(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一正孔輸送層が、分子中にトリアリールアミン構造を3〜6個有するトリアリールアミン化合物であって、前記トリアリールアミン構造が単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有しているトリアリールアミン化合物を含有する、請求項2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
前記第一正孔輸送層が、分子中にトリアリールアミン構造を2個有するトリアリールアミン化合物であって、前記トリアリールアミン構造が、単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するトリアリールアミン化合物を含有する、請求項2記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の有機EL素子は、ガラス基板や透明プラスチック基板(例えばポリエチレンテレフタレート基板)などの基板上に、陽極、第一正孔輸送層、第二正孔輸送層、発光層、電子輸送層および陰極がこの順に設けられた基本構造を有している。
【0024】
このような基本構造を有している限り、本発明の有機EL素子の層構造は種々の態様を採ることができる。例えば陽極と第一正孔輸送層の間に正孔注入層を設けること、第二正孔輸送層と発光層の間に電子阻止層を設けること、発光層と電子輸送層の間に正孔阻止層を設けること、電子輸送層と陰極の間に電子注入層を設けることなどが可能である。更に、有機層を何層か省略あるいは兼ねることも可能である。例えば正孔注入層と第一正孔輸送層を兼ねた構成とすること、電子注入層と電子輸送層を兼ねた構成とすることなども可能である。また、同一の機能を有する有機層を2層以上積層した構成とすることも可能である。例えば、発光層を2層積層した構成、電子輸送層を2層積層した構成なども可能である。
図1には、後述する実施例で採用された層構成が示されており、即ち、ガラス基板1上に、透明陽極2、正孔注入層3、第一正孔輸送層4、第二正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8および陰極9がこの順に形成された層構成が示されている。
【0025】
各層の詳細な説明は後述するが、本発明では、第二正孔輸送層が、一般式(1)で表されるアリールアミン化合物(以下、これを「アリールアミン化合物I」と呼ぶことがある。)を含有しており、更に、電子輸送層が、一般式(2)で表されるピリミジン誘導体(以下、これを「ピリミジン誘導体II」と呼ぶことがある。)を含有している点に重要な特徴を有する。以下、アリールアミン化合物Iとピリミジン誘導体IIについて説明する。
【0026】
<アリールアミン化合物I>
第二正孔輸送層に含有されるアリールアミン化合物Iは、下記一般式(1)で表される構造を有する。
【化9】
【0027】
(n1)
n1は1〜4の整数を表す。
【0028】
(Ar
1〜Ar
4)
Ar
1、Ar
2、Ar
3およびAr
4は、同一でも異なってもよく、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基を表す。本願明細書において、縮合多環芳香族基は、その骨格にヘテロ原子(例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子など)を有していない。
【0029】
Ar
1〜Ar
4で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、スピロビフルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、ピリジル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基などをあげることができる。Ar
1〜Ar
4は、それぞれ独立して存在して環を形成していなくてもよいが、Ar
1とAr
2またはAr
3とAr
4は単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0030】
Ar
1〜Ar
4で表される芳香族複素環基としては、チエニル基、ベンゾチエニル基、ベンゾチアゾリル基、ジベンゾチエニル基などの含硫黄芳香族複素環基;フリル基、ピロリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾオキサゾリル基、ジベンゾフラニル基などの含酸素芳香族複素環基;またはN−置換カルバゾリル基が好ましい。N−置換カルバゾリル基が有する置換基としては、前記例示した芳香族炭化水素基または縮合多環芳香族基が好ましい。
【0031】
Ar
1〜Ar
4で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基は、無置換でもよいが置換基を有していてもよい。置換基としては、重水素原子、シアノ基、ニトロ基の他に、例えば以下の基を挙げることができる。
ハロゲン原子、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子;
炭素原子数1〜6のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロ
ピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチ
ル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル
基;
炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基、例えばメチルオキシ基、エチル
オキシ基、プロピルオキシ基;
炭素原子数2〜6のアルケニル基、例えばビニル基、アリル基;
アリールオキシ基、例えばフェニルオキシ基、トリルオキシ基;
アリールアルキルオキシ基、例えばベンジルオキシ基、フェネチルオキ
シ基;
芳香族炭化水素基または縮合多環芳香族基、例えばフェニル基、ビフェ
ニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナン
トレニル基、フルオレニル基、スピロビフルオレニル基、インデニル基、
ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基;
芳香族複素環基、例えばピリジル基、フリル基、チエニル基、ピロリル
基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基
、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾ
リル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベ
ンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基;
アリールビニル基、例えばスチリル基、ナフチルビニル基;
アシル基、例えばアセチル基、ベンゾイル基;
尚、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基および炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基は、直鎖状でも分枝状でもよい。これらの置換基は無置換でもよいが、さらに前記例示した置換基で置換されていても良い。また、これらの置換基は、独立して存在して環を形成していなくてもよいが、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0032】
(好適な態様)
以下、アリールアミン化合物Iの好適な態様を説明する。かかる好適な態様の説明において、置換/無置換の指定がない基は、置換基を有していても無置換でもよい。
【0033】
Ar
1〜Ar
4としては、芳香族炭化水素基、含酸素芳香族複素環基または縮合多環芳香族基が好ましく、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、フェナントレニル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基、ジベンゾフラニル基またはフルオランテニル基がより好ましい。
Ar
1とAr
2またはAr
3とAr
4が異なる基であることが好ましく、Ar
1とAr
2およびAr
3とAr
4が異なる基であることがより好ましい。
Ar
1〜Ar
4で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基が有してもよい置換基としては、重水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基、含窒素芳香族複素環基、含酸素芳香族複素環基または縮合多環芳香族基が好ましく、重水素原子、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、ジベンゾフラニル基またはビニル基がより好ましい。置換基同士が単結合を介して互いに結合して縮合芳香環を形成する場合も好ましい。
【0034】
n1としては1〜3が好ましく、1または2がより好ましい。
【0035】
一般式(1)におけるフェニレン基の結合様式としては、素子寿命に影響を与える薄膜の安定性の観点から、全ての結合が1,4−結合である様式ではなく、1,2−結合または1,3−結合が少なくとも一つ含まれている様式が好ましい。例えば、フェニレン基が3個(n1=1)、4個(n1=2)または5個(n1=3)連結したアリールアミン化合物Iとして、以下のようにフェニレン基同士が直線的に連結していないものが好ましい。
1,1’:2’,1’’−ターフェニルジアミン
1,1’:3’,1’’−ターフェニルジアミン
1,1’:2’,1’’:3’’,1’’’−クォーターフェニルジアミン
1,1’:3’,1’’:2’’,1’’’:3’’’,1’’’’−キンクフェニルジアミン
1,1’:3’,1’’:3’’,1’’’:3’’’,1’’’’−キンクフェニルジアミン
1,1’:2’,1’’:2’’,1’’’−クォーターフェニルジアミン
1,1’:3’,1’’:3’’,1’’’−クォーターフェニルジアミン
1,1’:4’,1’’:2’’,1’’’:4’’’,1’’’’−キンクフェニルジアミン
1,1’:2’,1’’:3’’,1’’’:2’’’,1’’’’−キンクフェニルジアミン
1,1’:4’,1’’:3’’,1’’’:4’’’,1’’’’−キンクフェニルジアミン
1,1’:2’,1’’:2’’,1’’’:2’’’,1’’’’−キンクフェニルジアミン
フェニレン基同士が全て1,4−結合で結合している場合は、例えば化合物1−94のように、−NAr
1Ar
2が結合しているベンゼン環において、−NAr
1Ar
2に対してフェニレン基がオルト位またはメタ位で結合しており、且つ、−NAr
3Ar
4が結合しているベンゼン環において、−NAr
3Ar
4に対してフェニレン基がオルト位またはメタ位で結合していることが好ましい。
【0036】
n1=1の場合のアリールアミン化合物Iとしては、以下の骨格を有することが好ましい。
4,4’’−ジアミノ−[1,1’;3’,1’’]ターフェニル骨格
3,3’’−ジアミノ−[1,1’;3’,1’’]ターフェニル骨格
2,2’’−ジアミノ−[1,1’;3’,1’’]ターフェニル骨格
4,4’’−ジアミノ−[1,1’;2’,1’’]ターフェニル骨格
3,3’’−ジアミノ−[1,1’;2’,1’’]ターフェニル骨格
2,2’’−ジアミノ−[1,1’;2’,1’’]ターフェニル骨格
2,4’’−ジアミノ−[1,1’;4’,1’’]ターフェニル骨格
2,2’’−ジアミノ−[1,1’;4’,1’’]ターフェニル骨格
3,3’’−ジアミノ−[1,1’;4’,1’’]ターフェニル骨格
【0037】
アリールアミン化合物Iの中で、本発明の有機EL素子に好適に用いられる化合物の具体例を
図2〜
図14に示すが、アリールアミン化合物Iはこれらの化合物に限定されるものではない。Dは重水素を表す。
【0038】
アリールアミン化合物Iは、鈴木カップリング等の公知の方法により製造することができる。
【0039】
<ピリミジン誘導体II>
電子輸送層に含まれるピリミジン誘導体IIは、下記一般式(2)で表される。
【化10】
ピリミジン誘導体IIは、−Ar
7と−A
1−A
2−A
3−Bの位置関係に応じて、以下の2態様に大別される。
【化11】
【化12】
【0040】
(Ar
5〜Ar
7)
Ar
5およびAr
6は、同一でも異なっていてもよく、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基を表す。Ar
7は、水素原子、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基を表す。Ar
5とAr
7、Ar
6とAr
7は、同一でもよいが異なっていてもよい。
【0041】
Ar
5〜Ar
7で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基としては、具体的に、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、テトラキスフェニル基、スチリル基、ナフチル基、アントラセニル基、アセナフテニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、スピロビフルオレニル基、フリル基、チエニル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基などをあげることができる。
【0042】
Ar
5〜Ar
7で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基は、無置換でもよいが置換基を有していてもよい。置換基としては、重水素原子、シアノ基、ニトロ基の他に、例えば以下の基を挙げることができる。
ハロゲン原子、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子;
炭素原子数1〜6のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロ
ピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチ
ル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル
基;
炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基、例えばメチルオキシ基、エチル
オキシ基、プロピルオキシ基;
アルケニル基、例えばビニル基、アリル基;
アリールオキシ基、例えばフェニルオキシ基、トリルオキシ基;
アリールアルキルオキシ基、例えばベンジルオキシ基、フェネチルオキ
シ基;
芳香族炭化水素基または縮合多環芳香族基、例えばフェニル基、ビフェ
ニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナン
トレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基
、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、スピロビフルオレニル基、
アセナフテニル基;
芳香族複素環基、例えばピリジル基、チエニル基、フリル基、ピロリル
基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基
、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾ
リル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベ
ンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、アザフルオレニル基、ジアザフル
オレニル基、カルボリニル基、アザスピロビフルオレニル基、ジアザスピ
ロビフルオレニル基;
アリールビニル基、例えばスチリル基、ナフチルビニル基;
アシル基、例えばアセチル基、ベンゾイル基;
尚、炭素原子数1〜6のアルキル基、アルケニル基、炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基は、直鎖状でも分枝状でもよい。これらの置換基は無置換でもよいが、さらに前記例示した置換基で置換されていても良い。また、これらの置換基は互いに独立して存在して環を形成していなくてもよいが、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよく、これらの置換基と当該置換基が結合しているAr
5、Ar
6またはAr
7が酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0043】
(A
1〜A
3)
A
1およびA
2は、同一でも異なってもよく、芳香族炭化水素の2価基または縮合多環芳香族の2価基を表す。A
3は、芳香族炭化水素の2価基、縮合多環芳香族の2価基または単結合を表す。
【0044】
芳香族炭化水素の2価基または縮合多環芳香族の2価基は、芳香族炭化水素または縮合多環芳香族から水素原子を2個取り除いてできる2価基を表す。芳香族炭化水素または縮合多環芳香族としては、具体的に、ベンゼン、ビフェニル、ターフェニル、テトラキスフェニル、スチレン、ナフタレン、アントラセン、アセナフタレン、フルオレン、フェナントレン、インダン、ピレン、トリフェニレン、スピロビフルオレンなどをあげることができる。
【0045】
A
1〜A
3で表される芳香族炭化水素の2価基または縮合多環芳香族の2価基は、無置換でもよいが置換基を有していてもよい。置換基としては、Ar
5〜Ar
7で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基が有してもよい置換基として示したものと同様のものをあげることができる。置換基がとりうる態様も同様である。
【0046】
(B)
Bは、芳香族複素環基を表す。Bで表される芳香族複素環基としては、具体的に、トリアジニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、アザフルオレニル基、ジアザフルオレニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、カルボリニル基、アザスピロビフルオレニル基、ジアザスピロビフルオレニル基、ビピリジル基、ターピリジル基、ピラジニル基、イミダゾリル基、キナゾリニル基、ベンゾトリアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、ピリドピロリル基、ピリドイミダゾリル基、ピリドトリアゾリル基、フェナジニル基、フェノキサジニル基、フェノチアジニル基のような基をあげることができる。
Bで表される芳香族複素環基は、無置換でもよいが置換基を有していてもよい。置換基としては、Ar
5〜Ar
7で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基が有してもよい置換基として示したものと同様のものをあげることができる。置換基がとりうる態様も同様である。
【0047】
(好適な態様)
以下、ピリミジン誘導体IIの好適な態様を説明する。かかる好適な態様の説明において、置換/無置換の指定がない基は、置換基を有していても無置換でもよい。
Ar
5としては、フェニル基;ビフェニリル基;ナフチル基;アントラセニル基;アセナフテニル基;フェナントレニル基;フルオレニル基;インデニル基;ピレニル基;ペリレニル基;フルオランテニル基;トリフェニレニル基;スピロビフルオレニル基;含酸素芳香族複素環基、例えばフリル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基;または含硫黄芳香族複素環基、例えばチエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基;が好ましく、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、スピロビフルオレニル基、ジベンゾフラニル基又はジベンゾチエニル基がより好ましい。
【0048】
Ar
5がフェニル基である場合、かかるフェニル基は、置換基として、縮合多環芳香族基または無置換のフェニル基を有していることが好ましく、ナフチル基、フェナントレニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、スピロビフルオレニル基または無置換のフェニル基を有していることがより好ましい。置換基とフェニル基とが酸素原子または硫黄原子を介して結合して環を形成することも好ましい。
【0049】
Ar
6としては、置換基を有するフェニル基が好ましい。フェニル基が有する置換基としては、芳香族炭化水素基、例えばフェニル基、ビフェニリル基、ターフェニル基;縮合多環芳香族基、例えばナフチル基、アントラセニル基、アセナフテニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、スピロビフルオレニル基;含酸素芳香族複素環基、例えばフリル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基;または含硫黄芳香族複素環基、例えばチエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基;が好ましく、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、スピロビフルオレニル基、ジベンゾフラニル基またはジベンゾチエニル基がより好ましい。置換基とフェニル基とが酸素原子または硫黄原子を介して結合して環を形成することも好ましい。
【0050】
あるいは、Ar
6としては、スピロビフルオレニル基;含酸素芳香族複素環基、例えばフリル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基;または含硫黄芳香族複素環基、例えばチエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基;も好ましい。
【0051】
Ar
7としては、水素原子;スピロビフルオレニル基;含酸素芳香族複素環基、例えばフリル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基;含硫黄芳香族複素環基、例えばチエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基;または置換基を有するフェニル基;が好ましく、水素原子がより好ましい。フェニル基が有する置換基としては、芳香族炭化水素基、例えばフェニル基、ビフェニリル基、ターフェニル基;縮合多環芳香族基、例えばナフチル基、アントラセニル基、アセナフテニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、スピロビフルオレニル基;含酸素芳香族複素環基、例えばフリル基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基;または含硫黄芳香族複素環基、例えばチエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基;が好ましく、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、ピレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、スピロビフルオレニル基、ジベンゾフラニル基またはジベンゾチエニル基がより好ましい。置換基とフェニル基とが酸素原子または硫黄原子を介して結合して環を形成することも好ましい。
【0052】
薄膜の安定性の観点から、Ar
5とAr
6が異なる基であることが好ましい。分子全体の対称性がよくなることによって結晶化し易くなる虞があり、薄膜の安定性の観点から、Ar
6とAr
7は異なる基であることが好ましい。「Ar
5とAr
6が異なる基である場合」および「Ar
6とAr
7が異なる基である場合」には、ピリミジン環との結合位置が異なる態様、異なる置換基を有する態様および置換基の結合位置が異なる態様が含まれる。
【0053】
A
1、A
2としては、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、アントラセン、フルオレンまたはフェナントレンから水素原子を2個取り除いてできる2価基が好ましく、ベンゼンまたはナフタレンから水素原子を2個取り除いてできる2価基がより好ましい。
A
1、A
2の一方がベンゼンから水素原子を2個取り除いてできる2価基(フェニレン基)であって、もう一方がナフタレンから水素原子を2個取り除いてできる2価基(ナフチレン基)である態様、または、A
1およびA
2の両方がフェニレン基である態様が好ましい。真空蒸着法によって有機EL素子を製造する場合に、昇華温度が高くなりすぎないからである。
A
3としては、フェニレン基または単結合が好ましく、単結合がより好ましい。真空蒸着法によって有機EL素子を製造する場合に、昇華温度が高くなりすぎないからである。
【0054】
Bとしては、含窒素芳香族複素環基、例えばトリアジニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、アザフルオレニル基、ジアザフルオレニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、カルボリニル基、アザスピロビフルオレニル基、ジアザスピロビフルオレニル基などが好ましく、トリアジニル基、ピリジル基、ピリミジニル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、キノキサリニル基、アザフルオレニル基、ジアザフルオレニル基、ベンゾイミダゾリル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、アザスピロビフルオレニル基またはジアザスピロビフルオレニル基がより好ましく、ピリジル基、ピリミジニル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、アザフルオレニル基、ジアザフルオレニル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、アザスピロビフルオレニル基又はジアザスピロビフルオレニル基が特に好ましい。
【0055】
各基の特に好ましい態様は以下の通りである。
1)Ar
5、Ar
6は、芳香族炭化水素基または縮合多環芳香族基を表し、Ar
7は、水素原子、芳香族炭化水素基または縮合多環芳香族基を表す。
2)Ar
5が置換基を有するフェニル基である。
3)Ar
5が置換基を有するフェニル基であり、該置換基が、縮合多環芳香族基である。
4)Ar
5が置換基を有するフェニル基であり、該置換基が、無置換の縮合多環芳香族基である。
5)Ar
5が縮合多環芳香族基である。
6)Ar
5が無置換の縮合多環芳香族基である。
7)Ar
6が無置換のフェニル基である。
8)Ar
6が置換基を有するフェニル基であり、該置換基が、芳香族炭化水素基または縮合多環芳香族基である。
9)Ar
6が置換基を有するフェニル基であり、該置換基が、芳香族炭化水素基である。
10)Ar
6が置換基を有するフェニル基であり、該置換基が、縮合多環芳香族基である。
11)Ar
6が縮合多環芳香族基である。
12)Ar
6がナフチル基である。
13)Ar
6がフェナントレニル基である。
14)A
1またはA
2の一方がフェニレン基である。
【0056】
ピリミジン誘導体IIの好適な具体例を
図15〜
図29に示すが、ピリミジン誘導体IIはこれらの化合物に限定されるものではない。具体例において、化合物2−1〜2−122は上記一般式(2a)に該当する。化合物2−123〜2−126は上記一般式(2b)に該当する。
【0057】
ピリミジン誘導体IIは、公知の方法に準じて合成することができる(特許文献6参照)。
【0058】
アリールアミン化合物Iおよびピリミジン誘導体IIは、カラムクロマトグラフによる精製、シリカゲル、活性炭、活性白土などによる吸着精製、溶媒による再結晶や晶析法などによって行うことができる。最終的には、昇華精製などによる精製を行ってもよい。化合物の同定は、NMR分析によって行うことができる。物性値として、ガラス転移点(Tg)と仕事関数の測定を行うことができる。
【0059】
ガラス転移点(Tg)は薄膜状態の安定性の指標となる。ガラス転移点(Tg)は、粉体と高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100S)を用いて測定することができる。
【0060】
仕事関数は正孔輸送性の指標となる。仕事関数は、ITO基板の上に100nmの薄膜を作製して、イオン化ポテンシャル測定装置(住友重機械工業株式会社製、PYS−202)によって求めることができる。
【0061】
アリールアミン化合物Iやピリミジン誘導体II以外の本発明の有機EL素子に用いられる化合物{具体的には、後述するトリアリールアミン化合物III、IV}についても、合成後、同様の方法により精製および各種測定をすることができる。
【0062】
本発明の有機EL素子においては、上記アリールアミン化合物Iが第二正孔輸送層に含まれており、且つ、上記ピリミジン誘導体IIが電子輸送層に含まれているという条件を満たしている限り、各層は種々の態様を採ることができる。以下、
図1を参照して、各層について詳細に説明する。
【0063】
<陽極2>
本発明の有機EL素子では、透明基板1の上に陽極2が設けられている。陽極2には、ITOや金のような仕事関数の大きな電極材料が用いられる。
【0064】
<正孔注入層3>
陽極2と正孔輸送層4との間には、必要に応じて、正孔注入層3を設けてもよい。正孔注入層3には、公知の材料を使用してよい。正孔の移動度が高いので、前記アリールアミン化合物I、後述の一般式(3)で表されるトリアリールアミン化合物IIIまたは後述の一般式(4)で表されるトリアリールアミン化合物IVを使用してもよい。但し、正孔注入層3にトリアリールアミン化合物IIIまたはIVを用いる場合、正孔注入層3の組成と後述の第一正孔輸送層4の組成は異なっていなければならない。
【0065】
公知の材料としては、例えば、スターバースト型のトリフェニルアミン誘導体、種々のトリフェニルアミン4量体などの材料;銅フタロシアニンに代表されるポルフィリン化合物;ヘキサシアノアザトリフェニレンのようなアクセプター性の複素環化合物;塗布型の高分子材料;などを用いることができる。
【0066】
これらの材料は、単独で成膜に供してもよいが、他の材料とともに混合して成膜に供してもよい。また、正孔注入層において、該層に通常使用される材料に対し、さらにトリスブロモフェニルアミンヘキサクロルアンチモン、ラジアレン誘導体(国際公開2014/009310号参照)などをPドーピングしたものや、TPDなどのベンジジン誘導体の構造をその部分構造に有する高分子化合物などを用いてもよい。
【0067】
これらの材料を用いて、蒸着法、スピンコート法、インクジェット法などの公知の方法により薄膜形成を行うと、正孔注入層3を得ることができる。以下に述べる各層も同様に、蒸着法、スピンコート法、インクジェット法などの公知の方法により薄膜形成を行うことで得ることができる。
【0068】
<第一正孔輸送層4>
第一正孔輸送層4は、上記の陽極2(または正孔注入層3)と第二正孔輸送層5との間に設けられるものである。本発明では、第一正孔輸送層4に、以下に例示される公知の材料を含有させることができる。
ベンジジン誘導体、例えば
N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(m−トリル)ベンジジン(T
PD)、
N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(α−ナフチル)ベンジジン(
NPD)、
N,N,N’,N’−テトラビフェニリルベンジジン;
1,1−ビス[4−(ジ−4−トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサ
ン(TAPC);
正孔輸送性のトリアリールアミン化合物、例えば
分子中にトリアリールアミン構造を3〜6個有するトリアリールアミ
ン化合物であって、該トリアリールアミン構造が、ヘテロ原子を含まな
い2価基または単結合で連結した構造を有するトリアリールアミン化合
物、
分子中にトリアリールアミン構造を2個有するトリアリールアミン化
合物であって、該トリアリールアミン構造が、ヘテロ原子を含まない2
価基または単結合で連結した構造を有するトリアリールアミン化合物;
【0069】
上述の公知の材料うち、分子中にトリアリールアミン構造を3〜6個有するトリアリールアミン化合物であって、該トリアリールアミン構造同士が、ヘテロ原子を含まない2価基または単結合で連結した構造を有するトリアリールアミン化合物(以下、トリアリールアミン構造を3〜6個有するトリアリールアミン化合物と略称することがある。);分子中にトリアリールアミン構造を2個有するトリアリールアミン化合物であって、該トリアリールアミン構造同士が、ヘテロ原子を含まない2価基または単結合で連結した構造を有するトリアリールアミン化合物(以下、トリアリールアミン構造を2個有するトリアリールアミン化合物と略称することがある。);が好適に用いられる。
【0070】
尚、トリアリールアミン構造を2個有するトリアリールアミン化合物には、例えば
図38の4´−1および4´−2のように、トリアリールアミン構造中の2つのベンゼン環が単結合を介して結合している態様、即ち、カルバゾール環構造を有する態様も含まれるものとする。
【0071】
トリアリールアミン構造を3〜6個有するトリアリールアミン化合物としては、後述の一般式(3)で表される、トリアリールアミン構造を4個有するトリアリールアミン化合物IIIが好ましい。正孔輸送性に加え、薄膜安定性や耐熱性に優れており、更に合成が容易だからである。
また、トリアリールアミン構造を2個有するトリアリールアミン化合物としては、後述の一般式(4)で表されるトリアリールアミン化合物IVが好ましい。正孔輸送性に加え、薄膜安定性や耐熱性に優れており、更に合成が容易だからである。
【0072】
一般式(3)で表されるトリアリールアミン化合物III;
【化13】
【0073】
(R
1〜R
12)
R
1〜R
12は、同一でも異なってもよく、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基、炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基、炭素原子数5〜10のシクロアルキルオキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、縮合多環芳香族基またはアリールオキシ基を表す。炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基および炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基は、直鎖状でも分枝状でもよい。
【0074】
R
1〜R
12で表される炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基または炭素原子数2〜6のアルケニル基としては、具体的に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2−ブテニル基などをあげることができる。
【0075】
R
1〜R
12で表される炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基または炭素原子数2〜6のアルケニル基は、無置換でもよいが置換基を有していてもよい。置換基としては、重水素原子、シアノ基、ニトロ基の他に、例えば以下の基を挙げることができる。
ハロゲン原子、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子;
炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基、例えばメチルオキシ基、エチル
オキシ基、プロピルオキシ基;
アルケニル基、例えばビニル基、アリル基;
アリールオキシ基、例えばフェニルオキシ基、トリルオキシ基;
アリールアルキルオキシ基、例えばベンジルオキシ基、フェネチルオキ
シ基;
芳香族炭化水素基または縮合多環芳香族基、例えばフェニル基、ビフェ
ニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナン
トレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基
、フルオランテニル基、トリフェニレニル基;
芳香族複素環基、例えばピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基
、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベ
ンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベ
ンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイ
ミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基
、カルボリニル基;
尚、アルケニル基、炭素数1〜6のアルキルオキシ基は、直鎖状でも分枝状でもよい。これらの置換基は無置換でもよいが、さらに前記例示した置換基で置換されていても良い。また、これらの置換基は、独立して存在して環を形成していなくてもよいが、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成していてもよい。
【0076】
R
1〜R
12で表される炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基または炭素原子数5〜10のシクロアルキルオキシ基としては、具体的に、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、1−アダマンチルオキシ基、2−アダマンチルオキシ基などをあげることができる。
これらの基は、無置換でもよいが置換基を有していてもよい。置換基としては、R
1〜R
12で表される炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基または炭素原子数2〜6のアルケニル基が有してもよい置換基として示したものと同様のものをあげることができる。置換基がとりうる態様も同様である。
【0077】
R
1〜R
12で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基としては、前記一般式(1)中のAr
1〜Ar
4で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基として示したものと同様のものをあげることができる。
これらの基は無置換でもよいが置換基を有していてもよい。置換基としては、前記一般式(1)中のAr
1〜Ar
4で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基が有してもよい置換基として示したものと同様のものをあげることができる。置換基がとりうる態様も同様である。
【0078】
R
1〜R
12で表されるアリールオキシ基としては、具体的に、フェニルオキシ基、ビフェニリルオキシ基、ターフェニリルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントラセニルオキシ基、フェナントレニルオキシ基、フルオレニルオキシ基、インデニルオキシ基、ピレニルオキシ基、ペリレニルオキシ基などをあげることができる。
アリールオキシ基は、無置換でもよいが置換基を有していてもよい。置換基としては、前記一般式(1)中のAr
1〜Ar
4で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基が有してもよい置換基として示したものと同様のものをあげることができる。置換基がとりうる態様も同様である。
【0079】
(r
1〜r
12)
r
1〜r
12は、それぞれ、芳香族環に結合している基R
1〜R
12の数を示す。r
1、r
2、r
5、r
8、r
11およびr
12は、それぞれ、0〜5の整数を表し、r
3、r
4、r
6、r
7、r
9およびr
10は、それぞれ、0〜4の整数を表す。r
1〜r
12が0である場合とは、芳香族環上にR
1〜R
12が存在しないこと、即ち、R
1〜R
12で表される基で芳香族環が置換されていないことを表す。
【0080】
r
1、r
2、r
5、r
8、r
11、r
12が2〜5の整数である場合またはr
3、r
4、r
6、r
7、r
9、r
10が2〜4の整数である場合、同一の芳香族環にR
1〜R
12が複数結合している。この場合、複数結合している基は、同一でも異なってもよい。また、互いに独立して存在して環を形成していなくてもよいが、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。例えば
図31の化合物3−8では、複数の置換基(2つのビニル基)が単結合を介して結合してナフタレン環を形成している。
【0081】
(L
1〜L
3)
一般式(3)において、L
1〜L
3は、2つのトリアリールアミン構造を結合する橋絡基である。L
1〜L
3は、同一でも異なってもよく、下記構造式(B)〜(G)のいずれかで示される2価基または単結合を表す。
【化14】
前記構造式(B)において、n2は1〜3の整数を表す。前記構造式(B)〜(G)で示される2価基は無置換でもよいが、重水素で置換されていてもよい。
【0082】
(トリアリールアミン化合物IIIの好適な態様)
以下、トリアリールアミン化合物IIIの好適な態様を説明する。かかる好適な態様の説明において、置換/無置換の指定がない基は、置換基を有していても無置換でもよい。
【0083】
R
1〜R
12としては、重水素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基、芳香族炭化水素基または縮合多環芳香族基が好ましく、重水素原子、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基またはビニル基がより好ましい。
図31の化合物3−8のように、これらの基が単結合を介して互いに結合して縮合芳香環を形成する場合も好ましい。特に、重水素原子、フェニル基またはビフェニリル基が好ましい。
r
1〜r
12としては、0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましい。
L
1〜L
3としては、前記構造式(B)もしくは(D)で示される2価基または単結合が好ましく、前記構造式(B)で示される2価基または単結合がより好ましい。
前記構造式(B)におけるn2としては、1または2が好ましく、1がより好ましい。
【0084】
トリアリールアミン化合物IIIの好適な具体例を
図30〜
図33に示すが、トリアリールアミン化合物IIIはこれらの化合物に限定されるものではない。尚、Dは重水素原子を表す。
【0085】
本発明の有機EL素子に好適に用いられる、前記分子中にトリアリールアミン構造を3〜6個有するトリアリールアミン化合物のうち、前記トリアリールアミン化合物III以外のトリアリールアミン化合物の好適な具体例を
図34に示すが、トリアリールアミン化合物はこれらの化合物に限定されるものではない。尚、Dは重水素原子を表す。
【0086】
トリアリールアミン化合物IIIは、公知の方法に準じて合成することができる(特許文献7〜9参照)。
【0087】
一般式(4)で表されるトリアリールアミン化合物IV;
【化15】
【0088】
(R
13〜R
18)
R
13〜R
18は、同一でも異なってもよく、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、シアノ基、ニトロ基、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基、炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基、炭素原子数5〜10のシクロアルキルオキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、縮合多環芳香族基またはアリールオキシ基を表す。炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基および炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基は、直鎖状でも分枝状でもよい。
【0089】
R
13〜R
18で表される炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基または炭素原子数2〜6のアルケニル基としては、前記一般式(3)中のR
1〜R
12で表される炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基または炭素原子数2〜6のアルケニル基として示したものと同様のものをあげることができる。
これらの基は、無置換でもよいが置換基を有していてもよい。置換基としては、前記一般式(3)中のR
1〜R
12で表される炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基または炭素原子数2〜6のアルケニル基が有してもよい置換基として示したものと同様のものをあげることができる。置換基がとりうる態様も同様である。
【0090】
R
13〜R
18で表される炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基または炭素原子数5〜10のシクロアルキルオキシ基としては、前記一般式(3)中のR
1〜R
12で表される炭素原子数1〜6のアルキルオキシ基または炭素原子数5〜10のシクロアルキルオキシ基として示したものと同様のものをあげることができる。
これらの基は、無置換でもよいが置換基を有していてもよい。置換基としては、前記一般式(3)中のR
1〜R
12で表される炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数5〜10のシクロアルキル基または炭素原子数2〜6のアルケニル基が有してもよい置換基として示したものと同様のものをあげることができる。置換基がとりうる態様も同様である。
【0091】
R
13〜R
18で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基としては、前記一般式(1)中のAr
1〜Ar
4で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基として示したものと同様のものをあげることができる。
これらの基は無置換でもよいが置換基を有していてもよい。置換基としては、前記一般式(1)中のAr
1〜Ar
4で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基が有してもよい置換基として示したものと同様のものをあげることができる。置換基がとりうる態様も同様である。
【0092】
R
13〜R
18で表されるアリールオキシ基としては、前記一般式(3)中のR
1〜R
12で表されるアリールオキシ基として示したものと同様のものをあげることができる。
アリールオキシ基は、無置換でもよいが置換基を有していてもよい。置換基としては、前記一般式(1)中のAr
1〜Ar
4で表される芳香族炭化水素基、芳香族複素環基または縮合多環芳香族基が有してもよい置換基として示したものと同様のものをあげることができる。置換基がとりうる態様も同様である。
【0093】
(r
13〜r
18)
r
13〜r
18は、それぞれ、芳香族環に結合している基R
13〜R
18の数を示す。r
13、r
14、r
17およびr
18は、それぞれ、0〜5の整数を表す。r
15およびr
16は、それぞれ、0〜4の整数を表す。r
13〜r
18が0である場合とは、芳香族環上にR
13〜R
18が存在しないこと、すなわち、R
13〜R
18で表される基でベンゼン環が置換されていないことを表す。
【0094】
r
13、r
14、r
17、r
18が2〜5の整数である場合またはr
15、r
16が2〜4の整数である場合、同一の芳香族環にR
13〜R
18が複数結合している。この場合、複数結合している基は、同一でも異なってもよい。また、互いに独立して存在して環を形成していなくてもよいが、単結合、置換もしくは無置換のメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して互いに結合して環を形成してもよい。例えば
図36の化合物4−13および4−14では、複数の置換基(2つのビニル基)が単結合を介して結合してナフタレン環を形成している。
【0095】
(L
4)
前記一般式(4)において、L
4は、2つのトリアリールアミン構造を結合する橋絡基である。L
4は、前記構造式(C)〜(G)のいずれかで示される2価基または単結合を表す。
【0096】
(トリアリールアミン化合物IVの好適な態様)
以下、トリアリールアミン化合物IVの好適な態様を説明する。かかる好適な態様の説明において、置換/無置換の指定がない基は、置換基を有していても無置換でもよい。
【0097】
R
13〜R
18としては、重水素原子、塩素原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数2〜6のアルケニル基、芳香族炭化水素基、含窒素芳香族複素環基または縮合多環芳香族基が好ましく、重水素原子、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基またはビニル基がより好ましい。例えば
図36の化合物4−13および4−14のように、これらの基が単結合を介して互いに結合して縮合芳香環を形成する場合も好ましい。特に、重水素原子、フェニル基またはビフェニリル基が好ましい。
r
13〜r
18としては、0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましい。
L
4としては、前記構造式(D)もしくは(G)で示される2価基または単結合が好ましい。
【0098】
トリアリールアミン化合物IVの好適な具体例を
図35〜
図37に示すが、トリアリールアミン化合物IVはこれらの化合物に限定されるものではない。尚、Dは重水素原子を表す。
【0099】
また、本発明の有機EL素子に好適に用いられる、前記トリアリールアミン構造を2個有するトリアリールアミン化合物のうち、前記トリアリールアミン化合物IV以外のトリアリールアミン化合物の具体例を
図38に示すが、かかるトリアリールアミン化合物は、これらの化合物に限定されるものではない。
【0100】
トリアリールアミン化合物IVは、公知の方法に準じて合成することができる(特許文献7〜9参照)。
【0101】
上記の材料は、単独で成膜に供してもよいが、他の材料とともに混合して成膜に供してもよい。第一正孔輸送層4は、単独で成膜した層同士を積層した構造、混合して成膜した層同士を積層した構造または単独で成膜した層と混合して成膜した層を積層した構造を有してもよい。
【0102】
第一正孔輸送層4においては、該層に通常使用される材料に対し、さらにトリスブロモフェニルアミンヘキサクロルアンチモン、ラジアレン誘導体(国際公開第2014/009310号参照)などをPドーピングしたものや、TPDなどのベンジジン誘導体の構造をその部分構造に有する高分子化合物などを用いることができる。
【0103】
正孔注入層3兼第一正孔輸送層4として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)/ポリ(スチレンスルフォネート)(PSS)などの塗布型の高分子材料を用いることができる。
【0104】
<第二正孔輸送層5>
本発明の有機EL素子においては、第一正孔輸送層4と発光層6の間に第二正孔輸送層5が設けられ、かかる第二正孔輸送層5に前記アリールアミン化合物Iが用いられる。第二正孔輸送層5には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、公知の正孔輸送性の材料を併用してもよい。公知の正孔輸送性の材料としては、第一正孔輸送層4で説明したものと同じものを挙げることができる。これらの材料は、単独で成膜に供してもよいが、他の材料とともに混合して成膜に供してもよい。第二正孔輸送層5は、単独で成膜した層同士を積層した構造、混合して成膜した層同士を積層した構造または単独で成膜した層と混合して成膜した層を積層した構造を有してもよい。
【0105】
<電子阻止層>
図1には示されていないが、本発明の有機EL素子においては、第二正孔輸送層5と発光層6との間に電子阻止層を設けることができる。電子阻止層には、電子阻止性能が高いという観点から、前記アリールアミン化合物Iを使用することができる。ただし、電子阻止層にアリーリアミン化合物Iを使用する場合、電子阻止層の組成と前述の第二正孔輸送層5の組成は異なっていなければならない。また、前記トリアリールアミン化合物IIIまたはIVを用いることもできる。
【0106】
更にまた、電子阻止作用を有する公知の化合物を用いることもできる。電子阻止作用を有する公知の化合物としては、
カルバゾール誘導体、例えば
4,4’,4’’−トリ(N−カルバゾリル)トリフェニルアミン(
TCTA)、
9,9−ビス[4−(カルバゾール−9−イル)フェニル]フルオレ
ン、
1,3−ビス(カルバゾール−9−イル)ベンゼン(mCP)、
2,2−ビス(4−カルバゾール−9−イルフェニル)アダマンタン
(Ad−Cz);
トリフェニルシリル基とトリアリールアミン構造を有する化合物、例え
ば
9−[4−(カルバゾール−9−イル)フェニル]−9−[4−(ト
リフェニルシリル)フェニル]−9H−フルオレン;
などを挙げることができる。これらの材料は、単独で成膜に供してもよいが、他の材料とともに混合して成膜に供してもよい。電子阻止層は、単独で成膜した層同士を積層した構造、混合して成膜した層同士を積層した構造または単独で成膜した層と混合して成膜した層を積層した構造を有してもよい。
【0107】
<発光層6>
発光層6は、前記第二正孔輸送層5(または電子阻止層)の上に形成される。発光層6には、Alq
3をはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体の他、各種の金属錯体、アントラセン誘導体、ビススチリルベンゼン誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体などを用いることができる。
【0108】
また、発光層6をホスト材料とドーパント材料とで構成してもよい。
ホスト材料としては、アントラセン誘導体が好ましく用いられるが、それ以外に、前記発光材料;インドール環を縮合環の部分構造として有する複素環化合物;カルバゾール環を縮合環の部分構造として有する複素環化合物;カルバゾール誘導体;チアゾール誘導体;ベンズイミダゾール誘導体;ポリジアルキルフルオレン誘導体;などを用いてもよい。
ドーパント材料としては、ピレン誘導体などの青色発光性ドーパント;フルオレン環を縮合環の部分構造として有するアミン誘導体;が好ましく用いられるが、それ以外に、キナクリドン、クマリン、ルブレン、ペリレン、およびそれらの誘導体;ベンゾピラン誘導体;インデノフェナントレン誘導体;ローダミン誘導体;アミノスチリル誘導体などを用いることができる。
【0109】
これらの材料は、単独で成膜に供してもよいが、他の材料とともに混合して成膜に供してもよい。電子阻止層は、単独で成膜した層同士を積層した構造、混合して成膜した層同士を積層した構造または単独で成膜した層と混合して成膜した層を積層した構造を有してもよい。
【0110】
また、発光材料として燐光発光体を使用することも可能である。燐光発光体としては、イリジウムや白金などの金属錯体の燐光発光体を使用することができる。具体的には、Ir(ppy)
3などの緑色の燐光発光体;FIrpic、FIr6などの青色の燐光発光体;Btp
2Ir(acac)などの赤色の燐光発光体;などが用いられる。
【0111】
このときのホスト材料としては、例えば以下の正孔注入・輸送性のホスト材料を用いることができる。
カルバゾール誘導体、例えば4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェ
ニル(CBP)、TCTA、mCPなど;
また、例えば以下の電子輸送性のホスト材料を用いることもできる。
p−ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(UGH2)、2,2’,2
’’−(1,3,5−フェニレン)−トリス(1−フェニル−1H−ベン
ズイミダゾール)(TPBI)など;
このようなホスト材料を用いると、高性能の有機EL素子を作製することができる。
【0112】
燐光発光体のホスト材料へのドープは、濃度消光を避けるため、発光層全体に対して1〜30重量%の範囲で、共蒸着によって行うことが好ましい。
【0113】
また、発光材料としてPIC−TRZ、CC2TA、PXZ−TRZ、4CzIPNなどのCDCB誘導体などの遅延蛍光を放射する材料を使用することも可能である。
【0114】
<正孔阻止層>
発光層6と電子輸送層7との間には、正孔阻止層(図示せず)を設けることができる。正孔阻止層には、公知の正孔阻止作用を有する化合物を用いることができる。公知の正孔阻止作用を有する化合物としては、バソクプロイン(BCP)などのフェナントロリン誘導体;アルミニウム(III)ビス(2−メチル−8−キノリナート)−4−フェニルフェノレート(BAlq)などのキノリノール誘導体の金属錯体;各種の希土類錯体;トリアゾール誘導体;トリアジン誘導体;オキサジアゾール誘導体;などを挙げることができる。これらの材料は電子輸送層7の材料を兼ねてもよい。これらの材料は、単独で成膜に供してもよいが、他の材料とともに混合して成膜に供してもよい。正孔阻止層は、単独で成膜した層同士を積層した構造、混合して成膜した層同士を積層した構造または単独で成膜した層と混合して成膜した層を積層した構造を有してもよい。
【0115】
<電子輸送層7>
本発明において、電子輸送層7には、前記ピリミジン誘導体IIが用いられる。ピリミジン誘導体IIとしては、前記一般式(2a)または(2b)で表されるものが好ましく、前記一般式(2a)で表されるものがより好ましい。
【0116】
電子輸送層7では、本発明の効果を損なわない限りにおいて、公知の電子輸送性の材料を併用してもよい。公知の電子輸送性の材料としては、Alq
3、BAlqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体;各種金属錯体;トリアゾール誘導体;トリアジン誘導体;オキサジアゾール誘導体;ピリジン誘導体;ピリミジン誘導体;ベンズイミダゾール誘導体;チアジアゾール誘導体;アントラセン誘導体;カルボジイミド誘導体;キノキサリン誘導体;ピリドインドール誘導体;フェナントロリン誘導体;シロール誘導体;などを用いることができる。これらの材料は、単独で成膜に供してもよいが、他の材料とともに混合して成膜に供してもよい。電子阻止層は、単独で成膜した層同士を積層した構造、混合して成膜した層同士を積層した構造または単独で成膜した層と混合して成膜した層を積層した構造としてもよい。
【0117】
<電子注入層8>
電子注入層8には、フッ化リチウム、フッ化セシウムなどのアルカリ金属塩;フッ化マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩;酸化アルミニウムなどの金属酸化物;などを用いることができるが、電子輸送層と陰極の好ましい選択においては、これを省略することができる。
【0118】
<陰極9>
陰極9には、アルミニウムのような仕事関数の低い電極材料や、マグネシウム銀合金、マグネシウムインジウム合金、アルミニウムマグネシウム合金のような、より仕事関数の低い合金が電極材料として用いられる。
【実施例】
【0119】
以下、本発明の実施の形態について、実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0120】
<合成例1:化合物1−34>
4,4’’−ビス{(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−フェニルアミノ}−1,1’:3’,1’’−ターフェニルの合成;
窒素置換した反応容器に、
4,4’’−ジブロモ−1,1’:3’,1’’−ターフェニル
8.81g、
2−(フェニルアミノ)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン
13.6g、
tert−ブトキシナトリウム 5.12g、
トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム 0.33g、
トリ−tert−ブチルホスフィンの50%(w/v)トルエン溶液
0.63mlおよび
トルエン 150ml
を加えて加熱し、2時間還流撹拌し、放冷して反応液を調整した。次いで、反応液にメタノールを加え、析出物をろ過によって採取した。析出物をクロロベンゼンに加熱溶解し、シリカゲルを用いた吸着精製を行い、続いて、活性白土を用いた吸着精製を行った。次いで、クロロベンゼン/メタノールの混合溶媒を用いた晶析を行った後、メタノールを用いた還流洗浄を行った。その結果、化合物1−34の白色粉体16.25g(収率90%)を得た。
【化16】
【0121】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H−NMR(CDCl
3)で以下の48個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=7.84(1H)
7.70−7.03(35H)
1.48(12H)
【0122】
<合成例2:化合物1−88>
4,4’’−ビス{(トリフェニレン−2−イル)−フェニルアミノ}−1,1’;4’,1’’−ターフェニルの合成;
合成例1において、
4,4’’−ジブロモ−1,1’:3’,1’’−ターフェニル
に代えて
4,4’’−ジヨード−1,1’;4’,1’’−ターフェニル
を用い、
2−(フェニルアミノ)−9,9−ジメチル−9H−フルオレン
に代えて、
(トリフェニレン−2−イル)−フェニルアミン
を用い、同様の条件で反応を行った。その結果、化合物1−88の白色粉体11.4g(収率74%)を得た。
【化17】
【0123】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H−NMR(THF−d
8)で以下の44個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.72−8.62(8H)
8.45(2H)
8.36(2H)
7.75(4H)
7.70−7.21(26H)
7.09(2H)
【0124】
<合成例3:化合物1−92>
4,4’’−ビス{N−(2−フェニル−ビフェニル−4−イル)−N−フェニルアミノ}−1,1’:4’,1’’−ターフェニルの合成;
窒素置換した反応容器に、
N−(2−フェニル−ビフェニル−4−イル)−N−フェニルアミン
13.1g、
4,4’’−ジヨード−1,1’:4’,1’’−ターフェニル
20.0g、
銅粉 0.18g、
炭酸カリウム 11.3g、
3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸 0.70g、
亜硫酸水素ナトリウム 0.86gおよび
ドデシルベンゼン 30ml
を加えて加熱し、210℃で24時間撹拌し、放冷して、混合液を得た。混合液にキシレン30mlおよびメタノール60mlを加え、析出する固体をろ過によって採取した。得られた固体をトルエンに溶解し、シリカゲルを用いた吸着精製を行った。次いで、酢酸エチルを用いた晶析、メタノールを用いた晶析を行った。続いて、クロロベンゼンを用いた再結晶による精製を行った。さらに、メタノール200mlを用いた還流洗浄を行った。その結果、化合物1−92の黄白色粉体17.0g(収率72%)を得た。
【化18】
【0125】
得られた黄白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H−NMR(CDCl
3)で以下の48個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=7.68(4H)
7.62−7.55(4H)
7.38−7.09(40H)
【0126】
<合成例4:化合物1−93>
4,4’’’−ビス{(ビフェニル−4−イル)−フェニルアミノ}−1,1’:4’,1’’:4’’,1’’’−クォーターフェニルの合成;
窒素置換した反応容器に、
N−フェニル−N−{4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3
,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル}−(1,1’−ビフェ
ニル−4−イル)アミン 18.2g、
4,4’−ジヨードビフェニル 7.5g、
2M炭酸カリウム水溶液 46ml、
トルエン 60mlおよび
エタノール 15ml
を加え、1時間窒素ガスを通気し、混合液を得た。混合液に、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム1.1gを加えて反応液を得た。反応液を加熱し、72℃で10時間撹拌した。撹拌後の反応液を室温まで冷却し、メタノール60mlを加えた。析出する固体をろ過によって採取し、メタノール/水(5/1、v/v)の混合溶液100mlで洗浄した。次いで、洗浄後の固体に1,2−ジクロロベンゼン100mlを加え、加熱することによって固体を溶解した。不溶物をろ過によって除去した後、溶解液を放冷し、メタノール200mlを加えることによって粗製物を析出させた。析出した粗製物をろ過によって採取した。粗製物を、メタノール100mlを用いて還流洗浄した。その結果、化合物1−93の薄黄色粉体11.8g(収率81%)を得た。
【化19】
【0127】
得られた薄黄色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H−NMR(CDCl
3)で以下の44個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=7.66−7.77(8H)
7.50−7.64(12H)
7.42−7.50(4H)
7.28−7.38(6H)
7.20−7.26(12H)
7.08(2H)
【0128】
<合成例5:化合物1−114>
4,4’’’−ビス{(ナフタレン−1−イル)−フェニルアミノ}−1,1’:3’,1’’:3’’,1’’’−クォーターフェニルの合成;
合成例4において、
4,4’−ジヨードビフェニル
に代えて、
3,3’−ジブロモビフェニル
を用い、
N−フェニル−N−{4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3
,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル}−(1,1’−ビフェ
ニル−4−イル)アミン
に代えて、
N−フェニル−N−{4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3
,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル}−(ナフタレン−1−
イル)アミン
を用い、同様の条件で反応を行った。その結果、化合物1−114の薄黄色粉体4.00g(収率26%)を得た。
【化20】
【0129】
得られた薄黄色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H−NMR(CDCl
3)で以下の40個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=7.99(2H)
7.92(2H)
7.78−7.85(4H)
7.35−7.61(18H)
7.19−7.28(4H)
7.06−7.15(8H)
6.98(2H)
【0130】
<合成例6:化合物1−130>
4,4’’’−ビス{(ビフェニル−4−イル)−フェニルアミノ}−1,1’:3’,1’’:4’’,1’’’−クォーターフェニルの合成;
窒素置換した反応容器に、
N−フェニル−N−{4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3
,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル}−(1,1’−ビフェ
ニル−4−イル)アミン 18.2g、
3,4’−ジブロモビフェニル 7.5g、
2M炭酸カリウム水溶液 46ml、
トルエン 60mlおよび
エタノール 15ml
を加え、1時間窒素ガスを通気して、混合液を得た。混合液にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム1.1gを加えて反応液とし、反応液を加熱し、72℃で10時間撹拌した。撹拌後の反応液を室温まで冷却し、メタノール60mlを加えた。析出する固体をろ過によって採取し、メタノール/水(5/1、v/v)の混合溶液100mlで洗浄した。次いで、かかる固体に1,2−ジクロロベンゼン100mlを加え、加熱して溶解させた。不溶物をろ過によって除去した。次いで、溶解液を放冷し、メタノール200mlを加えて粗製物を析出させた。析出した粗製物をろ過によって採取した。粗製物を、メタノール100mlを用いて還流洗浄した。その結果、化合物1−130の薄黄色粉体14.0g(収率84%)を得た。
【化21】
【0131】
得られた薄黄色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H−NMR(CDCl
3)で以下の44個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=7.00−8.00(44H)
【0132】
高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100S)によって、各合成例で得られた化合物のガラス転移点を求めた。
ガラス転移点(℃)
合成例1の化合物1−34 124
合成例2の化合物1−88 163
合成例3の化合物1−92 124
合成例4の化合物1−93 119
合成例5の化合物1−114 112
合成例6の化合物1−130 117
アリールアミン化合物Iは100℃以上のガラス転移点を有しており、薄膜状態が安定であることがわかった。
【0133】
各合成例で得られた化合物を用いてITO基板の上に膜厚100nmの蒸着膜を作製して、イオン化ポテンシャル測定装置(住友重機械工業株式会社、PYS−202)によって仕事関数を測定した。
仕事関数(eV)
合成例1の化合物1−34 5.65
合成例2の化合物1−88 5.62
合成例3の化合物1−92 5.67
合成例4の化合物1−93 5.68
合成例5の化合物1−114 5.81
合成例6の化合物1−130 5.74
アリールアミン化合物IはNPD、TPDなどの一般的な正孔輸送材料がもつ仕事関数5.5eVと比較して、好適なエネルギー準位を示しており、良好な正孔輸送能力を有していることが分かった。
【0134】
<合成例7:化合物2−1>
2−(ビフェニル−4−イル)−4−フェニル−6−{4’−(ピリジン−3−イル)ビフェニル−4−イル}ピリミジンの合成;
窒素置換した反応容器に、
2−クロロ−4−フェニル−6−{4’−(ピリジン−3−イル)ビ
フェニル−4−イル}ピリミジン 8.0g、
4−ビフェニルボロン酸 3.8g、
テトラキストリフェニルホスフィン 0.44g、
炭酸カリウム 7.9g、
トルエン 80ml、
テトラヒドロフラン 80mlおよび
水 40ml
を加えて加熱し、80℃で12時間撹拌して、反応液を得た。反応液を室温まで冷却し、分液操作によって有機層を採取した。採取した有機層を減圧下濃縮することによって粗製物を得た。粗製物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:酢酸エチル/ヘプタン)により精製し、次いで、テトラヒドロフラン/アセトンの混合溶媒を用いた再結晶による精製を行った。その結果、化合物2−1の白色粉体3.0g(収率30%)を得た。
【化22】
【0135】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H−NMR(CDCl
3)で以下の27個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=8.94(1H)
8.83(2H)
8.64(1H)
8.43−8.32(4H)
8.07(1H)
7.97−7.35(18H)
【0136】
<合成例8:化合物2−2>
2−{4−(ナフタレン−1−イル)フェニル}−4−フェニル−6−{4’−(ピリジン−3−イル)ビフェニル−4−イル}ピリミジンの合成;
合成例7において、
4−ビフェニルボロン酸
に代えて
{4−(ナフタレン−1−イル)フェニル}ボロン酸
を用い、同様の条件で反応を行った。その結果、化合物2−2の白色粉体1.6g(収率15%)を得た。
【化23】
【0137】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H−NMR(CDCl
3)で以下の29個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=9.00−8.81(3H)
8.65(1H)
8.51−8.28(4H)
8.11−7.32(21H)
【0138】
<合成例9:化合物2−16>
2−{4−(ナフタレン−1−イル)フェニル}−4−(ナフチル−1−イル)−6−{4’−(ピリジン−3−イル)ビフェニル−4−イル}ピリミジンの合成;
窒素置換した反応容器に、
2−クロロ−4−(ナフチル−1−イル)−6−{4’−(ピリジン
−3−イル)ビフェニル−4−イル}ピリミジン 4.5g、
{4−(ナフタレン−1−イル)フェニル}ボロン酸
2.61g、
テトラキストリフェニルホスフィン 0.22g、
炭酸カリウム 3.97g、
トルエン 45ml、
エタノール 11.3mlおよび
水 14.4ml
を加えて加熱し、70℃で12時間撹拌して反応液を得た。反応液を室温まで冷却し、分液操作によって有機層を採取した。採取した有機層を減圧下濃縮することによって粗製物を得た。粗製物をカラムクロマトグラフ(担体:シリカゲル、溶離液:酢酸エチル/ヘプタン)により精製し、次いで、トルエン/アセトンの混合溶媒を用いた再結晶により精製した。その結果、化合物2−16の白色粉体3.0g(収率49.2%)を得た。
【化24】
【0139】
得られた白色粉体についてNMRを使用して構造を同定した。
1H−NMR(CDCl
3)で以下の31個の水素のシグナルを検出した。
δ(ppm)=9.00−8.81(2H)
8.65(1H)
8.51−8.28(2H)
8.20−7.35(26H)
【0140】
高感度示差走査熱量計(ブルカー・エイエックスエス製、DSC3100S)を用い、各合成例で得られたピリミジン誘導体のガラス転移点を求めた。
ガラス転移点(℃)
合成例8の化合物2−2 104
合成例9の化合物2−16 115
ピリミジン誘導体IIは100℃以上のガラス転移点を有しており、薄膜状態が安定であることがわかった。
【0141】
各合成例で得られたピリミジン誘導体を用いてITO基板の上に膜厚100nmの蒸着膜を作製して、イオン化ポテンシャル測定装置(住友重機械工業株式会社、PYS−202)によって仕事関数を測定した。
仕事関数(eV)
合成例7の化合物2−1 6.61
合成例8の化合物2−2 6.56
合成例9の化合物2−16 6.56
ピリミジン誘導体IIはNPD、TPDなどの一般的な正孔輸送材料がもつ仕事関数5.5eVより深い値を有しており、大きな正孔阻止能力を有していることが分かった。
【0142】
<素子実施例1>
ガラス基板1上に透明陽極2としてITO電極をあらかじめ形成したものの上に、正孔注入層3、第一正孔輸送層4、第二正孔輸送層5、発光層6、電子輸送層7、電子注入層8および陰極(アルミニウム電極)9の順に蒸着し、
図1に示すような有機EL素子を作製した。
【0143】
具体的には、膜厚150nmのITOを成膜したガラス基板1を、イソプロピルアルコール中にて20分間超音波洗浄をし、200℃に加熱したホットプレート上にて10分間乾燥した。その後、15分間UVオゾン処理し、真空蒸着機内に取り付けた。次いで、真空蒸着畿内を0.001Pa以下まで減圧した。
続いて、正孔注入層3を形成した。具体的には、透明陽極2を覆うように下記構造式のHIM−1を蒸着し、膜厚5nmの正孔注入層3を形成した。
【化25】
次いで、第一正孔輸送層4を形成した。具体的には、正孔注入層3の上に下記構造式で表される化合物4−1を蒸着し、膜厚60nmの第一正孔輸送層4を形成した。
【化26】
次いで、第二正孔輸送層5を形成した。具体的には、第一正孔輸送層4の上に合成例3の化合物1−92を蒸着し、膜厚5nmの第二正孔輸送層5を形成した。
【化27】
次いで、発光層6を形成した。具体的には、第二正孔輸送層5の上に下記構造式の化合物EMD−1と下記構造式の化合物EMH−1を、EMD−1:EMH−1=5:95となる蒸着速度で二元蒸着し、膜厚20nmの発光層6を形成した。
【化28】
次いで、電子輸送層7を形成した。具体的には、発光層6の上に合成例9のピリミジン誘導体2−16と下記構造式の化合物ETM−1を、化合物2−16:ETM−1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着し、膜厚30nmの電子輸送層7を形成した。
【化29】
次いで、電子注入層8を得た。具体的には、電子輸送層7の上にフッ化リチウムを蒸着し、膜厚1nmの電子注入層8を形成した。
最後に、アルミニウムを100nm蒸着して陰極9を形成した。
【0144】
<素子実施例2>
素子実施例1において、第二正孔輸送層5の材料として合成例3の化合物1−92に代えて合成例6の化合物1−130を用いた点以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。作製した有機EL素子について、大気中、常温で直流電圧を印加したときの発光特性を測定した。測定結果を表1にまとめて示した。
【化30】
【0145】
<素子比較例1>
素子実施例1において、第二正孔輸送層5の材料として合成例3の化合物1−92に代えて前記化合物4−1を用いた点以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。この場合、第一正孔輸送層4と第二正孔輸送層5は一体の正孔輸送層(膜厚65nm)として機能した。
【0146】
<素子比較例2>
素子実施例1において、第二正孔輸送層5の材料として合成例3の化合物1−92に代えて前記化合物4−1を用いた点、および電子輸送層7の材料として合成例9のピリミジン誘導体2−16に代えて下記構造式のアントラセン誘導体ETM−2(国際公開第2003/060956号参照)を用い、ETM−2とETM−1を、ETM−2:ETM−1=50:50となる蒸着速度で二元蒸着した点以外は、同様の条件で有機EL素子を作製した。
【化31】
【0147】
素子実施例1〜2および素子比較例1〜2で作製した有機EL素子について、大気中、常温で直流電圧を印加したときの発光特性を測定した。測定結果を表1に示した。
【0148】
素子実施例1〜2および素子比較例1〜2で作製した有機EL素子を用いて、素子寿命を測定した。具体的には、発光開始時の発光輝度(初期輝度)を2000cd/m
2として定電流駆動を行った時、発光輝度が1900cd/m
2(初期輝度を100%とした時の95%に相当:95%減衰)に減衰するまでの時間を測定した。結果を表1に示した。
【0149】
【表1】
【0150】
電流密度10mA/cm
2の電流を流したときの発光効率について、公知の電子輸送材料を用いた素子比較例2では6.35cd/Aであったが、ピリミジン誘導体IIを用いた素子比較例1では7.95cd/Aであり、即ち、高効率となった。第二正孔輸送層の材料としてアリールアミン化合物Iを用いた素子実施例1〜2では9.76〜9.85cd/Aであり、即ち、さらに高効率となった。
【0151】
電力効率について、公知の電子輸送材料を用いた素子比較例2では5.20lm/Wであったが、ピリミジン誘導体IIを用いた素子比較例1では6.65lm/Wであり、即ち、高効率となった。第二正孔輸送層の材料としてアリールアミン化合物Iを用いた素子実施例1〜2では8.24〜8.26lm/Wであり、さらに高効率となった。
【0152】
素子寿命について、公知の電子輸送材料を用いた素子比較例2の有機EL素子では55時間であったが、ピリミジン誘導体IIを用いた素子比較例1では83時間であり、即ち長寿命化した。第二正孔輸送層の材料としてアリールアミン化合物Iを用いた素子実施例1〜2では116〜150時間であり、さらに長寿命化した。
【0153】
本発明の有機EL素子は、発光層へ正孔および電子を効率良く注入・輸送できるように、特定の構造を有するアリールアミン化合物Iと特定の構造を有するピリミジン誘導体IIを組み合わせることにより、高発光効率、長寿命の有機EL素子を実現できる。さらに、特定の構造を有するトリアリールアミン化合物IIIまたはIVを第一正孔輸送層の材料とすることにより、第一正孔輸送層の材料と第二正孔輸送層の材料が、発光層へ正孔をより効率良く注入・輸送できるような組み合わせになり、即ち、キャリアバランスをより精緻化した材料の組合せとなっている。そのため、本発明の有機EL素子は、従来の有機EL素子と比較して、高発光効率であり、より長寿命である。