(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807930
(24)【登録日】2020年12月10日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】パイプ本体、パイプ及びパイプの加工方法
(51)【国際特許分類】
B21C 37/08 20060101AFI20201221BHJP
B23K 31/00 20060101ALI20201221BHJP
B21B 1/22 20060101ALI20201221BHJP
B21C 51/00 20060101ALI20201221BHJP
C21D 9/08 20060101ALI20201221BHJP
C21D 9/50 20060101ALI20201221BHJP
F16L 9/02 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
B21C37/08 A
B23K31/00 B
B23K31/00 L
B23K31/00 P
B21B1/22 B
B21C51/00 P
C21D9/08 F
C21D9/50 101A
F16L9/02
【請求項の数】18
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-537789(P2018-537789)
(86)(22)【出願日】2017年1月20日
(65)【公表番号】特表2019-510634(P2019-510634A)
(43)【公表日】2019年4月18日
(86)【国際出願番号】CN2017071916
(87)【国際公開番号】WO2017125070
(87)【国際公開日】20170727
【審査請求日】2018年9月6日
(31)【優先権主張番号】201610040055.4
(32)【優先日】2016年1月20日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517149748
【氏名又は名称】浙江三花智能控制股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】特許業務法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン、 イーチー
(72)【発明者】
【氏名】チュワン、 シンユー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、 シェンリー
(72)【発明者】
【氏名】パン、 ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、 チージュン
(72)【発明者】
【氏名】チェン、 フェン
【審査官】
河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−172063(JP,A)
【文献】
特開2004−306084(JP,A)
【文献】
特開2014−155948(JP,A)
【文献】
特開2009−202167(JP,A)
【文献】
特開平08−309527(JP,A)
【文献】
特開2014−018816(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第103978292(CN,A)
【文献】
特公昭47−038731(JP,B1)
【文献】
米国特許第5494209(US,A)
【文献】
中国特許出願公開第104923928(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第104028959(CN,A)
【文献】
中国実用新案第204785135(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 1/00−11/00
B21B 47/00−99/00
B21C 37/00−43/04,99/00
B23K 31/00−31/02
B23K 31/10−33/00
B23K 37/00−37/08
F16L 9/00−11/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に溶接してパイプとするためのパイプ本体(10)であって、
前記パイプ本体(10)が、その幅方向の両端に溶接用の溶接部(11)を有し、
前記溶接部(11)の厚さが、前記パイプ本体(10)の幅方向に沿って内側から外側に向かって徐々に薄くなり、
前記溶接部(11)の外端が、前記パイプ本体(10)の厚さ方向の中央部に位置し、
前記パイプ本体(10)は、前記両端の前記溶接部(11)同士が近接するように曲げられており、両端の溶接部(11)の外端面の間に所定の距離(d)を有し、当該所定の距離(d)が、前記パイプ本体(10)の厚さの1〜3倍であることを特徴とするパイプ本体(10)。
【請求項2】
前記溶接部(11)の周面が、二つ以上の直線セグメント及び/又はアークセグメントを順に接続して形成されていることを特徴とする請求項1に記載のパイプ本体(10)。
【請求項3】
前記溶接部(11)の周面が、第1の直線セグメント(111)と、第2の直線セグメント(112)と、第3の直線セグメント(113)との三つの直線セグメントを順に含み、
前記第2の直線セグメント(112)が、前記溶接部(11)の外端面を形成していることを特徴とする請求項2に記載のパイプ本体(10)。
【請求項4】
前記第2の直線セグメント(112)が、前記パイプ本体(10)の厚さ方向と平行であり、
前記第2の直線セグメント(112)の長さが、前記パイプ本体(10)の厚さの0.1〜0.5倍であり、
前記第1の直線セグメント(111)の長さと前記第3の直線セグメント(113)の長さとが、前記パイプ本体(10)の厚さの1〜3倍であることを特徴とする請求項3に記載のパイプ本体(10)。
【請求項5】
前記第1の直線セグメント(111)と前記パイプ本体(10)の厚さ方向との夾角、及び前記第2の直線セグメント(112)と前記パイプ本体(10)の厚さ方向との夾角が、ともに20°〜80°の範囲内にあることを特徴とする請求項4に記載のパイプ本体(10)。
【請求項6】
前記溶接部(11)の周面が、第1のアークセグメント(114)と、第2のアークセグメント(115)との二つのアークセグメントを含み、
前記第1のアークセグメント(114)と前記第2のアークセグメント(115)との接続箇所が、前記溶接部(11)の外端面を形成していることを特徴とする請求項2に記載のパイプ本体(10)。
【請求項7】
前記溶接部(11)の周面が、遷移アークセグメント(116)をさらに含み、
前記第1のアークセグメント(114)と前記第2のアークセグメント(115)とが、前記遷移アークセグメント(116)を介して接続されていることを特徴とする請求項6に記載のパイプ本体。
【請求項8】
前記第1のアークセグメント(114)と前記第2のアークセグメント(115)とは、半径が前記パイプ本体(10)の厚さの0.5〜8倍であることを特徴とする請求項6に記載のパイプ本体(10)。
【請求項9】
前記溶接部(11)の周面が、前記パイプ本体(10)の厚さ方向の中心に対して対称であることを特徴とする請求項2〜請求項8のいずれか一項に記載のパイプ本体(10)。
【請求項10】
前記溶接部(11)の周面が、半楕円形になっていることを特徴とする請求項1に記載のパイプ本体(10)。
【請求項11】
前記半楕円形の長半径が、前記パイプ本体(10)の厚さの0.25〜3倍であり、
前記半楕円形の短半径が、前記パイプ本体(10)の厚さの0.25〜0.75倍であることを特徴とする請求項10に記載のパイプ本体(10)。
【請求項12】
パイプ(100)であって、
前記パイプ(100)が、パイプ本体(10)を溶接して成形されたものであり、
前記パイプ本体(10)が、請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載のパイプ本体であり、
前記パイプ(100)の溶接シーム(20)が、X状になっていることを特徴とするパイプ(100)。
【請求項13】
前記パイプ(100)が、複合管であり、
前記パイプ本体(10)が、第1の層体(10a)と、前記第1の層体(10a)の内側及び/又は外側に固定されている第2の層体(10b)とを含み、
前記第1の層体(10a)と前記第2の層体(10b)との材質が、異なっていることを特徴とする請求項12に記載のパイプ(100)。
【請求項14】
前記第1の層体(10a)が、鋼製材料であり、
前記第2の層体(10b)が、銅製材料であることを特徴とする請求項13に記載のパイプ(100)。
【請求項15】
パイプの加工方法であって、
請求項1〜請求項14のいずれか一項に記載のパイプ本体を製造するための材料を用意するステップaと、
未加工の前記パイプ本体の材料の幅方向の両端に溶接部の加工を行い、前記溶接部の厚さを前記パイプ本体の材料の幅方向に沿って内側から外側に向かって徐々に薄くし、前記溶接部の外端を前記パイプ本体の材料の厚さ方向の中央部に位置させるステップbと、
ステップbによって加工された前記パイプ本体の材料を円管状に押出して前記パイプ本体の材料の両端の前記溶接部の端面を所定の距離に維持することで、前記パイプ本体を形成するステップcと、
両端の前記溶接部に対して溶接を実施して前記パイプを形成するステップdと、を含み、
前記ステップcにおいて、前記所定の距離が、前記パイプ本体の厚さの1〜3倍であることを特徴とする加工方法。
【請求項16】
前記ステップdの後には、
前記ステップdで形成された前記パイプに対して精確な校正を行うステップeと、
前記ステップeで精確な校正を行った後の前記パイプに対して渦電流探傷試験を行い、
その後、所定の時間だけ二次アニール処理を行うステップfとを含むことを特徴とする請求項15に記載の加工方法。
【請求項17】
前記ステップfにおいて、前記パイプをプリセット温度の真空炉に送って二次アニール
処理を行うことを特徴とする請求項16に記載の加工方法。
【請求項18】
前記ステップaにおいて、材質が異なる第1の層体と第2の層体とを用意し、前記第1の層体の内側及び/又は外側に前記第2の層体を固定し、圧延法で前記第1の層体と前記第2の層体とを一体に圧延して前記パイプ本体を形成することを特徴とする請求項15〜請求項17のいずれか一項に記載の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2016年01月20日に中国専利局に提出した、出願番号が201610040055.4であって、発明の名称が「パイプ本体、パイプ及びパイプの加工方法」である中国特許出願の優先権を主張し、本願で、その全ての内容を援用するものとする。
【0002】
本発明は、冷凍システムの技術分野に関し、特に、パイプ本体及び当該パイプ本体から作製されるパイプに関する。
本発明は、さらに、パイプの加工方法に関する。
【背景技術】
【0003】
冷凍システムでは、銅製材料は、良好な熱伝導性、耐腐食性及び加工性を有するので、バルブ及びパイプライン部品は、一般的に銅製材料で作製される。
しかしながら、銅製材料は高価であり、銅製材料を大量に使用すると、製品のコストが大幅に上昇し、業界の競争で利点を失う。
銅の代わりに、通常の炭素鋼を使用すると、炭素鋼が容易に腐食され、高い清浄度を要求する冷凍システムに適さない。
【0004】
従来の冷凍システムでは、銅製材料から作製されるパイプの代わりに、銅・スチール複合管を使用することが多い。
【0005】
図1aは従来技術におけるパイプの断面模式図であり、
図1bは
図1aにおけるA部位の一部拡大図である。
【0006】
図に示すように、パイプ1’は、パイプ本体を曲げて溶接して形成される。
パイプ本体の両端の溶接面1’aはともに斜めであり、曲げられた後、両端の溶接面1’aの内端は一定の距離を有している。
このようにすれば、溶接後、パイプ1’の溶接シーム2’は、
図1bに示すセクタ構造をなす。
【0007】
また、
図2aと
図2bに示すパイプ1’のように、パイプ本体の両端の溶接面1’aも斜めであり、曲げられた後、両端の溶接面1’aの内端は当接している。
このようにすれば、溶接後、パンプ1’の溶接シーム2’は、
図2bに示す逆三角形をなす。
【0008】
使用中、上記構造の複合管が破れ易く、特に溶接シームで、フレアリングや、曲げなどの再加工の際に、溶接シームは割れやすく、リワーク性が悪くなる。
したがって、多様複雑で、一定の圧力を受ける必要がある冷凍システムの要求を満たせないことを見出した。
【0009】
銅・スチール複合管のほかに、冷凍システムにおける他の複合管や単一の材質のパイプも類似する問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これに鑑み、如何に既存のパイプの構造を改善して、溶接箇所の強度を増加させ、リワーク性を向上させるかは、当業者が解決すべき技術的問題となっている。
【0011】
本発明は、パイプ本体の構造により当該パイプ本体から作製されるパイプの溶接箇所の強度が増強し、フレアリングや曲げなどの再加工を行う際に、破れにくく、リワーク性が高くなるパイプ本体及び当該パイプ本体から作製されるパイプを提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、上記パイプの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の技術的問題を解決するために、本発明は、パイプ本体を提供し、前記パイプ本体は、その両端に溶接部を有し、前記溶接部の厚さが、前記パイプ本体の幅方向に沿って内側から外側に向かって徐々に薄くなり、前記溶接部の外端が、前記パイプ本体の厚さ方向の中央部に位置する。
【0013】
以上のように、本発明のパイプ本体は、その溶接部の厚さが、パイプ本体の幅方向に沿って内側から外側へ次第に小さくなり、溶接部の外端が、パイプ本体の中央部に位置している。
このようにすれば、パイプ本体は、曲げられた後、両端の溶接部において溶接を行ってパイプを形成し、溶接部位が略X状をなすので、既存のセクタ構造又は逆三角形構造と比べると、溶接部位の接合面は著しく大きくなる。
さらに、溶接部の外端が、パイプ本体の厚さの中央部に位置するので、溶接後、当該部位の母材が、溶接部位の全体において支持の役割を果たし、溶接部位の抗張力が大幅に向上する。
また、当該X状の溶接部位は、母材及びはんだをパイプ肉厚中心に対して略対称になるので、力を受ける方向性を改善し、ある程度歪み方向及び応力効果を緩和し、大きな横引張力を受ける際に、パイプの内壁から割れにくくなり、当該溶接構造を採用するパイプは、高いリワーク性を有する。
【0014】
前記溶接部の周面が、二つ以上の直線セグメント及び/又はアークセグメントを順に接続して形成されている。
【0015】
前記溶接部の周面が、第1の直線セグメントと、第2の直線セグメントと、第3の直線セグメントとの三つの直線セグメントを順に含み、前記第2の直線セグメントが、前記溶接部の外端面を形成している。
【0016】
前記第2の直線セグメントが、前記パイプ本体の厚さ方向と平行であり、前記第2の直線セグメントの長さが、前記パイプ本体の厚さの0.1〜0.5倍であり、前記第1の直線セグメントの長さと前記第3の直線セグメントの長さとが、前記パイプ本体の厚さの1〜3倍である。
【0017】
前記第1の直線セグメントと前記パイプ本体の厚さ方向との夾角、及び前記第2の直線セグメントと前記パイプ本体の厚さ方向との夾角が、ともに20°〜80°の範囲内にある。
【0018】
前記溶接部の周面が、第1のアークセグメントと、第2のアークセグメントとの二つのアークセグメントを含み、前記第1のアークセグメントと前記第2のアークセグメントとの接続箇所が、前記溶接部の外端面を形成している。
【0019】
前記溶接部の周面が、遷移アークセグメントをさらに含み、前記第1のアークセグメントと前記第2のアークセグメントとが、前記遷移アークセグメントを介して接続されている。
【0020】
前記第1のアークセグメントと前記第2のアークセグメントとは、半径が前記パイプ本体の厚さの0.5〜8倍である。
【0021】
前記溶接部の周面が、前記パイプ本体の厚さ方向の中心に対して対称である。
【0022】
前記溶接部の周面が、半楕円形になっている。
【0023】
前記半楕円形の長半径が、前記パイプ本体の厚さの0.25〜3倍であり、前記半楕円形の短半径が、前記パイプ本体の厚さの0.25〜0.75倍である。
【0024】
本発明は、さらにパイプを提供し、前記パイプが、パイプ本体を曲げた後に溶接して成形されたものであり、前記パイプ本体が、上記のいずれか一項に記載のパイプ本体であり、前記パイプの溶接シームが、X状になっている。
【0025】
上記パイプ本体は上記技術的効果を有するので、当該パイプ本体から作製されるパイプも上記技術的効果を有し、ここで重複しない。
【0026】
前記パイプが、具体的には複合管であり、前記パイプ本体が、第1の層体と、前記第1の層体の内側及び/又は外側に固定されている第2の層体とを含み、前記第1の層体と前記第2の層体との材質が、異なっている。
【0027】
前記第1の層体が、鋼製材料であり、前記第2の層体が、銅製材料である。
【0028】
本発明は、さらに、パイプの加工方法を提供し、パイプ本体を製造するステップaと、パイプ本体の両端に溶接部の加工を行い、溶接部の厚さをパイプ本体の幅方向に沿って内側から外側に向かって徐々に薄くし、溶接部の外端をパイプ本体の厚さ方向の中央部に位置させるステップbと、ステップbにおけるパイプ本体を円管状に押出して前記パイプ本体の両端の溶接部の端面を所定の距離に維持するステップcと、両端の前記溶接部に対して溶接を実施してパイプを形成するステップdとを含む。
【0029】
ステップdの後には、さらに、ステップdで形成されたパイプに対して精確な校正を行うステップeと、ステップeで精確な校正を行った後のパイプに対して渦電流探傷試験を行い、その後、所定の時間だけ二次アニール処理を行うステップfとを含む。
【0030】
ステップfにおいて、パイプをプリセット温度の真空炉に送って二次アニール処理を行う。
【0031】
ステップaにおいて、材質が異なる第1の層体と第2の層体とを用意し、前記第1の層体の内側及び/又は外側に第2の層体を固定し、圧延法で前記第1の層体と第2の層体とを一体に圧延してパイプ本体を形成する。
【0032】
ステップcにおいて、前記所定の距離が、前記パイプ本体の厚さの1〜3倍である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1aは、従来技術におけるパイプの断面模式図であり、
図1bは、
図1aにおけるA部位の一部拡大図である。
【
図2】
図2aは、従来技術における他のパイプの断面模式図であり、
図2bは、
図2aにおけるB部位の一部拡大図である。
【
図3】本発明の第1の実施例におけるパイプ本体の溶接部の構成模式図である。
【
図4】
図3に示す溶接部を採用するパイプの溶接構造模式図である。
【
図5】本発明の第1の実施例のパイプの断面模式図である。
【
図6】本発明の第2の実施例におけるパイプ本体の溶接部の構成模式図である。
【
図7】
図6に示す溶接部を採用するパイプの溶接構造模式図である。
【
図8】本発明の第3の実施例におけるパイプ本体の溶接部の構成模式図である。
【
図9】
図8に示す溶接部を採用するパイプの溶接構造模式図である。
【
図10】本発明の第4の実施例におけるパイプ本体の溶接部の構成模式図である。
【
図11】
図10に示す溶接部を採用するパイプの溶接構造模式図である。
【
図12】本発明の第5の実施例におけるパイプ本体の溶接部の構成模式図である。
【
図13】
図12に示す溶接部を採用するパイプの溶接構造模式図である。
【
図14】本発明の第6の実施例におけるパイプ本体の溶接部の構成模式図である。
【0034】
なお、
図1a〜
図2bにおいて、部品の名称と符号との対応関係は、以下のように、
パイプ1’、溶接面1’a、溶接シーム2’
である。
【0035】
図3〜
図14において、部品の名称と符号との対応関係は、以下のように、
パイプ100、パイプ本体10、第1の層体10a、第2の層体10b、
溶接部11、溶接シーム20、第1の直線セグメント111、
第2の直線セグメント112、第3の直線セグメント113、
第1のアークセグメント114、第2のアークセグメント115、
遷移アークセグメント116
である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
既存のパイプは、パイプ本体を曲げた後溶接して成形されたものであり、研究により、パイプの溶接部位はセクタ形又は逆三角形をなしているので、溶接部位において、パイプの内壁から外壁へ向けて、パイプの肉厚が次第に小さくなり、はんだが次第に多くなり、主にはんだ接合に依存して、通常、はんだの強度がパイプ材質の強度よりも小さくなる。
これにより、フレアリングや、曲げなどの再加工を行う場合に、内壁と外壁との受ける力や歪みが異なり、内壁から亀裂が発生し易くなり、この亀裂が接合面線に沿って外壁へ急速に伸び、パイプが破れ、使用できなくなる。
このために、本文は、解決案を提出し、具体的な紹介は以下である。
【0037】
理解の便宜、簡潔な記述のために、以下、パイプ及びそのパイプ本体をまとめて説明し、有益な効果の部分について重複しない。
【0038】
本発明のパイプは、主に、パイプ本体を曲げた後に溶接して成形されたものである。
パイプ本体の長さは、成形後のパイプの長さである。
パイプ本体の幅は、概ね成形後のパイプの周方向のサイズである。
パイプ本体の厚さは、成形後のパイプの管壁の厚さである。
つまり、パイプ本体は、幅方向に沿って曲げられた後、その幅方向の両端部を溶接してパイプが形成される。
以下の方位用語などについては、このパイプ本体の長さ、幅及び厚さを参照する。
【0039】
本発明のパイプ本体は、その両端に溶接部を有している。
溶接部の厚さが、パイプ本体の幅方向に沿って内側から外側に向かって徐々に薄くなっている。
溶接部の外端が、パイプ本体の厚さ方向の中央部に位置している。
【0040】
なお、「中央部」とは、パイプ本体の厚さ方向の中心及び中心付近の一部の領域を指す。
【0041】
上記の構造を採用すると、パイプ本体を曲げた後に溶接して形成したパイプは、その溶接部位が略X状をなすので、既存のセクタ構造又は逆三角形の構造と比べると、溶接部位の接合面の面積が著しく大きくなる。
さらに、溶接部の外端がパイプ本体の厚さの中央部に位置するので、溶接後、当該部位の母材が溶接部位の全体において支持の役割を果たし、溶接部位の抗張力が大幅に向上する。
また、当該X状構造の溶接部位が、母材及びはんだをパイプ肉厚中心に対して略対称になるので、力の方向性を改善し、ある程度歪み方向及び応力効果を緩和し、大きな横引張力を受けた際に、パイプの内壁から割れにくくなり、当該溶接構造を採用するパイプは、高いリワーク性を有する。
【0042】
本発明のパイプ本体は、様々な具体的な構造を有しており、以下、添付の図面及び具体的な実施形態を参照して本発明について更に詳細に説明する。
【0043】
図3は本発明の第1の実施例におけるパイプ本体の溶接部の構成模式図であり、
図4は
図3に示す溶接部を採用するパイプの溶接構造模式図であり、
図5は本発明の第1の実施例のパイプの断面模式図である。
【0044】
当該実施例において、パイプ本体10の溶接部11の周面は、順に、第1の直線セグメント111と、第2の直線セグメント112と、第3の直線セグメント113とを含む。
第2の直線セグメント112が、溶接部11の外端面を形成している。
【0045】
当該実施例では、第2の直線セグメント112は、パイプ本体10の厚さ方向と平行であり、その中心がパイプ本体10の厚さ方向の中心と重なり合っている。
第1の直線セグメント111と第3の直線セグメント113とは、第2の直線セグメント112に対して対称である。
つまり、第1の直線セグメント111の長さL1と、第3の直線セグメント113の長さL3とは、等しくなっている。
【0046】
このように、成形パイプ100の溶接シーム20は、径方向及び周方向において完全に対称であり、
図5に示すように、溶接部位の力を受ける均一性はより良くなる。
図5からみて、溶接部11の外端は、溶接シーム20の中央部に位置し、支持の作用を果たし、溶接部位の抗張力が向上する。
【0047】
具体的に、第2の直線セグメント112の長さL2は、パイプ本体10の厚さの0.1〜0.5倍に設定できる。
第1の直線セグメント111の長さL1と、第3の直線セグメント113の長さL3とは、パイプ本体10の厚さの1〜3倍に設定できる。
【0048】
実際の応用の際に、管材及び応用の要求に応じて、各直線セグメントの具体的な長さを適切に選択できる。
【0049】
また、第1の直線セグメント111とパイプ本体10の厚さ方向との夾角θ(
図3に示す)、及び第3の直線セグメント113とパイプ本体10の厚さ方向との夾角(図示せず)は、管材及び応用の要求に従って、20°〜80°の範囲で選択できる。
【0050】
また、パイプ本体10が曲げられた後、両端の溶接部11の外端面の間に所定の距離dを有している。
当該所定の距離dは、一般に、パイプ本体10の厚さの1〜3倍である。
このように設置すれば、溶接の際のはんだの流動性を確保でき、はんだと母材とが良好に融着し、溶接シーム20の強度が向上する。
【0052】
図6は本発明の第2の実施例におけるパイプ本体の溶接部の構成模式図であり、
図7は
図6に示す溶接部を採用するパイプの溶接構造模式図である。
【0053】
当該実施例は、基本的に前記第1の実施例の構成と一致し、相違するところは、当該実施例において、溶接部11の第1の直線セグメント111の長さL1が、第3の直線セグメント113の長さL3よりも大きい。
パイプ100の溶接部位については、
図7に示す。
【0054】
図8は本発明の第3の実施例におけるパイプ本体の溶接部の構成模式図であり、
図9は
図8に示す溶接部を採用するパイプの溶接構造模式図である。
【0055】
当該実施例は、基本的に前記第1の実施例の構成と一致し、相違するところは、当該実施例において、溶接部11の第1の直線セグメント111の長さL1が、第3の直線セグメント113の長さL3よりも小さい。
パイプの溶接部位については、
図9に示す。
【0056】
第2の実施例と第3の実施例において、各直線セグメントの相関パラメーター範囲は第1の実施例の記載と一致するので、重複しない。
【0057】
なお、上記三つの実施例において、溶接部11の周面は、いずれも三つの直線セグメントから形成されていたが、実際に、溶接部11の周面は二つの直線セグメントのみで形成されてもよい。
つまり、第2の直線セグメントを省略すれば、第1の直線セグメントと第3の直線セグメントとの接続箇所が、尖端を形成するので、溶接中、はんだが流れにくくなってしまうため、前記の三つの実施例が好ましい実施例となる。
また、溶接部11の周面は、より多い直線セグメントから形成することもでき、重複して説明しない。
【0058】
図10は本発明の第4の実施例におけるパイプ本体の溶接部の構成模式図であり、
図11は
図10に示す溶接部のパイプの溶接構造模式図である。
【0059】
当該実施例において、パイプ本体10の溶接部11の周面は、第1のアークセグメント114と第2のアークセグメント115とを含む。
なお、第1のアークセグメント114と第2のアークセグメント115との接続箇所が、溶接部11の外端面を形成している。
【0060】
第1のアークセグメント114と第2のアークセグメント115とは、遷移アークセグメント116を介して接続されることで、両者の接続箇所が円滑に遷移することを確保し、溶接中、はんだが母材を濡らして流れやすくなる。
【0061】
当該実施例において、第1のアークセグメント114と第2のアークセグメント115とは、半径がパイプ本体10の厚さの0.5〜8倍である。
【0062】
当該実施例において、第1のアークセグメント114の半径R1は、第2のアークセグメント115の半径R2よりも大きい。
【0063】
同様に、当該実施例においても、パイプ本体10は、曲げられた後、両端の溶接部11の外端面の間に所定の距離dを有している。
当該所定の距離dは、パイプ本体10の厚さの1〜3倍であり、溶接中のはんだの流動性が向上する。
【0064】
図12は本発明の第5の実施例におけるパイプ本体の溶接部の構成模式図であり、
図13は
図12に示す溶接部を採用するパイプの溶接構造模式図である。
【0065】
当該実施例は、基本的に前記第4の実施例の構成と一致し、相違するところは、当該実施例において、溶接部11の第1のアークセグメント114の半径R1が、第2のアークセグメント115の半径R2よりも小さい。
【0066】
各アークセグメントの相関パラメーター範囲は、第4の実施例と一致することができるので、重複しない。
【0067】
具体的設置の際に、第1のアークセグメント114と第2のアークセグメント115とは、半径が等しくなってもよい。
両者の接続箇所の中心が、パイプ本体10の厚さの中心に位置すれば、パイプの成形後、その溶接シームの構造が、完全に対称となり、溶接部位の受ける力がより均一となる。
【0068】
なお、実際に設置する場合、溶接部11の周面が、上記のように数本の直線セグメントから形成されるか、又は数本のアークセグメントから形成される形態以外に、二本以上の直線セグメントとアークセグメントとを接続して形成されてもよい。
【0069】
図14は本発明の第6の実施例におけるパイプ本体の溶接部の構成模式図である。
【0070】
当該実施例において、溶接部11の周面は、半楕円形になっている。
このように設置すれば、加工しやすくなる。
【0071】
具体的に、当該半楕円形の長半径Rは、パイプ本体10の厚さの0.25〜3倍である。
当該半楕円形の短半径rは、パイプ本体10の厚さの0.25〜0.75倍である。
【0072】
図14に示すように、当該実施例において、前記半楕円形は、長軸がパイプ本体10の幅方向に沿い、短軸がパイプ本体10の厚さ方向に沿っている。
実際の設置では、両者を逆、つまり、長軸がパイプ本体10の厚さ方向に沿い、短軸がパイプ本体10の幅方向に沿ってもよい。
【0073】
以上、パイプ本体の六つの具体的形態について紹介したが、上記原理を基として、パイプ本体の具体的形態は、様々な変更を加えることができると理解され、重複しない。
【0074】
実際の応用において、パイプ本体10の材料は、単一の材料であってもよいし、複合材料であってもよい。
【0075】
図3を例に、具体的な実施例において、パイプ本体10は、第1の層体10aと、第1の層体10aの内側と外側に固定されている第2の層体10bとを含む。
なお、第1の層体10aと第2の層体10bとは、材質が異なっている。
【0076】
より具体的に、第1の層体10aは、鋼製材料であり、具体的に、低炭素鋼を選択することができる。
第2の層体10bは、銅製材料である。
【0077】
実際の設置では、第1の層体10aの内側又は外側のみに第2の層体10bを設置してもよい。
【0078】
上記パイプ及びそのパイプ本体のほかに、本発明は、パイプの加工方法を提供し、当該加工方法は、具体的に、以下のステップを含む。
【0079】
ステップa、パイプ本体を製造する。
予め製作されたパイプのサイズに従って相応するパイプ本体のサイズを用意する。
予め製作されたパイプが両種の材質の複合管である場合、材質が異なる第1の層体と第2の層体とを用意し、前記第1の層体の内側及び/又は外側に第2の層体を固定し、圧延法で前記第1の層体と第2の層体と一体に圧延し、平坦化後にアニール処理を行って、高温環境下で2つの材料の分子運動を加速化させ、分子結合層の形成を促進することにより、パイプ本体を形成する。
【0080】
ステップb、パイプ本体の両端に溶接部の加工を行う。
前記溶接部の構成は、以上の各実施例のようであり、重複しない。
予め製作されたパイプによって達成する性能に従って溶接部の相関サイズを設計する。
【0081】
c、ステップbにおけるパイプ本体を円管状に押出し、前記パイプ本体の両端の溶接部の端面を所定の距離に維持する。
当該ステップにおいて、パイプ本体を成型機に送って曲げて円管状に押出してもよい。
【0082】
ステップd、両端の前記溶接部に対して溶接を行うことでパイプを形成する。
当該ステップにおいて、具体的に、低応力溶接方式で溶接を行い、はんだと母材とを融着させて溶接シームを形成しする。
溶接シームの余盛りは、機械加工で除去してもよく、溶接シームと母材との円滑な遷移を確保する。
【0083】
さらに、当該加工方法は、ステップdの後に、以下のステップをさらに含む。
【0084】
ステップe、ステップdで形成されたパイプに対して精確な校正を行う。
一定の内径の金型を使用してパイプを校正することで、精度と真円度とを確保する。
【0085】
ステップf、ステップeで精確に校正されたパイプに対して渦電流探傷試験を行い、その後、所定の時間だけ二次アニール処理を行う。
【0086】
具体的に、渦電流探傷試験メータにより渦電流探傷試験を行うことで、パイプの高精度要求を確保する。
【0087】
その後、所定の時間だけ二次アニール処理を行うことで、これにより、管材の伸び率と加工性を向上させ、冷凍システムの多様な要求を満たす。
具体的には、パイプを800〜1000℃の真空炉に送って二次アニール処理を行ってもよい。
【0088】
銅・スチール複合管を例に、試験から、二次アニール処理を行った後、銅・スチール複合管のフレアリング率が20.7%以上に達し、伸び率が30%以上に達し、耐圧性が著しく向上することを表明した。
【0089】
以上、本発明が提供するパイプ本体、パイプ及びパイプの加工方法について、詳細に紹介した。
本文において具体的な例を応用して本発明の原理及び実施形態について記述し、以上の実施例の説明は、ただ本発明の実施例の方法及び趣旨を理解させるためのものである。
当業者にとって、本発明の原理から逸脱しない限り、本発明について他の改良及び修正を行ってもよく、これらの改良及び修正も本発明の請求項の保護範囲に属する。