(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のドグ凸部は、前記周方向の寸法が、前記ドグ凹部における前記周方向の寸法の半分以下で、且つ、前記複数のドグ凸部の少なくとも一つが前記複数のドグ凹部の少なくとも一つに噛み合う際に、他のドグ凸部よりも先に前記複数のドグ凹部の少なくとも一つに進入する先行進入部を有する、請求項1に記載の変速装置。
前記複数のドグ凸部は、前記複数のドグ凹部の数と同じ数の第一グループのドグ凸部と、前記軸方向において、前記第一グループのドグ凸部の長さよりも短く、且つ、前記複数のドグ凹部の数に対して整数倍の数の第二グループのドグ凸部とを有し、
前記第二グループのドグ凸部は、前記周方向において、前記第一グループのドグ凸部同士の間に少なくとも一つが位置するように設けられていて、
前記第一グループのドグ凸部は、前記複数のドグ凸部の少なくとも一つが前記複数のドグ凹部の少なくとも一つに噛み合う際に、前記第二グループのドグ凸部よりも先に前記複数のドグ凹部の少なくとも一つに進入する、請求項1に記載の変速装置。
前記動力源から出力された動力の伝達方向において、前記駆動軸よりも上流及び前記被駆動軸よりも下流のいずれか一方に設けられた副変速機構を備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の変速装置。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1から
図8を参照しつつ、一実施形態に係る車両1(車両の一例)について説明する。以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。以下の説明における「左」と「右」は、それぞれ、車両1に乗車した運転者から見た「左」と「右」を表している。
【0030】
図1は、車両1を右方から見た場合における車両1の外観を示している。矢印Fは、車両1の前方向を示している。矢印Bは、車両1の後方向を示している。矢印Uは、車両1の上方向を示している。矢印Dは、車両1の下方向を示している。
【0031】
本実施形態において、車両1は、前輪21と後輪22とを備えている自動二輪車である。車両1は、内燃機関3(動力源の一例)と変速装置4とを備えている。換言すると、変速装置4は、車両1に搭載されている。
【0032】
図2は、本実施形態に係る変速装置4の構成を示している。具体的には、
図2(a)は、変速装置4の構成を模式的に示している。
図2(b)は、変速装置4の後述する第一スライダ451および五速駆動歯車425の構成を模式的に示している。
【0033】
図3は、
図2(a)を拡大して示す図である。変速装置4は、駆動軸41を備えている。車両1は、クラッチ機構5を備えている。駆動軸41は、クラッチ機構5を介して内燃機関3に接続されている。以下の説明において、駆動軸41の延びている方向を「軸方向」と定義する。
【0034】
クラッチ機構5は、内燃機関3におけるクランクシャフトの回転が駆動軸41に伝達される接続状態と、前記クランクシャフトの回転が駆動軸41に伝達されない切断状態とに切り替え可能に構成されている。
【0035】
変速装置4は、一速駆動歯車421、二速駆動歯車422、三速駆動歯車423、四速駆動歯車424、五速駆動歯車425、および六速駆動歯車426を備えている。一速駆動歯車421、二速駆動歯車422、三速駆動歯車423、四速駆動歯車424、五速駆動歯車425、および六速駆動歯車426は、駆動軸41上に軸方向に並んで配置されている。
【0036】
変速装置4は、被駆動軸43を備えている。被駆動軸43は、軸方向に延びている。すなわち、被駆動軸43は、駆動軸41と平行に延びている。被駆動軸43は、駆動軸41の軸方向に延びている。なお、駆動軸41または被駆動軸43が軸方向に延びているとは、駆動軸41または被駆動軸43が軸方向に長い形状であることを意味する。
【0037】
変速装置4は、一速被駆動歯車441、二速被駆動歯車442、三速被駆動歯車443、四速被駆動歯車444、五速被駆動歯車445、および六速被駆動歯車446を備えている。一速被駆動歯車441、二速被駆動歯車442、三速被駆動歯車443、四速被駆動歯車444、五速被駆動歯車445、および六速被駆動歯車446は、被駆動軸43上に軸方向に並んで配置されている。
【0038】
一速被駆動歯車441は、一速駆動歯車421と常時噛み合っている。二速被駆動歯車442は、二速駆動歯車422と常時噛み合っている。三速被駆動歯車443は、三速駆動歯車423と常時噛み合っている。四速被駆動歯車444は、四速駆動歯車424と常時噛み合っている。五速被駆動歯車445は、五速駆動歯車425と常時噛み合っている。六速被駆動歯車446は、六速駆動歯車426と常時噛み合っている。
【0039】
一速駆動歯車421は、駆動軸41に対して回転不能である。すなわち、一速駆動歯車421は、駆動軸41と一体で回転可能である。一速被駆動歯車441は、被駆動軸43と相対回転可能である。
【0040】
二速駆動歯車422は、駆動軸41に対して回転不能である。すなわち、二速駆動歯車422は、駆動軸41と一体で回転可能である。二速被駆動歯車442は、被駆動軸43と相対回転可能である。
【0041】
三速駆動歯車423は、駆動軸41に対して回転不能である。すなわち、三速駆動歯車423は、駆動軸41と一体で回転可能である。三速被駆動歯車443は、被駆動軸43と相対回転可能である。
【0042】
四速駆動歯車424は、駆動軸41に対して回転不能である。すなわち、四速駆動歯車424は、駆動軸41と一体で回転可能である。四速被駆動歯車444は、被駆動軸43と相対回転可能である。
【0043】
五速駆動歯車425は、駆動軸41と相対回転可能である。五速被駆動歯車445は、被駆動軸43に対して回転不能である。すなわち、五速被駆動歯車445は、被駆動軸43と一体で回転可能である。
【0044】
六速駆動歯車426は、駆動軸41と相対回転可能である。六速被駆動歯車446は、被駆動軸43に対して回転不能である。すなわち、六速被駆動歯車446は、被駆動軸43と一体で回転可能である。
【0045】
一速駆動歯車421、二速駆動歯車422、および五速被駆動歯車445は、固定歯車の一例である。三速駆動歯車423、四速駆動歯車424、および六速被駆動歯車446は、第二固定歯車の一例である。
【0046】
一速被駆動歯車441、二速被駆動歯車442、および五速駆動歯車425は、前記固定歯車と噛み合う遊転歯車の一例である。三速被駆動歯車443、四速被駆動歯車444、および六速駆動歯車426は、前記第二固定歯車と噛み合う第二遊転歯車の一例である。
【0047】
変速装置4は、第一スライダ451を備えている。第一スライダ451は、駆動軸41上において、五速駆動歯車425(第一駆動歯車の一例)と六速駆動歯車426(第二駆動歯車の一例)との間に配置されている。第一スライダ451は、駆動軸41上を軸方向に移動可能である。第一スライダ451は、駆動軸41に対して回転不能である。すなわち、第一スライダ451は、駆動軸41と一体で回転可能である。
【0048】
変速装置4は、第二スライダ452を備えている。第二スライダ452は、被駆動軸43上において、一速被駆動歯車441(第一被駆動歯車の一例)と三速被駆動歯車443(第二被駆動歯車の一例)との間に配置されている。第二スライダ452は、被駆動軸43上を軸方向に移動可能である。第二スライダ452は、被駆動軸43に対して回転不能である。すなわち、第二スライダ452は、被駆動軸43と一体で回転可能である。
【0049】
変速装置4は、第三スライダ453を備えている。第三スライダ453は、被駆動軸43上において、二速被駆動歯車442(第一被駆動歯車の一例)と四速被駆動歯車444(第二被駆動歯車の一例)との間に配置されている。第三スライダ453は、被駆動軸43上を軸方向に移動可能である。第三スライダ453は、被駆動軸43に対して回転不能である。すなわち、第三スライダ453は、被駆動軸43と一体で回転可能である。
【0050】
第一スライダ451、第二スライダ452、および第三スライダ453は、スライダの一例である。
【0051】
図4は、変速装置4のより詳細な構成を示す図である。この
図4は、変速装置4を、駆動軸41及び被駆動軸43の軸方向に延びる軸線を含む断面で示す図である。
【0052】
変速装置4は、五速ドグ凸部465と、五速ドグ凹部475とを備えている。五速ドグ凸部465(ドグ凸部の一例)は、第一スライダ451に設けられている。五速ドグ凹部475(ドグ凹部の一例)は、五速駆動歯車425に設けられている。
【0053】
変速装置4は、六速ドグ凸部466と六速ドグ凹部476とを備えている。六速ドグ凸部466(第二ドグ凸部の一例)は、第一スライダ451に設けられている。六速ドグ凹部476(第二ドグ凹部の一例)は、六速駆動歯車426に設けられている。
【0054】
図5(A)は、第一スライダ451の外観を示す斜視図である。第一スライダ451は、環状である。
図5(B)は、五速駆動歯車425の外観を示す斜視図である。
図6は、駆動軸41上に配置された五速駆動歯車425、六速駆動歯車426、および第一スライダ451を、被駆動軸43上に配置された五速被駆動歯車445および六速被駆動歯車446とともに示す図である。
【0055】
図5(A)に示されるように、第一スライダ451には、複数の五速ドグ凸部465が、周方向に並んで設けられている。
図6からも明らかなように、複数の五速ドグ凸部465は、前記軸方向に沿う長さが異なる二種類の五速ドグ凸部465a、465bを含んでいる。前記軸方向において、五速ドグ凸部465aの長さは、五速ドグ凸部465bの長さよりも長い。五速ドグ凸部465aと五速ドグ凸部465bとは、第一スライダ451に、前記周方向に交互に並ぶように設けられている。
【0056】
第一スライダ451には、複数の六速ドグ凸部466が、駆動軸41を中心として周方向に並んで設けられている。
図6に示されるように、複数の六速ドグ凸部466は、前記軸方向に沿う長さが異なる二種類の六速ドグ凸部466a、466bを含んでいる。前記軸方向において、六速ドグ凸部466aの長さは、六速ドグ凸部466bの長さよりも長い。六速ドグ凸部466aと六速ドグ凸部466bとは、第一スライダ451に、前記周方向に交互に並ぶように設けられている。
【0057】
図5(B)に示されるように、五速駆動歯車425には、複数の五速ドグ凹部475が、五速駆動歯車425の周方向に並んで設けられている。複数の五速ドグ凹部475の数は、複数の五速ドグ凸部465の数の半分である。すなわち、各五速ドグ凹部475は、二個の五速ドグ凸部465を収容可能に構成されている。
【0058】
五速駆動歯車425と同様の構成であるため図示を省略するが、六速駆動歯車426には、複数の六速ドグ凹部476が、六速駆動歯車426の周方向に並んで設けられている。複数の六速ドグ凹部476の数は、複数の六速ドグ凸部466の数の半分である。すなわち、各六速ドグ凹部476は、二個の六速ドグ凸部466を収容可能に構成されている。
【0059】
図4に示されるように、変速装置4は、一速ドグ凸部461と、一速ドグ凹部471とを備えている。一速ドグ凸部461(ドグ凸部の一例)は、第二スライダ452に設けられている。一速ドグ凹部471(ドグ凹部の一例)は、一速被駆動歯車441に設けられている。
【0060】
図4に示されるように、変速装置4は、三速ドグ凸部463と、三速ドグ凹部473とを備えている。三速ドグ凸部463(第二ドグ凸部の一例)は、第二スライダ452に設けられている。三速ドグ凹部473(第二ドグ凹部の一例)は、三速被駆動歯車443に設けられている。
【0061】
第一スライダ451と同様の構成であるため図示を省略するが、第二スライダ452は、環状である。第二スライダ452には、複数の一速ドグ凸部461が、周方向に並んで設けられている。複数の一速ドグ凸部461は、駆動軸41の軸方向に沿う長さが異なる二種類の一速ドグ凸部を含んでいる。相対的に長い一速ドグ凸部と相対的に短い一速ドグ凸部とは、第二スライダ452に、前記周方向に交互に並ぶように設けられている。
【0062】
第二スライダ452には、複数の三速ドグ凸部463が、周方向に並んで設けられている。複数の三速ドグ凸部463は、前記軸方向に沿う長さが異なる二種類の三速ドグ凸部を含んでいる。相対的に長い三速ドグ凸部と相対的に短い三速ドグ凸部とは、第二スライダ452に、前記周方向に交互に並ぶように設けられている。
【0063】
五速駆動歯車425と同様の構成であるため図示を省略するが、一速被駆動歯車441には、複数の一速ドグ凹部471が、一速被駆動歯車441の周方向に並んで設けられている。複数の一速ドグ凹部471の数は、複数の一速ドグ凸部461の数の半分である。すなわち、各一速ドグ凹部471は、二個の一速ドグ凸部461を収容可能に構成されている。
【0064】
三速被駆動歯車443には、複数の三速ドグ凹部473が、三速被駆動歯車443の周方向に並んで設けられている。複数の三速ドグ凹部473の数は、複数の三速ドグ凸部463の数の半分である。すなわち、各三速ドグ凹部473は、二個の三速ドグ凸部463を収容可能に構成されている。
【0065】
図4に示されるように、変速装置4は、二速ドグ凸部462と、二速ドグ凹部472とを備えている。二速ドグ凸部462(ドグ凸部の一例)は、第三スライダ453に設けられている。二速ドグ凹部472(ドグ凹部の一例)は、二速被駆動歯車442に設けられている。
【0066】
図4に示されるように、変速装置4は、四速ドグ凸部464と、四速ドグ凹部474とを備えている。四速ドグ凸部464(第二ドグ凸部の一例)は、第三スライダ453に設けられている。四速ドグ凹部474(第二ドグ凹部の一例)は、四速被駆動歯車444に設けられている。
【0067】
第一スライダ451と同様の構成であるため図示を省略するが、第三スライダ453は、環状である。第三スライダ453には、複数の二速ドグ凸部462が、周方向に並んで設けられている。複数の二速ドグ凸部462は、被駆動軸43の軸方向に沿う長さが異なる二種類の二速ドグ凸部を含んでいる。相対的に長い二速ドグ凸部と相対的に短い二速ドグ凸部とは、第三スライダ453に、前記周方向に交互に並ぶように設けられている。
【0068】
第三スライダ453には、複数の四速ドグ凸部464が、周方向に並んで設けられている。複数の四速ドグ凸部464は、前記軸方向に沿う長さが異なる二種類の四速ドグ凸部を含んでいる。相対的に長い四速ドグ凸部と相対的に短い四速ドグ凸部とは、第三スライダ453に、前記周方向に交互に並ぶように設けられている。
【0069】
五速駆動歯車425と同様の構成であるため図示を省略するが、二速被駆動歯車442には、複数の二速ドグ凹部472が、二速被駆動歯車442の周方向に並んで設けられている。複数の二速ドグ凹部472の数は、複数の二速ドグ凸部462の数の半分である。すなわち、各二速ドグ凹部472は、二個の二速ドグ凸部462を収容可能に構成されている。
【0070】
四速被駆動歯車444には、複数の四速ドグ凹部474が、四速被駆動歯車444の周方向に並んで設けられている。複数の四速ドグ凹部474の数は、複数の四速ドグ凸部464の数の半分である。すなわち、各四速ドグ凹部474は、二個の四速ドグ凸部464を収容可能に構成されている。
【0071】
図3に示されるように、変速装置4は、シフトドラム48を備えている。
図7は、シフトドラム48の具体的な構成を示している。シフトドラム48は、円柱状である。シフトドラム48は、軸方向に延びるドラム軸48aを有している。シフトドラム48は、ドラム軸48aを中心として回転可能である。
【0072】
シフトドラム48の外周面には、第一ガイド溝481、第二ガイド溝482、および第三ガイド溝483が形成されている。第一ガイド溝481、第二ガイド溝482、および第三ガイド溝483は、シフトドラム48のドラム軸48aを中心とする回転角度に応じて、ドラム軸48aに沿う方向(すなわち軸方向)の位置が変化するように、ドラムシフト48の外周面に設けられている。シフトドラム48の外周面は、円柱状のシフトドラム48において、ドラム軸48aを囲む側面である。
【0073】
変速装置4は、第一シフトフォーク491、第二シフトフォーク492、および第三シフトフォーク493を備えている。第一シフトフォーク491は、シフトドラム48から、第一スライダ451に向かって延びている。第二シフトフォーク492は、シフトドラム48から第二スライダ452に向かって延びている。第三シフトフォーク493は、シフトドラム48から、第三スライダ453に向かって延びている。なお、シフトドラムからスライダに向かって延びているとは、シフトフォークにおける長手方向の一方の端部がシフトドラムに接続されているとともに、シフトフォークにおける長手方向の他方の端部がスライダに接続されている状態を意味する。
【0074】
第一シフトフォーク491における長手方向の一方の端部は、シフトドラム48の第一ガイド溝481内に位置付けられている。第二シフトフォーク492における長手方向の一方の端部は、シフトドラム48の第二ガイド溝482内に位置付けられている。第三シフトフォーク493における長手方向の一方の端部は、シフトドラム48の第三ガイド溝483内に位置付けられている。
【0075】
図4に示されるように、第一スライダ451には、第一フォーク受け溝451aが形成されている。第二スライダ452には、第二フォーク受け溝452aが形成されている。第三スライダ453には、第三フォーク受け溝453aが形成されている。
【0076】
図4に二点鎖線で示されるように、第一シフトフォーク491における長手方向の他方の端部は、第一スライダ451の第一フォーク受け溝451aと接続されている。第二シフトフォーク492における長手方向の他方の端部は、第二スライダ452の第二フォーク受け溝452aと接続されている。第三シフトフォーク493における長手方向の他方の端部は、第三スライダ453の第三フォーク受け溝453aと接続されている。
【0077】
すなわち、第一シフトフォーク491は、シフトドラム48と第一スライダ451とを連結している。第二シフトフォーク492は、シフトドラム48と第二スライダ452とを連結している。第三シフトフォーク493は、シフトドラム48と第三スライダ453とを連結している。
【0078】
本実施形態における車両1の変速装置4は、六段変速が可能な構成である。すなわち、一速駆動歯車421および一速被駆動歯車441の変速比、二速駆動歯車422および二速被駆動歯車442の変速比、三速駆動歯車423および三速被駆動歯車443の変速比、四速駆動歯車424および四速被駆動歯車444の変速比、五速駆動歯車425および五速被駆動歯車445の変速比、六速駆動歯車426および六速被駆動歯車446の変速比は、相違している。
【0079】
図1に示されるように、車両1は、ハンドル6を備えている。ハンドル6は、運転者の操作に応じて前輪21の向きを変えるように構成されている。前輪21の向きが変わることにより、車両1の進行方向が変化する。
【0080】
図1および
図3に示されるように、車両1は、スイッチ7、制御部8、および電動アクチュエータ9を備えている。
【0081】
スイッチ7は、ハンドル6に設けられている。スイッチ7は、運転者によって操作されることにより、変速装置4に変速動作を行なわせる信号を出力するように構成されている。
【0082】
制御部8は、スイッチ7から入力される信号に応じて、電動アクチュエータ9の動作を制御する信号を出力するように構成されている。
【0083】
図7に示されるように、電動アクチュエータ9は、ロッド9aを介してシフトドラム48と連結されている。電動アクチュエータ9は、ロッド9aを介し、制御部8より入力される信号に応じて、ドラム軸48aを中心としてシフトドラム48を回転させるように構成されている。すなわち、電動アクチュエータ9は、スイッチ7の動作に応じてシフトドラム48を回転させるように構成されている。シフトドラム48の回転角度は、選択される変速段に応じて定められる。
【0084】
これにより、ドラム軸48aを回転中心とするシフトドラム48の回転角度に応じて、ドラム軸48aに沿う方向(すなわち軸方向)において、第一シフトフォーク491、第二シフトフォーク492、および第三シフトフォーク493の位置が変化する。したがって、ドラム軸48aを中心とするシフトドラム48の回転角度に応じて、第一スライダ451が駆動軸41上を移動し、第二スライダ452および第三スライダ453が被駆動軸43上を移動する。
【0085】
運転者がスイッチ7によって第一速を選択すると、第二シフトフォーク492が第二スライダ452を被駆動軸43に沿って移動させる。これにより、第二スライダ452に設けられた一速ドグ凸部461が、一速被駆動歯車441に設けられた一速ドグ凹部471と噛み合う。三速ドグ凸部463と三速被駆動歯車443に設けられた三速ドグ凹部473とは噛み合わない。したがって、三速被駆動歯車443は、被駆動軸43に対して空転する。
【0086】
このとき、第一シフトフォーク491は、第一スライダ451を中立位置に位置付ける。第一スライダ451が中立位置に位置している場合、五速ドグ凸部465と五速ドグ凹部475とは噛み合わず、六速ドグ凸部466と六速ドグ凹部476も噛み合わない。したがって、五速駆動歯車425および六速駆動歯車426は、駆動軸41に対して空転する。
【0087】
また、第三シフトフォーク493は、第三スライダ453を中立位置に位置付ける。第三スライダ453が中立位置に位置している場合、二速ドグ凸部462と二速ドグ凹部472とは噛み合わず、四速ドグ凸部464と四速ドグ凹部474も噛み合わない。したがって、二速被駆動歯車442および四速被駆動歯車444は、被駆動軸43に対して空転する。
【0088】
これにより、クラッチ機構5を介して内燃機関3から駆動軸41へ伝達された動力は、一速駆動歯車421および一速被駆動歯車441を介して被駆動軸43へ伝達される。
【0089】
ここで、ドグ凸部とドグ凹部とが噛み合うとは、ドグ凸部とドグ凹部とが、少なくとも一部で接触して、動力を伝達する状態を意味する。
【0090】
図3に示されるように、車両1は、出力機構10を備えている。出力機構10は、後輪22に接続されている。
図4に示されるように、出力機構10は、出力歯車10aを備えている。出力歯車10aは、被駆動軸43に設けられている。出力歯車10aは、被駆動軸43に対して回転不能である。
【0091】
したがって、一速駆動歯車421および一速被駆動歯車441を介して被駆動軸43へ伝達された動力は、出力歯車10aを含む出力機構10を介して後輪22へ伝達される。
【0092】
運転者がスイッチ7によって第二速を選択すると、第三シフトフォーク493が第三スライダ453を被駆動軸43に沿って移動させる。これにより、第三スライダ453に設けられた二速ドグ凸部462が、二速被駆動歯車442に設けられた二速ドグ凹部472と噛み合う。四速ドグ凸部464と四速被駆動歯車444に設けられた四速ドグ凹部474とは噛み合わない。したがって、四速被駆動歯車444は、被駆動軸43に対して空転する。
【0093】
このとき、第一シフトフォーク491は、第一スライダ451を中立位置に位置付ける。第一スライダ451が中立位置に位置している場合、五速ドグ凸部465と五速ドグ凹部475とは噛み合わず、六速ドグ凸部466と六速ドグ凹部476も噛み合わない。したがって、五速駆動歯車425および六速駆動歯車426は、駆動軸41に対して空転する。
【0094】
また、第二シフトフォーク492は、第二スライダ452を中立位置に位置付ける。第二スライダ452が中立位置に位置している場合、一速ドグ凸部461と一速ドグ凹部471とは噛み合わず、三速ドグ凸部463と三速ドグ凹部473も噛み合わない。したがって、一速被駆動歯車441および三速被駆動歯車443は、被駆動軸43に対して空転する。
【0095】
これにより、クラッチ機構5を介して内燃機関3から駆動軸41へ伝達された動力は、二速駆動歯車422および二速被駆動歯車442を介して被駆動軸43へ伝達される。
【0096】
したがって、二速駆動歯車422および二速被駆動歯車442を介して被駆動軸43へ伝達された動力は、出力歯車10aを含む出力機構10を介して後輪22へ伝達される。
【0097】
運転者がスイッチ7によって第三速を選択すると、第二シフトフォーク492が第二スライダ452を被駆動軸43に沿って移動させる。これにより、第二スライダ452に設けられた三速ドグ凸部463が、三速被駆動歯車443に設けられた三速ドグ凹部473と噛み合う。一速ドグ凸部461と一速被駆動歯車441に設けられた一速ドグ凹部471とは噛み合わない。したがって、一速被駆動歯車441は、被駆動軸43に対して空転する。
【0098】
このとき、第一シフトフォーク491は、第一スライダ451を中立位置に位置付ける。第一スライダ451が中立位置に位置している場合、五速ドグ凸部465と五速ドグ凹部475とは噛み合わず、六速ドグ凸部466と六速ドグ凹部476も噛み合わない。したがって、五速駆動歯車425および六速駆動歯車426は、駆動軸41に対して空転する。
【0099】
また、第三シフトフォーク493は、第三スライダ453を中立位置に位置付ける。第三スライダ453が中立位置に位置している場合、二速ドグ凸部462と二速ドグ凹部472とは噛み合わず、四速ドグ凸部464と四速ドグ凹部474も噛み合わない。したがって、二速被駆動歯車442および四速被駆動歯車444は、被駆動軸43に対して空転する。
【0100】
これにより、クラッチ機構5を介して内燃機関3から駆動軸41へ伝達された動力は、三速駆動歯車423および三速被駆動歯車443を介して被駆動軸43へ伝達される。
【0101】
したがって、三速駆動歯車423および三速被駆動歯車443を介して被駆動軸43へ伝達された動力は、出力歯車10aを含む出力機構10を介して後輪22へ伝達される。
【0102】
運転者がスイッチ7によって第四速を選択すると、第三シフトフォーク493が第三スライダ453を被駆動軸43に沿って移動させる。これにより、第三スライダ453に設けられた四速ドグ凸部464が、四速被駆動歯車444に設けられた四速ドグ凹部474と噛み合う。二速ドグ凸部462と二速被駆動歯車442に設けられた二速ドグ凹部472とは噛み合わない。したがって、二速被駆動歯車442は、被駆動軸43に対して空転する。
【0103】
このとき、第一シフトフォーク491は、第一スライダ451を中立位置に位置付ける。第一スライダ451が中立位置に位置している場合、五速ドグ凸部465と五速ドグ凹部475とは噛み合わず、六速ドグ凸部466と六速ドグ凹部476も噛み合わない。したがって、五速駆動歯車425および六速駆動歯車426は、駆動軸41に対して空転する。
【0104】
また、第二シフトフォーク492は、第二スライダ452を中立位置に位置付ける。第二スライダ452が中立位置に位置している場合、一速ドグ凸部461と一速ドグ凹部471とは噛み合わず、三速ドグ凸部463と三速ドグ凹部473も噛み合わない。したがって、一速被駆動歯車441および三速被駆動歯車443は、被駆動軸43に対して空転する。
【0105】
これにより、クラッチ機構5を介して内燃機関3から駆動軸41へ伝達された動力は、四速駆動歯車424および四速被駆動歯車444を介して被駆動軸43へ伝達される。
【0106】
したがって、四速駆動歯車424および四速被駆動歯車444を介して被駆動軸43へ伝達された動力は、出力歯車10aを含む出力機構10を介して後輪22へ伝達される。
【0107】
運転者がスイッチ7によって第五速を選択すると、第一シフトフォーク491が第一スライダ451を駆動軸41に沿って移動させる。これにより、第一スライダ451に設けられた五速ドグ凸部465が、五速駆動歯車425に設けられた五速ドグ凹部475と噛み合う。六速ドグ凸部466と六速駆動歯車426に設けられた六速ドグ凹部476とは噛み合わない。したがって、六速駆動歯車426は、駆動軸41に対して空転する。
【0108】
このとき、第二シフトフォーク492は、第二スライダ452を中立位置へ移動させる。第二スライダ452が中立位置に位置している場合、一速ドグ凸部461と一速ドグ凹部471とは噛み合わず、三速ドグ凸部463と三速ドグ凹部473も噛み合わない。また、第三シフトフォーク493は、第三スライダ453を中立位置へ移動させる。第三スライダ453が中立位置に位置している場合、二速ドグ凸部462と二速ドグ凹部472とは噛み合わず、四速ドグ凸部464と四速ドグ凹部474も噛み合わない。したがって、一速被駆動歯車441、二速被駆動歯車442、三速被駆動歯車443、および四速被駆動歯車444は、被駆動軸43に対して空転する。
【0109】
これにより、クラッチ機構5を介して内燃機関3から駆動軸41へ伝達された動力は、五速駆動歯車425および五速被駆動歯車445を介して被駆動軸43へ伝達される。
【0110】
したがって、五速駆動歯車425および五速被駆動歯車445を介して被駆動軸43へ伝達された動力は、出力歯車10aを含む出力機構10を介して後輪22へ伝達される。
【0111】
運転者がスイッチ7によって第六速を選択すると、第一シフトフォーク491が第一スライダ451を駆動軸41に沿って移動させる。これにより、第一スライダ451に設けられた六速ドグ凸部466が、六速駆動歯車426に設けられた六速ドグ凹部476と噛み合う。五速ドグ凸部465と五速駆動歯車425に設けられた五速ドグ凹部475とは噛み合わない。したがって、五速駆動歯車425は、駆動軸41に対して空転する。
【0112】
このとき、第二シフトフォーク492は、第二スライダ452を中立位置に位置付ける。第二スライダ452が中立位置に位置している場合、一速ドグ凸部461と一速ドグ凹部471とは噛み合わず、三速ドグ凸部463と三速ドグ凹部473も噛み合わない。また、第三シフトフォーク493は、第三スライダ453を中立位置に位置付ける。第三スライダ453が中立位置に位置している場合、二速ドグ凸部462と二速ドグ凹部472とは噛み合わず、四速ドグ凸部464と四速ドグ凹部474も噛み合わない。したがって、一速被駆動歯車441、二速被駆動歯車442、三速被駆動歯車443、および四速被駆動歯車444は、被駆動軸43に対して空転する。
【0113】
これにより、クラッチ機構5を介して内燃機関3から駆動軸41へ伝達された動力は、六速駆動歯車426および六速被駆動歯車446を介して被駆動軸43へ伝達される。
【0114】
したがって、六速駆動歯車426および六速被駆動歯車446を介して被駆動軸43へ伝達された動力は、出力歯車10aを含む出力機構10を介して後輪22へ伝達される。
【0115】
ドグ凸部とドグ凹部との噛み合いにより動力の伝達経路を形成する変速装置において、変速時にドグ当たり音の発生は避けられない。すなわち、前記変速装置の変速時には、ドグ凸部が、ドグ凹部が設けられた部材に接触するため、ドグ当たり音が発生する。本発明者は、衝突に関与する部材の慣性モーメントを低減することにより、ドグ当たり音を抑制できると考えた。衝突に関与する部材の慣性モーメントが小さければ、ドグ当たり音に直接関与する衝突エネルギーを低減できるからである。そこで、本発明者は、まず動力伝達に関与する歯車からドグ凸部を分離することを考えた。
【0116】
本実施形態に係る変速装置4においては、隣り合う五速駆動歯車425と六速駆動歯車426との間に第一スライダ451が配置されている。第一スライダ451は、駆動軸41に沿って変位可能である。第一スライダ451は、五速ドグ凸部465と、六速ドグ凸部466とを備えている。第一シフトフォーク491は、第一スライダ451と接続されている。
【0117】
第一スライダ451には、被駆動軸43上の歯車(動力伝達部材)と噛み合う歯車が形成されていない。すなわち、第一スライダ451は、被駆動軸43上の歯車との間で、直接、動力伝達を行わない。さらに換言すれば、第一スライダ451は、五速ドグ凸部465および六速ドグ凸部466以外に、他の部材との間で動力を伝達する構成を有しない。つまり、第一スライダ451は、被駆動軸43に対し、五速駆動歯車425および五速被駆動歯車445、および、六速駆動歯車426および六速被駆動歯車446のうち、一方のみによって、動力伝達を行う。
【0118】
これにより、ドグ凸部が設けられた駆動歯車そのものを駆動軸に沿って変位させる場合と比較して、衝突に関与するドグ凸部が設けられた部材(第一スライダ451)の質量および半径を小さくすることができる。よって、前記部材の慣性モーメントを低減できる。したがって、ドグ当たり音を抑制できる。
【0119】
上述のように第一スライダ451の半径を比較的小さくすることにより、第一シフトフォーク491が第一スライダ451を変位させる力を、第一スライダ451に対して駆動軸41に近い位置で与えることができる。これにより、第一スライダ451の変位時における第一スライダ451の姿勢を安定させやすい。したがって、ドグ当たり音を抑制できるだけでなく、ドグ当たり音のばらつきに起因した運転者の違和感を抑制できる。
【0120】
また、上述のように第一スライダ451の半径を小さくすることにより、駆動軸41とともに回転する第一スライダ451において第一フォーク受け溝451aが設けられている部分の周速を小さくできる。これにより、第一シフトフォーク491が第一フォーク受け溝451aの内面と接触する部分に作用する力が小さくなる。よって、第一シフトフォーク491の摩耗も抑制できる。
【0121】
本実施形態に係る変速装置4では、隣り合う一速被駆動歯車441と三速被駆動歯車443との間に、第二スライダ452が配置されている。第二スライダ452は、被駆動軸43に沿って変位可能である。第二スライダ452は、一速ドグ凸部461と、三速ドグ凸部463とを備えている。第二シフトフォーク492は、第二スライダ452と接続されている。
【0122】
また、隣り合う二速被駆動歯車442と四速被駆動歯車444との間に、第三スライダ453が配置されている。第三スライダ453は、被駆動軸43に沿って変位可能である。第三スライダ453は、二速ドグ凸部462と、四速ドグ凸部464とを備えている。第三シフトフォーク493は、第三スライダ453と接続されている。
【0123】
第二スライダ452には、駆動軸41上の歯車(動力伝達部材)と噛み合う歯車が形成されていない。すなわち、第二スライダ452は、駆動軸41上の歯車との間で、直接、動力伝達を行わない。さらに換言すれば、第二スライダ452は、一速ドグ凸部461および三速ドグ凸部463以外に、他の部材との間で動力を伝達する構成を有しない。つまり、第二スライダ452は、駆動軸41に対し、一速駆動歯車421および一速被駆動歯車441、および、三速駆動歯車423および三速被駆動歯車443のうち、一方のみによって、動力伝達を行う。
【0124】
第三スライダ453には、駆動軸41上の歯車(動力伝達部材)と噛み合う歯車が形成されていない。すなわち、第三スライダ453は、駆動軸41上の歯車との間で、直接、動力伝達を行わない。さらに換言すれば、第三スライダ453は、二速ドグ凸部462および四速ドグ凸部464以外に、他の部材との間で動力を伝達する構成を有しない。つまり、第三スライダ453は、駆動軸41に対し、二速駆動歯車422および二速被駆動歯車442、および、四速駆動歯車424および四速被駆動歯車444のうち、一方のみによって、動力伝達を行う。
【0125】
これにより、ドグ凸部が設けられた被駆動歯車そのものを被駆動軸に沿って変位させる場合と比較して、衝突に関与するドグ凸部が設けられた部材(第二スライダ452、第三スライダ453)の質量および半径を小さくすることができる。よって、前記部材の慣性モーメントを低減できる。したがって、ドグ当たり音を抑制できる。
【0126】
第二スライダ452の半径を比較的小さくすることにより、第二シフトフォーク492が第二スライダ452を変位させる力を、第二スライダ452に対して被駆動軸43に近い位置で与えることができる。これにより、第二スライダ452の変位時における第二スライダ452の姿勢を安定させやすい。したがって、ドグ当たり音を抑制できるだけでなく、ドグ当たり音のばらつきに起因した運転者の違和感を抑制できる。
【0127】
また、上述のように第二スライダ452の半径を小さくすることにより、被駆動軸43とともに回転する第二スライダ452の第二フォーク受け溝452aにおける周速を小さくできる。これにより、第二シフトフォーク492が第二フォーク受け溝452aの内面と接触する部分に作用する力が小さくなる。よって、第二シフトフォーク492の摩耗も抑制できる。
【0128】
第三スライダ453の半径を比較的小さくすることにより、第三シフトフォーク493が第三スライダ453を変位させる力を、第三スライダ453に対して被駆動軸43に近い位置で与えることができる。これにより、第三スライダ453の変位時における第三スライダ453の姿勢を安定させやすい。したがって、ドグ当たり音を抑制できるだけでなく、ドグ当たり音のばらつきに起因した運転者の違和感を抑制できる。
【0129】
また、上述のように第三スライダ453の半径を小さくすることにより、被駆動軸43とともに回転する第三スライダ453の第三フォーク受け溝453aにおける周速を小さくできる。これにより、第三シフトフォーク493が第三フォーク受け溝453aの内面とそれぞれ接触する部分に作用する力が小さくなる。よって、第三シフトフォーク493の摩耗も抑制できる。
【0130】
本発明者は、さらなる検討を重ねた結果、第一スライダ451の五速ドグ凸部465および五速駆動歯車425の五速ドグ凹部475の数をある程度増やすことにより、各五速ドグ凸部465と各五速ドグ凹部475との噛み合いの際に生じる応力が分散されることを見出した。そして、本発明者は、このように、各五速ドグ凸部465と各五速ドグ凹部475との噛み合いの際に生じる応力を分散させることにより、ドグ当たり音をより抑制できることを見出した。
【0131】
第一スライダ451の五速ドグ凸部465が接触する五速駆動歯車425は、駆動軸41と相対回転可能であるため、駆動軸41に対して傾く場合がある。本発明者は、特に、五速駆動歯車425が、被駆動軸43と相対回転不能な五速被駆動歯車445と噛み合ってるため、その噛み合い点で五速駆動歯車425の傾きが大きくなることに気づいた。そして、本発明者は、このように五速駆動歯車425が傾いている場合でも、上述のように五速ドグ凸部465及び五速ドグ凹部475の数をある程度増やすことにより、各五速ドグ凸部465と各五速ドグ凹部475とが噛み合う際に生じる応力を分散できることを見出した。
【0132】
また、本発明者は、五速ドグ凸部465および五速ドグ凹部475の数をある程度増やすことにより、五速駆動歯車425の姿勢が安定するため、ドグ当たり音のばらつきも抑制できることを見出した。
【0133】
図8(A)は、
図2(b)を拡大して示す図である。すなわち、
図8(A)は、五速駆動歯車425の一部と第一スライダ451とが噛み合っている状態を模式的に示した図である。なお、
図8(A)において、符号425aは、五速駆動歯車425の歯部であり、符号445aは、五速被駆動歯車445の歯部である。
図8(A)では、五速駆動歯車425及び五速被駆動歯車445における歯部の一部のみが図示されているとともに、それ以外の部分では、歯車の最外周が二点鎖線の円として図示されている。
【0134】
図8(A)に示されるように、五速駆動歯車425および五速被駆動歯車445の噛み合い点Mと駆動軸41の軸中心Pとを結ぶ線を基準として、五速駆動歯車425の周方向に+90度(周方向の一方に90度)および−90度(周方向の他方に90度)の範囲内で、それぞれ、複数個(図の例では四つ)の五速ドグ凸部465および複数個(図の例では四つ)の五速ドグ凹部475が噛み合う。これにより、上述の効果が得られる。
【0135】
特に、前記範囲内で五速ドグ凸部465と五速ドグ凹部475とが噛み合う数を4つ以上にすることで、前記噛み合う際に生じる応力を効率よく分散できる。また、五速ドグ凸部465と五速ドグ凹部475とが噛み合う数を4つ以上にすることにより、五速駆動歯車425の姿勢が安定する。よって、ドグ当たり音のばらつきも抑制できる。
【0136】
なお、前記周方向の一方および他方のいずれかは、五速駆動歯車425の回転方向と一致する。
【0137】
第一スライダ451の六速ドグ凸部466および六速駆動歯車426の六速ドグ凹部476の数をある程度増やすことにより、各六速ドグ凸部466と各六速ドグ凹部476とが噛み合う際に生じる応力が分散される。よって、ドグ当たり音をより抑制できる。また、六速ドグ凸部466および六速ドグ凹部476の数をある程度増やすことにより、六速駆動歯車426の姿勢が安定する。よって、ドグ当たり音のばらつきも抑制できる。
【0138】
図8(A)に示される構成と同様であるため図示を省略するが、六速駆動歯車426および六速被駆動歯車446の噛み合い点と駆動軸41の軸中心とを結ぶ線を基準として、六速駆動歯車426の周方向に+90度(周方向の一方に90度)および−90度(周方向の他方に90度)の範囲内で、それぞれ、複数個(図の例では四つ)の六速ドグ凸部466および複数個(図の例では四つ)の六速ドグ凹部476が噛み合う。これにより、上述の効果が得られる。
【0139】
特に、前記範囲内で六速ドグ凸部466と六速ドグ凹部476とが噛み合う数を4つ以上にすることで、前記噛み合う際に生じる応力を効率よく分散できる。また、六速ドグ凸部466と六速ドグ凹部476とが噛み合う数を4つ以上にすることにより、六速駆動歯車426の姿勢が安定する。よって、ドグ当たり音のばらつきも抑制できる。
【0140】
なお、前記周方向の一方および他方のいずれかは、六速駆動歯車426の回転方向と一致する。
【0141】
第二スライダ452の一速ドグ凸部461および一速被駆動歯車441の一速ドグ凹部471の数をある程度増やすことにより、各一速ドグ凸部461と各一速ドグ凹部471との噛み合いに伴う応力が分散される。よって、ドグ当たり音をより抑制できる。また、一速ドグ凸部461および一速ドグ凹部471の数をある程度増やすことにより、一速被駆動歯車441の姿勢が安定する。よって、ドグ当たり音のばらつきも抑制できる。
【0142】
図8(A)に示される構成と同様であるため図示を省略するが、一速駆動歯車421および一速被駆動歯車441の噛み合い点と被駆動軸43の軸中心とを結ぶ線を基準として、一速被駆動歯車441の周方向に+90度(周方向の一方に90度)および−90度(周方向の他方に90度)の範囲内で複数個(図の例では四つ)の一速ドグ凸部461および複数個(図の例では四つ)の一速ドグ凹部471が噛み合う。これにより、上述の効果が得られる。
【0143】
特に、前記範囲内で一速ドグ凸部461と一速ドグ凹部471とが噛み合う数を4つ以上にすることで、前記噛み合う際に生じる応力を効率よく分散できる。また、一速ドグ凸部461と一速ドグ凹部471とが噛み合う数を4つ以上にすることにより、一速被駆動歯車441の姿勢が安定する。よって、ドグ当たり音のばらつきも抑制できる。
【0144】
なお、前記周方向の一方および他方のいずれかは、一速被駆動歯車441の回転方向と一致する。
【0145】
第二スライダ452の三速ドグ凸部463および三速被駆動歯車443の三速ドグ凹部473の数をある程度増やすことにより、各三速ドグ凸部463と各三速ドグ凹部473とが噛み合う際に生じる応力が分散される。よって、ドグ当たり音をより抑制できる。また、三速ドグ凸部463および三速ドグ凹部473の数をある程度増やすことにより、三速被駆動歯車443の姿勢が安定する。よって、ドグ当たり音のばらつきも抑制できる。
【0146】
図8(A)に示される構成と同様であるため図示を省略するが、三速駆動歯車423および三速被駆動歯車443の噛み合い点と被駆動軸43の軸中心とを結ぶ線を基準として、三速被駆動歯車443の周方向に+90度(周方向の一方に90度)および−90度(周方向の他方に90度)の範囲内で複数個(図の例では四つ)の三速ドグ凸部463および複数個(図の例では四つ)の三速ドグ凹部473が噛み合う。これにより、上述の効果が得られる。
【0147】
特に、前記範囲内で三速ドグ凸部463と三速ドグ凹部473とが噛み合う数を4つ以上にすることで、前記噛み合う際に生じる応力を効率よく分散できる。また、三速ドグ凸部463と三速ドグ凹部473とが噛み合う数を4つ以上にすることにより、三速被駆動歯車443の姿勢が安定する。よって、ドグ当たり音のばらつきも抑制できる。
【0148】
なお、前記周方向の一方および他方のいずれかは、三速被駆動歯車443の回転方向と一致する。
【0149】
第三スライダ453の二速ドグ凸部462および二速被駆動歯車442の二速ドグ凹部472の数をある程度増やすことにより、各二速ドグ凸部462と各二速ドグ凹部472とが噛み合う際に生じる応力が分散される。よって、ドグ当たり音をより抑制できる。また、二速ドグ凸部462および二速ドグ凹部472の数をある程度増やすことにより、二速被駆動歯車442の姿勢が安定する。よって、ドグ当たり音のばらつきも抑制できる。
【0150】
図8(A)に示される構成と同様であるため図示を省略するが、二速駆動歯車422および二速被駆動歯車442の噛み合い点と被駆動軸43の軸中心とを結ぶ線を基準として、二速被駆動歯車442の周方向に+90度(周方向の一方に90度)および−90度(周方向の他方に90度)の範囲内で複数個(図の例では四つ)の二速ドグ凸部462および複数個(図の例では四つ)の二速ドグ凹部472が噛み合う。これにより、上述の効果が得られる。
【0151】
特に、前記範囲内で二速ドグ凸部462と二速ドグ凹部472とが噛み合う数を4つ以上にすることで、前記噛み合う際に生じる応力を効率よく分散できる。また、二速ドグ凸部462と二速ドグ凹部472とが噛み合う数を4つ以上にすることにより、二速被駆動歯車442の姿勢が安定する。よって、ドグ当たり音のばらつきも抑制できる。
【0152】
なお、前記周方向の一方および他方のいずれかは、二速被駆動歯車442の回転方向と一致する。
【0153】
第三スライダ453の四速ドグ凸部464および四速被駆動歯車444の四速ドグ凹部474の数をある程度増やすことにより、各四速ドグ凸部464と各四速ドグ凹部474とが噛み合う際に生じる応力が分散される。よって、ドグ当たり音をより抑制できる。また、四速ドグ凸部464および四速ドグ凹部474の数をある程度増やすことにより、四速被駆動歯車444の姿勢が安定する。よって、ドグ当たり音のばらつきも抑制できる。
【0154】
図8(A)に示される構成と同様であるため図示を省略するが、四速駆動歯車424および四速被駆動歯車444の噛み合い点と被駆動軸43の軸中心とを結ぶ線を基準として、四速被駆動歯車444の周方向に+90度(周方向の一方に90度)および−90度(周方向の他方に90度)の範囲内で複数個(図の例では四つ)の四速ドグ凸部464および複数個(図の例では四つ)の四速ドグ凹部474が噛み合う。これにより、上述の効果が得られる。
【0155】
特に、前記範囲内で四速ドグ凸部464と四速ドグ凹部474とが噛み合う数を4つ以上にすることで、前記噛み合う際に生じる応力を効率よく分散できる。また、四速ドグ凸部464と四速ドグ凹部474とが噛み合う数を4つ以上にすることにより、四速被駆動歯車444の姿勢が安定する。よって、ドグ当たり音のばらつきも抑制できる。
【0156】
なお、前記周方向の一方および他方のいずれかは、四速被駆動歯車444の回転方向と一致する。
【0157】
したがって、本実施形態の構成によれば、ドグ当たり音を抑制しつつ、ドグ当たり音に起因した運転者の違和感も抑制できる。
【0158】
図6を参照して説明したように、複数の五速ドグ凸部465は、五速ドグ凸部465a(第一グループに含まれるドグ凸部の一例)と、五速ドグ凸部465b(第二グループに含まれるドグ凸部の一例)とを含む。駆動軸41の軸方向に沿う五速ドグ凸部465aの長さは、前記軸方向に沿う五速ドグ凸部465bの長さよりも長い。したがって、複数の五速ドグ凸部465が複数の五速ドグ凹部475と噛み合う際には、まず、五速ドグ凸部465a(先行進入部の一例)が複数の五速ドグ凹部475の一つに進入する。
【0159】
図8(B)に示されるように、五速駆動歯車425の周方向における各五速ドグ凸部465aの幅W1は、五速駆動歯車425の周方向における各五速ドグ凹部475の幅W2の半分以下である。
【0160】
本明細書では、五速駆動歯車425の周方向における各五速ドグ凸部465aの幅W1および前記周方向における各五速ドグ凹部475の幅W2は、それぞれ、複数の五速ドグ凸部465および複数の五速ドグ凹部475が噛み合う噛み合い位置において、前記周方向に沿う寸法を意味する。なお、前記噛み合い位置は、駆動軸41の中心から半径Rの位置であり、
図8(B)において一点鎖線の円周で示される位置である。
【0161】
このような構成により、駆動軸41の軸方向における五速ドグ凸部465の先端が、五速ドグ凸部465と軸方向に対向する五速駆動歯車425の側面に衝突することなく五速ドグ凹部475内に進入する確率が上がる。これにより、ドグ当たり音の発生を抑制できる。したがって、ドグ当たり音をより抑制しつつ、ドグ当たり音に起因した運転者の違和感も抑制できる。
【0162】
複数の六速ドグ凸部466は、六速ドグ凸部466aと、六速ドグ凸部466bとを含む。駆動軸41の軸方向に沿う六速ドグ凸部466aの長さは、前記軸方向に沿う六速ドグ凸部466bの長さよりも長い。したがって、複数の六速ドグ凸部466が複数の六速ドグ凹部476と噛み合う際には、まず、六速ドグ凸部466a(先行進入部の一例)が複数の六速ドグ凹部476の一つに進入する。
【0163】
図8(B)に示される構成と同様であるため図示を省略するが、六速駆動歯車426の周方向における各六速ドグ凸部466aの幅は、六速駆動歯車426の周方向における各六速ドグ凹部476の幅の半分以下である。
【0164】
本明細書では、六速駆動歯車426の周方向における各六速ドグ凸部466aの幅および前記周方向における各六速ドグ凹部476の幅は、それぞれ、複数の六速ドグ凸部466および複数の六速ドグ凹部476が噛み合う噛み合い位置(
図8(B)において一点鎖線の円周で示される位置に対応)において、前記周方向に沿う寸法を意味する。
【0165】
このような構成により、駆動軸41の軸方向における六速ドグ凸部466の先端が、六速ドグ凸部466と前記軸方向に対向する六速駆動歯車426の側面に衝突することなく六速ドグ凹部476内に進入する確率が上がる。これにより、ドグ当たり音の発生を抑制できる。したがって、ドグ当たり音をより抑制しつつ、ドグ当たり音に起因した運転者の違和感も抑制できる。
【0166】
第一スライダ451と同様に、第二スライダ452に設けられた複数の一速ドグ凸部461は、被駆動軸43の軸方向に沿う長さが相対的に長い一速ドグ凸部461と、相対的に短い一速ドグ凸部461とを含む。したがって、複数の一速ドグ凸部461が複数の一速ドグ凹部471と噛みあう際に、まず、相対的に長い一速ドグ凸部461(先行進入部の一例)が複数の一速ドグ凹部471の一つに進入する。
【0167】
図8(B)に示される構成と同様であるため図示を省略するが、相対的に長い各一速ドグ凸部461の一速被駆動歯車441の周方向における幅は、各一速ドグ凹部471の一速被駆動歯車441の周方向における幅の半分以下である。
【0168】
本明細書では、相対的に長い各一速ドグ凸部461の一速被駆動歯車441の周方向における幅および各一速ドグ凹部471の前記周方向における幅は、複数の一速ドグ凸部461と複数の一速ドグ凹部471とが噛み合う噛み合い位置(
図8(B)において一点鎖線の円周で示される位置に対応)において、前記周方向に沿う寸法を意味する。
【0169】
このような構成により、被駆動軸43の軸方向における一速ドグ凸部461の先端が、一速ドグ凸部461と前記軸方向に対向する一速被駆動歯車441の側面に衝突することなく一速ドグ凹部471内に進入する確率が上がる。これにより、ドグ当たり音の発生を抑制できる。したがって、ドグ当たり音をより抑制しつつ、ドグ当たり音に起因した運転者の違和感も抑制できる。
【0170】
第二スライダ452に設けられた複数の三速ドグ凸部463は、被駆動軸43の軸方向に沿う長さが相対的に長い三速ドグ凸部463と、相対的に短い三速ドグ凸部463とを含む。したがって、複数の三速ドグ凸部463が複数の三速ドグ凹部473と噛み合う際に、まず、相対的に長い三速ドグ凸部463(第二先行進入部の一例)が複数の三速ドグ凹部473の一つに進入する。
【0171】
図8(B)に示される構成と同様であるため図示を省略するが、相対的に長い各三速ドグ凸部463の三速被駆動歯車443の周方向における幅は、各三速ドグ凹部473の三速被駆動歯車443の周方向における幅の半分以下である。
【0172】
本明細書では、相対的に長い各三速ドグ凸部463の三速被駆動歯車443の周方向における幅および各三速ドグ凹部473の前記周方向における幅は、複数の三速ドグ凸部463と複数の三速ドグ凹部473とが噛み合う噛み合い位置(
図8(B)において一点鎖線の円周で示される位置に対応)において、前記周方向に沿う寸法を意味する。
【0173】
このような構成により、被駆動軸43の軸方向における三速ドグ凸部463の先端が、三速ドグ凸部463と前記軸方向に対向する三速被駆動歯車443の側面に衝突することなく三速ドグ凹部473内に進入する確率が上がる。これにより、ドグ当たり音の発生を抑制できる。したがって、ドグ当たり音をより抑制しつつ、ドグ当たり音に起因した運転者の違和感も抑制できる。
【0174】
第三スライダ453に設けられた複数の二速ドグ凸部462は、被駆動軸43の軸方向に沿う長さが相対的に長い二速ドグ凸部462と、相対的に短い二速ドグ凸部462とを含む。したがって、複数の二速ドグ凸部462が複数の二速ドグ凹部472と噛み合う際に、まず、相対的に長い二速ドグ凸部462(先行進入部の一例)が複数の二速ドグ凹部472の一つに進入する。
【0175】
図8(B)に示される構成と同様であるため図示を省略するが、相対的に長い各二速ドグ凸部462の二速被駆動歯車442の周方向における幅は、各二速ドグ凹部472の二速被駆動歯車442の周方向における幅の半分以下である。
【0176】
本明細書では、相対的に長い各二速ドグ凸部462の二速被駆動歯車442の周方向における幅および各二速ドグ凹部472の前記周方向における幅は、複数の二速ドグ凸部462と複数の二速ドグ凹部472とが噛み合う噛み合い位置(
図8(B)において一点鎖線の円周で示される位置に対応)において、前記周方向に沿う寸法を意味する。
【0177】
このような構成により、被駆動軸43の軸方向における二速ドグ凸部462の先端が、二速ドグ凸部462と前記軸方向に対向する二速被駆動歯車442の側面に衝突することなく二速ドグ凹部472内に進入する確率が上がる。これにより、ドグ当たり音の発生を抑制できる。したがって、ドグ当たり音をより抑制しつつ、ドグ当たり音に起因した運転者の違和感も抑制できる。
【0178】
第三スライダ453に設けられた複数の四速ドグ凸部464は、被駆動軸43の軸方向に沿う長さが相対的に長い四速ドグ凸部464と、相対的に短い四速ドグ凸部464とを含む。したがって、複数の四速ドグ凸部464が複数の四速ドグ凹部474と噛み合う際に、まず、相対的に長い四速ドグ凸部464(第二先行進入部の一例)が複数の四速ドグ凹部474の一つに進入する。
【0179】
図8(B)に示される構成と同様であるため図示を省略するが、相対的に長い各四速ドグ凸部464の四速被駆動歯車444の周方向における幅は、各四速ドグ凹部474の四速被駆動歯車444の周方向における幅の半分以下である。
【0180】
本明細書では、相対的に長い各四速ドグ凸部464の四速被駆動歯車444の周方向における幅および各四速ドグ凹部474の前記周方向における幅は、複数の四速ドグ凸部464と複数の四速ドグ凹部474とが噛み合う噛み合い位置(
図8(B)において一点鎖線の円周で示される位置に対応)において、前記周方向に沿う寸法を意味する。
【0181】
このような構成により、被駆動軸43の軸方向における四速ドグ凸部464の先端が、四速ドグ凸部464と前記軸方向に対向する四速被駆動歯車444の側面に衝突することなく四速ドグ凹部474内に進入する確率が上がる。これにより、ドグ当たり音の発生を抑制できる。したがって、ドグ当たり音をより抑制しつつ、ドグ当たり音に起因した運転者の違和感も抑制できる。
【0182】
本実施形態に係る変速装置4では、
図6に示されるように、五速駆動歯車425および五速被駆動歯車445の対、および、六速駆動歯車426および六速被駆動歯車446の対は、ヘリカルギアの対である。
【0183】
ヘリカルギアは、平歯車等に比べて歯厚(前記軸方向に沿う歯車の幅)を小さくすることができる。よって、第一スライダ451にそれぞれ噛み合う、五速駆動歯車425および五速被駆動歯車445の対、および、六速駆動歯車426および六速被駆動歯車446の対を薄くすることができる。したがって、五速および六速の歯車群の慣性モーメントをさらに小さくできる。これにより、ドグ当たり音をより抑制できる。
【0184】
五速駆動歯車425および五速被駆動歯車445の対と同様の構成であるため図示を省略するが、一速駆動歯車421および一速被駆動歯車441の対、および、三速駆動歯車423および三速被駆動歯車443の対は、ヘリカルギアの対である。
【0185】
この場合、第二スライダ452にそれぞれ噛み合う、一速駆動歯車421および一速被駆動歯車441の対、および、三速駆動歯車423および三速被駆動歯車443の対を薄くすることができる。したがって、一速および三速の歯車群の慣性モーメントをさらに小さくできる。これにより、ドグ当たり音をより抑制できる。
【0186】
二速駆動歯車422および二速被駆動歯車442の対、および、四速駆動歯車424および四速被駆動歯車444の対は、ヘリカルギアの対である。
【0187】
この場合、第三スライダ453にそれぞれ噛み合う、二速駆動歯車422および二速被駆動歯車442の対、および、四速駆動歯車424および四速被駆動歯車444の対を薄くすることができる。したがって、二速の歯車群および四速の歯車群の慣性モーメントをさらに小さくできる。これにより、ドグ当たり音をより抑制できる。
【0188】
本実施形態においては、
図5(A)および
図6から明らかなように、五速ドグ凸部465および六速ドグ凸部466が第一スライダ451に設けられている。
【0189】
このような構成により、前記軸方向と直交する方向(五速駆動歯車425と六速駆動歯車426の径方向)において、五速ドグ凹部475および六速ドグ凹部476が第一スライダ451に設けられる構成と比べて、第一スライダ451の寸法を小さくすることができる。これにより、第一スライダ451の質量および半径がより低減される。よって、第一スライダ451の慣性モーメントを低減することができる。したがって、ドグ当たり音をより抑制できる。
【0190】
第一スライダ451と同様の構成であるため、図示を省略するが、第二スライダ452には、一速ドグ凸部461および三速ドグ凸部463が設けられている。
【0191】
このような構成により、一速ドグ凹部471および三速ドグ凹部473が第二スライダ452に設けられる構成に比べて、前記軸方向と直交する方向(一速被駆動歯車441および三速被駆動歯車443の径方向)における第二スライダ452の寸法を小さくすることができる。これにより、第二スライダ452の質量および半径がより低減される。よって、第二スライダ452の慣性モーメントを低減することができる。したがって、ドグ当たり音をより抑制できる。
【0192】
第三スライダ453には、二速ドグ凸部462および四速ドグ凸部464が設けられている。
【0193】
このような構成により、二速ドグ凹部472および四速ドグ凹部474が第三スライダ453に設けられる構成に比べて、前記軸方向と直交する方向(二速被駆動歯車442および四速被駆動歯車444の径方向)に沿う第三スライダ453の寸法を小さくすることができる。これにより、第三スライダ453の質量および半径がより低減される。よって、第三スライダ453の慣性モーメントを低減することができる。したがって、ドグ当たり音をより抑制できる。
【0194】
前述のように、本実施形態に係る車両1は、スイッチ7と、電動アクチュエータ9とを備えている。スイッチ7は、運転者によって操作される。電動アクチュエータ9は、運転者によるスイッチ7の操作に応じて、変速装置40のシフトドラム48を回転させる。
【0195】
このような構成によれば、電動アクチュエータ9によって、シフトドラム48の回転角度および回転タイミングを、正確に制御することができる。例えば第一スライダ451の場合、五速ドグ凸部465と五速ドグ凹部475との噛み合い時には、両者の回転位相を容易に同期させることができ、六速ドグ凸部466と六速ドグ凹部476との噛み合い時には、両者の回転位相を容易に同期させることができる。よって、ドグ当たり音の発生をより抑制できる。また、ドグ当たり音に起因した運転者の違和感をより抑制できる。
【0196】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための例示にすぎない。上記の実施形態に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しなければ、適宜に変更、改良されうる。また、等価物が本発明の技術的範囲に含まれることは明らかである。
【0197】
上記の実施形態においては、駆動軸41の軸方向に沿う長さが相対的に長い複数の五速ドグ凸部465a(第一グループに含まれるドグ凸部の一例)の数と、同方向に沿う長さが相対的に短い複数の五速ドグ凸部465b(第二グループに含まれるドグ凸部の一例)の数とが、等しい。換言すると、複数の五速ドグ凸部465aの数と、複数の五速ドグ凸部465bの数と、複数の五速ドグ凹部475の数とが、等しい。しかしながら、複数の五速ドグ凸部465bの数は、複数の五速ドグ凹部475の数のN倍(Nは1以上の整数)であってもよい。
【0198】
図8に示された例においては、各五速ドグ凹部475に対し、一つの五速ドグ凸部465aおよび一つの五速ドグ凸部465bが噛み合っている。複数の五速ドグ凸部465bの数が複数の五速ドグ凹部475の数の二倍(N=2)である場合、各五速ドグ凹部475に対して一つの五速ドグ凸部465aと二つの五速ドグ凸部465bが進入する。本例においては、一つの五速ドグ凸部465a(第一グループに含まれるドグ凸部の一例)と二つの五速ドグ凸部465b(第二グループに含まれるドグ凸部の一例)とが、五速駆動歯車425の周方向に交互に並ぶように設けられている。本例においても、複数の五速ドグ凸部465が複数の五速ドグ凹部475と噛み合うとき、まず、五速ドグ凸部465aが複数の五速ドグ凹部475の一つに進入する。
【0199】
このような構成において、五速ドグ凸部465aが五速ドグ凹部475に進入する。その後、五速駆動歯車425に対する第一スライダ451の回転方向に応じて、五速駆動歯車425の周方向において五速ドグ凸部465aと隣り合う2つの五速ドグ凸部465bのうち一方が五速ドグ凹部475内に進入する。これにより、五速ドグ凸部465と五速ドグ凹部475とが噛み合う。上述のような構成により、複数の五速ドグ凸部465と複数の五速ドグ凹部475との噛み合い動作が、五速駆動歯車425に対する第一スライダ451の回転方向に応じてばらつくことを抑制できる。したがって、ドグ当たり音を抑制しつつ、ドグ当たり音に起因した運転者の違和感もより抑制できる。
【0200】
ここで、噛み合い動作のばらつきとは、ドグ凸部とドグ凹部とが噛み合うタイミングや、噛み合う位置等がばらつくことを意味する。
【0201】
上記の実施形態においては、駆動軸41の軸方向に沿う長さが相対的に長い複数の六速ドグ凸部466a(第一グループに含まれるドグ凸部の一例)の数と、前記軸方向に沿う長さが相対的に短い複数の六速ドグ凸部466b(第二グループに含まれるドグ凸部の一例)の数とは、等しい。換言すると、複数の六速ドグ凸部466aの数と、複数の六速ドグ凸部466bの数と、複数の六速ドグ凹部476の数とが、等しい。しかしながら、複数の六速ドグ凸部466bの数は、複数の六速ドグ凹部476の数のN倍(Nは1以上の整数)であってもよい。
【0202】
上記の実施形態においては、
図8に示された例と同様に、各六速ドグ凹部476に対して一つの六速ドグ凸部466aおよび一つの六速ドグ凸部466bが噛み合う。複数の六速ドグ凸部466bの数が複数の六速ドグ凹部476の数の二倍(N=2)である場合、各六速ドグ凹部476内に一つの六速ドグ凸部466aおよび二つの六速ドグ凸部466bが進入する。本例においては、一つの六速ドグ凸部466a(第一グループに含まれるドグ凸部の一例)と二つの六速ドグ凸部466b(第二グループに含まれるドグ凸部の一例)とが、六速駆動歯車426の周方向に交互に並ぶように設けられている。本例においても、複数の六速ドグ凸部466が複数の六速ドグ凹部476と噛み合うとき、まず、六速ドグ凸部466aが複数の六速ドグ凹部476の一つに進入する。
【0203】
このような構成において、六速ドグ凸部466aが六速ドグ凹部476内に進入する。その後、六速駆動歯車426に対する第一スライダ451の回転方向に応じて、六速駆動歯車426の周方向において六速ドグ凸部466aと隣り合う2つの六速ドグ凸部466bのうち一方が六速ドグ凹部476内に進入する。これにより、六速ドグ凸部466と六速ドグ凹部476とが噛み合う。上述のような構成により、複数の六速ドグ凸部466と複数の六速ドグ凹部476との噛み合い動作が、六速駆動歯車426に対する第一スライダ451の回転方向に応じてばらつくことを抑制できる。したがって、ドグ当たり音を抑制しつつ、ドグ当たり音に起因した運転者の違和感もより抑制できる。
【0204】
上記の実施形態においては、被駆動軸43の軸方向に沿う長さが相対的に長い複数の一速ドグ凸部461(第一グループに含まれるドグ凸部の一例)の数と、同方向に沿う長さが相対的に短い複数の一速ドグ凸部461(第二グループに含まれるドグ凸部の一例)の数とが、等しい。換言すると、相対的に長い複数の一速ドグ凸部461の数と、相対的に短い複数の一速ドグ凸部461の数と、複数の一速ドグ凹部471の数とが、等しい。しかしながら、相対的に短い複数の一速ドグ凸部461の数は、複数の一速ドグ凹部471の数のN倍(Nは1以上の整数)であってもよい。
【0205】
上記の実施形態においては、
図8に示された例と同様に、各一速ドグ凹部471に対し、一つの相対的に長い一速ドグ凸部461および一つの相対的に短い一速ドグ凸部461が噛み合っている。複数の相対的に短い一速ドグ凸部461の数が複数の一速ドグ凹部471の数の二倍(N=2)である場合、各一速ドグ凹部471内に、一つの相対的に長い一速ドグ凸部461および二つの相対的に短い一速ドグ
凸部461が進入する。本例においては、一つの相対的に長い一速ドグ凸部461(第一グループに含まれるドグ凸部の一例)と二つの相対的に短い一速ドグ
凸部461(第二グループに含まれるドグ凸部の一例)とが、一速被駆動歯車441の周方向に交互に並んで設けられている。本例においても、複数の一速ドグ凸部461が複数の一速ドグ凹部471と噛み合うとき、まず、相対的に長い一速ドグ凸部461が複数の一速ドグ凹部471の一つに進入する。
【0206】
このような構成において、相対的に長い一速ドグ凸部461が一速ドグ凹部471内に進入する。その後、一速被駆動歯車441に対する第二スライダ452の回転方向に応じて、一速被駆動歯車441の周方向において相対的に長い一速ドグ凸部461と隣り合う2つの相対的に短い一速ドグ凸部461のうち一方が一速ドグ凹部471内に進入する。これにより、一速ドグ凸部461と一速ドグ凹部471とが噛み合う。上述のような構成により、複数の一速ドグ凸部461と複数の一速ドグ凹部471との噛み合い動作が、一速被駆動歯車441に対する第二スライダ452の回転方向に応じてばらつくことを抑制できる。したがって、ドグ当たり音を抑制しつつ、ドグ当たり音に起因した運転者の違和感もより抑制できる。
【0207】
上記の実施形態においては、被駆動軸43の軸方向に沿う長さが相対的に長い複数の三速ドグ凸部463(第一グループに含まれるドグ凸部の一例)の数と、前記軸方向に沿う長さが相対的に短い複数の三速ドグ凸部463(第二グループに含まれるドグ凸部の一例)の数とが、等しい。換言すると、相対的に長い複数の三速ドグ凸部463の数と、相対的に短い複数の三速ドグ凸部463の数と、複数の三速ドグ凹部473の数とが、等しい。しかしながら、相対的に短い複数の三速ドグ凸部463の数は、複数の三速ドグ凹部473の数のN倍(Nは1以上の整数)であってもよい。
【0208】
上記の実施形態においては、
図8に示された例と同様に、各三速ドグ凹部473に対し、一つの相対的に長い三速ドグ凸部463と一つの相対的に短い三速ドグ凸部463とが噛み合っている。複数の相対的に短い三速ドグ凸部463の数が複数の三速ドグ凹部473の数の二倍(N=2)である場合、各三速ドグ凹部473内に、一つの相対的に長い三速ドグ凸部463および二つの相対的に短い三速ドグ
凸部463が進入する。本例においては、一つの相対的に長い三速ドグ凸部463(第一グループに含まれるドグ凸部の一例)と二つの相対的に短い三速ドグ
凸部463(第二グループに含まれるドグ凸部の一例)とが、三速被駆動歯車443の周方向に交互に並ぶように設けられている。本例においても、複数の三速ドグ凸部463が複数の三速ドグ凹部473と噛み合うとき、まず、相対的に長い三速ドグ凸部463が複数の三速ドグ凹部473の一つに進入する。
【0209】
このような構成によれば、相対的に長い三速ドグ凸部463が三速ドグ凹部473内に進入する。その後、三速被駆動歯車443に対する第二スライダ452の回転方向に応じて、三速被駆動歯車443の周方向において相対的に長い三速ドグ凸部463と隣り合う2つの相対的に短い三速ドグ凸部463のうち一方が三速ドグ凹部473内に進入する。これにより、三速ドグ凸部463と三速ドグ凹部473とが噛み合う。上述の構成により、複数の三速ドグ凸部463と複数の三速ドグ凹部473との噛み合い動作が三速被駆動
歯車443に対する第二スライダ452の回転方向に応じてばらつくことを抑制できる。したがって、ドグ当たり音を抑制しつつ、ドグ当たり音に起因した運転者の違和感もより抑制できる。
【0210】
上記の実施形態においては、被駆動軸43の軸方向に沿う長さが相対的に長い複数の二速ドグ凸部462(第一グループに含まれるドグ凸部の一例)の数と、同方向に沿う長さが相対的に短い複数の二速ドグ凸部462(第二グループに含まれるドグ凸部の一例)の数とが、等しい。換言すると、相対的に長い複数の二速ドグ凸部462の数と、相対的に短い複数の二速ドグ凸部462の数と、複数の二速ドグ凹部472の数とが、等しい。しかしながら、相対的に短い複数の二速ドグ凸部462の数は、複数の二速ドグ凹部472の数のN倍(Nは1以上の整数)であってもよい。
【0211】
上記の実施形態においては、
図8に示された例と同様に、各二速ドグ凹部472に対し、一つの相対的に長い二速ドグ凸部462および一つの相対的に短い二速ドグ凸部462が噛み合っている。複数の相対的に短い二速ドグ凸部462の数が複数の二速ドグ凹部472の数の二倍(N=2)である場合、各二速ドグ凹部472内に、一つの相対的に長い二速ドグ凸部462および二つの相対的に短い二速ドグ
凸部462が進入する。本例においては、一つの相対的に長い二速ドグ凸部462(第一グループに含まれるドグ凸部の一例)と二つの相対的に短い二速ドグ
凸部462(第二グループに含まれるドグ凸部の一例)とが、二速被駆動歯車442の周方向に交互に並んで設けられている。本例においても、複数の二速ドグ凸部462が複数の二速ドグ凹部472と噛み合うとき、まず、相対的に長い二速ドグ凸部462が複数の二速ドグ凹部472の一つに進入する。
【0212】
このような構成において、相対的に長い二速ドグ凸部462が二速ドグ凹部472に進入する。その後、二速被駆動歯車442に対する第三スライダ453の回転方向に応じて、二速被駆動歯車442の周方向において相対的に長い二速ドグ凸部462と隣り合う2つの相対的に短い二速ドグ凸部462のうち一方が二速ドグ凹部472内に進入する。これにより、二速ドグ凸部462と二速ドグ凹部472とが噛み合う。上述の構成により、複数の二速ドグ凸部462と複数の二速ドグ凹部472との噛み合い動作が二速被駆動歯車442に対する第三スライダ453の回転方向に応じてばらつくことを抑制できる。したがって、ドグ当たり音を抑制しつつ、ドグ当たり音に起因した運転者の違和感もより抑制できる。
【0213】
上記の実施形態においては、被駆動軸43の軸方向に沿う長さが相対的に長い複数の四速ドグ凸部464(第一グループに含まれるドグ凸部の一例)の数と、同方向に沿う長さが相対的に短い複数の四速ドグ凸部464(第二グループに含まれるドグ凸部の一例)の数とが、等しい。換言すると、相対的に長い複数の四速ドグ凸部464の数と、相対的に短い複数の四速ドグ凸部464の数と、複数の四速ドグ凹部474の数とが、等しい。しかしながら、相対的に短い複数の四速ドグ凸部464の数は、複数の四速ドグ凹部474の数のN倍(Nは1以上の整数)であってもよい。
【0214】
上記の実施形態においては、
図8に示された例と同様に、各四速ドグ凹部474に対し、一つの相対的に長い四速ドグ凸部464および一つの相対的に短い四速ドグ凸部464が噛み合っている。複数の相対的に短い四速ドグ凸部464の数が複数の四速ドグ凹部474の数の二倍(N=2)である場合、各四速ドグ凹部474内に一つの相対的に長い四速ドグ凸部464および二つの相対的に短い四速ドグ
凸部464が進入する。本例においては、一つの相対的に長い四速ドグ凸部464(第一グループに含まれるドグ凸部の一例)と二つの相対的に短い四速ドグ
凸部464(第二グループに含まれるドグ凸部の一例)とが、四速被駆動歯車444の周方向に交互に並んで設けられている。本例においても、複数の四速ドグ凸部464が複数の四速ドグ凹部474と噛み合うとき、まず、相対的に長い四速ドグ凸部464が複数の四速ドグ凹部474の一つに進入する。
【0215】
このような構成において、相対的に長い四速ドグ凸部464が四速ドグ凹部474に進入する。その後、四速被駆動歯車444に対する第三スライダ453の回転方向に応じて、四速被駆動歯車444の周方向において相対的に長い四速ドグ凸部464と隣り合う2つの相対的に短い四速ドグ凸部464のうち一方が速ドグ凹部474内に進入する。これにより、四速ドグ凸部464と四速ドグ凹部474とが噛み合う。上述の構成により、複数の四速ドグ凸部464と複数の四速ドグ凹部474との噛み合い動作が四速被駆動歯車444に対する第二スライダ452の回転方向に応じてばらつくことを抑制できる。したがって、ドグ当たり音を抑制しつつ、ドグ当たり音に起因して運転者が感じる違和感もより抑制できる。
【0216】
図3に二点鎖線で示されるように、車両1は、副変速機構11をさらに備えていてもよい。この場合、副変速機構11は、内燃機関3により生成された動力の伝達方向に関し、駆動軸41よりも上流および被駆動軸43よりも下流のいずれか一方に設けられる。副変速機構11は、例えば、変速比が異なる駆動歯車および被駆動歯車の対を二つ有する。副変速機構11は、変速装置4の変速段の段数に対して、車両1において変速可能な段数を実質的に倍増させる機構である。
【0217】
上述のように変速段数が増えると、変速動作の頻度、すなわちドグ当たり音が発生する頻度が高くなる。しかしながら、前述のように、上記の実施形態の構成により、ドグ当たり音そのものだけでなくドグ当たり音のばらつきを抑制できる。よって、変速段数を増やしても運転者の違和感を抑制できる。
【0218】
上記の実施形態では、シフトドラム48を回転させる電動アクチュエータ9の動作は、ハンドル6に設けられたスイッチ7により制御される。スイッチ7は、ハンドル6に配置されていなくてもよい。スイッチ7は、運転者の手によって操作されなくてもよい。例えば、スイッチ7は、車両1のフットペダル付近に配置されていてもよい。スイッチ7は、運転者の足によって操作されてもよい。
【0219】
シフトドラム48を回転させる電動アクチュエータ9の動作は、運転者によるスイッチ7の操作によって制御されなくてもよい。図示しない車載センサによって検出される車両1の走行状態に応じて、制御部8が電動アクチュエータ9の動作を自動制御してもよい。
【0220】
このような構成によれば、運転者の操作がなくても変速装置4の変速動作を自動的に実行できる。しかしながら、自動変速動作は、運転者の意図と異なるタイミングで行なわれることが多い。そのため、ドグ当たり音が運転者により意識される傾向にある。しかしながら、前述の通り、ドグ当たり音そのものだけでなくドグ当たり音のばらつきを抑制できる。これにより、自動変速が行なわれる構成においても、運転者の違和感を抑制できる。
【0221】
上記の実施形態に係る変速装置4は、六段変速が可能な構成を有する。しかしながら、変速可能な段数は、車両1の仕様に応じて適宜に定められうる。変速装置4が備える駆動歯車および被駆動歯車の対の数は、車両1に上述した副変速機構11を採用するか否かと併せて、必要な段数に応じて適宜に定められうる。
【0222】
このとき、各駆動歯車が駆動軸41に対して回転可能であるかは、上記の実施形態として示した例に限られず、変速装置4の仕様に応じて適宜に定められうる。ある駆動歯車が駆動軸41に対して回転可能である場合、当該駆動歯車と噛み合う被駆動歯車は、被駆動軸43に対して回転不能とされる。ある駆動歯車が駆動軸41に対して回転不能である場合、当該駆動歯車と噛み合う被駆動歯車は、被駆動軸43に対して回転可能とされる。
【0223】
なお、スライダは、駆動軸41または被駆動軸43に配置された歯車のうち、駆動軸41または被駆動軸43と相対回転可能な歯車に対して軸方向に並んで配置される。
【0224】
変速装置4が備えるスライダの数は、駆動歯車および被駆動歯車の対の数に応じて適宜に定められうる。このとき、スライダが、隣り合う駆動歯車の対および被駆動歯車の対のうち、いずれの歯車の対の間に配置されるかは、変速装置4の仕様に応じて適宜に定められうる。
図8を参照して説明したドグ凸部の数とドグ凹部の数との関係は、変速装置4の少なくとも一つのスライダにおけるドグ凸部及びドグ凹部で成立していればよい。
【0225】
変速装置4が備える複数の駆動歯車および被駆動歯車の対のうち、少なくとも一つの対は、平歯ギアの対であってもよい。
【0226】
上記の実施形態では、五速ドグ凸部465および六速ドグ凸部466の双方が、第一スライダ451に設けられている。しかしながら、五速ドグ凹部および六速ドグ凹部の少なくとも一方が第一スライダ451に設けられる構成であってもよい。五速ドグ凹部が第一スライダ451に設けられる場合、五速ドグ凸部は、五速駆動歯車425に設けられる。六速ドグ凹部が第一スライダ451に設けられる場合、六速ドグ凸部は、六速駆動歯車426に設けられる。
【0227】
上記の実施形態では、一速ドグ凸部461および三速ドグ凸部463の双方が、第二スライダ452に設けられている。しかしながら、一速ドグ凹部および三速ドグ凹部の少なくとも一方が第二スライダ452に設けられる構成であってもよい。一速ドグ凹部が第二スライダ452に設けられる場合、一速ドグ凸部は、一速被駆動歯車441に設けられる。三速ドグ凹部が第二スライダ452に設けられる場合、三速ドグ凸部は、三速被駆動歯車443に設けられる。
【0228】
上記の実施形態では、二速ドグ凸部462および四速ドグ凸部464の双方が、第三スライダ453に設けられている。しかしながら、二速ドグ凹部および四速ドグ凹部の少なくとも一方が第三スライダ453に設けられる構成であってもよい。二速ドグ凹部が第三スライダ453に設けられる場合、二速ドグ凸部は、二速被駆動歯車442に設けられる。四速ドグ凹部が第三スライダ453に設けられる場合、四速ドグ凸部は、四速被駆動歯車444に設けられる。
【0229】
上記の実施形態では、一速ドグ凸部461、二速ドグ凸部462、三速ドグ凸部463、四速ドグ凸部464、五速ドグ凸部465、および六速ドグ凸部466の全てが、駆動軸41の軸方向から見て歯車の歯形状を有している。しかしながら、一速ドグ凸部461、二速ドグ凸部462、三速ドグ凸部463、四速ドグ凸部464、五速ドグ凸部465、および六速ドグ凸部466の少なくとも一つは、駆動軸41または被駆動軸43を中心として駆動歯車および被駆動歯車の回転方向に配置されていてもよい。一速ドグ凸部461、二速ドグ凸部462、三速ドグ凸部463、四速ドグ凸部464、五速ドグ凸部465、および六速ドグ凸部466の少なくとも一種のドグ凸部は、該ドグ凸部と噛み合う駆動歯車または被駆動歯車に向かって延びる突起であってもよい。この場合、一速ドグ凹部471、二速ドグ凹部472、三速ドグ凹部473、四速ドグ凹部474、五速ドグ凹部475、および六速ドグ凹部476の少なくとも一種の数および形状は、前記突起と噛み合い可能なように適宜、決められる。
【0230】
図9(A)は、一例として、上記のように構成された変形例に係る第一スライダ451Aと変形例に係る五速駆動歯車425Aとが噛み合っている状態を模式的に示す図である。
図9(A)も、
図8(A)と同様、五速駆動歯車425A及び五速被駆動歯車445の一部の歯部のみが図示されている。
【0231】
本例においても、五速駆動歯車425Aと五速被駆動歯車445との噛み合い点Mと駆動軸41の軸中心Pとを結ぶ線を基準として、五速駆動歯車425Aの周方向に+90度(周方向の一方に90度)および−90度(非噛み合い方向に90度)の範囲内で、四つの五速ドグ凸部465Aと四つの五速ドグ凹部475Aとが噛み合っている。
【0232】
上記の実施形態では、
図6に示されるように、駆動軸41の軸方向に沿う向きの長さが相対的に長い五速ドグ凸部465aの先端部と当該長さが相対的に短い五速ドグ凸部465bの先端部とは、第一スライダ451の周方向に分離している。しかしながら、五速ドグ凸部465Aの形状は、上述の
図6と同様の構成に限定されない。
【0233】
図9(B)は、
図9(A)に示した複数の五速ドグ凸部465Aのうち一つの五速ドグ凸部465Aにおいて、第一スライダ451Aの周方向に沿う断面形状を模式的に示す図である。
図9(B)に示すように、相対的に短い五速ドグ凸部465Abと、相対的に長い五速ドグ凸部465Aaとが繋がっている構成であってもよい。このような構成は、一速ドグ凸部461、二速ドグ凸部462、三速ドグ凸部463、四速ドグ凸部464、および六速ドグ凸部466に対しても同様に適用可能である。
【0234】
上記の実施形態において、ドグ凸部とドグ凹部との噛み合いは、複数のドグ凸部と複数のドグ凹部とが全て噛み合う場合だけでなく、複数のドグ凸部の少なくとも一つと複数のドグ凹部の少なくとも一つとが噛み合う場合も含む。
【0235】
上記の実施形態に係る車両1は、動力源として内燃機関3を備えている。しかしながら、シフトドラム48を使用して変速を行なう変速装置4を備えていれば、車両1の動力源としてモータを使用してもよい。
【0236】
上記の実施形態に係る車両1は、自動二輪車である。しかしながら、シフトドラム48を使用して変速を行なう変速装置4を備えていれば、車両1が備えている前輪21および後輪22の数は、適宜に定められうる。