(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フルオロオレフィンが、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、ペルフルオロジメチルジオキソール、トリフルオロプロピレン、ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)、ヘキサフルオロイソブチレン、メチル3−[1−[ジフルオロ[(トリフルオロビニル)オキシ]メチル]−1,2,2,2−テトラフルオロエトキシ]−2,2,3,3−テトラフルオロプロピオネート、2−[1−[ジフルオロ[(1,2,2−トリフルオロエテニル)オキシ]メチル]−1,2,2,2−テトラフルオロエトキシ]−1,1,2,2−テトラフルオロ−フッ化エタンスルホニル、若しくはこれらの組み合わせであり、又は、前記アルキルビニルエーテルが、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、イソアミルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、若しくはこれらの組み合わせであり、又は、前記ビニルエポキシドが、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、若しくはこれらの組み合わせである、請求項1に記載の保護層。
前記保護層が、薄膜トランジスタの層、有機電界効果トランジスタ、半導体、酸化物半導体電界効果トランジスタ、集積回路、発光ダイオード、ディスプレイデバイス、フレキシブル回路、ソルダーレジスト、光起電装置、プリント基板、層間絶縁膜、光波ガイド、微小電気機械システム、電子ディスプレイデバイスの層又はマイクロ流体デバイスの層若しくはチップである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の保護層。
前記光架橋コーティング組成物が、80〜99.5重量パーセントの範囲の前記光架橋性フルオロポリマーと、0〜10重量パーセントの範囲の前記光増感剤と、0.1〜10重量パーセントの範囲の前記光酸発生剤と、を含み、前記重量パーセントが光架橋されたコーティング組成物の総重量に基づくものである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の保護層。
前記光増感剤が、2−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、フェノチアジン、又はこれらの組み合わせである、請求項1〜10のいずれか一項に記載の保護層。
前記光酸発生剤が、(p−イソプロピルフェニル)(p−メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス[4−(4−アセチルフェニル)スルファニルフェニル]スルホニウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、トリス[(トリフルオロメタン)スルホニル]メタンとのビス(1,1−ジメチルエチルフェニル)ヨードニウム塩、又はビス(4−デシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートオキシラン、4,4’,4’’−トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムトリフレート、4,4’−ジ−t−ブチルフェニルヨードニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)スルホニウムボレート、トリアリルスルホニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)スルホニウムボレート、4,4’−ジ−t−ブチルフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、又は組み合わせである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の保護層。
前記方法が、前記光架橋性コーティング組成物の層を前記基材の少なくとも一部の上に塗布する前記工程(2)に先立ち、前記基材の少なくとも一部に接着促進剤を塗布する工程を更に含む、請求項13に記載の方法。
前記光架橋性コーティング組成物が、80〜99.5重量パーセントの範囲の前記光架橋性フルオロポリマーと、0〜10重量パーセントの範囲の前記光増感剤と、0.5〜10重量パーセントの範囲の前記光酸発生剤と、を含み、前記重量パーセントが光架橋されたコーティング組成物の総重量に基づくものである、請求項13又は14に記載の方法。
前記フルオロオレフィンが、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、ペルフルオロジメチルジオキソール、トリフルオロプロピレン、ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン)、ヘキサフルオロイソブチレン、メチル3−[1−[ジフルオロ[(トリフルオロビニル)オキシ]メチル]−1,2,2,2−テトラフルオロエトキシ]−2,2,3,3−テトラフルオロプロピオネート、2−[1−[ジフルオロ[(1,2,2−トリフルオロエテニル)オキシ]メチル]−1,2,2,2−テトラフルオロエトキシ]−1,1,2,2−テトラフルオロ−フッ化エタンスルホニル、若しくはこれらの組み合わせであり、又は、前記アルキルビニルエーテルが、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、イソアミルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、若しくはこれらの組み合わせであり、又は、前記ビニルエポキシドが、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、若しくはこれらの組み合わせである、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
前記架橋光架橋性フルオロポリマーの層が、20〜22℃の範囲の温度において24時間脱イオン水中に浸すとき、0.05〜1.0重量パーセントの範囲の水を吸収する、請求項13〜17のいずれか一項に記載の方法。
前記光増感剤が、2−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、フェノチアジン、又はこれらの組み合わせである、請求項13〜18のいずれか一項に記載の方法。
前記光酸発生剤が、(p−イソプロピルフェニル)(p−メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス[4−(4−アセチルフェニル)スルファニルフェニル]スルホニウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド、トリス[(トリフルオロメタン)スルホニル]メタンとのビス(1,1−ジメチルエチルフェニル)ヨードニウム塩、又はビス(4−デシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートオキシラン、4,4’,4’’−トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムトリフレート、4,4’−ジ−t−ブチルフェニルヨードニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)スルホニウムボレート、トリアリルスルホニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)スルホニウムボレート、4,4’−ジ−t−ブチルフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、又は組み合わせである、請求項13〜19のいずれか一項に記載の方法。
前記キャリア媒体の少なくとも一部が、前記光架橋性コーティング組成物の塗布層の高温への曝露、大気圧未満への曝露、前記基材上への直接的若しくは間接的ガス吹き込み、又はこれらの組み合わせによって除去される、請求項13〜20のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の特徴及び利点は、以下の発明を実施するための形態を読むことにより、当業者はより容易に理解するであろう。明確にするために、別個の実施形態の文脈において上記及び下記の本開示の特定の特徴は、単一の要素中で組み合わせて提供されてもよいことが理解されるべきである。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈において記述されている本開示の様々な特徴も、別個に提供されてよく、また任意の下位組み合わせで提供されてもよい。加えて、単数についての言及は、その内容について別途具体的な指示がない限り、複数も含み得る(例えば、「a」及び「an」は1つ又はそれ以上について言及し得る)。
【0010】
本願中で特定される様々な範囲の数値の使用は、別途明確に記載のない限り、指定された範囲の最小値及び最大値の両方に用語「約」が先行するかのように、近似値として述べられる。このように、述べられた範囲より上下わずかに変化させたものを使用して、範囲内の値と実質的に同じ結果を達成することができる。また、これらの範囲の開示は、最小値と最大値との間のそれぞれ、及び全ての値を含む、連続範囲を意図している。
【0011】
本明細書で使用する場合、
用語「光架橋」は、ポリマーネットワーク内の架橋部が光の作用の結果形成される、架橋フルオロポリマーを意味する。例えば、光架橋性フルオロポリマーを含む組成物は、1種又は2種以上の光酸発生剤及び任意の光増感剤も含む。組成物を適当な波長の光で照射すると、酸官能性分子が発生し、これがフルオロポリマー上のエポキシド基と反応して、フルオロポリマーの架橋をもたらす。
【0012】
語句「光架橋性フルオロポリマー」は、1種又は2種以上の光酸発生剤、及び任意選択的に、光増感剤の存在下において、適当な波長の光で照射されるとき光架橋能がある、未架橋フルオロポリマーを意味する。
【0013】
語句「光架橋形成部」は、本開示の方法に従って製造され得る寸法の構造体を指す。光架橋形成部は、形成された形成部の幅と、任意選択的に、光架橋コーティング組成物の層の厚さによって画定される。例えば、開示される方法は、2マイクロメートル厚のコーティングにおいて、4マイクロメートルの線を形成できる。光架橋形成部は、未架橋フルオロポリマーが除かれると形成される「孔」を指すことに留意されたい。例えば、一連の線が形成される場合、光架橋形成部は、未架橋フルオロポリマー材料が除かれると作製される間隙の幅を指す。光架橋形成部は、コーティング組成物の層の少なくとも一部を照射し、コーティング組成物の塗布層を加熱し、その後、例えば溶媒中に溶解してコーティング組成物の未架橋部を除くことによって、形成され得る。
【0014】
語句「保護層」は、下層にある基材に、環境による損傷、例えば、水、酸化及び化学分解からの保護をもたらし、両方のバリア特性を有し、かつ、2つの導電体層、又は2つの半導体層、又は半導体層から導電層を分離するのに使用できる基材上の誘電体層を形成する、層を意味する。保護層は、発光ダイオード材料の様々なウェルを互いに接触することから分離する、発光ダイオード構造体中のバンク層としても使用できる。
【0015】
語句「未反応溶媒」は、光架橋性フルオロポリマー用、又は、光架橋性フルオロポリマーを含むコーティング組成物用の1種又は2種以上の溶媒を意味し、このとき未反応溶媒は、光架橋性フルオロポリマーとの光架橋の結果として、最終架橋ネットワークの一部にはならない。
【0016】
本開示は、光架橋性コーティング組成物を含む保護層に関し、光架橋性コーティング組成物は、光架橋性フルオロポリマーを含む。保護層は、薄膜トランジスタ、有機電界効果トランジスタ、半導体、酸化物半導体電界効果トランジスタ、集積回路、発光ダイオード(LED)、有機LEDを含むLED用バンク層、ディスプレイデバイス、フレキシブル回路、ソルダーレジスト、光起電装置、プリント基板、層間絶縁膜、光波ガイド、微小電気機械システム(MEMS)、電子ディスプレイデバイスの層又はマイクロ流体デバイス若しくはチップの層における、バリア層及び/又は絶縁層として使用できる。保護層は、エレクトロウェッティング用途のためのパターン化表面の形態の層を形成することもできる。架橋コーティング組成物は、非常に小さい光架橋形成部を提供でき、低誘電率及び低吸水性の両方をもたらすことができる。
【0017】
保護層は、基材の少なくとも一部の上に配置された光架橋コーティング組成物の層を含み、コーティング組成物は、i)光架橋性フルオロポリマーと、ii)光酸発生剤と、iii)任意の光増感剤と、iv)キャリア媒体と、を含み、光架橋性フルオロポリマーは、20,000〜300,000の範囲の数平均分子量を有し、光架橋コーティング組成物の層は、100kHzにおいて測定するとき、1〜5の範囲の誘電率を有し、0.01マイクロメートル〜300マイクロメートルの範囲の厚さを有する光架橋コーティング組成物の層は、a)光架橋コーティング組成物の塗布層の厚さの約10パーセント、又は、b)0.5マイクロメートルのうち、大きい方の最小幅を有する光架橋形成部を有する。別の実施形態では、光架橋形成部の幅は、0.5マイクロメートル〜5マイクロメートルの範囲内である。いくつかの実施形態では、光架橋コーティング組成物の層は、100kHzにおいて測定するとき、最小値が1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、又は3.0であり、最大値が5.0、4.9、4.8、4.7、4.6、4.5、4.4、4.3、4.2、4.1、4.0、3.9、3.8、3.7、3.6、3.5、3.4、3.3、3.2、又は3.1である、最小値及び最大値によって定義される範囲の誘電率を有する。
【0018】
電子デバイスにおける保護層についての別の重要な特性は、低い吸水性を有することである。開示される光架橋コーティング組成物の層は、20〜22℃の範囲の温度において、24時間脱イオン水中に浸したとき、非常に吸水性が低い。典型的な吸水値は、0.01〜1.0重量パーセントの範囲内であってよい。別の実施形態では、吸水性は、0.03〜1.0重量パーセントの範囲内であってよく、なお更なる実施形態では、0.05〜0.9重量パーセントであってよい。なお更なる実施形態では、吸水性は、0.05〜0.8重量パーセントであってよい。
【0019】
光架橋性フルオロポリマーは、光架橋コーティング組成物の総重量に基づき、80〜99.5パーセントの範囲内で存在する。光架橋性フルオロポリマーは、モノマー混合物の重合によって生成されるコポリマーであり、このときモノマー混合物は、(a)フルオロオレフィンと、(b)アルキルビニルエーテルと、(c)ビニルエポキシドと、を含み、モノマー(a)、(b)、及び(c)の総量は、モノマー混合物の100モルパーセントに相当する。いくつかの実施形態では、架橋性フルオロポリマーは、本質的に上記モノマー(a)、(b)及び(c)からなり、なお更なる実施形態では、架橋性フルオロポリマーは、(a)、(b)及び(c)として上で挙げられたモノマーからなる。架橋性フルオロポリマーが、本質的に(a)フルオロオレフィン、(b)アルキルビニルエーテル、及び(c)ビニルエポキシドからなる実施形態では、光架橋性フルオロポリマーは、環中に3つを超える原子を有する環状エーテル基を有するモノマー、例えば、オキセタン又はフラン環、1つを超えるエチレン性不飽和二重結合、又は、重合後手順によって導入された追加のエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーを含まない、又は実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、光架橋性フルオロポリマーが5モルパーセント未満の挙げられたモノマーを含むことを意味する。別の実施形態では、架橋性フルオロポリマーは、2モルパーセント未満の、別の実施形態では、1モルパーセント未満のこれら挙げられたモノマーを含む。
【0020】
好適なフルオロオレフィンとして、例えば、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、ペルフルオロジメチルジオキソール、トリフルオロプロピレン、ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン、ヘキサフルオロイソブチレン、メチル3−[1−[ジフルオロ[(トリフルオロビニル)オキシ]メチル]−1,2,2,2−テトラフルオロエトキシ]−2,2,3,3−テトラフルオロプロピオネート、2−[1−[ジフルオロ[(1,2,2−トリフルオロエテニル)オキシ]メチル]−1,2,2,2−テトラフルオロエトキシ]−1,1,2,2−テトラフルオロ−フッ化エタンスルホニル、又はこれらの組み合わせを挙げてよい。いくつかの実施形態では、フルオロオレフィンモノマーは、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、ペルフルオロメチルビニルエーテル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、ペルフルオロジメチルオキソール、トリフルオロプロピレン、ペルフルオロ(2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン、ヘキサフルオロイソブチレン、メチル3−[1−[ジフルオロ[(トリフルオロビニル)オキシ]メチル]−1,2,2,2−テトラフルオロエトキシ]−2,2,3,3−テトラフルオロプロピオネート、2−[1−[ジフルオロ[(1,2,2−トリフルオロエテニル)オキシ]メチル]−1,2,2,2−テトラフルオロエトキシ]−1,1,2,2−テトラフルオロ−フッ化エタンスルホニル、又はこれらの組み合わせからなる、又は本質的になる。ペルフルオロアルキルビニルエーテルは、式(I)による構造を有してよく、
F
2C=CFOR
f(I)
式中、R
fは、1〜6個の範囲の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基である。いくつかの実施形態では、ペルフルオロアルキルビニルエーテルはペルフルオロメチルビニルエーテルである。フルオロオレフィンは、架橋性フルオロポリマー中で、光架橋性フルオロポリマーの形成に使用されたモノマーの総量に基づき、35〜55モルパーセントの範囲内で使用される。別の実施形態では、フルオロオレフィンは、架橋性フルオロポリマー中で、40〜53モルパーセントの範囲内で使用され、なお更なる実施形態では、45〜50モルパーセントの範囲内で使用される。
【0021】
架橋性フルオロポリマーは、アルキルビニルエーテルも含む。好適なアルキルビニルエーテルとして、アルキル基が、C1〜C6直鎖状又はC3〜C6分枝状若しくは環状飽和炭化水素ラジカルである、例えばアルキルビニルエーテルを挙げてよい。いくつかの実施形態では、アルキルビニルエーテルは、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、イソアミルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、又はこれらの組み合わせである。別の実施形態では、アルキルビニルエーテルは、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、又はこれらの組み合わせからなる、又は本質的になる。アルキルビニルエーテルは、架橋性フルオロポリマー中で、光架橋性フルオロポリマーの形成に使用されたモノマーの総量に基づき、40〜64モルパーセントの範囲内で使用される。いくつかの実施形態では、アルキルビニルエーテルは、42〜58モルパーセントの範囲の量で使用され、なお更なる実施形態では、44〜54モルパーセントの範囲内で使用される。
【0022】
架橋性フルオロポリマーは、ビニルエポキシドも含む。好適なビニルエポキシドモノマーとして、例えば、アリルグリシジルエーテル、グリシジルアクリレート、及びグリシジルメタクリレートを挙げてよい。いくつかの実施形態では、ビニルエポキシドは、アリルグリシジルエーテルからなる、又は本質的になる。ビニルエポキシドは、架橋性フルオロポリマー中で、光架橋性フルオロポリマーの形成に使用されたモノマーの総量に基づき、1〜10モルパーセントの範囲内で使用される。別の実施形態では、ビニルエポキシドは、架橋性フルオロポリマー中で、1.2〜8モルパーセントの範囲内で、なお更なる実施形態では、1.4〜7モルパーセントの範囲内で使用される。
【0023】
いくつかの実施形態では、架橋性フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン、エチルビニルエーテル、及びアリルグリシジルエーテルからなる又は本質的になる。別の実施形態では、架橋性フルオロポリマーは、クロロトリフルオロエチレン、エチルビニルエーテル、及びアリルグリシジルエーテルからなる又は本質的になる。別の実施形態では、架橋性フルオロポリマーは、ヘキサフルオロプロピレン、エチルビニルエーテル、及びアリルグリシジルエーテルからなる又は本質的になる。別の実施形態では、架橋性フルオロポリマーは、ペルフルオロメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、及びアリルグリシジルエーテルからなる又は本質的になる。
【0024】
光架橋性フルオロポリマーは、既知の方法によって製造でき、20,000〜300,000ダルトンの範囲の数平均分子量(MW
n)を有してよい。別の実施形態では、数平均分子量は、最小が、25,000、30,000、40,000、50,000、60,000又は70,000であり、最大が、290,000、280,000、270,000、260,000又は250,000ダルトンである、最小数平均分子量から最大数平均分子量までを含む範囲内であってよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、モノマー(a)、(b)及び(c)を、溶媒を使用せずに重合してもよく、別の実施形態では、モノマーを、溶媒中で重合してもよく、この溶媒は、光架橋性フルオロポリマー用溶媒であってもなくてもよい。なお更なる実施形態では、光架橋性フルオロポリマーは、モノマーのエマルション重合によって生成されてよい。所望の架橋性フルオロポリマーを生成するため、モノマー、少なくとも1つのフリーラジカル反応開始剤、及び任意選択的に酸受容体をオートクレーブに投入し、大気圧から1500気圧の高さまでの範囲の圧力において、10分間〜24時間、25℃〜約200℃の範囲の温度まで加熱してよい。次に、得られる生成物をオートクレーブから取り出し、乾燥させて架橋性フルオロポリマーを得てよい。
【0026】
好適なフリーラジカル反応開始剤は、任意の既知のアゾ及び/又は過酸化物反応開始剤であってよい。例えば、ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)ジカルボネート、ジ−t−過酸化ブチル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル、2,2−アゾジイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル−2,2−アゾビス(イソブチレート)、又はこれらの組み合わせを使用してよい。使用できるフリーラジカル反応開始剤の量は、モノマー混合物中のモノマーの総量に基づき、0.05重量パーセント〜約4重量パーセントの範囲内であってよい。別の実施形態では、使用されるフリーラジカル反応開始剤の量は、0.1重量パーセント〜約3.5重量パーセントの範囲内であり、なお更なる実施形態では、0.2重量パーセント〜3.25重量パーセントの範囲内である。全ての重量パーセントは、モノマー混合物中のモノマーの総量に基づく。
【0027】
光架橋性フルオロポリマーの形成時に、酸受容体も使用できる。酸受容体は、金属炭酸塩又は金属酸化物、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、又はこれらの組み合わせであってよい。酸受容体は、0重量パーセント〜約5重量パーセントの範囲内で存在してよい。別の実施形態では、酸受容体は、0.1重量パーセント〜4重量パーセントの範囲内で存在してよく、なお更なる実施形態では、0.2重量パーセント〜3重量パーセントの範囲内で存在してよい。全ての重量パーセントは、モノマー混合物中のモノマーの総量に基づく。酸受容体は、フルオロオレフィン中に存在し得る、又は、重合工程中に発生し得る、フッ化水素などの酸を中和するために存在する。
【0028】
本開示はまた、i)光架橋性フルオロポリマーと、ii)光酸発生剤と、iii)任意の光増感剤と、iv)キャリア媒体と、を含む、コーティング組成物にも関する。光架橋性コーティング組成物はまた、任意選択的に、v)添加剤を含んでもよい。
【0029】
好適なii)光酸発生剤は、当該技術分野において既知であり、例えば、(p−イソプロピルフェニル)(p−メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)−ボレート、IRGACURE(登録商標)GSID−26−1(トリス[4−(4−アセチルフェニル)スルファニルフェニル]スルホニウム及びトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドの塩であり、BASF(Florham Park,New Jersey)から入手可能)、トリス[(トリフルオロメタン)スルホニル]メタンとのビス(1,1−ジメチルエチルフェニル)ヨードニウム塩(これもBASFから入手可能)、ビス(4−デシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートオキシラン、モノ[(C12〜C14−アルコキシ)メチル]誘導体(MomentiveからUV9387Cとして入手可能)、4,4’,4’’−トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムトリフレート、4,4’−ジ−t−ブチルフェニルヨードニウムトリフレート、ジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)スルホニウムボレート、トリアリルスルホニウム−テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルスルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)スルホニウムボレート、4,4’−ジ−t−ブチルフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4−(1−メチルエチル)フェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、又はこれらの組み合わせを挙げてよい。IRGACURE(登録商標)GSID−26−1光酸発生剤は、光増感剤を別に加える必要がないため、特に有用である。光酸発生剤は、光架橋性コーティング組成物中に、光架橋コーティング組成物の総量に基づき、約0.1〜10重量パーセントの範囲の量で存在してよい。別の実施形態では、光酸発生剤は、0.1〜7.5重量パーセントの範囲内で存在してよく、なお更なる実施形態では、0.1〜5.0重量パーセントの範囲の量で存在してよい。なお更なる実施形態では、光酸発生剤は、光架橋コーティング組成物の総量に基づき、0.3〜1.0重量パーセントの範囲内で存在してよい。
【0030】
組成物はまた、iii)任意の光増感剤も含んでよい。好適な光増感剤として、例えば、クリセン、ベンツピレン、フルオラントレン、ピレン、アントラセン、フェナントレン、キサントン、インダントレン、チオキサンテン−9−オン、又はこれらの組み合わせを挙げてよい。いくつかの実施形態では、光増感剤は、2−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、4−イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、フェノチアジン、又はこれらの組み合わせであってよい。任意の光増感剤は、0〜約10重量パーセントの範囲内で使用してよく、重量パーセントは、光架橋コーティング組成物の総量に基づく。別の実施形態では、光増感剤は、組成物中に、0.2〜7重量パーセントの範囲内で、なお更なる実施形態では、0.5〜5重量パーセントで存在してよい。全ての重量パーセントは、光架橋コーティング組成物の総重量に基づく。
【0031】
組成物は、典型的には、iv)キャリア媒体中の光架橋性コーティング組成物の溶液又は分散液として、基材の少なくとも一部に塗布される。これにより、光架橋性コーティング組成物の層が塗布可能となり、基材上に光架橋フルオロポリマーの滑らかで欠損を含まない層が得られる。好適なキャリア媒体として、例えば、ケトン、エーテル、エーテルエステル、及びハロカーボンを挙げてよい。いくつかの実施形態では、例えば、キャリア媒体は、ケトン溶媒、例えば、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン;エステル、例えば、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、ペンチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、ヘプチルアセテート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、ブチルプロピオネート、イソブチルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メチルラクテート、エチルラクテート、γ−ブチロラクトン;エーテル溶媒、例えば、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、アニソール;ハロカーボン、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロエチレン、又はこれらの組み合わせであってよい。いくつかの実施形態では、キャリア媒体は、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、又はこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、溶媒は未反応溶媒であり、これは、キャリア媒体が、硬化工程後に架橋コーティングの一部にならないことを意味する。
【0032】
光架橋性コーティング組成物はまた、v)1種又は2種以上の任意の添加剤も含んでよい。好適な添加剤として、例えば、粘度調整剤、充填剤、分散剤、結合剤、界面活性剤、消泡剤、湿潤剤、pH調整剤、殺生物剤、制菌剤、又はこれらの組み合わせを挙げてよい。かかる添加剤は、当該技術分野において周知であり、詳細に説明しない。典型的には、添加剤は、架橋コーティング組成物の約10重量パーセント未満で含まれる。
【0033】
本開示はまた、上記光架橋性コーティング組成物を使用する方法にも関し、この方法は、
(1)
i)
(a)フルオロオレフィンと、
(b)アルキル基が、C1〜C6直鎖状又はC3〜C6分枝状若しくは環状の飽和炭化水素ラジカルである、アルキルビニルエーテルと、
(c)ビニルエポキシドと、を含む、光架橋性フルオロポリマーと、
ii)光酸発生剤と、
iii)任意の光増感剤と、
iv)キャリア媒体と、を含む、光架橋性コーティング組成物を準備することと、
(2)光架橋性コーティング組成物の層を基材の少なくとも一部の上に塗布することと、
(3)キャリア媒体の少なくとも一部を除去することと、
(4)光架橋性コーティング組成物の層の少なくとも一部を紫外線で照射することと、
(5)光架橋性コーティング組成物の塗布層を加熱し、光架橋性フルオロポリマーの少なくとも一部を架橋することと、
(6)未架橋の光架橋性フルオロポリマーの少なくとも一部を除去することと、を含み、
光架橋性フルオロポリマーは、20,000〜300,000の範囲の数平均分子量を有し、光架橋コーティング組成物の層は、100kHzにおいて測定するとき、1〜5の範囲の誘電率を有し、0.01マイクロメートル〜300マイクロメートルの範囲の厚さを有する光架橋コーティング組成物の層は、a)コーティング組成物の厚さの約10パーセント、又は、b)0.5マイクロメートルのうち、大きい方の最小幅を有する光架橋形成部を有する。別の実施形態では、光架橋形成部の最小幅は、0.5マイクロメートル〜5マイクロメートルの範囲内である。
【0034】
光架橋形成部の最小幅は、a)コーティング組成物の塗布層の厚さ、及び/又は、b)光架橋性コーティング組成物の照射に用いた光の波長のうち、一方又は両方に関係する。塗布層が厚いほど、非常に薄い形成部、つまり、厚さの10パーセント未満の幅を有する形成部の形成がより困難になる。一方、塗布層が比較的薄いとき、例えば、5マイクロメートル未満であるとき、光架橋性コーティング組成物の光架橋に用いた光の波長は、0.5マイクロメートル未満の幅を有する光架橋形成部の形成を困難にする。150〜500ナノメートルの範囲の波長を有する光では、光架橋形成部は、0.5マイクロメートル以上に限定される。例えば、コーティング組成物の層が10マイクロメートルの厚さで基材に塗布される場合、光架橋形成部の最小幅は約1マイクロメートルであろう。用語「約」は、形成部の最小幅が10パーセント変化し得ることを意味する。したがって、上記の例では、光架橋形成部の最小幅は、0.9〜1.1マイクロメートルの範囲内であってよい。
【0035】
光架橋性コーティング組成物の塗布層の厚さは、0.01マイクロメートル〜300マイクロメートルの範囲内である。いくつかの実施形態では、光架橋コーティング組成物の塗布層の厚さは、0.1〜200マイクロメートルの範囲内である。別の実施形態では、光架橋コーティング組成物の層は、0.1マイクロメートル〜50マイクロメートルの範囲の厚さを有してよい。
【0036】
別の実施形態では、方法は、光架橋性コーティング組成物の層を基材の少なくとも一部の上に塗布する工程(2)に先立ち、基材の少なくとも一部に接着促進剤を塗布する工程を更に含む。好適な接着促進剤として、例えば、有機シラン化合物を挙げてよい。例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、ビス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロデシルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、尿素プロピルトリエトキシシラン、尿素プロピルトリメトキシシラン、又はこれらの組み合わせ。接着促進剤を使用する場合、光架橋性コーティング組成物の層の塗布の前に、接着促進剤の層を基材に塗布してよい。
【0037】
光架橋性コーティング組成物の層は、導電性材料、半導性材料、及び/又は非導電材料などの、様々な基材に塗布できる。例えば、基材は、ガラス、ポリマー、無機半導体、有機半導体、酸化スズ、酸化亜鉛、二酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛、酸化亜鉛スズ、酸化インジウムガリウム、酸化インジウムガリウム亜鉛、酸化インジウムスズ亜鉛、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、窒化ケイ素、銅、アルミニウム、又はこれらの組み合わせであってよい。光架橋性コーティング組成物の層を、スピンコーティング、スプレーコーティング、フローコーティング、カーテンコーティング、ローラーコーティング、ブラッシング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、リソグラフ印刷、ディップコーティング、ブレードコーティング又はドロップコーティング法によって塗布できる。スピンコーティングは、過剰量の光架橋性コーティング組成物を基材に塗布し、その後、基材を高速で回転させて遠心力で組成物を広げることを含む。得られたフィルムの厚さは、スピンコーティング速度、光架橋性コーティング組成物の濃度、並びに使用した溶媒に依存し得る。温度、圧力、及び湿度などの周囲条件も、光架橋性コーティング組成物の塗布層の厚さに影響し得る。
【0038】
基材に塗布した後、コーティング組成物の塗布層の高温への曝露、大気圧未満への曝露、塗布層上への直接的若しくは間接的ガス吹き込み、又はこれらの方法の組み合わせを用いて、キャリア媒体の少なくとも一部を除去できる。例えば、空気中又は任意選択的に少量の窒素ガスをパージした真空オーブン中で、コーティング組成物の塗布層を加熱してよい。別の実施形態では、キャリア媒体を除去するため、コーティング組成物の塗布層を60〜110℃の範囲の温度に加熱してよい。
【0039】
続いて、光架橋性コーティング組成物の塗布層の少なくとも一部を、光に曝露することによって照射(すなわち、架橋)してよい。この光は、典型的には、150ナノメートル(nm)〜約500ナノメートルの範囲の波長の紫外(UV)線である。いくつかの実施形態では、紫外線は、200〜450ナノメートルの範囲の波長であってよく、別の実施形態では、325〜425nmの範囲内であってよい。なお更なる実施形態では、曝露は、複数の波長への曝露によって、又は、選択した波長、例えば、404.7ナノメートル、435.8ナノメートル、若しくは365.4ナノメートルを照射することによって実行されてよい。多くの好適なUVランプがこの業界で既知であり、それを使用できる。光酸発生剤及び光増感剤の両方が存在しなかったとき、光架橋性フルオロポリマーを350ワットの高圧ショートアーク水銀ランプに曝露し、次に照射後ベークを行った後、光架橋が見られなかったことに留意されたい。
【0040】
光架橋性コーティング組成物は、UV−A光を用いて光架橋できる。光源への総曝露が、10ミリジュール/センチメートル
2(ミリジュール/cm
2)〜500ミリジュール/cm
2の範囲内であるとき、架橋を達成できる。別の実施形態では、紫外線曝露は、10〜250ミリジュール/cm
2の範囲内であってよく、なお更なる実施形態では、10〜100ミリジュール/cm
2の範囲内であってよい。曝露を、空気中又は窒素雰囲気中で実施してよい。
【0041】
所望の架橋形成部を形成するため、架橋性コーティング組成物の塗布層の少なくとも一部を照射し、照射された部分のみにおいて架橋プロセスを開始させてよい。光架橋性コーティング組成物の塗布層をマスクしてもよく、又は、照射工程を、集光光源を用いて実施し、架橋される部分にのみ光が接触するようにしてもよい。これらの手法は、当該技術分野において周知である。例えば、マスクを、光架橋性コーティング組成物の塗布層に直接施してもよい。この方法は、密着焼きとして知られている。近接プリンティングと呼ばれる別の実施形態では、マスクを、実際に層に接触させずに、光架橋性コーティング組成物の塗布層の上方約20〜50マイクロメートルに保持する。第3の実施形態では、露光装置が光を正確に投射し、収束させるため、実際の物理的なマスクが不要である。いくつかの実施形態では、マスクは、クロム又は他の金属製マスクであってよい。
【0042】
図1は、光架橋形成部の例を示す。
図1Aでは、基材1が、上面に塗布された光架橋性コーティング組成物の層2と共に示される。
図1Bは、光架橋性コーティング組成物の一部を照射し、コーティング組成物の未架橋部を除去した後の基材1及び光架橋コーティング組成物2aを示す。幅3による距離は、光架橋形成部の幅である。
【0043】
UV光への曝露後、光架橋性コーティング組成物の塗布層を加熱してよい。加熱工程は、80〜200℃の範囲の温度において実施してよい。別の実施形態では、加熱は、100〜175℃の範囲の温度において実施してよく、なお更なる実施形態では、130℃〜約150℃の範囲の温度において実施してよい。光架橋性コーティング組成物を、高温に約30秒間〜約30分間曝露してよい。別の実施形態では、この時間は、45秒間〜約15分間の範囲内、なお更なる実施形態では、1分間〜7分間の範囲内であってよい。
【0044】
光架橋性コーティング組成物が加熱されると、光架橋性フルオロポリマーを溶解するキャリア媒体を用いて光架橋性コーティング組成物を溶解することによって、未架橋の光架橋性コーティング組成物を除去してよい。場合によっては、除去工程後に少量の未架橋の光架橋性コーティング組成物が残る場合がある。残ったポリマーは、プラズマ又は第2の洗浄工程を用いて除去してよい。キャリア媒体は、光架橋性フルオロポリマーの溶媒及び非溶媒の混合物であってよい。いくつかの実施形態では、溶媒対非溶媒の比率は、1:0〜3:1の範囲内であってよい。別の実施形態では、溶媒対非溶媒の比率は、1:0.1〜3:1の範囲内であってよい。溶媒は、光架橋性フルオロポリマーの溶媒和能を有する、キャリア媒体に挙げられる任意のものであってよい。いくつかの実施形態では、溶媒は、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、又はこれらの組み合わせであってよい。別の実施形態では、非溶媒は、ヘキサン及び/又はイソプロパノールであってよい。
【0045】
また本開示の保護層は、発光ダイオード中でバンク層として使用することもできる。この特定の用途では、保護層を用いて、例えば、有機発光ダイオードを用いるディスプレイデバイスの製造において1つのダイオードを別のものと分離することができ、バンク層は、赤色、青色、及び緑色発光ダイオードを分離するバリア層としての機能を果たし得る。有機発光ダイオードのバンク層として特に有用であり得る。
【0046】
また本開示は、光架橋コーティング組成物の層を備える物品にも関する。
【実施例】
【0047】
特に明記しない限り、全ての材料は、Sigma−Aldrich Company(Saint Louis.Missouri)から入手可能である。
【0048】
V−601反応開始剤、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレートは、Wako Chemicals(Richmond,Virginia)から入手可能である。
【0049】
TEFLON(登録商標)ポリテトラフルオロエチレン及びKAPTON(登録商標)ポリイミドシートは、E.I.Du Pont de Nemours and Company(Wilmington,Delaware)から入手可能である。
【0050】
MELINEX(登録商標)ST504熱安定化ポリエステルフィルムは、DuPont Teijin Films(Chester,Virginia)から入手可能である。
【0051】
OAIモデル200マスクアライナは、OAI(San Jose,California)から入手可能である。
【0052】
BLAK−RAY(登録商標)長波UVランプモデルB100APは、UVP,LLC(Upland,California)から入手可能である。
【0053】
IRGACURE(登録商標)GSID−26−1光酸発生剤は、BASF Corporation(Florham Park,New Jersey)から入手可能である。
【0054】
SILFORCE(登録商標)UV9387C光開始剤は、Momentive(Columbus,Ohio)から入手可能である。
【0055】
モデルLC6B卓上型コンベヤー及びF300 UVランプは共に、Heraeus Noblelight Fusion UV(Gaithersburg,Maryland)から入手可能である。
【0056】
DRIERITE(登録商標)乾燥剤は、W.A.Hammond Drierite Co.Ltd.(Xenia,Ohio)から入手可能である。
【0057】
Autovial(商標)フィルターは、GE Life Sciences(Pittsburgh,Pennsylvania)から入手可能である。
【0058】
フルオロポリマー#1の調製
400ミリリットル(mL)のオートクレーブを−20℃未満に冷却し、36gのエチルビニルエーテル中に溶解した1グラム(g)の粉末炭酸カリウム、0.24gのV−601反応開始剤、及び2gのアリルグリシジルエーテルを投入した。オートクレーブを排気し、50gのテトラフルオロエチレンを更に投入した。反応混合物を振盪し、66℃に加熱した。反応中、オートクレーブ中の圧力は、最大2295キロパスカル(333ポンド毎平方インチ(psi))であり、約12時間後に958kPa(139psi)まで低下した。この反応により、69グラムのゴム状の塊が得られた。生成物の62gの部分に、窒素を約3日間パージし、続いて、74℃の真空オーブン中で19時間更に乾燥させると、57gのゴムエラストマーが得られた。C
13 NMRにより、47.3モルパーセントのテトラフルオロエチレン、50.5モルパーセントのエチルビニルエーテル、及び2.2モルパーセントのアリルグリシジルエーテルであることが示された。テトラヒドロフラン(THF)中のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、数平均分子量が262,000、重量平均分子量が578,000であることが示された。示差走査熱量測定(DSC)により、Tgが−4℃であることが示された。
【0059】
光架橋フルオロポリマー#1の調製
4gのフルオロポリマー#1のサンプルを16gのメチルイソブチルケトンに溶解し、0.2gの光酸発生剤、(p−イソプロピルフェニル)(p−メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、及び0.05gの光増感剤、2−イソプロピルチオキサントンを加えた。混合容器をアルミホイルで包んで光への曝露を制限し、光酸発生剤及び光増感剤が共に溶解するまで回転させた。溶液を、MELINEX(登録商標)ST504ポリエステルフィルムの上にスピンコーティングして、薄いフィルムを得て、これを65℃で60秒間プリベークして、残留溶媒の少なくとも一部を除去した。フィルムの上面に、クロム製フォトマスクを軽く押し付け、この組立体を窒素パージボックスに置いて、モデル200マスクアライナ、及び、360〜400ナノメートルあたりのUVAを放射するUV曝露器を用いて、12ミリワット/平方センチメートルの出力の350ワットの高圧ショートアークランプに25秒間曝露した。次に、曝露したフィルムを、130℃で3分間ポストベークし、光生成酸がエポキシド基を介してポリマーを架橋し、光架橋フルオロポリマー#1が生成するのを可能にした。次に、フィルムを室温まで冷却し、続いて、架橋フィルム/ポリエステル積層体をメチルイソブチルケトン中に65秒間浸して、未架橋材料を除去した。このプロセスにより、3マイクロメートルの線間隔を有する架橋フルオロポリマーパターンが得られた。
【0060】
フルオロポリマー#2の調製
この実施例は、フルオロポリマーが溶液重合法によっても生成できることを示す。
【0061】
400mLのオートクレーブを−20℃未満に冷却し、36gのエチルビニルエーテルに溶解した1gの炭酸カリウム、0.24gのV−601反応開始剤、100mLのエチルアセテート、及び2gのアリルグリシジルエーテルを投入した。オートクレーブを排気し、50gのテトラフルオロエチレンを更に投入した。反応混合物を振盪し、66℃に加熱した。反応中、オートクレーブ中の圧力は、最大1903kPaであり、約8時間後に386kPaまで低下した(276psi、56psiまで低下)。この反応により粘稠な溶液が得られ、これをトレイ中のTEFLON(登録商標)シートに移した。75℃において、窒素を約21時間吹き付けると、65gの灰白色のポリマーが得られた。THF中のSECによって、数平均分子量が150,000、重量平均分子量が316,000であることが示された。
【0062】
フルオロポリマー#3の調製
400mLのオートクレーブを−20℃未満に冷却し、12gのアリルグリシジルエーテル、36gのエチルビニルエーテル、1gの炭酸カリウム、及び0.24gのV−601反応開始剤を投入した。オートクレーブを排気し、59gのクロロトリフルオロエチレンを更に投入した。反応混合物を振盪し、66℃に加熱した。オートクレーブ中の圧力は、最大876kPaであり、約16時間後に441kPaまで低下した(127psi、64psiまで低下)。この反応により黄色の液体が得られ、これをロータリーエバポレーターで粘稠な液体まで除去する。この粘稠な液体を1200mLの水及び300mLのメチルアルコールの冷却混合液に加え、激しく撹拌すると、弾力のある白色固体が得られ、これをトレイ中のTEFLON(登録商標)シートに移した。窒素を吹き付けた後、トレイを80℃の真空オーブンに3時間置くと、69gの固い透明なポリマーが得られた。C
13 NMRにより、49モルパーセントのクロロトリフルオロエチレン、44.4モルパーセントのエチルビニルエーテル、及び6.7モルパーセントのアリルグリシジルエーテルであることが示された。SECによって、数平均分子量が26,000、重量平均分子量が66,000であることが示された。DSCによって、Tgが8℃であることが示された。
【0063】
光架橋フルオロポリマー#3の調製
0.1gのフルオロポリマー#3のサンプルを、0.006gの光酸発生剤、(p−イソプロピルフェニル)(p−メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、0.002gの光増感剤、2−イソプロピルチオキサントン、及び5mLのメチルイソブチルケトンと混合した。混合物を、溶液が形成されるまで回転させ、溶液を2枚のスライドグラス上に落として乾燥させた。1つ目のスライドを140℃で5分間窒素下で加熱し、室温まで冷却した後、フィルムはメチルイソブチルケトンに容易に溶解したことより、架橋が起きていないことが示された。2つ目のスライドを、BLAK−RAY(登録商標)長波紫外線ランプ、モデルB100 APを用いて1分間照射し、次に140℃で5分間窒素下で加熱すると、光架橋フルオロポリマー#3が得られた。室温に冷却後、フィルムは既にメチルイソブチルケトンに溶解せず、架橋フィルムであることが示された。
【0064】
フルオロポリマー#4の調製
400mLのオートクレーブを−20℃未満に冷却し、2gのアリルグリシジルエーテル、36gのエチルビニルエーテル、1gの炭酸カリウム、及び0.24gのV−601反応開始剤を投入した。オートクレーブを排気し、75gのヘキサフルオロプロピレンを投入した。反応混合物を振盪し、66℃に加熱した。オートクレーブ中の圧力は、最大1282kPaであり、約15時間後に758kPaまで低下した(186psi、110psiまで低下)。アセトンを用いて、反応混合物をオートクレーブから洗浄すると、2相混合物が得られ、これをWaringブレンダーを用いて高速で混合しながら、200mLのメタノールを加えた。液相をデカントし、追加の200mLのメタノールを加えた。液相を再度デカントし、激しく混合しながら追加の200mLのメタノールを加えた。固体生成物をTEFLON(登録商標)処理したトレイに移し、数日間窒素をパージして、最後に90℃の真空オーブン中で3時間加熱した。これにより、76gの弾力のある固体が得られた。C13 NMRにより、49.3モルパーセントのヘキサフルオロプロピレン、49.2モルパーセントのエチルビニルエーテル、及び1.6モルパーセントのアリルグリシジルエーテルであることが示された。THF中のSECによって、数平均分子量が99,000、重量平均分子量が179,000であることが示された。DSCによって、Tgが18℃であることが示された。
【0065】
光架橋フルオロポリマー#4及び#4aの調製
0.1gのフルオロポリマー#4のサンプルを、0.004gの光酸発生剤、(p−イソプロピルフェニル)(p−メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、0.002gの光増感剤、2−イソプロピルチオキサントン、及び5mLのメチルイソブチルケトンと混合した。混合物を、溶液が形成されるまで回転させ、溶液を2枚のスライドグラス上に落として乾燥させた。1つ目のスライドを140℃で5分間で加熱し、室温まで冷却した後、フィルムはメチルイソブチルケトンに容易に溶解したことより、架橋が起きていないことが示された。2つ目のスライドを、BLAK−RAY(登録商標)長波紫外線ランプ、モデルB100 APを用いて1分間照射し、次に140℃で5分間窒素下で加熱すると、光架橋フルオロポリマー#4が得られた。室温に冷却後、フィルムは既にメチルイソブチルケトンに溶解せず、フィルムが架橋されたことが示された。
【0066】
0.1gのフルオロポリマー#4のサンプルを、0.002gのIRGACURE(登録商標)GSID−26−1光酸発生剤及び5mLのメチルイソブチルケトンと混合し、回転させて溶液を得た。2つ目のスライドを、BLAK−RAY(登録商標)長波紫外線ランプ、モデルB100 APを用いて1分間照射し、次に140℃で5分間窒素下で加熱すると、光架橋フルオロポリマー#4aが得られた。室温に冷却後、フィルムは既にメチルイソブチルケトンに溶解せず、フィルムが架橋されたことが示された。
【0067】
フルオロポリマー#5の調製
400mLのオートクレーブを−20℃未満に冷却し、2gのアリルグリシジルエーテル、36gのエチルビニルエーテル、1gの炭酸カリウム、及び0.24gのV−601反応開始剤を投入した。オートクレーブを排気し、83gのペルフルオロメチルビニルエーテルを更に投入した。反応混合物を振盪し、66℃に加熱した。オートクレーブ中の圧力は、最大1082kPaであり、約14時間後に545kPaまで低下した(157psi、79psiまで低下)。反応混合物を数百mLのアセトンに溶解し、得られた溶液を、激しく撹拌しながら、Waringブレンダー中の1200mLのメタノール及び300mLの水に加えた。沈殿したゴムをTEFLON(登録商標)処理したトレイに移し、数日間窒素をパージして、最後に75℃の真空オーブン中で3.5時間加熱して、78gの弾力のある固体を得た。THF中のSECによって、数平均分子量が53,000、重量平均分子量が119,000であることが示された。DSCによって、Tgが−6℃であることが示された。
【0068】
光架橋フルオロポリマー#5及び#5aの調製
0.1gのフルオロポリマー#5のサンプルを、0.004gの光酸発生剤、(p−イソプロピルフェニル)(p−メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、0.002gの光増感剤、2−イソプロピルチオキサントン、及び5mLのメチルイソブチルケトンと混合した。混合物を、溶液が形成されるまで回転させ、溶液を2枚のスライドグラス上に落として乾燥させた。1つ目のスライドを140℃で5分間で加熱し、室温まで冷却した後、フィルムはメチルイソブチルケトンに容易に溶解したことより、架橋が起きていないことが示された。2つ目のスライドを、BLAK−RAY(登録商標)長波紫外線ランプ、モデルB100 APを用いて1分間照射し、次に140℃で5分間窒素下で加熱すると、光架橋フルオロポリマー#5が得られた。室温に冷却後、フィルムは既にメチルイソブチルケトンに溶解せず、フィルムが架橋されたことが示された。
【0069】
0.1gのフルオロポリマー#5のサンプルを、0.002gのIRGACURE(登録商標)GSID−26−1光酸発生剤及び5mLのメチルイソブチルケトンと混合し、回転させて溶液を得た。2つ目のスライドを、BLAK−RAY(登録商標)長波紫外線ランプ、モデルB100 APを用いて1分間照射し、次に140℃で5分間窒素下で加熱すると、光架橋フルオロポリマー#5aが得られた。室温に冷却後、フィルムは既にメチルイソブチルケトンに溶解せず、フィルムが架橋されたことが示された。
【0070】
フルオロポリマー#6の調製
400mLのオートクレーブを−20℃未満に冷却し、12gのアリルグリシジルエーテル、36gのエチルビニルエーテル、1gの炭酸カリウム、及び0.24gのV−601反応開始剤を投入した。オートクレーブを排気し、83gのペルフルオロメチルビニルエーテルを更に投入した。反応混合物を振盪し、66℃に加熱した。オートクレーブ中の圧力は、最大979kPaであり、約12時間後に793kPaまで低下した(142psi、115psiまで低下)。反応混合物を数百mLのアセトンに溶解してオートクレーブから取り出し、続いて、約113gの粘稠な液体まで蒸発させた。得られた粘稠な液体を、激しく撹拌しながら、Waringブレンダー中の1200mLのメタノール及び300mLの水に加えた。沈殿した粘稠な層をTEFLON(登録商標)処理したトレイに移し、一晩窒素をパージして、最後に75℃の真空オーブン中で3時間加熱した。THF中のSECによって、数平均分子量が22,000、重量平均分子量が37,000であることが示された。DSCによって、Tgが−16℃であることが示された。
【0071】
光架橋フルオロポリマー#6の調製
0.1gのポリマー#6のサンプルを、0.0082gのSILFORCE(登録商標)UV9387C光開始剤、及び、5mLメチルイソブチルケトン中の0.02gの2−イソプロピルチオキサントンと混合した。混合物を、溶液が形成されるまで回転させ、溶液を2枚のスライドグラス上に落とした。1つ目のスライドを140℃で5分間で加熱し、室温まで冷却した後、2分間のスライド浸漬後、フィルムはメチルイソブチルケトンに容易に溶解したことより、架橋が起きていないことが示された。2つ目のスライドを、BLAK−RAY(登録商標)長波紫外線ランプ、モデルB100 APを用いて1分間照射し、次に140℃で5分間窒素下で加熱すると、光架橋フルオロポリマー#5が得られた。室温に冷却後、2分間の浸漬後にフィルムは既にメチルイソブチルケトンに溶解せず、フィルムが架橋されたことが示された。
【0072】
フルオロポリマー#7の調製
400mLのオートクレーブを−20℃未満に冷却し、36gのエチルビニルエーテル中に溶解した1gの粉末炭酸カリウム、0.24gのV−601反応開始剤、及び4gのアリルグリシジルエーテルを投入した。オートクレーブを排気し、50gのテトラフルオロエチレンを投入した。オートクレーブを振盪し、66℃に加熱した。オートクレーブ中の圧力は、最大2379kPaであり、約16時間後に1103kPaまで低下した(345psi、160psiまで低下)。反応混合物をアセトンに溶解し、4つに分けて、それぞれ1200mLのメタノール及び300mLの水と共にWaringブレンダーに加えた。沈殿物に窒素をパージし、65℃の真空オーブン中で一晩乾燥させ、80℃の真空オーブン中で6時間仕上げ加工すると、61gのゴムエラストマーが得られた。THF中のSECによって、数平均分子量が137,000、重量平均分子量が283,000であることが示された。
【0073】
光架橋フルオロポリマー#7の調製
6gのフルオロポリマー#7のサンプルを、16gのメチルイソブチルケトンに加え、回転させて溶液を得た。0.45マイクロメートルのポリテトラフルオロエチレンシリンジフィルターを通して、溶液を濾過した。0.075gの(p−イソプロピルフェニル)(p−メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート及び0.3gの2−イソプロピルチオキサントンを、濾過した溶液に加え、透明な溶液を得て、これを、TEFLON(登録商標)シートに移して、まず、窒素パージによって部分的に乾燥させ、次に、窒素をパージした50℃の真空オーブン中で28時間加熱した。乾燥した塊を切り刻み、そのかけらを直径60ミリメートル、厚さ1ミリメートルの円形型の中央部に置き、続いて、44,483ニュートン(4,536重量キログラム(10,000重量ポンド))で1分間、133,439ニュートン(13,607重量キログラム(30,000重量ポンド))で3分間、圧をかけた。ポリマーを型から取りだして折り畳み、型に戻して、100℃にて0ニュートン(0重量キログラム)で3分間、続いて、100℃にて88,956ニュートン(9071重量キログラム(20,000重量ポンド))で3分間、圧をかけた。フルオロポリマーを型から取りだし、バリを切り取ると、直径60ミリメートル、厚さ1ミリメートルの円形のフルオロポリマー片が残った。この片を、F300ランプを備えたモデルLC6B卓上型コンベヤーに入れ、ランプの下を2回通過させ、裏返して、ランプの下を更に2回通過させて、約4ジュール/cm
2の総曝露とした。この曝露は空気中で完了させた。次に、ポリマーを、窒素パージした140℃の真空オーブン中で5分間加熱し、続いて、開放空気中で1日間放置した。
【0074】
光架橋フルオロポリマー#7の吸水性
光架橋フルオロポリマー#7の片を50℃の真空オーブン中で24時間加熱し、DRIERITE(登録商標)乾燥剤を含む容器に熱いまま移し、冷却後すぐに重量を測定すると、4.3947gであった。この片を、周囲温度(20〜22℃)において脱イオン水中に24時間浸した。この片を水から取り出し、ティッシュペーパーで素早く拭って乾燥させ、再度重量を測定すると4.3989gであり、0.096パーセントの重量増加を示した。0.0572gの銀片を切り取り、銀を44時間メチルイソブチルケトン中で回転させると、0.2130に重量が増加、つまり272パーセントの重量増加が得られる。銀が溶解しなかったことから、サンプルが架橋されたことが確認される。
【0075】
フルオロポリマー#7の光画像化
4gのフルオロポリマー#7を22.7gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに加え、回転させて溶液を作製した。この容器をアルミホイルで包んで遮光し、0.05gの(p−イソプロピルフェニル)(p−メチルフェニル)ヨードニウムボレート及び0.1gの2−イソプロピルチオキサントンを加えた。回転させて溶液を作製した後、0.45マイクロメートルのガラスマイクロファイバーフィルター(AUTOVIAL(商標)AV125UGNF)を通し、受け取るバイアル瓶をアルミホイルで包んで、溶液を濾過した。溶液を、4500回毎分(rpm)でシリコンウエハ上にスピンコーティングした。フィルムを、ホットプレート上で65℃にて30秒間プリベークした。フィルムの上面に、クロム製フォトマスクを軽く押し付け、この組立体を窒素パージボックスに置いて、12ミリワット/cm
2の出力の350ワットの高圧ショートアークランプに3秒間曝露した(OAIモデル200マスクアライナ、及び、360〜400ナノメートルあたりのUVAを放射するUV曝露器)。続いて、フィルムを170℃にて40秒間ポストベークした。フィルム/シリコンウエハ支持体を65秒間プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/メタノール中に浸漬すると、10マイクロメートルの線と間隙、かつ厚さ約100ナノメートルを有するパターンが得られた。
【0076】
フルオロポリマー#7の誘電率及びtanδ
3gのフルオロポリマー#7のサンプルに、KAPTON(登録商標)シートの間において、100℃にて0ニュートン(0重量ポンド)で3分間、その後100℃にて約44483ニュートン(4536重量キログラム(10,000重量ポンド))で3分間圧をかけ、直径約11.4センチメートル、厚さ約254マイクロメートルの円形フィルムを得た。得られたフィルムを切断し、右スプリット−シリンダ共振器の、公称直径約7センチメートル(2.75インチ)、公称高さ約11.9センチメートル(4.7インチ)の空洞に広げた。フルオロポリマーフィルムを、共振器の上半分と下半分との間にある中央線に沿って挿入したが、このときTE011モードの電界は最大である。5365.81MHzにおいて、フィルム表面と平行して測定すると、誘電率が2.56±0.17であり、tanδが0.031±0.001であることがわかった。
【0077】
光架橋フルオロポリマー#7の誘電率及びtanδ
4gのフルオロポリマー#7のサンプルを16gのメチルイソブチルケトンと共に回転させた。フルオロポリマーが溶解すると、0.05gの(p−イソプロピルフェニル)(p−メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート及び0.2gの2−イソプロピルチオキサントンを加えた。次に、混合物を光の曝露から保護した。得られた溶液をTEFLON(登録商標)処理したトレイに移し、窒素をパージした。乾燥したポリマーに、100℃にて0キログラムで3分間、その後100℃にて22,241ニュートン(2268重量キログラム(重量5000ポンド))で3分間圧をかけ、約12.7センチメートル、厚さ203マイクロメートルの円形フィルムを作製した。このフィルムを、UV Fusion Systems,Inc.の、F300 UVランプを備えたモデルLC6B 卓上型コンベヤーを用いて、約1ジュール/cm2のUV光に曝露した。フィルムを、140℃の窒素パージしたオーブン中で5分間加熱した。小さいフィルム片(0.0338g)を切り出し、1gのメチルイソブチルケトンと共に15日間回転させた。その後、フィルムを取り出した重量測定をすると(0.1320g、290パーセントの重量増加)、サンプルが架橋されたことが確認された。残りのフィルムを、右スプリット−シリンダ共振器の、公称直径約7センチメートル(2.75インチ)、公称高さ約11.9センチメートル(4.7インチ)の空洞に切断した。フィルムを、共振器の上半分と下半分との間にある中央線に沿って挿入したが、このときTE011モードの電界は最大であった。5384.84MHzにおいて、フィルム表面と平行して測定すると、誘電率が2.89±0.24であり、tanδが0.022±0.001であることがわかった。
【0078】
フルオロポリマー#8の調製
400mLのオートクレーブを−20℃未満に冷却し、12gのアリルグリシジルエーテル、36gのエチルビニルエーテル、1gの粉末炭酸カリウム、及び0.24gのV−601反応開始剤を投入した。オートクレーブを排気し、58gのクロロトリフルオロエチレンを更に投入した。反応混合物を振盪し、66℃に加熱した。オートクレーブ中の圧力は、最大883kPaであり、約16時間後に572kPaまで低下した(128psi、83psiまで低下)。これによってゲル状の反応混合物が得られ、これをアセトンに溶解して、ロータリーエバポレーターで蒸発させると、粘度が高い油が得られた。この粘稠な液体を1200mLの水及び300mLのメタノールの冷却混合液に加え、激しく撹拌すると、固体が得られ、これをトレイ中のTEFLON(登録商標)シートに移した。窒素を吹き付けた後、80℃の真空オーブンに3時間置くと、43gのフルオロポリマー#8が得られた。
【0079】
フルオロポリマー#8の誘電率及びtanδ
2枚のKAPTON(登録商標)ポリイミドシートの間で、加熱プレスにより3gのフルオロポリマー#8のサンプルに圧をかけた。加熱プレス条件は以下の通りとした。100℃にて0ニュートン(0重量キログラム)で3分間、100℃にて13,346ニュートン(1,361重量キログラム(3,000重量ポンド))で3分間、その後、フルオロポリマーを、KAPTON(登録商標)ポリイミドシートから取り出すことによって回収し、直径約11.4センチメートル、厚さ約218マイクロメートルのフィルムを得る。得られたフィルムを切断し、右スプリット−シリンダ共振器の、公称直径約7センチメートル(2.75インチ)、公称高さ約11.9センチメートル(4.7インチ)の空洞に広げた。フルオロポリマーフィルムを、共振器の上半分と下半分との間にある中央線に沿って挿入したが、このときTE011モードの電界は最大である。5370.26MHzにおいて、フィルム表面と平行して測定すると、誘電率が2.44±0.19であり、tanδが0.032±0.002であることがわかった。
【0080】
フルオロポリマー#9の調製
1リットルの撹拌式オートクレーブに、108gのエチルビニルエーテルに溶解した、0.7gのV−601反応開始剤、3gの炭酸カリウム、300mLのメチルアセテート、及び7gのアリルグリシジルエーテルを投入した。オートクレーブを閉じ、排気して、345kPa(50psi)のテトラフルオロエチレンで圧をかけ、オートクレーブがテトラフルオロエチレンによって1034kPa(150psi)まで圧をかけられた後、3回排気し、撹拌しながら66℃まで加熱した。66℃になると、圧力が1724kPa(250psi)まで上昇するまで追加のテトラフルオロエチレンをオートクレーブに加え、約1724kPa(250psi)でその後188分間維持し、そのときに76gのテトラフルオロエチレンを投入した。オートクレーブの内容物を冷却し、粘稠な液体として回収した。この液体を約1500ミリリットルのアセトンで希釈し、1マイクロメートルポリテトラフルオロエチレンフィルターの上部に、5マイクロメートルのポリプロピレンプレフィルターを置いて通した。濾液をロータリーエバポレーターで、粘稠なシロップまで蒸発させた。このシロップを、TEFLON(登録商標)処理した平鍋に熱いまま移し、ここで、粘着性固体まで蒸発させ、その後、75℃の真空オーブン中で窒素パージしながら3時間仕上げ加工した。これにより、透明でわずかに黄色の若干気泡したシートとして、162gのフルオロポリマー#9が得られた。
【0081】
フルオロポリマー#9の光画像化
22.7gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート中に、4gのフルオロポリマー#9、0.05gの(p−イソプロピルフェニル)(p−メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、及び0.05gの2−イソプロピルチオキサントンを溶解することによって、溶液を調製した。この溶液を、1H,1H,2H,2H−ペルフルオロデシルトリエトキシシランで処理したシリコンウエハ上に3000rpmでスピンコーティングし、厚さ1.9マイクロメートルのコーティングを得た。このフィルムを、100℃のホットプレート上で3分間プリベークし、その後、350ワットの水銀ランプを利用する、Karl SussモデルMA6マスクアライナを用いて画像化させた。総曝露量である37.5ミリジュール/cm
2は、較正された透過マスクを用いて21ミリジュール/cm
2に減少した。依然としてシリコンウエハ上にある曝露したフィルムを、その後、135℃で3分間ポストベークし、光生成酸をフルオロポリマー#9に架橋させた。フィルムを90秒間プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート中に浸漬し、その後、1:2のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/イソプロパノールでリンスすると、厚さ1.9マイクロメートルのフィルム上に約4.5マイクロメートルの形成部を有するパターンが得られた。
図2は、本実施例の画像化物品の顕微鏡写真を示す。
【0082】
誘電率と様々な濃度の光酸発生剤/光増感剤との比較
22.7gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート中に、4gのフルオロポリマー#9、0.05gの(p−イソプロピルフェニル)(p−メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、及び0.05gの2−イソプロピルチオキサントンを溶解することによって、溶液を調製した。この溶液を0.45マイクロメートルのガラスフィルターに通し、その後、酸化インジウムスズ(ITO)をコーティングしたガラスブランクに1000rpmでスピンコーティングした。次に、フィルムを100℃で5分間プリベークし、200mJ/cm
2のUV光に曝露し、135℃で3分間ポストベークして、厚さ3.6マイクロメートルの光架橋フィルムを得た。
【0083】
Gamry Reference 600ポテンショスタット/ガルバノスタット/ZRAをポテンショスタットモードで使用して、誘電率を測定した。測定に用いたセルは、効果的には、内径2.54センチメートル(1インチ)のPYREX(登録商標)チューブであった。電解質を0.5Mの塩化ナトリウム溶液とした。参照電極及び対電極は、それぞれAg/AgCl及び白金とした。ゼロボルト対10mVの交流信号を有する開路電位において、ヘルツ未満〜100KHzの範囲の周波数にわたって測定を実施した。周波数1ディケードあたり、10回の測定を実施した。Randlesセルモデルを用いて、データフィットを行い、100kHzにおけるフィルムのキャパシタンスを決定した。グランドプレーンはITOでコーティングしたガラス基材とした。ポリマーフィルムを含まずに測定を実施することによって、算出においてITO抵抗及び溶液抵抗の両方を考慮した。誘電性は、100kHzにおいて2.5±0.2であることがわかった。
【0084】
22.7gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート中に、4gのフルオロポリマー#9、0.025gの(p−イソプロピルフェニル)(p−メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、及び0.025gの2−イソプロピルチオキサントンを溶解することによって、溶液を調製した。この溶液を0.45マイクロメートルのガラス繊維フィルターに通し、その後、酸化インジウムスズをコーティングしたガラスブランクに1000rpmでスピンコーティングした。次に、フィルムを100℃で5分間プリベークし、全体で200mJ/cm
2に曝露し、135℃で3分間ポストベークして、厚さ4マイクロメートルの光架橋フィルムを得た。
【0085】
Gamry Reference 600ポテンショスタット/ガルバノスタット/ZRAをポテンショスタットモードで使用して、誘電率を測定した。測定に用いたセルは、効果的には、内径2.54センチメートル(1インチ)のPYREX(登録商標)チューブであった。電解質を0.5Mの塩化ナトリウム溶液とした。参照電極及び対電極は、それぞれAg/AgCl及び白金とした。ゼロボルト対10mVの交流信号を有する開路電位において、ヘルツ未満〜100KHzの範囲の周波数にわたって測定を実施した。周波数1ディケードあたり、10回の測定を実施した。Randlesセルモデルを用いて、データフィットを行い、100kHzにおけるフィルムのキャパシタンスを決定した。グランドプレーンはITOでコーティングしたガラス基材とした。ポリマーフィルムを含まずに測定を実施することによって、算出においてITO抵抗及び溶液抵抗の両方を考慮した。誘電性は、100kHzにおいて2.3±0.2であることがわかった。