(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807955
(24)【登録日】2020年12月10日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】コードで補強された押出物を押し出すための押出機ヘッド
(51)【国際特許分類】
B29C 48/154 20190101AFI20201221BHJP
B29C 48/30 20190101ALI20201221BHJP
B29C 48/25 20190101ALI20201221BHJP
【FI】
B29C48/154
B29C48/30
B29C48/25
【請求項の数】32
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-560852(P2018-560852)
(86)(22)【出願日】2017年5月12日
(65)【公表番号】特表2019-516588(P2019-516588A)
(43)【公表日】2019年6月20日
(86)【国際出願番号】NL2017050294
(87)【国際公開番号】WO2017204624
(87)【国際公開日】20171130
【審査請求日】2020年3月3日
(31)【優先権主張番号】2016826
(32)【優先日】2016年5月25日
(33)【優先権主張国】NL
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595090635
【氏名又は名称】ヴェーエムイー ホーランド ベー. ヴェー.
【氏名又は名称原語表記】VMI HOLLAND B. V.
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】デ ブラン ロナルド ゲラルドゥス マリア
(72)【発明者】
【氏名】デ ジョン エミール ヘンドリクス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ラール ゲラルドゥス ヨハネス カタリーナ
【審査官】
▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−212091(JP,A)
【文献】
特開平07−146428(JP,A)
【文献】
特開2006−110830(JP,A)
【文献】
特開2009−269188(JP,A)
【文献】
特開平07−001541(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2016/0059466(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0283750(US,A1)
【文献】
特開昭54−36374(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00−48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コードで補強された押出物を押し出すための押出機ヘッドであって、
前記押出機ヘッドは、前記コードおよび押出材をコード方向に受ける型と、前記コードを前記コード方向と平行に、コード平面に並べて前記型に入れるようにガイドするコードガイドとを備え、
前記押出機ヘッドは、前記押出機ヘッドを通って第1の流れ通路に沿って延び、前記コード平面の第1の側から前記型に向かって前記型に通じる第1の流路と、前記押出機ヘッドを通って第2の流れ通路に沿って延び、前記コード平面の前記第1の側の反対側にある第2の側から前記型に向かって前記型に通じる第2の流路と、をさらに備え、
前記第1の流れ通路および前記第2の流れ通路は、それぞれ、供給部と、前記供給部の下流にある断面が広がったハンガー様部分とを備え、
前記第1の流れ通路と、前記第2の流れ通路とは、そのそれぞれの前記ハンガー様部分において、それぞれの前記ハンガー様部分の特定部分に渡って、前記コード平面に対して85〜95度の第1の範囲内の角度で延び、前記各ハンガー様部分の特定部分は少なくとも前記各ハンガー様部分の70パーセントである
押出機ヘッド。
【請求項2】
前記第1の流れ通路と、前記第2の流れ通路とが、そのそれぞれの前記ハンガー様部分において、かつ前記コード平面まで、前記各ハンガー様部分の少なくとも70パーセントである前記各ハンガー様部分の特定部分に渡って、前記コード平面に対して前記第1の範囲内の角度で延びる
請求項1に記載の押出機ヘッド。
【請求項3】
前記第1の範囲が、88〜92度である
請求項1または2に記載の押出機ヘッド。
【請求項4】
前記第1の流れ通路および前記第2の流れ通路が、前記各ハンガー様部分において、前記コード平面に垂直に延びる
請求項1〜3のいずれか一項に記載の押出機ヘッド。
【請求項5】
前記第1の流れ通路および前記第2の流れ通路が、前記各ハンガー様部分の特定部分に渡って、前記コード平面に対して前記第1の範囲内で延び、前記各ハンガー様部分の特定部分は少なくとも80パーセントまたは少なくとも90パーセントである
請求項1〜4のいずれか一項に記載の押出機ヘッド。
【請求項6】
前記第1の流れ通路および前記第2の流れ通路が、前記各ハンガー様部分の全体において、前記コード平面に対して前記第1の範囲内で延びる
請求項1〜5のいずれか一項に記載の押出機ヘッド。
【請求項7】
前記ハンガー様部分が、前記コード平面に垂直な方向に型に通じる
請求項1〜6のいずれか一項に記載の押出機ヘッド。
【請求項8】
前記コードガイドが、少なくとも部分的に前記型の中に延びる先端を有し、
前記先端が、前記コード平面の前記第1の側および前記第2の側のそれぞれに延びて、前記コード方向に前記型に面する、第1の偏向面と、第2の偏向面とを備え、
前記第1の流路、および前記第2の流路の前記ハンガー様部分は、前記コード平面に垂直な方向に、それぞれ前記第1の偏向面、および前記第2の偏向面に通じ、
前記第1の偏向面、および前記第2の偏向面は、前記押出材を、前記第1の流路、および前記第2の流路から前記型に向かって、かつ/または前記型の中に、それぞれ偏向させるように配置される
請求項1〜7のいずれか一項に記載の押出機ヘッド。
【請求項9】
前記第1の偏向面と、前記第2の偏向面とが、前記各ハンガー様部分と、前記コード平面とに接する
請求項8に記載の押出機ヘッド。
【請求項10】
前記押出機ヘッドが、コード方向およびコード平面に対して交差して又は垂直に延びる合わせ面を有し、
前記第1の流路、および前記第2の流路の前記ハンガー様部分が、周壁をそれぞれ備え、
前記各流路の前記押出機ヘッドが、前記各流路の前記周壁を形成するために、合わせ面の両側で互いに当接して配置されるように構成された、第1のハンガー様半体と、第2のハンガー様半体とを備える
請求項1〜9のいずれか一項に記載の押出機ヘッド。
【請求項11】
前記合わせ面が、前記コード平面、および前記コード方向と交差して、またはこれらに垂直に延びる
請求項10に記載の押出機ヘッド。
【請求項12】
前記第1の流れ通路および前記第2の流れ通路が、前記各ハンガー様部分の少なくとも70パーセントに沿って、前記合わせ面と平行に延びる
請求項10または11に記載の押出機ヘッド。
【請求項13】
前記第1の流れ通路、および前記第2の流れ通路が、前記各ハンガー様部分で、前記合わせ面と交差する、かつ/または前記合わせ面内に少なくとも部分的に延びる
請求項10に記載の押出機ヘッド。
【請求項14】
前記各流路の前記周壁が、前記各ハンガー様部分の少なくとも70パーセントである前記各ハンガー様部分の特定部分に渡って、前記合わせ面に関して対称である
請求項10〜13のいずれか一項に記載の押出機ヘッド。
【請求項15】
前記各ハンガー様部分における、前記周壁の表面積の少なくとも70パーセントが、前記コード平面に対して前記第1の範囲内に延びる
請求項10〜14のいずれか一項に記載の押出機ヘッド。
【請求項16】
前記第1のハンガー様半体と、前記第2のハンガー様半体とが、前記コード方向と平行な分離方向に分離可能な
請求項10〜15のいずれか一項に記載の押出機ヘッド。
【請求項17】
前記押出機ヘッドが、前記型を保持または形成する第1のヘッド部材と、前記コードガイドを保持または形成する第2のヘッド部材とを備え、
前記第1のハンガー様半体が、前記第1のヘッド部材で形成され、
前記第2のハンガー様半体が、前記第2のヘッド部材で形成される
請求項10〜16のいずれか一項に記載の押出機ヘッド。
【請求項18】
前記押出機ヘッドが、前記型を保持または形成する第1のヘッド部材と、前記コードガイドを保持または形成する第2のヘッド部材とを備え、
前記第1のハンガー様半体が、前記第1のヘッド部材で保持される挿入体であり、
前記第2のハンガー様半体が、前記第2のヘッド部材で保持される挿入体である
請求項10〜16のいずれか一項に記載の押出機ヘッド。
【請求項19】
前記第1のヘッド部材と、前記第2のヘッド部材とが、前記コード平面と平行な分離方向に分離可能な
請求項18に記載の押出機ヘッド。
【請求項20】
前記第1のヘッド部材と、前記第2のヘッド部材とが、前記合わせ面の両側で互いに当接して配置されるように構成される
請求項18または19に記載の押出機ヘッド。
【請求項21】
前記第1のハンガー様半体と前記第2のハンガー様半体が、前記コード方向に平行な分離方向に分離可能であり、
前記押出機ヘッドが、前記合わせ面で延びる逃がし溝を備え、
前記第1のヘッド部材と、前記第2のヘッド部材とが前記合わせ面で当接していると、前記逃がし溝が前記第1の流路、および前記第2の流路から分離され、
前記第1のヘッド部材と、前記第2のヘッド部材とが前記分離方向に分離されると、前記逃がし溝が前記第1の流路、または前記第2の流路と流体連通する
請求項17に記載の押出機ヘッド。
【請求項22】
前記押出機ヘッドが、前記合わせ面で延びる逃がし溝を備え、
前記挿入体が前記合わせ面で当接していると、前記逃がし溝が前記挿入体によって前記第1の流路、および前記第2の流路から分離され、
前記挿入体が前記分離方向に分離されると、前記逃がし溝が前記第1の流路、または前記第2の流路と流体連通する
請求項18に記載の押出機ヘッド。
【請求項23】
前記ヘッド部材が、前記挿入体が前記分離方向に分離している間に、前記逃がし溝の外側で互いに当接したままになるように配置される
請求項22に記載の押出機ヘッド。
【請求項24】
前記第2のヘッド部材が、前記コード平面の前記第1の側に第1のケーシング部材を備え、かつ前記コード平面の前記第2の側に第2のケーシング部材を備え、
前記第1のケーシング部材と、前記第2のケーシング部材とが、前記コードガイドを受けるための受入空間を共に形成し、
前記第1のケーシング部材と、前記第2のケーシング部材とは、前記コード平面に垂直な法線方向に分離できない
請求項17〜23のいずれか一項に記載の押出機ヘッド。
【請求項25】
前記型が、前記コード平面の前記第1の側にある第1の型部材と、前記コード平面の前記第2の側にある第2の型部材とを備え、
前記第1の型部材と、前記第2の型部材とが、前記押出物を前記押出機ヘッドから出す型開きを共に形成し、
前記第1の型部材と、前記第2の型部材とは、前記コード平面に垂直な法線方向に分離できない
請求項1〜24のいずれか一項に記載の押出機ヘッド。
【請求項26】
前記コードガイドが、前記押出機ヘッドにおいて作動位置に出入りするように、前記コード方向、および前記コード方向とは反対の摺動方向にそれぞれ摺動可能な
請求項1〜25のいずれか一項に記載の押出機ヘッド。
【請求項27】
前記押出機ヘッドが、前記コードガイドが前記作動位置にあるときに、前記コードガイドが摺動方向に摺動しないようロックするように配置された、ロック部材をさらに備える
請求項26に記載の押出機ヘッド。
【請求項28】
前記コードガイドが、前記コード平面の前記第1の側にある第1のガイド部材と、前記コード平面の前記第2の側にある第2のガイド部材とを備え、
前記第1のガイド部材、および前記第2のガイド部材のうちの1つが、前記コード平面と平行に、かつ前記コード方向に垂直に横方向に並べて配置された、複数の交換可能なガイドブロックを備え、
前記各ブロックが、前記コード平面で、かつ前記コード平面と平行に前記コード方向に延びる、前記コードを受けるための複数のガイド溝を備える
請求項1〜27のいずれか一項に記載の押出機ヘッド。
【請求項29】
前記押出機ヘッドが、前記コードガイドの1つ以上の前記ガイドブロックと交換するために、1組の交換ブロックをさらに備え、
前記交換ブロックの少なくとも1つが、前記コードガイドの前記ガイドブロックと同じ、複数のガイド溝を有する
請求項28に記載の押出機ヘッド。
【請求項30】
前記押出機ヘッドが、前記コードガイドの1つ以上の前記ガイドブロックと交換するために、1組の交換ブロックをさらに備え、
前記交換ブロックの少なくとも1つが、前記コードガイドの前記ガイドブロックとは、数または形状が異なるガイド溝を有する
請求項28に記載の押出機ヘッド。
【請求項31】
前記複数のガイド溝が、2つの直接隣接する前記ガイドブロックによって画定された、少なくとも1つのガイド溝を含む
請求項28〜30のいずれか一項に記載の押出機ヘッド。
【請求項32】
請求項1〜31のいずれか一項に記載の前記押出機ヘッドを使用して、前記コードで補強された押出物を押し出す方法であって、
前記方法は、加圧した前記押出材を前記第1の流路、および前記第2の流路に供給するステップと、前記各ハンガー様部分において、前記コード平面と平行な方向に、前記加圧した押出材によって生成された加圧力を吸収するステップとを含む
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コードで補強された押出物を押し出すための、押出機ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第0339510号明細書では、比較的稠密な金属、またはテキスタイルコードで内部的に補強された、エラストマー材料のシートを製造するための押出ヘッドが開示されている。この押出ヘッドは、上型および下型によって画定される型と、上部プレートおよび下部プレートからなるコードガイド部材とを備える。型の上部品および下部品と、コードガイドとは、外部ケーシングによって、共にコード平面の両側に取り付けられる。押出機ヘッドは、プラスチックのエラストマー材料を型に供給するために、2つの先細の合流流路を画定する。
【0003】
エラストマー材料が、押出ヘッドの先細の合流流路に供給されると、圧力が上昇して、前記流路の周壁に、外向きの加圧力が加わる。前記加圧力のかなりの部分が、コード平面に垂直な方向で押出ヘッドの部品に加わって、型の上部品および下部品、コードガイド部材の上部品および下部品、ならびに/または外側ケーシングを動かす。
【0004】
その後は、前記複数の部品の相対的な位置決めが不正確になる。型の上部品と下部品とは、正確な位置決めが特に重要であり、これによってエラストマー材料のシートの厚さが決定する。さらに、コードガイドの上部品と下部品との位置決めが不正確になると、その結果前記部品が損傷し、かつ/またはエラストマー材料へのコードの埋め込みが不正確になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0339510号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、前述の欠点の少なくとも1つを低減、および/または防止できる、コードで補強された押出物を押し出すための代替的な押出機ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様によれば、本発明は、コードで補強された押出物を押し出すための押出機ヘッドを提供し、押出機ヘッドは、コードおよび押出材をコード方向に受ける型と、コードを前記コード方向と平行に、コード平面に並べて型に入れるようにガイドする、コードガイドとを備え、押出機ヘッドは、押出機ヘッドを通って第1の流れ通路に沿って延び、コード平面の第1の側から型に向かって型に通じる、第1の流路と、押出機ヘッドを通って第2の流れ通路に沿って延び、コード平面の第1の側の反対側にある、第2の側から型に向かって型に通じる、第2の流路と、をさらに備え、第1の流れ通路、および第2の流れ通路はそれぞれ、供給部と、供給部の下流にある、断面が広がったハンガー様部分とを備え、第1の流れ通路と、第2の流れ通路とは、そのそれぞれのハンガー様部分において、それぞれのハンガー様部分の少なくとも70パーセントに沿って、コード平面に対して85〜95度の第1の範囲内の角度で延びる。
【0008】
また、ハンガー様部分の配向が、コード平面に対して急勾配で、垂直、またはほとんど垂直なため、流路内の圧力上昇の結果生じた加圧力のかなりの部分が、コード平面に垂直な方向で、型開きに向けられる、かつ/または型開きで生成されるのを防止することができる。特に、ハンガー様部分の周壁を介して、加圧力のかなりの部分をコード平面に対して平行、またはほぼ平行な方向に向けることができる。その結果、押出機ヘッドは、コード平面に対して法線方向に、または垂直方向に不正確になりにくい。特に押出物の厚さの精度を向上させることができる。
【0009】
一実施形態では、第1の流れ通路と、第2の流れ通路とが、そのそれぞれのハンガー様部分において、かつコード平面まで、各ハンガー様部分の少なくとも70パーセントに沿って、コード平面に対して第1の範囲内の角度で延びる。よって、流路は、型の中に通じるまで、コード平面に対して可能な限り急勾配になるように配置することができる。
【0010】
好ましい実施形態では、第1の範囲は、88〜92度である。最も好ましくは、各流れ通路は、各ハンガー様部分において、コード平面に垂直に延びる。コード平面に対する角度が急勾配になるほど、コード平面に対して法線、または垂直方向に加わる加圧力は小さくなる。
【0011】
別の好ましい実施形態では、各流れ通路は、各ハンガー様部分の少なくとも80パーセントに沿って、好ましくは少なくとも90パーセントに沿って、コード平面に対して第1の範囲内で延びる。最も好ましくは、各流れ通路は、各ハンガー様部分の全体において、コード平面に対して第1の範囲内で延びる。各ハンガー様部分のかなりの部分が、確実に第1の範囲内に延びるようにすることによって、加圧力は、合わせ面に対して平行な方向に加わる。
【0012】
一実施形態では、ハンガー様部分は、コード平面に垂直な、またはほぼ垂直な方向に型に通じる。よって、押出材の流れは、ハンガー様部分から出た後に、例えば、後述するように、コードガイドの先端によって偏向させて、直接型に入れることができる。
【0013】
一実施形態では、コードガイドは、少なくとも部分的に型の中に延びる先端を有し、先端は、コード平面の両側に延びて、コード方向に型に面する、第1の偏向面と、第2の偏向面とを備え、第1の流路、および第2の流路のハンガー様部分は、コード平面に垂直な、またはほぼ垂直な方向に、それぞれ第1の偏向面、および第2の偏向面に通じ、第1の偏向面、および第2の偏向面は、押出材を、第1の流路、および第2の流路から型に向かって、かつ/または型の中に、それぞれ偏向させるように配置される。したがってコードガイドは、押出材の流れをコード方向に偏向させるために用いることができ、ケーシングに対するコードガイドの公差は、押出機ヘッドの高さ方向の精度に負の影響を及ぼすことなく、吸収することができる。
【0014】
一実施形態では、第1の偏向面と、第2の偏向面とは、各ハンガー様部分と、コード平面とに接する、またはほぼ接する。したがって押出材の流れは、各流路から型の中へ、スムーズに偏向させることができる。
【0015】
一実施形態では、第1の流路、および第2の流路のハンガー様部分は、周壁をそれぞれ備え、各流路の押出機ヘッドは、各流路の周壁を形成するために、合わせ面の両側で互いに当接して配置されるように構成された、第1のハンガー様半体と、第2のハンガー様半体とを備える。合わせ面に対して互いに対向する2つの部品で、各ハンガー様部分に周壁を形成することによって、前記部品が、コード平面に平行、またはほぼ平行な方向に、周壁に加わる加圧力を吸収することができる。前記方向における、これらの部品同士の間の公差は、高さ方向において、押出機の精度に負の影響を及ぼすことはない。
【0016】
一実施形態では、合わせ面は、コード平面およびコード方向と交差して、またはこれらに垂直に延びる。よって、ハンガー様半体は、コード平面と交差する、またはコード平面に垂直な平面に沿って合わせることができる。
【0017】
別の実施形態では、各流れ通路は、各ハンガー様部分の少なくとも70パーセントに沿って、合わせ面と平行に、またはほぼ平行に延びる。その結果、押出材は、合わせ面と平行に、かつコード平面に垂直な方向に、各ハンガー様部分を通って流れるようにすることができる。
【0018】
一実施形態では、第1の流れ通路、および第2の流れ通路は、各ハンガー様部分で、合わせ面と交差する、かつ/または合わせ面内に少なくとも部分的に延びる。よって、流れ通路、および/または流路は、各ハンガー様部分で、合わせ面に沿って、接近して、または対称に延びてもよい。
【0019】
好ましい実施形態では、各流路の周壁は、各ハンガー様部分の少なくとも70パーセントに沿って、合わせ面に関して対称、またはほぼ対称である。よって加圧力は、コード平面と平行な方向に、周壁に均等に分散させることができる。
【0020】
別の好ましい実施形態では、各ハンガー様部分における、周壁の表面積の少なくとも70パーセントが、コード平面に対して第1の範囲内に延びる。好ましくは、各ハンガー様部分における、周壁の表面積の少なくとも80パーセント、最も好ましくは少なくとも90パーセントが、コード平面に対して第1の範囲内に延びる。加圧力は、表面積に対して法線方向に周壁に加わる。表面積のかなりの部分が、コード平面に対して第1の範囲内の角度で延びることによって、加圧力が、コード平面に対して法線方向、または垂直な方向に向けられるのを防止することができる。
【0021】
別の実施形態では、第1のハンガー様半体と第2のハンガー様半体とは、コード方向と平行な分離方向に分離可能である。よって、ハンガー様半体を分離方向に分離させることによって、ハンガー様半体に加わる加圧力を吸収することができる。
【0022】
1つの実施形態では、押出機ヘッドは、型を保持または形成する第1のヘッド部材と、コードガイドを保持または形成する第2のヘッド部材とを備え、第1のハンガー様半体は、第1のヘッド部材で形成され、第2のハンガー様半体は、第2のヘッド部材で形成される。よって、押出機ヘッドは、比較的簡素な設計にすることができる。
【0023】
代替的な実施形態では、押出機ヘッドは、型を保持または形成する第1のヘッド部材と、コードガイドを保持または形成する第2のヘッド部材とを備え、第1のハンガー様半体は、第1のヘッド部材によって保持される挿入体であり、第2のハンガー様半体は、第2のヘッド部材によって保持される挿入体である。挿入体として、ハンガー様半体は、各ハンガー様部分における流路の必要とされる形状に応じて、他の挿入体と交換可能である。
【0024】
一実施形態では、第1のヘッド部材と、第2のヘッド部材とは、コード平面と平行な分離方向に分離可能である。したがってヘッド部材は、型、および/またはコードガイドの保守または交換のために分離させることができる。
【0025】
好ましい実施形態では、第1のヘッド部材と、第2のヘッド部材とは、合わせ面の両側で互いに当接して配置されるように構成される。したがってヘッド部材は、ハンガー様半体と同じ合わせ面の周囲で合わせることができる。
【0026】
1つの実施形態では、押出機ヘッドは、合わせ面で延びる逃がし溝を備え、第1のヘッド部材と、第2のヘッド部材とが合わせ面で当接していると、逃がし溝が第1の流路、および第2の流路から分離され、第1のヘッド部材と、第2のヘッド部材とが分離方向に分離されると、逃がし溝が第1の流路、および/または第2の流路と流体連通する。逃がし溝は、圧力が危険なレベルになった場合は、押出材の一部を押出機ヘッドから逃がせるようにすることによって、押出材の圧力の一部を解放することができる。
【0027】
代替的な実施形態では、押出機ヘッドは、合わせ面で延びる逃がし溝を備え、挿入体が合わせ面で当接していると、逃がし溝が挿入体によって第1の流路、および第2の流路から分離され、挿入体が分離方向に分離されると、逃がし溝が第1の流路、および/または第2の流路と流体連通する。したがって挿入体を分離させることによって、押出材を逃がすことが可能になる。よって、ヘッド部材ではなく挿入体を分離させることができる。
【0028】
より好ましくは、ヘッド部材は、挿入体が分離方向に分離している間に、逃がし溝の外側で互いに当接したままになるように配置される。ヘッド部材は、解放された押出材、および/または圧力が、制御不能な状態で押出機ヘッドから出るのを防止することができる。
【0029】
別の実施形態では、第2のヘッド部材は、コード平面の第1の側に第1のケーシング部材を備え、かつコード平面の第2の側に第2のケーシング部材を備え、第1のケーシング部材と、第2のケーシング部材とが、コードガイドを受けるための受入空間を共に形成し、第1のケーシング部材と、第2のケーシング部材とは、コード平面に垂直な法線方向に分離することはできない。
【0030】
一実施形態では、第1のケーシング部材と、第2のケーシング部材とは、単一部品を形成する。単一部品を有することによって、コード平面に対して法線方向、または垂直な方向のケーシング部材同士の間の公差を抑制することができ、または公差を排除することもできる。
【0031】
一実施形態では、型は、コード平面の第1の側にある第1の型部材と、コード平面の第2の側にある第2の型部材とを備え、第1の型部材と、第2の型部材とは、押出物を押出機ヘッドから出す型開きを共に形成し、第1の型部材と、第2の型部材とは、コード平面に垂直な法線方向に分離することはできない。分離不能な型部材を有することによって、コード平面に対して法線方向、または垂直な方向の型部材同士の間の公差を抑制することができる。したがって、型は、型開きが高さ方向に不正確になりにくい。
【0032】
一実施形態では、第1の型部材と、第2の型部材とは、単一部品を形成する。単一部品を有することによって、コード平面に対して法線方向、または垂直な方向の型部材同士の間の公差を抑制することができ、または公差を排除することもできる。
【0033】
一実施形態では、コードガイドは、押出機ヘッドにおいて作動位置に出入りするように、コード方向、およびコード方向とは反対の摺動方向にそれぞれ摺動可能である。コードガイドをコード方向、および摺動方向に摺動させることによって、第1のケーシング部材と、第2のケーシング部材とを分離させる必要がなくなる。
【0034】
一実施形態では、押出機ヘッドは、コードガイドが作動位置にあるときに、コードガイドが摺動方向に摺動しないようロックするように配置された、ロック部材をさらに備える。したがって押し出し中に、コードガイドを作動位置の所定の位置にしっかりと保持することができ、その結果、流路で押出材によって生成された加圧力によって、コードガイドが押出機ヘッドから押し出されることはない。
【0035】
一実施形態では、コードガイドは、コード平面の第1の側にある第1のガイド部材と、コード平面の第2の側にある第2のガイド部材とを備え、第1のガイド部材、および第2のガイド部材のうちの1つが、コード平面と平行で、かつコード方向に垂直に横方向に並べて配置された、複数の交換可能なガイドブロックを備え、各ブロックは、コード平面で、かつコード平面と平行にコード方向に延びる、コードを受けるための複数のガイド溝を備える。ブロック内のガイド溝は、ガイド溝同士の間の壁が比較的薄いために壊れやすい。ブロックは、壊れれば容易に交換することができる。ガイド部材全体ではなく、1つのブロックを交換することで、低コストにすることができる。
【0036】
1つの実施形態では、押出機ヘッドは、コードガイドの1つ以上のガイドブロックと交換するために、1組の交換ブロックをさらに備え、交換ブロックの少なくとも1つは、コードガイドのガイドブロックと同じ、複数のガイド溝を有する。壊れたらすぐにガイドブロックを交換できることを保証するために、この組は、コードガイドと共に提供することができる。
【0037】
代替的な実施形態では、押出機ヘッドは、コードガイドの1つ以上のガイドブロックと交換するために、1組の交換ブロックをさらに備え、交換ブロックの少なくとも1つは、コードガイドのガイドブロックとは数または形状が異なるガイド溝を有する。交換ブロックは、例えば、大きいガイド溝、数が多い、または少ないガイド溝、および/あるいは横方向に幅が広い、または狭いコードガイドの上方に延びるガイド溝など、異なるガイド溝の構成にコードガイドを適合させるために使用することができる。
【0038】
別の実施形態では、複数のガイド溝は、2つの直接隣接するガイドブロックによって画定された、少なくとも1つのガイド溝を含む。ガイドブロックの端部に、比較的薄い端壁ではなく、半分のガイド溝を設けることによって、ガイドブロックを壊れにくくすることができる。
【0039】
第2の態様によれば、本発明は、前述の押出機ヘッドを使用して、コードで補強された押出物を押し出す方法を提供し、本方法は、加圧した押出材を第1の流路、および第2の流路に供給するステップと、各ハンガー様部分において、コード平面と平行、またはほぼ平行な方向に、前記加圧した押出材によって生成された加圧力を吸収するステップとを含む。
【0040】
また、流路の配向が、コード平面に対して急勾配で垂直、またはほとんど垂直なため、流路内の圧力上昇の結果生じた加圧力のかなりの部分が、コード平面に垂直な方向に向けられるのを防止することができる。
【0041】
本方法の実施形態では、押出機ヘッドが逃がし溝を備え、本方法は、押出材の圧力レベルが危険なレベルに向かって上昇したときに、押出材が逃がし溝を介して、第1の流路、および/または第2の流路から逃げられるようにするステップを含む。逃がし溝は、圧力が危険なレベルになった場合は、押出材の一部を押出機ヘッドから逃がせるようにすることによって、押出材の圧力の一部を解放することができる。
【0042】
別の実施形態では、本方法は、押出機ヘッドにおいて、作動位置に出入りするように、コード方向、およびコード方向とは反対の摺動方向にそれぞれコードガイドを摺動させるステップを含む。コードガイドをコード方向、および摺動方向に摺動させることによって、第1のケーシング部材と、第2のケーシング部材とを分離させる必要がなくなる。
【0043】
本明細書で説明および図示される、様々な態様および特徴は、可能な限り、個別に適用される。このような個別の態様、特に、添付の従属クレームで説明される態様および特徴は、分割特許出願の主題となり得る。
【0044】
本発明は、添付の概略図に示す、例示的な実施形態に基づいて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の第1の実施形態による、型と、コードガイドと、2本の流路とを有する、押出機ヘッドの側断面図を示す。
【
図2】
図1のII−IIの線に沿った、押出機の断面図を示す。
【
図3】
図2のIII−IIIの線に沿った、押出機の断面図を示す。
【
図4A】コードガイドが、押出機ヘッドに対して摺動しないようにロックされている、
図1による押出機を示す。
【
図4B】コードガイドが、押出機ヘッドに対して摺動できるようにロック解除された、
図1による押出機を示す。
【
図5A】
図4のコードガイドの、より詳細な前面図を示す。
【
図6】コードガイドが摺動して非作動位置になっている、
図1の押出機ヘッドの側断面図を示す
【
図7】本発明の第2の実施形態による、型と、コードガイドと、2本の流路とを有する、代替的な押出機ヘッドの側断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1および
図2は、本発明の例示的な実施形態による、コードで補強された押出物90、具体的にはタイヤを成形するために、コードで補強されたタイヤ構成部材を押し出すための、押出機ヘッド1を示す。
【0047】
押出機ヘッド1は、型2を保持または形成する第1のヘッド部材H1と、型2に対してコードガイド3を保持または形成する、第2のヘッド部材H2とを備える。この例示的な実施形態では、第1のヘッド部材H1は型2を形成し、第2のヘッド部材H2は、型2に対してコードガイド3を保持または形成する、ケーシング4を備える。型2は、コード方向Xで、複数のコード8と、押出材9とを受けるように構成される。押出材9は、ゴムなどのエラストマー材料である。コード8は、金属または合成繊維で作られている。コードガイド3は、コード平面Pで並んで型2に入るように、複数のコード8をガイドするように構成される。第1のヘッド部材H1と、第2のヘッド部材H2とは、コード方向X、およびコード平面Pと交差して、または垂直に延びる合わせ面Mで、互いに当接して合わせられる、または配置される。型2が、合わせ面Mの第1の側Aの反対側の、合わせ面Mの第2の側Bに配置されているときは、コードガイド3、およびケーシング4は、第1の側Aに配置される。
【0048】
押出機ヘッド1は、第1の流路11と、第2の流路12とをさらに備え、これらの流路は、合わせ面Mの第1の側Aにある第2のヘッド部材H2を通って延び、かつ少なくとも部分的に、合わせ面Mの第2の側Bにある第2のヘッド部材H2に延びる。第1の流路11、および第2の流路12は、第1の押出機71、および第2の押出機72とそれぞれ流体連通して配置されるように構成される。好ましくは、加圧した、かつ/または均一な流れで押出材を各流路11、12に供給するために、第1の押出機71と第1の流路11との間に第1のギヤポンプ73が設けられ、第2の押出機72と第2の流路12との間に第2のギヤポンプ74が設けられる。
【0049】
図1に示すように、型2は、コード平面Pの第1の側Cに配置された、第1の型部材21と、第1の側Cにある第1の型部材21とは反対側の、コード平面Pの第2の側Dに配置された、第2の型部材22とを備える。第1の型部材21と、第2の型部材22とは、押出材9を所望の形状の押出物90に成形するための、型開き23を形成する。型開き23は、押出物90の厚さTを画定する、高さ方向Hの高さを有する。この例示的な実施形態では、第1の型部材21と、第2の型部材22とは分離できず、一体的であり、単体であり、または単一部品を形成する。好ましくは、型2は、金属などの硬質材料で作られる。よって、第1の型部材21と、第2の型部材22とは、型開き23の高さ方向Hにおいて、実質的に公差がない。
【0050】
図1に示すように、第1の流路11は、第2のヘッド部材H2の第1のケーシング部材41を通って延び、コード平面Pの第1の側Cから型開き23に通じる。第2の流路12は、第2のヘッド部材H2の第2のケーシング部材42を通って延び、コード平面Pの第2の側Dから型開き23に通じる。第1の流路11は、第1の周壁13によって形成され、第1の周壁13は、第2のヘッド部材H2を通って、押出材9の第1の流れ通路F1を画定する、または第1の流れ通路F1に沿って延びて、型開き23に入る。第2の流路12は、第2の周壁14によって形成され、第2の周壁14は、第2のヘッド部材H2を通って、押出材9の第2の流れ通路F2を画定して型開き23に入る。周壁13、14は両方とも、各流れ通路F1、F2に対して同軸上に延びる。言い換えれば、流れ通路F1、F2は、周壁13、14の中心および/または中央を通って延びる。
【0051】
図1および
図2に示すように、第1の流路11、および第2の流路12は、各押出機71、72から押出材9を受けるための供給部S1、S3と、各供給部S1、S3の下流に、供給部S1、S3から型開き23に向かって押出材9を分配するための、いわゆる「ハンガー様」部分S2、S4と、をそれぞれ備える。供給部S1、S3は、断面が円形、またはほぼ円形である。供給部S1、S3の断面は、押出機ヘッド1を通じて比較的一定を保っている。
図2に最もよく示されているように、ハンガー様部分S2、S4は、比較的一定した供給部S1、S3の断面から、または供給部S1、S3の断面に関して、型開き23にほぼ対応する、または型開き23に合流する、比較的平坦で広い断面まで、コード平面Pと平行で、かつコード方向Xに垂直に、横方向Lに分岐する、または広がる。任意選択で、流路11、12は、ハンガー様部分S2、S4で押出材9の流れ、および/または分配を最適化するための、縁部、分流子その他の形状(図示せず)を備える。ハンガー様部分S2、S4の広がった断面によって、これらの部分に、洋服のハンガーの形状に類似した、その特徴的な形状が備わる。
【0052】
第1の流路11の供給部S1は、第1の押出機71、および/または第1のギヤポンプ73から、第1の型部材21に向かって、合わせ面Mの第1の側Aで第1のケーシング部材41を通って、コード平面Pに対して斜角で延びる。供給部S1は、第1の交点W1で、第1の側Aから第2の側Bまでの合わせ面Mと交差する。第1の交点W1で、または第1の交点W1の近くで、供給部S1は、コード平面Pに向かって急勾配で偏向する。第1の流路11のハンガー様部分S2は、
図2に示すように、第1の周壁13が横方向Lに広がっている所から始まり、第1の流路11が型開き23に通じる所まで、供給部S1の下流に連なる。
【0053】
前述のハンガー様部分S2において、第1の流れ通路F1は、ハンガー様部分S2の少なくとも70パーセント、好ましくは少なくとも80パーセント、および最も好ましくは少なくとも90パーセントに沿って、コード平面Pに対して85〜95度の第1の範囲内で延びる。好ましくは、この例示的な実施形態におけるように、第1の範囲は、88〜92度である。より具体的には、前述のハンガー様部分S2における、第1の周壁13の表面積の少なくとも70パーセント、好ましくは少なくとも80パーセント、および最も好ましくは少なくとも90パーセントが、コード平面Pに対して第1の範囲内で延びる。
【0054】
結果として、第1の流路11、および/または第1の流れ通路F1のかなりの部分が、例えば、5度以下の偏差内で、合わせ面Mと平行に、またはほぼ平行に延びる。
【0055】
図1に示すように、第2の流路12は、コード平面Pに対して、第1の流路11と鏡面対称である。よって第2の流路12は、対応する供給部S3を備え、供給部S3は、第2の押出機72、および/または第2のギヤポンプ74から型2に向かって、合わせ面Mの第1の側Aで、第2のヘッド部材H2の第2のケーシング部材42を通って、コード平面Pに対して斜角で延びる。第2の流路12は、第2の交点W2で、第1の側Aから第2の側Bまでの合わせ面Mと交差する。第2の流路12の供給部S3は、コード平面Pに向かって急勾配で偏向する。 第2の流路12は、
図2に示すように、第2の周壁14が横方向Lに広がっている所から始まり、第2の流路12が型開き23に通じる所まで、供給部S3の下流に連なる、ハンガー様部分S4をさらに備える。
【0056】
第2の流路12の供給部S3、およびハンガー様部分S4は、コード平面Pの第1の側Cにある第1の流路11の供給部S1、およびハンガー様部分S2のそれぞれに対して、コード平面Pの第2の側Dで鏡面対称に延びて、供給部S1、およびハンガー様部分S2について前述したのと同じ、第1の範囲、表面積その他の条件に合致する。結果として、第2の流路12のハンガー様部分S4もまたかなりの部分が、例えば合わせ面Mに対して5度以下の偏差内などにおいて、平行に、またはほぼ平行に延びる。
【0057】
第1の流路11、および第2の流路12の両方のハンガー様部分S2、S4の、コード平面Cに対して急勾配で、垂直、またはほとんど垂直な配向によって、第1の流路11、および第2の流路12内の押出材9で圧力が上昇した結果生じた加圧力の大部分は、合わせ面Mに対して垂直、またはほぼ垂直に、かつ/あるいはコード平面Pに対して平行、またはほぼ平行な方向に向けることができる。その結果、コード平面Pに垂直な力を低減、および/または抑止することができ、これにより押出機ヘッド1の高さ方向Hの高さが、不正確になりにくいようにすることができる。特に、押出物90の、厚さTの精度を高めることができる。
【0058】
この例示的な実施形態では、
図1に示すように、押出機ヘッド1は、少なくともハンガー様部分S2、S4に、またはハンガー様部分S2、S4に沿って、各流路11、12の周壁13、14を形成する、複数の交換可能な挿入体15〜18を備える。前記挿入体15〜18は、ヘッド部材H1、H2によって所定の位置に保持される。挿入体15〜18は、流路11、12の必要とされる形状に応じて、他の挿入体と交換可能である。
図1、および
図3は、第1の流路11が、合わせ面Mの第1の側Aに第1のハンガー様半体15として形成された、第1の挿入体と、合わせ面Mの第2の側Bに第2のハンガー様半体16として形成された、第2の挿入体とによって形成されることを示す。同様に、
図1に示すように、第2の流路12のハンガー様部分S4における、第2の周壁14は、合わせ面Mの第1の側Aにある、第1のハンガー様半体17の形態の第3の挿入体と、合わせ面Mの第2の側Bにある、第2のハンガー様半体18の形態の第4の挿入体とによって形成される。
図3に示すように、ヘッド部材H1、H2は、逃がし溝6の周囲の外側領域において、合わせ面Mの周囲で、締付け部材24で互いにしっかりと締め付けられ、ハンガー様半体15〜18は、その間で、同じ合わせ面Mの周囲で合わさる。
【0059】
図1に示すように、第1のヘッド部材H1と、第2のヘッド部材H2とは、合わせ面Mの周囲で合わさる。型2の保守または交換のために、コードガイド3、および/またはハンガー様半体15〜18、第1のヘッド部材H1、および第2のヘッド部材H2は、合わせ面Mに垂直な分離方向Zに離間させることができる。
図1および
図2に示すように、押出機ヘッド1は、第1のヘッド部材H1と、第2のヘッド部材H2との間に、合わせ面Mに、または合わせ面M内に延びる逃がし溝6をさらに備える。逃がし溝6は、好ましくは、型2、ケーシング4、またはその両方に形成される。
図2に最もよく示されているように、逃がし溝6は、合わせ面Mにおいて、型開き23、第1の流路11、および第2の流路12の周囲に延び、合わせ面Mにおける第1のヘッド部材H1と、第2のヘッド部材H2との相互当接によって、前記型開き23、および前記流路11、12から流体的に分離される。特に、逃がし溝6は、第1の流路11、第2の流路12、および型開き23を含む一群の形状の周囲で周方向に延びる、環状の主流路61と、主流路61から分岐して押出機ヘッド1の外部に至る、複数の吐出流路62とを有する。
【0060】
ハンガー様半体15〜18において、ヘッド部材H1、H2は、ハンガー様半体15〜18が確実に、互いにしっかりと締め付けられるように、マイナス公差、すなわちギャップ45を有する。好ましくは、ギャップ45は、ハンガー様半体15〜18から逃がし溝6まで延びる。型開き23、第1の流路11、および/または第2の流路12内の押出材9の圧力が、危険なレベル、例えば、押出機ヘッド1に破断が生じるレベルに向かって上昇したときは、ハンガー様半体15〜18を、分離方向Zにわずかに離間させることができ、その一方で、逃がし溝6の外側にあるヘッド部材H1、H2の部品は、合わせ面Mの周囲でなお互いに当接している。この離間によって、高圧の押出材9を、逃がし溝6の中、および押出機ヘッド1の外部に逃がすことができる。これにより、押出材9の圧力が、許容可能なレベルに確実に解放される。
【0061】
図5Aおよび
図5Bに示すように、コードガイド3は、コード平面Pの第1の側Cにある、第1のガイド部材31と、コード平面Pのほぼ第2の側Bにある、第2のガイド部材32と、第1のガイド部材31と、第2のガイド部材32とを、コード平面Pの前記対向する側C、Dで共に保持するための、ホルダ38とを備える。第1のガイド部材31、および第2のガイド部材32のうちの1つ、または両方は、コード平面Pで、コード方向Xに対して平行、またはほぼ平行に隣り合って延びる、複数の互いに平行なガイド溝33を形成する。各ガイド溝33は、個別にコード8を受けるように配置される。好ましくは、ガイド溝33は、第2のガイド部材32に形成される、または少なくとも部分的に第2のガイド部材32に配置される。ガイド溝33は、第2のガイド部材32が、第1のガイド部材31と当接することによって閉じられる。コードガイド3は、コード方向Xに型2と向かい合う、先端30を備える。前記先端30において、第1のガイド部材31は、第1の流路11のハンガー様部分S2からの押出材の流れを、型開き23に向けて、かつ/または型開き23の中へ偏向させるための、コード平面Pの第1の側Cで延びる、第1の偏向面34を備える。同じ先端30において、第2のガイド部材32は、第2の流路12のハンガー様部分S4からの押出材の流れを、型開き23に向けて、かつ/または型開き23の中へ偏向させるための、コード平面Pの第2の側Dで延びる、第2の偏向面35を備える。
【0062】
この特定の実施形態では、
図5Aおよび
図5Bに示すように、第2のガイド部材32は、ホルダ38内で、コード平面Pと平行で、かつコード方向Xに垂直に、横方向Lに並べて配置された、複数のガイドブロック36を備える。各ガイドブロック36は、いくつかのガイド溝33を備える。横方向Lにおけるガイドブロック36の側面で、各ガイドブロック36は、半分のガイド溝33を備え、半分のガイド溝33は、直接隣り合うガイドブロック36の半分のガイド溝33と共に、完全なガイド溝33を形成する。
【0063】
ガイド溝33は、間にある壁が薄いため損傷しやすい。ガイド溝33が損傷したとき、または構成の変更時に1つ以上のガイドブロック36と交換するために、押出機ヘッド1には、1組の交換ブロック37が付属する。ガイドブロック36は、1つ以上の交換ブロック37と容易に交換することができる。交換ブロック37は、代替的な形状にしたガイド溝を備えてもよい。型の幅が減少したときは、複数のガイドブロック36の両端にある交換ブロック37のガイド溝33の数を少なくしてもよい。
【0064】
図1に示すように、ケーシング4は、コード平面Pの第1の側Cにある、第1のケーシング部材41と、コード平面Pの第2の側Dにある、第2のケーシング部材42とを備える。
図6に最もよく示されているように、第1のケーシング部材41と、第2のケーシング部材42とは、コードガイド3を受けるための、受入空間43を形成する。ケーシング4は、コード平面P、および型2に対して、コードガイド3を保持および位置決めするように配置される。この例示的な実施形態では、第1のケーシング部材41と、第2のケーシング部材42とは分離できず、一体的であり、単体であり、または単一部品を形成する。好ましくは、ケーシング4は、金属などの硬質材料で作られる。よって、第1のケーシング部材41と、第2のケーシング部材42とは、受入空間43の高さ方向Hにおいて、実質的に公差がない。
【0065】
コードガイド3は、コード平面Pと平行に、コード方向Xで、ケーシング4の受入空間43に摺動可能に挿入して、
図1に示す作動位置にすることができる。コードガイド3は、コード方向Xとは反対の摺動方向Yで、ケーシング4から摺動可能に除去して、
図6に示す非作動位置にすることができる。コードガイド3は、コードガイド3をコード平面Pと同じ高さに維持するために、好ましくはキャリッジ(図示せず)で支持される。よって、コードガイド3は、コードガイド3からコード8を除去することなく、複数の前記コード8の上を摺動方向Yで摺動することができる。第1のガイド部材31が第2のガイド部材32から持ち上げられて、保持部材38から外れるように、コードガイド3を押出機ヘッド1、および押出機71、72から離間させて、非作動位置にすることができる。続いて、コードガイド3のガイド溝33に新たなコード8を挿入することができる。
【0066】
コードガイド3が、摺動方向Yに摺動しないように、作動位置でロックするために、押出機ヘッド1は、ロック部材5を備える。ロック部材5は、ケーシング4のスロット44で受けられ、前記ケーシング4に対し、
図4Aに示すロック位置と、
図4Bに示す解除位置との間を横方向Lで摺動可能である。ロック部材5は、主開口51と、複数の凹所52とを有する、ロックプレート50を備える。ロック位置では、凹所52は、コードガイド3の突起53に対し、摺動方向Yに位置がずれている。よって、コードガイド3は、ケーシング4に対し、摺動方向Yに保持される。解除位置では、凹所52は、コードガイド3の突起53に対して位置が合っており、その結果コードガイド3は、ケーシング4から摺動方向Yに取り外すことができる。
【0067】
コードガイド3の個別の態様、特に、交換可能なガイドブロック36、摺動方向Yにおける摺動性、および/またはロック部材5の態様は、流路11、12に関して後述する態様からは独立しており、分割特許出願の主題になることが可能である。
【0068】
図1に示すように、コードガイド3の先端30にある第1の偏向面34、および第2の偏向面35は、各流れ通路F1、F2から押出材9の流れをスムーズに受けるために、各ハンガー様部分S2、S4で、第1の流路11、および第2の流路12の周壁13、14に、それぞれ接する、またはほぼ接する。偏向面34、35は、コード方向Xに凹んでいる。好ましくは、偏向面34、35は、前記コード平面Pの対向する側C、Dで、コード平面Pに接する。偏向面34、35は、したがって各流れ通路F1、F2から押出材9の流れをスムーズに受けて、コード方向Xに偏向させるために配置される。
【0069】
あるいは、偏向面34、35をほぼ平坦(図示せず)にして、コード平面Pに対して、30〜50度、および好ましくは約45度の、第2の範囲内の角度で配置することができる。両方の事例において、第1の流路11、および第2の流路12は、コード平面Pに垂直、またはほぼ垂直な方向、および/または合わせ面Mと平行、またはほぼ平行な方向で、第1の偏向面34、および第2の偏向面35にそれぞれ通じる。前記偏向面34、35で、押出材9は、コードガイド3に加圧力を加え、前記加圧力の少なくとも一部は、コード方向Xとは反対の摺動方向Yに作用する。コードガイド3は、
図1に示すように、ロック部材5によって作動位置にロックされる。しかしながら、前記摺動方向Yにおけるコードガイド3と、ケーシング4との間の公差は、押出機ヘッド1の精度に、高さ方向Hにおいて負の影響を及ぼすことはない。
【0070】
前述の説明は、好ましい実施形態の動作を例示するためになされており、本発明の範囲を限定する意図はないことを理解されたい。前述の説明から、本発明の範囲にさらに包含される多くの変形が、当業者には明らかであろう。
【0071】
例えば、
図7は、代替的な押出機ヘッド101を示し、前述の押出機ヘッド1とは、流路111、112が、
図1の挿入体15〜18ではなく、ヘッド部材H1、H2によって形成されているところが異なっている。具体的には、第1の流路111は、型102の第1の型部材121と、ケーシング104の第1のケーシング部材141とで形成され、第2の流路112は、型102の第2の型部材122と、ケーシング104の第2のケーシング部材142とで形成される。この代替的な実施形態は、挿入体15〜18がなくわずかに柔軟性に欠けるが、当業者であれば、流路111、112は、
図1、
図2、および
図3の部分S1〜S4に類似した、比較的一定した円形の断面と、広がったハンガー様部分S2、S4とを伴って、やはり供給部S1、S3に分かれていることが理解されよう。ハンガー様部分S2、S4は、やはり前述の第1の範囲に合致している。圧力が閾値を超えると、押出材9の圧力を解放するために、挿入体15〜18を分離方向Zに分離させる代わりに、ヘッド部材H1、H2を分離させることができる。
【0072】
さらに、流路の形状および設計には多くの変形が考えられることが当業者には明らかであり、このような変形は、特許請求の範囲で指定された範囲に合致するときは、本発明の範囲に包含される。
【0073】
要約すると、本発明は、コードで補強された押出物を押し出すための押出機ヘッド1、101に関し、押出機ヘッド1、101は、型2、102と、コードガイド3とを備え、押出機ヘッド1、101は、押出機ヘッド1、101を通って第1の流れ通路F1に沿って延び、コード平面Pの第1の側Cから型2、102に向かって型2、102に通じる、第1の流路11、111と、押出機ヘッド1、101を通って第2の流れ通路F2に沿って延び、コード平面Pの第2の側Dから型2、102に向かって型2、102に通じる、第2の流路12、112と、をさらに備え、第1の流れ通路F1、および第2の流れ通路F2はそれぞれ、供給部S1、S3と、ハンガー様部分S2、S4と、を備え、第1の流れ通路F1と、第2の流れ通路F2とは、そのそれぞれのハンガー様部分S2、S4において、それぞれのハンガー様部分S2、S4の少なくとも70パーセントに沿って、コード平面Pに対して85〜95度の第1の範囲内の角度で延びる。