【実施例1】
【0010】
図1は本実施例の冷蔵庫を前方斜視図、
図2は
図1のA−A線断面図、
図3は本実施例の照明基板16の斜視図である。冷蔵庫本体1は、上方から、冷蔵室2と、左右に並べた上段冷凍室3および製氷室4と、下段冷凍室5と、野菜室6と、を有している。なお、一例として、冷蔵室2および野菜室6は、およそ3〜5℃の冷蔵温度帯の貯蔵室である。冷蔵室2と野菜室6との間には、これらの両室と断熱的に仕切られた0℃以下の冷凍温度帯(例えば、約−20℃〜−18℃の温度帯)の冷凍室である製氷室3、上段冷凍室4、及び下段冷凍室5が、
図2に示すように、発泡断熱材等で区画され配置されている。各貯蔵室には、貯蔵室内の温度を計測する温度検知部が設けられている。
【0011】
冷蔵室2の前方開口には、左側冷蔵室扉2a及び右側冷蔵室扉2bを備え、夫々上下のヒンジを介して回転することで冷蔵室2を開閉するフレンチドアを構成する。上段冷凍室3、製氷室4、下段冷凍室5及び野菜室6の夫々の前方開口には、夫々上段冷凍室扉3a、製氷室扉4a、下段冷凍室扉5a及び野菜室扉6aを備えている。なお、上段冷凍室扉3a、製氷室扉4a、下段冷凍室扉5a及び野菜室扉6aは、前後に移動する引き出し式の扉で構成されている。各扉には、各扉が開いているか閉じられているかを検知する扉センサが設けられている。
【0012】
冷蔵庫1には、制御基板11によって制御される公知の冷凍サイクル及び各貯蔵室への冷気供給量を変更できるダンパが設けられている。
【0013】
冷蔵室2には、冷蔵室2内の温度を検知する第1の温度検知部10が奥側(扉2a,2bに離間する側)に配されている。この検知温度に応じて冷凍サイクルを制御することにより、冷蔵室2の温度を目標値に近付けている。目標値としては、例えば3℃〜5℃が挙げられる。
【0014】
冷蔵室2内には、冷蔵室2とは区画された別室としてチルド室12が設けられている。本実施例のチルド室12は、チルド室12の扉が閉じられている状態では、冷蔵室2との間で気体の交換が実質的になされないように構成されている。すなわち、冷蔵室2とチルド室12の温度は、少なくとも、両室が容易に気体交換できる状況に比して、大きく異なる値になり得る。もちろん、両室を連通させた態様に変更した場合、それを以て本実施例のその他の構成が適用できなくなるというわけではない。
【0015】
チルド室12は、冷蔵室2内に、さらにチルド室12の開閉に用いられる扉を有し、冷蔵室2とは区画された貯蔵室である。チルド室12の温度の目標値としては、1℃前後のチルド温度帯と0℃以下の氷温帯を、自動又は手動で切替え可能である。チルド室12内の温度は、チルド室12奥側に取付られた第2の温度検知部18で検知される。第2の温度検知部18は、チルド室12内を照らす照明装置17が配された基板16と一体に構成されている。この検知温度に応じて、チルド室12に向けて冷気を供給して、チルド室12外殻の冷却を通じて間接的にチルド室12内を冷却したり、チルド室12近傍(例えば下方)に配した温度補償用ヒータ13を通電してチルド室12を加熱することで、目標値に近付けることができる。なお、本実施例のチルド室12は、(下方に)隣接して位置する冷凍室4との間や、チルド室12の筐体を介した冷蔵室2との間の熱伝達で冷却され続けることができる。
【0016】
なお、温度検知部10,18の検知温度に応じた制御は、冷蔵庫本体1の背面上部に配置された制御基板11にて行うことができる。また、後述のステップS108の制御を実行することから、仮にチルド室12を取り外した上で略同一の場所に第2の温度検知部18を配した状況にしたならば、第1の温度検知部10と第2の温度検知部18とがそれぞれ検知する温度が略同一となるような場所に両温度検知部10,18を配することが好ましい。
【0017】
冷蔵室扉2a、2bには、扉の開閉の検知を行う扉開閉検知部14が冷蔵室2と上段冷凍室4の断熱シキリ部前面側に配置されている。冷蔵室扉2a又は2bの開放を検知すると、冷蔵室2上方の照明装置15およびチルド室12用の照明装置17を点灯させる。
【0018】
照明基板16上には照明装置としての照明用LED17とチルド室12の温度を検知する第2の温度検知部としてのサーミスタ18とが搭載されている。実装性、小型化や低価格を考慮するとLEDとサーミスタは面実装型が望ましい。照明用LED17はチルド室12に向けて光を照射するところ、同時に熱を発生させるため、サーミスタ18は熱の影響を受け、温度検知対象であるチルド室12内の真の温度よりも高い温度を検知しやすくなる。
【0019】
そこで本実施例では、温度検知部18の温度検知に関する制御を次のように実行することで、検知精度を向上させている。
【0020】
図4は本実施例の温度検知の制御フローチャートである。
【0021】
まず、冷蔵庫1の運転が開始されると、第1の温度検知部10が温度計測を実行してチルド室12が設置されている貯蔵室(本実施例では冷蔵室2)の温度T
Rを取得する(ステップS100)。なお、チルド室12の温度T
Xも検知しても良い。これら検知結果を利用して、定常時の冷凍サイクルや温度補償ヒータ13の制御を行うことができる。冷蔵室2の扉2a,2b何れも開いていない場合(ステップS101,No)、冷蔵室2の温度計測を繰り返す。ここで、第1温度検知部10の検知温度T
Rと、第2温度検知部18の検知温度T
Xとおいている。
【0022】
何れかが開いたことを検知した場合(ステップS101,Yes)、扉2a,2bが開かれてからの経過時間tの計測を開始し、扉2a,2bが開かれる直前または直後の冷蔵室2の温度T
Rと好ましくはさらにチルド室12の温度T
Xを記憶するとともに(ステップS102)、照明装置17を点灯させる(ステップS103)。
【0023】
(照明装置17発熱に起因する影響)
貯蔵室の扉2a,2bの両扉が閉められていない場合(ステップS104,No)、照明装置17を点灯し続ける。両扉が閉められたことを検知した場合(ステップS104,Yes)、照明装置17を消灯させるとともに経過時間tの計測を終了させ、待ち時間Aを演算する(ステップS105)。tの計測結果をt
aとおいている。待ち時間Aの演算法は後述する。
【0024】
本実施例では、扉開時間t
aと略同じ時間に亘って照明装置17が点灯することになる。照明装置17の点灯に起因して、扉閉直後に第2の温度検知部18によってチルド室温度T
Xを検知させると、第2の温度検知部18近傍に配されている照明装置17の発熱の影響により、チルド室12の真の温度より高く検知しがちである。
【0025】
(影響の低減(待ち時間Aに亘る待機))
このため本実施例では、照明装置17の消灯のきっかけとなる扉2a,2bの閉検知(ステップS104,Yes)から直ちに温度検知部18に温度を測定させるのではなく、待ち時間Aの経過を待って、温度検知を実行する。待ち時間Aは、照明装置17の直前の点灯時間(すなわち、本実施例では扉2a,2b何れかが直前に開放されてから両者が閉じられるまでの時間)t
a及びステップS102の冷蔵室温度T
R(チルド室12の温度T
Xでもよい)に応じて算出されることができる。ステップS102に代えて又は追加してステップS104のYes時に新たに検知してこれを利用しても良い。
【0026】
具体的には、算出した待ち時間Aの経過後(ステップS106,Yes)、第2の温度検知部18に温度T
Xの検知を実行させる(ステップS107)。これにより、照明装置17の発熱に起因して第2の温度検知部18がチルド室12内の温度を高めに誤検知する虞を低減できる。このためチルド室12の温度を精確に検知できるので、チルド室12の温度制御の際に、チルド室12を冷やし過ぎたり加熱し過ぎたりする虞を低減できる。
【0027】
(待ち時間Aの演算)
図5は本実施例の開時又は閉時のチルド温度T
X(開時又は閉時の冷蔵室温度T
Rでもよい。
図5ではT
Xを用いている。)と冷蔵室扉2a,2b開放時間t
aと待ち時間Aとの関係を示す図である。ステップS105で演算される待ち時間Aは、ステップS102又はS104,Yesで記憶された冷蔵室温度T
R(チルド室12の温度T
Xでもよい)とステップS105で計測終了するまでの扉開放時間t
aとに応じて決定される。
【0028】
たとえば、扉開放時間t
aが同じ値t
2の場合、待ち時間Aは、第1の温度検知部10の計測値が高い(T
R1<T
R2)ほど、長く(A
2<A
3)なる。これは、扉閉直後の冷蔵室2の温度が高いほど、外気によって基板16が暖められて第2の温度検知部18の検知温度が上昇するところ、冷蔵室2とチルド室12とは上述の通り気体交換が抑制された構造であるため、チルド室12の真の温度は基板16よりも温度上昇が遅いためである。
【0029】
さらに、温度検知部10の検知温度が同じ値T
X1の場合、待ち時間Aは、開放時間Tが長い(T
1<T
2)ほど、長く(A
1<A
2)なる。扉閉時の検知温度が高いということは、外気流入により第2温度検知部18の温度が上昇してしまうところ、チルド室12は冷蔵室2から区切られているため、真の温度はこれより低くなりがちだからである。
【0030】
このような2つの相関関係を持たせる方法で待ち時間Aを算出することにより、第2の温度検知部18がよりチルド室12の真の温度に近い温度を取得できる。第2の温度検知部18が誤って高温寄りに判定してしまうと、温度補償ヒータ13の通電停止またはDuty低下が生じ、チルド室12内温度が低下し続けてしまうし、低温寄りに判定してしまうと、温度補償ヒータ13が通電し続けて過熱されてしまう。
【0031】
待ち時間Aの算出は、
図5に例示するようなグラフを与える演算式を、上記の相関関係を持つような式で適当に定めても良いし、テーブルを準備しておいても良い。より具体的には、
図5のようなグラフを式またはテーブルから描く場合に、縦軸を待ち時間A,横軸を開放時間Tとすると、微分係数dA/dT(又は離散的な差分演算DA/DT)は、常に正値かつ単調減少としていると好ましい。また、貯蔵室2の温度が高い場合、待ち時間Aの実質的な最大値(T→∞のときのA)が高くなっていくようにすると好ましい。すなわち、開放時間t
aの上昇による待ち時間Aの増加量は飽和していくのに対し、貯蔵室温度T
Xの飽和速度はこれより遅い。
【0032】
(冷蔵室温度T
Rを利用した待ち時間Aの補正)
それぞれの温度検知部10,18は、冷蔵室2の温度にも影響を受ける。具体的には、第1の温度検知部10は当然に冷蔵室2の温度検知に用いられるものであるから、冷蔵室2内の温度に影響を受けるし、第2の温度検知部18は、基板16の裏面が冷蔵室2内に向いているため、やはり或る程度は冷蔵室2の温度の影響を受ける。このため、冷蔵室扉2a,2bが開かれたことで外気が流入した場合、外気に起因する温度検知部10,18の温度上昇量は、比較的近い値になる、少なくとも正の相関を示すことが本発明者らの検討により確認された。
【0033】
このため本実施例では、好ましくは、扉2a,2b閉後(ステップS104,Yes)、同様に待ち時間A待機してから第1の温度検知部10に温度を検知させる(ステップS107)。そして、両温度検知部10,18の検知温度の差分の絶対値|T
R−T
X|を計算するとき、照明装置17に起因する第2の温度検知部18の温度上昇の影響が小さければ、その結果は略0であることが期待される。したがって、閾値T
Hを定め、これと|T
R−T
X|との大小関係を判定することで、第2の温度検知部18の検知温度T
Xが妥当か否かを推定できる。なお、この場合の待ち時間はAでもよいし、別途演算法を定めたり固定値にしても良い。また、閾値T
Hをを用いた判定(ステップS108)を行う場合、ステップS105の待ち時間Aは固定にしても良い。閾値T
Hの設定法は後述する。
【0034】
すなわち、本実施例では、不等式T
H>|T
R−T
X|が成立しない場合(ステップS108,No)、チルド室12の温度を精確に測定できていないと推定し、不等式T
H≦|T
R−T
X|が成立するまで温度検知を続ける。不等式T
H>|T
R−T
X|が成立する場合(ステップS108,Yes)、チルド室12の温度を精確に測定できていると推定し、次のステップに進む。なお、閾値T
Hは、チルド室12の設定温度帯(例えば、チルド温度帯や氷温帯)や冷蔵室2の目標温度、冷凍室温度、外気温度や外気湿度に正の相関を持たせて変更することができる。外気温度は、冷蔵庫1外部に温度センサや湿度センサを設けることで検知できる。
【0035】
精確と推定されたチルド室12の検知温度T
Xと、例えば予め定められた温度補償ヒータ13のON閾値とを比較する(ステップS109)。ON閾値よりも検知温度T
Xが高ければ待機し(ステップ109,No)、ON閾値よりも検知温度T
Xが低ければ(ステップ109,Yes)、温度補償ヒータ13の通電を開始する(ステップS110)。
【0036】
次に、検知温度T
Xが温度補償ヒータ13のOFF閾値より低ければ(ステップS111,Yes)、温度補償ヒータ13を通電し続ける。OFF閾値以上であれば(ステップS111,Yes)、温度補償ヒータ13の通電を停止する(ステップS112)。
【0037】
なお、ステップS109,Noが継続している間に扉2a,2bの開を検知した場合、ステップS101,Yesに割込み処理で戻ることができる。
【0038】
(閾値T
Hの算出)
図6は本実施例の第1の温度検知部10と第2の温度検知部18との関係を示す図である。閾値T
Hは、温度T
Rを基準として、ここから所定値高温側の値とおく。すなわち、閾値T
H:=T
R+C(但し、Cは正の定数)とおく。
【0039】
例えば照明装置17が点灯し、第2の温度検知部18の温度T
Xが上昇して閾値T
Hを超えたとき、ステップS108はNoと判定されて、温度T
Xの測定がやりなおされる。一方、例えば照明装置17が消灯し、第2の温度検知部18の温度T
Xが低下して閾値T
H以下となったとき、ステップS108はYesと判定される。このように構成することで、照明装置17に起因して第2の温度検知部18が真の温度から遠い値を検知していると推定される場合に、この検知結果T
Xを用いた制御をおこなわないで済むため、例えば温度補償ヒータ13を不適切にON/OFFすることを抑制できる。
【0040】
(冷蔵庫1の制御ブロック図)
図7は実施例1の冷蔵庫の制御ブロック図である。扉2a,2bの開閉を検知する扉開閉検知部14、チルド室12を照明するための照明基板16、冷蔵室2内温度を検知する第1の温度検知部10,チルド室12内温度を検知する第2の温度検知部18、扉の開放時間計測結果や温度等を記憶するメモリ11a,タイマ11b、それらの情報を基に演算を行う演算部11cを搭載した制御基板11により、照明装置17、温度補償ヒータ13、冷却ファンモータ9、圧縮機7などの負荷を制御動作させる。
【実施例2】
【0041】
本実施例は、次の点を除き実施例1と同様にできる。
図8は本実施例の温度検知の制御フローチャートである。本実施例では、実施例1の制御に代えて(又は追加して)、冷蔵室冷却ファンモータの運転状態を利用して待ち時間Aを算出する。これにより冷却能力(冷却スピード)を考慮した適切な制御が可能となる。第2の温度検知部18が風路上、例えば戻り風路口近傍にあるとより効果的である。
【0042】
両扉2a,2bが閉められ(ステップS104,Yes)、照明装置17が消灯すると(ステップS105)、本実施例ではさらに、冷蔵室2冷却の冷却ファンモータ9aが運転を開始する(ステップS200)と同時に、冷却ファンモータ9aの回転数を検出する(ステップS201)。
【0043】
冷却ファンモータ9aには実回転数を制御基板11にフィードバックする機能が搭載されているため、この値を用いるか、制御基板11による指令回転数等を使用しても良い。検出した回転数により、第2温度検知部18に温度検知をさせるまでの待ち時間(本実施例ではBとおく)を算出する(ステップS202)。その余の制御は実施例1と同様にできる。
【0044】
通常、冷蔵室2内が十分に冷えている状態では、冷却ファンモータ9aは低速または停止し、冷却が不十分な状態では、冷却ファンモータ9aが高速で運転する。冷却ファンモータ9aの駆動によって冷蔵室2、ひいては基板16に冷気が供給されるため、冷却ファンモータ9aの駆動が活発であれば待ち時間Bは短くできると期待される。
【0045】
図9は、実施例2のファンモータ9aの駆動状態と第2の温度検知部18の待ち時間Bとの関係を示す図である。
【0046】
扉2a,2b開放中は、騒音防止や省エネを目的に冷却手段ファンモータ9aを停止させている。扉が閉められると、例えば冷蔵室2内の温度に応じた回転数で冷却ファンモータ9aが運転を開始する。本実施例では、扉2a,2b閉後の回転数と待ち時間Bとの間に負の相関を持たせた。具体的には、回転数が高いほど待ち時間Bを短くしている。
図9では一例として、回転数を離散的に高回転数、低回転数、停止と3段階に区切り、何れの回転数で駆動しているかに応じて温度検知部18の待ち時間Bが変動している。冷却ファンモータ9aの回転数がそれぞれ高回転数、低回転数、停止であるとき、待ち時間BはそれぞれB1,B2、B3(但し、B1<B2<B3)となる。
【0047】
これに代えて、
図10のようにすることもできる。
図10は、実施例2の冷却ファンモータ9aの回転数と第2の温度検知部18の待ち時間Bの関係を示す図である。
【0048】
縦軸に冷却ファンモータ9aの回転数N、横軸に温度検知部18の検知待ち時間Bをとる。冷却ファンモータ9aの回転数Nにより、温度検知待ち時間Bが負の相関を以て、例えば線形に減少する。また、回転数Nが或る値以下となったときは、第2の温度検知部18の冷却速度がほとんどできないとして、冷却ファンモータ9aの停止時と同じ待ち時間にしている。