(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
活性炭またはゼオライトから選択される従来の吸収材または吸着材を含む第1の濾過カートリッジ構造(104)を備える、空気清浄機のための濾過装置(110)の製造方法において、多孔質であり、アルデヒド系の化学汚染物質を捕捉するように少なくとも1つのプローブ分子により機能化された特定の吸着材を有して構成される濾過媒体を保持する第2の別個の濾過カートリッジ構造(106)を備え、前記特定の吸着材は、アルデヒド類を捕捉することができるプローブ分子を含む金属酸化物の多孔質構造を合成するためのゾル−ゲル法によって製造されることを特徴とする空気清浄機のための濾過装置(110)の製造方法。
アルデヒド基と反応することができる反応基をもつプローブ分子は、エナミノン類、および対応するβ−ジケトン/アミン対、イミン類、アミン類、イミド類およびヒドラジン類、またはこれらの化合物から誘導される塩の中から選択されることを特徴とする請求項1に記載の空気清浄機のための濾過装置(110)の製造方法。
前記濾過媒体を保持する前記構造(106)は、固い胞状構造(12)であり、胞状部(11)は、前記濾過媒体を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の空気清浄機のための濾過装置(110)の製造方法。
マイクロ有孔フィルムは、前記固い胞状構造(12)の上流側(15)および下流側(14)の表面に組み付けられることを特徴とする請求項3に記載の空気清浄機のための濾過装置(110)の製造方法。
前記細粒の形態は、細粒の長さをL、細粒の直径をDとするとき、比率L/D>1の円柱形であることを特徴とする請求項6に記載の空気清浄機のための濾過装置(110)の製造方法。
前記濾過媒体を保持する構造(20)は、前記従来の吸収材または吸着材が上に含浸/分散される不織多孔質生地タイプ(21)のいくつかのフィルムの集合体であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の空気清浄機のための濾過装置(110)の製造方法。
前記特定の吸着材の質量は、前記従来の吸収材または吸着材の質量の5〜95%であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の空気清浄機のための濾過装置(110)の製造方法。
【背景技術】
【0002】
アルデヒドという用語は、好ましくは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アクロレイン、ペンタナール、ヘキサナールおよびベンズアルデヒドの中から選ばれる、末端カルボニル基を有するあらゆる有機分子を示す。
【0003】
アルデヒド類は、住宅において最も大量に存在する化学汚染物質の一つである。それらの発生源は、非常に多い。特に、それらは、メタンの光酸化など、屋外製品に結び付けられることがある。しかし、アルデヒド排出の主な源は、屋内にあり、非常に多様であり、とりわけ、チップボード、パーティクルボードおよび合板の製造に使用される樹脂および接着剤、壁および仕切りに注入される断熱材として用いられる尿素ホルムアルデヒド断熱発泡材、織物コーティング、壁紙、ペンキおよび革がある。
【0004】
ホルムアルデヒドは、防腐剤、消毒剤および脱水剤でもある。これらの理由から、それは、病院で外科用器具を消毒するための溶剤として、ならびに葬儀業界で防腐処理を行うための溶剤として、非常に大量に使用されている。
【0005】
そのような化学汚染物質の公衆衛生に対する悪影響を考慮すると、アルデヒド、特にホルムアルデヒドの含有量を減少させることによって、また、新しい汚染除去装置を提供することによって、居住用建物の環境空気を浄化する必要があることは明らかである。
【0006】
既存の従来技術によれば、環境空気中に存在するガス状の化学汚染物質の清浄方法は、2つのカテゴリに分類される。すなわち、
− 有機化合物を完全に無機化するまで分解することによって、換言するとそれらが酸化または光酸化によって、CO
2およびH
2Oに変わるまで、汚染物質を分解するもの、
− 汚染物質を分解せずに保持する多孔質吸着材で捕捉するもの。これらの材料は、ゼオライトまたは活性炭のタイプのものであり、環境空気処理において揮発性有機化合物および臭気を捕捉するのによく使用されるもの、である。
【0007】
第1のカテゴリは、オゾンなどの酸化剤を用いるか、またはプラズマもしくは光触媒反応など酸化促進を用いた装置からなる。
【0008】
第2のカテゴリは、大きな比表面積(>100m
2/g)をもつ多孔質材料の吸着能力および吸着力を用いる。それは、分子を分解することはできず、それらを多孔質媒体内に保持するものである。
【0009】
第1のカテゴリには、複雑であり比較的高価であるという不都合がある。さらに、それは、除去されるべき化合物よりも有害であることがある分解副生成物を生成することがある。
【0010】
第2のカテゴリには、除去されるべき化合物から他のものまで捕捉割合が大きく変動するという不都合がある。例えば、活性炭は、芳香族化合物の吸着に有効であるが、アルデヒド類の吸着には有効ではないことが分かっている。さらに、この第2のカテゴリでは、多孔質媒体は、それが、飽和する、または温度もしくは相対湿度の増加にさらされる、または捕捉汚染物質の濃度の減少にさらされると、汚染物質分子を再放出することがある。これは、例えば、活性炭またはゼオライトの場合である。
【0011】
特許文献1には、揮発性有機化合物を吸着するのによく用いられる多孔質材料、具体的にはゼオライトまたは活性炭が記載されている。この文献には、また、揮発性有機化合物を吸着するカートリッジも記載されており、それらの吸着カートリッジは、有毒ガスを可能な限り多く吸着するために、アルミナ系CO
2濾過カートリッジと組み合わせることができる。
【0012】
特許文献2によれば、アルデヒド類、より具体的にはホルムアルデヒドを除去するのに特に有効な多孔質材料が、少なくとも1つのアルデヒド反応基を含む金属酸化物のナノ多孔質マトリックスである。
【0013】
吸着材の製造業者らは、吸着材を機能化することによってそれら材料の効力を向上させようとしている。残念ながら、この機能付与は、含浸によってなされるものであり、この場合には、大量の含浸の場合に特定の表面へのアクセスが制限され、したがって、十分な量が含浸すると、捕捉能力が制限されるという不都合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
第1の態様において、本発明の1つの目的は、特定の吸着材と併せて、環境空気を汚染する化合物を吸収または吸着する従来の材料をその中に組み込むことによって、環境空気清浄機のための濾過装置の性能を向上させることである。「特定の吸着材」または「濾過媒体」という用語は、従来の吸着材では効果のない、アルデヒド類、特にホルムアルデヒドに重点をおいた、環境空気を汚染する化合物を吸着することができる任意の材料に対して使用するものである。
【0016】
第2の態様において、本発明の1つの目的は、吸収により環境空気中の汚染物質を確実に捕捉することである。
【0017】
第3の態様において、本発明の1つの目的は、ゼオライトまたは活性炭などの従来の吸着材によって再放出されることがある、環境空気中への汚染物質のあらゆる再放出を防ぐことである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、本発明の装置は、少なくとも2つの濾過カートリッジであって、一方は従来の吸収材または吸着材を含み、他方は特定の吸着材を含む、少なくとも2つの濾過カートリッジを備えるまたはそれらから構成される。前記装置は、大気汚染物質の大部分を大量に確実に捕捉するために、環境空気を少なくとも2つのカートリッジに通過させる。
【0019】
より具体的には、本発明の装置は、活性炭またはゼオライトから選択される従来の吸収材または吸着材を含む第1の濾過カートリッジ構造を備える、空気清浄機のための濾過装置において、多孔質でありアルデヒド系の化学汚染物質を捕捉するように少なくとも1つのプローブ分子により機能化される特定の吸着材からなる濾過媒体を保持する第2の別個の濾過カートリッジ構造を備えることを特徴とする空気清浄機のための濾過装置である。
【0020】
一実施形態では、特定の吸着材は、アルデヒド類を捕捉することができるプローブ分子の金属酸化物の多孔質構造、好ましくはナノ多孔質の構造を合成するためにゾル−ゲル法によって製造される。有利には、この方法は、ワンポット合成法である。
【0021】
一実施形態では、アルデヒド基と反応することができる反応基をもつプローブ分子は、エナミノン類、および対応するβ−ジケトン/アミン対、イミン類、アミン類、イミド類およびヒドラジン類、またはこれらの化合物から誘導される塩の中から選択される。
【0022】
一実施形態では、濾過媒体を保持する構造は、剛性胞状構造であり、胞状部は、濾過媒体を含む。
【0023】
一実施形態では、マイクロ有孔フィルムは、剛性胞状構造の上流側および下流側の表面に組み付けられる。
【0024】
一実施形態では、胞状部における濾過媒体の充填率は、40%を上回り、好ましくは50%を上回る。
【0025】
一実施形態では、特定の吸着材は、細粒の形態である。細粒は、1つの細粒の長さをL、1つの細粒の直径をDとすると比率L/D>1の円柱形であることが好ましい。Dは、好ましくは0.1から8mmの間であり、非常に好ましくは1から5mmの間であり、より好ましくは2から4mmの間であり、さらに好ましくは約3mmである。Lは、好ましくは1から20mmであり、非常に好ましくは2から10mmであり、より好ましくは約5.5mmである。本特許出願において、数値の前に用いられる用語「約」は、その数値のプラスマイナス15%の変動を意味する。
【0026】
一実施形態では、濾過媒体を保持する構造は、不織多孔質生地タイプのいくつかのフィルムの集合体であり、例えば、その上に濾過媒体が含浸/分散される、および/または、濾過媒体が従来の吸収材もしくは吸着材で挟まれる、または従来の吸収材もしくは吸着剤がない。
【0027】
一実施形態では、特定の吸着材の質量は、従来の吸収材または吸着材の質量の5から95%の間である。
【0028】
一実施形態では、特定の吸着材の比表面積は、400から1200m
2/gの間、好ましくは450から800m
2/gの間、非常に好ましくは約600m
2/gである。
【0029】
この適用例は、さらに、上述の変形形態のうちの一つにおいて定められる濾過装置を備える空気清浄機に関する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の主な目的は、多数の濾材を備える濾過装置である。様々に組み合わせられる、または別々になった濾材は、吸収および吸着により、環境空気中に存在する揮発性有機化合物の除去を可能にする。本発明によれば、吸収および吸着される揮発性有機化合物は、特に、アルデヒド類および/またはアルデヒド溶剤である。濾過装置は、数m
3/時から数千m
3/時の出力で動作することができる環境空気清浄機に装着されるように設計されている。
【0033】
図1は、本発明による濾過装置を収容することができる環境空気清浄機(100)を示している。この清浄機は、基本的に、濾過装置(110)のための収納部(108)を含むケーシング(101)を備える。収納部(108)は、蓋(102)によって閉じられる。入口(図示せず)は、環境空気が清浄機(100)に入ることができるように形成される。一実施形態では、入口は、ケーシング(101)の蓋(102)近くに位置する。一実施形態では、入口は、ケーシング(101)の蓋(102)の近くにない。収納部は、濾過装置(110)の上流に、スクリーン(107)を介した収納部(108)への吸引を作り出すモータ付きファン(図示せず)を備える。一実施形態では、スクリーン(107)の形状は円形である。一実施形態では、スクリーン(107)の形状は、重要ではない。ケーシング(101)は、さらに、浄化済みの空気のための出口(109)を備える。一実施形態では、出口(109)は、ケーシング(101)の上側部に位置する。他の実施形態では、出口(109)は、ケーシング(101)の他の面に位置する。
【0034】
一実施形態では、濾過装置(110)は、少なくとも2つの濾過カートリッジ(104、106)を備える。本発明の一実施形態では、濾過装置は、
図1に示されるように、4つの別個のカートリッジ(103、104、105、106)を備える。
【0035】
本発明によれば、第1の濾過カートリッジ構造(104)は、活性炭またはゼオライトから選択される、従来の吸収材または吸着材を含む。本発明によれば、
図1に示される実施形態において、濾過装置(110)は、第1のものとは異なり、濾過媒体を含む第2の濾過カートリッジ構造(106)を備える。
【0036】
この濾過媒体は、アルデヒド系化合物、より具体的にはホルムアルデヒドなど、従来の吸収材または吸着材ではごくわずかしか除去されない化合物を捕捉する特定の吸着材からなるものである。
【0037】
特定の吸着材は、具体的には、汚染物質または汚染物質群を捕捉することができる材料である。例えば、濾過媒体は、多孔質、好ましくはマイクロ多孔質、より好ましくはナノ多孔質の構造に適用され組み込まれたプローブ分子(または有効成分)の使用により、アルデヒド群を捕捉することができる。プローブ分子を注意深く選択することによって、1つの汚染物質、より具体的にはホルムアルデヒドなどの汚染物質を捕捉することが可能になる。特定の吸着材のゾル−ゲルタイプの製造法によって、有効成分の添加が可能になり、その一方で、それは、含浸ではなく、(元の位置で)ワンポッド法によりなされる。特定の吸着材の製造法によって、含浸せずに多くの有効成分の添加が可能になる。含浸による特定表面の浸透は、それによって避けることができる。一実施形態では、特定の吸着材は、ゼオライトも活性炭も含まない。
【0038】
好ましい一実施形態では、収納部(108)の入口から入る環境空気は、まず、従来の吸収材または吸着材を含む濾過カートリッジ(104)を通過する。次いで、同じ好ましい実施形態では、空気は、特定の吸着材を含む濾過媒体を通過する。
【0039】
一実施形態では、濾過カートリッジの形状は、円筒形である。一実施形態では、濾過カートリッジの形状は、平行六面体である。一実施形態では、濾過カートリッジは、平坦である。一実施形態では、濾過カートリッジは、体積を有する。一実施形態では、濾過カートリッジは、直交する輪郭によって画成される。他の2つの寸法(xおよびy)に比べて最も小さい寸法は、z軸である。一実施形態では、zおよび空気流は、同じ方向を有する。一実施形態では、zおよび空気流は、異なる方向を有する。
【0040】
一実施形態では、濾過カートリッジは、3方向すべてにおいて、等しい寸法を有する。一実施形態では、濾過カートリッジは、3番目に比べてより小さい2つの寸法を有する。この実施形態では、より小さな寸法のうちの1つの代表となるのは、zであってよい。
【0041】
一実施形態では、追加の濾過カートリッジ(103)は、塵および/または破片を止める有孔フィルムである。この実施形態では、濾過カートリッジ(103)は、濾過装置(110)において上流側に配置される。一実施形態では、追加の濾過カートリッジ(105)は、HEPAフィルタである、直径0.3μm以上の粒子の少なくとも99.95%を1回の通過で濾過することができる空気フィルタである。
【0042】
図2、3Aおよび3Bは、本発明に使用可能な濾過カートリッジ構造の実施形態を示している。
【0043】
これらの構造は、空気清浄機を通過する空気流の中に濾過媒体を保持することができる。
【0044】
図2は、一連のフィルム(21)を含む構造(20)を示している。一実施形態では、濾過媒体は、フィルム(21)に含浸されたものである。一実施形態では、濾過媒体は、いくつかのフィルム(21)に含浸される。次いで、フィルム(21)のセットを組み立てて、濾過カートリッジを形成する。一実施形態では、フィルムは、接着によって組み立てられる。一実施形態では、フィルムは溶接によって組み立てられる。一実施形態では、フィルムは、組み立て技術によって組み立てられる。
【0045】
フィルム(21)の寸法および数は、主に、空気清浄機の所望の性能によって決まる。一実施形態では、少なくとも1枚のフィルム(21)は、プローブ分子によって機能化される。一実施形態では、プローブ分子によって機能化されるフィルム(21)はない。
【0046】
図3Aおよび3Bに示されるように、濾過カートリッジ(106)は、固い胞状構造(12)を含むものである。一実施形態では、胞状構造は、ハチの巣状のものである。一実施形態では、胞状構造は、任意の幾何形状の胞状部を含む。濾過媒体は、構造(12)の胞状部(11)内に位置する。一実施形態では、濾過媒体が胞状部(11)内に保持されることを確実にするために、マイクロ有孔フィルムが、固い胞状構造(12)の上流側(14)および下流側(15)の両面に配置される。一実施形態では、フィルムは、空気流に対して完全に透過性であり、濾過機能を果たさない。一実施形態では、フィルムは、空気流に対して部分的に透過性である。一実施形態では、フィルムは、少なくとも1つの濾過機能を果たすものである。
【0047】
ゾル−ゲルの特定の吸着材の場合、汚染物質が反応成分と反応して、より害の少ない、より大きな分子量の第3体(third body)が生成され、それが、特定の吸着材を含む濾過媒体のナノ多孔質ネットワーク内に捕捉されたままになる。他の吸着材とは異なり、この特定の吸着材は、不可逆な化学的変換により汚染物質を確実に捕捉する。
【0048】
したがって、プローブ分子を適切に選択することによって、従来の吸着材の分子ではうまく除去することができない、または全く除去することができない、ホルムアルデヒドなどの有害汚染物質を除去することができるようになる。
【0049】
例えば、特定の吸着材は、特許文献2に記載の材料の中から選択することができる。
【0050】
一実施形態では、特定の吸着材は、金属酸化物のゾル−ゲルナノ多孔質マトリックスを含むことができる。マトリックスは、アルデヒド基と反応することができる少なくとも1つの反応基をもつ少なくとも1つのプローブ分子を含む。
【0051】
アルデヒド基と反応することができる反応基をもつプローブ分子は、エナミノン類、および対応するβ−ジケトン/アミン対、イミン類、アミン類、イミド類およびヒドラジン類、またはこれらの化合物から誘導される塩の中から選択することができる。
【0054】
を特徴とし、
ここで、
− R1は、水素、アルキル基またはアリール基であり、
− R2は、水素であり、
− R3は、水素、アルキル基またはアリール基であり、
− R4は、水素、アルキル基またはアリール基であり、
− R5は、水素である。
【0055】
さらに、β−ジケトン/アミン対は、以下の式、
【0057】
に対応し、
ここで、
− R1は、水素、アルキル基またはアリール基であり、
− R2は、水素であり、
− R3は、水素、アルキル基またはアリール基であり、
− R4は、水素、アルキル基であり、
− R5は、水素または対応する塩であり、
アミンは、その対応するアンモニウム塩で置換可能であり、
さらに、イミンは、アクリジンイエロー、メチルイエローまたはジメチルイエローの中から選択されるシッフ塩基である。
【0060】
に対応し、
ここで、
− R6は、C1〜C20のアルキル基、好ましくはC1〜C10のアルキル基、より好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基およびペンチル基、C3〜C16のアリール基、特にフェニル基およびアリールスルホニル基であり、
− R7は、C3〜C16のアリール基、特に、フェニル基およびアリールスルホニル基である。
【0061】
本発明によれば、金属酸化物のゾル−ゲルナノ多孔質マトリックスは、以下の式、
M(X)m(OR8)n(R9)p
をもつ、少なくとも1つの金属酸化物から生成され、
ここで、
− Mは、ケイ素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ニオブ、バナジウム、イットリウムおよびセリウムから選ばれる金属であり、
− R8およびR9は、他と関係なく、アルキル基またはアリール基であり、
− n、mおよびpは、それらの合計がMの価数と等しく、nは2以上であるような整数であり、
− Xは、ハロゲンである。
【0062】
上述したような、特に、アルデヒド、特にホルムアルデヒドの捕捉を可能にする特定の吸着材は、ホルムアルデヒドの捕捉能力において、揮発性有機化合物専用の活性炭よりも高い効力をもち、特に、ガス状のホルムアルデヒドを捕捉するために含浸された活性炭の効力を上回る。特定の吸着材の確実な捕捉能力は、材料1グラム当たり少なくとも0.01gのホルムアルデヒドを捕捉するものである。
【0063】
従来技術によれば、活性炭またはゼオライトは、アルデヒド、特にホルムアルデヒドを除去する能力が極めて低いが、一方で、このガスは、環境空気中に非常に多く存在するだけでなく、健康に対して有害である。したがって、まず、従来の吸収材または吸着材、そして、具体的にはアルデヒド特にホルムアルデヒドに有効な特定の吸着材を1つの濾過装置に組み合わせることによって、本発明による濾過装置(110)は、プローブ分子で機能化されたナノ多孔質の特定の吸着材があることによりアルデヒド、特にホルムアルデヒドを除去し、それと同時に、活性炭またはゼオライトにより他の揮発性有機化合物、具体的には単環式の芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、エチレン、キシレンなど)を除去することが可能である。
【0064】
従来の吸収材と特定の吸着材の組み合わせは、それらを一連の単一材料濾過カートリッジ(104、106)に組み入れることによって形成される。従来のカートリッジは、花粉フィルタ、活性炭フィルタ、HEPAフィルタとすることができ、従来のカートリッジの間に挿入される、または従来のカートリッジの後に最後に配置され得る、本発明による1または複数のカートリッジと組み合わせられる。これらの組み合わせによって、アルデヒド類の除去、ならびに環境空気の浄化が可能になり、前述した濾過カートリッジの構成により、ゼオライトまたは活性炭によって引き起こされるあらゆる再放出が制限され得る。本発明の一実施形態では、濾過装置は、
図1に示されるように、4つの別個の濾過カートリッジ(103、104、105、106)を備える。一実施形態では、濾過カートリッジ103は、塵および/または破片を止めるための有孔フィルムであり、濾過カートリッジ104は、従来の吸収材を含み、濾過カートリッジ105は、HEPAフィルタである、直径0.3μm以上の粒子の少なくとも99.95%を1回の通過で濾過することができる空気フィルタであり、最後に、濾過カートリッジ106は、特定の吸着材を含む。
【0065】
本発明によれば、カートリッジの汚染除去/濾過性能は、特に、以下にあるパラメータによって定まる。
− 従来の吸収材または吸着材と特定の吸着材の質量比、
− 特定の吸着材の比表面積、
− 特定の吸着材の形状、
− 従来の吸収材または吸着材の物理的および化学的な特性。
【0066】
特定の吸着材と従来の吸収材または吸着材の質量比は、5/95〜95/5、好ましくは6/94〜50/50、より好ましくは8/92〜15/85まで変化することができ、具体的な選択は、環境空気中に存在する汚染物質の性質および量、ならびに達成されるべき所望の性能に基づいてなされる。
【0067】
一例として、ホルムアルデヒド20μg/m
3と、他の揮発性有機化合物200μg/m
3を含む空気の場合、10/90の、活性炭に対する特定の吸着材の質量比を用いることが好ましい。しかし、特定の吸着材の量を2倍、4倍などにすることによって、本発明による濾過媒体の効力を大幅に向上させることが可能である。
【0068】
したがって、環境空気が、ホルムアルデヒドにより、例えば他の揮発性有機化合物の10倍を超えるホルムアルデヒドで深刻に汚染されている場合、濾過装置(110)は、活性炭に対する特定の吸着材の比が90/10で用いられる。
【0069】
特定の吸着材に求められる比表面積は、細孔のサイズに反比例する。したがって、細孔のサイズがより小さいと、比表面積はより大きくなる。したがって、約800m
2/gの比表面積とするには、細孔の直径は、一般的に、0.20から10nmの間の直径になる。
【0070】
捕捉効力および捕捉能力を向上させることができる最大比表面積と、汚染物質が細孔に入るのに十分な大きさの細孔を有するために超えてはならない限界との間で、最良の妥協点が模索される。目標となる比表面積の範囲は、除去されるべき汚染物質の分子のサイズに応じて、100から1500m
2/gの間にあり、ホルムアルデヒドについては、好ましくは、600から800m
2/gの間にある。
【0071】
特定の吸着材についての細粒形状の選択は、捕捉効力を向上させるように最大吸着表面積(細粒の外面)を有し、その一方で、最小の負荷損を有して汚染物質を取り除くのに必要なエネルギーを最小限とするように決定される。一実施形態では、細粒は、円柱形である。一実施形態では、細粒は、球形である。一実施形態では、細粒は、細長い形状である。一実施形態では、細粒は、任意の形状である。
【0072】
細長い円柱形、換言すると比率L/D>1(Lは長さ、Dは直径)の形状は、非常に有利である。というのも、それらは、成形または押出によって製造しやすいからである。それらの細長い形状によって、平坦な表面が互いに密着しなくなり、それによって吸着表面積が減少せず、また負荷損およびエネルギー損失が増加しなくなる。この場合、ミリメートルのオーダー、好ましくは0.1から8mmの寸法(長さ)にすると、結果的に、より良い妥協点に辿り着く。一実施形態では、特定の吸着材は、長さLが5.5mm、直径Dが3mmの円柱形の形態の細粒である。
【0073】
他の実施形態では、細粒は、粉砕された形態であってよく、その結果、粒子はミリメートルのオーダーになり、好ましくは0.12から8mmになる。この形態は、さらに、概ね同じ粒径の場合、同じ直径の球形の粒子よりも吸着表面積がより大きいという利点をもたらす。
【0074】
粒間(繊維)支持体を用いるのであれば、1ミリメートルよりも小さいサイズの細粒を用いることもでき、それによって細粒の散在が可能になり、負荷損が減少する。この場合、フィルタの表面を増大させ負荷損を減少させるために、生地に閉じ込められる特定の吸着材の細粒のフィルムが考えられる。
【0075】
さらに、固い胞状構造の寸法および胞状部の充填率などの他の条件は、本発明による濾過カートリッジの所望の性能を得るために調節することができる。したがって、この構造の胞状部のサイズは、特定の吸着材の細粒の最大サイズの1倍から15倍の範囲、好ましくは1倍から10倍の範囲にある。この寸法によって、胞状部における細粒の良好な分布を得ることが可能になり、また固い胞状構造の胞状部あたり少なくとも1つの細粒を受容することが可能になる。
【0076】
さらに、胞状部における濾過媒体の充填率は、例えば、少なくとも40%である。これによって、本発明による濾過カートリッジ(106)の第2の構造の飽和を制限することが可能になる。
【0077】
本発明による濾過装置(110)は、既存の環境空気清浄機の全体的な構造様式を問わない。実際、清浄機の収納部(108)に設けられている位置に異なる濾過カートリッジ構造を単に挿入すれば十分である。また、本発明による濾過カートリッジの構成および特徴は、環境空気清浄機の機能に基づいて、具体的には、空気出力およびカートリッジの寸法に基づいて調節される。
【0078】
濾過装置は、特定の吸着材の質量(g)と、装置の空気出力(m
3/時)との間の比によって定められる材料の比を特徴とすることができる。一実施形態では、材料の比は、1/10から1の間、より好ましくは1/7である。
【0079】
本発明による濾過装置(110)の寸法の実施形態
第1の実施形態は、以下の特徴、
− 体積:12m
3、
− 新鮮な空気の入れ替え:5m
3/時、
− ホルムアルデヒド排出レベル:70.6μg/m
3、
の室内を汚染除去するように定められる。
【0080】
本発明による濾過カートリッジを用いた清浄機の特徴は、以下の通りである。
− 空気出力:140m
3/時、
− 特定の吸着材の質量:20g、
材料/空気出力の比:1/7。
【0081】
図4は、室内のホルムアルデヒドの濃度の変化を表している。
【0082】
グラフAは、本発明による環境空気清浄機を用いていない、70.6μg/m
3での対照値を表している。
【0083】
グラフBは、本発明による環境空気清浄機が運転しているときの濃度の変化を表している。
【0084】
このように、数時間の運転中、ホルムアルデヒドの排出レベルが20μg/m
3未満に下がっている(一般に開放されているビルに推奨されている30μg/m
3のレベルを下回る)ことが示されている。
【0085】
第2の実施形態は、以下にある本発明による濾過カートリッジを用いた環境空気清浄機の機能、
− 空気出力:70m
3/時、
特定の吸着材の質量:10g、
材料/空気出力の比:1/7
により、先の実施形態と同じ特徴の部屋を汚染除去するように定められる。
【0086】
図5は、室内のホルムアルデヒドの濃度の変化を表している。
【0087】
グラフA’は、本発明による環境空気清浄機を用いていない、70.6μg/m
3での対照値を表している。
【0088】
グラフB’は、本発明による環境空気装置が運転されているときの濃度の変化を表している。
【0089】
このように、数時間の運転で、ホルムアルデヒド排出レベルが約30μg/m
3となることが分かる。
【0090】
添付の特許請求の範囲によって定められる本発明の範囲から逸脱することなく、この説明に記載の本発明の実施形態に、当業者に明らかな様々な修正および/または改良を加えることができることが理解されよう。
【0091】
したがって、実施形態の例は、家庭用の環境空気清浄機(数立方メートルの部屋のサイズ)についてもたらされる。本発明による濾過カートリッジを(例えば、一般に開放されているビルに適用される)より大きな寸法の環境空気清浄機に適用することも考えられる。これは、単に、多数のカートリッジ、またはより大きなサイズのカートリッジを使用すれば十分である。