特許第6807783号(P6807783)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807783
(24)【登録日】2020年12月10日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】半導体装置及び全波整流回路
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/822 20060101AFI20201221BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20201221BHJP
   H01L 29/861 20060101ALI20201221BHJP
   H01L 29/868 20060101ALI20201221BHJP
   H02M 7/06 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   H01L27/04 G
   H01L29/91 L
   H01L29/91 C
   H02M7/06 Z
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-48619(P2017-48619)
(22)【出願日】2017年3月14日
(65)【公開番号】特開2018-152498(P2018-152498A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2020年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】315002243
【氏名又は名称】ユナイテッド・セミコンダクター・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100205785
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】松浦 克好
【審査官】 市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2016/0276460(US,A1)
【文献】 特開2006−339393(JP,A)
【文献】 特開2005−044956(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/132938(WO,A1)
【文献】 特開2002−76279(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/062150(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/822
H01L 27/04
H01L 29/861
H01L 29/868
H02M 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1の構造を有し、
前記第1の構造のそれぞれが、
第1のN型領域と、
前記第1のN型領域に取り囲まれたP型領域と、
前記P型領域に取り囲まれた第2のN型領域と、
を有し、
前記第1のN型領域と前記P型領域とが結線され、
前記複数の第1の構造が並列に接続されて1個のダイオードが構成されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記複数の第1の構造の間で、
前記第1のN型領域及び前記P型領域の対同士が共通に接続され、
前記第2のN型領域同士が共通に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複数の第1の構造のうち隣り合う第1の構造の間で前記第1のN型領域の一部が共有されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体装置。
【請求項4】
ブリッジ型に接続された4個のダイオードを有し、
前記4個のダイオードのうちの少なくとも1個が複数の第1の構造を有し、
前記第1の構造のそれぞれが、
第1のN型領域と、
前記第1のN型領域に取り囲まれたP型領域と、
前記P型領域に取り囲まれた第2のN型領域と、
を有し、
前記第1のN型領域と前記P型領域とが結線され、
前記複数の第1の構造が並列に接続されて1個のダイオードが構成されていることを特徴とする全波整流回路。
【請求項5】
前記4個のダイオードが前記複数の第1の構造を有し、
前記4個のダイオードの各々において、
前記第1のN型領域と前記P型領域とが結線され、
前記複数の第1の構造が並列に接続されて1個のダイオードが構成されていることを特徴とする請求項4に記載の全波整流回路。
【請求項6】
入力信号の周波数が10MHz以上であることを特徴とする請求項4又は5に記載の全波整流回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び全波整流回路に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触ICカードは、電源を内蔵せず、外部からの電波により電力供給を受けて内蔵回路を動作させる。かかる非接触ICカードでは、一般に13.56MHzの交流磁界を外部から供給し、内蔵する全波整流回路によりDC電源に整流して内部電源とする。全波整流回路は、通常、4個のダイオードによるブリッジ回路を含み、コイルなどのインダクタンス素子からなるアンテナに供給された磁界に対して、インダクタンス素子が誘導電流を発生し、その誘導電流がブリッジ回路に供給される。誘導電流の極性は磁界の極性反転に伴って反転するAC電流であるので、ブリッジ回路からなる整流回路によりDC電流に整流する。
【0003】
全波整流回路を構成するダイオードは、P型基板内に形成されたPウェル内のPN接合により構成される。このPウェルは、P型基板と電気的に分離する目的でNウェル内に形成される。つまり、ダイオードが形成されるPウェルはP型基板内に形成したNウェル内に形成されたトリプルウェル構造になる。トリプルウェル構造のダイオードに関し、基板電流の発生を抑制することを目的とした技術が提案されている。
【0004】
しかしながら、基板電流の発生を抑制することを目的としたダイオードを含め、従来のダイオードで構成されたブリッジ回路を備えた全波整流回路では、入力信号の周波数が大きいほど、整流特性が低下しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−44164号公報
【特許文献2】特開2005−44956号公報
【特許文献3】特開2005−236084号公報
【特許文献4】特開2005−191263号公報
【特許文献5】特開平11−121459号公報
【特許文献6】特開平6−224214号公報
【特許文献7】特開2001−267327号公報
【特許文献8】特開2015−103605号公報
【特許文献9】特開2006−100308号公報
【特許文献10】特開2006−339393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、入力信号の周波数に拘わらず優れた整流特性を得ることができる半導体装置及び全波整流回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
半導体装置の一態様には、複数の第1の構造が含まれ、前記第1の構造のそれぞれに、第1のN型領域と、前記第1のN型領域に取り囲まれたP型領域と、前記P型領域に取り囲まれた第2のN型領域と、が含まれる。前記第1のN型領域と前記P型領域とが結線され、前記複数の第1の構造が並列に接続されて1個のダイオードが構成されている。
【0008】
全波整流回路の一態様には、ブリッジ型に接続された4個のダイオードが含まれる。前記4個のダイオードのうちの少なくとも1個に複数の第1の構造が含まれ、前記第1の構造のそれぞれに、第1のN型領域と、前記第1のN型領域に取り囲まれたP型領域と、前記P型領域に取り囲まれた第2のN型領域と、が含まれる。前記第1のN型領域と前記P型領域とが結線され、前記複数の第1の構造が並列に接続されて1個のダイオードが構成されている。
【発明の効果】
【0009】
上記の半導体装置等によれば、適切な複数の第1の構造が並列に接続されて1個のダイオードが構成されているため、入力信号の周波数に拘わらず優れた整流特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】参考例における不純物拡散層及びウェルのレイアウトを示す図である。
図2】参考例の構成を示す断面図である。
図3】全波整流回路を示す図及び参考例に関するシミュレーションの結果を示す図である。
図4】第1の実施形態に係る半導体装置における不純物拡散層及びウェルのレイアウトを示す図である。
図5】第1の実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
図6】第1の実施形態に係る半導体装置に含まれる第1の構造を示す断面図である。
図7A】第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
図7B図7Aに引き続き、半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
図7C図7Bに引き続き、半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
図7D図7Cに引き続き、半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
図7E図7Dに引き続き、半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
図7F図7Eに引き続き、半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
図8】第2の実施形態に係る半導体装置における不純物拡散層及びウェルのレイアウトを示す図である。
図9】第2の実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。
図10】第2の実施形態に係る半導体装置に含まれる第1の構造を示す断面図である。
図11A】第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
図11B図11Aに引き続き、半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
図11C図11Bに引き続き、半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
図11D図11Cに引き続き、半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
図11E図11Dに引き続き、半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
図11F図11Eに引き続き、半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
図12】第2の実施形態及び参考例に関するシミュレーションの結果を示す図である。
図13】第2の実施形態及び参考例に関する他のシミュレーションの結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(参考例)
先ず、基板電流の発生を抑制することが可能なトリプルウェル構造のダイオードの参考例について説明する。この参考例では、Pウェル内のP型不純物拡散層及びN型不純物拡散層の最大寸法を小さく抑える観点から、フィンガー構造が採用されている。つまり、P型基板の表面に複数のN型不純物拡散層が互いに平行に形成され、これらが共通に接続されてカソードとして用いられる。図1は、参考例における不純物拡散層及びウェルのレイアウトを示す図である。図2は、参考例の構成を示す断面図である。図2は、図1中のI−I線に沿った断面図に相当する。
【0012】
図1及び図2に示すように、参考例のダイオード900には、P型基板901に形成された、Nウェル911、Nウェル912、Nウェル913、Pウェル922及びPウェル923aが含まれる。Nウェル912は平面形状が略矩形のNウェル911の外周部上に環状に形成され、Nウェル913はNウェル912上に形成されている。N型不純物拡散層915aがNウェル913上に形成されている。Pウェル922はNウェル911上に平面視でNウェル912の内側に形成され、Pウェル923aは、Pウェル922の外周部上に環状に形成された周縁部、及びこの周縁部を二分する中央部を含む。P型不純物拡散層925aがPウェル923a上に形成されている。Pウェル922上の平面視でPウェル923aの内側にP型基板901の一部分901aがあり、N型不純物拡散層915cがこの一部分901a上に形成されている。
【0013】
P型基板901の表面には、平面視でNウェル911から離間してPウェル923s及びP型不純物拡散層925sが形成されている。Pウェル923sはPウェル923aと同じ深さに形成され、P型不純物拡散層925sはPウェル923s上に形成されている。
【0014】
導電型が異なる隣り合う不純物拡散層の間に素子分離領域902が形成されている。N型不純物拡散層915c上にシリサイド層916cが形成され、N型不純物拡散層915a上にシリサイド層916aが形成され、P型不純物拡散層925a上にシリサイド層926aが形成され、P型不純物拡散層925s上にシリサイド層926sが形成されている。シリサイド層916a、916c、926a及び926s並びに素子分離領域902上にシリコン窒化膜931及びシリコン酸化膜932が形成され、シリコン窒化膜931及びシリコン酸化膜932内に導電プラグ941a、941c、951a及び951sが形成されている。導電プラグ941aはシリサイド層916aに繋がり、導電プラグ941cはシリサイド層916cに繋がり、導電プラグ951aはシリサイド層926aに繋がり、導電プラグ951sはシリサイド層926sに繋がっている。シリコン酸化膜932上にシリコン酸化膜933が形成され、シリコン酸化膜933内に配線942c、952a及び952sが形成されている。配線942cは導電プラグ941cに繋がり、配線952aは導電プラグ941a及び951aに繋がり、配線952sは導電プラグ951sに繋がっている。つまり、N型不純物拡散層915aとP型不純物拡散層925aとが配線952aを通じて結線されている。
【0015】
このようなダイオード900を全波整流回路に用いることで基板電流を抑制することができる。
【0016】
しかしながら、ダイオード900を用いた全波整流回路の特性について本発明者が検討したところ、入力信号の周波数が10MHzを超えるような高周波数であると、フィンガー数が多くなるほど、入力ロスが顕著に大きくなることが明らかになった。
【0017】
ここで、全波整流回路について説明する。図3は、全波整流回路を示す図及び参考例に関するシミュレーションの結果を示す図である。図3(a)は全波整流回路の構成を示す回路図であり、図3(b)は参考例におけるフィンガー数と入力ロスとの関係を示す図である。
【0018】
図3(a)に示すように、全波整流回路は、例えば4個のダイオードD1、D2、D3及びD4からなるブリッジ回路11を含む。ダイオードD4のカソードとダイオードD1のアノードとの間に入力端子IN1が接続され、ダイオードD3のカソードとダイオードD2のアノードとの間に入力端子IN2が接続されている。ダイオードD3のアノード及びダイオードD4のアノードは接地され、ダイオードD1のカソード及びダイオードD2のカソードは出力端子OUTに接続されている。出力端子OUTと接地との間に抵抗素子R及び容量素子Cが互いに並列に接続されている。
【0019】
ダイオードに印加するバイアスを順バイアスから逆バイアスに切り替えると、切り替え直後に負の電流が一定時間流れる。このような負の電流が流れる過程は逆方向回復過程(リカバリ過程)とよばれる。逆方向回復過程においては、空乏層が大きく広がり、空乏化に伴ってキャリアが引き出されて、負の電流が流れる。従って、逆方向回復過程の時間は順バイアスが印加されている間の蓄積電荷量に依存し、順方向電流が大きくなるほど増加する。全波整流回路では、各ダイオードにおいて、順バイアスから逆バイアスに切り替わった直後に負の電流が流れる。例えば、図3(a)の全波整流回路では、ダイオードD1及びD2を流れる電流が半周期ずれており、どちらにも逆方向回復過程による負の電流が流れるため、これらの和である出力信号の波形がなまり、入力ロスが生じる。
【0020】
図3(a)の全波整流回路のダイオードD1〜D4に参考例のようなレイアウトのダイオードを用いた場合の入力ロスのシミュレーション結果を図3(b)に示す。参考例のダイオード900では、フィンガー数、すなわちN型不純物拡散層915cの数が2であるが、図3(b)にはフィンガー数が1、5又は11の場合の結果を示してある。このシミュレーションでは、抵抗素子Rの抵抗を539Ω、容量素子Cの容量を200pFとし、入力端子IN1及びIN2間に周波数が13.56MHz、最大値が70mAの交流電流を印加した。入力ロスは、入力端子IN1及びIN2間の交流電源を流れる電流の1周期分の積分値をI0、抵抗素子Rを流れる電流の1周期分の積分値をI1とすると、「(I0−I1)/I0」で表される。
【0021】
図3(b)に示すように、フィンガー数の増加に伴って入力ロスが大幅に増加する。特に、入力信号の周波数が10MHzを超えるような高周波域での入力ロスの増加が顕著である。
【0022】
本発明者は、この原因を究明すべく検討を行った。この結果、フィンガー構造のダイオード900には、N型不純物拡散層915cをエミッタ、Pウェル922をベース、Nウェル911をコレクタとするNPNバイポーラトランジスタが存在し、N型不純物拡散層915cの総面積が一定の場合、フィンガー数が多いほど、コレクタ抵抗が増加することが明らかになった。P型不純物拡散層925aとN型不純物拡散層915aとが配線952aを通じて電気的に接続され、ベースとコレクタとが電気的に接続されている。このため、複数のN型不純物拡散層915cのうちで中心に近いものを含むNPNバイポーラトランジスタほど、コレクタ抵抗の電圧降下によりベース−コレクタ間が順方向となって電流が流れにくくなる。従って、エミッタ−ベース間の電圧が等しければ、中央に近いNPNバイポーラトランジスタほど電流が小さくなる。エミッタ−ベース間の電圧を大きくすれば、中央部と周縁部との間で同程度の電流を流すことが可能であるが、それでは、ベース中の蓄積電荷量が増えるため、逆方向回復過程で流れる電流が増えてしまう。本発明者は、このようなメカニズムにより、従来のフィンガー構造のダイオードでは、N型不純物拡散層の総面積が同一の場合、フィンガー数の増加に伴って入力ロスが大幅に増加することを見出した。また、入力信号の周波数が高いほど、単位時間当たりの入力電流は一定のままで逆方向回復過程の頻度が増加するため、入力ロスが増大してしまう。
【0023】
本発明者は、このような参考例を改良すべく鋭意検討を行った結果、下記の諸態様に想到した。
【0024】
(第1の実施形態)
次に、第1の実施形態について説明する。第1の実施形態は、ダイオードを含む半導体装置に関する。図4は、第1の実施形態に係る半導体装置における不純物拡散層及びウェルのレイアウトを示す図である。図5は、第1の実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。図5は、図4中のI−I線に沿った断面図に相当する。図6は、第1の実施形態に係る半導体装置に含まれる第1の構造を示す断面図である。
【0025】
図4及び図5に示すように、第1の実施形態に係る半導体装置には、P型基板101に形成された複数の第1の構造105が含まれる。図6に示すように、第1の構造105には、それぞれ、第1のN型領域110、第1のN型領域110に取り囲まれたP型領域120、及びP型領域120に取り囲まれたN型不純物拡散層115cが含まれる。N型領域110に、Nウェル111、Nウェル112、Nウェル113及びN型不純物拡散層115aが含まれ、P型領域120に、Pウェル122、Pウェル123a及びP型不純物拡散層125aが含まれ、P型基板101の一部分101aもP型領域120に含まれる。第1の構造105毎に、Nウェル112は平面形状が略矩形のNウェル111の外周部上に環状に形成され、Nウェル113はNウェル112上に形成され、N型不純物拡散層115aはNウェル113上に形成されている。Pウェル122はNウェル111上に平面視でNウェル112の内側に形成され、Pウェル123aはPウェル122の外周部上に環状に形成され、P型不純物拡散層125aはPウェル123a上に形成されている。Pウェル122上の平面視でPウェル123aの内側にP型基板101の一部分101aがある。N型不純物拡散層115cはP型基板101の一部分101a上に形成されている。N型不純物拡散層115cは第2のN型領域の一例である。
【0026】
P型基板101の表面には、第1の構造105から離間して、Pウェル123s及びP型不純物拡散層125sが形成されている。Pウェル123sはPウェル123aと同じ深さに形成され、P型不純物拡散層125sはPウェル123s上に形成されている。
【0027】
導電型が異なる隣り合う不純物拡散層の間に素子分離領域102が形成されている。N型不純物拡散層115c上にシリサイド層116cが形成され、N型不純物拡散層115a上にシリサイド層116aが形成され、P型不純物拡散層125a上にシリサイド層126aが形成され、P型不純物拡散層125s上にシリサイド層126sが形成されている。シリサイド層116a、116c、126a及び126s並びに素子分離領域102上にシリコン窒化膜131及びシリコン酸化膜132が形成され、シリコン窒化膜131及びシリコン酸化膜132内に導電プラグ141a、141c、151a及び151sが形成されている。導電プラグ141aはシリサイド層116aに繋がり、導電プラグ141cはシリサイド層116cに繋がり、導電プラグ151aはシリサイド層126aに繋がり、導電プラグ151sはシリサイド層126sに繋がっている。シリコン酸化膜132上にシリコン酸化膜133が形成され、シリコン酸化膜133内に配線142c、152a及び152sが形成されている。配線142cは導電プラグ141cに繋がり、配線152aは導電プラグ141a及び151aに繋がり、配線152sは導電プラグ151sに繋がっている。つまり、第1の構造105のそれぞれにおいて、N型領域110とP型領域120とが配線152aを通じて結線されている。
【0028】
複数の第1の構造105の間で、配線142cが共通に接続され、配線152aが共通に接続されている。つまり、複数の第1の構造105の間で、N型領域110及びP型領域120の対同士が共通に接続され、N型不純物拡散層115c同士が共通に接続されている。このように、複数の第1の構造105が並列に接続されて1個のダイオード100が構成されている。
【0029】
第1の実施形態に係る半導体装置では、第1の構造105の各々においてP型領域120が第1のN型領域110に取り囲まれているため、ダイオード100のコレクタ抵抗は第1の構造105の数の影響を受けない。従って、エミッタ−ベース間の電圧を大きくせずとも十分な電流が流れ、エミッタ−ベース間の電圧の上昇に伴うベース中の蓄積電荷量の増加を抑制でき、入力ロスを抑制することができる。
【0030】
次に、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。図7A乃至図7Fは、第1の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0031】
先ず、図7A(a)に示すように、基板101の表面に素子分離領域102を形成する。基板101は、例えばP型シリコン基板である。素子分離領域102は、例えばシャロートレンチアイソレーション(shallow trench isolation:STI)により形成することができる。
【0032】
次いで、図7A(b)に示すように、基板101内にNウェル111を形成する。Nウェル111の形成では、例えば、2MeV〜4MeVの注入エネルギー、1.5×1013cm-2〜2.5×1013cm-2のドーズ量でリン(P)のイオン注入を行う。不純物濃度で1×1016cm-3以上となるNウェル111の上端は基板101の表面から1.37μm〜2.46μmの深さにあり、Nウェル111の下端は基板101の表面から4.15μm〜5.80μmの深さにある。
【0033】
その後、図7B(c)に示すように、Nウェル111上にPウェル122を形成する。Pウェル122の形成では、例えば、800keV〜1000keVの注入エネルギー、0.5×1013cm-2〜1.5×1013cm-2のドーズ量でホウ素(B)のイオン注入を行う。不純物濃度で1×1016cm-3以上となるPウェル122の上端は基板101の表面から1.06μm〜1.47μmの深さにあり、Pウェル122の下端は基板101の表面から2.05μm〜2.31μmの深さにある。
【0034】
続いて、図7B(d)に示すように、Nウェル111上にNウェル112を形成する。Nウェル112の形成では、例えば、600keV〜800keVの注入エネルギー、1.0×1013cm-2〜2.0×1013cm-2のドーズ量でPのイオン注入を行う。不純物濃度で1×1016cm-3以上となるNウェル112の上端は基板101の表面から0.25μm〜0.51μmの深さにあり、Nウェル112の下端は基板101の表面から2.05μm〜2.43μmの深さにある。
【0035】
次いで、図7C(e)に示すように、Nウェル112上にNウェル113を形成する。Nウェル113の形成では、例えば、300keV〜400keVの注入エネルギー、2.0×1013cm-2〜4.0×1013cm-2のドーズ量でPのイオン注入を行う。不純物濃度で1×1016cm-3以上となるNウェル113の上端は基板101の表面から0.00μmの深さにあり、Nウェル113の下端は基板101の表面から0.84μm〜1.07μmの深さにある。
【0036】
その後、図7C(f)に示すように、Pウェル122上にPウェル123aを形成し、Pウェル123aと同じ深さでPウェル123sを形成する。Pウェル123a及び123sの形成では、例えば、100keV〜200keVの注入エネルギー、2.0×1013cm-2〜4.0×1013cm-2のドーズ量でBのイオン注入を行う。不純物濃度で1×1016cm-3以上となるPウェル123a及び123sの上端は基板101の表面から0.00μm〜0.13μmの深さにあり、Pウェル123a及び123sの下端は基板101の表面から0.68μm〜1.05μmの深さにある。基板101に不純物をイオン注入した後、ウェルアニールと呼ばれるアニールを行う。ウェルアニールは、イオン注入された不純物を熱拡散させることにより、所定の不純物濃度プロファイルを得る目的で行われ、例えば1000℃程度の高温で10秒程度、行う。なお、例えば注入直後の深さ方向でウェル同士の領域が重なり合わない場合であっても、不純物の熱拡散によって領域が重なるように制御することができる。
【0037】
続いて、図7D(g)に示すように、Nウェル113上にN型不純物拡散層115aを形成し、基板101の一部分101a上にN型不純物拡散層115cを形成し、Pウェル123a上にP型不純物拡散層125aを形成し、Pウェル123s上にP型不純物拡散層125sを形成する。N型不純物拡散層115a及び115cの形成では、例えば、6keV〜10keVの注入エネルギー、1.0×1016cm-2〜1.5×1016cm-2のドーズ量でPのイオン注入を行う。P型不純物拡散層125a及び125sの形成では、例えば、6keV〜10keVの注入エネルギー、0.8×1013cm-2〜1.2×1013cm-2のドーズ量でBのイオン注入を行い、15keV〜25keVの注入エネルギー、3.0×1014cm-2〜7.0×1014cm-2のドーズ量でゲルマニウム(Ge)のイオン注入を行い、2keV〜6keVの注入エネルギー、4.0×1015cm-2〜8.0×1015cm-2のドーズ量でBのイオン注入を行い、5keV〜9keVの注入エネルギー、3.0×1014cm-2〜7.0×1014cm-2のドーズ量でフッ素(F)のイオン注入を行う。さらに、スパイクアニールと呼ばれる急速熱処理を行うことにより、全ての不純物拡散領域を活性化する。スパイクアニールは、例えば1000℃程度の温度で、高温待機時間0秒程度の急速昇温、かつ、急速降温の短時間で行う。
【0038】
次いで、図7D(h)に示すように、N型不純物拡散層115a上にシリサイド層116aを形成し、N型不純物拡散層115c上にシリサイド層116cを形成し、P型不純物拡散層125a上にシリサイド層126aを形成し、P型不純物拡散層125s上にシリサイド層126sを形成する。シリサイド層116a、116c、126a及び126sとしては、例えば、モリブテン(Mo)、タングステン(W)、チタン(Ti)、コバルト(Co)又はニッケル(Ni)のシリサイド層を形成する。
【0039】
その後、図7E(i)に示すように、シリサイド層116a、116c、126a及び126s並びに素子分離領域102上にシリコン窒化膜131及びシリコン酸化膜132を形成し、シリコン酸化膜132の表面を化学的機械的研磨(chemical mechanical polishing:CMP)により平坦化する。
【0040】
続いて、図7E(j)に示すように、シリコン酸化膜132及びシリコン窒化膜131内に導電プラグ141a、141c、151a及び151sを形成する。導電プラグ141aはシリサイド層116aに繋がり、導電プラグ141cはシリサイド層116cに繋がり、導電プラグ151aはシリサイド層126aに繋がり、導電プラグ151sはシリサイド層126sに繋がる。導電プラグ141a、141c、151a及び151sとしては、例えばタングステン(W)プラグを形成する。
【0041】
次いで、図7F(k)に示すように、シリコン酸化膜132上にシリコン酸化膜133を形成する。
【0042】
その後、図7F(l)に示すように、シリコン酸化膜133内に配線142c、152a及び152sを形成する。配線142cは導電プラグ141cに繋がり、配線152aは導電プラグ141a及び151aに繋がり、配線152sは導電プラグ151sに繋がる。このとき、複数の第1の構造105の間で、配線142c同士を共通に接続し、配線152a同士を共通に接続する。配線142c、152a及び152sとしては、例えば銅(Cu)配線を形成する。
【0043】
このようにして、第1の実施形態に係る半導体装置を製造することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、ダイオードを含む半導体装置に関する。図8は、第2の実施形態に係る半導体装置における不純物拡散層及びウェルのレイアウトを示す図である。図9は、第2の実施形態に係る半導体装置の構成を示す断面図である。図9は、図8中のI−I線に沿った断面図に相当する。図10は、第2の実施形態に係る半導体装置に含まれる第1の構造を示す断面図である。
【0045】
図8及び図9に示すように、第2の実施形態に係る半導体装置には、P型基板201に形成された複数の第1の構造205が含まれる。図10に示すように、第1の構造205には、それぞれ、第1のN型領域210、第1のN型領域210に取り囲まれたP型領域220、及びP型領域220に取り囲まれたN型不純物拡散層215cが含まれる。N型領域210に、Nウェル211、Nウェル212、Nウェル213及びN型不純物拡散層215aが含まれ、P型領域220に、Pウェル222、Pウェル223a及びP型不純物拡散層225aが含まれ、P型基板201の一部分201aもP型領域220に含まれる。第1の実施形態では、Nウェル111が第1の構造105毎に独立して設けられているのに対し、第2の実施形態では、第1の構造205間でNウェル211が一体化されている。Nウェル211の一体化に伴い、Nウェル212の一部が隣り合う第1の構造205間で共有されている。第1の構造205毎に、Nウェル212は平面形状が略矩形のNウェル211の外周部上に環状に形成され、Nウェル213はNウェル212上に形成され、N型不純物拡散層215aはNウェル213上に形成されている。Pウェル222はNウェル211上に平面視でNウェル212の内側に形成され、Pウェル223aはPウェル222の外周部上に環状に形成され、P型不純物拡散層225aはPウェル223a上に形成されている。Pウェル222上の平面視でPウェル223aの内側にP型基板201の一部分201aがある。N型不純物拡散層215cはP型基板201の一部分201a上に形成されている。N型不純物拡散層215cは第2のN型領域の一例である。
【0046】
導電型が異なる隣り合う不純物拡散層の間に素子分離領域202が形成されている。N型不純物拡散層215c上にシリサイド層216cが形成され、N型不純物拡散層215a上にシリサイド層216aが形成され、P型不純物拡散層225a上にシリサイド層226aが形成され、P型不純物拡散層225s上にシリサイド層226sが形成されている。シリサイド層216a、216c、226a及び226s並びに素子分離領域202上にシリコン窒化膜231及びシリコン酸化膜232が形成され、シリコン窒化膜231及びシリコン酸化膜232内に導電プラグ241a、241c、251a及び251sが形成されている。導電プラグ241aはシリサイド層216aに繋がり、導電プラグ241cはシリサイド層216cに繋がり、導電プラグ251aはシリサイド層226aに繋がり、導電プラグ251sはシリサイド層226sに繋がっている。シリコン酸化膜232上にシリコン酸化膜233が形成され、シリコン酸化膜233内に配線242c、252a及び252sが形成されている。配線242cは導電プラグ241cに繋がり、配線252aは導電プラグ241a及び251aに繋がり、配線252sは導電プラグ251sに繋がっている。つまり、第1の構造205のそれぞれにおいて、N型領域210とP型領域220とが配線252aを通じて結線されている。
【0047】
複数の第1の構造205の間で、配線242cが共通に接続され、配線252aが共通に接続されている。つまり、複数の第1の構造205の間で、N型領域210及びP型領域220の対同士が共通に接続され、N型不純物拡散層215c同士が共通に接続されている。このように、複数の第1の構造205が並列に接続されて1個のダイオード200が構成されている。
【0048】
第2の実施形態に係る半導体装置では、第1の構造205の各々においてP型領域220が第1のN型領域210に取り囲まれているため、ダイオード200のコレクタ抵抗は第1の構造205の数の影響を受けない。従って、第1の実施形態と同様に、入力ロスを抑制することができる。第2の実施形態では、第1のN型領域210の一部が隣り合う第1の構造205の間で共有されているため、第1の実施形態よりも高集積化に適している。
【0049】
次に、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。図11A乃至図11Fは、第2の実施形態に係る半導体装置の製造方法を工程順に示す断面図である。
【0050】
先ず、図11A(a)に示すように、基板201の表面に素子分離領域202を形成する。基板201は、例えばP型シリコン基板である。素子分離領域202は、例えばSTIにより形成することができる。
【0051】
次いで、図11A(b)に示すように、基板201内にNウェル211を形成する。Nウェル211の形成では、例えば、2MeV〜4MeVの注入エネルギー、1.5×1013cm-2〜2.5×1013cm-2のドーズ量でPのイオン注入を行う。不純物濃度で1×1016cm-3以上となるNウェル211の上端は基板201の表面から1.37μm〜2.46μmの深さにあり、Nウェル211の下端は基板201の表面から4.15μm〜5.80μmの深さにある。
【0052】
その後、図11B(c)に示すように、Nウェル211上にPウェル222を形成する。Pウェル222の形成では、例えば、800keV〜1000keVの注入エネルギー、0.5×1013cm-2〜1.5×1013cm-2のドーズ量でBのイオン注入を行う。不純物濃度で1×1016cm-3以上となるPウェル222の上端は基板201の表面から1.06μm〜1.47μmの深さにあり、Pウェル222の下端は基板201の表面から2.05μm〜2.31μmの深さにある。
【0053】
続いて、図11B(d)に示すように、Nウェル211上にNウェル212を形成する。Nウェル212の形成では、例えば、600keV〜800keVの注入エネルギー、1.0×1013cm-2〜2.0×1013cm-2のドーズ量でPのイオン注入を行う。不純物濃度で1×1016cm-3以上となるNウェル212の上端は基板201の表面から0.25μm〜0.51μmの深さにあり、Nウェル212の下端は基板201の表面から2.05μm〜2.43μmの深さにある。
【0054】
次いで、図11C(e)に示すように、Nウェル212上にNウェル213を形成する。Nウェル213の形成では、例えば、300keV〜400keVの注入エネルギー、2.0×1013cm-2〜4.0×1013cm-2のドーズ量でPのイオン注入を行う。不純物濃度で1×1016cm-3以上となるNウェル213の上端は基板201の表面から0.00μmの深さにあり、Nウェル213の下端は基板201の表面から0.84μm〜1.07μmの深さにある。
【0055】
その後、図11C(f)に示すように、Pウェル222上にPウェル223aを形成し、Pウェル223aと同じ深さでPウェル223sを形成する。Pウェル223a及び223sの形成では、例えば、100keV〜200keVの注入エネルギー、2.0×1013cm-2〜4.0×1013cm-2のドーズ量でBのイオン注入を行う。不純物濃度で1×1016cm-3以上となるPウェル223a及び223sの上端は基板201の表面から0.00μm〜0.13μmの深さにあり、Pウェル223a及び223sの下端は基板201の表面から0.68μm〜1.05μmの深さにある。基板201に不純物をイオン注入した後には、ウェルアニールと呼ばれるアニールを行う。ウェルアニールは、イオン注入された不純物を熱拡散させることにより、所定の不純物濃度プロファイルを得る目的で行われ、例えば1000℃程度の高温で10秒程度、行う。なお、例えば注入直後の深さ方向でウェル同士の領域が重なり合わない場合であっても、不純物の熱拡散によって領域が重なるように制御することができる。
【0056】
続いて、図11D(g)に示すように、Nウェル213上にN型不純物拡散層215aを形成し、基板201の一部分201a上にN型不純物拡散層215cを形成し、Pウェル223a上にP型不純物拡散層225aを形成し、Pウェル223s上にP型不純物拡散層225sを形成する。N型不純物拡散層215a及び215cの形成では、例えば、6keV〜10keVの注入エネルギー、1.0×1016cm-2〜1.5×1016cm-2のドーズ量でPのイオン注入を行う。P型不純物拡散層225a及び225sの形成では、例えば、6keV〜10keVの注入エネルギー、0.8×1013cm-2〜1.2×1013cm-2のドーズ量でBのイオン注入を行い、15keV〜25keVの注入エネルギー、3.0×1014cm-2〜7.0×1014cm-2のドーズ量でGeのイオン注入を行い、2keV〜6keVの注入エネルギー、4.0×1015cm-2〜8.0×1015cm-2のドーズ量でBのイオン注入を行い、5keV〜9keVの注入エネルギー、3.0×1014cm-2〜7.0×1014cm-2のドーズ量でFのイオン注入を行う。さらに、スパイクアニールと呼ばれる急速熱処理を行うことにより、全ての不純物拡散領域を活性化する。スパイクアニールは、例えば1000℃程度の温度で、高温待機時間0秒程度の急速昇温、かつ、急速降温の短時間で行う。
【0057】
次いで、図11D(h)に示すように、N型不純物拡散層215a上にシリサイド層216aを形成し、N型不純物拡散層215c上にシリサイド層216cを形成し、P型不純物拡散層225a上にシリサイド層226aを形成し、P型不純物拡散層225s上にシリサイド層226sを形成する。シリサイド層216a、216c、226a及び226sとしては、例えば、Mo、W、Ti、Co又はNiのシリサイド層を形成する。
【0058】
その後、図11E(i)に示すように、シリサイド層216a、216c、226a及び226s並びに素子分離領域202上にシリコン窒化膜231及びシリコン酸化膜232を形成し、シリコン酸化膜232の表面をCMPにより平坦化する。
【0059】
続いて、図11E(j)に示すように、シリコン酸化膜232及びシリコン窒化膜231内に導電プラグ241a、241c、251a及び251sを形成する。導電プラグ241aはシリサイド層216aに繋がり、導電プラグ241cはシリサイド層216cに繋がり、導電プラグ251aはシリサイド層226aに繋がり、導電プラグ251sはシリサイド層226sに繋がる。導電プラグ241a、241c、251a及び251sとしては、例えばWプラグを形成する。
【0060】
次いで、図11F(k)に示すように、シリコン酸化膜232上にシリコン酸化膜233を形成する。
【0061】
その後、図11F(l)に示すように、シリコン酸化膜233内に配線242c、252a及び252sを形成する。配線242cは導電プラグ241cに繋がり、配線252aは導電プラグ241a及び251aに繋がり、配線252sは導電プラグ251sに繋がる。このとき、複数の第1の構造205の間で、配線242c同士を共通に接続し、配線252a同士を共通に接続する。
【0062】
このようにして、第2の実施形態に係る半導体装置を製造することができる。
【0063】
次に、第2の実施形態に関するシミュレーションについて説明する。図12及び図13は、第2の実施形態(実施例)及び参考例に関するシミュレーションの結果を示す図である。図12(a)はフィンガー数と入力ロスとの関係を示す図であり、図12(b)は周波数と入力ロスとの関係を示す図である。図13(a)はカソード電圧が一定の場合のフィンガー数と電流との関係を示す図であり、図13(b)は入力電流が一定の場合のフィンガー数と電流との関係を示す図である。第2の実施形態のダイオード200では、フィンガー数、すなわちN型不純物拡散層215cの数が2であるが、図12(a)並びに図13(a)及び(b)にはフィンガー数が1、3又は10の場合の結果を示してある。また、図12(b)には、第2の実施形態についてはフィンガー数が10の場合の結果を示し、参考例についてはフィンガー数が11の場合の結果を示してある。
【0064】
図12に示すシミュレーションでは、図3(a)の全波整流回路のダイオードD1〜D4に第2の実施形態又は参考例のようなレイアウトのダイオードを用いることとした。図12(a)に示すシミュレーションでは、ダイオード1個あたりの総面積を3000μm2、抵抗素子Rの抵抗を539Ω、容量素子Cの容量を200pFとし、入力端子IN1及びIN2間に周波数が13.56MHz、最大値が70mAの交流電流を印加した。図12(b)に示すシミュレーションでは、ダイオード1個あたりの総面積を3000μm2、抵抗素子Rの抵抗を539Ω、容量素子Cの容量を200pFとし、入力端子IN1及びIN2間に最大値が70mAの交流電流を印加し、交流電流の周波数を変化させた。
【0065】
図12(a)に示すように、参考例では、フィンガー数の増加に伴って入力ロスが大幅に増加するのに対し、第2の実施形態では、フィンガー数の増加に伴って入力ロスが減少する。図12(b)に示すように、参考例では、周波数の増加に伴って入力ロスが大幅に増加するのに対し、第2の実施形態では、周波数が増加しても入力ロスはほとんど変化しない。このように、第2の実施形態によれば、フィンガー数が増加しても、周波数が増加しても、入力ロスの増加を回避することができる。
【0066】
図13(a)に示すシミュレーションでは、カソード電圧を−0.92V、アノード電圧を0V、基板電圧を−30Vとし、PウェルからN型不純物拡散層に流れる電流及びNPNバイポーラトランジスタによるNウェルからN型不純物拡散層に流れる電流を計算した。図13(b)に示すシミュレーションでは、アノード電圧を0V、基板電圧を−30Vとし、入力電流の実効値が70mAとなるように、カソード電圧を調整し、PウェルからN型不純物拡散層に流れる電流及びNウェルからN型不純物拡散層に流れる電流を計算した。図13(b)中の数値はカソード電圧である。
【0067】
図13(a)及び(b)に示すように、参考例では、フィンガー数の増加に伴ってNウェルから流れる電流が大幅に低下するのに対し、第2の実施形態では、Nウェルから流れる電流の変動は小さい。これは、参考例では、コレクタ抵抗が大幅に増加するのに対し、第2の実施形態では、コレクタ抵抗がほとんど変化しないことに起因する。さらに、参考例では、入力電流が70mAとなるのに必要なカソード電圧は、フィンガー数増加に伴って増えるため、入力ロス増大の原因となる。
【0068】
第1の実施形態及び第2の実施形態では第1のN型領域とP型領域とが配線を通じて結線されているが、第1のN型領域とP型領域とが不純物拡散層を通じて結線されていてもよい。例えば、ダイオード素子を構成する層数を減らすことで、ダイオード素子のために配線の層に領域を確保する必要が無いため、他の用途などに配線の層の領域を使用することもできる。半導体装置の設計の自由度を高められる点でダイオード素子を構成する層数を減らすことは有用である。
【0069】
以下、本発明の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0070】
(付記1)
複数の第1の構造を有し、
前記第1の構造のそれぞれが、
第1のN型領域と、
前記第1のN型領域に取り囲まれたP型領域と、
前記P型領域に取り囲まれた第2のN型領域と、
を有し、
前記第1のN型領域と前記P型領域とが結線され、
前記複数の第1の構造が並列に接続されて1個のダイオードが構成されていることを特徴とする半導体装置。
【0071】
(付記2)
前記複数の第1の構造の間で、
前記第1のN型領域及び前記P型領域の対同士が共通に接続され、
前記第2のN型領域同士が共通に接続されていることを特徴とする付記1に記載の半導体装置。
【0072】
(付記3)
前記複数の第1の構造のうち隣り合う第1の構造の間で前記第1のN型領域の一部が共有されていることを特徴とする付記1又は2に記載の半導体装置。
【0073】
(付記4)
前記第1のN型領域と前記P型領域とを結線する配線を有することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【0074】
(付記5)
ブリッジ型に接続された4個のダイオードを有し、
前記4個のダイオードのうちの少なくとも1個が複数の第1の構造を有し、
前記第1の構造のそれぞれが、
第1のN型領域と、
前記第1のN型領域に取り囲まれたP型領域と、
前記P型領域に取り囲まれた第2のN型領域と、
を有し、
前記第1のN型領域と前記P型領域とが結線され、
前記複数の第1の構造が並列に接続されて1個のダイオードが構成されていることを特徴とする全波整流回路。
【0075】
(付記6)
前記4個のダイオードが前記複数の第1の構造を有し、
前記4個のダイオードの各々において、
前記第1のN型領域と前記P型領域とが結線され、
前記複数の第1の構造が並列に接続されて1個のダイオードが構成されていることを特徴とする付記5に記載の全波整流回路。
【0076】
(付記7)
入力信号の周波数が10MHz以上であることを特徴とする付記5又は6に記載の全波整流回路。
【0077】
(付記8)
前記複数の第1の構造の間で、
前記第1のN型領域及び前記P型領域の対同士が共通に接続され、
前記第2のN型領域同士が共通に接続されていることを特徴とする付記5乃至7のいずれか1項に記載の全波整流回路。
【0078】
(付記9)
前記複数の第1の構造のうち隣り合う第1の構造の間で前記第1のN型領域の一部が共有されていることを特徴とする付記5乃至8のいずれか1項に記載の全波整流回路。
【0079】
(付記10)
前記第1のN型領域と前記P型領域とを結線する配線を有することを特徴とする付記5乃至9のいずれか1項に記載の全波整流回路。
【符号の説明】
【0080】
100、200:ダイオード
105、205:第1の構造
110、210:N型領域
115c、215c:N型不純物拡散層
120、220:P型領域
142c、152a、242c、252a:配線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図11F
図12
図13