特許第6807913号(P6807913)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6807913空気清浄器のためのフィルターカートリッジ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807913
(24)【登録日】2020年12月10日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】空気清浄器のためのフィルターカートリッジ
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/014 20060101AFI20201221BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20201221BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   A61L9/014
   B01J20/18 C
   B01J20/20 E
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-230140(P2018-230140)
(22)【出願日】2018年12月7日
(62)【分割の表示】特願2014-131458(P2014-131458)の分割
【原出願日】2014年6月26日
(65)【公開番号】特開2019-34238(P2019-34238A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2018年12月20日
(31)【優先権主張番号】1356322
(32)【優先日】2013年6月28日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】594034072
【氏名又は名称】セブ ソシエテ アノニム
(73)【特許権者】
【識別番号】514162977
【氏名又は名称】エセラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−ピエール スーリエ
(72)【発明者】
【氏名】エリック マルシャル
(72)【発明者】
【氏名】イブ ビガイ
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル シュバリエ
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−030977(JP,A)
【文献】 特開平11−300138(JP,A)
【文献】 特表2009−508134(JP,A)
【文献】 特開2004−230057(JP,A)
【文献】 特開平04−190846(JP,A)
【文献】 特開2000−229238(JP,A)
【文献】 特開2002−263415(JP,A)
【文献】 特開平08−040919(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/011136(WO,A1)
【文献】 特開平08−206497(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/044587(WO,A1)
【文献】 特開2005−304844(JP,A)
【文献】 特開2015−051261(JP,A)
【文献】 特開平08−280781(JP,A)
【文献】 特開2008−148804(JP,A)
【文献】 特開2010−022979(JP,A)
【文献】 米国特許第05522808(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/01−014
B01D 39/14−16
B01J 20/18−20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾材を確実に保持する構造体(12,20)を具え、前記濾材は活性炭およびゼオライトからなるグループから選択される標準的な吸収材料を具え、前記濾材はアルデヒド類の化学汚染物質を捕捉することができるようなプローブ分子で機能化された微小多孔質の特定吸収材料をさらに具え、この特定吸収材料は、ゾル−ゲル法により製造されて前記プローブ分子の金属酸化物の多孔質構造体にその準備中に本来の場所に取り込まれ、アルデヒド基と反応することができる官能基を担持する前記プローブ分子は、エナミノンおよび対応するβ−ジケトン/アミン対と、イミンと、ヒドラジンと、これらの化合物から誘導される塩とからなるグループから選択され、前記特定吸収材料の特定表面積が600m2/gから1200m2/gまでの間にあることを特徴とする空気清浄器のためのフィルターカートリッジ。
【請求項2】
前記濾材を確実に保持する前記構造体は、硬質の胞状構造体(12)であって、その胞状体(11)が前記濾材を収容することを特徴とする請求項1に記載の空気清浄器のためのフィルターカートリッジ。
【請求項3】
微小有孔フィルムが前記硬質の胞状構造体(12)の上流(15)面および下流(14)面に組み付けられていることを特徴とする請求項2に記載の空気清浄器のためのフィルターカートリッジ。
【請求項4】
濾材に対する前記胞状体の充填率が40%よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の空気清浄器のためのフィルターカートリッジ。
【請求項5】
前記特定吸収材料の形状が円柱状であってL/D>1の比率を持ち、ここでLが前記特定吸収材料の長さに対応すると共にDが前記特定吸収材料の直径に対応することを特徴とする請求項に記載の空気清浄器のためのフィルターカートリッジ。
【請求項6】
前記濾材を確実に保持する前記構造体(20)は、前記標準的な吸収材料と前記特定吸収材料とを含浸/散布した複数枚のフィルム(21)の集合体であることを特徴とする請求項1に記載の空気清浄器のためのフィルターカートリッジ。
【請求項7】
前記特定吸収材料の重量が前記標準的な吸収材料の重量の5%から95%までの間に対応することを特徴とする請求項1から請求項の何れかに記載の空気清浄器のためのフィルターカートリッジ。
【請求項8】
請求項1から請求項の何れかに記載のフィルターカートリッジを少なくとも1つ具えていることを特徴とする空気清浄器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には空気清浄器の分野、より詳細には、これらの種類の器具のための特にアルデヒドおよびホルムアルデヒドを吸収する能力を持ったフィルターカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
アルデヒドという用語は、ホルムアルデヒドと、アセトアルデヒドと、プロピオンアルデヒドと、ブチルアルデヒドと、アクロレインと、ペンタナールと、ヘキサナールと、ベンズアルデヒドとからなるグループから好ましくは選択される末端カルボニル官能基を有するあらゆる有機分子を示す。
【0003】
アルデヒドは最も豊富な家庭の化学汚染物質に含まれている。これらの供給源は非常に多数である。これらはメタンの光酸化の如き屋外製品に結合されることができる。しかしながら、遊離アルデヒドの主たる供給源は住居内に見いだされ、チップボードやパーティクルボードおよび合板を製造するために用いられる樹脂および接着剤や、壁および仕切りに注入することにより断熱材として用いられる尿素−ホルムアルデヒド断熱発泡体および布帛カバーならびに壁紙や塗料や皮革など、極めて多様である。
【0004】
ホルムアルデヒドはまた、防腐剤または消毒剤あるいは乾燥剤である。これらの理由のため、これは病院環境にて手術器具を殺菌するための溶媒として、また死体防腐処理が行われる葬儀サービス業にても広く用いられている。
【0005】
このような化学汚染物質の公衆衛生に対する悪影響を考慮すると、アルデヒド(およびとりわけホルムアルデヒド)の濃度を減らすと共に新奇な除染器具を提供することによって、家屋における雰囲気の浄化を確実にすることが必要であると思われる。
【0006】
周知の従来技術によると、空気中に存在する気体の化学汚染物質を処理するための方法は2つのカテゴリーに分けられることができる。すなわち、
・有機化合物を完全な無機質化まで、すなわちこれらが酸化または光酸化によってCO2およびH2Oに変換するまで分解することにより、汚染物質を分解すること。
・汚染物質を保持するけれども分解しない多孔質吸収材料により、これを捕捉すること。これらの材料は、ゼオライトおよび活性炭材料であり、これらは揮発性有機化合物および臭気を捕捉するための空気処理で一般に用いられる。
【0007】
第1のカテゴリーは、オゾンの如き酸化剤を用いる器具か、または光触媒またはプラズマの如き酸化を与える技術に基づく。
【0008】
第2のカテゴリーは、大きな特定表面積(>100m2/g)を持つ多孔質材料の吸収力および吸収能力を利用し、分子は多孔質媒体に保持されるけれども分解されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
第1のカテゴリーは、複雑であって相対的に高価である欠点を有する。さらにまた、それは除去される化合物よりもさらに危険ということになるかも知れない二次分解生成物を生み出す可能性がある。
【0010】
第2のカテゴリーは、除去されるべき1つの化学物質から他のものまで捕捉割合が大きく変動するという欠点を有する。例えば、活性炭は芳香族化合物を吸収するのに極めて効果的であるけれども、アルデヒドや特にホルムアルデヒドを吸収するためには全く効果がない。
【0011】
吸収材料の製造業者らは、これらの材料の吸収性を、これらを機能化させることによって改善しようと努力している。困ったことに、この機能付与は注入により達成され、これが充分な量でなされた場合、細孔を塞いでしまう欠点を有し、従って捕捉性能を制限する。
【0012】
本発明の目的は、現在の吸収材料では効果的がない物質、特にアルデヒド、とりわけホルムアルデヒドに関し、空気から汚染化合物を吸収する媒体を加えることによってフィルターカートリッジの性能を改善することにある。従って、恒久的に形成されたフィルターカートリッジは、すべての大気汚染物質の大部分を大量に捕捉する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、濾材を確実に保持する構造体を具え、この濾材は、活性炭およびゼオライトからなるグループから選択される標準的な吸収材料を具え、前記濾材はアルデヒド類の化学汚染物質を捕捉することができるようにプローブ分子で機能化させた微小多孔質の特定吸収材料をさらに具えたことを特徴とする空気清浄器のためのフィルターカートリッジで達成される。
【0014】
他の別な実施形態によると、前記特定吸収材料は、アルデヒドを捕捉することができるプローブ分子の金属酸化物の微小多孔質構造体に取り込むため、ゾル−ゲル法により製造される。
【0015】
他の別な実施形態によると、アルデヒド基と反応することができる官能基を担持する前記プローブ分子は、エナミノンと、対応するβ−ジケトン/アミン対と、イミンと、ヒドラジンと、これらの化合物から誘導される塩とからなるグループから選択される。
【0016】
他の別な実施形態によると、前記濾材を確実に保持する前記構造体は、硬質の胞状構造体であって、その胞状体が前記濾材を収容する。
【0017】
他の別な実施形態によると、微小有孔フィルムが前記硬質の胞状構造体の上流面および下流面に組み付けられる。
【0018】
他の別な実施形態によると、濾材に対する前記胞状体の充填率が40%よりも大きい。
【0019】
他の別な実施形態によると、前記特定吸収材料が0.8mmから2mmまでの間にある細粒の形態にある。
【0020】
他の別な実施形態によると、前記細粒の形状が円柱状であってL/D>1の比率を持ち、ここでLが細粒の長さに対応すると共にDが細粒の直径に対応する。
【0021】
他の別な実施形態によると、前記濾材を確実に保持する前記構造体は、前記標準的な吸収材料と前記特定吸収材料とを含浸/散布した複数枚のフィルムの集合体である。
【0022】
他の別な実施形態によると、前記特定吸収材料の重量は前記標準的な吸収材料の重量の5%から95%までの間に対応する。
【0023】
他の別な実施形態によると、前記特定吸収材料の前記特定表面積は600mm2/gと1200m2/gとの間にある。
【0024】
本発明はまた、上で規定したようなフィルターカートリッジを具えた空気清浄器にも関係する。
【0025】
本発明の他の特長および利点は、決して限定していない実施例として与えられ、かつ添付図面に例示した本発明の実施形態の以下の詳細な説明を読解することから、より明確に浮かび上がろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の第1のフィルターカートリッジ構造体を概略的に例示する。
図2図2は、本発明の第2フィルターカートリッジ構造体の正面図を例示する。
図3図3は、本発明の第2フィルターカートリッジ構造体の立体投影図を例示する。
図4図4は、本発明のカートリッジの第1の別な一実施形態に関し、部屋のホルムアルデヒドの濃度変化を例示する。
図5図5は、本発明のカートリッジの第2の別な一実施形態に関して部屋のホルムアルデヒドの濃度変化を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、濾材を具えたフィルターカートリッジから本質的に構成される。濾材は吸収材料の1つ以上のベッドを具え、これは組み合わせられるか、または別々に作られ、屋内空気中に存在する揮発性有機化合物を吸収することによって除去することを可能にする。本発明によると、吸収される揮発性有機化合物は、とりわけアルデヒドおよび/または溶剤である。このフィルターカートリッジは、雰囲気を浄化するために数m3/hから数千m3/h程度の流量にて機能することができる器具に導入されるように設計される。
【0028】
図1図2および図3は、本発明の範囲にて用いられる可能性の高いフィルターカートリッジ構造体の実施形態を例示する。
【0029】
これらの構造体は、空気清浄器を介した空気の流れ中に本発明の濾材の保持を可能にする。
【0030】
図1は、一連のフィルム21を具えた(本質的に周知の)構造体20を例示している。この代案において、濾材は1つまたは複数枚のフィルム21に含浸させられる。次に、すべてのフィルムは、フィルターカートリッジを形成するために(例えば糊付けまたは溶着により)組み付けられる。
【0031】
フィルム21の寸法および数は、空気清浄器の望ましい性能に本質的に依存する。
【0032】
図2および図3によると、フィルターカートリッジは、硬質の胞状構造体12を具えている。この代わりの実施形態によると、構造体はハニカム構造である。濾材は、構造体12の胞状体11に配される。胞状体11での濾材の保持を確実にするため、微小有孔フィルムが硬質の胞状構造体12の下流面14および上流面15に配されている。フィルムは、例えば空気流に対して完全に透過性があって、どのような濾過機能も有していない。
【0033】
2つのフィルターカートリッジ構造体の代替のため、カートリッジは空気清浄器における空気流Fに対し直交状態で配されている。
【0034】
本発明のフィルターカートリッジの寸法形状は、異なる平面または大きさの形態にあってよい。フィルターカートリッジは、1つ以上の吸収材料を含む細粒の混合体および/または連続する層を含む。
【0035】
本発明によると、濾材は、広範囲の揮発性有機化合物を室内空気から除去することができる少なくとも1つの標準的な吸収材料と、この標準的な吸収材料によって効果的に除去されないアルデヒドおよびより詳細にはホルムアルデヒドの如き化合物を捕捉するための特定吸収材料とを組み合わせたものを具えている。
【0036】
本発明によると、標準的な吸収材料は、活性炭およびゼオライトからなるグループから選択される。
【0037】
特定吸収材料は、汚染物質または汚染物質の一群を特に捕捉することができる材料である。例えば、濾材は、微小多孔質構造体に組み込まれた適合プローブ(または有効成分)分子によってアルデヒド族を捕捉することができる。充分な説明を受けた上でのプローブ分子の選択は、ホルムアルデヒドの如き特定の汚染物質の捕捉を可能にすることができる。特定のゾル−ゲル吸収材料を製造するための方法は、注入によらずにその準備中に(本来の場所に)有効成分の導入を可能にする。この特定吸収材料を製造するための方法は、注入がないので細孔を塞ぐことなく、多量の有効成分を導入することを可能にする。従って、注入によって細孔が塞がれてしまうことを回避することができる。
【0038】
従って、適切な方法でプローブ分子を選択することにより、標準的な吸収剤材料が排除することができないか、またはほんの僅かな量のみ排除することができるに過ぎないホルムアルデヒドの如き有害汚染物質を排除することが可能である。
【0039】
特定のゾル−ゲル吸収材料の場合、汚染物質は有効反応成分と反応し、より大きな分子量を持つ第3のそれほど有害ではない分子を生じさせ、これは特定吸収材料の微小孔の網状組織に捕捉されたままとなる。他の吸収材料に対し、この特定吸収材料は恒久的な捕捉をもたらす。
【0040】
一例として、特定吸収材料は、その記述を参照することによってここに組み入れられる仏国特許出願第FR2890745号に記載された材料のグループから選択される。
【0041】
とりわけ、そして限定しない方法において、この材料は、ゾル−ゲル微小多孔質金属酸化物基材を具え、前記基材は、アルデヒド基と反応することができる少なくとも1つの官能基を持った少なくとも1つのプローブ分子を含む。
【0042】
アルデヒド基と反応することができる官能基を持つプローブ分子は、エナミノンと、対応するβ−ジケトン/アミン対と、イミンと、ヒドラジンと、これらの化合物から誘導される塩とからなるグループから選択される。
【0043】
エナミノンは次の式
【0044】
【化1】
【0045】
を有する。
【0046】
ここで、R1は水素か、アルキル基またはアリール基であり、
R2は水素であり、
R3は水素か、アルキル基またはアリール基であり、
R4は水素か、アルキル基またはアリール基であり、
R5は水素である。
【0047】
加えて、β−ジケトン/アミン対は次の式
【0048】
【化2】
【0049】
【化3】
【0050】
を有する。
【0051】
ここで、R1は水素か、アルキル基またはアリール基であり、
R2は水素であり、
R3は水素か、アルキル基またはアリール基であり、
R4は水素またはアルキル基であり、
R5は水素または対応する塩である。
【0052】
加えて、イミンはアクリジンイエローと、メチルイエローと、ジメチルイエローとからなるグループから選択されるシッフ塩基である。
【0053】
ヒドラジンは次の式
【0054】
【化4】
【0055】
を有する。
【0056】
ここで、R6は水素か、C1〜C20のアルキル基、好ましくはC1〜C10のアルキル基、より好ましくはメチル基,エチル基,イソプロヒル基,ブチル基,イソブチル基,t−ブチル基,ペンチル基か、あるいはC3〜C16のアリール基、とりわけフェニル基またはアリールスルホニル基であり、
R7はC3〜C16のアリール基、とりわけフェニル基またはアリールスルホニル基である。
【0057】
本発明によると、ゾル−ゲル法の微小多孔質金属酸化物基材は次の式
M(X)m(OR8)n(R9)p
を持つ少なくとも1つの金属酸化物から作成される。
ここで、Mはケイ素と、アルミニウムと、チタンと、ジルコニウムと、ニオブと、バナジウムと、イットリウムと、セリウムとからなるグループから選択される金属であり、
R8およびR9はアルキル基またはアリール基の何れかであり、
nおよびmおよびpは、これらの和がMの原子価と等しく、nが2以上であるような整数であり、
Xはハロゲン族元素である。
【0058】
上で規定したような、特にアルデヒド、とりわけホルムアルデヒドの捕捉を可能にする特定吸収材料は、ホルムアルデヒドの捕捉能力において、揮発性有機化合物全体に対して供される活性炭のそれよりも少なくとも100倍大きな有効性を持っており、気化したホルムアルデヒドを特に捕捉するために含ませた活性炭のそれよりも10倍大きい。特定吸収材料の恒久的な捕捉能力は、材料の1グラム当たり少なくとも0.01gのホルムアルデヒドを捕捉し得る。加えて、飽和状態になった場合であっても、この特定吸収材料は、気化したホルムアルデヒドを特に捕捉するため含浸させた活性炭のそれと等しい一定の吸収捕捉能力を有する。
【0059】
従来技術によると、活性炭またはゼオライトは、アルデヒド、特にホルムアルデヒドを効果的に除去しないけれども、この気体は、一方において室内空気中に非常に豊富に存在し、他方において健康に対し有害である。従って、標準的な吸収材料と特定吸収材料、特にアルデヒド、とりわけホルムアルデヒドに関して効果的なものとを組み合わせることによって、本発明のフィルターカートリッジは、プローブ分子で機能化させた微小多孔質の特定吸収材料の存在に起因してアルデヒド、特にホルムアルデヒドのみならず、活性炭またはゼオライトに起因した他の揮発性有機化合物、特に単環式の芳香族炭化水素(ベンゼン,トルエン,エチレン基,キシレンなど)の除去を可能にする。
【0060】
標準的な吸収材料と特定吸収材料との組み合わせは、これらの材料を混ぜ合わせるか、あるいは連続した単一材料層にこれらを組み合わせることによって、達成される。
【0061】
標準的な吸収材料および特定吸収材料をフィルターへの均一な導入のためにあらかじめ混ぜ合わせることができ、あるいはこれらを複数の層か、または物理的に分離された異なる量で散布することにより、別々に導入することができる。
【0062】
本発明によると、カートリッジの除染/ろ過能力は、とりわけ次のパラメーターによって決定される。
・標準的な吸収材料と特定吸収材料との間の重量比
・特定吸収材料の特定表面積
・特定吸収材料の形状
・標準的な吸収材料の物理的および化学的特性
【0063】
標準的な吸収材料と特定吸収材料との間の重量比は、5/95から95/5まで変化することができ、特定選択は、特性と、室内空気に存在する汚染物質の量と、達成されるべき望ましい性能とに基づいてなされる。
【0064】
一実施例として、20μg/m3のホルムアルデヒトと、200μg/m3の他の揮発性有機化合物とを含む空気に関し、10/90の重量比の特定吸収材料/活性炭を使用するという選択が与えられよう。しかしながら、特定吸収材料の量を2倍,4倍などにすることによって、本発明の濾材の有効性を2倍,4倍などにすることが可能である。
【0065】
それ故、例えば他の揮発性有機化合物よりもホルムアルデヒドを10倍含むホルムアルデヒドでひどく汚染された空気の場合、使用方法は、90/10の比率の特定吸収材料/活性炭を有するフィルターから作られよう。
【0066】
特定吸収材料のために求められた特定表面積は、細孔の寸法に対して反比例的である。それ故、特定表面積がより大きいほど、細孔の寸法がより小さくなる。それ故、およそ1000m2/gの特定表面積を有するためには、細孔の直径が一般的にナノメートルの段階にある。
【0067】
それ故、最良の妥協は、捕捉する容量および有効性を増大させるための最大特定表面積と、汚染物質が細孔に入ることを可能にする充分な大きさの細孔を有するために超えてはならない限界との間で求められる。目標となる特定表面積の範囲は、100m2/gから1500m2/gまでの間にあり、除去すべき汚染物質の分子の大きさに対応する。例えばホルムアルデヒドに関しては、600m2/gから1200m2/gまでの範囲で選択が与えられよう。
【0068】
除染のために必要とされるエネルギーを最小にするため、捕捉有効性のための最大吸着表面積(細粒の外表面)が、最少の可能な圧力低下にて得られるように、特定吸収材料のための細粒形状が選択される。
【0069】
例えば円柱状の細粒の場合、吸着表面積が細粒の平均粒径に対して反比例的であることが知られている。それ故、細粒の径を低減することは、捕捉する表面積の増大のための能力を増大させる。反対に、この低減は、圧力低下およびエネルギー使用量の増大をもたらす。実際、細粒の層がより小さくなり、従ってこれを通過する空気流に対して透過性を少なくする。寸法がミリメートルの段階(0.2mmから8mm)にある細粒は、最大の効果と過度でない圧力低下との間で最良の妥協を一般的にもたらす。
【0070】
細長い円柱形状(すなわち、比率L/D>1(L=長さ,D=直径)を有する)は、これらが射出成形または押し出し成形により容易に製造されるので、非常に重要である。これらの細長い形状は、吸着表面積が低減して圧力低下およびエネルギー使用量が増大しないように平坦な表面が接触することを阻止する。この場合において、ミリメートルの段階(0.2mmから8mm)にある寸法(長さ)が最良の妥協を同様にもたらす。
【0071】
他の実施形態によると、細粒は、粒子の大きさがミリメートルの段階(0.2mmから8mm)にある結果として、粉砕した形態であってよい。この形態はまた、本質的に同一な粒径のために重要であり、これは球形の粒子の場合よりも大きな吸着表面積をもたらす。
【0072】
使用方法はまた、細粒を分散して圧力低下を減らすために粒間(繊維)支持体から作られる使用方法で与えられた1mmよりも小さな細粒から作ることもできる。この場合、フィルターの表面積を増大させて圧力低下を低減させるため、生地に閉じ込められる混合した標準的な吸収材料/特定吸収材料の細粒のフィルムが考えられる。
【0073】
さらにまた、硬質の胞状構造体の寸法および胞状体の充填率の如き他の条件も同様に、本発明のフィルターカートリッジの望ましい性能を得るために調整することができる。それ故、この構造体の胞状体の大きさは、特定吸収材料の細粒の最大寸法の1から10倍までの範囲にある。この大きさは、胞状体において細粒の良好な分布を得ると共に硬質の胞状構造体の胞状体につき、少なくとも1つの細粒を与えることを可能にする。
【0074】
同様に、標準的な吸収材料と特定吸収材料との混合物を使った胞状体の充填率は、例えば少なくとも40%である。従って、本発明のフィルターカートリッジの大きさを抑制することができる。
【0075】
本発明のフィルターカートリッジは、一般的な従来の空気清浄器の意匠に悪影響を与えない。実際、本発明のフィルターカートリッジを従来のカートリッジの代わりに挿入することで足りる。また、本発明のフィルターカートリッジの構成および特長は、空気清浄器の特長に関連して、とりわけ空気流とカートリッジの寸法とに関連して調整されよう。
【0076】
本発明のフィルターカートリッジの寸法の実施例
第1実施例は、次の特長を有する部屋の除染を達成するために規定している。
・容積:12m3
・空気更新割合:5m3/h
・ホルムアルデヒド放出速度:70.6μg/m3
【0077】
本発明のフィルターカートリッジを用いた空気清浄器の特長は次の通りである。
・空気流:140m3/h
・胞状(ハニカム)フィルターカートリッジ:幅21cm,長さ53cm,深さ1cm(通路表面積の合計が0.068m2
・特定吸収材料の重量:20g
【0078】
部屋におけるホルムアルデヒドの濃度変化を図4に例示する。
【0079】
曲線Aは、本発明の空気清浄器を用いずに70.6μg/m3での制御値を表している。
【0080】
曲線Bは、本発明の空気清浄器が処理状態にある場合の濃度変化を表している。
【0081】
このように数時間の作業の後、ホルムアルデヒド放出速度が20μg/m3(大衆に開放される施設において推奨されている30μg/m3の割合よりも小さい)よりも低下することを指摘することができる。
【0082】
第2実施例は、前の実施例と同じ特長を有するが、本発明のフィルターカートリッジを用いた次の特徴を有する空気清浄器にて部屋の除染を達成するために規定している。
・空気流:70m3/h
・胞状(ハニカム)フィルターカートリッジ:幅24cm,長さ29cm,深さ1cm(通路表面積の合計が0.042m2
・特定吸収材料の重量:10g
【0083】
部屋におけるホルムアルデヒドの濃度変化を図5に例示する。
【0084】
曲線A'は、本発明の空気清浄器を用いずに70.6μg/m3での制御値を表している。
【0085】
曲線B'は、本発明の空気清浄器が処理状態にある場合の濃度変化を表している。
【0086】
このように数時間の処理後、ホルムアルデヒドの放出速度がおよそ30μg/m3であることを指摘することができる。
【0087】
この詳細な説明に記述された本発明の実施形態に対し、当業者にとって自明な異なる変更および/または改良を、添付した特許請求の範囲により規定された本発明の範囲を逸脱することなく行えることが理解される。
【0088】
このように、2つの典型的な実施形態が家庭(数m3の容積の部屋)用の空気清浄器のために与えられた。本発明のフィルターカートリッジをより大きな空気清浄器(例えば大衆に開放される施設のために設計されたもの)に適用することが考えられる。これは、より多くのカートリッジか、あるいはより大きな寸法を持つカートリッジを使用することで足りる。
図1
図2
図3
図4
図5