【実施例】
【0032】
以下、本発明の一実施例に係るカプラー1について、図面に基づいて説明する。なお、以下の各実施例において、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0033】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0034】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0035】
図1は、先行側鉄筋2と打継側鉄筋3とをカプラー1で接続固定した状態を示す断面図である。
図2(a)は、本発明のカプラー1を示す正面図であり、
図2(b)は、
図2(a)の縦断面図である。
【0036】
カプラー1は、先行側鉄筋2及び打継側鉄筋3の端部同士を接合する。すなわち、カプラー1及び先行側鉄筋2は、コンクリート内に水平又は垂直に埋設されており、打継側鉄筋3が、カプラー1に挿入されてカプラー1に螺合することにより、先行側鉄筋2及び打継側鉄筋3が接合される。打継側鉄筋3は、土木建築用コンクリート構造物の端部から突出する補強材である。
【0037】
カプラー1は、長手方向Lに沿って延伸されたカプラー本体11と、カプラー本体11内に設けられた挿通孔12と、カプラー本体11内に埋設された中間部材13と、を備えている。
【0038】
カプラー本体11は、例えば、軟鋼材や球状黒鉛鋳鉄製である。カプラー本体11は、長手方向Lに沿って延伸する六角形筒状に形成されている。なお、カプラー本体11の断面形状は、六角形状に限定されるものではなく、例えば、円形状であっても構わない。
【0039】
挿通孔12は、カプラー本体11の打継側の端面1aから先行側に向かって形成されている。すなわち、挿通孔12は、打継側にのみ開口しており、先行側は中間部材13に塞がれている。すなわち、カプラー1は、打継側端面1aに開口部を有する袋状に形成されている。
【0040】
挿通孔12の内周には、節部12aが形成されている。節部12aは、打継側鉄筋3に嵌合可能な形状に形成されている。具体的には、節部12aは、カプラー本体11の長手方向Lに沿って所定間隔毎に列状に配置されている。節部12aは、挿通孔12に螺旋状に形成された突条を長手方向Lに沿って切り欠いたように形成されている。節部12aの列は、2列であって互いに対向して配置されている。なお、節部12aは、ネジ節状に形成されているが、いわゆる竹節状に形成されたものであっても構わない。
【0041】
中間部材13は、カプラー1に比べて短小な鉄筋である。中間部材13は、カプラー本体11の先行側端面1bから接続端部13aが突設しており、且つ、カプラー本体11の先行側に固着されている。中間部材13の全長は、カプラー本体11の全長の約4〜5割の長さに設定される。また、中間部材13は、先行側の数十mmだけカプラー本体11から露出している。中間部材13は、例えば、軟鉄製である。中間部材13には、鉄筋を切断する際に生じた端材を用いるのが好ましい。
【0042】
中間部材13の外周には、抜け止め凸部13bが形成されている。抜け止め凸部13bは、長手方向Lに沿って螺旋状に形成されている。抜け止め凸部13bが、長手方向Lに直交する径方向Rの外側に向かって突設されることにより、抜け止め凸部13bが、中間部材13をカプラー本体11から引き抜く外力に抗することができる。抜け止め凸部13bの径方向Rにおける高さは、想定される外力の大きさに応じて任意に変更可能である。
【0043】
先行側鉄筋2は、ネジ節鉄筋であり、外周に平坦面2aとネジ節2bとが設けられている。先行側鉄筋2の端面が、中間部材13に摩擦圧接されることにより、先行側鉄筋2がカプラー1に固定されている。なお、先行側鉄筋2は、ネジ節鉄筋の他に、竹節鉄筋であっても構わない。
【0044】
打継側鉄筋3は、ネジ節鉄筋であり、外周に平坦面3aとネジ節3bとが設けられている。打継側鉄筋3が、挿通孔12内に挿通されて節部12aに螺合されることにより、先行側鉄筋2と打継側鉄筋3とがカプラー1を介して一体に接続固定されている。なお、打継側鉄筋3は、ネジ節鉄筋の他に、竹節鉄筋であっても構わない。
【0045】
次に、カプラー1を鋳造する工程について、図面に基づいて説明する。
図3は、カプラー1の鋳造に用いられる中子5を製作する工程を示す模式図である。
図4は、カプラー1を鋳造する工程を示す模式図である。
【0046】
カプラー1の鋳造工程は、主に、中子製作、鋳型組立、溶鉄注湯、凝固・冷却、型ばらし、仕上げからなる。
【0047】
[中子製作]
中子5は、一対の中子片5a、5bを組み合わせることにより形成される。まず、接続端部13aを備える中子片5aの製作手順について説明する。
図3(a)に示すように、一対の木型4aを用意する。木型4aには、上下を貫通する貫通孔4bが設けられている。貫通孔4bは、下部開口4cと上部開口4dとが連通することにより形成されている。
図3(b)に示すように、下部開口4cを塞ぐように中間部材13が貫通孔4b内に挿通される。次に、
図3(c)に示すように、中子砂を上部開口4dから貫通孔4b内に充填する。貫通孔4b内の中子砂が硬化した後に、
図3(d)に示すように、一対の木型4aを抜型することで、貫通孔4bの形状に応じた中子片5aが得られる。中子片5aの端部には、支持部5cが設けられている。
【0048】
次に、中子片5aと組み合わされて中子5を構成する中子片5bの製作手順について説明する。
図3(e)に示すように、一対の木型4eを用意する。木型4eには、上下を貫通する貫通孔4fが設けられている。貫通孔4fは、下部開口4gと上部開口4hとが連通することにより形成されている。次に、
図3(f)に示すように、中子砂を上部開口4hから貫通孔4f内に充填する。貫通孔4f内の中子砂が硬化した後に、
図3(g)に示すように、一対の木型4eを抜型することで、貫通孔4fの形状に応じた中子片5bが得られる。中子片5bの端部には、支持部5dが設けられている。なお、中子片5a、5bは、いずれが先に製作されても構わない。
【0049】
[鋳型組立]
図4(a)に示すように、下型(砂型)6aを用意し、
図4(b)に示すように、下型(砂型)6aの上に中子5を載置する。次に、
図4(c)に示すように、中子5に上型(砂型)6bを被せて主型6を型合わせして、鋳型7を組み上げる。具体的には、主型6の内部には、中子5より大きな略円柱状の凹部6cが形成されており、中子5は凹部6c内に収容されている。また、支持部5c、5dが下型6aと上型6bとに挟まれて支持されている。なお、中子5と中間部材13とは予め一体化されたものに限定されず、中子5と中間部材13とを別々に製作し、鋳型7を組み上げる際に中間部材13を中子5内に収めるものであっても構わない。
【0050】
[溶鉄注湯]
図4(d)に示すように、鋳型7の湯口7aから溶鉄(ダクタイル鋳鉄)を鋳型7内に注湯する。溶鉄は中子5と主型6との隙間に充填されるため、中間部材13のうち中子5と主型6との隙間を横断する部分は、溶鉄に包まれる。
【0051】
[凝固・冷却]
鋳型7内に溶鉄が充填されたら、溶鉄の注湯を停止して溶鉄を凝固、冷却させる。
【0052】
[型ばらし]
図4(e)に示すように、鋳型7内の溶鉄が冷却されたら、鋳型7を破壊してカプラー1を取り出す。中子5と主型6との隙間が、カプラー本体11に対応し、中子5のうち中子砂の部分が、挿通孔12に対応し、支持部5c内に埋設された中間部材13の端部が接続端部13aに対応する。また、冷却後の中間部材13とカプラー本体11との境界は溶着しておらず、カプラー本体11が中間部材13の外周に形成された抜け止め凸部13bの形状にならうように形成されている。すなわち、抜け止め凸部13bが、カプラー1本体11に係合して強固に抜け止めされることで、中間部材13とカプラー本体11とが一体に形成されている。
【0053】
[仕上げ]
カプラー1に付着する湯口7a、湯道7b等の不要部分をカッターで切断し、カプラー1の表面をグラインダで鋳仕上げする。その後、熱処理、ショットブラスト研磨を施すことにより、カプラー1が得られる。
【0054】
次に、中間部材13に先行側鉄筋2を摩擦圧接する手順を
図5に基づいて説明する。
【0055】
まず、
図5(a)に示すように、カプラー本体11の外周をチャック8で把持する。また、中間部材13と先行側鉄筋2とを同軸上に配置し、中間部材13の端面13cと先行側鉄筋2の端面2aとを当接させる。
【0056】
次に、
図5(b)に示すように、カプラー本体11を高速回転させ、先行側鉄筋2を中間部材13に向けて押し付ける。中間部材13と先行側鉄筋2との間に摩擦熱で高温層が形成され、中間部材13の一部及び先行側鉄筋2の一部がバリBとなって排出される。
【0057】
そして、
図5(c)に示すように、カプラー本体11の回転を急停止し、先行側鉄筋2を中間部材13に向けてさらに加圧することにより、中間部材13と先行側鉄筋2とが摩擦圧接される。
【0058】
次に、カプラー1を用いて先行側鉄筋2と打継側鉄筋3とを接続する手順を
図6に基づいて説明する。
【0059】
まず、
図6(a)に示すように、カプラー1及び先行側鉄筋2は、コンクリート内に水平に埋設されている。なお、カプラー1は、コンクリート内に垂直に埋設されたものであっても構わない。
【0060】
次に、
図6(b)に示すように、挿通孔12内にグラウト材を注入する。
【0061】
そして、
図6(c)に示すように、打継側鉄筋3をカプラー1の節部12aに嵌合させる。打継側鉄筋3をカプラー1内に挿通させる際には、打継側鉄筋3の平坦面3aを節部12aと隙間を空けて対向させた状態で打継側鉄筋3の先端が中間部材13に接触するまでスライドさせる。この際、挿通孔12内に注入されたグラウトは、カプラー1と打継側鉄筋3との隙間に充填される。そして、隙間に充填されたグラウトが硬化することで、カプラー1と打継側鉄筋3とが強固に固着される。カプラー1と打継側鉄筋3との嵌合距離は、カプラー1全長の5〜6割程度が好ましい。
【0062】
なお、上述したようにグラウトを用いてカプラー1に打継側鉄筋3を固着させるグラウト方式の他に、いわゆるトルク方式を用いても構わない。トルク方式では、打継側鉄筋3の先端を中間部材13に押し当てた後に、打継側鉄筋3を回転させて、打継側鉄筋3のネジ節3bと節部12aとを螺合させることにより、カプラー1と打継側鉄筋3とを強固に連結させることができる。
【0063】
このようにして、本実施例に係るカプラー1は、カプラー1の先端側に中間部材13が固着され、中間部材13と先端側鉄筋2とを摩擦圧接することにより、先行側鉄筋2にトルクを導入する作業が省略でき、少ない部品点数で先行側鉄筋2と打継側鉄筋3とを簡便に接合することができる。
【0064】
また、中間部材13の外周に螺旋状に形成された抜け止め凸部13bが長手方向Lにおいて複数個所でカプラー本体11に係合することにより、中間部材13がカプラー本体11に強固に抜け止めされるため、カプラー本体11と中間部材13とを簡便に一体に形成することができる。
【0065】
中間部材13に鉄筋を切断する際に生じた端材を再利用することにより、省資源でカプラー1を得ることができる。
【0066】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変をなることができ、そして、本発明が該改変されたものにも及ぶことは当然である。