(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなアンテナ装置は、グランドエレメントを本体筐体或いはディスプレイ筐体に対してフレームグランドする必要がある。従って、上記特許文献1のように、ヒンジ装置にアンテナ装置を搭載した構成では、例えばグランドエレメントをヒンジ装置の外部へと引き出してフレームグランドしている。ところが、グランドエレメントをヒンジ装置の外部に引き出した場合は、グランドエレメントがヒンジ装置の可動時に捩じれや破損を生じない構成とされる必要がある。このため、このような従来技術では、ヒンジ装置やアンテナ装置の構造や設計が煩雑となる。また、この構成では、製品完成後にアンテナ装置の交換等が必要となった場合、グランドエレメントを筐体から引き剥がす必要があり、作業性が低い。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、ヒンジ装置にアンテナ装置を搭載した構成としながらも、簡素な構造でアンテナ装置をフレームグランドすることができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係る電子機器は、電子機器であって、第1筐体と、第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体との間を回動可能に連結するヒンジ装置と、電波を送受信するアンテナ装置と、を備え、前記ヒンジ装置は、金属材料で形成されたヒンジ軸と、金属材料で形成され、前記ヒンジ軸の一端部を回転可能に支持する軸受部と、金属材料で形成され、前記ヒンジ軸の他端部を前記第1筐体又は前記第2筐体に対して固定する筐体取付部材と、電波透過性材料で形成され、内部に前記軸受部を収容するヒンジ筐体と、を有し、前記アンテナ装置は、前記ヒンジ筐体の内部に収容され、前記軸受部に対して金属ねじを用いて固定されるホルダ部品と、前記ホルダ部品に支持されるアンテナエレメントと、前記ホルダ部品に支持され、前記軸受部及び前記金属ねじと電気的に接続されるグランドエレメントと、を有する。
【0008】
このような構成によれば、アンテナ装置のグランドエレメントが、金属材料で形成された軸受部、ヒンジ軸及び筐体取付部材を介して第1筐体或いは第2筐体と電気的に接続される。これによりアンテナ装置は、ヒンジ筐体の外部にグランドエレメントからのケーブル等を引き出す必要がなく、簡素な構成でフレームグランドすることができる。また、金属ねじが軸受部に固定される締結構造により、グランドエレメントと軸受部との電気的な接続状態が一層強固になる。
【0009】
前記金属部品は、一端部に雄ねじが形成されたねじ部を有し、他端部に雌ねじが形成された頭部を有するねじ部品であり、前記ねじ部品は、前記ねじ部が前記軸受部に形成されたねじ穴に螺合することで前記ヒンジ筐体を前記軸受部に対して締結し、前記雌ねじに前記金属ねじが螺合されることで前記ホルダ部品を当該ねじ部品に対して締結させる構成としてもよい。そうすると、1本のねじ部品を用いてヒンジ筐体及びアンテナ装置を軸受部に対して段階的に締結することができる。このため、ヒンジ装置に対するアンテナ装置の組付作業が容易になるだけでなく、メンテナンス時の分解作業も容易となる。
【0010】
前記グランドエレメントは、前記ホルダ部品の一外面に設けられると共に、該一外面が前記グランドエレメントを挟んだ状態で前記ねじ部品の前記頭部に押圧される構成としてもよい。
【0011】
前記雄ねじの適正締付トルクが、前記雌ねじの適正締付トルクよりも大きい構成としてもよい。そうすると、金属ねじを雌ねじに螺合させるアンテナ装置の締結時に、先に締結されている雄ねじと軸受部との締結部に影響が及ぶことを抑制できる。その結果、アンテナ装置の締結時に、ヒンジ筐体の取付姿勢がずれることが抑制される。
【0012】
前記ヒンジ軸は、前記第1筐体と連結される第1ヒンジ軸と、前記第2筐体と連結される第2ヒンジ軸と、を有し、前記軸受部は、前記第1ヒンジ軸と前記第2ヒンジ軸との間となる位置に、前記ねじ穴が設けられた構成としてもよい。そうすると、2本のヒンジ軸を介してグランドエレメントをより安定して且つより確実にフレームグランドすることができる。その際、2本のヒンジ軸の間にねじ穴を設けることで、2本のヒンジ間のデッドスペースを有効に活用することができ、またヒンジ装置の大型化も回避できる。
【0013】
本発明の第2態様に係る電子機器は、電子機器であって、第1筐体と、第2筐体と、前記第1筐体と前記第2筐体との間を回動可能に連結するヒンジ装置と、電波を送受信するアンテナ装置と、を備え、前記ヒンジ装置は、金属材料で形成されたヒンジ軸と、 金属材料で形成され、前記ヒンジ軸の一端部を回転可能に支持する軸受部と、金属材料で形成され、前記ヒンジ軸の他端部を前記第1筐体又は前記第2筐体に対して固定する筐体取付部材と、電波透過性材料で形成され、内部に前記軸受部を収容するヒンジ筐体と、を有し、前記アンテナ装置は、前記ヒンジ筐体の内部に収容されるホルダ部品と、前記ホルダ部品に支持されるアンテナエレメントと、前記ホルダ部品に支持され、前記軸受部と電気的に接続されるグランドエレメントと、を有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記態様によれば、ヒンジ装置にアンテナ装置を搭載した構成としながらも、簡素な構造でアンテナ装置をフレームグランドすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る電子機器について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は、一実施形態に係る電子機器10の平面図である。
図1は、ヒンジ装置12によってディスプレイ筐体14を本体筐体16から開いた状態(使用形態)を示している。
図2Aは、
図1に示す電子機器10のディスプレイ筐体14を閉じた状態を模式的に示す側面図である。
図2Bは、電子機器10のディスプレイ筐体14をさらに開いて反転させた状態を模式的に示す側面図である。
【0018】
本実施形態の電子機器10は、ノート型PC及びタブレット型PCとして使用可能なコンバーチブル型PCである。ディスプレイ筐体14は、本体筐体16に対してディスプレイ18を閉じた0度位置から反転した360度位置まで回動可能である。電子機器10は、ディスプレイ筐体14を本体筐体16に対して90度〜180度程度の角度位置に回動させた状態ではノート型PCとして好適に使用できるノートモードとなる(
図1及び
図2A参照)。電子機器10は、ディスプレイ筐体14を本体筐体16に対して360度位置まで回動させた状態ではタブレット型PCとして好適に使用できるタブレットモードとなる(
図2B参照)。電子機器10は、ディスプレイ筐体14を本体筐体16に対して0度〜180度程度の角度範囲で回動可能な一般的なノート型PCでもよい。電子機器10はコンバーチブル型PCやノート型PC以外、例えば携帯電話、スマートフォン又は電子手帳等、2つの筐体を回動可能に連結した構成であれば好適に適用できる。
【0019】
以下、
図1及び
図2Aに示すノートモードを基準とし、ディスプレイ18を視認しながらキーボード装置20を操作する使用者から見た方向で、手前側を前、奥側を後と呼び、本体筐体16の厚み方向を上下、幅方向を左右と呼んで説明する。
【0020】
図1、
図2A及び
図2Bに示すように、電子機器10は、ディスプレイ筐体14の下端部と本体筐体16の後端部とを左右一対のヒンジ装置12,12によって回動可能に連結した構成である。
【0021】
ディスプレイ筐体14は、薄い矩形状の箱体である。ディスプレイ18は、ディスプレイ筐体14の前面に設けられている。ディスプレイ18は、例えばタッチパネル式の液晶ディスプレイである。ディスプレイ筐体14は、ヒンジ装置12を通過したケーブル21(
図3参照)により本体筐体16と電気的に接続されている。
【0022】
本体筐体16は、薄い矩形状の箱体である。本体筐体16の上面には、キーボード装置20、ポインティングスティック22、及びタッチパッド23が設けられている。本体筐体16の内部には、図示しないマザーボード、演算装置、及びメモリ等の各種電子部品が収納されている。
【0023】
図3は、0度位置にある電子機器10の左側のヒンジ装置12及びその周辺部の構成を模式的に示す一部断面背面図である。
図4は、
図3に示すヒンジ装置12に対するアンテナ装置24の取付構造を示す分解斜視図である。
【0024】
図2A〜
図4に示すように、ヒンジ装置12は、第1ヒンジ軸26と、第2ヒンジ軸27と、軸受部28と、ヒンジ筐体30とを備える。第1ヒンジ軸26、第2ヒンジ軸27、及び軸受部28は、ステンレスやスチール、アルミニウム等の金属材料で形成されている。ヒンジ筐体30は、電波透過性材料で形成されている。電波透過性材料は、電波を透過可能な材料であり、例えばポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂材料、セラミック、ガラス等を例示できる。
【0025】
左右のヒンジ装置12,12は、左右対称構造である以外は同一構造である。詳細は後述するが、アンテナ装置24は、左右のヒンジ装置12,12のそれぞれのヒンジ筐体30内に収容されている(
図1参照)。アンテナ装置24は、左右一方のヒンジ装置12のみに設けられてもよい。
【0026】
図3及び
図4に示すように、第1ヒンジ軸26は、左右方向に延びたピン状部材である。第1ヒンジ軸26の一端部は、軸受部28で回転可能に支持されている。第1ヒンジ軸26の他端部は、ヒンジ筐体30の外部へと突出し、第1筐体取付部材32を介して本体筐体16に固定されている。第1筐体取付部材32は、第1ヒンジ軸26の他端部に回転不能に固定された金属板であり、本体筐体16とねじ止めされる。これにより本体筐体16は、第1ヒンジ軸26と一体に構成され、軸受部28に対して相対的に回転可能である。
【0027】
第2ヒンジ軸27は、左右方向に延びたピン状部材である。第2ヒンジ軸27の一端部は、軸受部28で回転可能に支持されている。第2ヒンジ軸27の他端部は、ヒンジ筐体30の外部へと突出し、第2筐体取付部材33を介してディスプレイ筐体14に固定されている。第2筐体取付部材33は、第2ヒンジ軸27の他端部に回転不能に固定された金属板であり、ディスプレイ筐体14とねじ止めされる。これによりディスプレイ筐体14は、第2ヒンジ軸27と一体に構成され、軸受部28に対して相対的に回転可能である。
【0028】
図5は、各ヒンジ軸26,27及び軸受部28の構成を示す斜視図である。
図3〜
図5に示すように、軸受部28は、ヒンジ筐体30の断面形状と略同一の断面形状を有するブロック状部材である。軸受部28は、各ヒンジ軸26,27をそれぞれ回転可能に支持している。軸受部28の内部には、第1ヒンジ軸26の回転と第2ヒンジ軸27の回転とを同期させるギヤ機構が収納されている。ヒンジ装置12は、ヒンジ軸26,27が同期回転する構成ではなく、ディスプレイ筐体14の回動範囲に応じて回転軸を切り替える構成としてもよい。
【0029】
軸受部28には、第1トルク発生機構34及び第2トルク発生機構35が連結されている。トルク発生機構34,35は、例えば複数枚の板ばねを軸方向に並べて接触させた構造である。第1トルク発生機構34は、第1ヒンジ軸26に外挿され、第1ヒンジ軸26に所定の回転トルクを発生させる。第2トルク発生機構35は、第2ヒンジ軸27に外挿され、第2ヒンジ軸27に所定の回転トルクを発生させる。これにより電子機器10は、ディスプレイ筐体14と本体筐体16との間の回動動作がある程度の回転トルクを持った安定且つ円滑なものとなっている。
【0030】
軸受部28は、ねじ穴28aを有する。ねじ穴28aは、筐体取付部材32,33側とは反対側の側面28bに形成されている。ねじ穴28aは、ヒンジ軸26,27間に挟まれた位置にある。ねじ穴28aは、ヒンジ筐体30及びアンテナ装置24の取付部となる。
【0031】
図3及び
図4に示すように、ヒンジ筐体30は、各ヒンジ軸26,27と、軸受部28と、アンテナ装置24とを収容する筒状のキャップである。ヒンジ筐体30は、略楕円形状の断面形状を有する。ヒンジ筐体30は、ディスプレイ筐体14及び本体筐体16の後端部に設けられた凹状部14a,16aに配置され(
図3参照)、凹状部14a,16a内で回動する。
【0032】
ヒンジ筐体30は、筒状の内部空間の左右方向略中央部に取付板30aを有する。取付板30aは、ヒンジ筐体30の内部空間を左右に仕切る壁部である。取付板30aの略中央には、軸受部28側に突出した円柱状のボス部30bが形成されている。ボス部30bには、ねじ挿通孔30cが貫通形成されている。ヒンジ筐体30は、ねじ挿通孔30cを通したねじ部品36(
図5及び
図6参照)によって軸受部28と固定される。これによりヒンジ筐体30は、軸受部28と一体に構成され、各ヒンジ軸26,27に対して相対回転可能となる。
【0033】
図6は、ねじ部品36の構成を示す斜視図である。
図6に示すように、ねじ部品36は、雄ねじが形成されたねじ部36aと、頂面に雌ねじ36bが形成された頭部36cとを有する金属部品である。ねじ部36aは、例えばねじ径1.4mm(M1.4)の雄ねじである。頭部36cは、円柱状を成している。頭部36cは、ねじ部36aとは反対側にある頂面に、雌ねじ36bが形成されると共に、雌ねじ36bの開口縁部には六角雌ねじ36dが形成されている。雌ねじ36bは、例えばねじ径1.2mm(M1.2)である。
【0034】
ねじ部品36は、ねじ部36aの適正締付トルクが雌ねじ36bに対する金属ねじ38の適正締付トルクよりも大きい構造となっている。ねじ部36aは、軸受部28のねじ穴28aに螺合される部分である。雌ねじ36bは、アンテナ装置24の締結用の金属ねじ38が螺合される部分である。六角雌ねじ36dは、ねじ部36aを締め付ける際に所定の六角雄ねじを係合させて使用する部分である。なお、適正締付トルクとは、例えばねじ部36aや金属ねじ38を適正な締結強度で固定するための目標締付トルクである。本実施形態の場合、ねじ部36aのねじ径が雌ねじ36bのねじ径よりも大きく、その適正締付トルクも大きくなっている。
【0035】
図7は、アンテナ装置24の斜視図である。アンテナ装置24は、例えば無線LANの電波を送受信するアンテナである。アンテナ装置24は、無線LAN以外、無線WAN等に対応したものでもよい。
図3、
図4及び
図7に示すように、アンテナ装置24は、ホルダ部品40と、アンテナエレメント42と、グランドエレメント44とを有する。
【0036】
ホルダ部品40は、アンテナ装置24をヒンジ筐体30内に配設するための部品である。ホルダ部品40は、上記したヒンジ筐体30と同様に電波透過性材料で形成されており、本実施形態の場合は樹脂製である。ホルダ部品40は、アンテナ形成面40aと、押圧面40bと、上下一対の保持アーム40c,40dと、ねじ挿通孔40eとを有する。
【0037】
アンテナ形成面40aは、ヒンジ筐体30に収容された際に後方を向く面、つまり本体筐体16側(ディスプレイ筐体14側)とは反対側を臨む面である。押圧面40bは、ヒンジ筐体30に収容された際、軸受部28の側面28bと対向する面である。上下の保持アーム40c,40dは、それぞれ前後一対ずつ設けられている。保持アーム40c,40dは、互いに近接する方向に屈曲したフック形状である。上部の保持アーム40c,40c間、及び下部の保持アーム40d,40d間には、ケーブル21をU字状に曲げた屈曲部が保持される(
図3参照)。上記した通り、ケーブル21は、本体筐体16からディスプレイ筐体14へと接続されるケーブルである。保持アーム40c,40d間には、ケーブル21の脱落を防止するゴムブロック46が嵌合される。ゴムブロック46は、ヒンジ筐体30の開口から内部が視認されることを防止するカバーとしても機能する。ねじ挿通孔40eは、金属ねじ38が挿通される孔部である。
【0038】
アンテナエレメント42及びグランドエレメント44は、例えばスクリーン印刷や貼付等によって設けられた導体である。アンテナエレメント42は、電波の送受信を行うための導電パターンである。グランドエレメント44は、アンテナ装置24のグランドとなる導電部である。
図7に示すように、アンテナエレメント42は、アンテナ形成面40aの一部に設けられている。グランドエレメント44は、アンテナ形成面40aのアンテナエレメント42を囲む部分と、押圧面40bとに亘って広範囲に設けられている。押圧面40bでは、グランドエレメント44がねじ挿通孔40eを囲んでいる。
【0039】
図4に示すように、押圧面40bの内面側には、金属部材47が設けられている。金属部材47には、ねじ挿通孔40eと同軸に並んで配置されるねじ挿通孔47aが形成されている。金属部材47は、グランドエレメント44と電気的に接続される金属板である。金属部材47は、グランドエレメント44と金属ねじ38とをより確実に接続する機能を有する。金属部材47は、樹脂材料で形成されたホルダ部品40が金属ねじ38の締付時に変形することを防止する補強材としても機能する。
【0040】
アンテナ装置24は、本体筐体16内のマザーボードや通信回路等とアンテナケーブル48を介して電気的に接続される。アンテナケーブル48は、例えば同軸ケーブルであり、中心の導体48aがアンテナエレメント42と電気的に接続され、周囲の遮蔽層48bがグランドエレメント44と電気的に接続される(
図7参照)。アンテナケーブル48は、ホルダ部品40の下部に設けられた保持爪40fで保持され、ケーブル21と共に本体筐体16へと引き込まれている。
【0041】
次に、以上のように構成されたヒンジ装置12とアンテナ装置24との連結構造及び連結動作について具体的に説明する。
【0042】
先ず、
図4に示すように、軸受部28にヒンジ筐体30を連結する。軸受部28は、予めヒンジ軸26,27及び筐体取付部材32,33が一体に組み付けられたアセンブリ品である。軸受部28は、ヒンジ筐体30内へと一方側(
図4中で左側)から挿入し、側面28bを取付板30aのボス部30bに突き合てる(
図3参照)。続いて、ねじ部品36をヒンジ筐体30内へと他方側(
図4中で右側)から挿入する。ねじ部品36は、六角雌ねじ36dに所定の工具を嵌合させ、ねじ部36aをねじ挿通孔30cに通して軸受部28のねじ穴28aに螺合させる。これによりヒンジ筐体30は、ねじ部品36のねじ部36aによって軸受部28に締結される。この状態では、ねじ部品36は、頭部36cが取付板30aから突き出すように配置されている(
図3及び
図4参照)。
【0043】
次に、
図4に示すように、アンテナ装置24をヒンジ筐体30内へと、軸受部28とは反対側(
図4中で右側)から挿入する。アンテナ装置24は、押圧面40bがねじ部品36の頭部36cの頂面に突き当たるまでヒンジ筐体30内へと進入させる。続いて、金属ねじ38を金属部材47のねじ挿通孔47aとホルダ部品40のねじ挿通孔40eを通してねじ部品36の雌ねじ36bに螺合させる。これによりアンテナ装置24は、金属ねじ38によってホルダ部品40がねじ部品36、つまり軸受部28と締結される。その結果、アンテナ装置24は、ヒンジ筐体30内に収容された状態で、軸受部28及びヒンジ筐体30と一体に固定される。
【0044】
最終的には、ケーブル21をホルダ部品40の保持アーム40c,40dに保持させた後、ゴムブロック46を装着する。そして、このようにアンテナ装置24を組み込んだヒンジ装置12を本体筐体16やディスプレイ筐体14に組み付けることで電子機器10の組み立てが完了する。
【0045】
ここで、
図3に示すように、ヒンジ装置12は、筐体16,14と連結された筐体取付部材32,33と、筐体取付部材32,33と連結されたヒンジ軸26,27と、ヒンジ軸26,27と連結された軸受部28とが全て金属製である。一方、アンテナ装置24は、押圧面40bのグランドエレメント44が軸受部28に固定されたねじ部品36の頭部36cの頂面に押圧されている。同時に、金属ねじ38は、グランドエレメント44に電気的に接続された金属部材47と当接した状態でねじ部品36に固定されている。このため、アンテナ装置24のグランドエレメント44は、各筐体16,14と電気的に接続されており、フレームグランドが確保されている。
【0046】
以上のように、本実施形態の電子機器10は、ヒンジ装置12と、アンテナ装置24とを備える。そして、ヒンジ装置12は、軸受部28が金属材料で形成され、さらに、軸受部28で支持されるヒンジ軸26,27と、ヒンジ軸26,27を本体筐体16及びディスプレイ筐体14に連結する筐体取付部材32,33とが金属材料で形成されている。また、アンテナ装置24は、電波透過性材料で形成されたヒンジ筐体30内に収容され、グランドエレメント44が軸受部28と電気的に接続されている。
【0047】
従って、当該電子機器10では、アンテナ装置24のグランドエレメント44が、金属製の軸受部28、ヒンジ軸26,27、筐体取付部材32,33を介して各筐体16,14と電気的に接続される。これによりアンテナ装置24は、ヒンジ筐体30の外部にグランドエレメント44からのケーブル等を引き出す必要がなく、簡素な構成でフレームグランドすることができ、製造コストを低減できる。しかもグランドエレメント44は、ホルダ部品40と共にヒンジ筐体30内に収容された状態で軸受部28と接続されている。このため、グランドエレメント44は、ヒンジ装置12が動作して外力や衝撃が付与された場合であっても軸受部28との接続状態が維持され、長期間安定した性能を維持できる。また、当該電子機器10では、アンテナ装置24をヒンジ筐体30に収容したことにより、ディスプレイ筐体14の角度位置に関わらず、常に安定したアンテナ性能を得ることができる。
【0048】
当該電子機器10は、金属ねじ38でホルダ部品40を軸受部28に対して固定している。そして、金属ねじ38は、グランドエレメント44と電気的に接続されている。このため、金属ねじ38が軸受部28に固定される締結構造により、グランドエレメント44と軸受部28との電気的な接続状態が強固になる。この際、グランドエレメント44は、金属ねじ38によってホルダ部品40が軸受部28に対して固定された状態で、軸受部28に固定された金属部品であるねじ部品36の頭部36cに押圧された状態となる。このため、グランドエレメント44と軸受部28との電気的な接続状態が一層安定する。
【0049】
ヒンジ筐体30は、ねじ部品36を用いず他の方法で軸受部28と固定されてもよい。この場合、金属ねじ38は、直接的に軸受部28のねじ穴28aに螺合させればよい。その際、押圧面40bのグランドエレメント44は、軸受部28の側面28bに直接的に押圧された状態となる。
【0050】
当該電子機器10は、一端部に雄ねじが形成されたねじ部36aを有し、他端部に雌ねじ36bが形成された頭部36cを有するねじ部品36を用いている。ねじ部品36は、ねじ部36aが軸受部28に形成されたねじ穴28aに螺合することでヒンジ筐体30を軸受部28に対して締結する。さらにねじ部品36は、雌ねじ36bに金属ねじ38が螺合されることでホルダ部品40とも締結される。
【0051】
従って、当該電子機器10では、ヒンジ装置12の本体部となる軸受部28に対して、1本のねじ部品36を用いてヒンジ筐体30及びアンテナ装置24を段階的に締結することができる。このため、ヒンジ装置12に対するアンテナ装置24の組付作業が容易になるだけでなく、メンテナンス時の分解作業も容易となる。例えば、ヒンジ装置12にアンテナ装置24を組み付けた後、仮にアンテナ装置24に不具合が見つかった場合は、金属ねじ38を取り外すだけで、アンテナ装置24を容易にヒンジ筐体30から抜き取ることができる。特に、ヒンジ装置12とアンテナ装置24とは、それぞれが異なる製造元でアセンブリ品として製造されることが一般的である。このため、本実施形態では、不具合等の発生時にアンテナ装置24やヒンジ装置12を容易に交換することができ、製造作業の効率も向上する。
【0052】
しかもねじ部品36は、軸受部28に対して先に締結するヒンジ筐体30の固定用のねじ部36aの適正締付トルクが、後に締結するアンテナ装置24の固定用の雌ねじ36b(金属ねじ38)の適正締付トルクよりも大きい構造となっている。つまりアンテナ装置24は、先に軸受部28に締結されたねじ部36aよりも小さい締付トルクでねじ部品36に締結される。このため、アンテナ装置24の締結作業時、先に固定されている軸受部28とヒンジ筐体30との締結部に対し、金属ねじ38の締付力が影響を及ぼすことがなく、ヒンジ筐体30の取付姿勢がずれてしまうことを抑制できる。勿論、アンテナ装置24の取外作業時にも金属ねじ38の取り外し作業によって軸受部28とヒンジ筐体30との締結部に影響が及ぶことも抑制できる。
【0053】
また、1つのねじ部品36を用いてヒンジ筐体30及びアンテナ装置24を軸受部28と締結できるため、部品点数を削減でき、装置構造を小型化できる。特にねじ部品36は、その軸線上にねじ部36aと雌ねじ36bとが並んだ構造となっている。このため、ヒンジ筐体30の高さ寸法や厚み寸法に対する影響がほとんどなく、ヒンジ装置12の小型化にも貢献する。
【0054】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【0055】
上記では、ヒンジ装置12として2軸構造のものを例示した。しかしながら、ヒンジ装置12は、第1ヒンジ軸26又は第2ヒンジ軸27の一方のみを用いた1軸構造のものでもよい。
【0056】
上記では、ねじ部品36として、雄ねじ(ねじ部36a)と雌ねじ36bとを備えた構成を例示した。しかしながらねじ部品36は、例えば両端にそれぞれ雄ねじが設けられた構成でもよい。この場合、金属ねじ38は、金属ナットで代用すればよい。