【文献】
Anna Maria Piras,et al.,“Polymeric nanoparticles hemoglobin−based oxygen carriers”,BIOCHMICA ET BIOPHYSICA ACTA,2008,Vol.1784,No.18,pp.1454−1461
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アロステリック調節因子は、2,3−ジホスホグリセリン酸(2,3−DPG)、イノシトール六リン酸(IHP)、ピリドキサールリン酸(PLP)、及び2−[4−[[(3,5−ジメチルアニリノカルボニル]メチル]−フェノキシ]−2−メチルプロピオン酸からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のナノ粒子。
前記脂肪酸は、10,12−ペンタコサジイン酸、ヘキサデシルオクタデカン酸、コラン酸、リノール酸、C24−ペンタコサジイン酸及びパルミチン酸からなる群から選択される、請求項10に記載のナノ粒子。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、形態的に赤血球に類似している酸素運搬ナノ粒子を提供する。本開示の酸素運搬ナノ粒子は、自己組織化され、これは、比較的迅速かつ容易に調製されることを意味する。また、本開示の酸素運搬ナノ粒子は、実質的に、両凹型円板状であり、これにより機械的安定性が増す。本開示の酸素運搬ナノ粒子は、ペイロードを含有する。ペイロードは、酸素運搬剤、アロステリック調節因子及び還元剤を含む。有利には、本開示の酸素運搬ナノ粒子は、1粒子ペイロード当たり多くを導入することができ、また、必要な組織に基づいて、酸素に対する酸素運搬剤の親和力を変化させて、赤血球の酸素運搬特性を模倣することができる。加えて、酸素運搬ナノ粒子により、血管緊張が変化することはなく、循環中、酸素運搬機能を維持することができ、細網内皮系粒子クリアランスを介して、組織の血管外遊出を避けることができる。重要なことに、本開示のナノ粒子は、保管の延長のために凍結乾燥されていてもよく、また、使用前に迅速に再構築されてもよい。
【0013】
ナノ粒子含有溶液及びナノ粒子及び溶液の使用方法も記載されている。
【0014】
I.ナノ粒子
本開示の一態様では、実質的に両凹型円板状である酸素運搬ナノ粒子を提供する。ナノ粒子は、水性コア部、両親媒性ポリマー含有シェル及びペイロードを含む。ペイロードは、酸素運搬剤、アロステリック調節因子及び還元剤を含む。ナノ粒子の各態様は、以下に詳細に記載されている。ナノ粒子は更に、米国特許明細書第2010/0297007号に記載されているものであってよく、その開示は本発明において参考としてその全体に含まれる。
【0015】
(a)形態学
ナノ粒子は、環状体を含む。すなわち、実質的に両凹型円板状である。このようなナノ粒子は、概して、丸みがあり、両面上で凹状である有限厚の板状形態を有し、ヒト赤血球の形状を模倣し、球状のナノ粒子と比較したとき、ナノ粒子表面積が増大し、このため、酸素運搬ナノ粒子の酸素交換動態が促進される。ナノ粒子の凹面は、各表面、または開口部、または円盤中心部近隣を介して「貫通孔」上に陥凹の形態をとってもよい。ナノ粒子の集団内では、いくつかのナノ粒子は、陥凹部含んでもよく、また、いくつかのナノ粒子は、貫通孔を含んでもよい。一般に、ナノ粒子集団の少なくとも約50%が両凹型円板状であってもよい。両凹型円板状ナノ粒子の割合は、ナノ粒子全集団の約50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%であってよい。あるいは、両凹型円板状ナノ粒子の割合は、ナノ粒子全集団の少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%または99%であってもよい。
【0016】
ナノ粒子の形状により、ナノ粒子の直径は、ナノ粒子の高さよりも大きい。一般に、ナノ粒子の直径は、約50ナノメートル〜約500ナノメートルの範囲であってもよく、また、ナノ粒子の高さは、約20ナノメートル〜約150ナノメートルの範囲であってもよい。したがって、ナノ粒子の直径は、約100ナノメートル〜約300ナノメートルの範囲であってもよく、また、ナノ粒子の高さは、約40ナノメートル〜約85ナノメートルの範囲であってもよい。あるいは、ナノ粒子の直径は、約100ナノメートル〜約250ナノメートルの範囲であってもよく、また、ナノ粒子の高さは、約30ナノメートル〜約80ナノメートルの範囲であってもよい。好ましくは、ナノ粒子の直径は、約120ナノメートル〜約250ナノメートルの範囲であってもよく、また、ナノ粒子の高さは、約50ナノメートル〜約70ナノメートルの範囲であってもよい。ナノ粒子の直径は、約100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250、260、270、280、290または300ナノメートルであってもよく、また、ナノ粒子の高さは、約40、45、50、55、60、65、70、75、80または85ナノメートルであってもよい。
【0017】
ナノ粒子集団を含有するナノ粒子は、実質的にサイズが均一であり、そのサイズは、ナノ粒子の直径として測定される。集団のナノ粒子におけるサイズの変化は、約15%未満である。好ましくは、集団のナノ粒子におけるサイズの変化は、約10%未満であってもよく、更に好ましくは、約5%未満であってもよい。好ましくは、集団のナノ粒子におけるサイズの変化は、約10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%未満であってもよい。
【0018】
2つまたはそれ以上のナノ粒子集団間のサイズは変化することもあり、そのサイズは、ナノ粒子の直径として測定される。ナノ粒子のサイズは、酸素運搬剤、アロステリック調節因子、還元剤及び両親媒性ポリマー及び/または任意の剤の種類及び濃度による影響を受け得る。理論に束縛されるものではないが、ナノ粒子のサイズは、酸素運搬剤、アロステリック調節因子、還元剤及び/または任意の剤の濃度の上昇により、増大し得ると考えられる。また、両親媒性ポリマー含有分岐ポリマーの分子量の増大と共に、ナノ粒子のサイズは増大し得る。
【0019】
一般に、両凹型円板状ナノ粒子は、非両凹型円板状ナノ粒子に対して、安定度が増加している。安定度は、時間の経過に伴う粒径、ゼータ電位及び/または多分散性の変化によって測定され得る。安定度は、更に、時間の経過に伴うペイロード放出の変化によって測定され得る(例えば、時間の経過に伴う酸素運搬剤、アロステリック調節因子及び/または還元剤の放出)。安定ナノ粒子は、基準特性からの変化を約20%未満、好ましくは約15%未満、より好ましくは約10%反映し得る。両凹型円板状ナノ粒子は、少なくとも数ヶ月間、3ヶ月以上、または3ヶ月超の間、室温にて安定する。安定度は、典型的には、単一のナノ粒子というよりも、ナノ粒子の集団に対して測定される。一般に、両凹型円板状ナノ粒子は、少なくとも数ヶ月間、または3ヶ月以上4℃で安定させる。更なる詳細は、実施例に提供される。
【0020】
(b)シェル
両凹型円板状ナノ粒子のシェルは、両親媒性ポリマーを含み、この両親媒性ポリマーは、共有結合により脂質に共役される分岐ポリマーを含む。また、シェルは更に、水、バッファ溶液、食塩水、血清溶液及びこれらの組み合わせを含んでもよい。シェルは、以下に詳細に示すとおり、生物学的活性剤、造影剤、金属原子または治療薬を更に含んでもよい。
【0021】
両凹型円板状ナノ粒子のシェルは、二層状であり、親水性の外層及び親水性の内層並びに層間の疎水性領域から構成される。ナノ粒子のシェルを形成するには、両親媒性ポリマーは、最初に自己組織化されて、親水性の外層及び親水性の内層並びに層間の疎水性領域から構成される二層を形成し、次に、両凹型円板状ナノ粒子に自己組織化される。両凹型円板状粒子の形成は、両親媒性ポリマーの疎水性−親水性ブロック比及びナノ粒子の自己組織化方法手順によって引き起こされる。
【0022】
両親媒性ポリマーは、ナノ粒子の約1重量%〜約40重量%含まれてもよい。例えば、両親媒性ポリマーは、ナノ粒子の1重量%、1.5重量%、2重量%、2.5重量%、3重量%、3.5重量%、4重量%、4.5重量%、5重量%、5.5重量%、6重量%、6.5重量%、7重量%、7.5重量%、8重量%、8.5重量%、9重量%、9.5重量%、10重量%、10.5重量%、11重量%、11.5重量%、12重量%、12.5重量%、13重量%、13.5重量%、14重量%、14.5重量%、15重量%、15.5重量%、16重量%、16.5重量%、17重量%、17.5重量%、18重量%、18.5重量%、19重量%、19.5重量%、20重量%、20.5重量%、21重量%、21.5重量%、22重量%、22.5重量%、23重量%、23.5重量%、24重量%、24.5重量%、25重量%、25.5重量%、26重量%、26.5重量%、27重量%、27.5重量%、28重量%、28.5重量%、29重量%、29.5重量%、30重量%、30.5重量%、31重量%、31.5重量%、32重量%、32.5重量%、33重量%、33.5重量%、34重量%、34.5重量%、35重量%、35.5重量%、36重量%、36.5重量%、37重量%、37.5重量%、38重量%、38.5重量%、39重量%、39.5重量%、または約40重量%含まれてもよい。両親媒性ポリマーは、ナノ粒子の約1重量%〜約15重量%、約5重量%〜約20重量%、約1重量%〜約10重量%または約10重量%〜約20重量%含まれてもよい。あるいは、両親媒性ポリマーは、ナノ粒子の約1重量%〜約5重量%、約5重量%〜約10重量%、約10重量%〜約15重量%または約15重量%〜約20重量%含まれてもよい。
【0023】
追加の態様は、以下に詳細に記載されている。
【0024】
i.分岐ポリマー
分岐ポリマーは、1つ以上の遊離反応性基を含む分枝鎖、アミン含有ポリマーであってもよい。好適な分岐ポリマーの非限定的タイプとしては、星型分岐ポリマー、グラフト分岐ポリマー、櫛型分岐ポリマー、ブラシ型分岐ポリマー網状、網目分岐ポリマー、超分岐ポリマー及び樹枝状ポリマーが挙げられる。
【0025】
ポリマーは、合成ポリマー、半合成ポリマーまたは天然ポリマーであってよい。好適なポリマーの非限定的例としては、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリルアミドスルホン酸、ポリアクリロニトリル、ポリアミン、ポリアミド、ポリアミドアミン(PAMAM)、ポリブタジエン、ポリジメチルシロキサン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチルオキサゾリン、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリイソプレン、ポリメタクリレート、ポリメタクリルアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルオキサゾリン、ポリオキシアルキレンオキシド、ポリフェニレン、ポリプロピレンイミン、ポリプロピレンオキシド、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシ−プロピルメチルセルロース、ヒアルロン酸、デキストラン、デキストリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、アルジネート、寒天、カラギナン、キサンタン、グアー、ポリアミノ酸(例えば、ポリリシン、ポリグリシン、及びポリセリン)、コポリマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0026】
分岐ポリマーは、少なくとも1種の反応性基を含む。好適な反応性基としては、これらに限定されるものではないが、第一級、第二級、または第三級アミン基、カルボキシレート基、ヒドロキシル基、アルキル基、フルオロアルキル基、アリール基、アセタート基、アミド基、エステル基、スルホン基、スルホキシド基、スルホネート基、スルホンアミド基、ホスホネート基及びホスホンアミド基が挙げられる。
【0027】
分岐ポリマーの平均分子量は、変化し得る。例えば、分子量の増大するポリマーを選択して、厚さの増大した外シェルを作製してもよい。分子量は、数平均分子重量%(M
n)または重量平均分子重量%(M
w)として表してもよい。一般に、分岐ポリマーの数平均分子量及び重量平均分子量は、約200〜約1,000,000ダルトンの範囲であってもよい。一般に、分岐ポリマーの数平均分子量及び重量平均分子量は、約200〜約5,000、約5,000〜約50,000、約50,000〜約250,000または約250,000〜約1,000,000ダルトンなど、約200〜約50,000ダルトンの範囲であってもよい。好ましくは、分岐ポリマーの数平均分子量及び重量平均分子量は、約10,000ダルトン、約25,000ダルトンまたは約50,000ダルトンであってもよい。
【0028】
理論に束縛されるものではないが、分岐ポリマーの固有の性質により、静電相互作用を介して、アロステリック調節因子の保持が可能になる(セクションI(f)に記載されている)と考えられる。当業者は、分岐ポリマーの選択がこのような相互作用に影響を与え得ることは理解されるであろう。例えば、分岐ポリマーが第二級または第三級アミンを含むカチオン性分岐ポリマーであるとき、アミン密度は重要な因子であり得る。しかし、カチオン性分岐ポリマーとなる分岐状カチオン性ポリマーの場合、アロステリック調節因子との静電的相互作用は必須ではない。アロステリック調節因子により静電相互作用を生み出すためには、分岐ポリマーアミンで十分である。好ましい分岐ポリマーとしては、これに限定されないが、ポリエチレンイミン分岐ポリマー、PAMAMデンドリマー、星型ポリマーまたはグラフトポリマーを挙げることもできる。更により好ましくは、分岐ポリマーは、ポリエチレンイミン分岐ポリマーである。例示的分岐ポリマーは、10Kポリエチレンイミン分岐ポリマー、50Kポリエチレンイミン分岐ポリマーまたは100Kポリエチレンイミン分岐ポリマーである。例示的な分岐ポリマーは、G4ポリアミドアミンである。
【0029】
ii.脂質
また、両親媒性ポリマーは、分岐ポリマーに結合された脂質も含む。脂質は、共有結合によりまたは非共有結合により分岐ポリマーに結合されていてもよい。理論に束縛されるものではないが、脂質に結合する分岐ポリマーの反応性基の割合は、疎水性性質に影響を与え、このため、粒子形態学に影響があると考えられている。疎水性−親水性ブロック比を制御するために、脂質と結合する分岐ポリマーの遊離反応性基の割合は、材料と共に変化し、二層タイプの膜を形成して、両凹型円盤様形状粒子にする。一般に、両親媒性ポリマーは、分岐ポリマーに結合された脂質を含み、分岐ポリマーの反応性基の少なくとも約25%が脂質に結合している。例えば、脂質に結合している遊離反応性基の割合は、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%であってもよい。脂質に結合している遊離反応性基の割合は、少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、または75%若しくは75%以上であってもよい。好ましくは、脂質に結合している遊離反応性基の割合は、約40%〜約70%または約50%〜約60%の範囲であってもよい。脂質に結合している遊離反応性基の例示的割合は、約55%であってもよい。
【0030】
好適な脂質の非限定的例としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、リン脂質、胆汁酸、糖脂質、脂肪族疎水性化合物及び芳香族疎水性化合物が挙げられる。脂質は、天然、合成または半合成であってもよい。一般に、脂質は、極性先端基及び少なくとも1つの疎水性ヒドロカルビルまたは置換ヒドロカルビル基を含む。極性先端基により、脂質は、共有結合を介して分岐ポリマーに連結する。好適な極性先端基の実施例としては、これらに限定されるものではないが、カルボキシ基、アシル基、プロパルギル基、アジド基、アルデヒド基、チオール基、エステル基、サルフェート基及びリン酸基が挙げられる。好ましい疎水性ヒドロカルビル基としては、これらに限定されないが、アルキル基、アルキニル基、複素環式及びこれらの組み合わせが挙げられる。典型的には、アルキル基またはアルキニル基は、炭素原子約6〜約30個、より好ましくは炭素原子約12〜約24個を含む。置換ヒドロカルビル基とは、炭素鎖原子が、窒素、酸素、ケイ素、リン、ホウ素またはハロゲン原子などのへテロ原子によって置換されている部分及び炭素鎖が追加の置換基を含む部分など、炭素以外の少なくとも1つの原子により置換されているヒドロカルビル部分を意味する。これらの置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルケニル基、アルケノキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、アミド基、アセタール基、カルバミル基、カルバミン酸塩基、カルボシクロ基、シアノ基、エステル基、エーテル基、ハロゲン基、ヘテロシクロ基、ヒドロキシル基、ケト基、ケタール基、ホスホ基、ニトロ基、チオ基、トリフルオロメチル基、スルホニル基、スルホンアミド基などが挙げられる。脂質は、例えば、ホスファチジルエタノールアミン基、ホスファチジルセリン基、ホスファチジルイノシトール基、カルジオリピン基、ホスファチジルエチレングリコールなどまたはコール酸などの胆汁酸などのリン脂質であってよい。好ましくは、脂質は脂肪酸であってよく、脂肪酸鎖は、上記に定義されたように、アルキル(飽和)基またはアルキニル(不飽和)基を含む。好ましい脂肪酸としては、これらに限定されるものではないが、10,12−ペンタコサジイン酸、ヘキサデシルオクタデカン酸、コラン酸、リノール酸、C24−ペンタコサジイン酸及びパルミチン酸が挙げられる。好ましくは、脂質は、パルミチン酸またはC24−ペンタコサジイン酸であってもよい。
【0031】
例示的分岐ポリマーは、ポリエチレンイミンであってよく、例示的脂質は、パルミチン酸、C24−ペンタコサジイン酸またはリノール酸であり、ポリマーの少なくとも約40%の遊離反応性基が脂質に結合する。例示的分岐ポリマーは、ポリエチレンイミンであってよく、例示的脂質は、パルミチン酸、C24−ペンタコサジイン酸またはリノール酸であり、ポリマーの少なくとも約50%の遊離反応性基が脂質に結合する。例示的分岐ポリマーは、ポリエチレンイミンであってよく、例示的脂質は、パルミチン酸、C24−ペンタコサジイン酸またはリノール酸であり、ポリマーの少なくとも約55%の遊離反応性基が脂質に結合する。分岐ポリマーがポリエチレンイミンであるとき、遊離反応性基はアミンであり、典型的には、第一級アミン及び/または第二級アミンである。
【0032】
例示的分岐ポリマーは、PAMAMであってもよく、例示的脂質は、パルミチン酸、C24−ペンタコサジイン酸またはリノール酸であり、ポリマーの少なくとも約10%の遊離反応性基が脂質に結合する。例示的分岐ポリマーは、PAMAMであってもよく、例示的脂質は、パルミチン酸、C24−ペンタコサジイン酸またはリノール酸であり、ポリマーの少なくとも約20%の遊離反応性基が脂質に結合する。例示的分岐ポリマーは、PAMAMであってもよく、例示的脂質は、パルミチン酸、C24−ペンタコサジイン酸またはリノール酸であり、ポリマーの少なくとも約30%の遊離反応性基が脂質に結合する。分岐ポリマーがPAMAMであるとき、遊離反応性基はアミンであり、典型的には、第一級アミンである。
【0033】
(c)水性コア
ナノ粒子は、水性コア部を含む。水性コア部は、水、バッファ溶液、食塩水、血清溶液及びこれらの組み合わせを含んでもよい。また、水性コアは、以下に詳細に示すとおり、生物学的活性剤、造影剤、金属原子、治療薬、酸素運搬剤、アロステリック調節因子、還元剤またはこれらの組み合わせを含んでよい。好ましくは、水性コア部は、酸素運搬剤、アロステリック調節因子及び還元剤を含む。
【0034】
(d)粒子外側の分子内架橋
ナノ粒子の外側は、シェルの外層を含む。シェルの外層は、表面反応性基を中性にするために分子内架橋される。別の方法を記載すると、シェルの外層は、ナノ粒子が近接する中性面を有するように分子内架橋される。近接中性面を得るために必要な架橋の程度は、両親媒性ポリマーに応じて変化することになる。ゼータ電位が約−15〜約+15mVであるナノ粒子は、ほぼ中性であると考えられる。近接する中性面を有するナノ粒子は、−15、−14、−13、−12、−11、−10、−9、−7、−6、−5、−4、−3、−2、−1、0、+1、+2、+3、+4、+5、+6、+7、+8、+9、+10、+11、+12、+13、+14または+15mVのゼータ電位を有してもよい。近接する中性面を有するナノ粒子はまた、約−15〜約0mV、約−10〜約0mV、約−10〜約−5mV、約−9〜約−4mV、約−8〜約−3mV、約−7〜約−2mV、約−6〜約−1mVまたは約−5〜約0mVのゼータ電位を有してもよい。あるいは、近接する中性面を有するナノ粒子はまた、約0〜約+15mV、約0〜約+10mV、約+5〜約+10mV、約+4〜約+9mV、約+3〜約+8mV、約+2〜約+7mV、約+1〜約+6mVまたは約0〜約+5mVのゼータ電位を有してもよい。ゼータ電位は、ナノ粒子の傾向に影響を及ぼして、タンパク質、微小粒子、細胞及び他の生体分子と相互作用する可能性がある。ナノ粒子が対象に投与され、血液中のタンパク質、細胞及び他の粒子と実質的に相互作用することはナノ粒子にとって望ましくないため、近接する中性面は、本開示のナノ粒子の重要な特徴である。また、理論に束縛されるものではないが、出願人らは、架橋の程度は、実質的に、粒子内部にペイロードを含有し、ナノ粒子内部へのまたは粒子内部での酸素、二酸化炭素及び一酸化窒素などの気体の拡散に影響を及ぼすとも考えている。また、架橋により、ナノ粒子に対して機械的安定性の増大がもたらされ、生体適合性が改善し、かつ/または循環寿命が延長され得る。また、架橋により、酸素運搬剤への酸化損傷が阻害され得る。
【0035】
外シェルの両親媒性ポリマーの表面脂質は、化学的手段によって架橋されていてもよい。あるいは、両親媒性ポリマーのコアポリマーは、光化学的手段によって架橋されていてもよい。一般に、両親媒性ポリマーの利用可能な反応性基の少なくとも約30%は、架橋されていてもよく、両親媒性ポリマーの利用可能な反応性基の30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%以上が架橋されていてもよい。好適な架橋手段は、以下のセクションIIに詳細に記述する。架橋の程度は、当該技術分野において既知の任意の方法によって決定され得る。
【0036】
約30%〜約50%、約50%〜約70%または約70%〜約100%など、両親媒性ポリマーの表面反応性基の少なくとも約30%が架橋されてもよいように、粒子表面は、二官能性リンカーと分子内架橋されることが好ましい。好ましい二官能リンカーとしては、これらに限定されないが、活性化(または官能化)短鎖PEGが挙げられる。あるいは、カップリング剤が使用されてもよい。短鎖PEGは、約1、2、3、4、5または約6のエチレンオキシドモノマーを含んでもよい。好ましくは、短鎖PEGは、1〜3のエチレンオキシドモノマーを含み、またはより好ましくは、2のエチレンオキシドモノマーを含む。例示的二官能性リンカーとしては、エチレングリコールビス(スルホスクシンイミジルスクシネート)(Sulfo−EGS)、エポキシド、トシレートまたはクロロホルメートを挙げることもできる。更なる詳細は、以下のセクションIIに提供される。
【0037】
(e)任意のPEG化
さらに、ナノ粒子の両親媒性ポリマーは、以下のセクションIIに詳細に示すように、ポリエチレングリコール(PEG)により誘導体化されていてもよい。ナノ粒子は、短鎖PEGを用いて誘導体化されることが好ましい。短鎖PEGは、約1、2、3、4、5または約6のエチレンオキシドモノマーを含んでもよい。好ましくは、短鎖PEGは、1〜3個のエチレンオキシドモノマーを含み、またはより好ましくは、2個のエチレンオキシドモノマーを含む。
【0038】
(f)ペイロード
本開示のナノ粒子は、ペイロードを含有し、このペイロードは、酸素運搬剤、アロステリック調節因子及び還元剤を含む。ペイロードは、ナノ粒子内部に含有される。酸素運搬ナノ粒子の酸素運搬剤、アロステリック調節因子及び還元剤は、ナノ粒子の水性コア部内に含まれていてもよく、また、ナノ粒子のシェルを含む内層の親水性領域内に含まれていてもよく、ナノ粒子のシェルを含む疎水性領域内に含まれていてもよく、またはこれらの組み合わせであってもよい。また、酸素運搬剤、アロステリック調節因子及び還元剤は、ナノ粒子の異なる場所に局所化されていてもよいことは想定される。
【0039】
i.酸素運搬剤
本開示の酸素運搬ナノ粒子は、酸素運搬剤を含有する。酸素を運搬することができる任意の分子は、酸素運搬剤として使用するのに好適であってよい。酸素運搬剤の非限定的例としては、ペルフルオロカーボン系酸素担体(PFBOC)、ヘモグロビン系酸素担体(HBOC)、レグヘモグロビンなどのヘモグロビン様酸素担体及びヘミンなど人工ヘモグロビン系酸素担体が挙げられる。したがって、酸素運搬剤は、ヘモグロビン系酸素担体(HBOC)、ヘモグロビン様酸素担体、PFBOCまたは人工ヘモグロビン系酸素担体であってよい。
【0040】
ナノ粒子は、ナノ粒子1個当たり、酸素運搬剤分子約2000〜約10,000を含んでもよい。ナノ粒子は、ナノ粒子1個当たり約2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500または約10,000の酸素運搬剤分子を含んでもよい。また、ナノ粒子は、ナノ粒子1個当たり、酸素運搬剤分子約10,000超を含んでもよい。ナノ粒子1個当たりの酸素運搬剤分子の絶対数は、ナノ粒子のサイズ、酸素に対する酸素運搬剤の親和性、及びO
2の無負荷状態間の自動酸化形成の制限能力に依存して変化し得る。
【0041】
本開示のナノ粒子の約20%〜約60%(w/v)は、酸素運搬剤を含んでもよい。例えば、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%または60%(w/v)のナノ粒子は、酸素運搬剤を含んでもよい。あるいは、約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%または約60%(w/v)のナノ粒子は、酸素運搬剤を含む。好ましくは、約25%〜約60%、約30%〜約60%、約35%〜約60%、約40%〜約60%、約45%〜約60%、約50%〜約60%(w/v)のナノ粒子は、酸素運搬剤を含む。
【0042】
好ましくは、酸素運搬剤は、ヘミンなど、人工ヘモグロビン系酸素担体である。更に好ましくは、酸素運搬剤は、ヘモグロビン系酸素担体である。ヘモグロビンは、鉄含有酸素運搬金属タンパク質であり、赤血球の主成分であり、約33%の細胞集団を含む。ヘモグロビンの各分子は、4つのサブユニット、2本のα鎖、及び2本のβ鎖を有し、四量体構造内に配置されている。また、各サブユニットは、1つのヘム基を含有し、酸素と結合する鉄含有中心部である。したがって、各ヘモグロビン分子は、4つの酸素分子と結合することができる。
【0043】
本開示は、ヘモグロビン源によって制限されるものではない。用語「ヘモグロビン」は、天然または合成ヘモグロビンを指す。例えば、本開示のヘモグロビン系酸素運搬剤は、動物由来であってもよい。あるいは、本開示のヘモグロビン系酸素運搬剤は、ヒト由来であってもよい。好ましいヘモグロビン源は、ヒト、雌ウシ及びブタである。
【0044】
ヘモグロビン酸素系運搬剤は、ヒトまたは動物、例えば雌ウシ及びブタから単離され、精製されていてもよい。あるいは、ヘモグロビン系酸素運搬剤は、化学合成技術及び組み換え技術によって作製されてもよい。ヒトα−及びβ−グロビン遺伝子は、いずれも、クローン化され、配列化されている(例えば、Liebhaber et al.,P.N.A.S.77:7054−7058(1980);Marotta et al.,J.Biol.Chem.353:5040−5053(1977)(beta−globin cDNAを参照されたい)。
【0045】
ヘモグロビンアミノ酸配列多型は、集団(例えば、ヒト、雌ウシ、またはブタなどの集団)内に存在し得ることは、当業者によって明らかであろう。このような遺伝的多型は、対立遺伝子の自然変異により、集団内の個々に存在し得る。このような任意のあらゆるアミノ酸変異、並びに、対立遺伝子の自然変異の結果であり、かつ、ヘモグロビンの機能的活性が変化しない、アミノ酸変異の結果得られた多型は、本開示の範囲内であることを目的としている。同様に、用語ヘモグロビン酸素系運搬剤としては、酸素運搬ナノ粒子中に酸素運搬剤として使用されるとき、ヘモグロビンの酸素結合及び放出特性を調節するために遺伝子操作を受けたヘモグロビンが挙げられる(例えば、Nagai,et al.,(1985)P.N.A.S.,82:7252−7255及び米国特許第5,028,588号)。また、ヘモグロビン酸素系運搬剤は、自然発生ヘモグロビン、キメラヘモグロビン、組み換えヘモグロビン、ヘモグロビン断片または本開示の範囲から逸脱することのないこれらの組み合わせを含むヘモグロビンであってもよい。
【0046】
ヘモグロビン酸素系運搬剤は、未変性であってもまたは分子内または分子間架橋、重合または化学基(例えば、ポリアルキレンオキシドまたはその他の付加物)の付加などの化学反応によってその後に修飾されていてもよい。修飾ヘモグロビン酸素運搬剤の代表例は、発行された多数の米国特許明細書(米国特許明細書第4,857,636号、米国特許明細書第4,600,531号、米国特許明細書第4,061,736号、米国特許明細書第3,925,344号、米国特許明細書第4,529,719号、米国特許明細書第4,473,496号、米国特許明細書第4,584,130号、米国特許明細書第5,250,665号、米国特許明細書第4,826,811号及び米国特許明細書第5,194,590号)に記載されている。
【0047】
好ましくは、酸素運搬剤は、ヒト、雌ウシまたはブタから分離されたヘモグロビンである。更に好ましくは、酸素運搬剤は、ヒトから分離されたヘモグロビンである。対象からのヘモグロビン分離方法は、当技術分野において既知であり、実施例及びRogers et al.,2009,FASEB journal23:3159−3170に記載されているとおりであってよく、その開示は全体が明細書に組み込まれる。ヘモグロビン源に関係なく、ヘモグロビン酸素運搬剤は、実質的に純粋であり、かつ、ストローマ細胞及びエンドトキシンを含まない。
【0048】
ナノ粒子は、ナノ粒子1個当たり、ヘモグロビン分子約2000〜約10,000を含んでもよい。ナノ粒子は、ナノ粒子1個当たり約2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、5500、6000、6500、7000、7500、8000、8500、9000、9500または約10,000またはそれ以上のヘモグロビン分子を含んでもよい。ナノ粒子は、ナノ粒子1個当たり、ヘモグロビン分子約2000〜約6000または約6000〜約10000を含んでもよい。ナノ粒子は、ナノ粒子1個当たりヘモグロビン分子約3000〜約6000、ナノ粒子1個当たりヘモグロビン分子約4000〜約7000、ナノ粒子1個当たりヘモグロビン分子約5000〜約8000、ナノ粒子1個当たりヘモグロビン分子約6000〜約9000、またはナノ粒子1個当たりヘモグロビン分子約7000〜約10,000を含んでもよい。あるいは、ナノ粒子は、ナノ粒子1個当たりヘモグロビン分子約3000〜約4000、ナノ粒子1個当たりヘモグロビン分子約4000〜約5000、ナノ粒子1個当たりヘモグロビン分子約5000〜約6000、ナノ粒子1個当たりヘモグロビン分子約6000〜約7000、ナノ粒子1個当たりヘモグロビン分子約7000〜約8000、ナノ粒子1個当たりヘモグロビン分子約8000〜約9000、ナノ粒子1個当たりヘモグロビン分子約9000〜約10,000を含んでもよい。ナノ粒子1個当たりのヘモグロビン分子の絶対数は、ナノ粒子のサイズに依存して変化し得る。
【0049】
一般に、ナノ粒子の約20%〜約60%(w/v)は、ヘモグロビンを含んでもよい。例えば、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%または60%(w/v)のナノ粒子は、ヘモグロビンを含んでもよい。あるいは、約20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%または約60%(w/v)のナノ粒子は、ヘモグロビンを含む。好ましくは、約25%〜約60%、約30%〜約60%、約35%〜約60%、約40%〜約60%、約45%〜約60%、約50%〜約60%(w/v)のナノ粒子は、ヘモグロビンを含む。理論に束縛されるものではないが、高濃度のヘモグロビンによりヘモグロビンは安定することができ、また、濃度依存ヘモグロビン四量体の個々のα及びβ二量体(dimmers)への解離を阻止し得ると考えられている。
【0050】
酸素運搬ナノ粒子のヘモグロビン濃度を直接測定できない場合、本明細書で記載されているように、ナノ粒子の鉄含有量から推定してもよい。ヘモグロビンの鉄含有量は、当該技術分野において公知である。例えば、Bernhart FW and Skeggs L 1943 J Biol Chem 147:19−22を参照されたい。
【0051】
ii.アロステリック調節因子
本開示のナノ粒子は、酸素運搬剤の酸素に対する親和性を調節し、ナノ粒子中における酸素運搬剤の酸素の結合速度または量若しくは酸素運搬剤からの放出速度または量を調節するアロステリック調節因子を含む。アロステリック調節因子により、対象内での酸素担体から脱酸素された組織または細胞への無負荷が増加し、かつ/または肺など、酸素化された組織からの酸素担体への酸素の負荷が増大し得る。したがって、アロステリック調節因子により、脱酸素組織内及び酸素を豊富に含む肺内において、酸素分圧40〜100mmHgである狭い生理学的範囲内において、酸素は肺内で結合され、組織内で放出され得る。頑強な酸素運搬ナノ粒子のデザインにとって、O
2親和性の簡便な制御は必須であり、これによりナノ粒子デザインを臨床状況に適合させる能力が付与される。例えば、O
2親和性を調節できることにより、標高の高いところでの低酸素症の治療に好適なO
2親和性の増大を伴うナノ粒子のデザイン及び海面での低酸素症の治療に好適なO
2親和性の低下を伴うナノ粒子のデザインが可能である。
【0052】
ナノ粒子は、1つのアロステリック調節因子または2つ以上のアロステリック調節因子の組み合わせを含んでもよい。酸素に対するヘモグロビンの親和性を調節することができるアロステリック調節因子の非限定的例としては、2,3−ジホスホグリセリン酸(2,3−DPG)(2,3−ビスホスホグリセリン酸または2,3−BPGとしても公知である)若しくはそこから誘導された異性体、イノシトール六リン酸(IHP)、ピリドキサールリン酸(PLP)またはRSR−4、RSR−13(2−[4−[[(3,5−ジメチルアニリノカルボニル]メチル]−フェノキシ]−2−メチルプロピオン酸)が挙げられ、その構造は以下に示す。
【化1】
【0053】
酸素運搬ナノ粒子中のアロステリック調節因子の濃度は、変更することができ(変更することになり)、また、本明細書に記載されているように、ナノ粒子の酸素結合動態及び放出動態を最適化するために、実験により測定され得る。酸素運搬剤に対するモル比に関して、2,3−DPGの濃度が記載されていてもよい。酸素運搬剤に対するアロステリック調節因子のモル比は、約0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.00、1.05、1.10、1.15、1.20、1.25、1.30、1.35、1.40、1.45、1.50、1.55、1.60、1.65、1.70、1.75、1.80、1.85、1.90、1.95、1.00、1.05、1.10、1.15、1.20、1.25、1.30、1.35、1.40、1.45、1.50、1.55、1.60、1.65、1.70、1.75、1.80、1.85、1.90、1.95、2.00、2.05、2.10、2.15、2.20、2.25、2.30、2.35、2.40、2.45、2.50、2.55、2.60、2.65、2.70、2.75、2.80、2.85、2.90、2.95、3.00、3.05、3.10、3.15、3.20、3.25、3.30、3.35、3.40、3.45、3.50、3.55、3.60、3.65、3.70、3.75、3.80、3.85、3.90、3.95、4.00、4.05、4.10、4.15、4.20、4.25、4.30、4.35、4.40、4.45、4.50、4.55、4.60、4.65、4.70、4.75、4.80、4.85、4.90、4.95、5.00、5.05、5.10、5.15、5.20、5.25、5.30、5.35、5.40、5.45、5.50、5.55、5.60、5.65、5.70、5.75、5.80、5.85、5.90、5.95、6.00、6.05、6.10、6.15、6.20、6.25、6.30、6.35、6.40、6.45、6.50、6.55、6.60、6.65、6.70、6.75、6.80、6.85、6.90、6.95、7.00、7.05、7.10、7.15、7.20、7.25、7.30、7.35、7.40、7.45、7.50、7.55、7.60、7.65、7.70、7.75、7.80、7.85、7.90、7.95、8.00、8.05、8.10、8.15、8.20、8.25、8.30、8.35、8.40、8.45、8.50、8.55、8.60、8.65、8.70、8.75、8.80、8.85、8.90、8.95、9.00、9.05、9.10、9.15、9.20、9.25、9.30、9.35、9.40、9.45、9.50、9.55、9.60、9.65、9.70、9.75、9.80、9.85、9.90、9.95または約10.00であってもよい。
【0054】
アロステリック調節因子は、2,3−DPGであることが好ましい。2,3−DPGは、pHに対する酸素運搬ナノ粒子の応答性を向上させることによって、酸素に対する酸素運搬剤の親和性を調節することができる。2.3−DPGは、化学合成または酵素的合成など、当該技術分野において任意の公知の方法によって、合成され得る。例えば、それぞれ、その全体が参考として本明細書に組み込まれる、Baer E.「A synthesis of 2,3−diphospho−d−glyceric aid」J Biol Chem.1950;185:763−767;またはGrisolia S, Joyce BK「Enzymatic synthesis and isolation of 2,3−diphosphoglycerate」J Biol Chem.1958;233:18−19を参照されたい。合成は、MS及び/またはNMRによって確認されてもよい。
【0055】
酸素運搬ナノ粒子中の2,3−DPGの濃度は、変更することができ(変更することになり)、また、本明細書に記載されているように、ナノ粒子の酸素結合動態及び放出動態を最適化するために、実験により測定され得る。酸素運搬剤がヘモグロビンであるとき、2,3−DPGの濃度は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または約2mg/mgヘモグロビンであってよい。好ましくは、2,3−DPGの濃度は、約0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、または約1.3mg/mgヘモグロビンであってよい。あるいは、2,3−DPGの濃度は、ヘモグロビンに対するモル比に関して記載されていてもよい。酸素運搬剤がヘモグロビンであるとき、2,3−DPG対ヘモグロビンのモル比は、約0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.00、1.05、1.10、1.15、1.20、1.25、1.30、1.35、1.40、1.45、1.50、1.55、1.60、1.65、1.70、1.75、1.80、1.85、1.90、1.95、1.00、1.05、1.10、1.15、1.20、1.25、1.30、1.35、1.40、1.45、1.50、1.55、1.60、1.65、1.70、1.75、1.80、1.85、1.90、1.95、2.00、2.05、2.10、2.15、2.20、2.25、2.30、2.35、2.40、2.45、2.50、2.55、2.60、2.65、2.70、2.75、2.80、2.85、2.90、2.95、3.00、3.05、3.10、3.15、3.20、3.25、3.30、3.35、3.40、3.45、3.50、3.55、3.60、3.65、3.70、3.75、3.80、3.85、3.90、3.95、4.00、4.05、4.10、4.15、4.20、4.25、4.30、4.35、4.40、4.45、4.50、4.55、4.60、4.65、4.70、4.75、4.80、4.85、4.90、4.95、5.00、5.05、5.10、5.15、5.20、5.25、5.30、5.35、5.40、5.45、5.50、5.55、5.60、5.65、5.70、5.75、5.80、5.85、5.90、5.95、6.00、6.05、6.10、6.15、6.20、6.25、6.30、6.35、6.40、6.45、6.50、6.55、6.60、6.65、6.70、6.75、6.80、6.85、6.90、6.95、7.00、7.05、7.10、7.15、7.20、7.25、7.30、7.35、7.40、7.45、7.50、7.55、7.60、7.65、7.70、7.75、7.80、7.85、7.90、7.95、8.00、8.05、8.10、8.15、8.20、8.25、8.30、8.35、8.40、8.45、8.50、8.55、8.60、8.65、8.70、8.75、8.80、8.85、8.90、8.95、9.00、9.05、9.10、9.15、9.20、9.25、9.30、9.35、9.40、9.45、9.50、9.55、9.60、9.65、9.70、9.75、9.80、9.85、9.90、9.95または約10.00であってもよい。
【0056】
iii.還元剤
本開示のナノ粒子は、還元剤を含有する。酸素運搬剤がヘモグロビンであるとき、ヘモグロビンは、酸化して、メトヘモグロビンとなり得る。ヘム基内の鉄は、正常ヘモグロビンのFe
2+(第一鉄)中ではなくFe
3+(第二鉄)状態内にある。ヘモグロビンが酸化してメトヘモグロビンとなることにより、酸素に対するヘモグロビンの親和性が低下し、かつ、時間の経過と共にナノ粒子の酸素運搬能力が低下する。還元剤により、ヘモグロビンの酸化を防止することができ、酸化ヘモグロビンまたは両者の組み合わせを再生することができる。還元剤は、任意のヘム含有酸素運搬剤の酸化を防止し得ることが本発明の範囲内で検討される。したがって、還元剤では、還元剤が存在しない場合と比較して、長時間にわたり、ナノ粒子の酸素運搬機能を維持し、かつ、延長させることができる。
【0057】
ナノ粒子は、1つの還元剤または2つ以上のアロステリック調節因子の組み合わせを含み得る。酸化ヘモグロビンの再生に好適な還元剤の非限定的例としては、ロイコメチレンブルー及びロイコベンジルメチレンブルーなど、その誘導体、並びにグルタチオニン及びアスコルビン酸塩が挙げられる。還元剤の濃度は、ナノ粒子中のメトヘモグロビン濃度をナノ粒子中のヘモグロビン全濃度に対して約1%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%未満、20%以下に制限するのに十分であってもよい。還元剤の濃度は、ナノ粒子中のメトヘモグロビン濃度をナノ粒子中のヘモグロビン全濃度に対して約8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%未満、約15%以下に制限するのに十分であるのが好ましい。酸素運搬剤がヘモグロビンであるとき、還元剤の濃度は、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9または約2mg/mgヘモグロビンであってよい。好ましくは、還元剤の濃度は、約0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7または約0.8mg/mgヘモグロビンであってよい。あるいは、還元剤の濃度は、ヘモグロビンとのモル比に記載されている濃度であってもよい。酸素運搬剤がヘモグロビンであるとき、還元剤対ヘモグロビンのモル比は、約0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.00、1.05、1.10、1.15、1.20、1.25、1.30、1.35、1.40、1.45、1.50、1.55、1.60、1.65、1.70、1.75、1.80、1.85、1.90、1.95、1.00、1.05、1.10、1.15、1.20、1.25、1.30、1.35、1.40、1.45、1.50、1.55、1.60、1.65、1.70、1.75、1.80、1.85、1.90、1.95、2.00、2.05、2.10、2.15、2.20、2.25、2.30、2.35、2.40、2.45、2.50、2.55、2.60、2.65、2.70、2.75、2.80、2.85、2.90、2.95、3.00、3.05、3.10、3.15、3.20、3.25、3.30、3.35、3.40、3.45、3.50、3.55、3.60、3.65、3.70、3.75、3.80、3.85、3.90、3.95、4.00、4.05、4.10、4.15、4.20、4.25、4.30、4.35、4.40、4.45、4.50、4.55、4.60、4.65、4.70、4.75、4.80、4.85、4.90、4.95、5.00、5.05、5.10、5.15、5.20、5.25、5.30、5.35、5.40、5.45、5.50、5.55、5.60、5.65、5.70、5.75、5.80、5.85、5.90、5.95、6.00、6.05、6.10、6.15、6.20、6.25、6.30、6.35、6.40、6.45、6.50、6.55、6.60、6.65、6.70、6.75、6.80、6.85、6.90、6.95、7.00、7.05、7.10、7.15、7.20、7.25、7.30、7.35、7.40、7.45、7.50、7.55、7.60、7.65、7.70、7.75、7.80、7.85、7.90、7.95、8.00、8.05、8.10、8.15、8.20、8.25、8.30、8.35、8.40、8.45、8.50、8.55、8.60、8.65、8.70、8.75、8.80、8.85、8.90、8.95、9.00、9.05、9.10、9.15、9.20、9.25、9.30、9.35、9.40、9.45、9.50、9.55、9.60、9.65、9.70、9.75、9.80、9.85、9.90、9.95,または約10.00であってよい。
【0058】
iv.酸素運搬ナノ粒子の調節
本開示のナノ粒子の重要な特徴は、粒子O
2親和性と組織の呼吸との間の生理的連結である。当該技術分野において公知の従来の血液代用剤では、人工O
2含有量が増加すると、これらの血液代用剤による適切なO
2の放出(すなわち、生理学的O
2解離曲線に沿って)は、HbからO
2親和性の正常なアロステリック制御の欠如によりインビボで稀に得られる(p50として表される、O
2(SHbO
2)のヘモグロビン飽和pO
2は50%である)。本発明では、革新的デザインのアロステリック調節因子シャトル式リザーバによりこの問題を解決する。ナノ粒子の構造がその機能に与える影響を示すために、例示的酸素運搬剤として、ヘモグロビン、例示的なアロステリック調節因子として2,3−DPG、及び例示的分岐ポリマーとしてポリエチレンイミン(PEI)を含有する粒子を検討する。ナノ粒子ペイロードは、ヘテロトロピックアロステリック調節因子分子(2,3−DPG)を含有し、肺潅流中、2,3,−DPGはシェル
に隔離され(高pHにて。それによってHbO
2親和性が増大し、O
2捕捉が促進される)、かつ、全身潅流中、2,3−DPGは、シェルから放出される(低pHにて。それによってHbO
2親和性が低下し、O
2放出が促進される)ように、HbO
2親和性が変化し;粒子コア中での2,3−DPGの遊離濃度は、ナノ粒子内側シェルへのpH応答性結合によって調節する。生理学的必要性の設定値[肺病理学では、過呼吸によりpHが上昇し、O
2の捕捉が増大し、組織低酸素を伴う場合、嫌気的代謝によりpHが低下し、O
2の放出が増大する]において、この効果が増幅される。肺において循環性移行が完了し(または低酸素症が軽減するとき)、pHが上昇すると、2,3−DPGは、ますますシェルと再適合し、それによって:1)肺中でのO
2の負荷を促進させる及び2)組織O
2負荷及びその分解物にp50を結び付ける。こうした生理学的応答性アロステリック調節因子リザーバ−シャトルにより、本開示の酸素運搬ナノ粒子をすべての酸素運搬ヘモグロビンと区別することが重要である。更に、本開示の酸素運搬ナノ粒子のデザインにより、このシャトルの態様をさらに洗練させるか、または「調整」することができ、これによりナノ粒子デザインを臨床状況に適合させる能力が付与される。
【0059】
本開示のナノ粒子は、赤血球の酸素運搬特徴を模倣するように調節されてもよい。当該分野の当業者は、赤血球の酸素運搬特性がヘモグロビンの酸素−ヘモグロビン解離曲線によって示され得ることを理解するであろう。酸素−ヘモグロビン解離曲線では、血液中の酸素分圧に対する酸素飽和(sO
2)をプロット(pO
2)し、他の因子におけるpO
2の生理学的条件下での酸素に対するヘモグロビン親和性、CO
2分圧(pCO
2)、pH、温度及びアロステリック調節因子の濃度について記載する。したがって、ナノ粒子は、実質的に、ヘモグロビンの酸素−ヘモグロビン解離曲線を模倣するように調節されてもよい。
【0060】
ナノ粒子は、約10、15、20、25、30、35または約40mmHg以上の50%飽和酸素運搬剤(p50)により、ナノ粒子を産生させるために調整されてもよい。好ましくは、酸素運搬ナノ粒子は、約20mmHg、25mmHgまたは約30mmHgのp50を有するナノ粒子を産生させるために調整される。また、好ましくは、酸素運搬ナノ粒子は、約26mmHgのp50を有するナノ粒子を産生させるために調整される。ナノ粒子のp50の調節方法としては、ナノ粒子の表面積を増大するか、または減少させるためにナノ粒子の形態を調節すること、ナノ粒子中のヘモグロビンなどの酸素運搬剤の濃度を調節すること、ナノ粒子中のヘモグロビンの酸化を制限するために還元剤の濃度を調節すること、ナノ粒子の中へのまたはナノ粒子外での酸素の拡散を制御するためにナノ粒子の外シェルを調節すること及びこれらを組み合わせたものを挙げることもできる。
【0061】
ナノ粒子は、酸素運搬ナノ粒子のpHに対する応答性を向上させるために調節してもよい。ボーア効果とも称されるヘモグロビンのpHに対する応答性は、肺の高pH環境においてより効率の良い酸素結合が可能であり、かつ、脱酸素組織の低pH環境において、より効率の良い酸素の放出が可能である。PHに対するナノ粒子の応答性を向上する方法としては、ナノ粒子のアロステリック調節因子の濃度の調整を挙げることもできる。こうしたアロステリック調節因子は、2,3−DPGであってもよい。
【0062】
ナノ粒子は、メトヘモグロビンへのヘモグロビンの酸化を制限するために、調整してもよい。上述のとおり、ナノ粒子は、ナノ粒子中のメトヘモグロビン濃度をナノ粒子中のヘモグロビン全濃度に対して約1%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%未満、20%以下に制限するために調整されてもよい。好ましくは、酸素運搬ナノ粒子は、ナノ粒子中のメトヘモグロビン濃度をナノ粒子中のヘモグロビン全濃度に対して約8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%未満または約15%以下に制限するために調整される。ヘモグロビン酸化の調節方法としては、ナノ粒子の表面積を増大するか、または減少させるためにナノ粒子の形態を調節すること、ナノ粒子の還元剤の濃度を調節すること及びこれらを組み合わせたものを挙げることができる。ヘモグロビンの酸化は、ロイコメチレンブルーまたはロイコベンジルメチレンブルーなど、還元剤の濃度を調整することによって、調整され得ることが好ましい。
【0063】
また、ナノ粒子は、NO除去を制限するために、調整されてもよい。NOは、哺乳類において重要な細胞内シグナル伝達分子であり、多くの生理学的工程及び病理学的工程に関与する。加えて、NOは、強力な血管拡張薬である。ヘモグロビンは、酸素に対するヘモグロビンの結合活性と平行する結合活性を有するNOに結合する。制御しない状態で、ヘモグロビン系酸素担体は、NOを
隔離することができ、血管収縮をもたらし得る。NO除去を制限するための本開示の酸素運搬ナノ粒子の調整方法としては、酸素及びNOに曝露したナノ粒子の表面積を増大するか、または減少させるためにナノ粒子の形態を調整すること、ナノ粒子へのNO拡散を制御するためにナノ粒子の外シェルを調整すること、全粒子径を調整すること、ペイロード密度を調整すること、またはこれらを組み合わせたものを挙げることもできる。当業者は、ナノ粒子を調整して、ナノ粒子中へのNOの拡散を制限することができるが、酸素運搬のための酸素拡散が可能であることは、理解されよう。例えば、外層の架橋程度を変更して、ナノ粒子によるNO隔離範囲及び速度を調節することができる。
【0064】
ナノ粒子シェルの調節方法としては、シェルの成分比、シェル成分の架橋、及びナノ粒子のシェルのPEG化を挙げることができる。シェルの成分、シェル成分の架橋の調節、及びナノ粒子のシェルのPEG化は、上述のとおりであってもよい。好ましくは、ナノ粒子のシェルは、シェル厚の増減、若しくは、疎水性または親水性の上昇または低下、及びシェルの架橋レベルまたはPEG化レベルの上昇または低下によって調節してもよい。更なる詳細は、実施例に提供される。
【0065】
(g)任意の分子
両凹型円板状の酸素運搬ナノ粒子は、標的部分、生物学的活性剤、造影剤、金属原子及び治療薬からなる群から選択される少なくとも1つの分子を更に含んでよい。分子は、水溶性または水不溶性であってもよい。分子は、ナノ粒子の水性内部コア内に含まれていてもよく、ナノ粒子の外シェルを含む両親媒性ポリマーの表面に共役結合されていてもよく、ナノ粒子の外シェルを含む両親媒性ポリマーの親水性領域内に共役結合されていてもよく、ナノ粒子の外シェルを含む両親媒性ポリマーの疎水性領域内に共役結合されていてもよい。また、2種以上の任意の分子を含むナノ粒子では、分子は、異なるナノ粒子の場所に局所化していてもよいことが想定される。一般に、標的部分は、ナノ粒子の外側シェルを含む両親媒性ポリマーの表面に共役される。本明細書で使用するとき、「共役」とは、共有結合または非共有結合のいずれかを意味する。非共有結合手段は、イオン結合、供与結合、水素結合、金属結合並びに静電相互作用、疎水性相互作用、及びファンデルワールス相互作用などを挙げることもできる。
【0066】
i金属原子
ナノ粒子に含有されるには、種々の金属原子が好適である。金属原子は、一般に、原子番号20以上を有する原子で構成される金属原子族から選択され得る。例えば、金属原子は、カルシウム原子、スカンジウム原子、チタン原子、バナジウム原子、クロム原子、マンガン原子、鉄原子、コバルト原子、ニッケル原子、銅原子、亜鉛原子、ガリウム原子、ゲルマニウム原子、ヒ素原子、セレン原子、臭素原子、クリプトン原子、ルビジウム原子、ストロンチウム原子、イットリウム原子、ジルコニウム原子、ニオビウム原子、モリブデン原子、テクネチウム原子、ルテニウム原子、ロジウム原子、パラジウム原子、銀原子、カドミウム原子、インジウム原子、スズ原子、アンチモン原子、テルル原子、ヨウ素原子、キセノン原子、セシウム原子、バリウム原子、ランタン原子、ハフニウム原子、タンタル原子、タングステン原子、レニウム原子、オスミウム原子、イリジウム原子、白金原子、金原子、水銀原子、タリウム原子、鉛原子、ビスマス原子、フランシウム原子、ラジウム原子、アクチニウム原子、セリウム原子、プラセオジミウム原子、ネオジム原子、プロメチウム原子、サマリウム原子、ユウロピウム原子、ガドリニウム原子、テルビウム原子、ジスプロシウム原子、ホルミウム原子、エルビウム原子、ツリウム原子、イッテルビウム原子、ルテチウム原子、トリウム原子、プロトアクチニウム原子、ウラン原子、ネプツニウム原子、プルトニウム原子、アメリシウム原子、キュリウム原子、バークリウム原子、カリホルニウム原子、アインスタイニウム原子、フェルミウム原子、メンデレビウム原子、ノーベリウム原子またはローレンシウム原子であってよい。
【0067】
ナノ粒子含有金属原子は、金属イオンであってもよい。金属原子は、+1、+2または+3酸化状態の形態であってよい。例えば、非限定的例としては、Ba
2+、Bi
3+、Cs
+、Ca
2+、Cr
2+、Cr
3+、Cr
6+、Co
2+、Co
3+、Cu
+、Cu
2+、Cu
3+、Ga
3+、Gd
3+、Au
+、Au
3+、Fe
2+、Fe
3+、Pb
2+、Pb
4+、Mn
2+、Mn
3+、Mn
4+、Mn
7+、Hg
2+、Ni
2+、Ni
3+、Ag
+、Sr
2+、Sn
2+、Sn
4+及びZn
2+が挙げられる。金属イオンは、金属錯体、化合物またはキレート類を含んでもよい。例えば、金属原子は、ポルフィリン、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)またはテトラメチルヘプタンジオナート(TMHD)、2,4−ペンタンジオン、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩(EDTA)、エチレングリコール−O、O’−ビス(2−アミノエチル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA)、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン−N、N’,N’−三酢酸三ナトリウム塩(HEDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、及び1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン−N,N’,N’’,N’’−四酢酸(TETA)を有する錯体、キレートまたは化合物を含んでもよい。金属錯体、化合物、またはキレートは、オルガノ可溶性または水溶性であってもよい。好適なオルガノ可溶性錯体の非限定的例としては、ペンタンジオン−ガドリニウム(III)、ビスマスネオデカノエート、イオヘキソール及び関連化合物並びに金のオルガノ可溶性錯体が挙げられる。例示的水溶性金属キレートまたは錯体としては、これらに限定されないが、Mn−DTPA、Mn−ポルフィリン及びGd−DTPAが挙げられる。
【0068】
金属原子は、金属酸化物を含んでもよい。例えば、金属酸化物の非限定的例としては、酸化鉄、酸化マンガンまたは酸化ガドリニウムを挙げることができる。追加の実施例としては、マグネタイト、マグヘマイトまたはこれらを組み合わせたものを挙げることができる。金属酸化物は、式MFe
2O
4を有し得る(式中、Mは、Fe、Mn、Co、Ni、Mg、Cu、Zn、Ba、Srまたはこれらの組み合わせからなる群から選択される)。金属酸化物は、磁気性であってもよい。好ましくは、金属原子は、酸化鉄を含んでもよい。また、ナノ粒子は、金属酸化物及び本明細書に記載されているような追加の金属のいずれを含んでもよい。例えば、ナノ粒子は、金属酸化物及び例えばヨウ素、ガドリニウム、ビスマスまたは金など、追加の金属を含んでもよい。概して、ナノ粒子に含まれている金属酸化物は、直径が約1nm〜約30nmである。例えば、金属酸化物は、直径約1、2、3、4、5、10、15、20、25または30nmであってもよい。
【0069】
典型的には、ナノ粒子は、少なくとも、50,000個の金属原子を含む。ナノ粒子は、少なくとも100,000個、少なくとも150,000個、少なくとも200,000個、少なくとも250,000個、少なくとも300,000個、少なくとも350,000個または少なくとも400,000個の金属原子を含んでもよい。
【0070】
ii生物学的活性剤
また、酸素結合ナノ粒子は、酸素運搬ナノ粒子に加えて、少なくとも1つの生物学的活性剤を含んでもよい。好適な生物学的活性剤の非限定的例としては、医薬品、治療薬、診断薬、放射性同位元素、遺伝物質、タンパク質、炭化水素、脂質、核酸系材料及びこれらの組み合わせが挙げられる。生物学的活性剤は、ナノ粒子への組み込みまたは吸着を向上するために、その未変性形態であってもよく、または疎水性部分または荷電部分により誘導体化されていてもよい。したがって、生物学的活性剤は、水溶性であってもよく、または水不溶性であってもよい。上記に詳細に示すように、生物学的活性は、水性内部コア内に含まれていてもよく、外シェルを含む両親媒性ポリマーの表面に共役結合されていてもよく、外シェルを含む両親媒性ポリマーの親水性領域内に共役結合されていてもよく、または外シェルを含む両親媒性ポリマーの疎水性領域内に共役結合されていてもよい。
【0071】
生物学的活性剤の非限定的例としては、免疫関連薬剤、甲状腺薬、呼吸系製剤、抗腫瘍薬、駆虫薬、抗マラリア薬、分裂阻害剤、ホルモン剤、抗原虫剤、抗結核剤、心血管製剤、血液製剤、生物応答修飾剤、抗真菌剤薬剤、ビタミン剤、ペプチド剤、抗アレルギー剤、抗凝固剤、循環器系作用薬、代謝増強剤(metabolic potentiators)、抗ウイルス薬、抗狭心症薬、抗生物質、抗炎症剤、抗リウマチ剤、麻薬、強心配糖体、神経筋遮断薬、鎮静剤、局所麻酔薬、全身麻酔薬、若しくは放射性原子または放射性イオン、を挙げることもできる。さらに、ナノ粒子は、2つまたはそれ以上の、3つまたはそれ以上の、若しくは、4つまたはそれ以上の生物学的活性剤を含んでもよい。
【0072】
また、生物学的活性剤は、標的部分であってもよい(以下、参照のこと)。例えば、抗体、核酸、ペプチド断片、有機小分子または生物学的活性リガンドの模倣体は、特定のエピトープに結合するとき、例えば、アンタゴニストまたはアンゴニストなどの治療薬であってもよい。したがって、標的部分及び治療薬は、ナノ粒子を標的にするため及び治療薬を所望の部位へ投与するために機能する単一構成成分によって構成されてもよい。
【0073】
ナノ粒子に組み込まれる治療薬の量は、変動してもよい。当業者は、負荷速度が、例えば、治療薬の種類及び目的の標的に依存するであろうことは理解するであろう。
【0074】
iii.標的部分
両凹型円板状ナノ粒子は、標的部分を含んでもよい。標的部分は、ナノ粒子を特定部位または場所に向けるか、またはナノ粒子を特定部位または場所に標的にする。標的粒子としては、外シェル表面に共役結合される多種多様の標的部分を挙げることができ、これらに限定されないが、抗体、抗体断片、ペプチド、小分子、多糖、核酸、アプタマー、ペプチド模倣体、その他の模倣物質及び薬物を単独または組み合わせたものを挙げることもできる。標的部分は、ナノ粒子を細胞内エピトープ及び/またはレセプターに特異的に結合するために利用されてもよい。標的部分は、ナノ粒子に直接的にまたは間接的に共役結合されていてもよい。
【0075】
標的部分とナノ粒子との直接共役とは、標的部分−ナノ粒子錯体の調製を意味し、イオン結合、静電相互作用、疎水結合または他の非共有結合手段のいずれかを介してナノ粒子表面に吸着される(例えば、アシル化−抗体または相補的核酸配列間でのハイブリダイゼーションを介して)か、または共役脂質の成分との共有結合を介して外シェル表面と化学的連結するか、または外シェルの両親媒性ポリマー中に内因的に取り込まれる(例えば、誘導されペプチド模倣薬となる脂質)。また、標的部分は、リンカー分子を介して、ナノ粒子に直接的に共役結合されていてもよい。リンカー分子が、ナノ粒子と標的部分との間に配置されるように、リンカー分子は、少なくとも2つの官能基を含む。
【0076】
間接的共役結合とは、インビボにおいて、2つまたはそれ以上のステップにおいて、ナノ粒子と標的部分との間に錯体を形成することを指す。間接的共役結合では、化学的連結系を利用して、ナノ粒子の標的細胞または組織表面への密封された特異的付着を形成する。間接標的システムの非限定的例としては、アビジン−ビオチンが挙げられる。
【0077】
iv.造影剤
両凹型円板状ナノ粒子は、更に、造影剤を含んでもよい。造影剤は、上記に詳細を示すように、金属原子を含んでもよく、または放射性核種であってもよい。好適な放射性核種の非限定的例としては、テクネチウム−99m、ヨウ素−123及び131、タリウム−201、ガリウム−67、フッ素−18、フルオロデオキシグルコース及びインジウム−111が挙げられる。また、造影剤は、フルオロフォアであってよい。好適なフルオロフォアとしては、これらに限定されるものではないが、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フルオレセインチオセミカルバジド、ローダミン、Texas Red、CyDye(例えば、Cy3、Cy5、Cy5.5)、Alexa Fluor(例えば、Alexa
488、Alexa
555、Alexa
594、Alexa
647)及び近赤外(NIR)(700〜900nm)蛍光染料が挙げられる。
【0078】
(h)好ましい実施形態
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、実質的に両凹型円板形状を有し、水性コア部、両親媒性ポリマー含有二層シェルを含み、かつ、酸素運搬剤、アロステリック調節因子及び還元剤を含むペイロードを有する。ペイロードは、ナノ粒子内部にある。両親媒性ポリマーは、反応性基を有する分岐アミン含有ポリマーを含み、遊離反応性基の少なくとも約25%が脂質に結合しているように、反応性基を介して、脂質に結合する。両親媒性ポリマー含有シェルの表面反応性基は、ニ官能性リンカーに架橋している。ナノ粒子の平均直径は、約130nm〜約300nmであってもよく、ナノ粒子の平均高さは、約30nm〜約80nmである。ナノ粒子は、貫通孔またはくぼみを含んでいてもよい。分岐ポリマーは、ポリエチレンイミン分岐ポリマー、PAMAMデンドリマー、星型ポリマーまたはグラフトポリマーであってもよい。脂質は、パルミチン酸またはC24−ペンタコサジイン酸であってもよい。ナノ粒子は、約20%〜約60%(w/v)の酸素運搬剤分子を含んでもよい。酸素運搬剤対アロステリック調節因子及び酸素運搬剤対還元剤の比率は、ほぼ独立して、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1及び10:1からなる群から選択してもよい。ナノ粒子デザインにより、潅流中、正常/異常なヒト生理学(例えば、組織pO
2は、40〜5Torrの範囲である)にあるO
2分圧/勾配全体に、O
2を効率よく放出することができる。ナノ粒子は、実質的に一酸化窒素を
隔離することはできない。ナノ粒子は、ナノ粒子中における酸素運搬剤全濃度の約10%以下まで酸素運搬剤の酸化を制限し得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、実質的に両凹型円板形状を有し、水性コア部、両親媒性ポリマー含有二層シェルを含み、かつ、酸素運搬剤、アロステリック調節因子及び還元剤を含むペイロードを有する。ペイロードは、ナノ粒子内部にある。両親媒性ポリマーは、反応性基を有する分岐アミン含有ポリマーを含み、遊離反応性基の少なくとも約40%が脂質に結合しているように、反応性基を介して、脂質に結合する。両親媒性ポリマー含有シェルの表面反応性基は、ニ官能性リンカーに架橋している。ナノ粒子の平均直径は、約130nm〜約300nmであってもよく、ナノ粒子の平均高さは、約30nm〜約80nmである。ナノ粒子は、貫通孔またはくぼみを含んでいてもよい。分岐ポリマーは、ポリエチレンイミン分岐ポリマー、PAMAMデンドリマー、星型ポリマーまたはグラフトポリマーであってもよい。脂質は、パルミチン酸またはC24−ペンタコサジイン酸であってもよい。ナノ粒子は、約20%〜約60%(w/v)の酸素運搬剤分子を含んでもよい。酸素運搬剤対アロステリック調節因子及び酸素運搬剤対還元剤の比率は、ほぼ独立して、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1及び10:1からなる群から選択してもよい。ナノ粒子デザインにより、潅流中、正常/異常なヒト生理学(例えば、組織pO
2は、40〜5Torrの範囲である)にあるO
2分圧/勾配全体に、O
2を効率よく放出することができる。ナノ粒子は、実質的に一酸化窒素を
隔離することはできない。ナノ粒子は、ナノ粒子中における酸素運搬剤全濃度の約10%以下まで酸素運搬剤の酸化を制限し得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、実質的に両凹型円板形状を有し、水性コア部、両親媒性ポリマー含有二層シェルを含み、かつ、酸素運搬剤、アロステリック調節因子及び還元剤を含むペイロードを有する。ペイロードは、ナノ粒子内部にある。両親媒性ポリマーは、反応性基を有する分岐アミン含有ポリマーを含み、遊離反応性基の少なくとも約55%が脂質に結合しているように、反応性基を介して、脂質に結合する。両親媒性ポリマー含有シェルの表面反応性基は、ニ官能性リンカーに架橋している。ナノ粒子の平均直径は、約130nm〜約300nmであってもよく、ナノ粒子の平均高さは、約30nm〜約80nmである。ナノ粒子は、貫通孔またはくぼみを含んでいてもよい。分岐ポリマーは、ポリエチレンイミン分岐ポリマー、PAMAMデンドリマー、星型ポリマーまたはグラフトポリマーであってもよい。脂質は、パルミチン酸またはC24−ペンタコサジイン酸であってもよい。ナノ粒子は、約20%〜約60%(w/v)の酸素運搬剤分子を含んでもよい。酸素運搬剤対アロステリック調節因子及び酸素運搬剤対還元剤の比率は、ほぼ独立して、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1及び10:1からなる群から選択してもよい。ナノ粒子デザインにより、潅流中、正常/異常なヒト生理学(例えば、組織pO
2は、40〜5Torrの範囲である)にあるO
2分圧/勾配全体に、O
2を効率よく放出することができる。ナノ粒子は、実質的に一酸化窒素を
隔離することはできない。ナノ粒子は、ナノ粒子中における酸素運搬剤全濃度の約10%以下まで酸素運搬剤の酸化を制限し得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、実質的に両凹型円板形状を有し、水性コア部、両親媒性ポリマー含有二層シェルを含み、かつ、ヘモグロビン、2,3−DPGのほか、ロイコメチレンブルー、アスコルビン酸塩及びグルタチオンからなる群から選択される還元剤を含むペイロードを有する。ペイロードは、ナノ粒子内部にある。両親媒性ポリマーは、反応性基を有する分岐アミン含有ポリマーを含み、遊離反応性基の少なくとも約25%が脂質に結合しているように、反応性基を介して、脂質に結合する。両親媒性ポリマー含有シェルの表面反応性基は、ニ官能性リンカーに架橋している。ナノ粒子の平均直径は、約130nm〜約300nmであってもよく、ナノ粒子の平均高さは、約30nm〜約80nmである。ナノ粒子は、貫通孔またはくぼみを含んでいてもよい。分岐ポリマーは、ポリエチレンイミン分岐ポリマー、PAMAMデンドリマー、星型ポリマーまたはグラフトポリマーであってもよい。脂質は、パルミチン酸またはC24−ペンタコサジイン酸であってもよい。ナノ粒子は、約20%〜約60%(w/v)のヘモグロビン分子を含み得る。ヘモグロビン対アロステリック調節因子及びヘモグロビン対還元剤の比率は、ほぼ独立して、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1及び10:1からなる群から選択してもよい。ナノ粒子デザインにより、潅流中、正常/異常なヒト生理学(例えば、組織pO
2は、40〜5Torrの範囲である)にあるO
2分圧/勾配全体に、O
2を効率よく放出することができる。ナノ粒子は、実質的に一酸化窒素を
隔離することはできない。ナノ粒子は、ナノ粒子中におけるヘモグロビン全濃度の約10%以下までヘモグロビンの酸化を制限し得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、実質的に両凹型円板形状を有し、水性コア部、両親媒性ポリマー含有二層シェルを含み、かつ、ヘモグロビン、2,3−DPGのほか、ロイコメチレンブルー、アスコルビン酸塩及びグルタチオンからなる群から選択される還元剤を含むペイロードを有する。ペイロードは、ナノ粒子内部にある。両親媒性ポリマーは、反応性基を有する分岐アミン含有ポリマーを含み、遊離反応性基の少なくとも約40%が脂質に結合しているように、反応性基を介して、脂質に結合する。両親媒性ポリマー含有シェルの表面反応性基は、ニ官能性リンカーに架橋している。ナノ粒子の平均直径は、約130nm〜約300nmであってもよく、ナノ粒子の平均高さは、約30nm〜約80nmである。ナノ粒子は、貫通孔またはくぼみを含んでいてもよい。分岐ポリマーは、ポリエチレンイミン分岐ポリマー、PAMAMデンドリマー、星型ポリマーまたはグラフトポリマーであってもよい。脂質は、パルミチン酸またはC24−ペンタコサジイン酸であってもよい。ナノ粒子は、約20%〜約60%(w/v)のヘモグロビン分子を含み得る。ヘモグロビン対アロステリック調節因子及びヘモグロビン対還元剤の比率は、ほぼ独立して、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1及び10:1からなる群から選択してもよい。ナノ粒子デザインにより、潅流中、正常/異常なヒト生理学(例えば、組織pO
2は、40〜5Torrの範囲である)にあるO
2分圧/勾配全体に、O
2を効率よく放出することができる。ナノ粒子は、実質的に一酸化窒素を
隔離することはできない。ナノ粒子は、ナノ粒子中におけるヘモグロビン全濃度の約10%以下までヘモグロビンの酸化を制限し得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、実質的に両凹型円板形状を有し、水性コア部、両親媒性ポリマー含有二層シェルを含み、かつ、ヘモグロビン、2,3−DPGのほか、ロイコメチレンブルー、アスコルビン酸塩及びグルタチオンからなる群から選択される還元剤を含むペイロードを有する。ペイロードは、ナノ粒子内部にある。両親媒性ポリマーは、反応性基を有する分岐アミン含有ポリマーを含み、遊離反応性基の少なくとも約55%が脂質に結合しているように、反応性基を介して、脂質に結合する。両親媒性ポリマー含有シェルの表面反応性基は、ニ官能性リンカーに架橋している。ナノ粒子の平均直径は、約130nm〜約300nmであってもよく、ナノ粒子の平均高さは、約30nm〜約80nmである。ナノ粒子は、貫通孔またはくぼみを含んでいてもよい。分岐ポリマーは、ポリエチレンイミン分岐ポリマー、PAMAMデンドリマー、星型ポリマーまたはグラフトポリマーであってもよい。脂質は、パルミチン酸またはC24−ペンタコサジイン酸であってもよい。ナノ粒子は、約20%〜約60%(w/v)のヘモグロビン分子を含み得る。ヘモグロビン対アロステリック調節因子及びヘモグロビン対還元剤の比率は、ほぼ独立して、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1及び10:1からなる群から選択してもよい。ナノ粒子デザインにより、潅流中、正常/異常なヒト生理学(例えば、組織pO
2は、40〜5Torrの範囲である)にあるO
2分圧/勾配全体に、O
2を効率よく放出することができる。ナノ粒子は、実質的に一酸化窒素を
隔離することはできない。ナノ粒子は、ナノ粒子中におけるヘモグロビン全濃度の約10%以下までヘモグロビンの酸化を制限し得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、実質的に両凹型円板形状を有し、水性コア部、両親媒性ポリマー含有二層シェルを含み、かつ、ヘモグロビン、2,3−DPGのほか、ロイコメチレンブルー、アスコルビン酸塩及びグルタチオンからなる群から選択される還元剤を含むペイロードを有する。ペイロードは、ナノ粒子内部にある。両親媒性ポリマーは、PEIを含み、遊離第一級アミンの少なくとも約40%が脂質に結合しているように、反応性基を介して、脂質に結合する。両親媒性ポリマー含有シェルの表面反応性基は、ニ官能性リンカーに架橋している。ナノ粒子の平均直径は、約130nm〜約300nmであってもよく、ナノ粒子の平均高さは、約30nm〜約80nmである。ナノ粒子は、貫通孔またはくぼみを含んでいてもよい。PEIでは、MWは10kDa〜約100kDa以上であってもよい。脂質は、パルミチン酸またはC24−ペンタコサジイン酸であってもよい。ナノ粒子は、約20%〜約60%(w/v)のヘモグロビン分子を含み得る。ヘモグロビン対アロステリック調節因子及びヘモグロビン対還元剤の比率は、ほぼ独立して、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1及び10:1からなる群から選択してもよい。ナノ粒子デザインにより、潅流中、正常/異常なヒト生理学(例えば、組織pO
2は、40〜5Torrの範囲である)にあるO
2分圧/勾配全体に、O
2を効率よく放出することができる。ナノ粒子は、実質的に一酸化窒素を
隔離することはできない。ナノ粒子は、ナノ粒子中におけるヘモグロビン全濃度の約10%以下までヘモグロビンの酸化を制限し得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、実質的に両凹型円板形状を有し、水性コア部、両親媒性ポリマー含有二層シェルを含み、かつ、ヘモグロビン、2,3−DPGのほか、ロイコメチレンブルー、アスコルビン酸塩及びグルタチオンからなる群から選択される還元剤を含むペイロードを有する。ペイロードは、ナノ粒子内部にある。両親媒性ポリマーは、PEIを含み、遊離第一級アミンの少なくとも約50%が脂質に結合しているように、反応性基を介して、脂質に結合する。両親媒性ポリマー含有シェルの表面反応性基は、ニ官能性リンカーに架橋している。ナノ粒子の平均直径は、約130nm〜約300nmであってもよく、ナノ粒子の平均高さは、約30nm〜約80nmである。ナノ粒子は、貫通孔またはくぼみを含んでいてもよい。PEIでは、10kDa〜約100kDa以上のMWを有していてもよい。脂質は、パルミチン酸またはC24−ペンタコサジイン酸であってもよい。ナノ粒子は、約20%〜約60%(w/v)のヘモグロビン分子を含み得る。ヘモグロビン対アロステリック調節因子及びヘモグロビン対還元剤の比率は、ほぼ独立して、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1及び10:1からなる群から選択してもよい。ナノ粒子デザインにより、潅流中、正常/異常なヒト生理学(例えば、組織pO
2は、40〜5Torrの範囲である)にあるO
2分圧/勾配全体に、O
2を効率よく放出することができる。ナノ粒子は、実質的に一酸化窒素を
隔離することはできない。ナノ粒子は、ナノ粒子中におけるヘモグロビン全濃度の約10%以下までヘモグロビンの酸化を制限し得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子は、実質的に両凹型円板形状を有し、水性コア部、両親媒性ポリマー含有二層シェルを含み、かつ、ヘモグロビン、2,3−DPGのほか、ロイコメチレンブルー、アスコルビン酸塩及びグルタチオンからなる群から選択される還元剤を含むペイロードを有する。ペイロードは、ナノ粒子内部にある。両親媒性ポリマーは、PEIを含み、遊離第一級アミンの少なくとも約55%が脂質に結合しているように、反応性基を介して、脂質に結合する。両親媒性ポリマー含有シェルの表面反応性基は、ニ官能性リンカーに架橋している。ナノ粒子の平均直径は、約130nm〜約300nmであってもよく、ナノ粒子の平均高さは、約30nm〜約80nmである。ナノ粒子は、貫通孔またはくぼみを含んでいてもよい。PEIでは、10kDa〜約100kDa以上のMWを有していてもよい。脂質は、パルミチン酸またはC24−ペンタコサジイン酸であってもよい。ナノ粒子は、約20%〜約60%(w/v)のヘモグロビン分子を含み得る。ヘモグロビン対アロステリック調節因子及びヘモグロビン対還元剤の比率は、ほぼ独立して、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1及び10:1からなる群から選択してもよい。ナノ粒子デザインにより、潅流中、正常/異常なヒト生理学(例えば、組織pO
2は、40〜5Torrの範囲である)にあるO
2分圧/勾配全体に、O
2を効率よく放出することができる。ナノ粒子は、実質的に一酸化窒素を
隔離することはできない。ナノ粒子は、ナノ粒子中におけるヘモグロビン全濃度の約10%以下までヘモグロビンの酸化を制限し得る。
【0087】
II.酸素運搬ナノ粒子調製
方法
本開示の別の態様は、自己組織化された、実質的に凹部円板状であるナノ粒子集団の調製
方法である。概して、
方法は、両親媒性ポリマーを形成すること;非極性溶媒中に両親媒性ポリマーを含む複数個の反転ミセルを形成すること;極性溶媒中に酸素運搬剤、アロステリック調節因子及び還元剤を含むペイロードを懸濁すること;及びペイロードを攪拌によって反転ミセルを含む有機層に移行すること;及び反転ミセル自己組織化して、実質的に、両凹型円板状ナノ粒子とすることを含む。ナノ粒子は、PEG化されていてもよい。あるいは、ナノ粒子は、架橋されていてもよい。更に別の代替形態では、ナノ粒子は、PEG化及び架橋されていてもよい。
【0088】
(a)両親媒性ポリマーの形成
本開示の粒子調製
方法は、一部、両親媒性ポリマーを形成することを含む。概して、
方法には、共有結合により両親媒性脂質が分岐ポリマーに共役された疎水的修飾された分岐ポリマーを含む。好適な分岐ポリマー及び両親媒性脂質は、上記セクションIに詳細に記載されている。上記のように、分岐ポリマーは、遊離反応性基を含む。遊離反応性基は、アミン基であってもよい。
【0089】
概して、ポリマーの少なくとも25%の遊離反応性基は、両親媒性脂質と連結している。例えば、ポリマーの遊離反応性基の約25%〜約55%が脂質に連結し、ポリマーの遊離反応性基の約30%〜約55%が脂質に連結し、ポリマーの遊離反応性基の約35%〜約55%が脂質に連結し、ポリマーの遊離反応性基の約40%〜約55%が脂質に連結し、ポリマーの遊離反応性基の約45%〜約60%が脂質に連結し、ポリマーの遊離反応性基の約50%〜約65%が脂質に連結し、ポリマーの遊離反応性基の約55%〜約70%が脂質に連結し、ポリマーの遊離反応性基の約60%〜約75%が脂質に連結し、ポリマーの遊離反応性基の約65%〜約80%が脂質に連結し、ポリマーの遊離反応性基の約70%〜約85%が脂質に連結し、ポリマーの遊離反応性基の約75%〜約90%が脂質に連結し、ポリマーの遊離反応性基の約80%〜約95%が脂質に連結し、ポリマーの遊離反応性基の約85%〜約100%が脂質に連結する。あるいは、約25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%以上のポリマーの遊離反応性基が脂質に連結する。ポリマー対脂質のモル比は、通常、約1:0.4〜約1:0.8である。一般に、ポリマー対脂質のモル比は、約1:0.4、1:0.45、1:0.5、1:0.55、1:0.6、1:0.65、1:0.7、1:0.75または1:0.8であってよい。
【0090】
脂質とポリマーとの共役結合方法は、当技術分野において既知であり、かつ、実施例に詳細に記載されている。要約すると、ポリマーの活性基は、脂質の活性基と共有結合を形成する。好適なポリマー活性基については、上記に記載している。脂質は、ポリマー活性基との結合を形成する(すなわち、直接共役)ために、好適な活性基を含んでいてもよいか、または、好適な活性基を付与するために、リンカーで処理されてもよい(すなわち、間接共役)。活性基の非限定的例としては、エポキシド、カルボキシレート、オキシラン、N−ヒドロキシスクシンイミドのエステル、アルデヒド、ヒドラジン、マレイミド、メルカプタン、アミノ基、ハロゲン化アルキル、イソチオシアネート、カルボジイミド、ジアゾ化合物、トレシルクロリド、トシルクロリド、プロパルギル、アジド及びトリクロロS−トリアジンを挙げることもできる。一般に、反応性基は、光反応性基であってもよく、光と接触すると、活性化させることができ、また、共有結合によりポリマー反応性基に付着させることができる。例示的光反応性基としては、アリールアジド、ジアザレン、β−カルボニル及びベンゾフェノンを挙げることもできる。反応種は、ニトレン、カルベン及びラジカルである。これらの反応種は、概して、共有結合形成が可能である。反応性基は、カルボキシル基及びアミン基であることが好ましい。
【0091】
(b)複数個の反転ミセルの形成
ナノ粒子の調製
方法は、更に、一部、複数個の反転ミセルを形成することを含む。概して、上記セクションII(a)の両親媒性ポリマーと非極性溶媒との混合物の攪拌によって、単分子反転ミセル(すなわち、逆ミセル)が形成される。典型的には、非極性溶媒中の両親媒性ポリマーの濃度は、約10
−7〜約10
−5Mである。一般に、両親媒性ポリマーの濃度は、約10
−6Mである。
【0092】
非極性溶媒は、有機物質であってもよい。非極性溶媒の非限定的例としては、アセトン、メチルアセタート、エチルアセテート、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン及びクロロホルムを挙げることもできる。例示的溶媒は、クロロホルムまたはジクロロメタンであってもよい。
【0093】
混合物は、物理的反転、ボルテックス、混合、振盪、超音波処理、撹拌または他の類似手段を介して攪拌されてもよい。典型的には、混合物は、約1分間〜約10分間攪拌されてもよいが、さらに長い攪拌時間が可能であってもよい。混合物は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10分以上、攪拌されてもよい。概して、約4℃〜ほぼ室温で攪拌が行われる。
【0094】
(c)ペイロードの反転ミセル含有有機層への移行
ナノ粒子は、ペイロードを含有し、このペイロードは、酸素運搬剤、アロステリック調節因子及び還元剤を含む。酸素運搬剤、アロステリック調節因子及び還元剤は、上記セクションI(f)に記載されるようであってよい。ペイロードは、水性溶媒と混合し、混合物は、反転ミセルの非極性溶媒混合液に添加し、二相性混合物がもたらされる。二相性混合物は、必要に応じて沈下させ、次いで、攪拌することによってペイロードを反転ミセル含有有機層に移す。典型的には、最小の攪拌のみが必要とされ、かつ、物理的転化及び/または旋回または振盪は、酸素運搬剤、アロステリック調節因子及び還元剤を逆ミセル内部に移動させるのに十分である。攪拌は更に、高せん断混合によって行われてもよい。高せん断攪拌の非限定的例としては、微流動化、音波処理、均質化または関連する混合を挙げることもできる。水性溶媒は、セクションII(d)に記載されている極性溶媒であってよい。
【0095】
(d)両凹型円板状ナノ粒子の自己組織化
上記セクションII(c)において、ペイロードを含有する複数の反転ミセル形成後、本開示の
方法は、反転ミセルの実質的に両凹型円板状ナノ粒子への自己組織化を含む。概して、
方法には、熱及び溶媒系の存在下において、反転ミセルを攪拌することを含む。
【0096】
攪拌中の温度は、一部、得られたナノ粒子のサイズによって決定する。典型的には、温度が上昇すると、ナノ粒子サイズが増大する。攪拌中の温度は、約30℃〜約65℃の範囲であってよい。例えば、温度は、約30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、または65℃であってよい。
【0097】
混合物は、物理的手段または音響手段を介して攪拌されてもよい。例えば、混合物は、物理的反転、ボルテックス、混合、振盪、超音波処理または他の類似手段によって攪拌されてもよい。好ましくは、混合物は、高せん断混合によって攪拌されてもよい。概して、反転ミセルは、約15分間〜約90分間、約30分間〜約60分間または約20分間、25分間、30分間、35分間、40分間、45分間、50分間、55分間、60分間、65分間または70分間、攪拌される。
【0098】
反転ミセルは、典型的には、溶剤系の存在下において熱により攪拌される。溶媒系は、極性溶媒及び非極性溶媒をいずれも含む。例えば、極性溶媒は、水性溶媒であり、非極性溶媒は有機溶媒である。一例として、非極性溶媒は、上記セクションII(b)で使用される非極性溶媒であってよく、また、水性溶媒を短時間攪拌し、非極性溶媒に添加してもよい。極性溶媒と非極性溶媒との間に適切な比率を得るために、非極性溶媒を混合物から蒸発させてもよい。極性溶媒対非極性溶媒の重量比は、約1:5であってよい。例示的極性溶媒は、メタノールであってよく、例示的非極性溶媒は、クロロホルムであってもよい。
【0099】
極性溶媒と非極性溶媒との間に適切な比率を得るために、非極性溶媒は、混合物から蒸発させてもよい。蒸発は、減圧下にて行ってもよい。概して、選択される圧力は、一部、非極性溶媒に依存する。減圧は、約350mbar〜1000mbarの間、または約400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900または950mbarであってよい。非極性溶媒がクロロホルムである場合、減圧は、約400〜約500mbarの間であってよい。例えば、減圧は、約400mbar〜約450mbarの間、または約420mbar〜約440mbarの間であってよい。
【0100】
(e)任意の分子
ナノ粒子は、標的部分、生物学的活性剤、造影剤、金属原子及び治療薬からなる群から選択される少なくとも1つの分子を更に含んでよい。好適な分子は、上記に詳細に記載されている。これらの分子は、ナノ粒子のシェル表面に共役結合されていてもよいか、または、ナノ粒子内部に含まれていてもよい。
【0101】
分子は、ナノ粒子のシェル中に組み込まれていてもよい。このような分子を組み込むためには、標的部分、生物学的活性剤、造影剤、金属原子または治療薬は、典型的には、上記セクションII(b)に記載されている非極性溶媒中において、複数個の反転ミセルを含む混合物に添加される。混合後、分子は、水相から有機相への相転移によってミセル中に組み込まれる。その結果、自己組織化後、分子は、ナノ粒子のシェル中に組み込まれる。
【0102】
水溶性生物学的活性剤、造影剤、金属原子または治療薬は、ナノ粒子の水性コア部中に組み込まれてもよい。こうした分子を組み込むために、生物学的活性剤、造影剤、金属原子または治療薬は、反転ミセルの内部に移動させてもよい。例えば、複数個のミセル形成後ではあるが、ナノ粒子の自己組織化前に、複数個のミセルが、非水溶性分子と混合してもよい。混合物は、攪拌されてもよく、その結果として、水溶性分子は、反転ミセルの内部に移動し、かつ、その結果として、反転ミセルの自己組織化後、ナノ粒子の水性コア部に移動する。典型的には、最小の攪拌のみが必要とされ、物理的反転は、水溶性分子を逆ミセルの内部に移動させるのに十分である。
【0103】
また、水不溶性の標的部分、金属原子、生物学的活性剤、造影剤、または治療薬は、ナノ粒子のシェルの両親媒性ポリマーの疎水性領域内に配置されてもよい。このような分子を組み込むためには、水不溶性分子は、有機非極性溶媒に溶解させてもよく、また、反転ミセルと混合させてもよい。その結果として、反転ミセルの自己組織化後、水不溶性分子は、両親媒性ポリマーの疎水性領域に移動する。
【0104】
標的部分、生物学的活性剤、造影剤、金属原子または治療薬で、両親媒性ポリマーの親水性領域内またはナノ粒子外表面に配置されてもよい。分子は、両親媒性ポリマーへの非共有結合または共有結合による結合を介して、表面に吸着してもよい。例えば、分子は、共有結合、供与結合、イオン結合、水素結合またはファンデルワールス結合を介して、ナノ粒子の表面に結合してもよい。
【0105】
(f)架橋
ナノ粒子の自己組織化後、シェルは、架橋されていてもよい。上記に詳細に記述するとおり、架橋を用いて、酸素及び治療用分子の放出速度を変更することができる。あるいは、架橋を使用して、ナノ粒子の安定性を増大させることができる。粒子は、外シェルの表面上に架橋されていてもよく、または外シェル内で架橋されていてもよい。架橋は、化学的架橋または光化学架橋であってもよい。当該技術分野において、架橋方法は公知である。要約すると、好適な架橋剤は、両親媒性ポリマーの1つ以上の活性基と反応する。架橋剤は、ホモ二官能性またはヘテロ二官能性であってよい。架橋剤は、化学的架橋または非化学的架橋であってもよい。好適な化学的架橋剤としては、グルタルアルデヒド、ビス−カルボン酸スペーサーまたはビス−カルボン酸活性エステルを挙げることもできる。光化学架橋は、ポリジアセチレン(polydiacetylinic)結合の紫外線架橋によって得られてもよい。当該分野の当業者は、好適な架橋剤は、ナノ粒子の組成及び使用目的に応じて変更し得ると理解している。
【0106】
(g)PEG化
本開示の粒子は、PEG化され得る。本明細書で使用するとき、「PEG化」は、外シェルにポリエチレングリコールを添加することを意味する。PEG化方法は、当技術分野においてよく知られており、かつ、実施例に詳細に記載されている。PEG化を用いて、ナノ粒子のゼータ表面電荷を減少させることができる。別の方法を記載すると、PEG化を使用して、ナノ粒子の近接する中性面を付与することができる。PEG化を使用して、ナノ粒子のインビボ循環を変更することができる。
【0107】
(h)滅菌及び凍結乾燥
インビボで適用するには、ナノ粒子組成物の無菌性は重要である。滅菌は、当該技術分野において公知の任意の方法を介して達成されてもよく、提供された方法により、粒子の安定性及び/またはO2結合/放出に大きく影響が及ぶことはない。例えば、ナノ粒子組成物または溶液は、孔径0.22μm以下の膜を介して濾過滅菌されてもよい。好適な膜の非限定的例としては、疎水性ポリテトラフルオロエチレン、親水性のDurapore(登録商標)(ポリフッ化ビニリデン)及びポリエーテルスルホンが挙げられる。各膜の濾過効率は、適用され、かつ、回収した容積、粒径及び/またはゼータ電位を比較することによって、測定され得る。
【0108】
バッファ懸濁液中のナノ粒子アリコートは、乾燥粉末にしてもよく、凍結防御物質の有無にかかわらず、凍結乾燥粉末として、不活性ガス下で密閉し得る。好ましくは、アリコートの懸濁液は凍結乾燥し、当該技術分野において公知のその他の方法を使用してもよい。好適な不活性ガスは、当技術分野において既知であり、また、これに限定されないが、アルゴンを挙げることもできる。同様に、好適な抗凍結剤(cyroprotectant)は、当技術分野において既知であり、かつ、これに限定されないがソルビトールを挙げることができる。再構成アリコートについては、本明細書に記載されているように、変更した粒径、ゼータ電位、pH、粘度、滅菌及び/またはO
2解離に関して、評価され得る。受入れ保管条件、満期及び公開明細書は、ベースライン特性からの変動が、20%未満、より好ましくは15%未満、更により好ましくは10%未満であることを示す。凍結乾燥粉末は、使用目的及び/または患者の循環血液量の状態に適合させる方法で、再構成されてもよい。例えば、本開示のナノ粒子を含む血液代用組成物は、正常血液量の貧血症患者に投与する更に濃度の高い方法で、または出血を伴う血液量減少患者に投与する更に希釈された方法で、構成され得る。
【0109】
III.ナノ粒子含有血液代用組成物
本開示の更なる態様は、本開示のナノ粒子を含む血液代用組成物を包含する。典型的には、ナノ粒子は、インビボ、インビトロ、インサイチュまたはエクスビボの血液代用剤として使用するために、組成物として配合される。
【0110】
血液代用剤ナノ粒子は、ナノ粒子を任意の賦形剤及び好適な希釈剤と混合することによって配合され得る。希釈剤中のナノ粒子濃度は、用途に応じて変化し得る。好ましくは、ナノ粒子の濃度は、約4x10
12〜6x10
12ナノ粒子/mlであってよい。
【0111】
複数個のナノ粒子を含む組成物は、ナノ粒子含有凍結乾燥組成物などの乾燥粉末であってもよい。あるいは、複数個のナノ粒子含有組成物は、溶液、混合物または懸濁液であってもよい。懸濁液の非限定的例は、コロイドである。概して、コロイドは、容易に懸濁液が沈降することのない微細な微粒子の懸濁液である。乾燥粉末は、例えば凍結乾燥など、既知の技術に従って、ナノ粒子を形成してもよい。次に、ナノ粒子含有乾燥粉末は、水溶液と混合して、液体血液代用剤を作製することによって再構成され得る。
【0112】
組成物は、配合され、患者の血液の酸素運搬能力を
補充する幾つかの異なる手段によって、対象に投与されてもよい。このような組成物は、一般に、所望の場合、従来の無毒性医薬上許容可能な担体、アジュバント、賦形剤及びビヒクルを含む製剤を、血管内投与形態で投与され得る。
【0113】
注射用製剤、例えば、滅菌注射用水性懸濁液または油性懸濁液は、好適な分散剤または湿潤剤及び沈殿防止剤を用いて、周知の技術に従って調製され得る。また、滅菌注射用製剤は、無毒性非経口投与用希釈剤または溶媒の滅菌注射用溶液または懸濁液であってもよい。使用され得る許容可能なビヒクル及び溶媒は、水、リンガー溶液、乳酸リンガー溶液及び生理食塩液である。加えて、滅菌不揮発性油は、通常、溶媒または懸濁媒質として用いられる。この目的で、合成モノグリセリドまたは合成ジグリセリドなど、任意の無刺激不揮発性油を用いてもよい。加えて、脂肪酸、例えばオレイン酸は、注射用製剤に有用である。ジメチルアセトアミド、イオン性及び非イオン性洗剤などの界面活性剤、並びにポリエチレングリコールは使用可能である。例えば上述したものなど、溶媒混合物及び湿潤剤もまた有用である。
【0114】
IV.酸素運搬ナノ粒子の使用方法
本開示の別の態様は、本開示の両凹部形状酸素運搬ナノ粒子の使用方法を包含する。本質的には、酸素運搬ナノ粒子は、酸素を送達させることができる。したがって、酸素運搬ナノ粒子は、O
2レベルの迅速な回復、O
2レベルの上昇、または、O
2レベルの置き換えが臨床上指示される必要のある対象に酸素を運搬するために使用することができる。酸素運搬ナノ粒子は、対象の血液の酸素運搬能力を補充するため、血液を必要とする対象に処置するため、または患者において輸血を行うために使用することができる。典型的には、ナノ粒子は、セクションIIIに記載されているように、インビボ、インビトロ、インサイチュまたはエクスビボの組成物として配合される。
【0115】
ナノ粒子組成物は、酸素を生物学的組織に送達させるために、対象に投与されてもよい。好適な対象としては、これらに限定されるものではないが、哺乳類、両生類、爬虫類、鳥類及び魚類が挙げられる。好適な哺乳類としては、これらに限定されるものではないが、ヒト、ウマ、ネコ及びイヌが挙げられる。
【0116】
本明細書で使用するとき、生物学的組織は、細胞、器官、腫瘍若しくは細胞、臓器または腫瘍と関連している物質、例えば血餅を指す。好適な組織としては、これに限定されないが、心臓、肺、脳、眼、胃、脾臓、骨、膵臓、胆汁膀胱、腎臓、肝臓、腸、皮膚、子宮、膀胱、眼、リンパ節、血管、及び血液並びにリンパ構成要素を挙げることもできる。
【0117】
本開示の酸素運搬ナノ粒子を使用して酸素を送達する多数の設定により、以下などの使用を見出す:
【0118】
外傷。全血の急性損失は、間質空間及び細胞内空間からの体液の移動をもたらして、血液損失量と取って代わることができ、皮膚及び腸など優先度の低い器官から血液を迂回させる。器官からの血液を迂回させることにより、これらの器官では、O
2レベルが低下し、時には、O
2レベルが消失し、その結果、進行性組織死となる。
【0119】
虚血。虚血では、ある特定の器官(複数可)では酸素が「不足」している。梗塞として知られているが、O
2の欠乏により小器官のわずかな部分の死が始まる。O
2レベルの迅速な回復が重大な意味を持ち、決定組織において梗塞の形成が始まる。虚血となる状態としては、心臓発作、脳卒中または脳血管の外傷が挙げられる。
【0120】
血液希釈:この臨床応用では、手術前に除去される血液を置き換えるには、血液代用剤が必要とされる。患者の脱血が発生したときに、手術後の同種輸注の必要がなくなると考えられている。この用途において、血液代用剤を投与して、取り出した自家血液のO
2レベルに置き換える(または代用する)。これにより、手術中及び手術後の輸注に必要であるために取り出した自家血液の使用が可能になる。手術前の脱血を必ず伴うこうした手術の1つは、人工心肺手法である。
【0121】
敗血症性ショック。重篤な敗血症では、大量輸液療法及び血管収縮(vasocontrictor)薬による治療にもかかわらず、一部の患者は、高血圧性となり得る。この例では、一酸化窒素(NO)の過剰産生によって、血圧が最低値となる。このため、ヘモグロビンは、こうした患者の治療にとって、ほぼ理想的な薬剤である。これは、ヘモグロビンがO
2と類似している結合活性を有するNOと結合するためである。
【0122】
癌。腫瘤の低酸素内部コアへO
2を送達させることにより、放射線療法及び化学療法に対するその感度が増大する。腫瘍の微小血管系は、その他の組織のものとは異なるため、O
2レベルの上昇による増感には、低酸素コア内で無負荷であるO
2を必要とする。換言すれば、p50は、初期のO
2の無負荷を阻止するのに非常に低くなければならず、その後の放射線療法処置及び化学療法処置に対して、最適の腫瘍感度を確保するには、O
2レベルを上昇させる。
【0123】
慢性貧血。これらの患者では、損失または代謝されたヘモグロビンの置換は、損なわれるか、または完全に欠失する。血液代用剤は、患者において、効果的に還元O
2レベルを置き換えるか、または上昇させる必要があると考えられている。
【0124】
鎌状赤血球貧血。鎌状赤血球貧血では、患者は、鎌状化工程中に発生するO2レベルの低下並びに非常に高い赤血球代謝率によって衰弱する。鎌状化工程は、pO
2の関数であり、pO
2が低くなるほど、鎌状化率が高くなる。理想的な血液代用剤により、鎌状化が発生している間、患者のO
2レベルが正常範囲まで回復すると考えられている。
【0125】
心臓麻痺。ある心臓外科的処置では、適切な電解質(electrocyte)液及び患者温度の低下により心臓が停止する。任意の通常の生理学的条件下で、温度が低下すると、p50が有意に低下し、おそらくO
2の無負荷を阻止する。こうした処置の間、組織損傷及び組織死の低減の可能性があることから、O
2レベルの置き換えが考えられる。
【0126】
低酸素症。軍人、高地居住者及び極限条件下の超一流アスリートは、肺における空気からのO2の抽出が制限されるため、還元O
2レベルとなる場合もある。O
2抽出が制限されることにより、O
2輸送が更に制限される。血液代用剤は、このような各個人において、O
2レベルが置き換わるか、または上昇させられ得ると考えられている。
【0127】
臓器潅流。エクスビボにて臓器が維持される時間、O
2含量の維持は、構造及び細胞の完全性を保持し、かつ、梗塞の形成を最小限に抑えるために、必須である。血液代用剤により、このような臓器のO
2要件が持続されることになると考えられている。
【0128】
細胞培養。この要件では、O
2消費速度が更に速い点を除いて、臓器潅流と実質上同一である。
【0129】
造血。血液代用剤は、造血中、新規ヘモグロビンの合成に使用するためのヘム及び鉄供給源として機能すると考えられる。
【0130】
本開示は、非ヒトにおいても更に使用され得る。本開示の方法及び組成物は、飼育家畜、例えば食用家畜及びコンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、鳥、爬虫類)、並びに水族館、動物園、海洋水族館及び動物を収容する他の設備の他の動物と共に使用してもよい。本開示により、傷害、溶血性貧血などによる失血の認められる家畜及び野生動物の非常治療における有用性が明らかになると考えられている。例えば、本開示の実施形態は、馬伝染性貧血、ネコ感染性貧血、化学物質及び他の物理的因子による溶血性貧血、細菌感染、第IV因子染色体断片化、脾機能亢進症(hypersplenation)及び脾腫、家禽における出血症候群、再生不良性貧血、無形成性貧血、特発性免疫性溶血性状態、鉄欠乏、同種免疫溶血性貧血、細血管性溶血性貧血、寄生の病態において有用であると考えられている。特に、本開示により、供血する稀少動物及び/または外来種を見出すのは困難である領域での使用が明らかになる。
【0131】
定義
本明細書で使用するとき、用語「アロステリック調節因子」とは、酸素が酸素担体と結合するか、または酸素が酸素担体から放出される速度または量を調節する分子を意味する。
【0132】
本明細書で使用するとき、語句「ナノ粒子の外側」とは、ナノ粒子の外シェル及びナノ粒子シェルの外層と共有結合または非共有結合により付着している任意の構成成分(複数可)、若しくはナノ粒子シェルの外層内の任意の構成成分(複数可)を指す。例えば、ナノ粒子の外側は更に、任意の分子を含んでもよい。
【0133】
本明細書では、用語「ヘモグロビン」は、一般に、酸素を輸送する赤血球内に含まれてもよいタンパク質を指すために使用される。ヘモグロビンの各分子は、4つのサブユニット、2本のα鎖及び2本のβ鎖を有し、四量体構造内に配置されている。また、各サブユニットは、1つのヘム基を含有し、酸素と結合する鉄含有中心部である。したがって、各ヘモグロビンは、4つの酸素分子と結合することができる。用語「ヘモグロビン」は、天然または合成ヘモグロビンを指す。ヘモグロビンは、ヒトまたは動物から単離し精製されたものでよく、若しくは、化学合成技術及び組み換え技術によって作製されてもよい。
【0134】
本明細書で使用するとき、用語「ヘモグロビン非含有間質」とは、全ての赤血球膜が除去されるヘモグロビンを指す。
【0135】
本明細書で使用するとき、用語「血流力学パラメーター」は、血圧、血流及び血量状態を示す測定値、例えば、血圧、心拍出量、右心房圧及び左心室末端の拡張期圧などの測定値などを幅広く指す。
【0136】
本明細書で使用するとき、語句「ナノ粒子の内部」とは、ナノ粒子外側部ではないナノ粒子の任意の部分を指す。ナノ粒子
の内部は、ナノ粒子シェルの内層、ナノ粒子シェルの内層と外層との間の疎水性領域、水性コア部及びペイロードを含む。また、ナノ粒子の内
部は、任意の分子を含んでもよい。
【0137】
本明細書で使用するとき、用語「メトヘモグロビン」とは、第二鉄状態の鉄を含有し、酸素担体として機能することのできないヘモグロビンの酸化形態を示す。
【0138】
本明細書で使用するとき、用語「ペルフルオロカーボン」は、フッ素原子を含有し、完全にハロゲン(Br、F、Cl)及び炭素原子からなる合成不活性分子を指す。乳化形態では、ペルフルオロカーボンは、血漿または水の等価量よりも数倍多い酸素を溶解する能力を有するため、血液物質として発現している。
【0139】
用語「修飾ヘモグロビン」としては、これらに限定されないが、他の化学基(例えば、ポリアルキレンオキシド(例えば、ポリエチレングリコール)、又はタンパク質、ペプチド、炭化水素、合成ポリマーなどの他の付加物)との分子内架橋及び分子間架橋、遺伝子操作、重合、共役結合などの化学反応によって変化したヘモグロビンが挙げられる。本質的には、任意のその構造的性質または機能的性質が、その未修飾状態から変化している場合は、ヘモグロビンは、「修飾されている」。本明細書で使用するとき、用語「ヘモグロビン」自体は、未変性、未修飾ヘモグロビン並びに修飾ヘモグロビンをいずれも指す。
【0140】
用語「ナノ粒子」及び「酸素運搬ナノ粒子」は、本出願全体において同義に用いられる。
【0141】
用語「酸素親和性」とは、酸素担体、例えばヘモグロビンが分子酸素に結合する結合活性を示す。この特性は、ヘモグロビン分子と酸素(Y軸)の飽和程度と酸素分圧(X軸)との関連である酸素平衡点曲線によって定義される。この曲線の位置は、酸素分圧p50値(酸素担体の酸素が半分飽和状態である)によって表され、酸素親和性と逆相関の関係にある。従って、p50が低くなるほど、酸素親和性は高くなる。全血の酸素親和性(及び全血構成成分、例えば、赤血球及びヘモグロビンなど)は、当該技術分野において公知の種々の方法によって測定され得る(例えば、Winslow et al.,J.Biol.Chem.252(7):2331−37(1977)参照をされたい)。酸素親和性は、また、市販のHEMOX(登録商標)アナライザー(TCS Scientific Corporation,New Hope,Pa.)を使用して測定されてもよい(例えば、Vandegriff and Shrager in「Methods in Enzymology」(Everse et al.,編)232:460(1994)を参照されたい)。
【0142】
用語「酸素運搬能力」または単に「酸素能力」とは、酸素を運搬する血液代用剤の能力を意味するが、必ずしも酸素を送達する効率と相関があるものではない。ヘモグロビン1グラムは、酸素1.34ミリリットルに結合することが公知であることから、酸素運搬能力は、概して、ヘモグロビン濃度から求める。したがって、ヘモグロビン濃度(単位g/dl)に因子1.34を掛けると酸素能力となる(単位ml/dl)。ヘモグロビン濃度は、β−ヘモグロビン光度計(HemoCue,Inc.,Angelholm,Sweden)を使用するなど、任意の既知の方法によって測定され得る。同様に、酸素能力は、例えば、燃料電池器具(例えば、Lex−O2−Con;Lexington Instruments)を用いることによって、ヘモグロビンサンプルまたは血液サンプルからの酸素放出量によって測定され得る。
【0143】
用語「酸素運搬構成成分」は、幅広く、酸素を体内循環系に運搬することができ、かつ、その酸素の少なくとも一部を組織に送達することができる物質を指す。酸素運搬構成成分は、未修飾または修飾ヘモグロビンであってもよく、また、本明細書においては、「ヘモグロビン系酸素担体」または「HBOC」と称し得る。
【0144】
用語「ペイロード」とは、ナノ粒子内部に含まれる構成成分を意味する。ペイロードは、酸素運搬剤、調節因子及び還元剤を含む。ペイロードが、任意の分子を更に含んでもよい。
【0145】
用語「シェル」及び「二層状シェル」は、同義的に使用され、一般に、ナノ粒子のシェルを指す。シェルは、二層状であり、親水性の外層及び親水性の内層並びに層間の疎水性領域から構成される。
【0146】
本開示に詳細に記載されているように、添付の特許請求の範囲で定義される本開示の範囲を逸脱することなく、変更形態及び変形形態が可能であることは明かである。
【実施例】
【0147】
以下の実施例は、本開示を実証するために示す。以下実施例に開示されている技術は、本開示の実施において十分に機能することが本発明者によって見出された技術を示すことは、当該分野における当業者によって理解されるものとする。しかし、当該分野の当業者は、本開示を考慮すれば、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本開示において多くの変更がなされ、また、同様または類似の結果を得ることができ、このため、明らかになっているすべての事項は、制限するものではなく、例証として解釈されるものであることは、理解している。
【0148】
実施例1 ナノ粒子の調製
両凹型ナノ粒子の調製及び負荷は、すべて、参照によって、それらの全体が本明細書に組み込まれている、Pan et al.,2008 J Am Chem Soc 130:9186−9187、PCT出願番号PCT/US2008/079414及び米国公開番号2010/0297007にて記載されているとおりである。粒子の略図及びナノ粒子の調製は
図1に示す。
【0149】
ポリエチレンイミンポリマーは、疎水性アルキル基と共有結合手段によりグラフト重合させた。パルミチン酸は、カルボジイミドEDAC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)で活性化し、その後、ポリマーを付加して、遊離第一級アミン基の50%超を官能基化させる。両親媒性ポリマーは、ボルテックス後の有機溶媒中における粒径7〜10nmの単分子反転ミセル構造体であると想定される。
【0150】
ヘモグロビン、ヘモグロビンと2,3−DPGまたはヘモグロビン、2,3−DPG及びロイコメチレンブルーまたはロイコベンジルメチレンブルーは、ナノ粒子に負荷した。ナノ粒子は、ヘモグロビン、ヘモグロビンと2,3−DPGまたはヘモグロビン、2,3−DPG及びロイコメチレンブルーまたはロイコベンジルメチレンブルーを含有する溶液をナノ粒子の水溶性懸濁液に添加することによって負荷し、続いて、短時間振盪/旋回させる。
【0151】
ヘモグロビンは、呼気RBCから抽出され、精製されたヒトヘモグロビンであった。ヘモグロビンは、カルボキシヘモグロビン(HbCO)として安定化させ、イオン−交換クロマトグラフィーを介して精製し、限外濾過法を用いて、4.0g/dLに濃縮した。ナノ粒子の産生に使用したヘモグロビンの濃度は、10mg/mLであった。2,3−DPGの濃度は、10mg/mLであった。ロイコメチレンブルーまたはロイコベンジルメチレンブルーの濃度は、5mg/mLであった。ナノ粒子は、ナノ粒子1個当たり平均3488個のヘモグロビン分子を含んでいた。
【0152】
他の方法のなかでもTEM、DLS及びAFMによってナノ粒子径、形状及び形態を測定した。ナノ粒子は、再懸濁後、流体力学的径150〜180nmまたは173±10nm、多分散度0.26±0.01及びゼータ電位
約12±2m
Vであった。Pan D, Caruthers SD, Hu G, Senpan A, Scott MJ, Gaffney PJ, Wickline SA, Lanza GM.Ligand−directed nanobialys as theranostic agent for drug delivery and manganese−based magnetic resonance imaging of vascular targets.J Am Chem Soc. 2008;130:9186−9187に記載されているように、分析を行った。
【0153】
自己組織化後、Sulfo−EGS(エチレングリコールビス[スルホスクシンイミジルスクシネート]、PBS、pH8.5)を用いて、ヒドロキシルアミンと組み合わせて、5時間、37℃にて表面化学的架橋を行う。架橋
は、粒径及びゼータ電位(それぞれ、167±56nm、+7±2mV)
に対して限定的な影響を有する。
【0154】
実施例2 標識及び非標識ナノ粒子の酸素結合特性
ロイコベンジルメチレンブルーで標識され作製されたナノ粒子または非標識ナノ粒子は、水中で再懸濁され、酸素結合特性を特徴付けるために使用される。ナノ粒子は、概して、実施例1に記載されているように、産生した。得られた溶液は、全濃度5x10
12ナノ粒子/ml、及び糖化ヘモグロビン2g/lとした。
【0155】
Hemoxアナライザーを使用して、pH10、8、6及pH8.5にて、ナノ粒子の酸素結合解離の特徴付けを行った。測定値はすべて、37.3℃にて求めた。一般に、非標識粒子は、標識ナノ粒子よりも(
図2及び表1)低いpHにて、著しく高いp50値(酸素については低親和性)を示した。
【0156】
いずれのpH測定値においても、ナノ粒子のp50は、概して、ヒト血液のp50値よりもさらに低く、典型的には、26.6mmHG(これらの読取り値において53.2mmHg)である。概して、p50が低い場合には、酸素に関して、高い親和性を示す。標識ナノ粒子ではなく、非標識ナノ粒子については、ボーア効果(pHが低下するのに伴い、右側に移動する)が観察された。加えて、酸素結合解離曲線は、新たに調製されたナノ粒子及び約1ヶ月間保存した粒子を使用して測定した。要するに、より古いヘモグロビンにより、記録上更にノイズの多い酸素結合解離曲線(
図2)が作製される。
【表1】
【0157】
実施例3 実施例1のナノ粒子の性質
血液ガスアナライザーを用いて、O
2親和性及び可逆性結合の特徴付けを行った。P50(HbSO
2のO
2圧力=50%)は、ヒルのn(Iog[HbSO
2/(1−HbSO
2)]/logpO
2)に基づき、37℃にて、測定した。PO
2が720mmHgであり、pHが7.3であれば、HbSO
2は、99.99%であり[log[p0
2(7.4)]=2.807332496;1/k=3800.503808]、p50を算出すると、21.18mmHg(正常RBC、p50のHbA
0は、26.5mmHg及びHb
fは20.0mmHg)であった。
【0158】
NO除去及び不適切な血管収縮は、HBOCにとって問題であり、HBOC使用後、心臓血管の合併症が増加すると考えられている。予備的NO結合実験では、ナノ粒子の懸濁(室温、15分)を介して、NOガスの気泡を立てた。UV−Vis吸光度分析では、典型的には、次の除去が観察されるヘム付加化合物に対応するいずれのスペクトルピークも明らかにならなかった(Fe(II)NO、ピーク値、415、479、542、610nm)。
【0159】
予測される投与量によって血液粘度及び血行動態が変動するため、O
2担体の流動学的性質は非常に重要である。NZWラビット血漿中に懸濁後、ナノ粒子が血漿流動性に与える影響を調べ、血漿粘度への影響は制限されていることが明らかになった(
図3A)。懸濁液粘度のわずかな低減は、ナノ粒子の水媒体による血漿の希釈によるものであった。ナノ粒子組成物ごとに粘度の上昇が認められない点から、血漿タンパク質の存在下では、ナノ粒子が凝集せず、かつ、血漿の流動学的パラメーターに最小の影響を与えることが示唆される。
【0160】
ラットにおけるナノ粒子の薬物動態(pK)プロファイルは、放射線標識Hb(
99mTcトレーサー、照射量50μCi/kg)を取り込むことによって測定した。トレーサー活性は、連続して測定し、減衰を調整した(
図3B)。185に記載したとおり、PKパラメーターは、ルーチン非線形コンパートメントモデルによって測定した。標準2コンパートメントモデルでは、良好なフィットが得られ、分布t
1/2=26.2±3.6分、消失t
1/2=300±12分(R
2>0.96)であった。
【0161】
実施例4 O
2結合/放出特性に関するナノ粒子の最適化
ナノ粒子合成は、重症貧血症の状況において、組織低酸素症を軽減するために、必要に応じて、O
2送達能力及び反応速度論に関して、最適化されてもよい。実施例3に記載されているように、p50が21.18mmHgであるナノ粒子が産生された(HbAo(非糖化ヘモグロビン)のp50は、26.5であり;HbF(胎児性ヘモグロビン)は20.0mmHgである)。同様に、p50が20以下(高親和性、現在の製剤)、25(標準親和性)、及び30(低親和性)である剤形を有するナノ粒子を産生することもできる。
【0162】
例えば、Hb及び両親媒性ポリマー混合物は(2,3−DPG及びLMBによる前負荷/無負荷)リン酸緩衝液(PB)中、pH7.3[Hb]で自己組織化を行い、バッファ中、滴定して、異なる濃度、例えば、100、150、200、250及び300mg/mLにすることができる。ナノ粒子表面の化学的架橋では、ヒドロキシルアミンと組み合わされてSulfo−EGSを利用し(PBバッファ、pH8.5、5時間、37℃)、続いて、50mmPBに対して透析を行い、sulfo−EGS副産物を除去することができる。各ナノ粒子製剤の粒径、多分散度及びゼータ電位は、実施例3に記載されているように、評価することができる。
【0163】
O
2親和性の分析により、産生が明かになり得る。各ナノ粒子製剤に関して、温度、pCO
2及びpHの関数としてO
2解離曲線を求めることができ、また、Rogers SC,Said A,Corcuera D,McLaughlin D,Kell P,Doctor Aに記述されているように、洗浄し、Krebs bufferに再懸濁後、治験参加志願者から得られたヒト新鮮赤血球(RBC)値に関連付けることができる。低酸素症により、グリコール経路優先度の変更により、赤血球中での酸化防止剤能力が制限される。ヒト生理学において遭遇するガス圧の全範囲にわたるO
2解離及び関連するヒステリシス曲線は、Guarnone R, Centenara E, Barosi G. Performance characteristics of hemox−analyzer for assessment of the hemoglobin dissociation curve Haematologica. 1995;80:426−430に記載されているように、HEMOXアナライザーを用いて、測定することができ、Kobayashi M, Ishigaki K,Kobayashi M,Imai K.Shape of the haemoglobin−oxygen equilibrium curve and oxygen transport efficiency.Respir Physiol.1994;95:321−328 or Kobayashi M,Satoh G,Ishigaki K.Sigmoid shape of the oxygen equilibrium curve and the p50 of human hemoglobin.Experientia.1994;50:705−707に記載されているとおり、アデアの式に従って、p50及び協同性(ヒル)係数を求めることができる。Nanoparticle and RBC suspensions can be matched by equimolar [Hb]. Absolute [Hb] and Hb:2,3DPG molar ratios can be manipulated to create formulations with p50 (torr) of 〜 20 (high affinity), 25 (normal affinity), and 30 (low affinity) for efficacy testing. The efficacy of the 2,3−DPG shuttle/reservoir can be evaluated by determining the pH−dependent shift in p50 and, if needed, PEI inner shell amine availability can be varied to maximize p50 shift between pH 7.2 (tissue) and 7.8 (lung).
【0164】
また、こうしたナノ粒子の産生は、生理学的ガス圧全体にわたるO
2結合−放出を測定することによって明らかになってもよい。摘出−灌流マウス肺(IPL)は、理想的には、無処置の血管床において、生理学的に意味のある速度で潅流中の、ナノ粒子O
2負荷及び無負荷の反応速度の評価に適している。IPLは、Doctor A,Platt R,Sheram ML,Eischeid A,McMahon T,Maxey T,Doherty J,Axelrod M,Kline J,Gurka M,Gow A,Gaston B.Hemoglobin conformation couples erythrocytes−nitrosothiol content to O
2 gradients. Proceedings of the National Academy of Sciences.2005;102:5709−5714;Maxey TS, Enelow RI,Gaston B,Kron IL,Laubach VE,Doctor Aに記載されているようにして調製することができる。常在肺細胞の腫瘍壊死因子−αは、肺動脈虚血−再潅流傷害における主要開始因子である。J.Thorac.Cardiovasc.Surg.2004;127:541−547;またはZhao M,Fernandez LG,Doctor A,Sharma AK,Zarbock A,Tribble CG,Kron IL,Laubach VE。肺胞マクロファージ活性化は、急性肺虚血−再潅流傷害の主要反応開始シグナルである。AJP − Lung Cellular and Molecular Physiology.2006;291:L1018−L1026。ナノ粒子製剤または洗浄ヒトRBC懸濁液(Hbの等モル、2mM)は、肺循環時間2秒、4秒及び8秒で灌流することができ、次に、左心房の流出として回収した(空気曝露なく)。流出ガス圧及びHbO
2含有量を監視することができる(RapidLab840血液ガスアナライザー及びコ−オキシメータ、Siemens AG,GDR)。O
2負荷速度及び効率は、O
2、21%、CO
2、5%、N
2バランスにて換気を行ない、肺を介する脱酸素懸濁液の灌流によって求めることができ、O
2不負荷速度及び効率は、O
2%、CO
2、10%、N
2バランスにて換気を行ない、肺を介する酸素化懸濁液の灌流によって、求めることができる。P50が低い、正常及び高いナノ粒子の負荷/無負荷速度(上記のとおり)を求めることができ、また、pH、温度及びpCO
2の応答性について、ヒトRBCで得られた値と比較して、評価することができる。
【0165】
実施例5 MetHb形成速度の低下によるナノ粒子O
2送達の持続性
環状O
2負荷/非負荷間でのMet−ヘモグロビン(MetHb)の蓄積は、薄膜回転圧力計を用いて、生理学的バッファ(例えば、Kreb)またはヒト血漿の存在下において定量化し得る。MetHb産生の目標は、疑似循環を3時間行い、pO
2を120〜50Torrで循環させた後、10%を制限することであってもよい。本開示のナノ粒子は、還元剤を含み、還元剤対ヘモグロビンのモル比(例えば、約0.5〜約10Xの間のモル比)の変動は、metHbの増加に影響を及ぼす1つの手段である。サンプルは、0分、10分、30分、1時間、3時間に得ることができ、酸素化ヘモグロビン、還元ヘモグロビン及びmetHbの相対的割合を測定する(RapidLab 840血液ガスアナライザー及びコ−オキシメータ、Siemens AG,GDR)。
【0166】
実施例6 凍結乾燥形態での産生中及び長期保管中無菌ナノ粒子配合物の維持
滅菌産生物、凍結乾燥形態でのナノ粒子の持続性安定度、及びO
2結合/放出特性の再構成回復は、実証され得る。加えて、ナノ粒子の無菌濾過は、最適化されていてもよい。凍結乾燥し、4℃、25℃及び40℃で保管した後(12ヶ月以内)、ナノ粒子の機能性の回復(ベースラインから<10%の変化)を確認することができる。
【0167】
実施例7 ナノ粒子NOの隔離及び血管収縮の評価及び制限
本開示の酸素運搬ナノ粒子は、環状O
2負荷/無負荷全体にわたって、NO結合を最小にするために最適化されてもよい。ナノ粒子配合物の速度及び全NO消費量は、有効な一酸化窒素(NO)消費量アッセイを用いて、測定され得る。NOの隔離を正常RBCの10%以内に制限して、ヘモグロビンペイロード及びヘモグロビンの膜の特徴を変化させてもよい。O
2負荷/無負荷サイクル全体にわたって、最小の血管収縮となるように、ナノ粒子を最適化してもよい。これらの実験では、標準的血管輪アレイ(VRA)におけるNO隔離速度と血管収縮とを、いずれもO
2含量の関数として相関させ得る。任意のNO捕獲が生理学的に有意なレベル未満であることを確認するために、血管緊張の変化は、正常RBC値に対して基準点(10%以内)とし得る。
【0168】
この特徴を更に評価するために、様々なヘモグロビンパッキング及びシェル架橋(表2)により、ナノ粒子配合物を作製し、未修飾RBC及び遊離Hbと比較して、NO除去を定量化した。これらの実験結果(
図4〜7)は以下を示す。1)ナノ粒子配合物による全NO隔離は、RBC及び遊離Hbの全NO隔離未満であり、シェル特性及びHb充填密度(
図6)の関数ならば、さらに変化する。及び2)ナノ粒子配合物によるNO隔離速度は、主にシェル架橋の関数として変化し、未修飾RBCの速度未満に低下され得る(
図5及び
図7)。
【表2】
【0169】
実施例8 ナノ粒子のO
2送達有効性の測定
HIF−1αが安定化を示すことは、組織への不
十分なO
2送達のゴールドスタンダード
測定である。これを
達成するために、
新規の動的な動物
個体HIFレポーティングモデルを使用して、本開示の酸素運搬ナノ粒子
が、未修飾Hbの段階的低減中に組織へのO
2送達を維持する
能力を特定することができる。正常血液の希釈は、この分野において、急性外傷性失血及び急速輸液を促進するための1つの手段であり、この方法により、低血圧を制御し、血液O
2含量減少の交絡因子として、低潅流を消失させる。対象の主要転帰:1)生存;2)組織PO
2及び3)HIF(ODD)−ルシフェラーゼシグナル。HIF−α(ODD)ルシフェラーゼマウスにおける、全動物生物発光の定量化による急性貧血中のHIF発現/安定化及びその分解の非侵襲性監視方法が記述され、妥当性確認が行われた。例えば、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる、Safran M,Kim WY,O’Connell F,Flippin L,Gunzler V,Horner JW,Depinho RA,Kaelin WG,Jr.Mouse model for noninvasive imaging of hif prolyl hydroxylase activity:Assessment of an oral agent that stimulates erythropoietin production.Proc Natl Acad Sci U S A. 2006;103:105−110;またはTsui AK,Marsden PA,Mazer CD,Adamson SL,Henkelman RM,Ho JJ,Wilson DF,Heximer SP,Connelly KA,Bolz SS,Lidington D,El−Beheiry MH,Dattani ND,Chen KM,Hare GM.Priming of hypoxia−inducible factor by neuronal nitric oxide synthase is essential for adaptive responses to severe anemia.Proc Natl Acad Sci U S A.2011;108:17544−17549;を参照されたい。
【0170】
したがって、Hbの下降として、全身生物発光のリアルタイムでの段階的増大が観察され、複数の組織におけるHIFタンパク質レベル(Western)とHIF依存性RNA発現とのペア評価により、HIFシグナル伝達の非侵襲性インビボ評価を確認する(
図8)。このモデルでは、貧血誘発後6時間ほどで、HIF−ルシフェラーゼ発現が増大し、24時間までの時点でピークが発現し、かつ、Hbレベル及びpO
2の急性低下に比例する。[Hb]は、7日を超えて生理学的メカニズム(内因性エリスロポエチン)により回復し、HIFレベルは、ベースラインに戻る(
図8E)。低酸素曝露は、本モデルにおけるHIF発現の陽性対照としての機能を果たす。
【0171】
HIF−α(ODD)ルシフェラーゼマウスモデルを使用し、未修飾[Hb]の低減後、組織へのO
2送達を回復させるための、残部組織への酸素運搬ナノ粒子の能力の特徴付けを行ってもよい。ナノ粒子(正規化全ヘモグロビン)またはペンタスターチ(正常血液量貧血、対照)を用いて、交換輸血を実施し、インビボ生物発光イメージング及び組織オキシフォア(oxyphor)クエンチによって、O
2送達+/−低酸素ストレスを調べてもよい。別の血液希釈群では、ヘモグロビンは、再注入群マウスRBCによって正規化し、標準HIF-ルシフェラーゼ及びオキシフォア活性を構築してもよく、ナノ粒子クエンチは、再注入マウスRBCによって得られる10%以内であってもよい。ナノ粒子の薬物動態(PK)も測定され得る。ナノ粒子は、
99mTcによって標識し、上記のように投与されてもよい。活性は、連続して測定してもよく、また、PKパラメーターを算出してもよい。HIF-ルシフェラーゼ及びオキシフォアクエンチを用いて、有効性持続時間に適合する循環時間で、3時間の時点で、75%保持されていることが予測され得る。
【0172】
実施例9 げっ歯類出血性ショックモデルにおけるナノ粒子の有効性評価
ポリエチレンイミンポリマーは、疎水性アルキル基と共有結合手段によりグラフト重合させた。パルミチン酸は、カルボジイミドEDAC(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)で活性化し、その後、ポリマーを添加して、遊離第一級アミン基の50%を超える官能基化及び第二級アミン基の部分的官能基化を達成した。両親媒性ポリマーは、無水クロロホルム中に分散させ、2〜5分間緩やかにボルテックスした。この構成物の流体力学的径測定値により、7〜10nmサイズの単分子反転ミセル(IM)構造体の形成を確認する。
【0173】
濃縮され、精製されたヘモグロビン及び2,3−DPG混合物及びメチレンブルーは、水性媒体に懸濁し、IMの有機溶媒混合物に添加した。この二相性混合物は、すべてのペイロードがIM含有有機層に移行するまで、数回、沈降させ、反転させた。短時間の振盪/旋回及び転化または組み合わせ方法により、移行が行われ得る。ヘモグロビンは、呼気RBCから抽出され、精製されたヒトヘモグロビンであった。ヘモグロビンは、カルボキシヘモグロビン(HbCO)として安定化させ、イオン−交換クロマトグラフィーを介して精製し、限外濾過法を用いて、4.0g/dLに濃縮した。ナノ粒子の産生に使用されるヘモグロビン濃度は、10mg/mLであった。2,3−DPGの濃度は、10mg/mLであった。ロイコメチレンブルーの濃度は、5mg/mLであった。ペイロード含有IMを、長首形ガラス管に移し、同量のnanopure water(0.2uM)を添加した。混合物を1〜2分間、簡単に超音波処理し、逆相溶剤蒸発プロトコール後、減圧下にて有機溶媒をゆっくり蒸発させた。有機溶剤の除去は、持続的回転蒸発及び透析によって確認した。典型的な調製では、ナノ粒子は、ナノ粒子1個当たり、平均4000個のヘモグロビン分子を含んでいた。自己組織化し、逆相溶剤の蒸発後、ナノ粒子には、Sulfo−EGS(エチレングリコールビス[スルホスクシンイミジルスクシネート]、PBS、pH8.5)を用いて、ヒドロキシルアミンと組み合わせて、5時間、37℃にて表面化学的架橋を行った。分子内架橋工程では、いずれの化学架橋剤も使用していない。他の方法のなかでもTEM、DLS及びAFMによってナノ粒子径、形状及び形態を測定した。ナノ粒子は、再懸濁後、流体力学的径150〜180nmまたは173±10nm、多分散度0.26±0.01及びゼータ電位12±2mV以下であった。架橋により、粒径及びゼータ電位へ影響が制限されている(それぞれ、167±56nm、+7±2mV)。アッセイは、Pan D,Caruthers SD,Hu G, Senpan A,Scott MJ,Gaffney PJ,Wickline SA,Lanza GM. Ligand−directed nanobialys as theranostic agent for drug delivery and manganese−based magnetic resonance imaging of vascular targets.J Am Chem Soc.2008;130:9186−9187に記載されているとおり、実施した。
【0174】
実施例10 げっ歯類出血性ショックモデルにおけるナノ粒子の有効性評価
げっ歯類出血性ショックモデルにおけるナノ粒子の有効性を評価した。ナノ粒子は、実施例9に記載されているように産生した。ラット(Sprague Dawley,400g,N=3)は、麻酔下(イソフルラン)にて、人工換気施設にて気管切開(RA)を行い、頚静脈及び大腿静脈並びに頚動脈及び大腿動脈のカニューレーションを行った。血液O
2含量及びAVO
2差のベースライン値を制定後、血液量の25%を脱血し、新しい値を得て、等量の血液代用剤(N=2)または標準生理食塩水(N=1)でラットを蘇生した。ナノ粒子(NP)を懸濁液[Hb]4mMで40wt/vol%にて懸濁した。
図9に実験結果を示す。プロット
は、血を抜いたことで予期されるAVO2差の著明な増大(24%
から67%へ上昇)
が、(A)生理食塩水で蘇生した後
は持続し
、(B)血液代用剤で蘇生した後
は解消した(67%
から31%
へ正常化)
ことを示す。(C)では、いずれかの蘇生流体によ
る血行力学的効果
に差は、観察されず、これは、血液代用剤のO
2送達における有益性は、血圧の回復に加えて改善されたO
2含量から生じていることが示唆される。さらに、NO隔離により、血管収縮及び高血圧を引き起こすことが知られている他のヘモグロビン系血液代用剤とは異なり、NP系血液代用剤により、
正常血行動態を再構築した。これにより、NPが有意なNO隔離を生じさせることはないことを示すインビトロデータが更に裏付けられる。