(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
硬化性のモデル材及び/又は硬化性のサポート材を含む単位層を順次積層して得た造形中間物から、前記サポート材で構成される支持部材を除去することで、主に前記モデル材で構成される三次元造形物を生成する三次元造形装置であって、
前記単位層を積層してなる積層構造体を載置可能な載置台と、
前記載置台に対して相対移動しながら、前記モデル材の液滴及び前記サポート材の液滴を前記積層構造体の最上面に向けて吐出する吐出手段と、
前記最上面にある前記モデル材及び前記サポート材を硬化する硬化手段と、
前記造形中間物の一部をなす前記支持部材が、前記三次元造形物と前記載置台の間に配置される土台部を含んで構成される場合、該土台部と接触する前記三次元造形物の最下面領域内にて前記モデル材及び前記サポート材を混在して配置するように、前記吐出手段及び前記硬化手段を制御する混在配置手段と、を備え、
前記混在配置手段は、前記最下面領域内にて前記モデル材及び前記サポート材を市松模様状に配置するように、前記吐出手段及び前記硬化手段を制御することを特徴とする三次元造形装置。
前記混在配置手段は、前記サポート材の液滴が市松模様状に配置された前記最下面領域を含む先行単位層、及び前記モデル材の液滴が市松模様状に配置された前記最下面領域を含む後行単位層を順次重ね合わせて積層するように、前記吐出手段及び前記硬化手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の三次元造形装置。
前記混在配置手段は、前記モデル材と前記サポート材の色差が閾値よりも大きい場合、前記先行単位層及び前記後行単位層を順次重ね合わせて積層するように、前記吐出手段及び前記硬化手段を制御することを特徴とする請求項2に記載の三次元造形装置。
前記混在配置手段は、前記モデル材の液滴及び前記サポート材の液滴が市松模様状に配置された前記最下面領域を含む混在単位層を積層するように、前記吐出手段及び前記硬化手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の三次元造形装置。
前記混在配置手段は、前記モデル材と前記サポート材の色差が閾値よりも小さい場合、前記混在単位層を積層するように前記吐出手段及び前記硬化手段を制御することを特徴とする請求項4に記載の三次元造形装置。
硬化性のモデル材及び/又は硬化性のサポート材を含む単位層を順次積層して得た造形中間物から、前記サポート材で構成される支持部材を除去することで、主に前記モデル材で構成される三次元造形物を生成する三次元造形方法であって、
前記単位層を積層してなる積層構造体を載置可能な載置台に対して相対移動しながら、前記モデル材の液滴及び前記サポート材の液滴を前記積層構造体の最上面に向けて吐出する吐出工程と、
前記最上面にある前記モデル材及び前記サポート材を硬化する硬化工程と、
前記造形中間物の一部をなす前記支持部材が、前記三次元造形物と前記載置台の間に配置される土台部を含んで構成される場合、該土台部と接触する前記三次元造形物の最下面領域内にて前記モデル材及び前記サポート材を混在して配置するように、前記吐出工程及び前記硬化工程を制御する混在配置工程と、を備え、
前記混在配置工程は、前記最下面領域内にて前記モデル材及び前記サポート材を市松模様状に配置するように、前記吐出工程及び前記硬化工程を制御することを特徴とする三次元造形方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る三次元造形装置について、三次元造形方法との関係において好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0020】
<三次元造形装置10の要部構成>
図1は、この実施形態に係る三次元造形装置10の要部を示す概略図である。より詳しくは、
図1(A)は三次元造形装置10の概略側面図であり、
図1(B)は三次元造形装置10の概略平面図である。本図では、生成途中の三次元造形物100である積層構造体102が表記されている。
【0021】
積層構造体102は、三次元造形物100の原料・素材であるモデル材104と、モデル材104を外側又は内側から支持するサポート材106とから構成される。つまり、積層構造体102は、モデル材104及び/又はサポート材106を含む単位層141〜147(
図7、
図10、
図11参照)を鉛直方向に沿って順次積層してなる。
【0022】
三次元造形装置10は、積層構造体102を載置する載置部12、モデル材104及びサポート材106の吐出機構を搭載するキャリッジ14、及び、キャリッジ14をX方向及びY方向に駆動させるキャリッジ駆動部16を含んで構成される、インクジェット方式の造形装置である。
【0023】
載置部12は、平坦な作業面18を有する載置台20と、作業面18の法線方向(Z方向)に載置台20を移動させるステージ駆動部22を有する。キャリッジ駆動部16は、X方向に沿って平行に延びる一対のガイドレール24、24(Xバー)と、各ガイドレール24に沿って移動可能な2つのスライダ26、26と、2つのスライダ26、26間に架け渡されると共にY方向に延びるキャリッジレール28(Yバー)を有する。
【0024】
キャリッジ14は、該キャリッジ14を取り付けたキャリッジレール28に沿って、又は、キャリッジレール28と一体的に各ガイドレール24、24に沿って移動可能に構成される。これにより、キャリッジ14及び載置台20は、互いに交差するX方向、Y方向、Z方向に対してそれぞれ相対的に移動可能である。この実施形態では、X方向及びY方向は「水平方向」に、Z方向は「鉛直方向」にそれぞれ一致し、3つの方向は互いに直交する関係下にある。
【0025】
キャリッジ14には、流動性のモデル材104及び流動性のサポート材106(以下、総称して「液滴30」ともいう)を積層構造体102の最上面108に向けて吐出する吐出ユニット32(吐出手段)と、最上面108を平坦化する平坦化ローラ34(平坦化手段)と、最上面108にある液滴30を硬化する硬化ユニット36(硬化手段)がそれぞれ搭載される。
【0026】
吐出ユニット32の吐出面38は、作業面18或いは最上面108に対向する位置関係下にある。吐出ユニット32は、同一の又は異なる色のモデル材104を吐出する複数の吐出ヘッド40、及び、サポート材106を吐出する1つの吐出ヘッド42を含んで構成される。吐出ヘッド40、42による液滴30の吐出機構として種々の方式を採ってもよい。例えば、圧電素子を含んで構成されるアクチュエータの変形によって液滴30を吐出する方式を適用してもよい。また、ヒータ(発熱体)を介してモデル材104又はサポート材106を加熱することで気泡を発生させ、その圧力で液滴30を吐出する方式を適用してもよい。
【0027】
各吐出ヘッド40、42の吐出面38側には、配列方向(本図例ではX方向)に沿って複数のノズル44を並べたノズル列46が形成されている。吐出ユニット32に6つの吐出ヘッド40が設けられている場合、例えば、6つの吐出ヘッド40は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)、クリア(CL)、ホワイト(W)に着色されたモデル材104の液滴30をそれぞれ吐出する。
【0028】
硬化ユニット36は、各種エネルギーを付与することでモデル材104の液滴30を硬化させる装置である。例えば、モデル材104が紫外線硬化樹脂である場合、硬化ユニット36は、光エネルギーとしての紫外線を照射する紫外光源を含んで構成される。また、モデル材104が熱硬化樹脂である場合、硬化ユニット36は、熱エネルギーを付与する加熱装置、必要に応じて積層構造体102を冷却する冷却装置を含んで構成される。
【0029】
なお、紫外光源として、希ガス放電灯、水銀放電灯、蛍光灯ランプ、LED(Light Emitting Diode)アレイ等を用いることができる。また、サポート材106は、三次元造形物100を変質させずに除去可能な材料、例えば、水膨潤ゲル、ワックス、熱可塑性樹脂、水溶性材料、溶解性材料等からなる。
【0030】
<三次元造形装置10の電気ブロック図>
図2は、
図1に示す三次元造形装置10の電気ブロック図である。この三次元造形装置10は、
図1にそれぞれ示したキャリッジ駆動部16、ステージ駆動部22、吐出ユニット32及び硬化ユニット36の他、制御部50、画像入力I/F52、入力部54、出力部56、記憶部58、三次元駆動部60、及び駆動回路62(混在配置手段)を含んで構成される。
【0031】
画像入力I/F52は、シリアルI/F又はパラレルI/Fで構成され、三次元造形物100を示す画像情報を含む電気信号を、図示しない外部装置から受信する。入力部54は、マウス、キーボード、タッチセンサ又はマイクロフォンを含んで構成される。出力部56は、ディスプレイ又はスピーカを含んで構成される。
【0032】
記憶部58は、非一過性であり、且つ、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体で構成される。ここで、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM、フラッシュメモリ等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。また、この記憶媒体は、短時間に且つ動的にプログラムを保持するものであっても、一定時間プログラムを保持するものであってもよい。
【0033】
三次元駆動部60は、載置台20及び吐出ユニット32の少なくとも一方を駆動することで、載置台20に対して吐出ユニット32を三次元方向に相対移動させる。この実施形態では、三次元駆動部60は、吐出ユニット32をX方向及びY方向に移動させるキャリッジ駆動部16と、載置台20をZ方向に移動させるステージ駆動部22とから構成される。
【0034】
制御部50は、三次元造形装置10を構成する各部の制御を司る演算装置であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)又はMPU(Micro-Processing Unit)によって構成されている。制御部50は、記憶部58に格納されたプログラムを読み出し実行することで、データ処理部64及び配置決定部66を含む各機能を実現可能である。
【0035】
駆動回路62は、制御部50と電気的に接続されると共に、各ユニットを駆動することで造形処理を実行させる電気回路である。この実施形態では、駆動回路62は、吐出ユニット32の吐出制御を司る吐出制御部68と、硬化ユニット36の硬化制御を司る硬化制御部70とから構成される。
【0036】
吐出制御部68は、制御部50から供給される吐出データに基づき、吐出ヘッド40、42が備えるアクチュエータの駆動波形信号を生成し、この波形信号を吐出ユニット32側に向けて出力する。硬化制御部70は、エネルギーの付与量(この実施形態では、紫外線の照射量)に応じた駆動信号を硬化ユニット36側に向けて出力する。
【0037】
<三次元造形物100及び造形中間物120の形態>
図3は、三次元造形物100及び造形中間物120の形態を示す図である。より詳しくは、
図3(A)は三次元造形物100の正面図であり、
図3(B)は造形中間物120の正面図である。この造形中間物120は、積層構造体102の完成状態に相当し、サポート材106(支持部材122)が未だ除去されない造形物である。
【0038】
図3(A)に示すように、モデル材104で構成される三次元造形物100は、逆円錐台状の本体部110を有する。本体部110の外表面112は、円状の底面114と、底面114よりも径が小さい上面116と、底面114と上面116を連結する側面118を含んで構成される。
【0039】
本体部110は、物理的処理又は化学的処理を経て硬化する材料、ここでは紫外線硬化樹脂からなる。紫外線硬化樹脂として、ラジカル重合反応を起こして硬化するラジカル重合型、或いは、カチオン重合反応を起こして硬化するカチオン重合型の硬化性樹脂を用いることができる。ラジカル重合型の紫外線硬化樹脂には、ウレタンアクリレート、アクリルアクリレート、エポキシアクリレートが含まれる。
【0040】
図3(B)に示すように、造形中間物120は、上記した本体部110と、本体部110の外側から支持する支持部材122から構成される。支持部材122は、上面116を除いた全ての外表面112を覆う概略鉢形状を有する。なお、支持部材122は、上述の通り、紫外線硬化性を有し、かつ三次元造形物100を変質させずに除去可能な材料からなる。
【0041】
本図例では、支持部材122には、三次元造形物100と載置台20(
図1)の間に配置される土台部124が含まれる。以下、土台部124と三次元造形物100が接触する面状領域、ここでは底面114がなす領域を「最下面領域R」と称する。
【0042】
<三次元造形装置10の動作>
続いて、
図1及び
図2に示す三次元造形装置10の動作、
図3(A)に示す三次元造形物100の生成動作について、
図4のフローチャート及び
図5〜
図10を適宜参照しながら説明する。
【0043】
図4のステップS1において、制御部50は、画像入力I/F52を介して、3D−CAD(Computer Aided Design)データを含む造形データを取得する。例えば、ワイヤフレームモデルの造形データは、三次元造形物100の三次元フレームを示す形状モデルデータ、及び、外表面112の画像を示す表面画像データの組み合わせからなる。なお、造形データの表現方式は、ワイヤフレームモデルに限られず、サーフェスモデル又はソリッドモデルであってもよい。
【0044】
ステップS2において、データ処理部64は、ステップS1で取得されたベクトル形式の造形データに対してラスタライズ処理を実行する。この処理に先立ち、データ処理部64は、X方向、Y方向及びZ方向の三次元空間を示す作業領域を定義すると共に、この作業領域を構成するX軸−Y軸−Z軸の三次元解像度(実サイズとの対応付け)も決定しておく。
【0045】
次いで、データ処理部64は、フレーム内の色(例えばホワイト)を特定し、公知のテクスチャマッピング手法を用いてフレーム面上に表面画像を配置する。その後、データ処理部64は、表面画像が配置されたベクトルデータを三次元解像度に応じたラスタデータに変換する。更に、データ処理部64は、ディザ法・誤差拡散法を含むハーフトーン処理、同系色/異系色間の分版処理、ドットサイズ(吐出量)の割り付け処理、打滴数の制限処理等の各種画像処理を実行する。これにより、一方向(Z軸)に沿った単位層141〜147毎のスライスデータ(以下、「スライス群データ」)が得られる。
【0046】
ステップS3において、配置決定部66は、ステップS2で得られたスライス群データを用いて、モデル材104及びサポート材106の配置を決定する。具体的には、配置決定部66は、造形中間物120の生成過程にてモデル材104を物理的に支持可能な位置にサポート材106を配置する。この配置処理を通じて、液滴30の有無及び種類を三次元位置毎に示す「吐出データ」が作成される。
【0047】
図3(A)に示す例では、本体部110の側面118は、庇(ひさし)のように突き出た外壁(以下、オーバーハング)を形成する。鉛直方向の下側から上側に単位層141〜147を積み重ねてオーバーハングを造形する場合、外側に突き出したモデル材104は、その形状を維持するための物理的強度が得られず自重により落下してしまう。そこで、作業面18と側面118の間に、側面118の各部を下方側から補強・支持するためのサポート材106を配置する必要がある。
【0048】
また、作業面18上に直接的に三次元造形物100を造形する場合、造形中間物120を載置台20から取り外す際に本体部110の底面114が変形し、三次元造形物100の品位を損なう可能性がある。具体的には、底面114に作業面18の表面形状が転写されたり、作業面18への固着により底面114の一部が欠損したりする現象が起こり得る。そこで、底面114と作業面18の間に、後に除去可能なサポート材106からなる土台部124を配置する必要がある。
【0049】
このように、支持部材122が土台部124を含む場合、この土台部124と接触する三次元造形物100の最下面領域R内にてモデル材104及びサポート材106を混在して配置する「混在配置」を行う。この混在配置の具体的方法及びその効果については後述する。
【0050】
ステップS4において、制御部50は、ステップS3で得られた吐出データを解析し、最下面領域Rを形成するモデル材104の色を判別する。判別された色がホワイト(W)以外である場合(ステップS4:W以外)、ステップS5aの造形処理に進む。一方、判別された色がホワイト(W)である場合(ステップS4:W)、ステップS5bの造形処理に進む。
【0051】
この色の分類は、サポート材106の色との近似性に応じて予め決定されている。例えば、硬化後のサポート材106が白濁色を有する場合、この白濁色との色差(例えば、CIELAB表色系のΔE)が閾値以下であるホワイト(W)と、この白濁色との色差が閾値を上回る「残りの色」に分類される。この実施形態では、残りの色は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)及びクリア(CL)の5色である。
【0052】
ステップS5aにおいて、三次元造形装置10は、ステップS3で作成された吐出データに基づいて造形処理を実行する。具体的には、三次元造形装置10は、載置台20及び吐出ユニット32を三次元方向に相対移動させながら、モデル材104及びサポート材106を含む単位層141〜147をZ方向に沿って順次積層することで積層構造体102を生成する。
【0053】
このとき、[1]形成しようとする単位層141〜147の指定、[2]吐出ユニット32を用いた液滴30の吐出、[3]平坦化ローラ34を用いた最上面108の平坦化、及び[4]硬化ユニット36を用いた最上面108の硬化、が順次実行される。これにより、積層構造体102は鉛直方向(Z方向)に沿って徐々に成長する。
【0054】
なお、ステップS5aの造形処理は、最下面領域Rを含む1つの単位層144を2つの単位層142、143に分割し、順次重ね合わせて積層する混在配置(以下「第1混在配置」という)を行う。この場合、吐出制御部68は、この第1混在配置を実行可能となるように吐出データの一部を修正する。
【0055】
図5は、最下面領域Rにおける吐出データの第1構造例を示す図である。より詳しくは、
図5(A)は分割前における単位層データ131を示し、
図5(B)は分割後における一方の単位層データ132を示し、
図5(C)は分割後における他方の単位層データ133を示す。ここで、単位層データ131〜133は、各々の単位層141〜143(
図7)に対応する吐出データ(Px−Py平面座標系)である。
【0056】
本図は、最下面領域Rの一部を構成する正方形状の部分領域を表している。斜線ハッチングを付したセルはサポート材106の吐出位置を示すと共に、格子状ハッチングを付したセルはモデル材104の吐出位置を示す。なお、ハッチングが付されていない残余のセルは、液滴30の吐出がない位置を示す。
【0057】
図5(A)の単位層データ131では、100%の吐出率(或いは、デューティ比)でサポート材106が隙間なく配置されている。一方、
図5(B)の単位層データ132では、50%の吐出率でサポート材106が市松模様状に配置されている。同様に、
図5(C)の単位層データ133では、50%の吐出率でモデル材104が市松模様状に配置されている。
図5(B)(C)から理解されるように、単位層データ132、133は、吐出位置が相補的な関係性を有する点に留意する。
【0058】
以下、第1混在配置による造形工程について、
図6及び
図7の時系列図を参照しながら説明する。ここでは、[1]最下面領域Rの直下にある単位層141、[2]最下面領域Rを含む単位層144、及び[3]最下面領域Rの直上にある単位層145、の積層過程について詳細に説明する。
【0059】
図6(A)において、駆動回路62は、単位層データ131(
図5(A))に基づいて吐出ユニット32の吐出制御及び硬化ユニット36の硬化制御を行う。これにより、サポート材106の液滴30が最上面108(不図示)に向けて隙間なく吐出された後に、最上面108に向けて紫外線が照射される。その結果、硬化済みのサポート材106からなる単位層141が形成される。
【0060】
図6(B)において、吐出制御部68は、単位層データ132(
図5(B))に基づいて吐出ユニット32の吐出制御を行う。これにより、サポート材106の液滴30が単位層141の上に向けて市松模様状に吐出され、未硬化のサポート材106からなる未硬化層142dが形成される。
【0061】
図6(C)において、硬化制御部70が硬化ユニット36の硬化制御を行うことで未硬化層142dが硬化され、硬化済みのサポート材106からなる単位層142(先行単位層)が市松模様状に形成される。
【0062】
図7(A)において、吐出制御部68は、単位層データ133(
図5(C))に基づいて吐出ユニット32の吐出制御を行う。これにより、モデル材104の液滴30が単位層142(市松模様状の隙間)に向けて吐出され、未硬化のモデル材104からなる未硬化層143dが形成される。
【0063】
図7(B)において、硬化制御部70の硬化制御により未硬化層143dが硬化され、硬化済みのモデル材104からなる単位層143(後行単位層)が市松模様状に形成される。すなわち、単位層142のサポート材106及び単位層143のモデル材104が相補的に配置されることで、1つの単位層144(混在単位層)が形成される。
【0064】
図7(C)において、駆動回路62の吐出制御及び硬化制御により、硬化済みのモデル材104からなる単位層145が形成される。このようにして、第1混在配置による造形処理が終了する(ステップS5a)。
【0065】
以上のように、モデル材104とサポート材106の第1混在配置を行うことで、混在させない場合と比べてモデル材104とサポート材106の接触表面積が増加し、その分だけ密着性が向上する。これにより、材料毎の硬化特性の差異に起因して、土台部124と接触する最下面領域Rでの歪みが発生したとしても、土台部124に対する三次元造形物100の密着性が維持され易くなる。
【0066】
また、駆動回路62は、最下面領域R内にてモデル材104及びサポート材106を市松模様状に配置するように、吐出ユニット32及び硬化ユニット36を制御してもよい。これにより、モデル材104及びサポート材106の配置分布が均一化されるので、密着性が更に向上する。
【0067】
また、駆動回路62は、サポート材106の液滴30が市松模様状に配置された最下面領域Rを含む先行単位層(単位層142)、及びモデル材104の液滴30が市松模様状に配置された最下面領域Rを含む後行単位層(単位層143)を順次重ね合わせて積層するように、吐出ユニット32及び硬化ユニット36を制御してもよい。これにより、硬化前におけるモデル材104及びサポート材106の合一化を防止可能となり、最下面領域R内のサポート材106を漏れなく除去できる。
【0068】
また、駆動回路62は、モデル材104とサポート材106の色差が閾値よりも大きい場合、単位層142、143を順次重ね合わせて積層するように、吐出ユニット32及び硬化ユニット36を制御してもよい。サポート材106の残存によって最下面領域R内の色が斑状になり、三次元造形物100の品位が低下する可能性がある。そこで、モデル材104とサポート材106の色差が大きい場合には、上記したサポート材106の除去効果が顕著に現われる。
【0069】
続いて、
図4のステップS5aとは異なる造形処理(ステップS5b)について説明する。
【0070】
ステップS5bにおいて、三次元造形装置10は、ステップS3で作成された吐出データに基づいて造形処理を実行する。具体的には、三次元造形装置10は、載置台20及び吐出ユニット32を三次元方向に相対移動させながら、モデル材104及びサポート材106を含む単位層141〜147をZ方向に沿って順次積層することで積層構造体102を生成する。
【0071】
ここで、ステップS5bの造形処理は、最下面領域Rを含む1つの単位層144を積層する混在配置(以下「第2混在配置」という)を行う。この場合、吐出制御部68は、この第2混在配置を実行可能となるように吐出データの一部を修正する。
【0072】
図8は、最下面領域Rにおける吐出データの第2構造例を示す図である。より詳しくは、
図8(A)は修正前における単位層データ131を示し、
図8(B)は修正後における単位層データ134を示す。ここで、単位層データ131、134は、各々の単位層141、144(
図10)に対応する吐出データ(Px−Py平面座標系)である。
【0073】
図8(A)の単位層データ131では、100%の吐出率(或いは、デューティ比)でサポート材106が隙間なく配置されている。一方、
図8(B)の単位層データ134では、50%ずつの吐出率でモデル材104及びサポート材106が市松模様状に配置されている。
【0074】
以下、第2混在配置による造形工程について、
図9及び
図10の時系列図を参照しながら説明する。ここでは、[1]最下面領域Rの直下にある単位層141、[2]最下面領域Rを含む単位層144、及び[3]最下面領域Rの直上にある単位層145、の積層過程について詳細に説明する。
【0075】
図9(A)において、駆動回路62は、単位層データ131(
図8(A))に基づいて吐出ユニット32の吐出制御及び硬化ユニット36の硬化制御を行う。これにより、サポート材106の液滴30が最上面108(不図示)に向けて隙間なく吐出された後に、最上面108に向けて紫外線が照射される。その結果、硬化済みのサポート材106からなる単位層141が形成される。
【0076】
図9(B)において、吐出制御部68は、単位層データ134(
図8(B))に基づいて吐出ユニット32の吐出制御を行う。これにより、サポート材106の液滴30が単位層141の上に向けて市松模様状に吐出され、未硬化のサポート材106からなる未硬化層142dが形成される。
【0077】
図9(C)において、吐出制御部68は、単位層データ134(
図8(B))に基づいて吐出ユニット32の吐出制御を行う。これにより、モデル材104の液滴30が単位層141の上(市松模様状の隙間)に向けて吐出され、未硬化のモデル材104からなる未硬化層143dが形成される。これにより、隣接する液滴30同士が部分的に混合し、モデル材104とサポート材106の密着性が高まる。
【0078】
図10(A)において、硬化制御部70が硬化ユニット36の硬化制御を行うことで、並存する未硬化層142d、143dが同時に硬化され、硬化済みのモデル材104及びサポート材106からなる単位層144(混在単位層)が形成される。
【0079】
図10(B)において、駆動回路62の吐出制御及び硬化制御により、硬化済みのモデル材104からなる単位層145が形成される。このようにして、第2混在配置による造形処理が終了する(ステップS5b)。
【0080】
以上のように、モデル材104とサポート材106の第2混在配置を行うことで、第1混在配置の場合と同様に、両者の密着性が向上する。また、最下面領域R内にてモデル材104及びサポート材106を市松模様状に配置することで、モデル材104及びサポート材106の配置分布が均一化されるので、密着性が更に向上する。
【0081】
また、駆動回路62は、モデル材104の液滴30及びサポート材106の液滴30が市松模様状に配置された最下面領域Rを含む混在単位層(単位層144)を積層するように、吐出ユニット32及び硬化ユニット36を制御してもよい。1つの混在単位層に纏めて最下面領域Rを形成することで、モデル材104とサポート材106の密着性が大きく向上する。
【0082】
また、駆動回路62は、モデル材104とサポート材106の色差が閾値よりも小さい場合、混在単位層を積層するように吐出ユニット32及び硬化ユニット36を制御してもよい。サポート材106の残存によって最下面領域R内の色が斑状になり、三次元造形物100の品位が低下する可能性がある。ところが、モデル材104とサポート材106の色差が小さい場合には、サポート材106の残存があっても色の変化が起こらないか或いは軽微である。つまり、上記した密着性の向上効果を優先的に得ながらも、色の見栄えに関わる品位が実質的に低下しない三次元造形物100を生成できる。
【0083】
図4のステップS6において、積層構造体102の完成状態である造形中間物120が得られる(
図3(B)参照)。ここで、造形中間物120は、全層における造形位置の再現性が維持されており、所望の三次元形状を有する点に留意する。
【0084】
ステップS7において、ステップS6にて得られた造形中間物120に対してサポート材106(支持部材122)の除去処理を施す。この除去処理は、サポート材106の性質に応じた物理的処理又は化学的処理、具体的には、水溶、加熱、化学反応、水圧洗浄、電磁波の照射によって実現できる。
【0085】
ステップS8において、三次元造形物100(
図3(A)参照)が完成される。この三次元造形物100は、全層における造形位置の再現性が維持されており、所望の三次元形状を有する。
【0086】
<最下面領域Rの表面性状>
図11は、最下面領域Rにおける三次元造形物100の部分拡大断面図である。より詳しくは、
図11(A)は第1混在配置を用いて生成された三次元造形物100に関する図であり、
図11(B)は第2混在配置を用いて生成された三次元造形物100に関する図である。
【0087】
図11(A)に示すように、三次元造形物100の底面114(最下面領域R)では、単位層141、142のサポート材106が漏れなく除去されている。つまり、同色の単位層143、144が外部に露呈しているので、最下面領域R内における色の均一性が保たれる。特に、モデル材104とサポート材106の色差が大きい場合には、上記したサポート材106の除去効果が顕著に現われる。
【0088】
図11(B)に示すように、三次元造形物100の底面114(最下面領域R)では、単位層141のサポート材106のみが除去されている。この場合、単位層142のサポート材106が残存しているので、市松模様状の単位層144が外部に露呈している。ところが、ホワイト(W)とサポート材106の色差が十分に小さいため、最下面領域R内における色の均一性が保たれる。
【0089】
<この実施形態による効果>
以上のように、三次元造形装置10は、硬化性のモデル材104及び/又は硬化性のサポート材106を含む単位層141〜147を順次積層して得た造形中間物120から、サポート材106で構成される支持部材122を除去することで、モデル材104で構成される三次元造形物100を生成する。
【0090】
この三次元造形装置10は、[1]単位層141〜147を積層してなる積層構造体102を載置可能な載置台20と、[2]載置台20に対して相対移動しながら、モデル材104の液滴30及びサポート材106の液滴30を積層構造体102の最上面108に向けて吐出する吐出ユニット32と、[3]最上面108にあるモデル材104及びサポート材106を硬化する硬化ユニット34と、[4]造形中間物120の一部をなす支持部材122が、三次元造形物100と載置台20の間に配置される土台部124を含んで構成される場合、土台部124と接触する三次元造形物100の最下面領域R内にてモデル材104及びサポート材106を混在して配置するように、吐出ユニット32及び硬化ユニット34を制御する駆動回路62と、を備える。
【0091】
また、この三次元造形装置10を用いた三次元造形方法は、[1]載置台20に対して相対移動しながら液滴30を最上面108に向けて吐出する吐出工程と、[2]最上面108にあるモデル材104及びサポート材106を硬化する硬化工程と、[3]支持部材122が土台部124を含んで構成される場合、最下面領域R内にてモデル材104及びサポート材106を混在して配置するように、吐出ユニット32及び硬化ユニット36を制御する混在配置工程と、を備える。
【0092】
上記した第1混在配置又は第2混在配置を行うことで、混在させない場合と比べてモデル材104とサポート材106の接触表面積が増加し、その分だけ密着性が向上する。これにより、モデル材104及びサポート材106を硬化する前に特別な物理的処理を施すことなく、土台部124と接触する最下面領域Rにおける密着性が十分な三次元造形物100を生成できる。
【0093】
[備考]
なお、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0094】
例えば、この実施形態では、載置台20及び吐出ユニット32の両方とも移動可能であるが、一方が固定された状態下に他方が移動可能であってもよいし、3つの移動方向(X方向、Y方向、Z方向)の組み合わせは任意である。