(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について、図面を参照して説明する。
【0012】
MAN Diesel & Turboによって設計されたインジェクタ弁は、2ストローク燃焼エンジンのためのものである。このインジェクタ弁は、メタノール、エタノール、LPG、又はDMEなどのような低引火点燃料で燃焼エンジンを駆動するように設計されている。
【0013】
インジェクタ弁には、シーリング油、制御油、パージ油、及び燃料として液化ガスが供給される。シーリング油は、液化ガスの内部漏れがインジェクタ弁の意図しない領域に入るのを防止するためのものである。制御油は、液化ガスが燃焼室に送達されることになるタイミング及び負荷を制御するためのものである。パージ油は、エンジンが動作していないときインジェクタ弁内に残された液化ガスを除去するためのものである(パージ油を与えることにより、吸込弁が開くことになり、液化ガスを燃料レールに押し戻すことができる)。液体燃料は、8barの圧力で一定にインジェクタ弁に供給される。
【0014】
エンジンの通常動作中、インジェクタ弁には、燃料レールからインジェクタ弁のポート24a(
図22)に8barの圧力の液化ガスが供給される(4つのポート24aがある)。液化ガスは、チャネル24(
図18)、及び吸込弁(
図15)を通って、インジェクタ弁内のチャンバ48(
図11)に流れる。制御油は、ポート27a(
図22)に供給される。パージ油(油圧鉱油)は、ポート46a(
図22)に供給される。シーリング油(油圧鉱油)は、ポート47aに供給され、そこからチャネル12a(
図19)を通って流れ、ピストン7を囲むチャンバ51(
図19)及びニードル13を囲むチャンバ50に入る。エンジンが作動中であるとき、シーリング油には、150〜200barの圧力が印加される。漏れ油は、ポート28a(
図22)から出る。パージ油は、ポート46a(
図22)に供給され、そこからチャネル25(
図20)を通り、吸込弁(
図15)に流れる。
【0015】
インジェクタ弁は、以下のように働く。
− 8barの圧力を印加された液化ガスが吸込弁を通って流れる。吸込弁内のピストン16がばね17(
図15)により押し下げられているので、吸込弁は常時閉である。液化ガスに8barの圧力が印加されたとき、ピストン16が上げられ、液化ガスは、チャンバ48(
図19)に流れることができる。8barの圧力は、ピストン7、6(
図19)を上げることになる。
− 制御油にポート27(
図11)を通じて300barの圧力が印加されたとき、制御油がチャンバ49を通って流れ、ピストン6、7を押し下げることになる。その結果、液化ガスがチャンバ48内で圧縮され、チャネル18、18aを通じてチャンバ52(
図21)に押し出される。チャンバ52内の圧力がニードル13を上げ、液体がインジェクタ弁のノズル20(
図7)を通ってスプレーされることになる(燃焼室に噴射)。ニードル13を上げるためには、ニードル13を押下するばね21からの力より大きい圧力からの力を有することが必要である。
− 制御油が与えられるとき、少量の制御油は、脱気弁38(
図17)が閉じるまでそこを通って流れることになる(閉弁圧は5barである)。脱気弁38の機能は、チャンバ49内で制御油を循環させ、チャンバ49を脱気することである(
図11)。
− 噴射後、制御油は解放されることになり、8barの圧力の液化ガスは、ピストン7、6を再び上げることになる。
【0016】
エンジンが停止するとき、液化ガスをチャンバ48から除去することが必要である。パージ油に300barの圧力が印加されたとき、油圧油がチャネル25(
図20)及びチャネル26(
図10)を通って流れ、ピストン16(
図10)を上げることになる。その後、制御油が与えられることになり、ピストン7が液化ガスをチャンバ48から吸込弁を通じてチャネル24に、また液化ガスのレールに押し出すことになる。パージ油は、吸込弁(常時閉である)を開くためのものである。吸込弁は、一方向弁である。
【0017】
インジェクタ弁1は、
図14に示されているホルダ2内に配置される。インジェクタ弁1は、2つのナット4により締め付けられるプレート3により押下される。インジェクタ弁は、シーリング油が与えられるポート11(
図4)と、制御油が与えられるポート12とを有する。また、燃料入口オイルが供給されるポート14(
図5)と、パージ油が供給されるポート19(
図9)とを有する。また、漏れホースを通じてスプレーチャンバ29(
図14)に接続されるポート28(
図11)と、漏れホースを通じてスプレーチャンバ29に接続されるポート33(
図5)とを有する。また、ポート30及びポート31(
図11)を有し、これらは、スプレーチャンバ29に接続される。また、制御油が供給されるポート27(
図11)と、漏れホースを通じてスプレーチャンバ29に接続されるポート28とを有する。
【0018】
10cStの粘度を有する油圧鉱油がテストのために使用される。
【0019】
図24に示されているテストシステムは、タンク240からの油の、最大1000barの油圧油圧力を提供することができる空気駆動ポンプ219を含む。ポンプ219は、手動操作される空気圧レギュレータ202により制御される。ポンプ219もまた、空気圧方向弁213によって操作される。油圧は、デジタル計器216にて表示される。デジタル計器は、圧力発信器(コンバータ)から4〜20mAの電気信号を受信する。デジタル計器216は、セレクタ230によって異なるモードに設定することができる。デジタル計器216は、圧力発信器から電気信号を受信し、その信号に応答して方向弁203を操作する。デジタル計器216は、セレクタ230によって設定されたモードに応答して、空気圧方向弁213を開閉する。ポンプ219からの油圧は、逃がし弁201によって解放することができ、その場合、解放された油圧油は、タンク240に流れて戻ることになる。また、ポンプ219は、タンク240から油圧油を吸い上げ、燃料インジェクタ弁用の制御油として使用される油圧油圧力を生成する。ポンプ219の出口パイプラインには、手動操作式のオン/オフ弁224、222が装着されている。オン/オフ弁224を開閉することによって、油圧アキュムレータ225をチャージすることができる。安全弁が、油圧アキュムレータ225の最大圧力に調整される。
【0020】
テストシステムは、第2の空気駆動ポンプ218をも含む。このポンプもまた、タンク240から油圧油を吸い上げ、空気圧レギュレータ204によって制御される。レギュレータ204を調整することにより、ポンプ218からの油圧油圧力を特定の値に調整することができる。圧力計214は、ポンプ218からの油圧油圧力を示す。ポンプ218からの油圧は、逃がし弁203によって解放することができる。圧力レギュレータにより、ポンプ218からの最大油圧を調整することができる。ポンプ218からの圧力下の油は、
図24に示されている異なる区間に適用されるシーリング油、燃料入口及びパージ油として使用される。シーリング油区間では、ポンプ218からの油圧油が減圧弁226及び油圧方向弁210を通って燃料インジェクタ弁に流れ、シーリング油圧力が圧力計に表示される。油圧方向弁210は、2つの位置を有する。第1の位置では、油が燃料インジェクタ弁からタンク241に流れることができ、第2の位置では、油圧油がポンプ218からインジェクタ弁に流れることができる。燃料入口区間では、油圧油は、ポンプ218から減圧弁227、油圧減速弁(hydraulic reduction valve)209、及び止め弁208を通って燃料インジェクタ弁に流れることができ、燃料入口圧力が圧力計206に示される。油圧方向弁は、2つの位置を有する。第1の位置では、油が燃料インジェクタ弁からタンク241に流れることができる。第2の位置では、油圧油がポンプ218から燃料インジェクタ弁に流れることができる。止め弁208を閉じることにより、燃料インジェクタ弁における燃料入口圧力が増大しつつある場合、その圧力を圧力計206で見ることが可能である。パージ油区間では、油圧油がポンプ218から油圧方向弁211を通って燃料インジェクタ弁に流れ、パージ油圧力が圧力計に示される。方向弁211は、2つの位置を有する。第1の位置では、油が燃料インジェクタ弁からタンク241に流れることができ、第2の位置では、油圧油がポンプ218から燃料インジェクタ弁に流れることができる。減圧弁226、227により、ポンプ218からの油圧は、3つの異なる値を有することができる。
【0021】
テストシステムは、2つのタンク240、241を有する。第1のタンク240には、油圧鉱油が充填される。第2のタンク241は、燃料インジェクタ弁から収集される油圧油を含む。タンク241内の油圧油は、燃料インジェクタ弁からのメタノールを含むことができる。
【0022】
1.インジェクタ弁の洗浄工程
インジェクタ弁1は、エンジンから取り外されたとき、例えばチャンバ48、チャネル18、18a、及びノズル20内にメタノールを含むことがあるため、洗浄デバイス(
図23)内に配置しなければならない。インジェクタ弁1内に残されたメタノールは、テストすることができるようになる前にフラッシング除去しなければならない。
【0023】
図23に示されている洗浄システムは、4つの車輪を有する可動ユニットとして構築される。洗浄システムは、タンク100及び油圧システムからなる。タンク100は、2つの弁ホルダを含む。この洗浄システムにより、2つの燃料インジェクタ弁を同時に安全に輸送することが可能である。エンジンのシリンダヘッドから取り外された燃料インジェクタ弁は、何らかのメタノールを含むことがある。インジェクタ弁を弁ホルダの1つに配置することにより、安全に工作室に輸送することができる。
【0024】
洗浄システムは、空気圧レギュレータにより制御される空気駆動油圧ポンプ104を含む。ポンプ104は、タンクからフィルタ105を通してフラッシング液を吸い上げる。ポンプ104からのフラッシング液の圧力は、圧力計に示される。ポンプからのフラッシング液の圧力は、逃がし弁によって解放することができる。ポンプ104の出口には、安全弁107が位置する。タンク100は、水95%、潤滑添加剤5%の混合物であるフラッシング液で充填される。メタノールは、水に溶解することができる。
【0025】
洗浄システムを使用することにより、燃料インジェクタ弁をフラッシングし、(燃料インジェクタ弁内に残されている可能性がある)メタノールを除去することができる。燃料インジェクタ弁からの少しの噴射により、燃料インジェクタ弁内に残るメタノールがフラッシング除去されることになる。フラッシング工程中、ポンプからのフラッシング液は、洗浄システムから燃料インジェクタ弁に与えられる。
【0026】
燃料インジェクタ弁のフラッシングの後、燃料インジェクタ弁を取り外し修繕することができる。
【0027】
洗浄工程は、以下のように実施される。
− 洗浄液のホースを、チャネル24(
図10)に接続されるポート106(
図23)に接続する(シーリング油及び制御油は、ポート27及びポート47に供給される)。
− ポンプへの戻り弁203(
図24)を閉じる。
− 圧力計214に300barの圧力が示されるまで戻り弁204及びポンプにより圧力を増大する。
− シーリング油を供給するために方向弁210を位置「ON」に切り替える。
− 弁103(
図23)を閉じる。
− 制御弁101(
図23)によりフラッシング液圧力を8barに増大する。フラッシング液は、吸込弁を通って流れ、チャンバ48を充填することになる。フラッシング液は、水と潤滑/耐食添加剤の混合物である。
− セレクタ230を「CLEANING(洗浄)」位置に設定する(
図24)
− 戻り弁201を閉じる。
− 弁224を開く。
− 出口弁222を閉じる。
− 約200barで自動的にオフに切り替わるまで、制御弁202及びポンプにより制御油の圧力を増大する。圧力は、ディスプレイ216に示される。制御油圧力は、油圧アキュムレータ225(
図24)内に蓄積される。
− 出口弁222を素早く開く。次に、制御油がアキュムレータ225から解放され、チャネル44(
図11)を通ってチャンバ49に流れ、ピストン6、7を押し下げることになる。ピストン7は、液体をチャンバ48からチャネル18、18aを通じてノズル20(
図7)へ押すことになり、液体は、チャンバ29にスプレーされることになる。
− 洗浄工程は、数回繰り返す必要がある。
【0028】
2.燃料インジェクタ弁のテスト
(1) 上部カバー5及びピストン6、7をインジェクタ弁から取り外す必要がある。
− シールリング9を有する接続部片8を、ねじ10により装着する必要がある。
− インジェクタ弁が弁ホルダ2内に配置される。
【0029】
(2)開弁圧のテスト
− セレクタ230を「OPEN PRESSURE(開弁圧)」位置に設定する。
− 弁203を閉じる。
− 弁204により圧力を最大300barに増大する。
− 弁201を閉じる。
− シーリング油をポート11に与えるために方向弁210を「ON」に切り替える。次に、シーリング油は、ポート12を通ってニードル13及び接続部片8に流れることになる。
− 8barの圧力の燃料油をポート14に与えるために、方向弁209を位置「ON」に切り替える。次に、燃料油は、吸込弁を通ってチャネル15(
図6)に流れることになる。
図15に示されている吸込弁は、常時閉である。8barの燃料入口油圧が、ばね17に抗してピストン16を上げる。燃料入口油圧がない場合、ピストン16は、ばね17により押下され、その結果、吸込弁は閉じたままとなる。
− 弁222を開く。
− 弁224を閉じる。
− 開弁圧に達し、噴射弁がチャンバ29内でスプレーするまで、制御弁202(
図24)により制御油圧を増大する。測定された開弁圧がディスプレイ16に示される。ポンプは自動的に停止する。制御油圧力が圧力制御弁202によって増大される。次に、ポート12に供給される制御油は、チャネル15及びチャネル18、18aを通ってニードル13に流れることになる。ニードル13は、ばね21により押し下げられている。開弁圧に達したとき、ニードル13が上げられ(同時に、ばね21が圧縮されることになる)、接続部22(
図7)が開くことになり、油がノズル20からスプレーチャンバ29にスプレーされることになる。
− 方向弁209を位置「OFF」に切り替える。
− 方向弁210を位置「OFF」に切り替える。
− 圧力制御弁202を開き、反時計回りに回す。
− 弁201を開き、制御油圧力を解放する。
【0030】
3.ノズルシールのテスト
− セレクタ230を「NOZZLE SEAL(ノズルシール)」位置に設定する。
− 弁201を閉じる。
− 方向弁209をONに切り替える。
− 方向弁210をONに切り替える。
− 弁222を開く。
− 弁224を閉じる。
− 圧力制御弁202により圧力を開弁圧未満の20barに増大する。
− 弁208を閉じる。
− 圧力計206に示される圧力はゼロであるはずである。漏れがある場合、圧力計206の圧力は増大することになる。次に、吸込弁が閉であるかどうかチェックされることになる。接続が耐密でない場合、圧力計206に示される圧力が増大することになる。制御油は、チャネル15から接続部23を通ってチャネル24に流れようとする。制御油は、チャネル15からチャネル18、18aを通ってチャンバ52に流れる。接続部22(
図7)を通る漏れがある場合、油がノズル20(
図7)から滴ることになる。
− 方向弁210をOFFに切り替える。
− 圧力制御弁202を反時計回りに回すことによって開く。
− 弁201を開く。
− 弁208を開く。
【0031】
4.パージ機能のテスト
− セレクタ230をパージ機能に設定する。
− 弁201を閉じる。
− 弁222を開く。
− 弁224を閉じる。
− 方向弁211を位置ONに切り替える。次に、ポート19に与えられたパージ油がチャネル25及びチャネル26を通って流れることになる。パージ油の圧力が、ピストン16を押し上げ、その結果、接続部23が開く。
− 圧力制御弁202によって圧力を増大しようと試みる。パージ機能が正しく動作している場合、制御油がチャネル15から吸込弁を通ってチャネル24に流れることになるので、ディスプレイ216に示されている制御油圧力を増大することが可能でないことになる。
− 方向弁211をOFFに切り替える。
− 圧力制御弁202を反時計回りに回すことによって開く。
− 弁201を開く。
【0032】
5.脱気弁機能のテスト
− ピストン6及びピストン7をインジェクタ弁に装着し、上部カバー5を装着する。
− セレクタ230を脱気弁位置に設定する。
− 方向弁210を「ON」に切り替える。
− 方向弁209を「ON」に切り替える。
− 弁201を閉じる。
− 弁222を閉じる。
− 弁224を開く。
− 圧力制御弁202によって、(約160barで)自動的にオフに切り替わるまで、制御油圧力を増大する。制御油圧力は、油圧アキュムレータ225内に蓄積される。
− 弁222を素早く開く。次に、アキュムレータ225内に蓄積された制御油が、チャネル44(
図11)を通ってポート41(
図17)に流れ、ピストン43を押すことになり、その結果、脱気弁内の接続部40が閉じられることになる(その結果、油は、脱気弁38を通って流れることができない)。脱気弁38が開かれたとき、制御油は、ポート41からポート42に流れることができる(制御油は、チャネル44(
図11)から脱気弁38を通って、スプレーチャンバ29に接続されるポート28(
図11)に流れることができる)。接続部40は、ピストン43を「開」位置で保つばね39により常時開である。
− 次に、制御油圧力は、脱気弁38の開弁圧に達するまで、ゆっくり低下することになる。脱気弁38が開いたとき、開弁圧は、ディスプレイ216で不変になる。
− 方向弁210をOFFに切り替える。
− 方向弁209をOFFに切り替える。
− 圧力制御弁202を反時計回りに回すことによって開く。
− 弁201を開く。
【0033】
Oリング32(
図11)が封止(seal)していない場合、油がポート30から漏れていることになる。Oリング32aが封止していない場合、油がポート31から漏れていることになる。
【0034】
シール34、34a、35、及びシール35a、及びシール36、36aで漏れがある場合、それらの漏れは、チャネル37を通ってポート31に流れることになる。
【0035】
開弁圧をチェックすることによって脱気弁の機能をチェックすることが重要である。