(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807875
(24)【登録日】2020年12月10日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】エレベータシステムの乗り心地を測定及び診断するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20201221BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
B66B5/00 G
B66B3/00 R
【請求項の数】14
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-562960(P2017-562960)
(86)(22)【出願日】2016年2月23日
(65)【公表番号】特表2018-505114(P2018-505114A)
(43)【公表日】2018年2月22日
(86)【国際出願番号】US2016019080
(87)【国際公開番号】WO2016137960
(87)【国際公開日】20160901
【審査請求日】2019年2月25日
(31)【優先権主張番号】62/120,068
(32)【優先日】2015年2月24日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591020353
【氏名又は名称】オーチス エレベータ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Otis Elevator Company
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・スコット・コープランド
(72)【発明者】
【氏名】ソウミトラ・ボルタクール
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル・ラッシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジンホ・ソン
【審査官】
加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−247470(JP,A)
【文献】
特開2006−117435(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00
B66B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モバイルデバイスに保存されたコンピュータアプリケーションを通じた、エレベータかごを含むエレベータシステムの乗り心地の測定及び診断方法であって、
(a)前記モバイルデバイスを用いて乗り心地データを取得するステップと、
(b)前記モバイルデバイスを用いて乗り心地データを外部コンピューティングデバイスに送信するステップと、
(c)前記取得した乗り心地データと既定のシステムデータとを比較して性能データを作成するステップと、
(d)前記性能データに少なくともある程度基づいて乗り心地診断を決定するステップと、及び
(e)前記乗り心地診断を前記モバイルデバイスに送信するステップと、
を含み、
前記ステップ(c)は、前記モバイルデバイスを前記エレベータかごの内壁面に設置することと、前記外部コンピューティングデバイスが、受信した乗り心地データと前記既定のシステムデータとを比較して、前記乗り心地データが前記既定のシステムデータの許容範囲内にあるか否かを決定することと、をさらに含み、
前記ステップ(d)は、前記乗り心地データが許容範囲外である場合には、前記外部コンピューティングデバイスが、前記受信した乗り心地データを解析し、可能性がある問題点を特定することをさらに含む方法。
【請求項2】
ステップ(a)が、さらに、前記モバイルデバイスを動作させて複数個の既定のエレベータ構成からあるエレベータ構成を選択することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記モバイルデバイスが、前記外部コンピューティングデバイスと無線通信する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記乗り心地データが、騒音データ及び振動データを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(c)が、さらに、前記エレベータかごにある距離を移動するように命令することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)が、さらに、前記モバイルデバイスを動作させて前記乗り心地データが許容範囲内にあるか否かを決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
エレベータかごを含むエレベータシステムと、
前記エレベータかご内に位置付けられており、乗り心地データを測定するように構成されたモバイルデバイスと、
前記モバイルデバイスと通信し、乗り心地診断を前記モバイルデバイスに送信するように構成された外部コンピューティングデバイスと、
を備え、
前記外部コンピューティングデバイスが、受信した乗り心地データと既定のシステムデータとを比較して、前記乗り心地データが前記既定のシステムデータの許容範囲内にあるか否かを決定し、
前記乗り心地データが許容範囲外である場合には、前記外部コンピューティングデバイスは、前記受信した乗り心地データを解析し、可能性がある問題点を特定し、
前記モバイルデバイスが、前記エレベータかごの内壁面に設置されるように構成されている、前記エレベータシステムの乗り心地を測定及び診断するためのシステム。
【請求項8】
前記モバイルデバイスが、複数個の既定のエレベータ構成からあるエレベータ構成を選択し、乗り心地データを取得して送信するように構成された、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記外部コンピューティングデバイスが、さらに、前記取得した乗り心地データと既定のシステムデータとを比較するように構成された、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記モバイルデバイスが、第一の信号を測定するように構成された第一の検出器、及び第二の信号を測定するように構成された第二の検出器を備えた、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
前記第一の検出器が、加速度計を備えており、前記第二の検出器が、音声を測定するためのデバイスを備えた、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第一の信号が振動を含み、前記第二の信号が騒音を含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記モバイルデバイスが、前記外部コンピューティングデバイスと無線通信する、請求項7に記載のシステム。
【請求項14】
前記乗り心地データが、騒音データ及び振動データを含む、請求項7に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2015年2月24日に出願された米国仮特許出願第62/120,068号に関連し、その優先権利益を主張し、その内容をそれらの全体において本開示に組み込む。
【背景技術】
【0002】
ここに開示した実施形態は、概してエレベータシステムに関し、特に、エレベータシステムの乗り心地を測定及び診断するシステム及び方法に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般に、エレベータ騒音及び振動の専門家は、頻繁に、記録されたデータ及び製品知識を使用することによって、エレベータシステム内部の問題を修理及び診断することができる。一般的に、これには、高価な、大きな、専門の音声及び振動管理機器とともに、知識豊富な現地要員をエレベータ現場に送る必要があった。それ故に、より小さいかつ費用効果的な機器を用いて、エレベータシステムの問題を測定、診断及び修理するためのシステム及び方法に対する要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様において、エレベータシステムの乗り心地を測定及び診断するためのシステムが提供される。システムは、エレベータかご及びモバイルデバイスを含むエレベータシステムを含む。エレベータシステムは、エレベータかごに昇降路の全体にわたって移動するよう命令するように構成される。モバイルデバイスは、メモリに保存されたプログラムを動作するように構成される。モバイルデバイスは、第一の信号を測定し、第二の信号を測定し、そして第一の信号及び第二の信号に少なくともある程度基づいて診断メッセージを表示する。モバイルデバイスは、第一の信号を測定するように構成された第一の検出器も含む。一実施形態において、第一の検出器は、振動を測定するように構成された加速度計を含む。モバイルデバイスは、さらに、第二の信号を測定するように構成された第二の検出器を含む。一実施形態において、第二の検出器は、音声を測定するためのデバイスを含む。
【0005】
システムは、さらに、モバイルデバイスと通信する外部コンピューティングデバイスを含む。モバイルデバイスと外部コンピューティングデバイスとは、それらの間でデータ交換するように構成される。一実施形態において、モバイルデバイスは、外部コンピューティングデバイスと無線通信する。
【0006】
一態様において、エレベータシステムの乗り心地を測定及び診断するための方法が提供される。方法は、モバイルデバイスを動作させて複数個のエレベータ構成からあるエレベータ構成を選択し、モバイルデバイスを動作させて乗り心地データを取得するステップを含む。一実施形態において、モバイルデバイスを動作しての乗り心地データの取得は、エレベータかごにある距離を移動するように命令することと、モバイルデバイスをエレベータかごの内面に設置することと、を含む。一実施形態において、乗り心地データは、騒音データ及び振動データを含む。
【0007】
一実施形態において、方法は、モバイルデバイスを動作させて乗り心地データが許容範囲内にあるか否かを決定するステップを含む。取得した乗り心地データが許容範囲内にある場合には、方法は、モバイルデバイスを動作させて取得した乗り心地データを外部コンピューティングデバイスに送信するステップに進む。
【0008】
方法は、さらに、外部コンピューティングデバイスを動作させて、性能データに少なくともある程度基づいて乗り心地診断を実行するステップと、外部コンピューティングデバイスを動作させて乗り心地診断をモバイルデバイスに送信するステップと、を含む。
【0009】
本明細書に包含される実施形態及び他の特徴、利点及び開示、ならびにそれらを実現する様式が、明らかになり、本開示は、添付の図面と併用される本開示のさまざまな例示の実施形態の以下の記載を参照することによって、より良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】エレベータシステムの乗り心地を測定及び診断するためのシステムの概略図の例示である。
【
図2】エレベータシステムの乗り心地を測定及び診断するための方法の概略フロー図の例示である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の原理の理解を促進する目的のために、図面に例証される実施形態がここで参照され、具体的な言葉を使用してその実施形態を記載する。それでもなお、それによって本開示の範囲を限定することが全く意図されないことが理解される。
【0012】
図1は、概して10で示される、エレベータシステム12の乗り心地を測定及び診断するためのシステムを例証する。エレベータシステム12は、エレベータかご14及び釣合おもり16を含む。ローピング配置(arrangement)18(例えば、円形ロープまたは平ベルト)が、公知の様式において、エレベータかご14及び釣合おもり16の重量を支える。エレベータマシン20は、牽引滑車24に付随するモータ22を含む。モータ22は、選択的に、牽引滑車24を運動させ、ローピング配置18を対応して運動させて、昇降路内のエレベータかご14の位置及び運動を制御する。いくつかの条件下では、例えば、釣合おもり16の重量は、釣合おもり16が降下できるときにエレベータかご14を昇降路内で上昇させるように当てにすることができる。例示的なエレベータマシン20は、モータ22に電力を付与する駆動部26を含む。
【0013】
システム10は、さらに、モバイルデバイス30を含む。モバイルデバイス30が、本明細書に開示した機能を実行するよう動作可能な任意のモバイルデバイス、例えば、携帯電話、タブレットデバイス、もしくは屋外に居る人が運ぶことができる任意のデバイス、または多少の非限定的な実施例を指定する他の機構であっても良いことが認識される。モバイルデバイス30は、メモリ(図示せず)に保存されたプログラムを動作するように構成される。モバイルデバイス30は、第一の信号を測定し、第二の信号を測定し、そして第一の信号及び第二の信号に少なくともある程度基づいて診断メッセージを表示する。モバイルデバイス30は、第一の信号を測定するように構成された第一の検出器32を含む。一実施形態において、第一の検出器32は、振動を測定するように構成された加速度計を含む。モバイルデバイス30は、さらに、第二の信号を測定するように構成された第二の検出器34を含む。一実施形態において、第二の検出器34は、音声を測定するためのデバイス、例えば、マイクロフォンを含む。モバイルデバイス30は、外部コンピューティングデバイス36と通信する。モバイルデバイス30と外部コンピューティングデバイス36とは、それらの間でデータ交換するように構成される。一実施形態において、モバイルデバイス30は、外部コンピューティングデバイス36と無線通信する。外部コンピューティングデバイス36は、一つの非限定的な実施例を指定するためのウェブサーバを含むことができることが認識される。
【0014】
図2は、概して100で示される、本明細書に記載するようなシステム10を利用するエレベータシステム12の乗り心地の測定及び診断方法を例証する。方法100は、モバイルデバイス30を動作させて複数個のエレベータ構成からあるエレベータ構成を選択するステップ102を含む。例えば、ユーザは、一連のドロップダウンメニューを通じてエレベータシステム12の具体的なモデルを特定することを、モバイルデバイス30のメモリに保存されたプログラムによってプロンプトされることができる。
【0015】
方法100は、さらに、モバイルデバイス30を動作させて乗り心地データを取得するステップ104を含む。一実施形態において、モバイルデバイス30を動作しての乗り心地データの取得は、エレベータかご14にある距離を移動するように命令することと、モバイルデバイス30をエレベータかご14の内面に設置することと、を含む。一実施形態において、乗り心地データは、騒音データ及び振動データを含む。例えば、ユーザは、エレベータかご14を上方方向または下方方向のいずれかに移動させることをリクエストする信号を駆動部26に送る。次に、ユーザは、モバイルデバイス30をエレベータかご14の内面に設置する。第一の検出器32が、エレベータかご14の振動を測定し、第二の検出器34が、エレベータかご14が所望の方向に移動するときの昇降路内の音声を測定する。
【0016】
一実施形態において、方法は、モバイルデバイス30を動作させて乗り心地データが許容範囲内にあるか否かを決定するステップ106を含む。例えば、モバイルデバイス30が振動を測定した後、ユーザが見るために、取得した乗り心地データをモバイルデバイス30に提示することができる。次に、ユーザは、取得した乗り心地データを容認または拒否する選択を有することができる。取得した乗り心地データが拒否された場合には、ユーザは、乗り心地データを取得するステップ104を繰り返す。
【0017】
取得した乗り心地データが許容範囲内にある場合には、方法は、モバイルデバイス30を動作させて取得した乗り心地データを外部コンピューティングデバイス36に送信するステップ108に進む。モバイルデバイス30が取得した乗り心地データを外部コンピューティングデバイス36に送信して、取得した乗り心地データと既定のシステムデータとを比較して性能データを作成するステップ110が実行される。例えば、特定のエレベータ構成に基づく、許容範囲内にある騒音及び振動データなどの既定のシステムデータがプログラムにロードされる。外部コンピューティングデバイス36は、モバイルデバイス30から取得した乗り心地データと既定のシステムデータとを比較して、取得した乗り心地データが既定のシステムデータの許容範囲内にあるか否かを決定する。
【0018】
方法100は、さらに、外部コンピューティングデバイス36を動作させて、性能データに少なくともある程度基づいて乗り心地診断を実行するステップ112を含む。例えば、取得した乗り心地データが既定のシステムデータの許容範囲外である場合には、外部コンピューティングデバイス36は、取得した乗り心地データを解析して、可能性がある問題を特定する。例えば、下部ランディング上方およそ25メートル(およそ82フィート)に不完全に位置合わせされたレール継ぎ目、及び/またはエレベータかご14の乗り心地に関する不具合のある遊び滑車ベアリングからの騒音が非限定的な実施例の数個として挙げられる。
【0019】
方法100は、さらに、外部コンピューティングデバイス36を動作させて乗り心地診断をモバイルデバイス30に送信するステップ114を含む。例えば、外部コンピューティングデバイス36は、可能性がある問題を特定した後、外部コンピューティングデバイス36は、読み込み易いフォーマットにて情報をモバイルデバイス30に送信する。これは、乗り心地を改善するための、望まれていない騒音または振動に関連する、エレベータシステム12のコンポーネント及び機能を特定するための関連情報をほぼ即座にユーザに付与する。
【0020】
それ故に、本実施形態が、エレベータシステム12のメンテナンスが要求されるときに、現地要員の効率性を改善するために、モバイルデバイス30を用いて乗り心地データを取得し、外部コンピューティングデバイス36において乗り心地診断を実行して、そしてモバイルデバイス30を通じて乗り心地診断をユーザに提供するシステム10及び方法100を提供することが認識される。
【0021】
本発明を図面及び前の記載において詳細に例証及び記載したが、同じものは、例証として考慮され、特性を制限しないはずであり、そして特定の実施形態のみが示され、記載され、本発明の本質内にあるすべての変化及び変更の保護が所望されることが理解される。
【符号の説明】
【0022】
10 システム
12 エレベータシステム
14 エレベータかご
16 釣合おもり
18 ローピング配置
20 エレベータマシン
22 モータ
24 牽引滑車
26 駆動部
30 モバイルデバイス
32 第一の検出器
34 第二の検出器
36 外部コンピューティングデバイス
100 方法