(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、デジタルメディアの普及に伴い、オーディオ信号に対してソースに応じたトーンコントロール処理を施すだけでは、トーンコントロール処理による適正な低音域/高音域の増減効果が得られないことがある。例示的には、USB(Universal Serial Bus)メモリ等に記憶された楽曲ファイルでは、フォーマットや圧縮率等が楽曲ファイル毎に異なる場合がある。この場合、同一ソース(USBメモリ)であっても再生帯域が楽曲ファイル毎に異なる。
【0006】
図5の上段、下段は、それぞれ、楽曲ファイルA、Bの再生帯域とトーンコントロール(低音域/高音域)との関係を示す図である。
図5の上段、下段に示される帯部分は、それぞれ、楽曲ファイルA、Bの再生帯域を示している。楽曲ファイルAの再生帯域は、20Hz〜20kHzである。楽曲ファイルBは、楽曲ファイルAよりも圧縮率が高くなっており、再生帯域が20Hz〜7.5kHzである。トーンコントロール処理される低音域側の調整帯域(以下、「低音域側TC帯域」と記す。)は、中心周波数が70Hzに設定されている。トーンコントロール処理される高音域側の調整帯域(以下、「高音域側TC帯域」と記す。)は、中心周波数が10kHzに設定されている。
【0007】
図5に示されるように、楽曲ファイルAでは、トーンコントロール処理による低音域/高音域の増減効果が得られる一方、楽曲ファイルBでは、再生帯域の上限が高音域側TC領域の中心周波数(10kHz)に達しないため、トーンコントロール処理による適正な高音域の増減効果が得られない。このように、同一ソース(USBメモリ)であってもトーンコントロール処理による適正な低音域/高音域の増減効果が得られないことがある。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、トーンコントロール処理による適正な音域増減効果を得るのに好適な音響装置及び音質調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る音響装置は、音源の周波数特性を計算する計算手段と、計算された周波数特性に基づいて調整帯域を設定する設定手段と、設定された調整帯域の出力ゲインを調整する調整手段とを備える。
【0010】
また、本発明の一実施形態において、計算手段は、音源の再生帯域の上限周波数値を計算し、設定手段は、計算された
上限周波数値に基づいて高音域側中心周波数を設定し、設定された高音域側中心周波数に基づいて高音域側の調整帯域を設定する構成としてもよい。
【0011】
また、本発明の一実施形態において、高音域側中心周波数は、例えば、
上限周波数値が低いほど、低い周波数に設定される。
【0012】
また、本発明の一実施形態において、計算手段は、音源の再生帯域の下限周波数値を計算し、設定手段は、計算された下限周波数値に基づいて低音域側中心周波数を設定し、設定された低音域側中心周波数に基づいて低音域側の調整帯域を設定する構成としてもよい。
【0013】
また、本発明の一実施形態において、低音域側中心周波数は、例えば、
下限周波数値が高いほど、高い周波数に設定される。
【0014】
また、本発明の一実施形態において、設定手段は、高音域側中心周波数に基づいてQ値を設定し、設定されたQ値及び高音域側中心周波数に基づいて高音域側の調整帯域を設定する構成としてもよい。
【0015】
また、本発明の一実施形態において、設定手段は、人の聴感を考慮した所定の関数を用いてQ値を設定する構成としてもよい。
【0016】
また、本発明の一実施形態において、Q値は、例えば、高音域側中心周波数が低いほど、小さい値に設定される。
【0017】
また、本発明の一実施形態において、例えば、低音域側の調整帯域はQ値が固定値である。
【0018】
また、本発明の一実施形態に係る音質調整方法は、音源の周波数特性を計算する計算ステップと、計算された周波数特性に基づいて調整帯域を設定する設定ステップと、設定された調整帯域の出力ゲインを調整する調整ステップとを含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明の実施形態によれば、トーンコントロール処理による適正な音域増減効果を得るのに好適な音響装置及び音質調整方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る音響装置について説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る音響装置1の構成を示すブロック図である。
図1に示されるように、音響装置1は、例えば車載型音響装置であり、音源部10、DSP(Digital Signal Processor)20、アンプ30、スピーカ40、マイクロコンピュータ50及び操作部60を備えている。なお、
図1は、便宜上、主に、音質調整処理(後述の
図2)の説明に必要な構成要素を抽出した簡素なブロック図となっている。音響装置1は車載型装置に限らず、家庭用や業務用の据置型音響装置であってもよく、また、スマートフォンやタブレットPC等に内蔵されている音響装置(すなわち携帯可能な音響装置)であってもよい。
【0023】
音源部10は、CD、DVD Audio、SACD等のディスクメディアに格納されているオーディオ信号、HDD、USB等のストレージメディアに格納されているオーディオ信号、又はインターネット上のサーバからストリーミングされるオーディオ信号を再生してDSP20に出力する。
【0024】
DSP20は、音源部10より入力されるオーディオ信号に対し、イコライジング処理、トーンコントロール処理、スピーカ補正処理、コンプレッション処理、フェード・バランス処理、サラウンド処理等の各種信号処理を施してアンプ30に出力する。
【0025】
アンプ30は、DSP20より入力されるオーディオ信号を増幅してスピーカ40に出力する。増幅されたオーディオ信号は、スピーカ40によって音に変換されて出力される。
【0026】
ここで、
図5に示される問題点は、同一ソースであっても再生帯域が大きく変わることがあるにも拘わらずトーンコントロール処理の電気的制御が常時一定であるために発生しているものと考えられる。そのため、本実施形態に係る音響装置1は、ソースの種別に応じてトーンコントロールを設定するのではなく、オーディオ信号の再生帯域を検知し、検知された再生帯域に応じてトーンコントロール(具体的には、低音域/高音域の中心周波数及びQ値)を設定することにより、トーンコントロール処理による適正な音域増減効果を得るよう構成されている。以下、この構成について具体的に説明する。
【0027】
[音質調整処理]
図2は、音響装置1にて実行される音質調整処理のフローチャートを示す図である。
図2に示される音質調整処理は、例えば、音響装置1の電源がオンされると実行が開始され、音響装置1の電源がオフされると実行が終了する。
【0028】
[
図2のS11(低音域用/高音域用パラメータ値のリセット)]
DSP20は、FFT(Fast Fourier Transform)部22、BASSコントロール部24及びTREBLEコントロール部26を有している。
【0029】
本処理ステップS11では、マイクロコンピュータ50の内蔵メモリ52に保持されている、低音域用及び高音域用パラメータ値がリセットされる。低音域用及び高音域用パラメータ値については後述する。
【0030】
[
図2のS12(FFTの実行)]
音源部10による音源再生が始まると、音源部10からFFT部22にオーディオ信号が入力される。本処理ステップ12では、FFT部22にてFFTが実行されて、オーディオ信号が時間領域から周波数領域に変換される。
【0031】
[
図2のS13(ユーザ操作の判定)]
本処理ステップS13では、マイクロコンピュータ50にて、ユーザによる操作部60を用いたトーンコントロール操作が行われたか否かが判定される。トーンコントロール操作が行われるまで、処理ステップS12〜S13がループする。
【0032】
[
図2のS14(再生帯域の検知)]
本処理ステップS14は、処理ステップS13(ユーザ操作の判定)にてトーンコントロール操作が行われたと判定された場合(S13:YES)に実行される。本処理ステップS14では、再生中のオーディオ信号の再生帯域が検知される。具体的には、FFT部22にて、FFT後のスペクトルデータから再生帯域の上限周波数値(以下、「上限周波数f
H」と記す。)及び下限周波数値(以下、「下限周波数f
L」と記す。)が検知されて、マイクロコンピュータ50に与えられる。一例として、上限周波数f
H及び下限周波数f
Lは、ピークホールド処理によって検知される。
【0033】
[
図2のS15(低音域用パラメータ値の設定)]
本処理ステップS15では、マイクロコンピュータ50にて、低音域用パラメータ値が設定される。低音域用パラメータには次のパラメータが含まれる。
【0034】
《低音域用パラメータ》
(1)低音域側TC帯域の中心周波数f
CB
(2)低音域側TC帯域のQ値(Q
WB値)
【0035】
(1)低音域側TC帯域の中心周波数f
CB
中心周波数f
CBは、次式に示されるように、処理ステップS14(再生帯域の検知)にて検知された再生帯域の下限周波数f
Lに基づいて設定される。
f
L<28Hz :f
CB=70Hz(固定値)
f
L>40Hz :f
CB=100Hz(固定値)
28Hz≦f
L≦40Hz:f
CB=2.5f
L(70Hz〜100Hzの可変値)
【0036】
上記式に示されるように、原則、再生帯域の下限周波数f
Lが高いほど中心周波数f
CBは高い周波数に設定される。なお、中心周波数f
CBを設定する上記式は、主に、低音域におけるボーカル成分を考慮して決められている。
【0037】
中心周波数f
CBは、ボーカルの基音や母音を変えずに低音域の質感を出すため、100Hz以下の値に設定されている。100Hzを超える中心周波数f
CBで低音域側TC帯域が設定されると、例えばボーカルの声質そのものが変化してしまう。すなわち、中心周波数f
CBが100Hzを超えると、トーンコントロール処理による適正な低音域の増減効果が得られない。
【0038】
また、中心周波数f
CBは、人の聴感を考慮して、低音域の量感を耳で実感することができる70Hz以上の値に設定されている。70Hz未満については、身体で感じられるサブウーファの領域であるものとして、中心周波数f
CBの設定範囲からは除外している。
【0039】
なお、中心周波数f
CBの上限値(100Hz)及び下限値(70Hz)は一例である。これらについては、詳細な検討を重ねることによって更に適切な値が設定され得る。
【0040】
(2)低音域側TC帯域のQ値(Q
WB値)
Q
WB値は、次式に示されるように、下限周波数f
Lに拘わらず固定値である。
Q
WB=1.5
【0041】
ここで、
図3に、トーンコントロール特性(
図3のカーブ)とQ値との関係を説明する図を示す。トーンコントロール特性は、Q値が大きいほど鋭いピークを持つ特性(半値幅の狭い特性)となり、Q値が小さいほど緩やかなピークを持つ特性(半値幅の広い特性)となる。Q値は、次式によって示される。
Q値=設定中心周波数f
C/帯域幅f
W
但し、帯域幅f
Wは、設定中心周波数f
Cに位置するピークから3dB下がったレベルにおけるトーンコントロール特性の幅
【0042】
[
図2のS16(高音域用パラメータ値の設定)]
本処理ステップS16では、マイクロコンピュータ50にて、高音域用パラメータ値が設定される。高音域用パラメータには次のパラメータが含まれる。
【0043】
《高音域用パラメータ》
(1)高音域側TC帯域の中心周波数f
CT
(2)高音域側TC帯域のQ値(Q
WT値)
【0044】
(1)高音域側TC帯域の中心周波数f
CT
中心周波数f
CTは、次式に示されるように、処理ステップS14(再生帯域の検知)にて検知された再生帯域の上限周波数f
Hに基づいて設定される。
f
H<4kHz :f
CT=2kHz(固定値)
f
H>20kHz :f
CT=10kHz(固定値)
4kHz≦f
H≦20kHz:f
CT=f
H/2(2kHz〜10kHzの可変値)
【0045】
上記式に示されるように、原則、再生帯域の上限周波数f
Hが低いほど中心周波数f
CTは低い周波数に設定される。なお、中心周波数f
CTを設定する上記式は、主に、高音域におけるボーカル成分を考慮して決められている。
【0046】
中心周波数f
CTは、ボーカルの基音や母音を変えずに明るさや華やかさの質感を出すため、2kHz以上の値に設定されている。2kHz未満の中心周波数f
CTで高音域側TC帯域が設定されると、例えばボーカルの声質そのものが変化してしまう。すなわち、中心周波数f
CTが2kHz未満では、トーンコントロール処理による適正な高音域の増減効果が得られない。
【0047】
また、例えば、再生帯域が20kHzを超えるハイレゾリューションオーディオにおいて10kHzを超える中心周波数f
CTを設定しても、聴取者がトーンコントロール処理による高音域の増減効果を感じ難い。中心周波数f
CTは、このような人の聴感を考慮して、高音域の量感を耳で実感しやすい10kHz以下の値に設定されている。
【0048】
なお、中心周波数f
CTの上限値(10kHz)及び下限値(2kHz)は一例である。これらについては、詳細な検討を重ねることによって更に適切な値が設定され得る。
【0049】
(2)高音域側TC帯域のQ値(Q
WT値)
Q
WT値は、オーディオ信号に対して高音域に対するトーンコントロール処理を施した場合に、対数特性を持つ人の聴感と周波数領域においてリニアな特性を持つ電気エネルギーとの関係を、高音域側TC帯域の位置に拘わらず一定に保つのに適した値に設定される。従って、Q
WT値は、例えば、あるQ
WT値での電気エネルギーと聴覚的な高音域量感の実感と、これよりも低い中心周波数f
CTに応じたQ
WT値での電気エネルギーと聴覚的な高音域量感の実感と、を合わせる値に設定される。すなわち、Q
WT値は、人の聴感を考慮して(特に、何れの高音域を増減させた場合であっても聴感上のエネルギーが等価になるように)、次の関数を用いて設定される。
2kHz≦f
CT≦2.7kHz :Q
WT=1.0
2.7kHz<f
CT≦3.5kHz :Q
WT=1.1
3.5kHz<f
CT≦5kHz :Q
WT=1.2
5kHz<f
CT≦7kHz :Q
WT=1.3
7kHz<f
CT<10kHz :Q
WT=1.4
f
CT=10kHz :Q
WT=1.5
【0050】
上記式に示されるように、Q
WT値は、中心周波数f
CT(言い換えると、再生帯域の上限周波数f
H)に基づいて設定される。Q
WT値は、原則、中心周波数f
CTが低いほど小さい値に設定される。従って、高音域において中心周波数f
CTが低いほどトーンコントロール特性の半値幅が広がるようにQ
WT値が設定され、中心周波数f
CTが高いほどトーンコントロール特性の半値幅が狭くなるようにQ
WT値が設定される。
【0051】
[
図2のS17(トーンコントロール処理の実行)]
処理ステップS15(低音域用パラメータ値の設定)にて設定された低音域用パラメータ値は、マイクロコンピュータ50からBASSコントロール部24に与えられる。また、処理ステップS16(高音域用パラメータ値の設定)にて設定された高音域用パラメータ値は、マイクロコンピュータ50からTREBLEコントロール部26に与えられる。本処理ステップS17では、音源部10より入力されるオーディオ信号に対し、BASSコントロール部24にて低音域用パラメータ値を用いたトーンコントロール処理が実行され、次いで、TREBLEコントロール部26にて高音域用パラメータ値を用いたトーンコントロール処理が実行される。
【0052】
以上の各処理ステップが実行されることにより、低音域及び高音域について適正にトーンコントロール処理された音がスピーカ40より出力される。なお、処理ステップS17(トーンコントロール処理の実行)の実行後、マイクロコンピュータ50の内蔵メモリ52内の低音域用及び高音域用パラメータ値がリセットされ(S11)、ユーザによる次のトーンコントロール操作が行われるまで、FFT部22によるFFTが繰り返される(S12〜S13)。
【0053】
図4の上段は、USBメモリに格納された圧縮オーディオ信号(以下、便宜上「オーディオ信号a」と記す。)に対して
図2に示される音質調整処理を実行したときの、再生帯域とトーンコントロール(低音域/高音域)との関係を示す図である。
図4の中段は、USBメモリに格納された圧縮オーディオ信号(
図4の上段のオーディオ信号より高圧縮なオーディオ信号であり、以下、便宜上「オーディオ信号b」と記す。)に対して
図2に示される音質調整処理を実行したときの、再生帯域とトーンコントロール(低音域/高音域)との関係を示す図である。
図4の下段は、ストリーミング配信されているインターネットラジオの圧縮オーディオ信号(以下、便宜上「オーディオ信号c」と記す。)に対して
図2に示される音質調整処理を実行したときの、再生帯域とトーンコントロール(低音域/高音域)との関係を示す図である。オーディオ信号aの再生帯域は、20Hz〜20kHzである。オーディオ信号bの再生帯域は、20Hz〜3.75kHzである。オーディオ信号cの再生帯域は、30Hz〜10kHzである。
【0054】
図4の上段の例では、下限周波数f
Lが20Hzであり、上限周波数f
Hが20kHzである。そのため、低音域側TC帯域に関し、中心周波数f
CBが70Hzに設定されると共にQ
WB値が1.5に設定される。また、高音域側TC帯域に関し、中心周波数f
CTが10kHzに設定されると共にQ
WT値が1.5に設定される。本例では、オーディオ信号aの再生帯域(下限周波数f
L及び上限周波数f
H)に応じて、低音域側TC帯域及び高音域側TC帯域が当該再生帯域内の適正な位置に設定されるため、トーンコントロール処理による適正な音域増減効果が得られる。
【0055】
図4の中段の例では、下限周波数f
Lが20Hzであり、上限周波数f
Hが3.75kHzである。そのため、本例において中心周波数f
CTを
図4の上段の例と同じ10kHzに設定してしまうと、再生帯域の上限周波数f
Hを超える領域でトーンコントロール処理を行うことになり、トーンコントロール処理による適正な高音域の増減効果が得られない。
【0056】
しかし、
図2に示される音質調整処理を実行することにより、本例では、中心周波数f
CTがオーディオ信号bの再生帯域内である2kHzに設定される。そのため、高音域側TC帯域が再生帯域内の適正な位置に設定され、トーンコントロール処理による適正な音域増減効果が得られる。また、Q
WT値は、スピーカ40より出力される音のエネルギーが他の例(
図4の上段及び
図4の下段の例)と聴感上等価になるように、1.0に設定される。低音域側TC帯域については、
図4の上段の例と同じく、中心周波数f
CBが70Hzに設定されると共にQ
WB値が1.5に設定される。すなわち、本例においても、オーディオ信号bの再生帯域(下限周波数f
L及び上限周波数f
H)に応じて、低音域側TC帯域及び高音域側TC帯域が当該再生帯域内の適正な位置に設定されるため、トーンコントロール処理による適正な音域増減効果が得られる。
【0057】
図4の下段の例では、下限周波数f
Lが30Hzであり、上限周波数f
Hが10kHzである。そのため、低音域側TC帯域に関し、中心周波数f
CBが75Hzに設定されると共にQ
WB値が1.5に設定される。また、高音域側TC帯域に関し、中心周波数f
CTが5kHzに設定されると共にQ
WT値が1.2に設定される。本例においても、オーディオ信号cの再生帯域(下限周波数f
L及び上限周波数f
H)に応じて、低音域側TC帯域及び高音域側TC帯域が当該再生帯域内の適正な位置に設定されるため、トーンコントロール処理による適正な音域増減効果が得られる。
【0058】
このように、本実施形態によれば、オーディオ信号の再生帯域(下限周波数f
L及び上限周波数f
H)に応じて低音域用及び高音域用パラメータ値が適正な値に設定される。そのため、オーディオ信号のソースやフォーマットに拘わらずトーンコントロール処理による適正な音域増減効果が得られる。
【0059】
以上が本発明の例示的な実施形態の説明である。本発明の実施形態は、上記に説明したものに限定されず、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば明細書中に例示的に明示される実施例等又は自明な実施例等を適宜組み合わせた内容も本願の実施形態に含まれる。
【0060】
低音域側TC帯域では、高音域側TC帯域と比べると、Q値の変更に応じた聴感上のエネルギーの変化に人は鈍感である。そのため、上記の実施形態では、Q
WB値を固定値とすることにより、
図2に示される音質調整処理を簡略化している。別の実施形態では、再生帯域の下限周波数f
Lに応じてQ
WB値を可変させてもよい。例示的には、Q
WB値は、音質等を考慮して高音域側TC帯域のQ
WT値と同じく、中心周波数f
CBが低いほど小さい値に設定される。すなわち、Q値は、低音域側TC帯域と高音域側TC帯域の両方のTC帯域で可変であってもよい。また、低音域側TC帯域でのみQ値が可変な構成も本発明の範疇である。
【0061】
また、本発明は、低音域側TC帯域や高音域側TC帯域だけでなく、これらの間に位置する中音域に対してトーンコントロール処理する場合にも適用することができる。