特許第6807698号(P6807698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立アプライアンス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6807698-ドラム式洗濯機及びドラム式洗濯乾燥機 図000002
  • 特許6807698-ドラム式洗濯機及びドラム式洗濯乾燥機 図000003
  • 特許6807698-ドラム式洗濯機及びドラム式洗濯乾燥機 図000004
  • 特許6807698-ドラム式洗濯機及びドラム式洗濯乾燥機 図000005
  • 特許6807698-ドラム式洗濯機及びドラム式洗濯乾燥機 図000006
  • 特許6807698-ドラム式洗濯機及びドラム式洗濯乾燥機 図000007
  • 特許6807698-ドラム式洗濯機及びドラム式洗濯乾燥機 図000008
  • 特許6807698-ドラム式洗濯機及びドラム式洗濯乾燥機 図000009
  • 特許6807698-ドラム式洗濯機及びドラム式洗濯乾燥機 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807698
(24)【登録日】2020年12月10日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】ドラム式洗濯機及びドラム式洗濯乾燥機
(51)【国際特許分類】
   D06F 37/22 20060101AFI20201221BHJP
   D06F 37/04 20060101ALI20201221BHJP
   D06F 25/00 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   D06F37/22
   D06F37/04
   D06F25/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-199751(P2016-199751)
(22)【出願日】2016年10月11日
(65)【公開番号】特開2018-61527(P2018-61527A)
(43)【公開日】2018年4月19日
【審査請求日】2019年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】金内 優
(72)【発明者】
【氏名】上甲 康之
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】和田 努
【審査官】 渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−111239(JP,A)
【文献】 特開2001−224894(JP,A)
【文献】 特開昭50−061875(JP,A)
【文献】 特公昭38−014636(JP,B1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0026623(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F37/00−37/42
D06F25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸が水平または、奥側が下になるように傾斜した回転自在なるドラムと、
該ドラムを内包すると共に洗濯水を溜める外槽と、
該外槽を内包する筺体と、
前記外槽の上部を前方支持する第一の懸架手段と、
前記外槽の上部を後方支持する第二の懸架手段と、を有し、
前記外槽の前方はテーパー部を有し、
前記第一の懸架手段は、前記筐体との接続部と、前記外槽との接続部と、を有し、前記外槽を前方且つ上方へ向けて懸架し、前記外槽との接続部は、前記外槽の上面と開口部との間の前記テーパー部に設けられた、ドラム式洗濯機。
【請求項2】
請求項1記載のドラム式洗濯機であって、
前記第一の懸架手段のコイル部は、前記外槽の径が最大となる部分よりも前方に位置し、
前記第二の懸架手段の前記外槽との接続部は、前記第一の懸架手段の前記外槽との接続部よりも後方に位置し、
前記第二の懸架手段の前記筐体との接続部は、前記第二の懸架手段の前記外槽との接続部より後方に位置する、ドラム式洗濯機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のドラム式洗濯機であって、
前記第二の懸架手段は、前記第一の懸架手段よりも後方に備え、
前記第二の懸架手段の前記外槽との接続部より前方に外槽側の外れ防止部材を備え、
前記筺体に前記外槽側の外れ防止部材よりも前方に筺体側外れ防止部材を備え、
前記筺体側外れ防止部材と前記外槽側外れ防止部材間は、前記外槽を静態支持している状態から外槽が前方に移動して、前記第一の懸架手段が縮み、自然長となる前、または、自然長となった時に、前記筺体側外れ防止部材と前記外槽側外れ防止部材が前後方向に干渉する距離とする、ドラム式洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯,脱水を行うドラム式洗濯機及び洗濯,脱水及び乾燥を行うドラム式洗濯乾燥機に係る。
【背景技術】
【0002】
ドラム式洗濯機は,筐体が水を溜める外槽を内包し,外槽が衣類を投入するドラムを内包している。ドラム式洗濯機は,洗いと,すすぎと,脱水の各工程を行う。脱水時に衣類が片寄った状態で,ドラムが高速回転すると大きな遠心力が発生し,大きな振動となる。この大きな振動を小さくするために,外槽の下部はばねやダンパで構成されるサスペンションで支持されている。また,外槽の前後方向への倒れ込みを防ぐために,引張りばねの様な弾性部材で外槽の上部と筐体を接続して,外槽を前後に支持している。ドラム式洗濯機の弾性部材のばね定数が大きくなると,共振回転速度が上昇して,遠心力が大きくなるため,ドラムから外槽に加わる加振力が大きくなり,外槽の振動が大きくなる。外槽の振動が大きくなると,外槽から筺体に振動が伝達しやすくなり,筺体の振動が増加することで不快感が増す。そのため,外槽の上部を支持する弾性部材は,設置空間を確保して,所定のばね定数によって,外槽の支持と振動の抑制を両立している。
【0003】
外槽の上部を支持する弾性部材の従来技術には,特開2014−33749号公報(特許文献1)がある。この公報には,外槽の上部を前後方向に支持する二組の懸架手段を有するドラム式洗濯機において,第一の懸架手段は前記外槽を前方かつ上方へ向けて懸架し,前記第一の懸架手段の筺体との接続部は前記ドラムの前端の面よりも後方に位置し,第二の懸架手段は前記外槽を後方かつ上方へ向けて懸架し,前記第二の懸架手段の前記筺体との接続部は前記ドラムの後端の面よりも前方に位置し,前記第二の懸架手段の前記筺体との接続部は,前記第一の懸架手段の前記外槽との接続部よりも後方に位置させると記載されている。また,特開2002−346282号公報(特許文献2)には,外槽の上部では,引張りばねを介して筐体の天板に補助的に弾性支持されていると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−33749号公報
【特許文献2】特開2002−346282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は,第一の懸架手段で外槽を前方かつ上方へ向けて懸架し,第二の懸架手段で外槽を後方かつ上方へ向けて懸架している。洗濯容量の大容量化で外槽の径が拡大すると,外槽と筐体の上下空間が狭くなり,懸架手段の設置空間が狭くなるため,懸架手段を設置することが困難となる。特許文献2は,懸架手段となる引張りばねのコイル部が外槽の径が最大となる部分の上方に位置しているため,洗濯容量の大容量化で外槽の径が拡大すると,外槽と懸架手段の上下空間狭くなり,外槽が大きく振動した際に外槽とコイル部が干渉して,異音が発生する。外槽とコイル部の干渉を防ぐために,外槽の懸架手段の接続部を上方に伸ばして,外槽とコイル部の上下空間を確保した場合,大容量化で外槽と筐体の上下空間が狭くなっているため,外槽が大きく振動した際に,外槽の懸架手段の接続部と筐体が干渉して異音が発生する。
【0006】
また,特許文献1と特許文献2では,外槽が大きく振動し,懸架手段である引張ばねが圧縮方向に大きく変形する場合,懸架手段が自然長となり,引張力がなくなる。この状態で,更に外槽が振動すると,懸架手段に引張力がないため,懸架手段が接続部から外れて,外槽が倒れ込んでしまう。外槽が倒れ込むと,外槽が筺体と衝突し続けることで,異音が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のドラム式洗濯機は、回転軸が水平または、奥側が下になるように傾斜した回転自在なるドラムと、該ドラムを内包すると共に洗濯水を溜める外槽と、該外槽を内包する筺体と、前記外槽の上部を前方支持する第一の懸架手段と、前記外槽の上部を後方支持する第二の懸架手段と、を有し、前記外槽の前方はテーパー部を有し、前記第一の懸架手段は、前記筐体との接続部と、前記外槽との接続部と、を有し、前記外槽を前方且つ上方へ向けて懸架し、前記外槽との接続部は、前記外槽の上面と開口部との間の前記テーパー部に設けられた、構成とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば,洗濯容量の大容量化で外槽の径が拡大した場合に,外槽の懸架手段の設置空間を確保することができ,外槽と懸架手段のコイル部が干渉することで発生する異音を防止し,また,外槽の懸架手段が接続部から外れるのを防止して,外槽が倒れ込んで筺体と衝突して発生する異音を防止するドラム式洗濯機及びドラム式洗濯乾燥機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態例に係るドラム式洗濯機の斜視図である。
図2】本発明の実施の形態例に係るドラム式洗濯機の内部構造を示す右側面から見た中央断面図である。
図3】第一の実施例における懸架手段を示すための図2のA拡大図である。
図4】第二の実施例におけるドラム式洗濯機の内部構造を示す右側面から見た中央断面図である。
図5】第二の実施例における図4のB拡大図である。
図6】第二の実施例における図5の外れ防止部材の効果の一例を示す図である。
図7】第二の実施例における懸架手段を水平に配置した一例を示す図である。
図8】第二の実施例における図7に外れ防止部材を備えた図である。
図9】第二の実施例における図8の外れ防止部材の効果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下,本発明を実施するための形態例について,図面を参照して説明する。なお,上下方向,左右方向,前後方向については図1に示す方向とする。
【0011】
(実施例1)
図1は本発明におけるドラム式洗濯機100の斜視図,図2はドラム式洗濯機100の内部構造を示す側面図をそれぞれ示す。図1図2を用いて,ドラム式洗濯機100の構成と動作を説明する。
【0012】
図1に示すドラム式洗濯機100の外郭を構成する筐体1は,ベース1aの上に取付けられており,左右の側板1b(図1では右の側板のみを図示),前面カバー1c,背面カバー1d(図2参照),上面カバー1e,下部前面カバー1fで構成されている。上面カバー1eには,水道栓からのドラム式洗濯機100に給水するための給水ホース接続口30を設けている。筐体1は,ベース1aを含めて箱状の外枠を形成し,外枠として十分な強度を有している。
【0013】
ドア2は,前面カバー1cの略中央に設けた衣類を出し入れするための投入口(図示せず)を塞ぐためのもので,前面カバー1cに設けたヒンジで開閉可能に支持されている。ドア2は,ドア開放取手2aを引くことでロック機構(図示せず)が外れて開き,ドア2を前面カバー1cに押し付けることでロックされて閉じる。前面カバー1cは,後述する外槽11の開口部と略同心に,衣類を出し入れするための円形の開口部を有している。
【0014】
筐体1の上部に設けた操作・表示パネル3は,電源スイッチ4,操作スイッチ5,表示器6を備える。操作・表示パネル3は筐体1の上部に設けた上補強部材13a(図2参照)に備えられている制御装置7(図2参照)に電気的に接続している。制御装置7には冷却ファン(図示せず)が取付けられている。ベース1aの近傍には,排水を行うための排水ホース14(図2参照)が取付けられている。
【0015】
図2に示すドラム式洗濯機100の筐体1の内部には,水を溜める外槽11が備えられる。
【0016】
外槽11の前方は,洗濯容量の大容量化の際に,筺体1と外槽11の空間を確保するために,テーパー部を有している。
【0017】
外槽11の下部は,筐体1に固定された左右一対のサスペンション26(コイルばねとダンパで構成)で防振支持されている。
【0018】
外槽11の上部は,外槽11の前後方向への倒れ込みを抑制するために,二組の懸架手段(コイルばねで構成)が接続されている。第一の懸架手段8は,外槽11の前方に備えられる外槽側前ばねホルダー10aに一端を接続して,第一の懸架手段8の他端は,前補強部材13に備えられる筐体側前ばねホルダー10に接続して構成される。
【0019】
第二の懸架手段9は,外槽側前ばねホルダー10aよりも後方に備えられた外槽側後ばねホルダー10cに一端を接続して,第二の懸架手段9の他端は,外槽側後ばねホルダー10cよりも後方且つ上方に備えられる筐体側後ばねホルダー10bに接続して構成される。
【0020】
外槽側前ばねホルダー10a,筺体側前ばねホルダー10,外槽側後ばねホルダー10c及び筺体側後ばねホルダー10bの材料に,ポリプロピレンや繊維強化プラスチックといった強度が高い樹脂を用いることで,ばねホルダーに懸架手段から力が加わっても,ばねホルダーが強度を有しているため,ばねホルダーの破損を防止できる。
【0021】
外槽11は,衣類を収納するためのドラム21を内包する。外槽11の後方には,ドラム21を回転させるためのモータ22を備える。モータ22は,回転軸となるシャフト22aが外槽11を貫通し,ドラム21と結合している。モータ22が駆動すると,ドラム21は,正転(ドラム式洗濯機100を正面から見て時計回り),逆転(ドラム式洗濯機100を正面から見て反時計回り)の両方向に回転駆動される。図2に示すドラム21の回転軸Azは,ドラム式洗濯機100の前方から後方に向けて水平または,奥側が下になるように傾斜している(図2は奥側が下になるように傾斜している)。
【0022】
ドラム21の内周面には,ドラム21内の洗濯水を外槽11に排水するための複数個の脱水孔21bや,ドラム21の周方向に間隔をおいて,ドラム21内に投入された衣類を持ち上げるための複数個(図2では1個のみを図示)のバッフル23が設けられている。バッフル23は,ドラム21の前後方向に延在している。
【0023】
ドラム21の前端には,円筒状の流体バランサ21cが設けられている。外槽11は,前方を開口として,後方を閉じた有底の略円筒を形成している。この外槽11の開口部と筺体1の投入口は,前後方向に伸縮しやすいベローズ16により接続される。ベローズ16は,環状のパッキンである弾性体のエラストマーや合成ゴム材料で成形され,ドア2を閉めることでドラム21を水封する。また,筐体1の投入口,外槽11の開口部,ドラム21の開口部は連通しており,ドア2を開くことでドラム21内への衣類の出し入れが可能となる。なお,外槽11は,開口部を含む側と,モータ22の取り付けられる側とに分割することができる。
【0024】
外槽11には,給水弁15ならびに洗剤容器12を介して給水ホース17の一端を接続している。給水弁15を開くことで,給水ホース接続口30から外槽11内に洗濯水の供給を行う。
【0025】
外槽11の下部に備えられた排水ホース14は排水経路に循環ポンプ27,糸屑フィルタ28,排水弁14aが設けてあり,排水弁14aを閉じて給水することで外槽11に洗濯水を溜め,排水弁14aを開いて外槽11内の洗濯水を機外へ排水する。
【0026】
外槽11の下方には,外槽11の振動振幅を検知する振動センサ18が備えられており,振動センサ18の値が予め設定した所定値を超えると,脱水運転を停止する。
【0027】
上記構成において,ドラム式洗濯機100の動作を説明する。電源スイッチ4を押すと,ドラム式洗濯機100が起動する。ドア開放取手2aを引いて,ドア2を開いてドラム21内に衣類を投入し,ドア2を閉じた後,操作スイッチ5を操作することで,運転を開始する。運転を開始すると,ドラム21が回転して,注水前の衣類の重量を算出する。尚,モータ22の回転速度と電流値に基づいて,ドラム21内の衣類の重量を算出する。算出した衣類の重量に基づいて,投入する洗剤量を表示器6に表示する。洗剤容器12内に所定量の洗剤量を投入後,初めに洗い工程を開始する。洗い工程において,給水弁15を開いて,給水ホース接続口30から供給した水を給水ホース17ならびに洗剤容器12を介して,洗剤と共に外槽11内に給水する。この時,循環ポンプ27内で未溶解の洗剤と水が強力に撹拌され,効率よく洗剤を溶かし,高濃度の洗剤液を生成することができる。この動作を所定時間実行した後,ドラム21が正転,停止,逆転,停止を繰り返す洗い動作を所定時間行う。このとき,衣類がバッフル23によって持ち上げられ落下する。洗い工程を行った後,脱水工程を実行する。まず,排水弁14aを開いて,外槽11内の水が排水ホース14を介してドラム式洗濯機100の外に排水する。次に,衣類のドラム21の内周面への張り付け動作を行う。ドラム21を低速回転数(例えば60r/min)で一方向に回転させ,洗い工程で水を含んだ衣類をドラム21の回転時にバッフル23によって持ち上げ,落下する際にドラム21の内周面に広げる。次に,ドラム21の回転速度を徐々に上昇させて,ドラム21の内周面に衣類を張り付かせる。衣類がドラム21の内周面に張り付くと,ドラム21の回転速度を徐々に上昇させて,外槽11や筐体1の共振回転速度を通過しながら,ドラム21が所定回転数(例えば,900r/min)に到達する。その後,ドラム21が所定時間回転することで,衣類に含まれる水を遠心脱水する。
【0028】
なお,ドラム21の内周面に張り付いた衣類が片寄っていると,ドラム21の回転速度の脈動(回転変動)や外槽11の共振回転速度時に外槽11の振動振幅が大きくなる。ドラム21の回転変動や外槽11の振動振幅を検出している振動センサ18の値が所定の値よりも大きい場合は,アンバランスを小さくするために,脱水運転を停止して,ドラム21を正転と逆転を繰り返すほぐし動作や,注水を行い,衣類の片寄りを修正する。
【0029】
この脱水工程を行った後,給水弁15を開いて,給水ホース接続口30から供給した水を給水ホース17ならびに洗剤容器12を介して,洗剤と共に外槽11内に給水する。外槽11内に給水を行った後,すすぎ工程を行う。このすすぎ工程においては,前述した洗い工程と同様に,ドラム21が正転,停止,反転,停止の動作を繰り返す。このとき,バッフル23によって持ち上げられた衣類が落下する攪拌動作を繰り返す,すすぎ動作を所定時間行う。
【0030】
その後,前述した脱水工程およびすすぎ工程を所定回数繰り返し,最終脱水工程に移行する。この最終脱水工程における脱水時間は,前述の脱水工程より長く設定してある。
【0031】
ドラム式洗濯乾燥機は,ドラム式洗濯機100に温風ヒータ,温風ファンなどを備え(いずれも図示せず),最終脱水工程後に,洗い時よりもさらに低速で洗濯乾燥ドラムを回転させながら,温風を衣類に吹き付けて,衣類を乾燥する。
【0032】
次に,本実施の形態例において,洗濯容量の大容量化で外槽11の最大径D1が拡大した場合に,外槽11の第一の懸架手段8の設置空間を確保することができる第一の懸架手段8の詳細を図2図3を用いて説明する。
【0033】
第一の懸架手段8は,コイル部8aと外槽側のフック部8bと筐体側のフック部8cで構成されている。第一の懸架手段8の外槽側のフック部8bを外槽11と接続するための外槽側前ホルダー10aは,外槽11の最大径D1となる部分L1よりも前方の外槽11のテーパー部にねじ(図示せず)で固定されている。なお,第一の懸架手段8と第二の懸架手段9は,外槽11が前方や後方に振動した際に,伸縮するエラストマーや合成ゴム材料を用いても良い。また,第一の懸架手段8と第二の懸架手段9を外槽11や筺体1に接続するために,ねじを用いて固定しても良い。
【0034】
外槽側前ホルダー10aを外槽11のテーパー部に固定することで,コイル部8aが外槽11の最大径D1となる部分L1よりも前方とすることができ,外槽11とコイル部8aの上下空間及び筺体1と外槽側前ホルダー10aの上下空間を確保することができる。従って,洗濯容量の大容量化で外槽11の径が拡大し,外槽11と筺体1の上下空間が狭くなった場合においても,外槽11が振動した際に,コイル部8aと外槽11の干渉の防止や,筺体1と外槽側前ホルダー10aの干渉の防止をすることができ,異音の発生を防止できる。
【0035】
また,前述した様に,外槽11の径が拡大した場合においても,第一の懸架手段8の上下方向の設置空間を確保することができる。そのため,第一の懸架手段8は外槽11の径が拡大前と拡大後でコイル部を同一形状とすることができ,第一の懸架手段8のばね定数が大きくなることを避けられることにより,共振回転速度の上昇を防げる。共振回転速度の上昇を防ぐことで,外槽11の共振時にドラム21から外槽11に加わる遠心力による加振力を低減できるので,外槽11の振動振幅の増大を抑制でき,外槽11から筐体1への伝達による筐体1の振動振幅が増大することを抑制できるので,使用者の不快感を抑制できる。
【0036】
なお,本実施の形態例に示す懸架手段は,ドラム式洗濯乾燥機にも適用できる。
【0037】
(実施例2)
次に実施例2について図4図5図6図7図8及び図9を参照して詳細に説明する。
【0038】
なお,ドラム式洗濯機100については,実施例1と基本的に同様な構成であるので,以下では,異なる部分について説明する。
【0039】
図4は本実施例のドラム式洗濯機100の中央断面図を示し,図5は外槽11が静態支持されている状態を示す。実施例2では,外槽側後ばねホルダー10cの前方に外槽側外れ防止部材31,外槽側外れ防止部材31の前方に筐体側外れ防止部材31aを配置している。外槽側外れ防止部材31と筐体側外れ防止部材31a間は,外槽11を静態支持している状態から,外槽11が前方に移動して,第一の懸架手段8が自然長となる前または,自然長となった時に互いが干渉する距離となっている。外槽側外れ防止部材31と筐体側外れ防止部材31aの高さは,外槽11が前方向に大きく振動した際に互いが干渉する高さとなっている。
【0040】
外槽11が静態支持されている状態は,フック方式の第一の懸架手段8と第二の懸架手段9を引っ張った状態で外槽11に接続して,第一の懸架手段と第二の懸架手段が外槽11の前後でつり合った状態となるため,第一の懸架手段8と第二の懸架手段9の長さが自然長よりも長い。
【0041】
実施例1や特許文献1に記載している様に,第一の懸架手段8で外槽11を前方かつ上方に向けて懸架している場合,外槽11が前方向に大きく振動すると,第一の懸架手段8は縮み,第二の懸架手段9は引っ張られて伸びる。外槽11の前方向への振動がより大きくなった場合,第一の懸架手段8の縮み量が増えて,第一の懸架手段8が自然長となり,引張力がなくなる。その状態で外槽11が更に振動すると,第一の懸架手段8が第一の懸架手段8が筐体側前ばねホルダー10や外槽側前ばねホルダー10aから外れて,外槽11が倒れ込んで,外槽11が筺体1と衝突して異音が発生する。
【0042】
図6は外槽11が前方向に大きく振動した状態を点線で示す。外槽側外れ防止部材31と筐体側外れ防止部材31aは,第一の懸架手段8が自然長または自然長となる前の長さとなった時に,互いが干渉する距離となっている。そのため,第一の懸架手段8が自然長または,自然長となる前の長さになった時に,外槽11の前方への振動が抑制される。従って,第一の懸架手段8が筐体側前ばねホルダー10や外槽側前ばねホルダー10aから外れることを防止して,外槽11が倒れ込みを防止することで,外槽11と筺体1の衝突による異音の発生を防止できる。
【0043】
第一の懸架手段8は,外槽11が前後に倒れるのを防止するために,水平方向に所定の力が必要となる。ここで,実施例1や特許文献1の様に,外槽11を第一の懸架手段8を前方かつ上方に懸架する場合,水平方向に所定の力を発生させると,第一の懸架手段8を水平に配置した時に比べて,第一の懸架手段8のばね定数が大きくなる。第一の懸架手段8のばね定数が大きくなると、共振回転速度が上昇して,遠心力が大きくなることで,外槽11の振動が大きくなる。外槽11の振動が大きくなると,外槽11の振動が筺体1に伝達して,筺体1の振動が大きくなり,不快感が増す。そのため,第一の懸架手段は水平に配置することが望ましい。
【0044】
図7は,特許文献2に記載している様に,第一の懸架手段8を水平方向に配置した状態を示す。
【0045】
第一の懸架手段8を水平に配置する場合,外槽11が前方に大きく振動すると,第一懸架手段8は水平方向に変形しやく,自然長となりやすいため,第一懸架手段8が筐体側前ばねホルダー10や外槽側前ばねホルダー10aから外れて外槽11が倒れ込みやすくなる。
【0046】
図8は,本実施の形態例に記載している外槽側外れ防止部材31と筐体側外れ防止部材31aを図7に備えた状態を示す。第一の懸架手段8を水平方向に配置して,第一の懸架手段8が水平方向に変形しやすい場合においても,図9に示す様に,外槽側外れ防止部材31と筐体側外れ防止部材31aが干渉することで,外槽11の振動が抑制され,第一の懸架手段8を水平方向に配置した場合においても,第一の懸架手段8が筐体側前ばねホルダー10や外槽側前ばねホルダー10aから外れることによる外槽11の倒れ込みを防止することで,外槽11と筺体1の衝突による異音の発生を防止できる。
【0047】
従って,本実施の形態例に記載している外槽側外れ防止部材31と筐体側外れ防止部材31aを備えることで,実施例1に記載している様な,外槽11を前方かつ上方に向けて懸架している第一の懸架手段8を水平に配置することができる。第一の懸架手段8を水平に配置すると,第一の懸架手段8を前方かつ上方に向けて配置する場合に比べて,ばね定数を小さくできるので,共振回転速度の上昇を抑制して,外槽11の振動が大きくなることを防止できるため,外槽11から筺体1に伝達する振動を低減できる。
【0048】
本発明により,第一の懸架手段8が筐体側前ばねホルダー10や外槽側前ばねホルダー10aから外れて外槽11が倒れ込むことを防止し,外槽11と筺体1の衝突による異音の発生を防止できる。さらに第一の懸架手段8を水平に配置できるため,共振時に外槽11から筺体1に伝達する振動を低減でき,筺体1の振動の増加を抑制することで不快感を低減できる。
【0049】
なお,本実施の形態例に示す外れ防止部材は,ドラム式洗濯機100とドラム式洗濯乾燥機に適用できる。
【0050】
また,モータ22の後方の背面カバー1dに突起部40を備え,モータ22と突起部40間は,第二の懸架手段9が外槽11を静態支持している状態から,外槽11が後方に移動して,第二の懸架手段9が自然長以下となる前に,モータ22の背面が突起部材40と干渉する位置とすることで,第二の懸架手段9が自然長に至る前に,外槽11の後方向の振動が抑制されるため,第二の懸架手段9が外槽側後ばねホルダー10cから外れることを防止できる(図4参照)。
【0051】
さらに,本実施の形態例における外槽側外れ防止部材31を外槽側後ばねホルダー10cと同一の材料とすることで,外槽側外れ防止部材31と外槽側後ばねホルダー10cを一体部品として成型できる。同様に,筺体側外れ防止部材31aを筺体側後ばねホルダー10bと同一材料とすることで,筺体側外れ防止部材31aを筺体側後ばねホルダー10bと一体部品として成型できる。外れ防止部材とばねホルダーを一体部品とすることで,部品点数の増加を防ぎ,タクトタイム低減による生産コストの低減が可能となる。
【符号の説明】
【0052】
1・・・筐体
8・・・第一の懸架手段
8a・・・コイル部
8b・・・外槽側のフック部
8c・・・筐体側のフック部
9・・・第二の懸架手段
10・・・筐体側前ばねホルダー
10a・・・外槽側前ばねホルダー
10b・・・筐体側後ばねホルダー
10c・・・外槽側後ばねホルダー
11・・・外槽
13・・・前補強部材
22・・・モータ
31・・・外槽側の外れ防止部材
31a・・・筐体側の外れ防止部材
40・・・突起部
100・・・ドラム式洗濯機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9