【実施例】
【0030】
1.非重合体カテキン類の分析
試料溶液をフィルター(0.45μm)で濾過し、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP、島津製作所製)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラムL−カラムTM ODS(4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度40℃にてグラジエント法により分析した。非重合体カテキン類の標準品として、栗田工業製のものを使用し、検量線法で定量した。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有する蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有するアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。なお、グラジエントの条件は、以下のとおりである。
【0031】
濃度勾配条件
時間(分) A液濃度(体積%) B液濃度(体積%)
0 97% 3%
5 97% 3%
37 80% 20%
43 80% 20%
43.5 0% 100%
48.5 0% 100%
49 97% 3%
60 97% 3%
【0032】
2.アストラガリンの分析
試料2gを採取し、メタノール20mLを加えて5分間超音波抽出した後、25mLに定容する。次いで、1mLを分取し、25mLに定容した後、高速液体クロマトグラフ−タンデム型質量分析計を用いて分析する。
【0033】
分析条件は次のとおりである。
・カラム :InertSustain C18、φ2.1mm×150mm、粒径3μm
・移動相 :水、アセトニトリル及び酢酸の混液
・流量 :0.2mL/min
・カラム温度 :40℃
・イオン化法 :エレクトロスプレー(負イオン検出モード)
・設定イオン数:m/z 446.8→254.9
【0034】
また、アストラガリンの標準品を用いて濃度既知の溶液を調製し、高速液体クロマトグラフ分析に供することにより検量線を作成し、アストラガリンを指標として、前記試料溶液中のアストラガリンの定量を行う。
【0035】
3.バニリンの分析
試料10mLをGC用ヘッドスペースバイアル(20mL)に採取し、塩化ナトリウム4gを添加する。バイアルに攪拌子を入れて密栓し、スターラーで30分間撹拌しながら、SPMEファイバー(シグマアルドリッチ社製、50/30μm、DVB/CAR/PDMS)に含有成分を吸着させる。吸着後、SPMEファイバーを注入口で加熱脱着し、GC/MS測定を行う。分析機器は、Agilent 7890A/5975Cinert(アジレント・テクノロジー社製)を使用する。
【0036】
分析条件は次のとおりである。
・カラム :TC―WAX(30m(長さ),0.25mm(内径),0.25μm(膜厚))
・カラム温度 :40℃ (3min)→ 20℃/min→ 250℃
・カラム圧力 :定流量モード(31kPa)
・カラム流量 :lmL/min(He)
・注入口温度 :260℃
・注入方式 :スプリットレス
・検出器 :MS
・イオン源温度:230℃
・イオン化方法:EI(70eV)
・スキャン範囲:SCAN
・ゲイン :1729V
【0037】
購入試薬をエタノールで溶解させて、段階希釈し、標品を調製した。所定濃度の標品を試料に添加し、試料単体と同様にSPMEファイバーに吸着させ、GC/MS測定を行う。なお、定量にはm/z151のイオンのピーク面積を用いる。
【0038】
4.デキストリンの分析
(1)定量法
試料、及び各濃度の標準溶液1.5mLに、1N−NaOH水溶液を250μLと0.5 MのPMP(3−メチル−1−フェニル−5−ピラゾロン)−メタノール溶液を500μL加え、70℃で30分加熱する。得られた溶液に 対し、1N−HCl水溶液を250μLにて中和し、5mLのクロロホルムを加え分配し、水層を測定試料とする。上記操作により得られた測定試料について、高速液体クロマト グラフィ質量分析を用い、下記条件にて測定する。
【0039】
分析条件
・HPLC装置:型式ACQUITY UPLC、Waters製
・MS装置 :型式SYNAPT G2−S HDMS型、Waters製
・イオン化 :ESI
・質量範囲 :m/z 100−2500
・カラム :型式Unison UK−C18 UP(2.0×100mm,3μm),インタクト社製
・移動相 :E液:ギ酸0.05%水溶液、F液:アセトニトリル(%F=15→90)
・流量 :0.6mL/min
・注入量 :1μL
【0040】
(2)デキストロース当量
(I)分析は、デキストリンに含まれているぶどう糖、麦芽糖などの還元糖分をぶどう糖として定量する場合に適用し、次の手順にしたがって行う。
・水分の定量
・レイン・エイノン法による還元糖分の定量
・ぶどう糖として計算した還元糖の含有率(DE値、%)の計算
【0041】
(II)試料の調製及び力価の標定
(II-A)試料の調製
(II-1)標準転化糖溶液
しょ糖(試薬)4.75gを正確に量り取り、90mLの水を使用して500mL容メスフラスコに移し入れる。これに塩酸(比重1.18)5mLを加え、20〜30℃で3日間放置した後、水を加えて定容し、冷暗所に保存する。その50mLを200mL容メスフラスコにとり、フェノールフタレインを指示薬として1mol/L水酸化ナトリウム溶液で中和した後、水を加えて定容する。これを転化糖溶液としてフェーリング溶液の力価の標定に用いる。
(II-2)メチレンブルー溶液
1%メチレンブルー1gを水に溶かして100mLとする。
(II-3)フェーリング溶液
A液:硫酸銅(CuSO
4・5H
2O)34.639gを水に溶かして500mLとし、2日間放置後ろ過する。
B液:酒石酸カリウムナトリウム(KNaC
4H
4O
6・4H
2O)173gと水酸化ナトリウム50gを水に溶かして500mLとし、これを2日間放置後ろ過する。
【0042】
(II-B)フェーリング溶液の力価の標定
フェーリング溶液A液5.0mL及びB液5mLを200mL容三角フラスコにとり、50mL容ビュレットを用いて標準転化糖溶液19.5mLを加える。電熱器上で2分間沸騰させた後、メチレンブルー溶液4滴を加え、沸騰しながら標準転化糖溶液を滴下し、青色が消失したところを終点とする。滴定は沸騰し始めてから3分以内に終了する。この滴定を3回行い、平均値を求める。但し、3回の平均値を滴定値とするが、各滴定値の差は0.1mL以内とする。また、力価の小数点以下第4位を四捨五入し、1±0.02の範囲内に収める。
【0043】
【数1】
【0044】
〔式中、Aは、消費した標準転化糖溶液の量(mL)を示す。〕
【0045】
(III)試料の調製
分析試料は、試料の性状に応じて、次により調製する。
(III-1)液体試料
液体中に結晶又は塊状物が析出している場合には、密閉容器に入れ、60〜70℃の水浴に浸漬して溶解し、よく振り混合した後、室温に冷却する。
(III-2)固体試料
粉末又は結晶状とし、塊がある場合には砕き、よく混合する。
【0046】
(IV)水分の定量
水分の定量は、試料の性状により、次の方法で行う。
(IV-1)液体試料
乾燥助剤として、予め秤量瓶に海砂を約15g取り、ガラス棒とともに105℃の乾燥機中で乾燥して恒量を求める。次に、前記(III)で調製した均一試料を固形分として約2gに相当する量を正確に量り取り、必要があれば少量の水を全体が浸るまで加え、時々ガラス棒でかき混ぜながら水浴上で加熱して大部分の水を揮散させる。更に、105℃の乾燥機内で時々かき混ぜ、ほとんど乾燥するまで乾かした後、真空乾燥機に移し、70℃で4時間乾燥する。デシケータ中で室温まで放冷した後、重量を量る。1時間ずつ真空乾燥を繰り返して恒量を求める。減量が、2mg以下の変化になった時を恒量に達したとみなす。
(IV-2)固体試料
前記(III)で調製した均一試料約2gを予め恒量にした秤量瓶に正確に量り取り、真空乾燥機で70℃、4時間乾燥する。次に、デシケータ中で室温まで放冷した後、重量を量る。更に、1時間ずつ真空乾燥を繰り返して、減量が2mg以下の変化になった時を恒量に達したとみなす。
(IV-3)水分の計算
試料中の水分は、次式により算出する。数値は小数点以下第2位を四捨五入する。
【0047】
【数2】
【0048】
〔式中、W
0は試料の採取量(g)を示し、W
1は乾燥後の試料の重量(g)を示す。〕
【0049】
(V)DE値の定量
(V-1)検液の調製
前記(III)で調製した均一試料約10gを正確に量り取り、水に溶かして500mL容メスフラスコに移し入れ、水を加えて容定し検液とする。
(V-2)滴定操作
フェーリング溶液A液5.0mL及びB液5mLを200mL容三角フラスコに採り、50mL容ビュレットを用いて、(V-1)で調製した検液15mLを加え、(II-B)の要領にしたがって滴定し、これを予備滴定とする。更に同様にして、予備滴定で得た滴定数より約1mL少ない量の検液を加え、(II-B)の要領にしたがって滴定する。ここで得た検液の消費量にフェーリング溶液の力価を乗じ、この数値から表1に示すレイン・エイノン糖量表(ぶどう糖)を用いて還元糖濃度(DE値,mg/100mL)をぶどう糖として求める。
(V-3)DE値の計算
試料の乾燥状態におけるぶどう糖として計算したDE値は、次式により算出する。数値は、小数点以下第2位を四捨五入する。
【0050】
【数3】
【0051】
〔式中、
D
Sは、表1に示すレイン・エイノン糖量表(ぶどう糖)を用いて求めた検液100mL中のぶどう糖量(mg)を示し、
Mは、(IV)で秤量した試料の水分(%)を示し、
Sは、(V-1)で秤量した試料の採取量(g)を示す。〕
【0052】
【表1】
【0053】
5.pH測定
各インスタント茶飲料を20℃の水で66質量倍に希釈し、還元飲料100mLを300mLのビーカーに量り取り、pHメータ(HORIBA コンパクトpHメータ、堀場製作所製)を用いて、20℃に温度調整をして測定した。
【0054】
6.官能評価
各インスタント茶飲料を20℃の水で66質量倍に希釈した還元飲料の「苦味」について専門パネル4名が官能試験を行った。官能試験では、各パネリストが下記の評価基準とすることに合意したうえで実施した。その後、専門パネルの評点の平均値を求めた。なお、評点の平均値は、小数第2位を四捨五入するものとする。
【0055】
苦味の評価基準
苦味は、飲用したときの苦味の強さを評価した。
1:苦味が非常に強い
2:苦味が強い
3:苦味がやや強い
4:苦味がごくわずかに強い
5:苦味が程よい
【0056】
製造例1
緑茶粉末の製造
2番煎茶葉(宮崎県産(2016年度産))を石臼で挽き、平均粒子径(d
50)が20μmの緑茶粉末を得た。緑茶粉末は、非重合体カテキン類の含有量が11.1質量%であり、アストラガリンの含有量が0.034質量%であった。
【0057】
実施例1〜6及び比較例1、2
表2に示す各成分を混合し、粉末状のインスタント茶飲料を得た。得られたインスタント茶飲料について分析及び官能評価を行った。得られたインスタント茶飲料はいずれも固形分量が97.0質量%であった。なお、実施例1〜6及び比較例1、2のインスタント茶飲料を20℃の水で66質量倍に希釈して調製された還元飲料は、非重合体カテキン類の含有量が0.14質量%であり、pH(20℃)が5.8であった。また、官能評価は、実施例6のインスタント茶飲料から調製された還元飲料の苦味の強度を評点「5」とし、比較例1のインスタント茶飲料から調製された還元飲料の苦味の強度を評点「1」として、上記評価基準にしたがって行った。その結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
実施例7及び比較例3
表3に示す各成分を混合し、粉末状のインスタント茶飲料を得た。得られたインスタント茶飲料について分析及び官能評価を行った。得られたインスタント茶飲料はいずれも固形分量が97.0質量%であった。なお、実施例7及び比較例3のインスタント茶飲料を20℃の水で66質量倍に希釈して調製された還元飲料は、非重合体カテキン類の含有量が0.28質量%であり、pH(20℃)が5.8であった。また、官能評価は、比較例3のインスタント茶飲料から調製された還元飲料の苦味の強度を評点「1」として、上記評価基準にしたがって行った。その結果を表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
実施例8、9及び比較例4
表4に示す各成分を混合し、粉末状のインスタント茶飲料を得た。得られたインスタント茶飲料について分析及び官能評価を行った。得られたインスタント茶飲料はいずれも固形分量が97.0質量%であった。なお、実施例8及び比較例4のインスタント茶飲料を20℃の水で66質量倍に希釈して調製された還元飲料は、非重合体カテキン類の含有量が0.11質量%であり、実施例9のインスタント茶飲料から調製された還元飲料は、非重合体カテキン類の含有量が0.12質量%であった。また、いずれの還元飲料もpH(20℃)は、5.8であった。また、官能評価は、実施例1と同一基準で行った。その結果を表4に示す。
【0062】
【表4】
【0063】
実施例10〜12
表5に示す各成分を混合し、粉末状のインスタント緑茶飲料を得た。得られたインスタント茶飲料について分析及び官能評価を行った。得られたインスタント茶飲料はいずれも固形分量が97.0質量%であった。なお、実施例10〜12のインスタント茶飲料を20℃の水で66質量倍に希釈して調製された還元飲料は、非重合体カテキン類の含有量が0.15質量%であり、pH(20℃)が5.8であった。また、官能評価は、実施例1と同一基準で行った。その結果を表5に示す。
【0064】
【表5】
【0065】
実施例13、14
表6に示す各成分を混合し、濃縮液状のインスタント緑茶飲料を得た。得られたインスタント茶飲料について分析及び官能評価を行った。なお、実施例13,14のインスタント茶飲料を20℃の水で66質量倍に希釈して調製された還元飲料は、非重合体カテキン類の含有量が0.15質量%であり、pH(20℃)が5.8であった。また、官能評価は、実施例1と同一基準で行った。その結果を表6に示す。
【0066】
【表6】
【0067】
表2〜6から、高濃度の非重合体カテキン類に、アストラガリンを含有させ、非重合体カテキン類とアストラガリンとの質量比を特定範囲内に制御することで、非重合体カテキン類を強化しながらも、非重合体カテキン類の苦味が低減されたインスタント茶飲料が得られることがわかる。