(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記車体フレームの左前側には前記キャブを下側から支持する前側キャブ支持枠が設けられており、前記前側キャブ支持枠にはワイパー装置駆動用の電動アクチュエータが設けられ、前記電動アクチュエータは、前記配線挿通凹溝から外部に引出された前記配線を介して前記キャブの内部から給電が行われることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る建設機械の実施の形態について油圧ショベルを例に挙げ、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
図1ないし
図10は本発明の第1の実施の形態を示している。
図1において、建設機械の代表例である油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とにより車体が構成されている。上部旋回体3の前側には、作業装置4が俯仰動可能に設けられ、この作業装置4によって土砂の掘削作業等が行われる。
【0012】
上部旋回体3は下部走行体2上に旋回可能に設けられている。この上部旋回体3は、後述の旋回フレーム7と、旋回フレーム7の後端側に設けられ作業装置4との重量バランスをとるカウンタウエイト5と、該カウンタウエイト5よりも前側に位置して旋回フレーム7上に搭載されたエンジン、熱交換装置等の搭載機器(図示せず)と、この搭載機器を覆う外装カバー6と、後述するキャブ14とを含んで構成されている。
【0013】
旋回フレーム7は、上部旋回体3のベースとなるもので強固な支持構造体をなす車体フレームを構成している。旋回フレーム7は、左,右方向の中間部に位置し前,後方向に延びるセンタフレーム8と、該センタフレーム8から左,右方向に延びる複数本の張出しビーム9と、前記センタフレーム8を挟んで左,右方向の両側に配置され、各張出しビーム9を介してセンタフレーム8に固着(接合)された左サイドフレーム10および右サイドフレーム11と、を備えている。
【0014】
センタフレーム8は、旋回フレーム7(車体フレーム)の中央部分を構成している。このセンタフレーム8は、前,後方向に延びる厚肉な底板8Aと、該底板8A上に立設され、左,右方向で間隔をもって対面した状態で前,後方向に延びる左縦板8Bおよび右縦板8Cとにより構成されている。左,右の縦板8B,8Cの前端側には、作業装置4のブームフート部が回動可能に連結されている。
【0015】
複数本の張出しビーム9は、センタフレーム8から左,右方向に張出したビームである。これら複数の張出しビーム9は、基端側がセンタフレーム8に接合されると共に先端側がセンタフレーム8から左,右方向に張出し、前,後方向に間隔をもって配置されている。センタフレーム8から左側に張出した張出しビーム9の先端(左側端)には、前,後方向に延びる左サイドフレーム10が接合されている。センタフレーム8から右側に張出した張出しビーム9の先端(右側端)には、前,後方向に延びる右サイドフレーム11が接合されている。
【0016】
前側キャブ支持枠12は、後述するキャブ14の前側を支持するものである。この前側キャブ支持枠12は、旋回フレーム7の左前側(車体フレームの左前側)に配置され、左サイドフレーム10の前端側とセンタフレーム8との間を連結している。前側キャブ支持枠12は、センタフレーム8の底板8Aに接合され左縦板8Bと平行して前,後方向に延びた縦枠部材12Aと、縦枠部材12Aの前端と左サイドフレーム10の前端とに接合され左,右方向に延びた横枠部材12Bとにより、略L字状に形成されている。横枠部材12Bの左,右方向の両端側には、左前キャブ支持ベース12C,右前キャブ支持ベース12Dが設けられている。これら左,右の前キャブ支持ベース12C,12Dは、後述の各防振マウント37を介してキャブ14の前側を支持している。
【0017】
旋回フレーム7を構成する複数本の張出しビーム9のうち、前側キャブ支持枠12の後側でかつセンタフレーム8の前,後方向の中間部に位置する1本の張出しビーム9は、キャブ14の後側を支持するための後側キャブ支持ビーム13となっている。後側キャブ支持ビーム13の左,右方向の両端側には、左後キャブ支持ベース13A,右後キャブ支持ベース13Bが設けられている。これら左,右の後キャブ支持ベース13A,13Bは、例えば2個の防振マウント37を介してキャブ14の後側を支持している。
【0018】
即ち、旋回フレーム7には、前側キャブ支持枠12に設けられた左,右の前キャブ支持ベース12C,12Dと、後側キャブ支持ビーム13に設けられた左,右の後キャブ支持ベース13A,13Bとからなる合計4か所のキャブ支持ベースが、例えば旋回フレーム7の前部左側に備えられている。
【0019】
キャブ14は、車体フレーム(即ち、旋回フレーム12)の左前側に配置され内部に運転室を画成している。このキャブ14は、内部に運転席(図示せず)が設けられている。キャブ14は、旋回フレーム7のうち前側キャブ支持枠12と後側キャブ支持ビーム13との上側にそれぞれ防振マウント37を介して搭載されている。キャブ14は、前側キャブ支持枠12に設けられた左,右の前キャブ支持ベース12C,12Dと、後側キャブ支持ビーム13に設けられた左,右の後キャブ支持ベース13A,13Bとに、合計4個の防振マウント37を介して弾性的に支持されている。
【0020】
キャブ14は、底面部14A、前面部14B、後面部14C、左側面部14D、右側面部14Eおよび天面部14Fによりボックス状に形成されている。より具体的には、キャブ14は、骨組構造をなすキャブフレーム15を有し、このキャブフレーム15は、
図4に示すように、後述のベース枠体16、前部ピラー17,18、上部ピラー19,20、後部ピラー21,22、中間ピラー23等により構成されている。
【0021】
ベース枠体16は、キャブ14(キャブフレーム15)の下側枠体を構成している。このベース枠体16は、前側下枠16A、後側下枠16B、左側下枠16Cおよび右側下枠16Dにより、前,後方向に長い長方形状の枠構造体として形成されている。ベース枠体16は、前側下枠16A、後側下枠16B、左側下枠16Cおよび右側下枠16Dの端部を、例えば4個の取付ベース16E(
図5参照)を介して互いに連結することにより、
図4に示す如く略四角形の枠体として形成されている。ベース枠体16の四隅側に位置する各取付ベース16Eは、
図5に示す旋回フレーム7(前側キャブ支持枠12と後側キャブ支持ビーム13)上にそれぞれ防振マウント37を介して取付けられている。
【0022】
左,右の前部ピラー17,18は、キャブフレーム15の前部に配置されている。この前部ピラー17,18は、
図4に示す如く、ベース枠体16の前端側から左,右方向に離間して上向きに立設されている。前部ピラー17,18の上端側は、左,右の上部ピラー19,20と一体または別体に形成されている。この上部ピラー19,20は、キャブフレーム15の上部に配置され、左,右方向に離間して前,後方向に延びるフレーム部材として形成されている。
【0023】
左,右の後部ピラー21,22は、キャブフレーム15の後部に配置されている。この後部ピラー21,22は、ベース枠体16の後端側から左,右方向に離間して上向きに立設されている。そして、後部ピラー21,22の上端側は、上部ピラー19,20の後端側に凹凸嵌合および/または溶接手段等を用いて連結されている。
【0024】
中間ピラー23は、前部ピラー17と後部ピラー21との間の中間位置に配設されている。この中間ピラー23は、その下端側がベース枠体16の左側下枠16Cに固着され、上端側が上部ピラー19の途中部位に固着されている。即ち、中間ピラー23は、前部ピラー17と後部ピラー22との間に位置して左側下枠16Cの長さ方向中間部から上向きに立設され、その上端部が上部ピラー19に接合されている。そして、中間ピラー23には、後述のドア30が側面パネル27等を介して取付けられている。
【0025】
このように構成されたキャブフレーム15には、その上面側を覆う上面パネル24と、上面パネル24の後端側に配置されたコーナパネル25と、キャブフレーム15の後面側を覆う後面パネル26と、後部ピラー22と中間ピラー23との間に配置された左側の側面パネル27と、キャブフレーム15の右側面を覆う右側の側面パネル28とが設けられている。これらのパネル24,25,26,27および28は、例えばプレス加工で成形した2枚の薄い金属板を互いに重合わせ内部に空洞を残すように接合することにより形成されている。
【0026】
上面パネル24の左,右両側は、上部ピラー19,20に溶接手段等を用いて接合されている。また、上面パネル24の前端部は、
図4に示すように前部ピラー17,18の上部側に沿って円弧状に延びる縁取部24Aとなっている。そして、キャブ14内の運転席に座ったオペレータの前方視界は、この縁取部24Aの位置まで上方に広げることができる。上面パネル24の後端側に設けられたコーナパネル25は、上部ピラー19,20の後端と後部ピラー21,22の上端との間で、それぞれの溶接部位等を外側から覆っている。これにより、コーナパネル25は、キャブフレーム15の上側後部の美観(デザイン性)等を向上させることができる。
【0027】
キャブフレーム15の後面側を覆う後面パネル26は、その左,右両側が後部ピラー21,22に溶接等で接合されている。後面パネル26の下端側は、ベース枠体16の後側下枠16Bに接合されている。左側の側面パネル27は、後述するドア30の後側に位置してキャブフレーム15の左側面を覆うものである。そして、側面パネル27の前端側には、中間ピラー23に沿って上,下方向に延びる段差部27Aが一体に形成され、該段差部27Aには
図1、
図5に示すドア30が開閉可能に取付けられる。
【0028】
キャブフレーム15の右側面を覆う右側の側面パネル28は、
図4に示すように、前部ピラー18と後部ピラー22との間に設けられ、その下端側は、ベース枠体16の右側下枠16Dに接合されている。そして、キャブ14には、後面パネル26、左,右の側面パネル27,28およびドア30にそれぞれ窓ガラスが取付けられている。
【0029】
右側の側面パネル28は、例えば2枚の薄い金属板を互いに重合わせ内部に空洞を残すように形成されている。側面パネル28の前記空洞内には、
図4、
図7および
図8に点線で示すように、後述の配線46と配管49が装入(挿通)状態で配置されている。但し、
図4中では配管49を省略している。また、側面パネル28には、前記空洞内から配線46と配管49を外部に引出すための引出し穴28Aが形成されている。この引出し穴28Aは、側面パネル28の内部に装入(導入)状態で配置された配線46と配管49を、床板33の上面側(後述のガイド部材38)へと導出するための導出開口である。
【0030】
ここで、キャブ14の前面部14Bには、キャブ14内のオペレータに広い前方視界を与えるため、左,右の前部ピラー17,18間に位置して前窓29が取付けられている。この前窓29は、上前窓29Aと下前窓29Bとにより2分割可能に構成されている。前窓29の下前窓29Bは、前面部14Bの下側位置に取付け、取外し可能に設けられている。前窓29の上前窓29Aは、下前窓29Bの上側に位置して左,右の前部ピラー17,18間に上,下方向へと移動可能に設けられている。
【0031】
上前窓29Aは、例えば下前窓29Bよりも上,下方向に長い略長方形状の透明なガラス板を含んで構成されている。上前窓29Aは、左,右方向の両端が前部ピラー17,18に設けたガイド(図示せず)等を介してキャブ14の天面部14F側に格納可能に支持されている。これにより、上前窓29Aは、上,下方向に延びた状態で前面部14B(即ち、左,右の前部ピラー17,18間)を閉塞する閉塞位置と、前,後方向に延びた状態で天面部14F(上面パネル24)の下側に格納される格納位置との間で移動できる構成となっている。
【0032】
前窓29の下前窓29Bは、例えば略長方形状の透明なガラス板を含んで構成されている。下前窓29Bの下端側は、例えば
図7、
図8に示す如く、前側下枠16A(後述の下窓受け部材36)に上側から当接した状態で支持されている。下前窓29Bの上端は、上前窓29Aの下端と当接している。これにより、下前窓29Bは、前面部14Bの下側位置を閉塞している。下前窓29Bは、前側下枠16A(後述の下窓受け部材36)と上前窓29Aとの間に着脱可能に取付けられている。
【0033】
キャブ14の一部を構成するドア30は、
図6に示すように、左側の前部ピラー17と側面パネル27との間に設けられている。ドア30は、その後端側が側面パネル27の段差部27Aにヒンジ31,31を介して開閉可能に取付けられている。即ち、左側の前部ピラー17と側面パネル27との間には、
図4に示すように、ベース枠体16の左側下枠16Cと上部ピラー19との間に位置してキャブ14の乗降口32が形成され、
図6に示すドア30は、この乗降口32を開,閉するものである。
【0034】
床板33は、キャブ14の底面部14Aを構成している。この床板33は、ベース枠体16の下側に設けられ、キャブフレーム15を下側から閉塞している。床板33は、ベース枠体16の外形形状に対応して前,後方向に長尺な長方形状の板体として形成されている。床板33の外側部位は、ベース枠体16の前側下枠16A、後側下枠16B、左側下枠16Cおよび右側下枠16Dに複数のボルト等で締結されている。
【0035】
キャブ14の前面部14Bは、ベース枠体16の前側下枠16A、左,右の前部ピラー17,18および前窓29を含んで構成されている。ベース枠体16の前側下枠16Aは、車体フレーム、即ち旋回フレーム7の前側キャブ支持枠12(横枠部材12B)と上,下方向で対面する下端位置に配置されている。キャブ14の後面部14Cは、ベース枠体16の後側下枠16B、左,右の後部ピラー21,22および後面パネル26等を含んで構成されている。
【0036】
キャブ14の左側面部14Dは、ベース枠体16の左側下枠16C、左側の前部ピラー17、上部ピラー19、中間ピラー23、側面パネル27およびドア30等を含んで構成されている。右側面部14Eは、ベース枠体16の右側下枠16D、右側の前部ピラー18、上部ピラー20および側面パネル28等を含んで構成されている。天面部14Fは、上部ピラー19,20、上面パネル24およびコーナパネル25等を含んで構成されている。
【0037】
ベース枠体16の前側下枠16Aは、
図7、
図8に示すように、剛性をもった金属板をプレス成形することにより横断面が凹形状に形成された下枠板34と、該下枠板34と同様にプレス成形して横断面が凸形状に形成され該下枠板34に対して上側から被せるように重合わされた上被板35と、該上被板35と下枠板34との間の隙間を埋め両者間を前,後方向で結合するように設けられた下窓受け部材36とにより構成されている。
【0038】
下枠板34、上被板35および下窓受け部材36からなる前側下枠16Aは、
図4に示すように、左,右の前部ピラー17,18(左側下枠16C,右側下枠16D)間を左,右方向に延びる下枠部材として構成されている。即ち、前面部14Bの下端位置を構成する前側下枠16Aは、下枠板34、上被板35および下窓受け部材36からなる3部材を組合わせて構成されることにより、ベース枠体16のうち前側下枠16Aの強度を増大させ、かつ軽量化を図っている。
【0039】
ベース枠体16の前側下枠16Aは、
図4、
図7〜
図9に示すように、下枠板34の下面位置に設けられた挿通凹溝34Aを有している。この挿通凹溝34Aは、キャブ14の前面部14Bのうち旋回フレーム7の前側キャブ支持枠12と上,下で対面する下端位置に設けられている。この挿通凹溝34Aは、キャブ14の底面部14Aと旋回フレーム7(前側キャブ支持枠12の横枠部材12B)との間に配設される後述の配線46と配管49とを外部に引出すための凹溝である。即ち、挿通凹溝34Aは、配線46用の配線挿通凹溝と配管49用の配管挿通凹溝とを兼用した凹溝である。
【0040】
図9に示すように、下枠板34の下面には、挿通凹溝34Aの左,右両側に位置して浅溝部34Bが設けられている。各浅溝部34Bの溝深さは、後述するカバー50の板厚に対応する深さ寸法に形成されている。挿通凹溝34Aの溝深さは、カバー50の下部内面と挿通凹溝34Aとの間に後述の配線46と配管49とを挿通可能(外部に引出し可能)な寸法に形成されている。キャブ14は、旋回フレーム7の左前側位置(即ち、前側キャブ支持枠12と後側キャブ支持ビーム13)に設けられ、挿通凹溝34Aは、キャブ14の前面部14Bのうち右下面位置に設けられている。
【0041】
防振マウント37は、旋回フレーム7に対してキャブ14を弾性的に支持するものである。防振マウント37は、旋回フレーム7の前側キャブ支持枠12(前キャブ支持ベース12C,12D)および後側キャブ支持ビーム13(後キャブ支持ベース13A,13B)と、キャブ14(即ち、ベース枠体16の四隅側に位置する各取付ベース16E)との間に合計4個設けられている。これら防振マウント37は、キャブ14が旋回フレーム7に対して振動するのを緩衝すべくキャブ14を下側から4箇所で防振支持している。
【0042】
図7、
図8に示す隙間Sは、旋回フレーム7(例えば、前側キャブ支持枠12)の上面とキャブ14(ベース枠体16)の下面との間に形成され、キャブ14が上,下方向に振動するのを許容するための隙間である。この隙間Sは、旋回フレーム7とキャブ14との間に配設された複数の防振マウント37により形成されるものである。このように、複数の防振マウント37は、キャブ14を旋回フレーム7に対して弾性的に支持し、油圧ショベル1の走行時、作業時に旋回フレーム7を通じてキャブ14に伝わる振動を緩衝することができる。
【0043】
図4に示すように、前側下枠16A(即ち、
図7に示す下枠板34、上被板35および下窓受け部材36)には、床板33との間にガイド部材38が固定して設けられている。このガイド部材38は、側面パネル28の引出し穴28Aから床板3側に導出された後述の配線46と配管49を、床板33の下方へと導くためのガイド穴38Aを有している。ガイド部材38は、配線46と配管49を通すための貫通穴を、仮に床板33に設けた場合には床板33の強度が低下するので、これを防ぐために床板33とは別体に設けられた補強部材である。
【0044】
ガイド部材38のガイド穴38A内には、
図7に示すように、内部に挿通された配線46および配管49とガイド穴38Aとの間の隙間を塞ぐ弾性スリーブ39が設けられている。この弾性スリーブ39は、旋回フレーム7とキャブ14との間の隙間S(
図7参照)側から外部のダスト、雨水、洗浄水等がキャブ14内に侵入するのを防ぐ機能を有している。
【0045】
ワイパー装置40は、旋回フレーム7の前側キャブ支持枠12とキャブ14の前面部14Bとの間に設けられ、キャブ14の前窓29から雨滴等を拭き取るための装置である。ワイパー装置40は、
図5に示す如く、前窓29を拭くゴム付きのワイパアーム41と、該ワイパアーム41を垂直姿勢に保ったまま左,右方向へと揺動可能に支持する平行リンク42と、該平行リンク42を左,右方向に揺動させるためのワイパモータ等を含んだ駆動用の電動アクチュエータ43と、該電動アクチュエータ43を内部に収容して保護する保護枠体44とを含んで構成されている。
【0046】
ワイパアーム41は、上,下のゴム付きワイパー部材41A,41Bと、これらのワイパー部材41A,41Bを上,下方向に延びた垂直状態で保持する細長板状のワイパー保持体41Cとを含んで構成されている。ワイパアーム41のワイパー保持体41Cは、平行リンク42が左,右方向に揺動されるときに、
図5に示すように垂直姿勢に保ったまま左,右方向へと移動される。このときに、上側のワイパー部材41Aは、前窓29の上前窓29Aから雨滴等を拭き取るように動作し、下側のワイパー部材41Aは、前窓29の下前窓29Bから同じく雨滴等を拭き取るように動作する。
【0047】
平行リンク42は、下端側の下側ボス部42Aが電動アクチュエータ43の出力軸43A(
図7、
図8参照)に連結されている。平行リンク42は、電動アクチュエータ43の出力軸43Aが回動支点となって、電動アクチュエータ43により左,右方向へと揺動するように駆動される。電動アクチュエータ43は、例えばワイパモータとしての電動モータ、減速機構(いずれも図示せず)等を含んで構成されている。電動アクチュエータ43の出力軸43Aは、保護枠体44の内部から前方へと外側に突出し、その突出端側には平行リンク42の下側ボス部42Aが連結されている。
【0048】
保護枠体44は、例えば乗用車等のフロントバンパーのように、旋回フレーム7の前側キャブ支持枠12を前側から覆う樹脂製枠体として形成されている。即ち、保護枠体44は、前側キャブ支持枠12の前面側にボルト,ナット等の締結部材45を用いて締着され、前側キャブ支持枠12を前側から覆うバンパー構造をなしている。保護枠体44は、例えば
図3に示すように、前側キャブ支持枠12の横枠部材12Bに対応する長さ(左,右方向の寸法)をもって形成されている。保護枠体44は、その内部にワイパー装置40の電動アクチュエータ43を囲繞するように、電動アクチュエータ43が内部に収容されている。換言すると、ワイパー装置40の電動アクチュエータ43は、前側キャブ支持枠12に保護枠体44を介して設けられている。電動アクチュエータ43は、前面部14Bの下端位置にある挿通凹溝34Aからキャブ14の外部に引出された配線46を介してキャブ14の内部から給電が行われる。
【0049】
保護枠体44の長さ方向(左,右方向)中間部には、凹窪部44Aが設けられている。電動アクチュエータ43の出力軸43Aは、保護枠体44の凹窪部44Aの位置で平行リンク42の下側ボス部42Aと連結されている。平行リンク42のワイパー動作時には、平行リンク42の下側ボス部42Aが凹窪部44A内で左,右方向に揺動する。これにより、保護枠体44の凹窪部44Aは、平行リンク42が円滑にワイパー動作するのを補償することができ、しかも、平行リンク42が前窓29から前方に余分に張り出すのを抑えることができる。
【0050】
保護枠体44の上面側には、電線ケーブル等の配線46をシール状態で保護枠体44内に導く配線導入部44Bが設けられている。この配線46は、保護枠体44内で電動アクチュエータ43の前記電動モータに接続されている。ここで、配線46は、一方の端部がキャブ14内のコントローラ47(
図4参照)に接続され、他方の端部は、ベース枠体16の前側下枠16Aの下面位置(即ち、
図7〜
図9に示す下枠板34の挿通凹溝34A)を介してキャブ14の底面部14Aから外部に引出されている。
【0051】
下枠板34の挿通凹溝34Aを介してキャブ14の底面部14Aから外部に引出された配線46は、保護枠体44の上面側に設けられた配線導入部44Bの位置に導かれ、保護枠体44内で電動アクチュエータ43(例えば、ワイパモータ)に接続されている。これにより、配線46は、キャブ14内に設置された部品(例えば、コントローラ47)と、旋回フレーム7の外面(例えば、前側キャブ支持枠12の前面側)に設置された部品(例えば、ワイパー装置40の電動アクチュエータ43)との間を電気的に接続することができる。
【0052】
コントローラ47は、キャブ14内のオペレータがワイパスイッチ(図示せず)を操作したときに、これに従って電動アクチュエータ43に給電を行い、ワイパー装置40の駆動,停止を制御する制御装置である。ワイパー装置40の電動アクチュエータ43は、キャブ14の挿通凹溝34Aから外部に引出された配線46を介してキャブ14の内部(コントローラ47)から給電が行われる。なお、コントローラ47は、ワイパー装置40の制御に限らず、例えば空調装置の制御、エンジン制御等を行う制御装置を兼用する構成であってもよい。
【0053】
ウォッシャ液の噴射ノズル48は、例えばベース枠体16の前側下枠16A(具体的には、
図8に示す下枠板34の外側面)に固定して設けられている。噴射ノズル48は、前側下枠16A(即ち、下枠板34)の外側から前窓29のガラス面に向けて上方へとウォッシャ液を噴射する。このガラス面に吹付けられたウォッシャ液は、ワイパー装置40のゴム付きのワイパアーム41により前窓29のガラス面から拭き取られる。
【0054】
配管49は、噴射ノズル48に対してウォッシャ液を供給するための給液管である。この配管49は、一方の端部がキャブ14内のウォッシャ液タンク(図示せず)に接続され、他方の端部は、ベース枠体16の前側下枠16Aの下面位置(即ち、
図7〜
図9に示す下枠板34の挿通凹溝34A)を介してキャブ14の底面部14Aから後述のカバー50を介して外部に引出されている。配管49の途中部分は、前記配線46と同様に側面パネル28の内部に装入(導入)して配置され、
図4、
図7および
図8に示すように、側面パネル28の引出し穴28Aから床板33の上面側(即ち、ガイド部材38のガイド穴38A)へと導かれている。
【0055】
さらに、キャブ14の底面部14Aからカバー50を介して外部に引出された配管49の先端部49Aは、
図5に示すように、噴射ノズル48に側方から接続されている。噴射ノズル48は、ウォッシャ液を噴射するときに開閉される電磁弁(図示せず)を備えている。この電磁弁に給電を行う配線(図示せず)は、一方の端部がキャブ14内のコントローラ47(
図4参照)に接続され、他方の端部は、ウォッシャ液の配管49と同様にベース枠体16の前側下枠16Aの下面位置(即ち、
図7〜
図9に示す下枠板34の挿通凹溝34A)を介してキャブ14の底面部14Aから外部に引出されている。
【0056】
キャブ14の前面部14Bには、挿通凹溝34Aを外側から着脱可能に覆うカバー50が設けられている。このカバー50は、例えば金属または樹脂材料を用いて、
図7、
図10に示すように、横断面がL字状なす板体として形成されている。
図9に示す如く、下枠板34の下面(即ち、前側下枠16Aの下面)には、挿通凹溝34Aの左,右両側に位置して浅溝部34Bが設けられている。カバー50は、左,右の両側部がそれぞれ各浅溝部34Bに当接され、この状態でネジ等の締結部材(図示せず)により挿通凹溝34Aを外側(下側および前側)から覆うように締結される。
【0057】
横断面がL字状なすカバー50は、下枠板34の挿通凹溝34A内に挿通された配線46および配管49を下側から当接した状態に保持し、これらの配線46および配管49が挿通凹溝34A内から自重等で落下したり、垂れ下がったりするのを抑える。換言すると、配線46と配管49とは、下枠板34の挿通凹溝34A内に挿入された状態で、カバー50により挿通凹溝34A内に隙間(余裕)をもって保持された状態となる。
【0058】
カバー50には、その中央部に挿通穴50Aが設けられている。カバー50の挿通穴50Aには、
図7に示す挿通凹溝34Aの下側を通った配線46と配管49とが挿通され、これらはキャブ14の下側から外部(前側下枠16Aの前側)へと引出される。即ち、カバー50は、穴有りカバーとして挿通穴50Aによって配線46と配管49とを束ねるように挿通させることができる。これにより、配線46と配管49とは、配索方向(即ち、動きの自由度)がある程度拘束(制約)された状態で、ベース枠体16の前側下枠16Aの下面位置(即ち、
図7〜
図9に示す下枠板34の挿通凹溝34Aおよびカバー50の挿通穴50A)から下枠板34の前側へとキャブ14の外部に引出される。
【0059】
第1の実施の形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
【0060】
油圧ショベル1のオペレータは、キャブ14に乗込んで運転席(図示せず)に着席し、走行レバー・ペダル等を操作することにより、油圧ショベル1を作業現場で走行駆動させる。また、油圧ショベル1の作業現場では、オペレータが作業用操作レバー等を操作することにより、作業装置4を俯仰動させて土砂の掘削作業を行うことができる。
【0061】
ここで、ワイパー装置40は、キャブ14の前窓29から雨滴等を拭き取るために旋回フレーム7の前側キャブ支持枠12とキャブ14の前面部14Bとの間に設けられている。ワイパー装置40の電動アクチュエータ43は、保護枠体44の内部に収容され、この保護枠体44は、旋回フレーム7の前側キャブ支持枠12に対して、
図3に示す矢印の方向に取付けられている。
【0062】
換言すると、ワイパー装置40のうちワイパモータ等の電動アクチュエータ43は、キャブ14の前面部14Bと上,下方向で対向する旋回フレーム7の前側位置(前側キャブ支持枠12の前面側)に保護枠体44を介して配設されている。この上で、ワイパー装置40の電動アクチュエータ43は、キャブ14の下端位置(即ち、
図7〜
図9に示す下枠板34の挿通凹溝34Aおよびカバー50の挿通穴50A)から外部に引出された配線46により、キャブ14の内部(例えば、コントローラ47)から給電が行われる。
【0063】
また、ウォッシャ液の噴射ノズル48は、ベース枠体16の前側下枠16A(具体的には、
図8に示す下枠板34の外側面)に固定して取付けられている。噴射ノズル48に対してウォッシャ液を供給する配管49は、一方の端部がキャブ14内の前記ウォッシャ液タンクに接続され、他方の端部は、ベース枠体16の前側下枠16Aの下面位置(即ち、下枠板34の挿通凹溝34Aおよびカバー50の挿通穴50A)を介して外部の噴射ノズル48に向けて引出されている。
【0064】
このように、第1の実施の形態によれば、キャブ14の前面部14Bのうち旋回フレーム7の前側キャブ支持枠12と上,下で対面する下端位置、即ちベース枠体16の前側下枠16A(具体的には、
図8に示す下枠板34の下側面)に、下方に開口する凹形状をなした挿通凹溝34Aが形成されている。このため、前述した配線46と配管49とを挿通凹溝34A内に挿通することができ、この配線46と配管49とをキャブ14の下面と旋回フレーム7(前側キャブ支持枠12)との間から外部へと引出すことができる。
【0065】
この結果、旋回フレーム7の前側キャブ支持枠12等に配線挿通穴等を余分に穿設する必要がなくなり、旋回フレーム7の剛性が前記配線挿通穴等で低下するのを防ぐことができる。また、配線46と配管49とを予めキャブ14に配索して取付けたアセンブリ状態で、旋回フレーム7の前側キャブ支持枠12と後側後側キャブ支持ビーム13上に、アセンブリ状態のキャブ14を組付けることが可能となる。これにより、キャブ14を含めたショベル全体の組立作業性を向上することができる。しかも、配線46と配管49とがキャブ14と旋回フレーム7の外部に露出するのを抑えることができるため、油圧ショベル1の美観を良好に保つことができる。
【0066】
ワイパー装置40の電動アクチュエータ43は、保護枠体44の内部に収容され、この保護枠体44と一緒に旋回フレーム7の前側キャブ支持枠12に対し前側から締着して取付けられている。ワイパー装置40の平行リンク42は、前窓29のガラス面から雨滴等を拭き取るゴム付きのワイパアーム41に向けて上向きに延び、平行リンク42の下側ボス部42Aは、電動アクチュエータ43の出力軸43A(即ち、回動支点)に連結されている。
【0067】
これにより、ワイパー装置40(平行リンク42)の回動支点をキャブ14の前面部14Bの下方位置に配置することができ、ワイパアーム41を垂直姿勢に保ったまま左,右方向へと揺動可能に支持する平行リンク42の可動範囲を大きく拡げることができる。即ち、ワイパー装置のモータ等をキャブの前面部に設けた従来技術に比較して、平行リンク42を長くして左,右方向への揺動範囲を拡げることができ、ゴム付きのワイパアーム41による前窓29(ガラス面)への拭き取り範囲を拡げ、ワイパー装置40の性能を向上することができる。
【0068】
また、キャブ14の前面部14Bには、挿通凹溝34Aを外側から着脱可能に覆うカバー50が設けられている。このカバー50の中央部には、
図7に示すように、挿通凹溝34Aの下側に通った配線46と配管49とが挿通され、キャブ14の下側から外部(前側下枠16Aの前側)へと引出される挿通穴50Aが設けられている。このため、挿通穴50Aを有するカバー50を用いることによって、キャブ14の下側から前側下枠16Aの前側へと引出される配線46と配管49が与える美観への悪影響をカバー50で小さく抑えることができる。
【0069】
しかも、カバー50は、挿通穴50Aによって配線46と配管49とを束ねるように挿通させることができる。これにより、配線46と配管49とは、配索方向(即ち、動きの自由度)がある程度拘束(制約)された状態で、ベース枠体16の前側下枠16Aの下面位置(即ち、下枠板34の挿通凹溝34Aおよびカバー50の挿通穴50A)から下枠板34の前側へとキャブ14の外部に引出される。このため、配線46と配管49とがキャブ14の下面と旋回フレーム7の前側キャブ支持枠12との間で挟み込まれるような事態を防ぐことができる。
【0070】
従って、第1の実施の形態によれば、配線46と配管49とをキャブ14の床板33(即ち、ガイド部材38のガイド穴38A)に挿通させ、下枠板34の挿通凹溝34Aと旋回フレーム7の前側キャブ支持枠12との間を挿通させることができる。これにより、旋回フレーム7側に配線挿通用の穴等を設ける必要がなくなり、旋回フレーム7の剛性低下を防ぐことができる。
【0071】
また、キャブに配線46と配管49とを配索して取付けた状態で、キャブ14を旋回フレーム7へと組付けることが可能であり、組立作業性を向上できる。さらに、キャブ14と旋回フレーム7との間に生じる隙間(例えば、
図7、
図8に示す隙間S)を必要最小限に小さくすることができ、油圧ショベル1の美観に与える悪影響を小さく抑えることができる。
【0072】
次に、
図11および
図12は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、キャブ下端の挿通凹溝を覆うカバーには、挿通穴等を設けない構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0073】
第2の実施の形態では、キャブ14の前面側に電気機器(例えば、第1の実施の形態で述べたワイパー装置40および噴射ノズル48)を設けないタイプの油圧ショベルを採用している。このため、キャブ14の前面部14Bの下端位置(即ち、前側下枠16Aを構成する下枠板34の下面位置)に設けた挿通凹溝34Aには、第1の実施の形態で述べた配線46と配管49とを挿通する必要がない構成となっている。
【0074】
そこで、第2の実施の形態では、
図11に示すように、キャブ14下端の挿通凹溝34Aを穴のないカバー60で覆う構成としている。このカバー60は、第1の実施の形態で述べたカバー50と同様に、横断面がL字状なす板体として形成されている。しかし、この場合のカバー60は、配線、配管用の挿通穴等を有していない構成となっている。
【0075】
かくして、このように構成される第2の実施の形態によれば、キャブ14の前面側に電気機器(例えば、第1の実施の形態で述べたワイパー装置40および噴射ノズル48)を設けない場合に、キャブ14下端の挿通凹溝34Aを穴のないカバー60で覆うことができ、キャブ14の下端側の美観を良好に保つことができる。
【0076】
なお、前記第1の実施の形態では、旋回フレーム7の前側キャブ支持枠12とキャブ14の前面部14Bとに前側からワイパー装置40を設ける場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば照明器具等の電気機器を設ける構成としてもよい。
【0077】
また、前記各実施の形態では、建設機械としてクローラ式の下部走行体2を有する油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の油圧ショベル、油圧クレーン、ホイールローダ等のように、車体フレームの前側にキャブが搭載された建設機械に広く適用することができる。