕切体は、上述した床支持部材に加えて、例えば、床支持部材に対して直接的又は間接的に固定された、下階屋内空間の天井面を構成する天井内装部材や、床支持部材上に積層された、上階屋内空間の床面を構成するフローリング等の床内装部材などを含む概念である。そして、本実施形態の仕切体3は、上階屋内空間としての2階の屋内空間と、下階屋内空間としての1階の屋内空間とを仕切るものである。
【0036】
なお、
図3に示すように、建物1は陸屋根を備えるものであり、屋上階にはペントハウス22が設けられている。ペントハウス22は、1階の廊下12の一部の鉛直方向上方に位置しており、1階の廊下12の一部は、後述する2階の第1開口部3aを介してペントハウス22内まで連通する吹抜けになっている。ペントハウス22の外壁には外部からペントハウス22内に自然光を取り込むことが可能な採光窓22aが設けられている。採光窓22aには、例えば、ガラスなどの透明部材を含む開閉可能な建具が設けられている。
【0038】
図1〜
図3に示すように、本実施形態の外周壁2は、上階としての2階の周囲を取り囲む上階外周壁2aと、下階としての1階の周囲を取り囲む下階外周壁2bと、を備えている。
【0039】
上階外周壁2aは、仕切体3の平面視における一端側及び他端側にそれぞれ設けられ、上階屋内空間を外部空間と区画する対向した一対の第1上階外壁部2a1及び2a2を備えている。本実施形態の一対の第1上階外壁部2a1及び2a2は、上階外周壁2aのうち、南北方向において対向する部分である。
【0040】
更に、上階外周壁2aは、仕切体3の平面視における一端側としての北側及び他端側としての南側を結ぶ方向(本実施形態では南北方向)に直交する方向にそれぞれ設けられ、上階屋内空間を外部空間と区画する対向した一対の第2上階外壁部2a3及び2a4を備えている。より具体的に、本実施形態の一対の第2上階外壁部2a3及び2a4は、上階外周壁2aのうち、東西方向において対向する部分である。
【0041】
換言すれば、本実施形態の建物1における2階の屋内空間は、北側を一方の第1上階外壁部2a1により、南側を他方の第1上階外壁部2a2により、西側を一方の第2上階外壁部2a3により、東側を他方の第2上階外壁部2a4により、外部空間と区画されている。
【0042】
また、下階外周壁2bは、仕切体3の平面視における一端側及び他端側にそれぞれ設けられ、下階屋内空間を外部空間と区画する対向した一対の第1下階外壁部2b1及び2b2を備えている。本実施形態の一対の第1下階外壁部2b1及び2b2は、下階外周壁2bのうち、南北方向において対向する部分である。
【0043】
更に、下階外周壁2bは、仕切体3の平面視における一端側としての北側及び他端側としての南側を結ぶ方向(本実施形態では南北方向)に直交する方向にそれぞれ設けられ、下階屋内空間を外部空間と区画する対向した一対の第2下階外壁部2b3及び2b4を備えている。より具体的に、本実施形態の一対の第2下階外壁部2b3及び2b4は、下階外周壁2bのうち、東西方向において対向する部分である。
【0044】
換言すれば、本実施形態の建物1における1階の屋内空間は、北側を一方の第1下階外壁部2b1により、南側を他方の第1下階外壁部2b2により、西側を一方の第2下階外壁部2b3により、東側を他方の第2下階外壁部2b4により、外部空間と区画されている。
【0045】
なお、
図3の断面視では、南北方向において対向する、一対の第1上階外壁部2a1及び2a2並びに一対の第1下階外壁部2b1及び2b2が示されている。
【0046】
仕切体3には、上階屋内空間と下階屋内空間とを連通する第1開口部3a及び第2開口部3bが形成されている。
【0047】
図1〜
図3に示すように、第1開口部3aは、一対の第1上階外壁部2a1及び2a2並びに一対の第1下階外壁部2b1及び2b2のうち、一端側としての北側に位置する一方の第1上階外壁部2a1及び一方の第1下階外壁部2b1よりも、他端側としての南側に位置する他方の第1上階外壁部2a2及び他方の第1下階外壁部2b2に近い位置に配置されている。
【0048】
より具体的には、
図1〜
図3に示すように、本実施形態の第1開口部3aは、平面視において、南側の第1上階外壁部2a2及び第1下階外壁部2b2に隣接した位置、すなわち、仕切体3の南側端部に設けられている。
【0049】
また、
図1〜
図3に示すように、第2開口部3bは、一対の第1上階外壁部2a1及び2a2並びに一対の第1下階外壁部2b1及び2b2のうち、他端側としての南側に位置する他方の第1上階外壁部2a2及び他方の第1下階外壁部2b2よりも、一端側としての北側に位置する一方の第1上階外壁部2a1及び一方の第1下階外壁部2b1に近い位置に配置されている。
【0050】
より具体的には、
図1〜
図3に示すように、本実施形態の第2開口部3bは、平面視において、北側の第1上階外壁部2a1及び第1下階外壁部2b1に隣接した位置、すなわち、仕切体3の北側端部に設けられている。
【0051】
このように、第1開口部3a及び第2開口部3bは、仕切体3のうち南北方向の両端部に形成されている。
【0052】
ここで、一対の第1上階外壁部2a1及び2a2のうち、北側に位置する第1上階外壁部2a1は、平面視(
図2参照)において、第2開口部3bを挟んで第1開口部3aと反対側の位置に、開閉可能な建具51aが設けられた第1通風開口52aを有している。
【0053】
また、一対の第1下階外壁部2b1及び2b2のうち、南側に位置する第1下階外壁部2b2は、平面視(
図1参照)において、第1開口部3aを挟んで第2開口部3bと反対側の位置に、開閉可能な建具51bが設けられた第2通風開口52bを有している。なお、
図1では、説明の便宜上、仕切体3の第1開口部3a及び第2開口部3bの位置を破線により示している。
【0054】
このように、上下階を隔てる仕切体3に第1開口部3a及び第2開口部3bを設けると共に、第1開口部3a及び第2開口部3bを含む垂直断面視(
図3参照)において、第1開口部3a及び第2開口部3bを挟む水平方向の両側に位置する外壁部に第1通風開口52aと第2通風開口52bを設け、第1通風開口52aを設ける階層と第2通風開口52bを設ける階層とを別々にすることにより、建具51a及び51bが閉鎖状態の場合には上下階の温度を均一化し易く、建具51a及び51bが開放状態の場合には取り込んだ外気の屋内での通気性を向上させることができる。
【0055】
具体的に、第1通風開口52aに設けられた建具51a及び第2通風開口52bに設けられた建具51bを閉鎖状態とすれば、第1開口部3a及び第2開口部3bを通じて、上下階の屋内空間で冷気及び熱気を循環させることができ、上下階の温度を均一化させ易い。そのため、上下階それぞれでのみ温度調整が可能な建物や、部屋等の個別の空間毎でのみ温度調整が可能な建物と比較して、余剰な冷気や熱気が発生され難く、上下階全体として効率的な温度管理を行うことができる。
【0056】
その一方で、第1通風開口52aに設けられた建具51a及び第2通風開口52bに設けられた建具51bを開放状態とすれば、第1通風開口52a及び第2通風開口52bの一方から取り込んだ外気は、第1開口部3aや第2開口部3bを通じて、他方へと抜け易い。つまり、取り込んだ外気を上階屋内空間及び下階屋内空間の両方に流しながら屋外へと排出する通風経路を確保することができ、屋内の通気性を向上させることができる。
【0057】
なお、
図1〜
図3に示すように、本実施形態の上階屋内空間としての2階の屋内空間及び下階屋内空間としての1階の屋内空間には、平面視(
図1、
図2参照)において、第1開口部3aと第2開口部3bとの間で空間を区画する区画壁があるが、この区画壁のすべてに開閉可能な建具が設けられた開口が形成されている。具体的には
図2、
図3に示すように、本実施形態の建物1の2階には、第1開口部3aと第2開口部3bとの間で空間を区画する区画壁として、リビング18の南側を区画する区画壁18aがある。そして、
図2、
図3に示すように、区画壁18aには、開閉可能な建具61aが設けられた開口62aが形成されている。このような構成とし、建具61aを開放状態とすれば、2階における第1開口部3aと第2開口部3bとの間の通気性をより向上させることができる。
【0058】
同様に、本実施形態の建物1の1階には、第1開口部3aと第2開口部3bとの間で空間を区画する区画壁として、リビング・ダイニング・キッチン13の南側を区画する区画壁13aがある。そして、
図1、
図3に示すように、区画壁18aには、開閉可能な建具61bが設けられた開口62bが形成されている。このような構成とし、建具61bを開放状態とすれば、1階における第1開口部3aと第2開口部3bとの間の通気性をより向上させることができる。
【0059】
なお、本実施形態では、区画壁18aの開口62aが、後述する格子床部40aとリビング18とを繋ぐ出入り口であり、区画壁13aの開口62bが、廊下12とリビング・ダイニング・キッチン13とを繋ぐ出入り口であるが、上階屋内空間及び下階屋内空間の各屋内空間において、第1開口部3aと第2開口部3bとの間が連通空間となるようにする開口であればよく、人の移動を想定した出入り口に限られるものではない。したがって、上階屋内空間及び下階屋内空間の具体的な間取りに応じて、開口の形状、大きさ、用途は適宜変更可能である。
【0060】
また、本実施形態では、第1開口部3aと第2開口部3bとの間で空間を区画する区画壁13a及び18aがあるが、第1開口部3aと第2開口部3bとの間で空間を区画する区画壁が全く存在しない構成としてもよい。
【0061】
更に、本実施形態の第1通風開口52aには、建具51aとして、引き違い窓が設けられているが、開閉可能な建具51aであればよく、開閉形式は引き違い式に限られるものではない。したがって、例えば、すべり出し窓、片開き窓、ルーバー窓等としてもよい。但し、採光性を考慮し、ガラスなどの透明又は半透明な部材を含む建具51aとすることが好ましい。
【0062】
また更に、本実施形態の第2通風開口52bには、建具51bとして、掃き出し窓が設けられているが、開閉可能な建具51aであればよく、例えば、すべり出し窓、片開き窓、ルーバー窓等としてもよい。但し、採光性を考慮し、ガラスなどの透明又は半透明な部材を含む建具51bとすることが好ましい。また、本実施形態の建物1のように、下階屋内空間が1階の屋内空間となる場合には、第2通風開口52bは、防犯上の観点から、ルーバー窓や、仕切体3の近傍に位置する高窓とすることが好ましい。
【0063】
また、本実施形態の建物1の1階では、平面視(
図1参照)において第1開口部3aと第2開口部3bとの間に挟まれる空間が、廊下12及びリビング・ダイニング・キッチン13であり、リビング・ダイニング・キッチン13は玄関11と繋がっておらず、廊下12のみが、西側の仕切壁12aにおける開閉可能な建具61cが設けられた出入り口62cを通じて玄関11と繋がっている。換言すれば、廊下12及びリビング・ダイニング・キッチン13は、玄関11と常時連通している空間ではなく、建具61cの開閉により、玄関11と連通する状態と、玄関11と連通しない状態とに切り替え可能である。したがって、建具61cを閉鎖状態とすれば、玄関11に設けられた玄関出入り口11aを開放状態としても、平面視(
図1参照)において第1開口部3aと第2開口部3bとの間に挟まれる空間に玄関出入り口11aから外気が導入し難い。そのため、頻繁に開閉され得る玄関出入り口11aから屋内へと流入する外気が、上下階の屋内空間に意図しない温度変化をもたらすことを抑制することができる。
【0064】
以下、本実施形態の建物1の更なる詳細について説明する。
【0065】
本実施形態の建物1の外周壁2には、上述した第1通風開口52a及び第2通風開口52bの他に、別の通風開口が設けられている。具体的に、本実施形態の南側の第1上階外壁部2a2は、平面視(
図2参照)において、第1開口部3a及び第2開口部3bを挟んで第1通風開口52aと反対側の位置に、開閉可能な建具51cが設けられた第3通風開口52cを有している。
【0066】
更に、本実施形態の北側の第1下階外壁部2b1は、平面視(
図1参照)において、第1開口部3a及び第2開口部3bを挟んで第2通風開口52bと反対側の位置に、開閉可能な建具51dが備え付けられた第4通風開口52dを有している。
【0067】
つまり、本実施形態の建物1では、第1開口部3a及び第2開口部3bを含む垂直断面視(
図3参照)において、第1開口部3a及び第2開口部3bの両方を挟み水平方向の両側に、4つの通風開口が設けられている。具体的には
図3に示すように、2階では、水平方向で第1開口部3a及び第2開口部3bの両方を挟む両側の外壁部に、第1通風開口52a及び第3通風開口52cが配置されている。また、
図3に示すように、1階では、水平方向で第1開口部3a及び第2開口部3bの両方を挟む両側の外壁部に、第2通風開口52b及び第4通風開口52dが配置されている。
【0068】
そのため、第1〜第4通風開口52a〜52dそれぞれの開閉状態を操作することにより、外気の取り込み位置と排出位置とを操作することができる。つまり、第1〜第4通風開口52a〜52dの開閉を操作することにより、外気が屋内を流れる経路を変化させることができ、所望の流れを生成し易くなる。
【0069】
特に、第1開口部3a及び第2開口部3bの少なくとも一方を開閉可能な構成とすれば、第1〜第4通風開口52a〜52dそれぞれの開閉操作に加えて、第1開口部3aや第2開口部3bの開閉操作を行うことにより、屋内での外気の流れをより一層コントロールすることが可能となる。
【0070】
以下、仕切体3の第1開口部3a及び第2開口部3bの詳細について説明する。
【0071】
本実施形態の仕切体3は、複数の開口を有する格子床部40a及び40bを備えており、第1開口部3a及び第2開口部3bは、格子床部40a及び40bに形成された複数の開口により構成されている。具体的に、仕切体3の平面視(
図2参照)において、南側の第1上階外壁部2a2に隣接した位置に、第1格子床部40aが設けられており、第1開口部3aは、第1格子床部40aに形成された複数の開口により構成されている。また、仕切体3の平面視(
図2参照)において、北側の第1上階外壁部2a1に隣接した位置に、第2格子床部40bが設けられており、第2開口部3bは、第2格子床部40bに形成された複数の開口により構成されている。
【0072】
なお、本実施形態の第1格子床部40aは、下階屋内空間としての1階屋内空間の廊下12の鉛直方向上方に設けられている。また、本実施形態の第2格子床部40bは、下階屋内空間としての1階屋内空間のリビング・ダイニング・キッチン13の北側端部の鉛直方向上方に設けられている。換言すれば、第1格子床部40aは、平面視において、廊下12と重なる位置に配置されている。また、第2格子床部40bは、平面視において、建物1の中で壁により周囲を区画された空間として床面積が最も大きい空間であるリビング・ダイニング・キッチン13と重なる位置に配置されている。
【0073】
第1及び第2格子床部40a及び40bは、上階屋内空間の床の一部であり、住人等は、第1及び第2格子床部40a及び40bの上を利用することができる。つまり、第1及び第2格子床部40a及び40bによれば、第1及び第2開口部3a及び3bを備えるため、上階屋内空間の床面積を減らすことなく、上下階の採光性及び通風性を確保することができる。
【0074】
ここで、本実施形態の第1及び第2格子床部40a及び40bそれぞれは、間隔を空けて配置された複数の棒状の桟材41を備えており、本実施形態における上述した第1開口部3a及び第2開口部3bを構成する複数の開口は、複数の桟材41間に形成された複数の間隙である。換言すれば、本実施形態の第1及び第2格子床部40a及び40bは、すのこ状の床部である。
【0075】
また、本実施形態の複数の桟材41は、平面視(
図1、
図2参照)において、一対の上階外壁部2a1及び2a2と直交する方向、すなわち本実施形態では南北方向に延在している。このように、桟材41を、平面視において一対の上階外壁部2a1及び2a2と直交する方向に延在させて配置することにより、一対の上階外壁部2a1及び2a2に設けられた第1通風開口52a及び第3通風開口52cを通じて屋内に入り込む外光を、第1開口部3a及び第2開口部3bとしての桟材41間の間隙を通じて、下階屋内空間へと取り込み易くなる。
【0076】
なお、本実施形態の第1開口部3a及び第2開口部3bは、第1及び第2格子床部40a及び40bの複数の桟材41間に形成された間隙により構成されているが、上階屋内空間と下階屋内空間との間の通風を可能にする構成であればよく、例えば、本実施形態で示す構成とは別の構成によりスリット状や格子状の間隙が形成されるものなど、本実施形態で示す第1開口部3a及び第2開口部3bの具体的構成に限られるものではない。
【0077】
例えば、上述したように、開閉可能な第1開口部及び第2開口部とすることも可能である。開閉可能な第1開口部及び第2開口部としては、例えば、複数の開口が形成された2枚の板材を相対的にスライド可能に配置した無双窓とすることができる。無双窓により形成される開閉可能な開口部は、
図4に示すように、2枚の板材90a及び90bの開口91a及び91b同士が重なると開放状態となり、2枚の板材90a及び90bの開口91a及び91b同士が重ならないと閉鎖状態となる。なお、
図4(a)は無双窓の正面図であり、
図4(b)は
図4(a)のII−II断面図である。
図4(a)、
図4(b)では、2枚の板材90a及び90bの開口91a及び91b同士が重ならない閉鎖状態を示している。但し、開閉可能な開口部は、上述した無双窓に限られるものではなく、開口部を開閉可能に移動する、水平スクリーンなどのカバー部材を設けることにより実現してもよい。
【0078】
また、本実施形態の第1開口部3a及び第2開口部3bはいずれも、複数の桟材41間に形成された間隙により構成されているが、第1開口部と第2開口部とを別の構成とすることも可能である。例えば、第1開口部及び第2開口部の一方のみを、上述した開閉可能な構成とすることが可能である。
【0079】
更に、
図3に示すように、本実施形態の仕切体3は、断面視が略クランク状に形成されており、低位水平部30aと、この低位水平部30aの端部から起立した起立部30cと、この起立部の上端から水平方向に延在する高位水平部と、を有している。そして第2開口部3bは、高位水平部30bの位置に形成されている。また、低位水平部30aと高位水平部30bとの間の起立部30cには、上階屋内空間としての2階屋内空間と下階屋内空間としての1階屋内空間とを連通する第3開口部3cが形成されている。このように、低位水平部30aと高位水平部30bとの間の高低差を利用して起立部30cを設け、この起立部30cに上階屋内空間に繋がる第3開口部3cを形成すれば、水平部の位置に第3開口部を形成する構成と比較して、上階屋内空間を水平方向に流れる気流を第3開口部3c内に取り込み易い。つまり、上階屋内空間に流れる気流を、第3開口部3cを通じて、より効率的に下階屋内空間へと誘導することが可能となる。
【0080】
なお、起立部30cは、一対の第1上階外壁部2a1及び2a2のいずれか一方と対向している。
図2に示すように、本実施形態の起立部30cは、南側の第1上階外壁部2a2に対向している。このようにすれば、一対の第1上階外壁部2a1及び2a2のいずれか一方側から他方側へ向かう外気の流れ、本実施形態では南側から北側に向かう外気の流れを、第3開口部3cを通じて、下階屋内空間に送り易くなる。
【0081】
また、本実施形態の第3開口部3cは開閉可能である。開閉可能な第3開口部3cは、例えば、複数の開口91a及び91bが形成された2枚の板材90a及び90bを相対的にスライド可能に配置した無双窓により実現することが可能である(
図4参照)。
【0082】
ここで、本実施形態では、第2開口部3bが高位水平部30bの位置に形成され、第1開口部3aが低位水平部30aの位置に形成されているが、例えば、第1開口部3aが形成されている部分を高位水平部とし、第2開口部3bが形成されている位置を低位水平部とすることも可能である。また、第1開口部3a及び第2開口部3bの両方を高位水平部の位置に形成することも可能である。そのため、起立部30cは、本実施形態のように南側の第1上階外壁部2a2に対向する構成に限られるものではなく、北側の第1上階外壁部2a1と対向する構成とすることも可能である。
【0083】
また、低位水平部30aと高位水平部30bとの間の段差は、例えば、高位水平部30bに対応する位置で、梁部材を鉛直方向に複数重ね合わせ、その上に床支持部材を架設することにより実現することができるが、段差を形成する手段はこの構成に限られるものではない。
【0084】
更に、本実施形態では、第1開口部3a及び第2開口部3bとは別の第3開口部3cを、起立部30cの位置に設けたが、第1開口部及び前記第2開口部の少なくとも一方を、起立部30cに設ける構成としてもよい。かかる場合に、起立部30cは、平面視において、第1開口部及び第2開口部の他方に対向させることが好ましい。これにより、上述した第3開口部3cと同様の効果を得ることができる。また、起立部30cの位置に設けられた第1開口部及び前記第2開口部の少なくとも一方は、開閉可能とすることが好ましい。開閉可能な開口部は、例えば、複数の開口91a及び91bが形成された2枚の板材90a及び90bを相対的にスライド可能に配置した無双窓により実現することが可能である(
図4参照)。
【0085】
最後に、本実施形態において上階屋内空間及び下階屋内空間の少なくとも一方に配置される放射式空調装置70について説明する。
図1〜
図3に示すように、本実施形態では、上階屋内空間及び下階屋内空間の両方に、放射式空調装置70としての輻射パネル装置が配置されている。本実施形態の放射式空調装置70としての輻射パネル装置は、上階屋内空間及び下階屋内空間に立設される複数の輻射パネル71と、これらの輻射パネル71に熱媒体を供給する熱源機(不図示)とを有している。
【0086】
図示はしないが、輻射パネル71は、その内部に熱源機から供給される熱媒体を通すパイプを備えており、このパイプに加熱または冷却された熱媒体が通ることで暖房作用または冷却作用を生じる構成となっている。パイプは、熱源機から供給される熱媒体と輻射パネル71との間で効率よく熱交換が行い得るように、例えば波型配置やU字型配置で輻射パネル71に内蔵された構成とされる。
【0087】
ここで、放射式空調装置70としての輻射パネル装置は、平面視(
図1、
図2参照)において、上階屋内空間及び下階屋内空間の少なくとも一方の、第1開口部3aと第2開口部3bとの間に配置する。また、その際に、放射式空調装置としての輻射パネル装置の輻射パネル71は、上階屋内空間又は下階屋内空間を仕切る仕切部材を兼ねていることが好ましい。このようにすれば、輻射パネル71が、輻射パネル71により仕切られる両側の空間に面することになるため、1つの輻射パネル71によって両方の空間を冷暖房することができる。したがって、各空間に輻射パネル71を設置するスペースを設けなくてよく、レイアウト性を高めることができる。なお、輻射パネル71により仕切られる両側の空間は、輻射パネル71によって完全に隔てられるわけではなく、部分的に仕切られており、上階屋内空間及び下階屋内空間それぞれの第1開口部3aと第2開口部3bとの間の通風性は確保されている。
【0088】
なお、本実施形態の建物1は、熱損失係数(Q値)が1.9以下又は外皮平均熱貫流率(UA値)が0.6以下の高断熱住宅である。このような高断熱住宅を前提とすることにより、上下階全体でより効率的な温度管理を実現することが可能となる。
【0089】
本発明に係る建物は、上述した実施形態に記載の構成に限られるものではなく、特許請求の範囲の記載に逸脱しない範囲で、種々の変更を行うことが可能である。例えば、上述した建物1は、鉄骨造の軸組みを有する2階建ての工業化住宅であるが、仕切体3を挟んで鉛直方向に隣接する2つの階層を少なくとも有する建物であればよく、例えば、3階建ての住宅としてもよい。したがって、上述した建物1では上階屋内空間が2階であり、下階屋内空間が1階であったが、3階以上の建物の場合には、仕切体を挟んで直上に位置する階層が本願における「上階屋内空間」となり、仕切体を挟んで直下に位置する階層が本願における「下階屋内空間」となる。また、間取りについても、上述した建物1の間取りに限られるものではなく、別の間取りを有する建物としてもよい。例えば、上述した建物1では、第1開口部3aが第1格子床部40aに設けられ、第2開口部3bが第2格子床部40bに設けられているが、第1開口部3a及び第2開口部3bが、上階屋内空間の床部ではなく、下階屋内空間の吹抜けにより構成されているものであってもよい。但し、上述したように、吹抜けとすると上階屋内空間の床面積が小さくなるため、上述した建物1のように、上階屋内空間の床部の一部に、第1開口部3a及び第2開口部3bを設ける構成とすることが好ましい。