(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記閾値が、前記ポンプの動作周波数に基づいて定まる周波数に関する強度レベルに基づいて設定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカフ圧制御装置。
前記ポンプが容積式往復動ポンプであり、前記閾値が、前記ポンプの動作周波数および前記ポンプが有するダイヤフラムの数に基づいて定まる周波数に関する強度レベルに基づいて設定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカフ圧制御装置。
さらに、前記検出手段の出力信号から、前記ポンプの動作に起因する信号成分を除去して生体信号を抽出する生体信号抽出手段を有することを特徴とする請求項6に記載の生体情報計測装置。
前記生体信号と、前記検出手段の出力信号からAC成分を除去した信号とに基づいて血圧値を決定する決定手段をさらに有することを特徴とする請求項7または請求項8に記載の生体情報計測装置。
前記カフを取り付ける被計測者に取り付けて、前記被計測者の生体情報を計測する計測手段をさらに有することを特徴とする請求項6から請求項9のいずれか1項に記載の生体情報計測装置。
カフが有するエアバッグに給気するポンプを有するカフ圧制御装置のコンピュータに、請求項11に記載のカフ圧制御装置の制御方法の各ステップを実行させるためのプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明をその例示的な実施形態に基づいて詳細に説明する。なお、以下では本発明の実施形態に係るカフ圧制御装置を、生体情報計測装置の一例としての血圧計に適用した構成に関して説明する。しかし、本発明に係るカフ圧制御装置は、血圧計に限らず、脈波計、血流量計など、被計測者に取り付けられ、ポンプで給気されるエアバッグを用いて生体情報を計測する生体情報計測装置に適用可能である。
【0014】
●(血圧計の構成)
図1は、実施形態に係る血圧計150の機能構成例を示すブロック図である。血圧計150は、カフ10を用いたオシロメトリック法により血圧を計測する。
カフ10は、内部にエアバッグ11を有し、エアバッグ11にはエアホースHが接続されている。エアホースHの一端に設けられたコネクタを血圧計150のエアコネクタ24に取り付けることによって、カフ10が血圧計150に取り付けられる。血圧計150内ではエアコネクタ24に圧力センサ12、定排弁14、急排弁16、ポンプ18が共通の気体流路Rで接続されている。従って、エアバッグ11の内部はエアホースHおよびエアコネクタ24を通じて血圧計内部の気体流路Rに接続されている。
【0015】
圧力センサ12は例えばピエゾ素子などを用いた圧力−電気変換センサであり、エアバッグ11の内部と連結した気体流路の内圧を表す電気信号を出力する。圧力センサ12が出力する電気信号(センサ出力信号)は、ADコンバータ22によって所定周波数でサンプリングされ、デジタルデータ化される。
【0016】
定排弁14、急排弁16、ポンプ18の動作は、カフ制御部20が主制御部30の制御に従って制御する。
定排弁14は一定流量でエアバッグ11から排気するための排気弁であり、排気流量を制御するために開口度を段階的に制御可能である。急排弁16はエアバッグ11から急速に排気するための排気弁である。急排弁16による排気流量を制御する必要はなく、全閉と全開の2状態を制御可能な排気弁であってよい。カフ制御部20は、計測開始時にポンプ18の動作を開始させ、カフ10(エアバッグ11)に給気して加圧する。なお、カフ10(エアバッグ11)にポンプ18から給気して加圧する際、カフ制御部20は定排弁14および急排弁16を全閉の状態に制御する。また、カフ圧が目標値に達すると、カフ制御部20はまずポンプ18を止め定排弁14を開き、カフ圧が所定の割合で低下するように必要に応じて定排弁14による排気流量を調整する。また、主制御部30によって血圧値が決定されると、カフ制御部20はさらに急排弁16を開く。カフ制御部20は主制御部30の制御に従って動作する。
【0017】
本実施形態では、説明及び理解を容易にするため、血圧計150にカフ10が1つ接続される構成を示しているが、カフ10が複数接続されてもよい。カフ10が複数接続される場合、エアコネクタ24、圧力センサ12、定排弁14、急排弁16、およびポンプ18については原則としてカフ10と同数設ける。一方、カフ制御部20、ADコンバータ22については必ずしもカフ10と同数設ける必要はない。
【0018】
圧力センサ12の出力信号(センサ出力信号)は、ADコンバータ22でデジタルデータ化されてポンプノイズ抽出フィルタ50、脈波信号抽出フィルタ51、および圧力信号抽出フィルタ52に供給される。
【0019】
ポンプノイズ抽出フィルタ50は、センサ出力信号に重畳しているポンプ18の動作に起因する信号成分を抽出し、ノイズ信号として主制御部30に出力する。なお、ポンプ18の動作に起因する信号成分は従来ノイズ信号として取り扱われていたため、本明細書においても便宜上ポンプノイズ成分もしくはノイズ信号と呼ぶ。
脈波信号抽出フィルタ51(生体信号抽出手段)は、センサ出力信号から容積脈波信号成分(以下、単に脈波信号成分という)を抽出して主制御部30に出力する。
圧力信号抽出フィルタ52は、センサ出力信号からポンプノイズ成分や脈波信号成分を除去して、主制御部30に出力する。
【0020】
これらのフィルタはいずれも抽出する信号成分の帯域を通過させ、他の帯域を遮断もしくは大幅に減衰させる周波数特性を有するフィルタによって実現できる。例えばポンプ18の動作に起因してセンサ出力信号に重畳する信号成分(ポンプノイズ成分)の周波数は、ポンプ18の機構および動作周波数に依存する。そのため、使用するポンプ18の種類および動作周波数に応じた周波数帯域を通過させるフィルタ、例えばローカットまたはハイパスフィルタをポンプノイズ抽出フィルタ50として用いることができる。ポンプ18の給気速度が一定であればポンプノイズ成分の周波数も一定であるため、ポンプノイズ抽出フィルタ50の周波数特性も固定であってよい。例えば、ポンプ18が容積式往復動ポンプ(ダイヤフラムポンプ、プランジャポンプ、ピストンポンプなど)の場合、使用されているダイヤフラムの数×動作周波数としてポンプノイズ成分の周波数を求めることができる。
【0021】
また、脈波信号抽出フィルタ51は一般的な脈拍の周波数を通過する帯域通過フィルタにより実現することが可能である。なお、四肢の部位で計測される脈波と、足趾で計測される脈波とでは周波数帯域が異なるため、測定部位に応じた周波数特性の帯域通過フィルタを切り替え可能に備えたり、フィルタの周波数特性を変更可能に構成したりすることができる。
圧力信号抽出フィルタ52は、センサ出力信号からポンプノイズ成分や脈波といったAC成分を除去するローパスフィルタによって構成することができる。
【0022】
主制御部30は例えば1つ以上のプログラマブルプロセッサ(MPU)とメモリとを備え、メモリに記憶されたプログラムをMPUで実行して血圧計150の各部の動作を制御することにより、血圧計150の機能を実現する。メモリには、プログラムの実行に用いる情報(各種の定数や設定値など)も記憶されてよい。なお、
図1ではポンプノイズ抽出フィルタ50、脈波信号抽出フィルタ51、および圧力信号抽出フィルタ52を主制御部30と別個の構成として記載しているが、主制御部30のMPUによってプログラムを実行することでこれらフィルタの機能を実現してもよい。
【0023】
主制御部30は、ノイズ信号、脈波信号、および圧力信号を取得し、圧力信号を、カフ制御部20を通じたポンプ18、定排弁14および急排弁16の動作制御に用いる。また、主制御部30は、オシロメトリック法により、脈波信号の振幅が特定の条件を満たした際の圧力信号の値に基づいて血圧値を決定する。また、主制御部30は、ノイズ信号に基づいて圧力センサ12の動作状態を判定する。
【0024】
操作部60は、例えばキー、スイッチ、ボタンなどであり、ユーザからの指示や設定などを受け付ける。例えば電源ボタン/スイッチ、血圧計測の開始を指示するためのスイッチ/ボタンや、実行中の血圧計測の中止を指示するためのスイッチ/ボタンなどが含まれる。なお、表示部70がタッチパネルを有する場合、表示部70におけるGUI表示とタッチパネルとの組み合わせもまた操作部60の一部を構成する。操作部60の操作は主制御部30が監視しており、主制御部30は検出された操作に応じた動作を実行する。
【0025】
表示部70は例えばLCDのようなドットマトリックス形式のディスプレイやLEDランプなどから構成され、主制御部30の制御に従って血圧計150の動作状態や計測結果、ガイダンスなどを表示する。なお、血圧計150は、表示部70に代えて、あるいは表示部70に加えて、スピーカやプリンタといった他の出力装置を備えてもよい。
【0026】
記憶部80は計測データに関する情報(被計測者の情報など)や計測データなどを記憶する記憶装置であり、例えば不揮発性メモリであってよい。記憶部80はメモリカードのような、血圧計150から取り外し可能な記録媒体を用いる構成であってもよい。なお、主制御部30のMPUが実行するプログラムやプログラムの実行に用いる情報のうち、少なくとも1部が記憶部80に記憶されてもよい。
【0027】
外部インタフェース(I/F)90は、例えば計測した血圧値を用いる外部装置を血圧計150に接続するための有線および/または無線通信インタフェースである。血圧計150は、外部インタフェース(I/F)90を通じて外部装置と通信することができる。また、外部インタフェース(I/F)90を通じて外部装置から電源の供給を受けてもよい。
【0028】
本実施形態において、主制御部30、カフ制御部20、ポンプ18、定排弁14、急排弁16、圧力センサ12、ADコンバータ22、ポンプノイズ抽出フィルタ50がカフ圧制御装置を構成する。ただし、カフ圧制御装置の異常検出にこれらの構成全てが必要な訳ではない。
【0029】
●(血圧計の動作)
図2は、本実施形態の血圧計150の血圧計測処理について説明するためのフローチャートである。例えば操作部60のスタートボタン等の押下により血圧測定動作の開始が指示されると、S101で主制御部30は、カフ制御部20に、カフ10への給気を開始するよう指示する。
【0030】
カフ制御部20はこの指示に応答してポンプ18を動作させる。これにより、エアバッグ11への給気が開始される。なお、給気中、カフ制御部20は、定排弁14および急排弁16をいずれも全閉の状態に制御する。圧力センサ12からは、エアバッグ11の静的な内圧(カフ圧)に加え、カフ装着部位の脈波による圧力変動と、ポンプ18の動作中(給気中)にはさらにポンプの給気動作による圧力変動(ノイズ成分)とが重畳した電気信号が得られる。
【0031】
圧力センサ12の出力信号はADコンバータ22によってデジタルデータ化された後、ポンプノイズ抽出フィルタ50、脈波信号抽出フィルタ51、および圧力信号抽出フィルタ52に供給される。ポンプノイズ抽出フィルタ50と脈波信号抽出フィルタ51は、センサ出力信号から抽出したポンプノイズ成分(ノイズ信号)および容積脈波成分(脈波信号)を主制御部30に供給する。圧力信号抽出フィルタ52は、センサ出力信号からポンプノイズ成分および容積脈波成分を除去した圧力信号を主制御部30に供給する。
【0032】
S103で主制御部30は、圧力信号が表すカフ圧が予め定められた目標値に達したか否か判定し、達したと判定されればS105へ、達したと判定されなければS121へ、それぞれ処理を進める。
【0033】
S121で主制御部30は、ノイズ信号の強度レベルが予め定められた閾値以上か否か判定し、閾値以上と判定されれば処理をS103へ戻して給気を継続し、閾値以上と判定されなければ処理をS123へ進める。例えば主制御部30は、ノイズ信号を周波数解析し、給気時のポンプ18の動作周波数に応じて定まるポンプノイズ成分の周波数近辺に存在するピーク強度レベルをノイズ信号の強度レベルとして算出し、閾値と比較する。なお、閾値は、ポンプ18、圧力センサ12、およびADコンバータ22が正常動作して給気している際に、AD変換後のセンサ出力信号(ADコンバータ22の出力信号)に重畳するポンプノイズ成分の強度レベルに基づいて予め決定しておくことができる。例えば正常動作時に計測されるポンプノイズ成分の強度レベルの平均値の80%〜90%の値を閾値として用いることができる。
【0034】
S123で主制御部30は、
・ポンプ18が正常に動作していない
・圧力センサ12が正常に動作していない
・ADコンバータ22(または圧力センサ12の出力から主制御部30までの信号経路内の他の回路のいずれか)が正常に動作していない
など、カフ圧制御装置(主制御部30から、カフ制御部20、ポンプ18、気体流路R、圧力センサ12、ADコンバータ22を経て主制御部30に戻る経路中)で何らかの故障や異常が発生したと判定し、血圧計測を強制終了させる。
【0035】
具体的には、主制御部30はカフ制御部20に、
・ポンプ18の動作停止(給気停止)
・定排弁14および急排弁16の全開
を指示する。
このように、圧力センサ12が異常である場合には、ポンプ18や他の回路が故障していなくてもS121で検出することができる。
【0036】
S125でカフ制御部20は、主制御部30の指示に従ってポンプ18の動作を停止させるとともに定排弁14および急排弁16を全開状態にする。
【0037】
S127で主制御部30は、例えば表示部70にメッセージを表示したり、アラーム音を出力したりして、装置異常を報知し、血圧計測処理を終了する。なお、主制御部30はS123でカフ制御部20に指示したら、カフ制御部20の動作完了を待たずに処理をS127に進めてもよい。
【0038】
一方、S103でカフ圧が目標値に達していると判定された場合、S105で主制御部30は、カフ制御部20に給気停止を指示する。あるいは、S103で圧力信号が表すカフ圧が予め定められた目標値に達したと判定されなくても、脈波信号が一定時間継続して消失したことが確認された時点で処理をS105に進めてもよい。カフ制御部20は、給気停止の指示に応答してポンプ18の動作を停止させる。
【0039】
次いで主制御部30は血圧決定処理を開始する。血圧決定処理はオシロメトリック法に基づく公知の任意の方法で実行することができるが、以下では実行可能な一例について説明する。まずS107で主制御部30は、カフ制御部20に対し、減圧率の予め定めた目標値(例えば5mmHg/秒)に対応する開口度で定排弁14を開くように指示する。カフ制御部20は指示に応じた開口度(流量)で定排弁14を開く。これにより、カフ10のエアバッグ11からの排気が始まる。
【0040】
なお、S107において主制御部30からカフ制御部20に対して定排弁14の開口度を明示的に指示する必要は無い。例えばカフ制御部20は給気停止後、最初に指示される定排弁14の開放指示に対しては特定の開口度で定排弁14を開くように動作してもよい。
【0041】
主制御部30は定排弁14の開放を指示すると、脈波信号および圧力信号に基づいて血圧値の決定処理を開始する。例えば脈波信号の振幅の大きさが有意に変化した時点における圧力信号が示す圧力値を収縮期および拡張期血圧とするといった公知の方法で血圧値を決定することができる。なお、減圧中には暫定的な血圧値を決定し、減圧処理が終了してから最終的な血圧値を決定してもよい。
【0042】
S109で主制御部30は、血圧決定処理を実行しながら圧力信号を監視し、減圧率が目標範囲内か否かを判定する。具体的には主制御部30は、カフ圧が定排弁14を開放してからの経過時間と目標減圧率から求まる目標値±許容誤差の目標範囲内にあるか否かを判定する。
【0043】
主制御部30は、減圧率(カフ圧)が目標範囲内と判定されれば、処理をS111に進め、血圧決定処理が終了したかどうかを判定する。主制御部30は血圧決定処理が終了したと判定されれば処理をS113に進め、血圧決定処理が終了したと判定されなければ処理をS109に戻す。上述の通り、血圧決定処理では暫定的な血圧値を決定してもよい。
【0044】
S113で主制御部30はカフ制御部20に対して定排弁14および急排弁16の両方を全開の状態にするように指示する。これに応答してカフ制御部20は、定排弁14および急排弁16を全開の状態に制御する。
主制御部30は例えば表示部70に減圧中もしくはS113以降に決定した血圧値などの計測値を表示し、血圧計測処理を終了する。
【0045】
一方、S109において、減圧率(カフ圧)が目標範囲内と判定されない場合、主制御部30は、S115〜S119で定排弁14の開口度を調整する。具体的には、S115で主制御部30は、減圧率(カフ圧)が目標範囲よりも低いか否かを判定し、低いと判定されればS119へ、低いと判定されなければS117へ処理を進める。
【0046】
S119で主制御部30は、排気流量を多くするため、カフ制御部20に定排弁14の開口度を増加するように指示する。また、S117で主制御部30は、排気流量を少なくするため、カフ制御部20に定排弁14の開口度を減少するように指示する。カフ制御部20は、主制御部30の指示に従い、定排弁14の開口度を予め定められた割合だけ増加もしくは減少させる。そして、主制御部30は処理をS109に戻す。
【0047】
従来の血圧計においては、センサ出力信号に重畳したポンプノイズ成分は不要な信号成分として、脈波信号抽出フィルタ51や圧力信号抽出フィルタ52によって除去することに注力されてきた。これに対し本実施形態では、これまで単なる除去対象であったポンプノイズ成分を装置の異常検出に利用する。これにより、例えば圧力センサを2つ設けたりすることなしに、圧力センサの異常を検出することができる。また、主制御部30がプログラムを実行することでポンプノイズ成分を抽出するフィルタ処理を実行するようにすれば、従来の血圧計のハードウェア構成を変更することなしに実施形態を実行できる。
【0048】
図3は、給気時における信号例を示す図であり、横軸が時刻、縦軸が電圧(圧力)である。(a)はADコンバータ22の出力信号(圧力センサ12の出力信号をデジタルデータ化したものであるため、便宜上センサ出力信号と呼ぶ)、(b)がセンサ出力信号(a)から抽出した脈波信号、(c)がセンサ出力信号(a)から抽出したノイズ信号である。時間の経過と共にカフ圧は上昇するため、センサ出力信号(a)の基線(DC成分)は上昇している。圧力信号抽出フィルタ52でセンサ出力信号(a)からAC成分を除去することにより、基線成分が圧力信号として得られる。
【0049】
脈波信号(b)は、センサ出力信号(a)から基線成分(DC成分)と、脈波より高い周波数成分を除去することで得られる。脈波信号(b)は例えばセンサ出力信号(a)にバンドパスフィルタを適用することで得られる。
ノイズ信号(c)は、センサ出力信号(a)に、給気時のポンプノイズ成分のピーク周波数およびその周辺帯域を通過帯域とするバンドパスフィルタを適用することで得られる。なお、バンドパスフィルタは、ローカットフィルタ(またはハイパスフィルタ)とローパスフィルタとの組み合わせで実現してもよい。
【0050】
図4は、ノイズ信号(c)の周波数解析結果(周波数スペクトル)である。このように、一定周波数で動作するポンプに起因するノイズ信号は、特定の周波数に強度ピークを有する。
図4の例では、ノイズ信号抽出フィルタ51として80―100Hzを通過帯域とするバンドパスフィルタを用いれば良い。
【0051】
主制御部30は、例えば直近の所定区間(所定サンプル数)のノイズ信号を周波数解析し、ピークを有する周波数成分の強度レベルを閾値と比較することによってS121における判定を行うことができる。
【0052】
以上説明したように本実施形態によれば、圧力センサの出力信号に重畳するポンプ動作に起因するノイズ成分の大きさに基づいて、圧力センサを始めとしたカフ圧制御装置の構成部品の異常有無を検出する。そのため、異常検出を行うために圧力センサを2つ設けたり、流路を切り替えたりするための構成を設けたりする必要が無い。また、ハードウェアを追加しなくても実施可能であるため、従来のカフ圧制御装置においても、制御ソフトウェアを更新するだけで異常検出機能を追加できる。また、生体情報の計測と並行して異常検出が実施可能であるため、計測時間に影響を与えない。
【0053】
(他の実施形態)
なお、上述の実施形態ではADコンバータ22の出力する圧力信号からポンプノイズ成分を抽出するためにポンプノイズ抽出フィルタ50を用いた。しかし、ADコンバータ22の出力する圧力信号から脈波信号および(圧力信号抽出フィルタ52の出力する)圧力信号を減じた信号をノイズ信号として用いてもよい。
【0054】
また、例えば計測対象の生体情報(生体信号)の周波数帯域とポンプ18の動作に起因する信号成分の周波数帯域が独立している場合などには、ポンプノイズ抽出フィルタ50を用いなくてもよい。この場合、ADコンバータ22が出力するセンサ出力信号を主制御部30に直接入力する。そして、S121で主制御部30は、センサ出力信号のうち、閾値以上の振幅を有する所定区間内の隣接ピーク間距離(時間)の平均値の逆数(周波数)がポンプ18の動作周波数もしくはその近傍帯域に含まれる場合、センサ出力信号には閾値以上の強度レベルのポンプノイズ成分が含まれると判定することができる。例えば、計測対象の生体情報が脈波の場合、周波数帯域は一般的に0.5〜30Hzの範囲であるため、ポンプの動作に起因する信号成分の周波数帯域が80〜100Hzの範囲になるようにポンプを駆動する場合には、ポンプノイズ抽出フィルタ50は用いなくてもよい。
【0055】
このように、S121における判定は、圧力センサ12の出力信号にポンプ18の動作に起因する信号成分が閾値以上の強度レベルで含まれるか否かの判定が可能であれば、どのような判定方法を用いてもよい。
【0056】
また、上述の実施形態では説明および理解を容易にするため、カフ圧制御装置の制御対象であるカフ10(エアバッグ11)の内圧を表す信号から生体情報(ここでは脈波および血圧)を計測する構成の生体情報計測装置について説明した。しかしながら、カフとは個別に、生体情報を計測する手段を備える生体情報計測装置においても本発明のカフ圧制御装置を適用可能である。例えば、マイクを用い、聴診法に基づいて血圧を計測する血圧計、光センサを用いて脈波および血圧を計測する血圧計、ドップラー血流計などが有するカフの制御にも、上述したカフ圧制御装置を適用することができる。
【0057】
なお、本発明に係るカフ圧制御装置の制御方法は、主制御部30が有する1つ以上のプログラマブルプロセッサ(コンピュータ)に、上述した動作を実行させるプログラム(アプリケーションソフトウェア)として実現することもできる。従って、このようなプログラムおよび、プログラムを格納した記憶媒体(CD−ROM、DVD−ROM等の光学記録媒体や、磁気ディスクのような磁気記録媒体、半導体メモリカードなど)もまた本発明を構成する。