(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
充填材料に珪酸塩の結合剤を添加するステップは、珪酸塩の結合剤の水溶液を添加して、充填材料と珪酸塩の結合剤の混合物を形成するステップを含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
エンドプレートを準備するステップは、開口部を含むエンドプレートを準備するステップを含み、エンドプレートと端子ブレードを結合するステップは、端部ブレードの端部を該開口部に通すステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
エンドプレートを準備するステップは、スロット部を含むエンドプレートを準備するステップを含み、エンドプレートと端子ブレードを結合するステップは、端子ブレードの端部をスロット部内に挿入するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0007】
電動車両技術の最近の進歩によって、特に、ヒューズ製造業者に対して固有の課題が提示されている。電動車両の製造業者は、従来の車両用配電システムよりも大幅に高い電圧で作動する配電システムのための可融回路保護を求めると同時に、一方では、電動車両の仕様及び要求を満足するような、より小型のヒューズを求めている。
【0008】
従来の内燃機関動力付き車両の電力システムは、比較的低い電圧(典型的には、約48VDC、またはこれよりも低い電圧)で動作する。しかしながら、電気動力付き車両(本明細書では、電動車両(electric vehicle: EV)という)は、大幅に高い電圧で作動する。EVの比較的高電圧(例えば、200VDC、またはこれよりも高い電圧)のシステムによれば、一般に、内燃機関で使用される12ボルトまたは24ボルトでエネルギーを蓄える従来の電池、及び最近の48ボルトの電力システムよりも、電池が電源から蓄えるエネルギーが増大し、また、車両の電動機に対して供給するエネルギーが増大し、その際の損失(例えば、熱損失)が低減する。
【0009】
EVの製造業者は、完全電動車両(BEV)、ハイブリット電動車両(HEV)、及びプラグインハイブリッド電動車両(PHEV)中の電気負荷を保護するために、回路保護ヒューズを採用している。EVの製造業者は、各種のEVについて、総保有コストを低減しながら、EVの充電走行距離範囲を最大化しようとしている。これらの目的を達成するために、EVシステムのエネルギー貯蔵及び配電に加えて、電力システムによって保持される車両部品の大きさ、体積、及び質量に関心が寄せられている。車両が小型化及び/または軽量化すれば、大きくかつ重い車両よりも有効にこれらの要求を満足する。したがって、現在、全てのEVの部品は、可能な大きさ、重さ、及びコスト削減について、詳細に調べられている。
【0010】
一般的に、部品が大きくなれば、関連する材料コストは高騰し、また、EVの全体的な大きさが増大するか、または縮小する車両容積中で過度に大きな空間を占め、そして、車両の1回の充電当たりの走行距離を直接低下させる質量の増大がもたらされる傾向にある。しかしながら、既知の高圧回路保護ヒューズは、比較的大きくかつ比較的重い部品である。歴史的かつ正当な理由で、回路保護ヒューズは、低圧システムとは対照的に、高圧電力システムの要求を満足するため、大きさが増大する傾向にあった。したがって、EVの高圧電力システムを保護するために必要とされる既存のヒューズは、従来の内燃機関動力付き車両の低圧電力システムを保護するために必要とされる既存のヒューズよりも、はるかに大きい。回路保護性能を犠牲にすることなくEVの製造業者の要求を満足する、小型かつ軽量の高圧電力ヒューズが望まれている。
【0011】
最先端のEVの電力システムは、450VDCにまで達する電圧で作動する場合がある。望ましいことに、電力システムの電圧を上昇させることによって、EVに供給される単位充電当たりの電力が増大する。しかしながら、このような高圧電力システムにおける電気ヒューズの作動条件は、低圧システムの場合よりもはるかに厳しい。特に、ヒューズが開くときのアーク放電条件に関連する仕様は、特に電気ヒューズの大きさの縮小という産業上の選好と合わせた場合、高圧電力システムに対して満足させることが特に困難である。最先端のEVの高圧回路中でEVの製造業者が使用するための既知の電力ヒューズは、現在入手可能ではあるものの、EVの高圧電力システムの要求を満足させることができる従来の電力ヒューズの大きさ、重量、及び、言うまでもなくコストは、新規のEVへの装備用として現実的ではないほど大きすぎるものである。
【0012】
ヒューズ要素が高電圧で作動する際に許容可能な遮断性能を提供しながら、最先端のEVの電力システムの高い電流及び電池電圧に対処可能な比較的小型の電力ヒューズを提供することは、控えめに言っても、困難な課題である。ヒューズの小型化、軽量化、及び低コスト化は、ヒューズの製造業者及びEVの製造業者のそれぞれにとって有利なものであろう。EVの技術革新が、ヒューズの小型化、高圧化が要求される市場を先導する一方、より小型であって、しかしより強力な電気システムへの趨勢は、EVの市場に勝っている。様々な他の電力システムへの応用においても、小型でありながら、従来製造されている大型のヒューズに匹敵する性能を有するヒューズは、疑う余地なく有利なものである。当該技術分野において、長期にわたり満たされていない要求に対して、改善が必要とされている。
【0013】
以下に記載された電気回路保護ヒューズの例示的な実施形態は、これらの課題及び他の課題に取り組むものである。例示的な実施形態におけるヒューズは、既知の高圧電力ヒューズと比べて、有利なことに、比較的小型の物理的パッケージサイズを提供し、それによって、EV中に占める物理的容積または空間の削減を提供する。また、例示的な実施形態におけるヒューズは、既知のヒューズと比べて、有利なことに、高い耐電力特性、高い電圧での動作、全範囲型の時間−電流動作、低い短絡通過エネルギー特性、長い動作寿命、及び信頼性を提供する。以下に説明するように、例示的な実施形態におけるヒューズは、非常に高い限流性能だけでなく、長い耐用寿命及び不要動作または未熟動作に対する高い信頼性も提供するように設計及び企図されている。方法の態様については、一部は明示的に説明されるが、一部は以下の説明から明らかである。
【0014】
EVへの応用及び以下に説明する特定の定格を有する特定の種類のヒューズに関連させて説明されていても、本発明の利点は、EVへの応用、または、説明される特定の種類のヒューズもしくは定格に、必ずしも限定されない。むしろ、本発明の利点は、様々な電力システムへの応用に対してより広範に生じると考えられる。また、本発明の利点は、本明細書で説明されるものと同様のまたは異なる定格を有する様々な種類のヒューズを構築するために、部分的にまたは全体的に、実施することも可能である。
【0015】
図1には、既知の電力ヒューズ100が示されており、
図2には、本発明の例示的な一実施形態に従って構成された電力ヒューズ200が示されている。図示の例における電力ヒューズ100は、既知のULクラスJヒューズであり、従来の方式で構築されている。
【0016】
図1に示すように、電力ヒューズ100は、ハウジング102、ライン側回路及び負荷側回路に接続するように構成された端子ブレード104、106、並びに、ヒューズ要素アセンブリ(
図1への図示は省略する)を含む。ヒューズ要素アセンブリは、端子ブレード104、106の間の電気的接続を確立する1つまたは複数のヒューズ要素を含む。既定の電流条件にさらされたとき、1つまたは複数のヒューズ要素が、融解、分解、または、そうでなければ構造的に破綻し、端子ブレード104、106の間で、1つまたは複数のヒューズ要素を通じた回路経路が開くことになる。これによって、負荷側回路は、1つまたは複数のヒューズ要素の動作によってライン側回路から電気的に分離され、電気的故障条件が発生したときに、負荷側の回路部品及び回路が損傷から保護される。
【0017】
図2に示すように、本発明に係る電力ヒューズ200は、ハウジング202、ライン側回路及び負荷側回路に接続するように構成された端子ブレード204、206、及び(
図4〜
図8に示されている)ヒューズ要素アセンブリ208を含む。ヒューズ要素アセンブリ208は、端子ブレード204、206の間の電気的接続を確立する。既定の電流条件にさらされたとき、ヒューズ要素208の少なくとも一部が、融解、分解、または、そうでなければ構造的に破綻し、端子ブレード204、206の間で回路経路が開くことになる。これによって、負荷側回路は、1つまたは複数のヒューズ要素の動作によってライン側回路から電気的に分離され、電気的故障条件が発生したときに、負荷側の回路部品及び回路が損傷から保護される。
【0018】
ヒューズ100とヒューズ200の両方は、500VDCの電圧定格及び150Aの電流定格を備えるように設計されている。しかしながら、ヒューズ100とヒューズ200の寸法は、次の表1に示すように、全く異なるものである。表1において、L
Hは、ヒューズのハウジングの対向する両端の間の軸方向長さ、R
Hは、ヒューズのハウジングの外半径、L
Tは、ハウジングの対向する両端における互いに反対側の2つの端子ブレードの先端の間で測定される、ヒューズの全長である。
【0020】
表1から、電力ヒューズ200では、ヒューズ100に対して、表にまとめられた各寸法において全体的に約50%のサイズの縮小が見られることが分かる。表1には示されていないが、ヒューズ200の体積は、ヒューズ100の体積から約87%低減している。このように、ヒューズ200は、ヒューズ100に匹敵する保護性能を提供しながら、サイズ及び体積の低減を提供するものである。さらに、ヒューズ200のサイズ及び体積の低減は、ヒューズ100と比べて、その構築に使用される材料が低減することによって、重量及びコスト節減にも寄与する。したがって、その寸法が縮小されていることから、ヒューズ200は、EVの電力システムへの応用のために非常に好ましいものである。サイズ及び体積の低減を可能にするヒューズ200の設計及び製作については、以下に詳細に説明される。
【0021】
図3と
図4は、例示的な電力ヒューズ200の同様の図である。但し、
図4では、内部構成を可視化するために、ハウジング202の一部が透明に示されている。
【0022】
1つの例示的な実施形態において、ハウジング202は、メラミンガラスなどの当該技術分野において既知の非導電材料から作製される。代わりに、所望の場合、他の実施形態において、ハウジング202用として好適な他の既知の材料を使用することもできる。さらに、図示された例示的な実施形態において、図示されたハウジング202は、全体的に円筒形状または管状であり、軸方向長さ寸法L
H及びL
T(
図2)に直交する軸に沿って略円形の断面を有する。但し、所望の場合、ハウジング202は、別の形状に形成されるものであってもよい。別の形状には、互いに直交するように配置された4つの側壁を有し、したがって長方形または四角形の断面を有する四角形状が含まれるが、これに限定されるものではない。図示されたハウジング202は、第1の端部210、第2の端部212、及び、対向する両方の端部210、212の間の内部穴または通路を含んでいる。この内部穴または通路は、ヒューズ要素アセンブリ208(
図4)を受け入れて収容する。
【0023】
幾つかの実施形態において、所望の場合、ハウジング202は、導電材料から作製されるものであってもよい。但し、この場合、端子ブレード204、206をハウジング202から絶縁するために、絶縁ガスケット等が必要となる。
【0024】
端子ブレード204、206のそれぞれは、ハウジング202の対向する端部210、212のそれぞれから互いに反対の方向に、略共面関係を有して延びるように配置されている。考慮されている実施形態において、端子ブレード204、206のそれぞれは、銅または真鍮のような導電材料から作製することができる。代わりに、所望の場合、他の実施形態において、他の既知の導電材料を使用して端子ブレード204、206を形成するものであってもよい。端子ブレード204、206のそれぞれは、
図3に示すように、開口部214、216を備えるように形成される。この開口部214、216は、ヒューズ200をEV中の定位置に固定し、端子ブレード204、206を介したライン側回路及び負荷側回路の回路導電体への接続を確立するために、ボルト(図示は省略する)のような締結具を受け入れるものであってもよい。
【0025】
ヒューズ200用として、端子ブレード204、206の例が図示及び説明されるが、さらなる及び/または別の実施形態において、他の端子構造及び端子配置を同様に使用することもできる。例えば、幾つかの実施形態において、開口部214、216の装備は、任意選択で検討されるものであってもよく、省略可能なものであってもよい。様々な種類の端子の選択肢を提供するために、図示された端子ブレードの代わりにナイフブレード型接点を備えるものであってもよく、また、当業者には理解されるように、フェルール端子またはエンドキャップを備えるものであってもよい。端子ブレード204、206は、所望の場合、間隙を介して略平行な方向に配置されるものであってもよい。また、端子ブレード204、206は、図示された位置とは異なる位置において、ハウジング202から突出するものであってもよい。
【0026】
図4〜
図6は、ハウジングの透明に示された部分を通じて様々な視点からヒューズ要素アセンブリ208が見えるように示した様々な図である。ヒューズ要素アセンブリ208は、第1のヒューズ要素218及び第2のヒューズ要素220を含む。各ヒューズ要素は、それぞれエンドプレート226、228に備えられた端子接点ブロック222、224に接続する。ブロック222、224を含むエンドプレート226、228は、銅、真鍮、または亜鉛のような導電材料から作製される。但し、他の導電材料が知られており、他の実施形態において、これらの他の導電材料を同様に使用することができる。ヒューズ要素218、220と端子接点ブロック222、224との機械的及び電気的な接続は、既知の技術を使用して確立することができる。この既知の技術には、半田付け技術が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0027】
様々な実施形態において、エンドプレート226、228は、端子ブレード204、206を含むように形成されるものであってもよく、あるいは、端子ブレード204、206は、別個に準備されて取付けられるものであってもよい。幾つかの実施形態において、エンドプレート226、228の装備は、任意選択で検討されるものであってもよく、ヒューズ要素アセンブリ208と端子ブレード204、206との間の接続は、別の手段によって確立されるものであってもよい。
【0028】
エンドプレート226、228をハウジング202に対して定位置に固定するための幾つかの固定ピン230も示されている。一例として、固定ピン230は、鉄製であってもよい。但し、他の材料が知られており、所望の場合、この他の材料を使用することができる。幾つかの実施形態において、固定ピン230の装備は、任意選択で検討されるものであってもよく、固定ピンを省略して他の機械的連結構造を使用するものであってもよい。
【0029】
ヒューズ要素アセンブリ208は、消弧用充填媒質または材料232に取り囲まれている。充填材料232は、エンドプレート226、228のうちの1つの、1つまたは複数の充填用開口部を通じて、ハウジング202に導入されるものであってもよい。充填用開口部は、プラグ234でシールされる(
図4)。様々な実施形態において、プラグ234は、鉄、プラスチック、または他の材料から作製されるものであってもよい。他の実施形態において、1つまたは複数の充填用穴部は、他の位置に設けられるものであってもよい。この他の位置には、充填材料232の導入を容易にするためのハウジング202が含まれるが、これに限定されるものではない。
【0030】
考慮される一実施形態において、充填媒質232は、珪砂と、珪酸ナトリウムの結合剤とからなる。珪砂は、緩く固めた状態でも比較的高い熱の伝導性と吸収能力を有しているが、珪酸塩を添加することによって特性を向上せることができる。例えば、珪酸ナトリウム溶液を添加し、次いで遊離水を蒸発させることによって、次のような利点を備える珪酸塩添加充填材料232を得ることができる。
【0031】
珪酸塩添加材料232では、珪酸ナトリウムの、ヒューズ要素218、220、珪砂、ヒューズハウジング202、エンドプレート226、228、及び端子接点ブロック222、224への熱伝導性の結合が形成される。この熱結合によって、ヒューズ要素218、22から、その周囲、回路インターフェース、及び導電体への熱伝導性が向上する。珪砂に珪酸ナトリウムを添加することによって、ヒューズ要素218、220から熱エネルギーを外部へ逃がすように伝導することが促進される。
【0032】
珪酸ナトリウムは、硅砂をヒューズ要素、端子、及びハウジングチューブに機械的に結合し、これらの材料の間の熱伝導性を増大させる。従来、硅砂のみを含む充填材料は、ヒューズ中のヒューズ要素の導電部分と点接触するものである。一方、充填材料232の珪酸塩添加硅砂は、ヒューズ要素に機械的に結合される。したがって、珪酸塩添加充填材料232によって、はるかに効果的かつ効率的な熱伝導が可能となる。これは、既知のヒューズに匹敵する性能を提供しながら、ヒューズ200の既知のヒューズに対する大幅なサイズの低減が促進される理由の一部となる。既知のヒューズは、ヒューズ100(
図1)を含むが、これに限定されるものではない。
【0033】
図7には、ヒューズ要素アセンブリ208がさらに詳細に示されている。電力ヒューズ200は、アセンブリ208におけるヒューズ要素の設計の特徴のため、より高いシステム電圧で動作することができる。これによって、ヒューズ200のサイズの低減がさらに促進される。
【0034】
図7に示すように、それぞれのヒューズ要素218、220は、全体的に、導電材料の帯状片から、斜行部分242、244によって連結された一連の共面部分(一平面を共有する平面部分)240として形成されている。ヒューズ要素218とヒューズ要素220は、全体的に、実質的に同一の形状に形成され、アセンブリ208中で互いに反転している。すなわち、この実施形態において、図示されたヒューズ要素218とヒューズ要素220は、互いに鏡像となるように構成配置される。言い換えれば、ヒューズ要素218、220のうちの一方は、表を上にするように向き付けられ、一方、他方は逆さまに向き付けられている。この結果、相当に小型で省スペース型の構成が実現される。ヒューズ要素の特定の形状および配置が図示されているが、他の実施形態において、他の種類のヒューズ要素、ヒューズ要素の形状、及びヒューズ要素の配置が可能である。ヒューズ要素218とヒューズ要素220は、全ての実施形態において互いに同一の形状である必要があるわけではない。さらに、幾つかの実施形態において、単一のヒューズ要素が使用されるものであってもよい。
【0035】
図示された例示的なヒューズ要素218、220において、斜行部分242、244は、共面部分240から形成される、または面外に曲げられる。斜行部分242は、斜行部分244と同等の対向する傾斜を有する。すなわち、図示された例において、一方の斜行部分242は、正の傾斜を有し、他方の斜行部分244は、負の傾斜を有する。斜行部分242、244は、図示されるように、共面部分240の間に一対で配置される。ヒューズ要素218、220の対向する端部のそれぞれには、終端タブ246が示されており、これによって、上述したように、エンドプレート226、228への電気的接続を確立することができる。
【0036】
例示された例において、共面部分240には、断面積が縮小された複数の領域が形成される。この領域は、当技術分野において、脆弱点と呼ばれる。図示の例において、脆弱点は、共面部分240中の丸い開口部によって形成される。脆弱点は、共面部分240の隣接する開口部の間の最も細い部分に相当する。ヒューズ要素218、220を通じて電流が流れると、脆弱点における断面積が縮小された領域に熱が集中する。脆弱点における断面積が縮小された領域は、特定の電流条件が発生した場合、ヒューズ要素218、220が脆弱点の位置において開くように戦略的に選択される。
【0037】
複数の共面部分240と、それぞれの共面部分240に設けられた複数の脆弱点によって、ヒューズ要素が動作する際のアーク放電の分割が促進される。図示された例では、ヒューズ要素218、220は、1箇所ではなく、3つの共面部分240に対応する3箇所で同時に開く。図示された例に従えば、450VDCシステムにおいて、ヒューズ要素が動作してヒューズ200を介して回路が開くとき、共面部分240の3箇所にわたってアーク放電が分割され、それぞれの位置におけるアーク放電は、450VDCではなく、150VDCのアーク電圧を有することになる。さらに、各共面部分240に設けられた複数の脆弱点は、アーク放電を複数の脆弱点に効果的に分割する。アーク放電の分割によって、充填材料232の量を低減するとともにハウジング202の半径を低減することが可能となり、これによって、ヒューズ200のサイズを低減することができる。
【0038】
共面部分240の間の曲げられた斜行部分242、244は、アークバーンが発生する平坦な長さを依然として備えるものであるが、斜行部分242と斜行部分244が交差する角部においてアーク放電が結合する可能性を回避するために、曲げ角度を注意深く選択する必要がある。また、曲げられた斜行部分242、244によって、終端タブ246の先端部の間で測定される、共面部分240と平行な方向のヒューズ要素アセンブリ208の長さが、実際上短縮される。この有効長の短縮によって、仮にヒューズ要素が曲げられた斜行部分242、244を含まない場合には必要とされる、ヒューズ200のハウジングの軸方向長さが短縮される。また、曲げられた斜行部分242、244によって、製造疲労及び使用中の電流循環動作による熱膨張疲労からの応力緩和も達成される。
【0039】
このような高耐電力と高圧動作の観点を備えた小型のヒューズパッケージを維持するために、充填材料232における珪酸塩添加珪砂の使用及び上述したように形成されたヒューズ要素の形状のほかに、特別な要素の処理を適用しなければならない。特に、RTVシリコーンまたはUV硬化型シリコーンのようなアーク阻止材料またはアーク障壁材料250が、ヒューズ要素218、220の終端タブ246の近くに付着される。二酸化珪素(シリカ)を最高のパーセンテージで生じさせるシリコーンは、アークバーンが終端タブ246の近くに戻ることを阻止または軽減することにおいて、最高の性能を有することが分かった。終端タブ246におけるどんなアーク放電も望ましくない。したがって、アーク阻止材料またはアーク障壁材料250が、アーク放電が終端タブ246に到達することが防止されるような位置に、ヒューズ要素の218、220の全断面を完全に取り囲んで配置される。
【0040】
図8に示すように、2つのヒューズ要素の融解機構を採用することによって、全範囲型の時間−電流動作が達成される。1つの機構は、高電流動作(または、短絡故障)用であり、1つの機構は、低電流動作(または、過負荷故障)用である。このため、ヒューズ要素218は短絡ヒューズ要素とも呼ばれ、ヒューズ要素220は過負荷ヒューズ要素とも呼ばれる。
【0041】
過負荷ヒューズ要素220は、この例では銅(Cu)から製造されたヒューズ要素に対して純錫(Sn)を付着させた、M効果(Metcalf 効果)コーティング252を含む。M効果コ
ーティングは、共面部分240のうちの1つの脆弱点の近くに延びる。過負荷による加熱の間、Sn及びCuは共に拡散して共晶材料の形成に向かう。この結果、融解温度が、Cuの融解温度とSnの融解温度の間の温度、または、考慮されている実施形態では約400℃に低下する。これによって、過負荷ヒューズ要素220及びM効果コーティング252を含む共面部分240は、短絡ヒューズ要素218には影響を及ぼさない電流条件に応答する。M効果コーティング252は、過負荷ヒューズ要素220の3つの共面部分240のうちの唯一つの共面部分の約半分に付着されているが、所望の場合、M効果コーティングを追加の共面部分240に付着させるものであってもよい。さらに、別の実施形態において、M効果コーティングは、
図8に示すような広い範囲のコーティングとは反対に、脆弱点の位置のみにスポット状に付着させるものであってもよい。
【0042】
短絡通過エネルギーの低減は、短絡ヒューズ要素218におけるヒューズ要素の融解断面積を低減することによって達成される。これは、通常、追加される抵抗及び熱のため定格電流容量が低下することによって、ヒューズの定格に悪影響を及ぼす。珪酸塩添加硅砂の充填材料232は、ヒューズ要素218から熱をより効果的に除去するものであるため、それがなければ生じたような電流容量の損失が補償される。ヒューズ要素200の限流作用の例は、
図9に示されている。
【0043】
図10には、EVの電力システムへの応用において、ヒューズ200が負荷電流循環疲労を受け易くなる運転曲線の例が示されている。より詳しくは、主としてヒューズ200が運転曲線に耐えるときのクリープ応力のため、ヒューズ要素の脆弱点中に熱機械的応力が発生する。ヒューズ要素の脆弱点中に発生する熱が、機械的歪の発生をもたらす主要な機構である。しかしながら、硅砂への珪酸ナトリウムの添加は、ヒューズ要素の脆弱点から逃げる熱エネルギーの伝導に役立ち、機械的な応力及び歪を低減して、それがなければ生じたような負荷電流循環疲労を軽減する。珪酸ナトリウムは、硅砂をヒューズ要素、端子、及びハウジングに機械的に結合し、これらの要素間の熱伝導を増大させる。脆弱点で発生する熱が低減すると、それに応じて機械的歪の発生が遅れる。
【0044】
図11は、500VDCの定格電圧と150Aの定格電流を備えるように製造された第1バージョンのヒューズ200を示す図である。
図11に示すように、このヒューズは、13.33cm
3の体積と、本明細書では単位体積当たりのヒューズ電流(150A/13.33cm
3)または11.25A/cm
3として定義された電力密度を有する。
【0045】
図12は、500VDCの定格電圧と250Aの定格電流を備えるように製造された第2バージョンのヒューズ200を示す図である。
図12に示すように、定格許容電流の増大によって、
図11に示すヒューズよりも大きなヒューズとする必要がある。このヒューズは、26.86cm
3の体積と、250A/26.86cm
3または9.308A/cm
3の電力密度を有する。
【0046】
図13は、500VDCの定格電圧と400Aの定格電流を備えるように製造された第3バージョンのヒューズ200を示す図である。
図13に示すように、定格許容電流の増大によって、
図12に示すヒューズよりも大きなヒューズとする必要がある。このヒューズは、39.85cm
3の体積と、400A/39.85cm
3または10.04A/cm
3の電力密度を有する。
【0047】
定格電流に関わらず、ヒューズ200は、次の表2に示すように、同様の定格を有する標準的な市販の電力クラスのヒューズに対して顕著に高い電流密度を示す。
【0049】
明敏な読者は、同様の定格のULクラスT、ULクラスJ、及びULクラスRのヒューズに対してヒューズ200の電力密度が高いことは、同様の定格のULクラスT、ULクラスJ、及びULクラスRのヒューズに対してヒューズ200のサイズが低減していることの反映であることに気付かれるであろう。それぞれの定格におけるヒューズ200のサイズは、同等の電力回路を遮断するように動作可能な従来のヒューズのサイズの一部分に相当するに過ぎない。
【0050】
上述した特徴は、上に示すように所定の定格を有するヒューズのサイズの低減を達成するために使用することができ、あるいは、特定のサイズを有するヒューズの定格を増大させるために使用することができる。言い換えれば、上述した特徴を実施することによって、個別に実施するかまたは組み合わせて実施するかに関わらず、所定のサイズを有するヒューズの電力密度を増大させ、高い定格を得ることができる。例えば、
図1に示す従来のヒューズの電力密度を増大させ、同様のサイズで定格を向上させたヒューズを提供することができる。
【0051】
ヒューズ200の定格電流の複数の例を説明したが、他の実施形態において、さらに他の定格電流及び許容電流が可能であり、そうした場合、結果としてさらに多様な電力密度が可能となる。様々な許容電流のヒューズは、脆弱点の断面積を増大または減少させる、ヒューズ要素の形状を変化させる、ヒューズ要素の有効長を増大または減少させる、そして、それに応じてハウジング及び端子のサイズを変化させることによって、実現することができる。さらに、上述したヒューズ200は500Vの定格電圧を有するものであるが、他の定格電圧が可能であり、ヒューズの部品に対する同様の変更を用いて達成することができる。
【0052】
図14は、上述した高圧電力ヒューズ200を製造するための例示的な方法300を示すフローチャートである。この方法は、ステップ302において、ハウジングを準備することを含む。準備されるハウジングは、上述したハウジング202に相当するものであってもよい。ステップ304では、少なくとも1つのヒューズ要素が準備される。この少なくとも1つのヒューズ要素は、上述したヒューズ要素アセンブリ208を含むものであってもよい。ステップ306では、ヒューズ端子が準備される。このヒューズ端子は、上述した端子ブレード204、206に相当するものであってもよい。方法300の残りの手順に対する準備ステップとして、ステップ308において、ステップ302、304、306で準備された部品が部分的にまたは完全に組み立てられるものであってもよい。
【0053】
更なる準備ステップとして、ステップ310において、充填材料が準備される。この充填材料は、上述したような珪砂材料であってもよい。しかしながら、他の充填材料も知られており、同様に使用することができる。
【0054】
ステップ312において、ステップ310で準備された充填材料に珪酸塩の結合剤が添加される。一例において、珪酸塩の結合剤は、珪酸ナトリウム溶液として充填材料に添加されるものであってもよい。任意選択で、珪酸塩添加材料は、ステップ314で乾燥されて水分が除去されるものであってもよい。次いで、ステップ316において、乾燥された珪酸塩添加材料が準備されるものであってもよい。
【0055】
ステップ318において、ステップ316で準備された珪酸塩添加充填材料がハウジングに充填され、ハウジング内のヒューズ要素の周りに緩く固められる。任意選択で、ステップ320において、充填材料は乾燥される。ステップ322において、ヒューズはシールされ、組立が完了する。
【0056】
図15は、電力ヒューズ200を製造するための別の例示的な方法350を示す別のフローチャートである。準備ステップ302、304、306、308は、方法300で上述したこれらのステップと同じである。
【0057】
ステップ352において、珪砂のような充填材料が準備される。ステップ354において、準備された充填材料がハウジングに充填され、ステップ308のアセンブリ内の1つまたは複数のヒューズ要素の周りに緩く固められる。
【0058】
ステップ356において、珪酸塩の結合剤が添加される。珪酸塩の結合剤は、充填材料がハウジング内に配置された後に添加されるものであってもよい。これは、上述したエンドキャップ226、228中の1つまたは複数の充填穴を通じて珪酸ナトリウム溶液を添加することによって、達成することができる。ステップ354とステップ356は、ハウジングが充填材料で一杯になり、珪酸塩の結合剤が所望の量及び割合になるまで、交互に繰り返されるものであってもよい。
【0059】
ステップ358において、珪酸塩添加充填材料は乾燥され、機械的かつ熱伝導性の結合が完成される。ステップ360において、上述した充填プラグ23を取り付けることによって、ヒューズがシールされるものであってもよい。
【0060】
方法300と方法350のいずれかを使用すると、充填材料の粒子、ハウジング中の1つまたは複数のヒューズ要素、そして上述したエンドプレート226、228及び接点222、224のような任意の接続用端子構造の間に、熱伝導性の結合が確立される。珪酸塩添加充填材料は、使用時にヒューズ要素を冷却し、上述したような電力密度の増大を促進する効果的な熱伝達系を提供するものである。
【0061】
図16に部分的に示されるように、充填材料(この例では、珪砂)の粒子370は、珪酸塩(この例では、珪酸ナトリウム)の結合剤372と機械的に結合し、さらに、珪酸塩の結合剤372は、充填材料の粒子370をヒューズ要素218、220の表面に機械的に結合させる。珪酸塩の結合剤372は、さらに、充填材料の粒子370を、エンドプレート226、228及び端子接点222、224、並びにハウジング202の内面に機械的に結合させる。このような要素間の結合は、従来適用されていた珪酸塩非添加充填材料よりも、熱を伝達するために遥かに効果的である。珪酸塩非添加充填材料は、ヒューズのハウジング内に緩く固められたときに点接触を実現するに過ぎない。ヒューズ要素218、220は、珪酸塩添加充填材料の粒子によって確立される熱伝導性の結合の効果の増大により、これがない場合に可能なものよりも高い電圧及び高い電流条件に耐えることが可能となる。
【0062】
図17は、
図2に示す電力ヒューズ200のための例示的な端子製造物アセンブリ400を示す斜視図である。図示された例において、端子アセンブリ400は、端子204とエンドプレート226とを含む。端子204とエンドプレート226は、別個に準備されかつ上述したような材料から別個に製造された部品として形成されている。図示された端子204は、エンドプレート226中に形成された開口部404に受け入れられる接続部402を含む。したがって、端子部品204とエンドプレート部品206は、それぞれ既知の製造技術を使用して別個に形成された後、接続部402がエンドプレート206中の開口部404に通され、次いで、2つの部品は、既知の技術によって互いに機械的及び電気的に接続される。この既知の技術には、溶接及び半田付け工程が含まれるが、これに限定されるものではない。2部品型アセンブリ400は、端子とエンドプレートとが単一の部品として製造される実施形態に対して、廉価なアセンブリを提供するものである。
【0063】
2部品式のアセンブリ400が組み立てられるとき、接続部402はエンドプレート226を貫通して、エンドプレート22の接続部402が挿入された側とは反対の側から延びるものである。このような配置構成において、端子部品の端子204の接続部402は、エンドプレート226の一方の側に延び、一方、開口部214を含む端子ブレードは、反対側に延びる。したがって、接続部402は、エンドプレート226に組み付けられたとき、ヒューズ要素208の一端に接続する接点ブロック222(
図5参照)として有効に機能する。但し、別の実施形態において、接点ブロック222は、エンドプレート226上に設けられるものであってもよい。また、さらに別の実施形態において、接点ブロック222は、別個に製造されかつ準備された端子部品及びエンドプレートとともに組立可能な第3の部品として準備されるものであってもよい。
【0064】
端子204及びエンドプレート226を含む1つの端子アセンブリ400が示されているが、ヒューズ200の、図示された端子アセンブリ400とは反対側の端部に結合されるエンドプレート228及び端子206として機能する別の端子アセンブリ400を設けるものであってもよい。すなわち、電力ヒューズ200は、ヒューズのハウジング202の対向する両端部に、ヒューズ要素アセンブリ208が間に接続された実質的に同一の端子アセンブリ400を備えるように構築されるものであってもよい。製造コストが高騰する可能性はあるものの、所望の場合、別の実施形態において、端子アセンブリは、ヒューズのハウジング202の両端部上で互いに異なるものであってもよい。
【0065】
図18A、
図18B、
図18C、及び
図18Dは、
図17に示す端子アセンブリ400を含む電力ヒューズ200の例示的な製造段階を示す図である。これらの図には、
図14及び
図15に示すステップ302からステップ308に示されるステップがより詳細に示されている。
【0066】
図18Aにおいて、組立用フレーム410が備えられる。組立用フレームは、縦方向の主要部412、主要部412のそれぞれの端部から主要部に直交して延びる横方向部414、416、及び、横方向部414、416のそれぞれの端部から主要部412に平行に互いに向かって延びる組立用脚部418、420を含む。組立用フレーム410は、その見た目の類似性から、C字形フレームとも呼ばれる。図示された例では、組立用脚部420は、組立用脚部418よりも長く、組立用脚部418、420の端部同士の間には、後述するように、ヒューズ200の組み立てを容易にするために間隙が延びている。
【0067】
図18Aにおいて、ヒューズのハウジング202は、フレーム410の長い方の組立用脚部420上に延びるように示されている。端子アセンブリ400は、上述したように組み立てられ、それぞれの組立用脚部418、420に取り付けられる。図示された実施形態において、組立用フレーム410の組立用脚部418、420は、端子ブレード204、206中の開口部214、216を貫通する締結具424を受け入れる開口部を含む。例えば、締結具426は、組立用脚部418,420の反対側のそれぞれのナットと対になるねじであってもよい。ナットが締められると、端子ブレード204、206は、それぞれの組立用脚部418、420に固定される。
図18Aに示すように、各端子アセンブリ400の接続部402は、互いに対向し、かつ互いに揃えられる。接続部402同士の間には、ヒューズ要素アセンブリ208を作製可能な間隙が延びている。この間隙は、ヒューズ要素アセンブリ208の有効長に適合し、それ以上ではないように予め設定される。
【0068】
図18Bには、端子アセンブリ400同士の間に構築されたヒューズ要素アセンブリ208が示されている。上述したヒューズ要素の終端タブ246(
図7)は、端子アセンブリ400の接続部402(
図18A)に機械的及び電気的に結合される。
【0069】
図18Cでは、ハウジング202を、その初期位置(
図18A)からヒューズ要素アセンブリ208を取り囲む最終位置まで、組立用脚部420上を滑り移動させている。考慮されている実施形態において、ハウジング202は、(
図4にも示されている)ピン230によって定位置に固定されるものであってもよい。但し、代わりに、ハウジング202は、上述したように、所望に応じて、当該技術分野において既知の別の技術によって定位置に固定されるものであってもよい。次いで、珪酸塩添加充填材料の適用及びヒューズのシールに関する、
図14または
図15に示した方法の残りのステップは、ヒューズのハウジング202を配置した後、完了させるものであってもよい。
【0070】
図18Dは、組立用フレーム410から取り外された完成品の電力ヒューズ200が示されている。組立用フレーム410からヒューズ200を分離するために、締結具422、424(
図18A)は容易に取り外される。組立用フレーム410からの分離は、珪酸塩添加充填材料の適用の完了後、ヒューズのシールの完了後、またはそれ以前の任意の時点で、実行されるものであってもよい。すなわち、珪酸塩添加充填材料の適用及びヒューズのシールの全部または一部の工程は、アセンブリが組立用フレーム410から分離されている間に実行されるものであってもよい。
【0071】
図19は、電力ヒューズ200の別の端子製造物アセンブリ430を示す斜視図である。
図19に示すように、製造物430は、端子204、エンドプレート226、及び接点ブロック222(
図19中の図示は省略する)を含むように機械加工された単一の部材を含むものである。単一部品型製造物は、
図17に示す2部品型アセンブリよりも、部品段階での製造コストは高騰するものの、溶接または半田付けを用いて2部品型端子アセンブリを組み立て及び固定する必要性がなくなることによって、ヒューズ200の組み立てが簡易化される。単一部品型端子製造物430は、
図18A、
図18B、
図18C、及び
図18Dにおける2部品型端子製造物400と代替が可能であり、これによって、ヒューズ200を構築するためのステップ数が低減する。
【0072】
単一部品型端子製造物430の部品コストが高いことは、単一部品型端子製造物によって可能になる組み立てコストの低減によって相殺され得る。さらに、単一部品型製造物430は、上述した2部品型製造物400に対して、特性上の利点を備えている。この特性上の利点は、具体的には、組み立てられたヒューズ200における電気抵抗の低減及び熱流の改善である。上述した他の特徴との組み合わせの下に、単一部品型端子製造物430の熱流の改善及び電気抵抗の低減によって、上述したような応用例における上昇した電流及び電圧で有効に動作しながら、ヒューズの物理的なサイズを低減することが可能となる。
【0073】
図20は、
図17に示す端子製造物アセンブリ400とは別の端子製造物アセンブリ440を示す斜視図である。アセンブリ400と同様に、アセンブリ440は、上述したような材料から別個に製造された2つの部品を含む。
【0074】
端子製造物アセンブリ440中の第1の部品は、接点ブロック222を含むように形成されたエンドプレート226と見なすことができる。すなわち、エンドプレート226と接点ブロック226は、図示された形状に機械加工される単一の部材から製造される。エンドプレート226は、図示された例においてエンドプレート226の丸い表面上を直径方向に延びるスロット部441を備えるように形成される。スロット部441は、後述する第2の端子部品の一部を受け入れる。
【0075】
図20には、第2の端子部品442端子ブレードとして、図示されている。この端子ブレードは、第1の平面内に延びる第1の部分444と、第1の平面に直交する第2の平面内に延びる第2の部分446とを有する。したがって、端子ブレード442は、L字形をなすように、直角屈曲部を含んでいる。第1の部分444は、第2部分446よりも軸方向長さが短い。図示された例では、第1の部分444の先端部448はタブ部を含んでおり、これによって、考慮されている実施形態において、先端部448がスロット部441内に挿入され、溶接技術または半田付け技術を使用して2つの部品が結合されるとき、容易にエンドプレート226と機械的及び電気的に接続される。
図20には、スロット部441が、部品が結合されるときにスロット部441が受け入れる第1の部分444よりも広幅であることも示されている。
【0076】
図20には、端子442及びエンドプレート226を含む1つの端子アセンブリ440が示されているが、
図21に示すように、ヒューズ200の反対側の端部に組み付け及び結合され得るエンドプレート228及び同様の端子442を含むように、別の端子アセンブリ400を設けるものであってもよい。すなわち、電力ヒューズ200は、ヒューズのハウジング202の対向する両端部に、ヒューズ要素アセンブリ208が間に接続された実質的に同一の端子アセンブリ440を備えるように構築されるものであってもよい。製造コストが高騰する可能性はあるものの、所望の場合、別の実施形態において、端子アセンブリは、ヒューズのハウジング202の両端部上で互いに異なるものであってもよい。
【0077】
図21に示すように、ブレード部446同士は、ヒューズのハウジング202の対向する両端部で、間隙を介して互いに略平行に延びている。この端子配置は、EVの製造業者にとって、
図2〜
図6、
図17、
図18に示す端子ブレード204、206よりも好ましい場合がある。
【0078】
図22は、
図20及び
図21に示すアセンブリ440とは別の端子製造物460を示す斜視図である。
図19に示す製造物430と同様に、製造物460は、端子442、エンドプレート226、及び接点ブロック222を含むように機械加工された単一の部材を含む。単一部品型製造物は、
図20に示す2部品型製造物よりも、部品段階での製造コストは高騰するものの、溶接または半田付けを用いて2部品型端子アセンブリを組み立て及び固定する必要性がなくなることによって、ヒューズ200の組み立てが簡易化される。単一部品型端子製造物460は、2部品型製造物430と代替が可能であり、これによって、ヒューズ200を構築するためのステップ数が低減する。
【0079】
単一部品型端子製造物460の部品コストが高いことは、単一部品型端子製造物によって可能になる組み立てコストの低減によって相殺され得る。さらに、単一部品型製造物460は、上述した2部品型製造物430に対して、特性上の利点を備えている。この特性上の利点は、具体的には、組み立てられたヒューズにおける電気抵抗の低減及び熱流の改善である。上述した他の特徴との組み合わせの下に、単一部品型端子製造物の熱流の改善及び電気抵抗の低減によって、上述したような応用例における上昇した電流及び電圧で有効に動作しながら、ヒューズ200の物理的なサイズを低減することが可能となる。
【0081】
図23Aにおいて、
図18Aに関連して上述したように、組立用フレーム410(C字形フレームとも呼ばれる)が備えられる。
図23Aにおいて、ヒューズのハウジング202は、フレーム410の長い方の組立用脚部420上に延びるように示されている。端子製造物460は、上述したように単一部品から形成され、既知の締結具を用いて、組立用フレーム410のそれぞれの組立用脚部418、420に取り付けられる。
図23Aに示すように、各端子製造物460の接点ブロック222、224は、互いに対向し、かつ互いに揃えられる。接点ブロック222、224の間には、ヒューズ要素アセンブリ208を作製可能な間隙が延びている。この間隙は、ヒューズ要素アセンブリ208の有効長に適合し、それ以上ではないように予め設定される。
【0082】
図23Bには、端子製造物460同士の間に構築されたヒューズ要素アセンブリ208が示されている。上述したヒューズ要素の終端タブ246(
図7)は、端子製造物460の接点ブロック222、224(
図23A)に機械的及び電気的に結合される。
【0083】
図23Cでは、ハウジング202を、その初期位置(
図23A)からヒューズ要素アセンブリ208を取り囲む最終位置まで、組立用脚部420上を滑り移動させている。考慮されている実施形態において、ハウジング202は、(
図4にも示されている)ピン230によって定位置に固定されるものであってもよい。但し、代わりに、ハウジング202は、上述したように、所望に応じて、当該技術分野において既知の別の技術によって定位置に固定されるものであってもよい。次いで、珪酸塩添加充填材料の適用及びヒューズのシールに関する、
図14または
図15に示した方法の残りのステップは、ヒューズのハウジング202を配置した後、完了させるものであってもよい。
【0084】
図23Dは、組立用フレーム410から取り外された、または分離された完成品の電力ヒューズ200が示されている。組立用フレーム410からの分離は、珪酸塩添加充填材料の適用の完了後、ヒューズのシールの完了後、またはそれ以前の任意の時点で、実行されるものであってもよい。すなわち、珪酸塩添加充填材料の適用及びヒューズのシールの全部または一部の工程は、アセンブリが組立用フレーム410から分離されている間に実行されるものであってもよい。
【0085】
図23Eは、それぞれの端子製造物460中の端子442が曲げられて、第1の部分444と直交して延びる第2の部分446が形成された状態を示す図である。すなわち、端子442は、直角屈曲部を含む形状をなす。ここで、ヒューズ200は完成し、使用可能な状態となる。幾つかの実施形態において、端子442は、前もって曲げられており、したがって、このステップは省略可能なものであってもよい。このような、端子442が前もって曲げられている実施形態では、経済的にヒューズ200を製造するために、異なる組立用フレーム410が必要になる可能性がある。
【0086】
以上、本発明の利点は、開示された例示的な実施形態に関連して、十分に示されたものと考える。
【0087】
電力ヒューズの一実施形態が開示された。この実施形態は、ハウジングと、ハウジングに結合され、エンドプレート及び端子を含み、それぞれ単一部品型製造物及び2部品型製造物のうちの1つである第1及び第2の端子製造物と、ハウジングの内部の、第1の端子製造物と第2の端子製造物との間に延びる少なくとも1つのヒューズ要素と、ハウジング内の少なくとも1つのヒューズ要素を取り囲み、ヒューズ要素アセンブリに機械的に結合される充填物と、を含む。
【0088】
任意選択で、端子は端子ブレードであってもよい。端子ブレードは、直角屈曲部を含むものであってもよい。端子ブレードは、開口部を含むものであってもよい。端子製造物は、単一の部品を含むものであってもよい。充填物は、珪酸ナトリウム添加砂を含むものであってもよい。
【0089】
少なくとも1つのヒューズ要素は、任意選択で、短絡ヒューズ要素及び過負荷ヒューズ要素を含むものであってもよい。短絡ヒューズ要素及び過負荷ヒューズ要素は、ハウジング内に互いに鏡像となるように配置された、実質的に同一に構成された可融要素であってもよい。短絡ヒューズ要素及び過負荷ヒューズ要素のそれぞれは、複数の斜行部分によって分けられた複数の実質的に共面的な部分を含むものであってもよい。複数の実質的に共面的な部分のそれぞれは、複数の脆弱点を構成する複数の開口部を含むものであってもよい。過負荷ヒューズ要素の少なくとも一部には、M効果処理部を備えるものであってもよい。短絡ヒューズ要素の少なくとも一部及び過負荷ヒューズ要素の少なくとも一部は、アーク障壁材料を備えるものであってもよい。
【0090】
ヒューズは、任意選択で、少なくとも500VDCの定格電圧を有するものであってもよい。ハウジングは、円筒形をなすものであってもよく、また、約38.1mm(1.5インチ)から約76.2mm(3インチ)の軸方向長さを有するものであってもよい。ヒューズは、少なくとも150A、少なくとも250A、または、少なくとも400Aの定格電流を有するものであってもよい。ヒューズは、少なくとも9.0A/cm
3の電力密度を示すものであってもよい。ヒューズは、11.25A/cm
3の電力密度を示すものであってもよい。
【0091】
全範囲型電力ヒューズの一実施形態も開示された。この実施形態は、対向する第1及び第2の端部を含むハウジングと、第1及び第2の端部にそれぞれ結合された第1及び第2のエンドプレートと、ハウジングの内部に延び、第1及び第2のエンドプレートのそれぞれに結合される全範囲型ヒューズ要素と、ハウジング内の少なくとも1つのヒューズ要素を取り囲み、ヒューズ要素アセンブリ、ハウジング、及び第1及び第2の端子に機械的に結合される充填物と、含む。少なくとも第1のエンドプレートと第1の端子は、単一部品型製造物として形成される。
【0092】
任意選択で、第1の端子は端子ブレードを含むものであってもよい。端子ブレードは、直角屈曲部を含むものであってもよい。第1のエンドプレートは、接点ブロックを含み、ヒューズ要素アセンブリは、接点ブロックに接続されるものであってもよい。充填物は、珪酸ナトリウム添加砂を含むものであってもよい。全範囲型ヒューズアセンブリは、アーク障壁材料を備えるものであってもよい。ヒューズ要素アセンブリは、少なくとも500VDCの定格電圧を有するものであってもよい。非導電性のハウジングは、円筒形をなすものであってもよく、円筒形のハウジングは、約38.1mm(1.5インチ)から約76.2mm(3インチ)の軸方向長さを有するものであってもよい。ヒューズ要素アセンブリは、約150Aから約400Aの範囲の定格電流を有するものであってもよい。ヒューズは、少なくとも約9.0A/cm
3から少なくとも約110A/cm
3の電流密度を示すものであってもよい。
【0093】
組立用フレームを使用して高圧電力ヒューズを製造するための方法も開示された。フレームは、第1及び第2の組立用脚部を有し、ヒューズは、ハウジング、全範囲型ヒューズ要素アセンブリ、並びに、第1及び第2の端子製造物を含む。この方法は、組立用フレームの第1の組立用脚部にハウジングを挿入するステップと、組立用フレームの第1の組立用脚部に第1の端子製造物を組み付けるステップと、組立用フレームの第2の組立用脚部に第2の端子製造物を組み付けるステップと、第1の端子と第2の端子との間の間隙内で全範囲型ヒューズ要素アセンブリを接続するステップと、ハウジングを全範囲型アセンブリ上に滑り移動させるステップと、全範囲型ヒューズ要素アセンブリを囲む定位置にハウジングを固定するステップと、組み立てられたハウジング、全範囲型ヒューズ要素、並びに、第1及び第2の端子に珪酸塩添加充填材料を適用し、組み立てられたハウジング、全範囲型ヒューズ要素、並びに、第1及び第2の端子と珪酸塩添加充填材料との間の機械的な結合を確立するステップと、を含む。
【0094】
任意選択で、組立用フレームの第1の組立用脚部に第1の端子製造物を組み付けるステップは、エンドプレート及び端子を含む単一部品型端子製造物を準備するステップと、組立用フレームの第1の組立用脚部に端子製造物を取り付けるステップと、を含むものであってもよい。組立用フレームの第2の組立用脚部に第2の端子製造物を組み付けるステップも、端子を構成する第1の端子部品を、エンドプレートを構成する第2の端子部品に組み付けるステップと、組立用フレームの第2の組立用脚部に第1の端子部品を固定するステップと、を含むものであってもよい。
【0095】
第1及び第2の端子製造物のそれぞれは、任意選択で、端子ブレードを含み、高圧電力ヒューズを製造するための方法は、少なくとも1つの端子ブレードに直角屈曲部を形成するステップをさらに含むものであってもよい。
【0096】
珪酸塩添加充填材料を適用するステップは、充填材料に珪酸塩の結合剤を添加するステップを含むものであってもよい。充填材料に珪酸塩の結合剤を添加するステップは、珪砂に珪酸塩の結合剤を添加するステップを含むものであってもよい。珪砂に珪酸塩の結合剤を添加するステップは、珪砂に珪酸ナトリウムの結合剤を添加するステップを含むものであってもよい。充填材料に珪酸塩の結合剤を添加するステップは、珪酸塩の結合剤の水溶液を添加して、充填材料と珪酸塩の結合剤の混合物を形成するステップを含むものであってもよい。高圧電力ヒューズを製造するための方法は、この混合物を乾燥させるステップをさらに含むものであってもよい。
【0097】
本明細書では、本発明を開示し、また当業者が本発明を実施できるようにするために、最良の態様を含む例を使用した。本発明の実施は、任意の装置またはシステムを作製及び使用し、かつ任意の組み込まれた方法を実行することを含む。本発明の特許可能な範囲は、請求項によって定義され、かつ当業者が想到する他の例が含まれ得る。このような他の例は、それらが請求項の文言と差異のない構造要素を含む場合、または、それらが請求項の文言と非実質的な差異を備える均等な構造要素を含む場合、請求項の範囲内に含まれるものである。