(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807895
(24)【登録日】2020年12月10日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】角形鋼管の溶接方法
(51)【国際特許分類】
B23K 33/00 20060101AFI20201221BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20201221BHJP
B23K 9/00 20060101ALI20201221BHJP
E04B 1/24 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
B23K33/00 A
E04B1/58 503H
B23K9/00 501B
E04B1/24 Q
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-104366(P2018-104366)
(22)【出願日】2018年5月31日
(65)【公開番号】特開2019-209331(P2019-209331A)
(43)【公開日】2019年12月12日
【審査請求日】2019年9月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000204000
【氏名又は名称】太平電業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】山田 幸生
【審査官】
岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−273222(JP,A)
【文献】
特開平02−147747(JP,A)
【文献】
特開平07−292781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 33/00
E04B 1/58
B23K 9/00
E04B 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔をあけて対向する既設角形鋼管に、前記既設角形鋼管同士を連結する連結角形鋼管を溶接する、角形鋼管の溶接方法において、
前記既設角形鋼管の既設角形鋼管端部を、前記既設角形鋼管端部の下部が前方に突出するように段状に切り欠き、前記連結角形鋼管の連結角形鋼管端部を、前記連結角形鋼管端部の上部が前方に突出するように段状に切り欠き、前記既設角形鋼管端部の上部内面にコ字状に形成されている既設角形鋼管用裏当て金を取り付け、前記連結角形鋼管端部の下部内面にコ字状に形成されている連結角形鋼管用裏当て金を取り付け、前記連結角形鋼管を前記間隔内に嵌め込み、そして、前記既設角形鋼管端部と前記連結角形鋼管端部とを溶接して接合することを特徴とする、角形鋼管の溶接方法。
【請求項2】
前記連結角形鋼管により連結された前記既設角形鋼管は、支柱間に固定される梁であることを特徴とする、請求項1に記載の、角形鋼管の溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、角形鋼管の溶接方法、特に、間隔をあけて対向する既設角形鋼管に連結角形鋼管を溶接して、既設角形鋼管同士を連結する際に、連結角形鋼管の支持が不要であり、溶接長さが短く、しかも、裏当て金を角形鋼管の端部外面に取り付ける必要がない、角形鋼管の溶接方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
角形鋼管の溶接方法の一例が特許文献1に開示されている。以下、この溶接方法を従来溶接方法といい、図面を参照しながら説明する。
【0003】
図3は、従来溶接方法による溶接前の角形鋼管を示す部分正面図、
図4は、
図3のA−A断面図、
図5は、従来溶接方法による溶接後の角形鋼管を示す部分正面図、
図6は、
図5のB−B断面図である。
【0004】
従来溶接方法により角形鋼管同士は、以下のようにして溶接される。
【0005】
先ず、
図3および
図4に示すように、両角形鋼管11の端部上部に切欠き部12を連続して形成し、切欠き部12が形成されていない両角形鋼管11の端部下部を突き合せ、この端部下部を溶接して接合する。なお、両角形鋼管11の端部下部の溶接の際には、端部下部の外面に裏当て金13を取り付け、両角形鋼管11の端部上部の内面には、後述する塞ぎ部材15の溶接の際に必要な裏当て金14を予め取り付けておく。
【0006】
次いで、
図5および
図6に示すように、両角形鋼管11に連続して形成した切欠き部12に、この切欠き部12と同形状に形成した塞ぎ部材15を嵌め込み、角形鋼管11と塞ぎ部材15とを溶接して接合する。
【0007】
以上のようにして、角形鋼管11同士が塞ぎ部材15を介して溶接される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−292781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来溶接方法によれば、角形鋼管11同士を上向き溶接を行うことなく溶接することはできるが、
図7に示すように、支柱16間に間隔をあけて対向して固定された既設角形鋼管17に連結角形鋼管18を溶接して、既設角形鋼管同士17を連結する際には、以下のような問題がある。
【0010】
(a)溶接に際して連結角形鋼管18の落下を防止するために、連結角形鋼管18を何らかの手段により支持する必要があるので、溶接作業が容易に行なえない。
(b)塞ぎ部材15を使用するため、溶接長さが長くなり、その分、溶接作業に時間を要する。
(c)裏当て金13を両角形鋼管11の端部下部の外面に取り付ける必要があるので、角形鋼管11の外面に凹凸が生じ、外観および機能上、好ましくない。
【0011】
従って、この発明の目的は、間隔をあけて対向する既設角形鋼管に連結角形鋼管を溶接して、既設角形鋼管同士を連結する際に、連結角形鋼管の支持が不要であり、溶接長さが短く、しかも、裏当て金を角形鋼管の端部外面に取り付ける必要がない、角形鋼管の溶接方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0013】
請求項1に記載の発明は、間隔をあけて対向する既設角形鋼管に、前記既設角形鋼管同士を連結する連結角形鋼管を溶接する、角形鋼管の溶接方法において、前記既設角形鋼管の既設角形鋼管端部を、前記既設角形鋼管端部の下部が前方に突出するように段状に切り欠き、前記連結角形鋼管の連結角形鋼管端部を、前記連結角形鋼管端部の上部が前方に突出するように段状に切り欠き、前記既設角形鋼管端部の上部内面に
コ字状に形成されている既設角形鋼管用裏当て金を取り付け、前記連結角形鋼管端部の下部内面に
コ字状に形成されている連結角形鋼管用裏当て金を取り付け、前記連結角形鋼管を前記間隔内に嵌め込み、そして、前記既設角形鋼管端部と前記連結角形鋼管端部とを溶接して接合することに特徴を有するものである。
【0015】
請求項
2に記載の発明は、請求項
1に記載の発明において、前記連結角形鋼管により連結された前記既設角形鋼管は、支柱間に固定される梁であることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、間隔をあけて対向する既設角形鋼管に連結角形鋼管を溶接して、既設角形鋼管同士を連結する際に、連結角形鋼管を何らかの手段により支持する必要がない。
【0017】
また、この発明によれば、従来溶接方法のように塞ぎ部材を使用しないので、従来溶接方法と比べて溶接長さが短い。
【0018】
また、この発明によれば、裏当て金を角形鋼管の端部外面に取り付ける必要がないので、角形鋼管の外面に凹凸が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明の、角形鋼管の溶接方法による溶接前の角形鋼管を示す部分斜視図である。
【
図2】この発明の、角形鋼管の溶接方法による溶接後の角形鋼管を示す部分斜視図である。
【
図3】従来溶接方法による溶接前の角形鋼管を示す部分正面図である。
【
図5】従来溶接方法による溶接後の角形鋼管を示す部分正面図である。
【
図7】従来溶接方法により連結角形鋼管を介して既設角形鋼管同士を溶接した状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明の、角形鋼管の溶接方法の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、この発明の、角形鋼管の溶接方法による溶接前の角形鋼管を示す部分斜視図、
図2は、この発明の、角形鋼管の溶接方法による溶接後の角形鋼管を示す部分斜視図である。
【0022】
図1および
図2において、1は、間隔をあけて対向する既設角形鋼管である。既設角形鋼管1は、支柱(図示せず)間に間隔Sをあけて対向して水平に固定されている。既設角形鋼管1の既設角形鋼管端部は、既設角形鋼管端部の下部1aが前方に突出するように段状に切り欠かれている。
【0023】
2は、既設角形鋼管1同士を連結して梁等を構築する連結角形鋼管である。連結角形鋼管2の連結角形鋼管端部の上部2aは、連結角形鋼管端部が前方に突出するように段状に切り欠かれている。
【0024】
3は、既設角形鋼管端部の上部1bの内面に取り付けられた既設角形鋼管用裏当て金である。既設角形鋼管用裏当て金3は、コ字状に形成され、既設角形鋼管端部の上部1bの内面に、上部1bから若干突出して下向きに取り付けられている。
【0025】
4は、連結角形鋼管端部の下部2bの内面に取り付けられた連結角形鋼管用裏当て金である。連結角形鋼管用裏当て金4は、コ字状に形成され、連結角形鋼管端部の下部2bの内面に、下部2bから若干突出して上向きに取り付けられている。既設角形鋼管1と連結角形鋼2との溶接に際して、管既設角形鋼管用裏当て金3の下部と連結角形鋼管用裏当て金4の上部とは、上下方向において重なっている(
図2参照)。
【0026】
この発明の、角形鋼管の溶接方法によれば、以下のようにして、間隔Sをあけて対向する既設角形鋼管1に、既設角形鋼管1同士を連結する連結角形鋼管2が溶接される。
【0027】
図1に示すように、端部が段状に切り欠かれ、端部上部1bの内面に既設角形鋼管用裏当て金3が取り付けられた既設角形鋼管1の間隔Sに、端部が段状に切り欠かれ、端部下部2bの内面に連結角形鋼管用裏当て金4が取り付けられた連結角形鋼管2を嵌め込む。
【0028】
そして、既設角形鋼管端部と連結角形鋼管端部とを完全溶け込み溶接して接合する。
【0029】
この際、既設角形鋼管端部の下部1aと連結角形鋼管端部の上部2aとが当接するとともに、既設角形鋼管用裏当て金3と連結角形鋼管端部の上部2aの内面とが当接し、連結角形鋼管用裏当て金4と既設角形鋼管端部の下部1aの内面とが当接するので、既設角形鋼管1同士を連結する際に、連結角形鋼管2を何らかの手段により支持する必要がない。
【0030】
しかも、従来溶接方法のように塞ぎ部材を使用しないので、従来溶接方法と比べて溶接長さが短い。
【0031】
さらに、既設角形鋼管用裏当て金3および連結角形鋼管用裏当て金4を、既設角形鋼管1および連結角形鋼管2の端部外面に取り付ける必要がないので、既設角形鋼管用裏当て金3および連結角形鋼管用裏当て金4の外面に凹凸が生じない。
【0032】
以上、説明したように、この発明によれば、間隔Sをあけて対向する既設角形鋼管1に連結角形鋼管2を溶接して、既設角形鋼管1同士を連結する際に、連結角形鋼管2を何らかの手段により支持する必要がないので、溶接作業が容易に行なえる。
【0033】
また、この発明によれば、従来溶接方法のように塞ぎ部材を使用せず、既設角形鋼管1と連結角形鋼管2との溶接のみですむので、従来溶接方法と比べて溶接長さが短い。従って、溶接作業時間が短縮される。
【0034】
また、この発明によれば、既設角形鋼管用裏当て金3および連結角形鋼管用裏当て金4を、既設角形鋼管1および連結角形鋼管2の端部外面に取り付ける必要がないので、既設角形鋼管1および連結角形鋼管2の外面に凹凸が生じず、外観および機能上、好ましい。
【符号の説明】
【0035】
1:既設角形鋼管
1a:既設角形鋼管端部の下部
1b:既設角形鋼管端部の上部
2:連結角形鋼管
2a:連結角形鋼管端部の上部
2b:連結角形鋼管端部の下部
3:既設角形鋼管用裏当て金
4:連結角形鋼管用裏当て金
11:角形鋼管
12:切欠き部
13:裏当て金
14:裏当て金
15:塞ぎ部材
16:支柱
17:既設角形鋼管
18:連結角形鋼管