(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1及び2を含め、従来技術の排ガス浄化触媒においては、助触媒となるBa源として、酢酸バリウム又は硫酸バリウムを、それぞれ単独で使用する場合が多い。
【0009】
しかし、本発明者らは、Ba源として酢酸バリウムのみを使用すると、使用を経て触媒が劣化した状態(劣触状態)におけるNOx浄化能に劣ること、及びBa源として硫酸バリウムのみを使用すると、調製直後の新しい触媒の状態(新触状態)において、HC浄化能に劣ることを見いだした。
【0010】
本発明は、従来触媒における上記の問題点を解決しようとしてなされたものである。したがって、本発明の課題は、劣触状態におけるNOx浄化能、及び新触状態におけるHC浄化能の双方に優れる排ガス浄化触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明は、以下のとおりである。
【0012】
[1] パラジウム、水溶性アルカリ土類金属塩に由来するアルカリ土類金属、及び触媒担体粒子を含有する第1の触媒層、並びに
ロジウム、パラジウム、水不溶性アルカリ土類金属塩に由来するアルカリ土類金属、及び触媒担体粒子を含有する第2の触媒層
を有し、
前記水溶性アルカリ土類金属塩に由来するアルカリ土類金属が、前記第1及び第2の触媒層中のパラジウム1モルに対して、1.0モル以上であり、かつ
前記水不溶性アルカリ土類金属塩に由来するアルカリ土類金属が、前記第1及び第2の触媒層中のパラジウム原子1モルに対して、1.0モル以上である、
排ガス浄化触媒。
[2] 前記第1の触媒層上に前記第2の触媒層を有する、[1]に記載の排ガス浄化触媒。
[3] 基材上に、前記第1及び第2の触媒層を有する、[1]又は[2]に記載の排ガス浄化触媒。
[4] 前記水溶性アルカリ土類金属塩に由来するアルカリ土類金属が、前記第1及び第2の触媒層中のパラジウム1モルに対して、3.0モル以下である、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。
[5] 前記第2の触媒層が、排ガス流れ方向に対して上流側の前段部と下流側の後段部とを有し、かつ
前記前段部に含有されるロジウムの濃度が、前記後段部に含有される貴金属の濃度よりも高い、
[1]〜[4]のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。
[6] パラジウム前駆体、及び水溶性アルカリ土類金属塩を含有する第1の塗工用組成物から第1の触媒層を形成すること、及び
ロジウム前駆体、パラジウム前駆体、及び水不溶性アルカリ土類金属塩を含有する第2の塗工用組成物から第2の触媒層を形成すること
を含み、
前記水溶性アルカリ土類金属塩のアルカリ土類金属が、前記第1及び第2の塗工用組成物中のパラジウム1モルに対して、1.0モル以上であり、かつ
前記水不溶性アルカリ土類金属塩のアルカリ土類金属が、前記第1及び第2の塗工用組成物中のパラジウム1モルに対して、1.0モル以上である、
排ガス浄化触媒の製造方法。
[7] 前記第1の触媒層上に前記第2の触媒層を形成する、[6]に記載の方法。
[8] 基材上に、前記第1及び第2の触媒層を形成する、[6]又は[7]に記載の方法。
[9] 前記第1及び第2の塗工用組成物の少なくとも一方が触媒担体粒子を更に含有している、[6]〜[8]のいずれか一項に記載の方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、劣触状態におけるNOx浄化能、及び新触状態におけるHC浄化能の双方に優れる排ガス浄化触媒が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<排ガス浄化触媒>
本発明の排ガス浄化触媒は、パラジウム、水溶性アルカリ土類金属塩に由来するアルカリ土類金属を含有する第1の触媒層、及び触媒担体粒子、並びにロジウム、パラジウム、水不溶性アルカリ土類金属塩に由来するアルカリ土類金属、及び触媒担体粒子を含有する第2の触媒層を有する。
【0015】
この本願発明の排ガス浄化触媒では、水溶性アルカリ土類金属塩に由来するアルカリ土類金属が、第1及び第2の触媒層中のパラジウム1モルに対して、1.0モル以上であり、かつ水不溶性アルカリ土類金属塩に由来するアルカリ土類金属が、第1及び第2の触媒層中のパラジウム1モルに対して、1.0モル以上である。すなわち、本願発明の排ガス浄化触媒では、水溶性アルカリ土類金属塩に由来するアルカリ土類金属、及び水不溶性アルカリ土類金属塩に由来するアルカリ土類金属を、触媒層中のパラジウムに対して実質的な量で含有している。
【0016】
排ガス浄化触媒におけるバリウム源として、酢酸バリウムを単独で使用する従来触媒が、劣触状態におけるNOx浄化能に劣り、また排ガス浄化触媒におけるバリウム源として、硫酸バリウムを単独で使用する従来触媒が、新触状態におけるHC浄化能に劣る理由について、本発明者らは以下のように推察した。
【0017】
バリウム、特に酸化バリウムの形のバリウムは、Pdに電子供与してPdのHC被毒を抑制するとともに、NOxを吸蔵し、吸蔵されたNOxをPdによるHCの酸化の際の酸化剤として用いることを可能にする。したがって、バリウムは、HC浄化能及びNOx浄化能の双方に寄与すると考えられる。一方で、バリウムは、Rhに電子供与してRhの酸化状態を安定化し、それによってRhが金属状態になること、特に排ガス雰囲気がリーンからリッチに切り替わった際にRhが金属状態になることを妨げるので、RhによるNOxの還元を妨げると考えられる。
【0018】
バリウム源として酢酸バリウムのみを使用すると、酢酸バリウムは、水溶性であるため、触媒層中で高度に分散された状態で担持される。この酢酸バリウムは、焼成工程を経ると、大部分が酸化バリウムに変換される。したがって、例えば多層の触媒層を有する排ガス浄化触媒において、PdとRhとを別の層に配置し、酢酸バリウムをPd含有層にのみ含有させた場合であっても、触媒調製過程で酢酸バリウムが層間を移動して、Rh近傍に酸化バリウムが存在することとなる。
【0019】
これに加えて、バリウム源として酢酸バリウムのみを使用すると、耐久過程を経たときに、バリウムの移動が更に顕著化し、Rhの近傍に多くの酸化バリウムが高分散状態で存在することになる。このような状態では、酸化バリウムから電子が供与されてRhが酸化状態で安定化されるので、劣触状態におけるNOx浄化能が劣ることになると推察される。また、耐久過程を経ると、バリウムの移動によって、触媒層に存在するバリウムの量が不足することがある。
【0020】
一方、バリウム源として硫酸バリウムのみを使用すると、硫酸バリウムは水不溶性であるため、触媒層中の分散性に劣る。更に、硫酸バリウムは、耐久過程を経た劣触状態では酸化バリウムまで完全分解されるものの、焼成工程を経ても炭酸バリウムとなるだけであり、酸化バリウムまで完全分解される割合は低い。したがって、バリウム源として硫酸バリウムのみを使用すると、新触状態において、Pd近傍に存在する酸化バリウムが不足し、それによって酸化バリウムからの電子供与を得られないPdが還元状態となってHC被毒が生じ、またPd近傍で吸蔵されるNOxの量が不足して、新触状態のHC浄化能に劣ることになると推察される。
【0021】
このような現象を回避するため、本発明においては、アルカリ土類金属源として水溶性アルカリ土類金属塩及び水不溶性アルカリ土類金属塩の双方を用いている。
【0022】
[第1の触媒層]
第1の触媒層は、パラジウム、水溶性アルカリ土類金属塩に由来するアルカリ土類金属、及び触媒担体粒子を含有する。
【0023】
(貴金属)
第1の触媒層は、貴金属として、Pdのみを含んでいてよく、Pdとともに他の貴金属を含んでいてもよい。他の貴金属としては、例えば、Pd以外の白金族元素を挙げることができ、具体的には例えば、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、及びイリジウム(Ir)から成る群から選択される1種以上であってよい。この第1の触媒層は、触媒調製工程において酸化バリウムとして高度に分散されることになる、水溶性アルカリ土類金属塩に由来するアルカリ土類金属を含有するから、Rhを含有しないことが好ましい。
【0024】
第1の触媒層におけるPdの濃度は、基材容量1L当たりの金属Pdの質量として、例えば、0.5g/L以上であってよく、例えば、5.0g/L以下であってよい。
【0025】
(水溶性アルカリ土類金属塩に由来するアルカリ土類金属)
本発明の排ガス浄化触媒の第1の触媒層におけるアルカリ土類金属としては、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等の酸化物、炭酸塩等を挙げることができ、より好ましくは酸化バリウム及び炭酸バリウムから選択される1種以上であり、更に好ましくは酸化バリウムである。
【0026】
上記のようなアルカリ土類金属を与える水溶性アルカリ土類金属塩としては、水への溶解度が、5g/100mL以上、10g/100mL以上、30g/100mL以上、又は50g/100mL以上であるアルカリ土類金属塩を挙げることができ、例えばアルカリ土類金属が例えばバリウムであるときには、例えば、酢酸バリウム、硝酸バリウム、塩化バリウム等を挙げることができる。
【0027】
水溶性アルカリ土類金属塩に由来するアルカリ土類金属は、第1及び第2の触媒層中のパラジウム1モルに対して、1.0モル以上、又は1.5モル以上であってよく、また3.0以下、2.5以下、又は2.2以下であってよい。
【0028】
(触媒担体粒子)
第1の触媒層は、触媒担体粒子を有しており、このような触媒担体粒子としては、例えば、金属酸化物担体粒子、例えばアルミニウム、ジルコニウム、セリウム、イットリウム、希土類元素等から成る群より選択される1種以上の金属の酸化物の粒子であってよい。
【0029】
(任意的成分)
第1の触媒層は、上記の貴金属、水溶性アルカリ土類金属塩に由来するアルカリ土類金属、及び触媒担体粒子に加えて、任意的にその他の成分を含有していてもよい。
【0030】
[第2の触媒層]
第2の触媒層は、ロジウム、パラジウム、水不溶性アルカリ土類金属塩に由来するアルカリ土類金属、及び触媒担体粒子を含有する。
【0031】
(貴金属)
第2の触媒層は、貴金属として、Rh及びPdのみを含んでいてよく、Rh及びPdとともに他の貴金属を含んでいてもよい。他の貴金属としては、例えば、Rh及びPd以外の白金族元素を挙げることができ、具体的には例えば、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、及びイリジウム(Ir)から成る群から選択される1種以上であってよい。
【0032】
第2の触媒層におけるRhの濃度は、基材容量1L当たりの金属Rhの質量として、例えば、0.05g/L以上であってよく、例えば、1.0g/L以下であってよい。
【0033】
第2の触媒層におけるPdの濃度は、基材容量1L当たりの金属Pdの質量として、例えば、1.0g/L以上であってよく、例えば、10.0g/L以下であってよい。
【0034】
(水不溶性アルカリ土類金属塩に由来するアルカリ土類金属)
本発明の排ガス浄化触媒の第2の触媒層におけるアルカリ土類金属としては、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等の酸化物、炭酸塩等を挙げることができ、より好ましくは酸化バリウム及び炭酸バリウムから選択される1種以上である。
【0035】
上記のようなアルカリ土類金属を与える水不溶性アルカリ土類金属塩としては、水への溶解度が、1g/100mL以下、又は0.1g/100mL以下であるアルカリ土類金属塩を挙げることができ、例えばアルカリ土類金属が例えばバリウムであるときには、例えば、硫酸バリウム、炭酸バリウム、シュウ酸バリウム等を挙げることができる。
【0036】
水不溶性アルカリ土類金属塩に由来するアルカリ土類金属は、第1及び第2の触媒層中のパラジウム1モルに対して、1.0モル以上、1.5モル以上、又は2.0モル以上であってよく、また10.0以下、5.0以下、又は4.0以下であってよい。
【0037】
また、第1の触媒層における水溶性アルカリ土類金属塩に由来するアルカリ土類金属、及び第2の触媒層における水不溶性アルカリ土類金属塩に由来するアルカリ土類金属の総量は、第1及び第2の触媒層中のパラジウム1モルに対して、4.5モル以上、4.8モル以上、5.0モル以上、5.2モル以上、又は5.4モル以上であってよく、また8.0モル以下、7.0モル以下、6.5モル以下、又は6.0モル以下であってよい。
【0038】
(触媒担体粒子)
第1の触媒層は、触媒担体粒子を有しており、このような触媒担体粒子としては、例えば、金属酸化物担体粒子、例えばアルミニウム、ジルコニウム、セリウム、イットリウム、希土類元素等から成る群より選択される1種以上の金属の酸化物の粒子であってよい。
【0039】
(任意的成分)
第2の触媒層は、上記の貴金属、水不溶性アルカリ土類金属塩に由来するアルカリ土類金属、及び触媒担体粒子に加えて、任意的にその他の成分を含有していてもよい。
【0040】
[ゾーンコート構成]
第1及び第2の触媒層の少なくとも一方は、その全長にわたって同一の組成を有してもよいし、排ガス流れの上流側である前段部と、下流側である後段部とに2分して、両者の組成を異なるものとする、いわゆるゾーンコート構成としてもよい。
【0041】
第1及び第2の触媒層の少なくとも一方をゾーンコート構成とする場合の両者の長さ比としては、前段部及び後段部の合計の長さに対する前段部の長さの割合として、例えば、5%以上、10%以上、15%以上、又は20%以上とすることができ、例えば、75%以下、50%以下、45%以下、又は40%以下とすることができる。
【0042】
第1及び第2の触媒層の少なくとも一方をゾーンコート構成とする場合、前段部及び後段部のうちの少なくとも1つが本発明の要件を充足していればよく、前段部及び後段部の双方が、本発明の要件を充足することが好ましい。なお、ゾーンコートの前段部に含有される貴金属、例えばロジウムの濃度は、後段部に含有される貴金属の濃度よりも高いことが貴金属の有効利用のために好ましいことがある。
【0043】
[第1の触媒層及び第2の触媒層の位置]
本発明の排ガス浄化触媒における第1の触媒層及び第2の触媒層は、それぞれ、基材上に存在してもよいし、第1の触媒層及び第2の触媒層のうちのいずれか一層が基材を構成しており、触媒層を構成している基材の上に他の触媒層が存在していてもよい。本明細書においては、以下、基材が、第1の触媒層及び第2の触媒層とは別の材料として存在する場合と、第1の触媒層及び第2の触媒層のうちのいずれか一層が基材を構成している場合と、を包含して、「基材」の語を用いて参照する。
【0044】
基材は、ハニカム基材であってよい。ハニカム基材の形状は、典型的には、略円柱状又は略多角柱状の外形を有し、軸方向に連通する多数のセルを有していてよい。
【0045】
基材を構成する材料は、例えば、金属、セラミックス(例えばコージェライト)、金属酸化物粒子(例えば、アルミナ粒子、セリア粒子、ゼオライト粒子)等であってよい。
【0046】
第1の触媒層及び第2の触媒層は、どちらが下層でどちらが上層であってもよい。しかしながら、第1の触媒層を下層とし、該第1の触媒層上に第2の触媒層を有する構成とすることが、より効率的な浄化能を発現する観点から、好ましい。この場合、基材上に、第1の触媒層及び第2の触媒層をこの順に有することができ、又は第1の触媒層が基材を構成し、この第1の触媒層を構成している基材上に第2の触媒層を有することができる。
【0047】
<排ガス浄化触媒の製造方法>
上記のような本発明の排ガス浄化触媒は、パラジウム前駆体、水溶性アルカリ土類金属塩、及び触媒担体粒子を含有する第1の塗工用組成物から前記第1の触媒層を形成すること、及びロジウム前駆体、パラジウム前駆体、水不溶性アルカリ土類金属塩、及び触媒担体粒子を含有する第2の塗工用組成物から第2の触媒層を形成することを含む方法によって製造されてよい。
【0048】
この本発明の方法において、水溶性及び水不溶性のアルカリ土類金属塩の種類及び量、貴金属の種類及び量、触媒層の構成等については、本発明の排ガス浄化触媒に関する記載を参照できる。
【0049】
また、本発明の排ガス浄化触媒で用いられる第1及び第2の塗工用組成物は、本発明の排ガス浄化触媒に関して説明した触媒担体粒子を含有していても、含有していなくてもよい。
【0050】
基材が、第1の触媒層及び第2の触媒層とは別の材料として存在する排ガス浄化触媒、すなわち基材上に第1の触媒層及び第2の触媒層を任意の順で有する排ガス浄化触媒は、例えば、基材に対して、第1及び第2の触媒層を任意の順で形成して、製造することができる。
【0051】
第1の触媒層及び第2の触媒層のうちのいずれか一層が基材を構成している排ガス浄化触媒は、例えば、触媒担体粒子から構成された基材に対して、パラジウム前駆体、及び
水溶性アルカリ土類金属塩を含有する第1の塗工用組成物をコートして、パラジウム及びアルカリ土類金属を担持している第1の触媒層を形成した後、この触媒層に対して、ロジウム前駆体、パラジウム前駆体、及び水不溶性アルカリ土類金属塩に加えて、触媒担体粒子を更に含有する第2の塗工用組成物、すなわちスラリーの形態の第2の塗工用組成物をコートして、第2の触媒層を形成することによって、製造することができる。第1の触媒層の形成工程と第2の触媒層の形成工程とは逆の順で行ってもよ
い。
【0052】
以下、基材に対して、第1の触媒層及び第2の触媒層をこの順で形成する場合を例として、本発明の排ガス浄化触媒の製造方法について詳細に説明する。
【0053】
[第1の触媒層の形成工程]
第1の触媒層の形成工程は、パラジウム前駆体、及び水溶性アルカリ土類金属塩を含有する第1の塗工用組成物を用いて、第1の触媒層を形成する工程である。具体的には、基材上に、第1の塗工用組成物を塗布し、次いで焼成することにより、第1の触媒層を形成することができる。
【0054】
第1の塗工用組成物は、少なくとも、パラジウム前駆体、水溶性アルカリ土類金属塩、触媒担体粒子を含有する。第1の塗工用組成物は、上記以外に、バインダー等を含んでいてよい。
【0055】
パラジウム前駆体としては、例えば、パラジウムを含む所望の貴金属の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、ジケト鎖体等であってよい。金属酸化物担体は、所望の金属酸化物担体の粒子であってよい。バインダーとしては、例えば、ベーマイト等の永続的バインダー及び有機ポリマー等の一時的バインダーを例示することができる。組成物の媒体としては水が適当である。
【0056】
第1の塗工用組成物の濃度は、形成すべき第1の触媒層の所望の膜厚に応じて、適宜に設定されてよい。
【0057】
基材上への第1の塗工用組成物の塗布は、例えば、公知の浸漬法、押上げ法、吸引法等によって行ってよい。浸漬法は、基材を組成物中に浸漬することによって行うことができる。浸漬法における浸漬時間は任意であり、例えば1分以上2時間以下とすることができる。押上げ法は、基材のセル孔が鉛直方向となるように保持された基材の下側に配置した組成物を押し上げることによって、行うことができる。吸引法は、セル孔が鉛直方向となるように保持された基材の上側端又は下側端に組成物を配置し、反対側端から吸引することによって、行うことができる。
【0058】
焼成は、例えば100℃以上又は200℃以上、例えば500℃以下又は400℃以下の温度において、例えば0.25時間以上又は0.5時間以上、例えば3.0時間以下又は2.0時間以下の時間加熱する方法によることができる。
【0059】
[第2の触媒層の形成工程]
第2の触媒層の形成工程は、上記第1の触媒層の形成工程によって形成された第1の触媒層上に、第2の塗工用組成物を塗布し、次いで焼成することにより、行うことができる。
【0060】
第2の触媒層の形成工程は、上記第1の塗工用組成物の代わりに第2の塗工用組成物を用いる他は、上記第1の触媒層の形成工程と略同様にして行うことができる。
【0061】
第2の塗工用組成物は、ロジウム前駆体を更に含む他は、上記第1の塗工用組成物と略同様であってよい。ロジウム前駆体としては、ロジウムの塩化物、硝酸塩、硫酸塩、ジケト鎖体等であってよい。
【実施例】
【0062】
《実施例1、及び比較例1〜3》
〈実施例1〉
以下のように、実施例1の排ガス浄化触媒を作成し、それについて新触状態におけるHC浄化能、及び劣触状態におけるNOx浄化能を評価した。
【0063】
(基材)
基材としては、下記のセラミック製ハニカム基材を用いた。
セル数: 900cpsi(≒140セル/cm
2)、
セル壁厚: 2.5mil(≒0.06mm)
セル形状: スクエアセル
直径: 93mmφ
長さ: 105mm
容量: 0.7L
【0064】
(塗工用スラリーの調製)
以下の成分を水に溶解又は分散させて、塗工用スラリーを調製した。
Pd前駆体: 硝酸パラジウム
Rh前駆体: 硝酸ロジウム
水溶性アルカリ土類金属塩: 酢酸バリウム
水不溶性アルカリ土類金属塩: 硫酸バリウム
アルミナ: 粒径30nmのアルミナ粒子
セリア−ジルコニア: 粒径10nmのセリア−ジルコニア粒子
【0065】
塗工用スラリーは、第1の触媒層(下層)用、第2の触媒層前段部(上層前段部)用、及び第2の触媒層後段部(上層後段部)用の3種類を調製した。
【0066】
(触媒の製造)
基材上に、各層形成用の塗工用スラリーを浸漬法によって塗布した後に焼成するサイクルを繰り返す手法により、所定の排ガス浄化触媒を製造した。第1の触媒層の塗工長さは105mm(ハニカム基材の全長と同じ)であり、第2の触媒層の塗工長さは、前段部35mm及び後段部70mmとした。第1の触媒層の塗工はハニカム基材の全部を塗工用スラリー中に浸漬する手法により行った。第2の触媒層の前段部及び後段部の塗工は、第1の触媒層を形成したハニカム基材を、排ガス流れの上流側又は下流側から、それぞれ、所定の長さだけ塗工用スラリー中に浸漬する手法により行った。
【0067】
実施例1の排ガス浄化触媒における第1の触媒層、第2の触媒層前段部、及び第2の触媒層後段部の組成は下記のとおりであった。
【0068】
(第1の触媒層(下層))
パラジウム: 0.4g/基材−L
バリウム: 10.0g/基材−L(酢酸バリウムとして計算)
アルミナ: 20.0g/基材−L
セリア−ジルコニア: 70.0g/基材−L
【0069】
(第2の触媒層前段部(上層前段部))
パラジウム: 4.0g/基材−L
ロジウム: 0.1g/基材−L
バリウム: 5.0g/基材−L(硫酸バリウムとして計算)
アルミナ: 40.0g/基材−L
セリア−ジルコニア: 65.0g/基材−L
【0070】
(第2の触媒層後段部(上層後段部))
パラジウム: 1.5g/基材−L
ロジウム: 0.1g/基材−L
バリウム: 5.0g/基材−L(硫酸バリウムとして計算)
アルミナ: 40.0g/基材−L
セリア−ジルコニア: 65.0g/基材−L
【0071】
(新触状態におけるHC浄化能評価)
上記で調製した触媒を、排気量0.7Lのエンジンを有する実車量に搭載し、JC08Cモード法及びJC08Hモード法に準拠して、走行1km当たりの非メタン炭化水素の排出量を測定した。
【0072】
(劣触状態におけるNOx浄化能評価)
実施例1の触媒を、排気量4.6Lの実エンジンに装着し、触媒床温度を950℃として50時間の劣化処理を行った。
【0073】
上記劣化処理後の触媒を、排気量0.7Lのエンジンを有する実車量に搭載し、JC08Cモード法及びJC08Hモード法に準拠して、走行1km当たりのNOxの排出量を測定した。
【0074】
〈比較例1〉
硫酸バリウムと酢酸バリウムを入れ替えたこと、すなわち第1の触媒層を得るために硫酸バリウムを用い、かつ第2の触媒層を得るために酢酸バリウムを用いたことを除いて、実施例1と同様にして比較例1の排ガス浄化触媒を製造し、そして評価した。
【0075】
〈比較例2〉
硫酸バリウムの代わりに酢酸バリウムを用いたこと、すなわち第1の触媒層及び第2の触媒層の両方を得るために酢酸バリウムを用いたことを除いて、実施例1と同様にして比較例2の排ガス浄化触媒を製造し、そして評価した。
【0076】
〈比較例3〉
酢酸バリウムの代わりに硫酸バリウムを用いたこと、すなわち第1の触媒層及び第2の触媒層の両方を得るために硫酸バリウムを用いたことを除いて、実施例1と同様にして比較例3の排ガス浄化触媒を製造し、そして評価した。
【0077】
実施例1、及び比較例1〜3の結果を、下記の表1に示す。なお、この表1では、バリウム濃度及びパラジウム濃度を基材1リットル当たりのモル数として示している。
【0078】
【表1】
【0079】
この表1からは、実施例1では、新触状態におけるHC浄化能、及び劣触状態におけるNOx浄化能の両方に優れていることが理解される。
【0080】
これに対して、第1の触媒層を得るために硫酸バリウムを用い、かつ第2の触媒層を得るために酢酸バリウムを用いた比較例1の排ガス浄化触媒では、劣触状態におけるNOx浄化能が劣っていた。これは、酢酸バリウムに由来するバリウムが、ロジウムを有する第2の触媒層に存在していたために、このバリウムが耐久過程においてロジウムの近傍に移動し、それによってロジウムの活性が低下したことによると考えられる。
【0081】
また、第1及び第2の触媒層の両方を得るために酢酸バリウムを用いた比較例2の排ガス浄化触媒では、劣触状態におけるNOx浄化能が劣っていた。これは、酢酸バリウムに由来するバリウムが、耐久によって、ロジウムを有する第2の触媒層に存在していたために、このバリウムが耐久過程においてロジウムの近傍に移動し、それによってロジウムの活性が低下したことによると考えられる。
【0082】
また、第1及び第2の触媒層の両方を得るために硫酸バリウムを用いた比較例3の排ガス浄化触媒では、新触状態のHC浄化能が劣っていた。これは、硫酸バリウムに由来するバリウムは焼成工程を経ても酸化バリウムまで分解される割合が低く、それによって新触状態において、パラジウム近傍に存在する酸化バリウムが不足し、それによってパラジウムのHC被毒及びNOx吸蔵量の不足が生じたことによると考えられる。
【0083】
《実施例2、及び比較例4》
〈実施例2〉
第1の触媒層、第2の触媒層前段部、及び第2の触媒層後段部の組成を下記のようにしたことを除いて実施例1と同様にして、実施例2の排ガス浄化触媒を作成し、それについて新触状態におけるHC浄化能、及び劣触状態におけるNOx浄化能を評価した。
【0084】
(第1の触媒層(下層))
パラジウム: 0.1g/基材−L
バリウム: 5.0g/基材−L(酢酸バリウムとして)
アルミナ: 40.0g/基材−L
セリア−ジルコニア: 35.0g/基材−L
【0085】
(第2の触媒層前段部(上層前段部))
パラジウム: 1.4g/基材−L
ロジウム: 0.1g/基材−L
バリウム: 5.0g/基材−L(硫酸バリウムとして)
アルミナ: 30.0g/基材−L
セリア−ジルコニア: 25.0g/基材−L
【0086】
(第2の触媒層後段部(上層後段部))
パラジウム: 0.8g/基材−L
ロジウム: 0.1g/基材−L
バリウム: 5.0g/基材−L(硫酸バリウムとして)
アルミナ: 30.0g/基材−L
セリア−ジルコニア: 60.0g/基材−L
【0087】
〈比較例4〉
第1の触媒層のバリウム担持量を1.0g/基材−L(酢酸バリウムとして)にしたこと、すなわち第1の触媒層のバリウム担持量を5分の1にしたことを除いて、実施例2と同様にして比較例4の排ガス浄化触媒を製造し、そして評価した。
【0088】
実施例2、及び比較例4の結果を、下記の表2に示す。なお、この表2では、バリウム濃度及びパラジウム濃度を基材1リットル当たりのモル数として示している。
【0089】
【表2】
【0090】
この表2からは、実施例2では、新触状態におけるHC浄化能、及び劣触状態におけるNOx浄化能の両方に優れていることが理解される。
【0091】
これに対して、第1の触媒層を得るために酢酸バリウムの量が極端に少なかった比較例4の排ガス浄化触媒では、新触状態におけるHC浄化能が劣っていた。これは、新触状態において、Pd近傍に存在する酸化バリウムが不足し、それによってPdのHC被毒及びNOx吸蔵量の不足が生じたことによると考えられる。
【0092】
《実施例3〜8、及び比較例5〜6》
〈実施例3〉
第1の触媒層、第2の触媒層前段部、及び第2の触媒層後段部の組成を下記のようにしたことを除いて実施例1と同様にして、実施例3の排ガス浄化触媒を作成し、それについて新触状態におけるHC浄化能、及び劣触状態におけるNOx浄化能を評価した。
【0093】
(第1の触媒層(下層))
パラジウム: 0.1g/基材−L
バリウム: 5.0g/基材−L(酢酸バリウムとして)
アルミナ: 40.0g/基材−L
セリア−ジルコニア: 35.0g/基材−L
【0094】
(第2の触媒層前段部(上層前段部))
パラジウム: 1.4g/基材−L
ロジウム: 0.1g/基材−L
バリウム: 5.0g/基材−L(硫酸バリウムとして)
アルミナ: 30.0g/基材−L
セリア−ジルコニア: 25.0g/基材−L
【0095】
(第2の触媒層後段部(上層後段部))
パラジウム: 0.8g/基材−L
ロジウム: 0.1g/基材−L
バリウム: 5.0g/基材−L(硫酸バリウムとして)
アルミナ: 30.0g/基材−L
セリア−ジルコニア: 60.0g/基材−L
【0096】
〈実施例4〜6及び比較例5〉
下層に用いるバリウムの量を、5.0g/基材−L(酢酸バリウムとして)から、それぞれ4.0g、3.0g、2.0g、及び1.0g/基材−L(硫酸バリウムとして)に変更したことを除いて、実施例3と同様にして、実施例4〜6及び比較例5の排ガス浄化触媒を製造し、そして評価した。
【0097】
実施例3〜6及び比較例5の結果を、下記の表3に示す。なお、この表3では、バリウム濃度及びパラジウム濃度を基材1リットル当たりのモル数として示している。
【0098】
【表3】
【0099】
この表3からは、実施例3〜6では、新触状態におけるHC浄化能、及び劣触状態におけるNOx浄化能の両方に優れていることが理解される。
【0100】
これに対して、第1の触媒層を得るために酢酸バリウムの量が極端に少なかった比較例5の排ガス浄化触媒では、新触状態におけるHC浄化能が劣っていた。これは、新触状態において、パラジウム近傍に存在する酸化バリウムが不足し、それによってパラジウムのHC被毒及びNOx吸蔵量の不足が生じたことによると考えられる。
【0101】
《実施例4、及び7〜8、並びに比較例6》
〈実施例7〜9及び比較例6〉
第2の触媒層に用いるバリウムの量を、5.0g/基材−L(硫酸バリウムとして)から、それぞれ4.0g、3.0g、2.0g、及び1.0g/基材−L(硫酸バリウムとして)に変更したことを除いて、実施例4と同様にして、実施例7〜8、及び比較例6の排ガス浄化触媒を製造し、そして評価した。
【0102】
実施例4、及び7〜9、並びに比較例6の結果を、下記の表4に示す。なお、この表4では、バリウム濃度及びパラジウム濃度を基材1リットル当たりのモル数として示している。
【0103】
【表4】
【0104】
この表4からは、実施例4、及び7〜9では、新触状態におけるHC浄化能、及び劣触状態におけるNOx浄化能の両方に優れていることが理解される。
【0105】
これに対して、第2の触媒層を得るために硫酸バリウムの量が極端に少なかった比較例6の排ガス浄化触媒では、劣触状態におけるNOx浄化能が劣っていた。これは、これは、
酢酸バリウムに由来するバリウムが、耐久によって移動し、それによって第1及び第2の触媒層中に存在するバリウムの絶対量が不足したことによると考えられる。