特許第6807984号(P6807984)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6807984
(24)【登録日】2020年12月10日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】細穴放電加工機
(51)【国際特許分類】
   B23H 1/00 20060101AFI20201221BHJP
   B23H 9/14 20060101ALI20201221BHJP
   B23H 7/14 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   B23H1/00 B
   B23H9/14
   B23H7/14 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-107312(P2019-107312)
(22)【出願日】2019年6月7日
(65)【公開番号】特開2020-199574(P2020-199574A)
(43)【公開日】2020年12月17日
【審査請求日】2019年6月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】菅原 進
【審査官】 正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−071639(JP,A)
【文献】 特開昭60−249531(JP,A)
【文献】 特開平06−143043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23H 1/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸に装着された細穴電極と、テーブルに取り付けられたワークとを相対的に移動してワークを放電加工する細穴放電加工機において、
前記主軸の下方のガイドアームに取り付けられ、前記細穴電極の下部を前記細穴電極が軸線方向に移動可能に挿通、支持する位置決めガイドと、
前記ガイドアームの前記位置決めガイドの直上の所定位置に設けられ、軸線方向に移動可能な前記細穴電極に直接的に接触して給電する給電子と、
を具備し、前記細穴電極の長さに拘わらず、給電位置から前記位置決めガイドの先端までの距離が一定になることを特徴とした細穴放電加工機。
【請求項2】
前記給電子は、前記細穴電極の軸線方向に対して横断方向に延設された導電材料から成る多数本のブリストルを含む給電ブラシを具備しており、前記細穴電極が前記ブリストルに接触し、該給電ブラシを貫通するように、前記給電子内に挿通される請求項1に記載の細穴放電加工機。
【請求項3】
前記給電子は、円錐面を有した細穴電極導入穴を備え前記給電ブラシの上方に配置された第1導入プレートを更に具備しており、該第1導入プレートは、前記円錐面の頂点を前記給電ブラシの方に向けて前記細穴電極の移動経路上に配置されている請求項2に記載の細穴放電加工機。
【請求項4】
前記給電子は、円錐面を有した細穴電極導入穴を備え前記給電ブラシの下方に配置された第2導入プレートを更に具備しており、該第2導入プレートは、前記円錐面の頂点を前記位置決めガイドの方に向けて前記細穴電極の移動経路上に配置されている請求項2に記載の細穴放電加工機。
【請求項5】
前記主軸と前記給電子との間に配設され、前記細穴電極の側面を保持する少なくとも1つの電極保持装置を更に具備する請求項1に記載の細穴放電加工機。
【請求項6】
前記電極保持装置は、前記細穴電極の側面に接触可能に設けられた一対のパッドと、該一対のパッドを互いに接近、離反させるように駆動可能な一対のアームとを含む請求項5に記載の細穴放電加工機。
【請求項7】
前記電極保持装置が放電加工中に前記主軸と干渉しないように、前記主軸の位置に応じて前記パッドを前記細穴電極の移動経路から離反させるように、前記一対のアームを駆動するようにした請求項6に記載の細穴放電加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状またはパイプ状の細長い電極を用いてワークに細穴を放電加工する細穴放電加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
細穴放電加工は、回転主軸に保持した棒状またはパイプ状の細長い細穴電極の先端部を、ワークの近傍に配置した電極ガイドでワーク表面の加工点へ向けて案内し、細穴電極をZ軸方向に相対的に送りワークに細穴を加工する。
【0003】
特許文献1には、Z軸方向に移動可能な加工ヘッドの先端に設けられたチャックにより細穴電極の一端を保持し、他端を電極ガイド部によって加工槽内のワークに対向するように位置決めし、加工ヘッドにより細穴電極をZ軸方向に送りながら、電源部から加工ヘッドのチャックの上部に設けられた電極側給電部材と、ワークに取り付けられた被加工物側通電部材との間に加工電圧をパルス状に印加して、ワークに細穴を放電加工するようにした放電加工機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−164249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の細穴放電加工機では、放電加工中の加工電圧は細穴電極の両端部に印加されるので、細穴電極は、概ねその全長に亘って、加工電圧を印加する電気回路の一部を形成している。従って、加工の進捗に従い、細穴電極が消耗し長さが短くなると、加工電圧を印加する電気回路の抵抗が低減され、加工電流が次第に高くなることとなる。特に、近時では、消耗した電極の交換回数を少なくして加工効率を高めるために、従来よりも長い細穴電極が用いられるようになっているので、加工中の加工電流の変化も大きくなり、従って加工速度や加工される穴径の変化も大きくなり無視できなくなっている。
【0006】
本発明は、こうした従来技術の問題を解決することを技術課題としており、放電加工中に細穴電極の長さが変化しても、加工速度や加工される穴径が変化せず、安定的に細穴加工できるようにした細穴放電加工機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、主軸に装着された細穴電極と、テーブルに取り付けられたワークとを相対的に移動してワークを放電加工する細穴放電加工機において、前記主軸の下方のガイドアームに取り付けられ、前記細穴電極の下部を前記細穴電極が軸線方向に移動可能に挿通、支持する位置決めガイドと、前記ガイドアームの前記位置決めガイドの直上の所定位置に設けられ、軸線方向に移動可能な前記細穴電極に直接的に接触して給電する給電子とを具備し、前記細穴電極の長さに拘わらず、給電位置から前記位置決めガイドの先端までの距離が一定になるようにした細穴放電加工機が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、軸線方向に移動可能な細穴電極に直接的に接触して給電する給電子をガイドアームの位置決めガイドの直上の所定位置に設けたので、細穴電極の長さに拘わらず、給電位置から位置決めガイドの先端までの距離が一定になり、細穴電極とワークとの間の加工電流が一定になり、加工速度や加工される穴径が変化せず、安定的に細穴加工できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の好ましい実施形態による細穴放電加工機の正面図である。
図2図1の細穴放電加工機のZ軸スライダ、主軸ヘッドおよび電極保持装置が閉じたときのガイドアームを示す斜視図である。
図3図1の細穴放電加工機のZ軸スライダ、主軸ヘッドおよび電極保持装置が開いたときのガイドアームを示す斜視図である。
図4】一部を破断して示す給電子組立体の斜視図である。
図5】電極ホルダと共に示す給電子組立体の側断面図である。
図6】パイプ電極と共に示す給電ブラシ組立体の斜視図である。
図7図6の給電ブラシ組立体の平面図である。
図8】給電ブラシに用いるブリストルの一例を示す斜視図である。
図9】パイプ電極と共に示す給電ブラシのブリストル先端部の略示拡大図である。
図10】給電ブラシ組立体の他の例を示す図6と同様の斜視図である。
図11図10の給電ブラシ組立体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
図1は、本発明を適用する放電加工機100の要部構成を概略的に示す正面図である。なお、以下では、便宜上、図示のように直交3軸方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)を、それぞれ左右方向、前後方向、上下方向とし、この定義に従い各部の構成を説明する。
【0011】
図1において、基台となるベッド102の上面の後方部にはコラム104が立設されており、コラム104の上面には、Xスライダ106がX軸方向(左右方向)に移動可能に取り付けられている。Xスライダ106の上面には、ラム108がY軸方向(前後方向、図1の紙面に垂直な方向)に移動可能に支持されている。ラム108の前面には、W軸スライダ110がZ軸(上下方向)と平行なW軸方向に往復動可能に取り付けられている。
【0012】
W軸スライダ110の前面には、主軸ヘッド112がZ軸方向に移動可能に支持されている。主軸ヘッド112には、主軸114が、Z軸と平行に延びる中心軸線CL0周りに回転可能に支持される。主軸ヘッド112の底面から突出する主軸114の先端部に電極ホルダ116が装着される。W軸スライダ110には、また、後述するW軸ガイド組立体140が取り付けられている。
【0013】
W軸ガイド組立体140は、W軸スライダ110の前面に取り付けられたガイドアーム142を有している。ガイドアーム142は、Z軸方向に延びる棒状または箱状の部材であり、W軸スライダ110と共に上下方向に移動する。このW軸スライダ110とガイドアーム142の移動軸をW軸と定義する。W軸はZ軸と平行である。
【0014】
ガイドアーム142の1つの側面、本実施形態では、ガイドアーム142において、コラム104、Xスライダ106およびラム108に対面する側面に、導電材料から成る給電バー154が取り付けられている。給電バー154は、ケーブル156を介して加工電源装置(図示せず)に接続されている。ガイドアーム142の下端部には、給電子組立体10が取り付けられている。加工電源装置は、放電加工機100の機械制御装置(図示せず)に接続されており、該機械制御装置によって制御される。
【0015】
図4、5を参照すると、給電子組立体10は、ガイドプレート12、給電ベース20、給電ブラシ組立体30、給電ブロック22を主要な構成要素として具備している。
ガイドプレート12は矩形の板材料から形成されており、その後方部分(図5では右側)の上面に、ガイドアーム142の下端部142aに設けられたチャック160に嵌合する係合穴12aが形成されている。チャック160を該係合穴12aに嵌合させることによって、ガイドプレート12は、ガイドアーム142の下端部に取り付けられる。
【0016】
ガイドプレート12の上面には、導電材料から成る給電ベース20が、絶縁プレート18を介して取り付けられている。給電ベース20の先端側の上面には、第1導入プレート14が取り付けられている。第1導入プレート14は、パイプ電極28を給電ベース20内に案内するための円錐面を有した導入穴14aを有している。第1導入プレート14は、導入穴14aの円錐面の頂点が下側になり、かつ、主軸114の中心軸線CL0上に配置されるように給電ベース20に位置決め、固定される。
【0017】
給電子組立体10の下部には、パイプ電極28の下部を軸線方向に移動可能に挿通、支持する位置決めガイドとしての電極ガイド16が取り付けられている。電極ガイド16は、ガイドプレート12の係合穴12aとは反対側の先端部において、主軸114の中心軸線CL0に沿って、ガイドプレート12の下面から下方へ、つまりテーブル118に接近する方向に突出している。電極ガイド16は長手方向に延びる内腔16aを有しており、該内腔16aの中心が、中心軸線CL0に一致するように、ガイドプレート12に対して位置決めされる。内腔16aは、パイプ電極28の外径よりも僅かに大きな内径を有している。
【0018】
給電ベース20内において、電極ガイド16の直上で第1導入プレート14の下側には、給電ブラシ組立体30が配設されている。給電ブラシ組立体30は、一対の給電ブラシ32、34を有している。給電ブラシ32、34は、導電材料から成る基部32a、34aと、基部32a、34aの一方の側面に植設した多数のブリストル32b、34bとを具備している。
【0019】
一対の給電ブラシ32、34は、図6、7に示すように、給電ベース20内において、各々のブリストル32b、34bが横断方向に延び、その先端部が向き合うように、主軸114の中心軸線CL0に関して対称に配置される。一対の給電ブラシ32、34は、また、着脱可能かつ電気的に接触するように給電ベース20に固定される。
【0020】
ブリストル32b、34bは、真鍮のような比較的柔軟な導電材料から成る線材から、好ましくは、図8に示すように、3次元的に波打つように形成されている。ブリストル32b、34bを3次元的に波打つように形成することによって、ブリストル32b、34b間に隙間が確保され、図9に示すように、パイプ電極28との接触を確保しながら、密生するブリストル32b、34b内にパイプ電極28を挿通し易くなる。
【0021】
パイプ電極28は、ブリストル32b、34b間の隙間を押し退けて挿通される。このとき、パイプ電極28を高速回転させることで、パイプ電極28の屈曲性が抑制される。また、パイプ電極28を高速回転させることによって、ブリストル32b、34bとパイプ電極28との摩擦が低減され、パイプ電極28を屈曲させることなく、密生するブリストル32b、34b内に挿通可能となる。ブリストル32b、34bはパイプ電極より細いものを使用することで容易に変形して、パイプ電極28を挿通させる隙間が確保される。また、ブリストル32b、34bは、その弾性力によって、パイプ電極28の表面に接触する。複数のブリストル32b、34bが同時にパイプ電極28に接触して安定的に給電できる。
【0022】
なお、太いパイプ電極28を使用する場合には、短いブリストルの給電ブラシ組立体を用いることができる。図10、11において、給電ブラシ組立体30′は、図6、7に示した給電ブラシ組立体30と同様に、一対の給電ブラシ32′、34′を有しており、該給電ブラシ32′、34′の各々は、導電材料から成る基部32a′、34a′と、基部32a′、34a′の一方の側面に植設した多数のブリストル32b′、34b′とを具備している。ブリストル32b′、34b′は、真鍮より剛性の高いステンレスのような導電材料の線材から形成されてもよい。
【0023】
図6、7では、給電ブラシ32、34のブリストル32b、34bは、その先端部が接触または重なるような長さを有しているが、図10、11では、給電ブラシ32′、34′は、比較的短いブリストル32b′、34b′を有しており、ブリストル32b′、34b′の先端は接触しておらず、両者間に隙間Gが形成される。
【0024】
パイプ電極28の外径に応じて適切なブリストル32b、34b;32b′、34b′の太さ、長さ、材質が選択される。また、隙間Gを正の値(ブリストル32b、34bが互いに離間した状態)、0(ブリストル32b、34bが、その先端で互いに接触するかしないかの状態)または負の値(ブリストル32b、34bが互いに部分的に重なり合う状態)にするかも選択することができる。パイプ電極28が屈曲せずに給電ブラシ組立体30、30′に挿通でき、かつ、安定的に給電できるように、これらの条件を選択する。
【0025】
ガイドプレート12と給電ベース20との間には、絶縁材料より成る第2導入プレート26が配置されている。第2導入プレート26は、パイプ電極28を給電ベース20から電極ガイド16内に案内するための円錐面を有した導入穴26aを有している。第2導入プレート26は、導入穴26aの円錐面の頂点が、電極ガイド16に対面し、かつ、主軸114の中心軸線CL0上に配置されるように給電ベース20に位置決め、固定される。
【0026】
給電ベース20は、ケーブル162および給電ブロック22を介して、給電バー154に電気的に接続される。給電バー154の下端部には、給電バー154から給電ベース20の上面へ突出したブラケット部158が設けられており、該ブラケット部158と給電ブロック22との間に、付勢手段としてのコイルばね24が配設されている。給電ブロック22は、コイルばね24によって、給電ベース20の上面に押圧される。なお、コイルばね24とブラケット部158との間に絶縁プレート164を配設することが好ましい。
【0027】
電極ホルダ116と電極ガイド16との間には、パイプ電極28が軸線CL0に沿って延在し、その上端部が電極ホルダ116に保持されている。主軸114が、軸線CL0を中心として回転することによって、パイプ電極28は、電極ホルダ116と共に軸線CL0を中心として回転する。
【0028】
ガイドアーム142において、パイプ電極28に対面する側面には、少なくとも1つの、図示する実施形態では、5つの電極保持装置144、146、148、150、152が配設されている。電極保持装置144、146、148、150、152の各々は、ガイドアーム142から水平に延びる一対のフィンガ144a、144b;146a、146b;148a、148b;150a、150b;152a、152bと、該フィンガ144a、144b;146a、146b;148a、148b;150a、150b;152a、152bの先端に取り付けられたパッド144c、144d;146c、146d;148c、148d;150c、150d;152c、152dとを有している。
【0029】
各対のフィンガ144a、144b;146a、146b;148a、148b;150a、150b;152a、152bは、共通の鉛直軸線を中心として水平方向に互いに接近、離反するように揺動可能にガイドアーム142に取り付けられている。図2において、電極保持装置144、146、148、150、152は、各々のパッド144c、144d;146c、146d;148c、148d;150c、150d;152c、152dが互いに接触した閉位置にあり、図3では、各々のパッド144c、144d;146c、146d;148c、148d;150c、150d;152c、152dが互いに離反した開位置にある。電極保持装置144、146、148、150、152が閉位置にあるとき、パイプ電極28は、パッド144c、144d;146c、146d;148c、148d;150c、150d;152c、152dの間に摺動可能に保持される。パッド144c、144d;146c、146d;148c、148d;150c、150d;152c、152dの材質は、パイプ電極28が軸線方向に摺動したり、回転するときの摩擦力が適度になるスポンジが好ましい。
【0030】
主軸114内に設けられた加工液供給管路(図示せず)および電極ホルダ116に形成された加工液供給通路(図示せず)を介して、例えば水などの加工液がパイプ電極28の内部に供給され、パイプ電極28の先端部(下端部)から加工液が噴射される。なお、加工液として油を用いてもよい。放電加工機100は、パイプ電極28内に加工液を供給する加工液供給装置(図示せず)を備えている。
【0031】
ベッド102の上面には、コラム104よりも前方にテーブル118が配置されている。テーブル118の上面には、傾斜回転テーブル装置120が搭載されている。傾斜回転テーブル装置120は、テーブル118の上面から上方に突設された前後一対の支持部材122と、前後の支持部材122の間に、Y軸方向に延在する旋回軸CLbを中心としてB軸方向に旋回可能に支持された傾斜部材124と、傾斜部材124の左端面に、旋回軸CLbに垂直な回転軸CLaを中心としてA軸方向に回転可能に支持された回転テーブル126とを有する。回転テーブル126にはチャック128が設けられ、チャック128にワーク130が取り付けられる。ワーク130は、例えばガスタービンに用いられるタービンブレードやベーンであり、該タービンブレードの表面には、タービンブレードの表面を冷却する冷却空気を流す冷却孔が加工される。
【0032】
テーブル118の周囲には、テーブル118および傾斜回転テーブル装置120の全体を囲うように昇降可能に加工槽132が設けられている。なお、図1の1点鎖線は、加工槽132が上昇した加工状態であり、段取り作業時等の非加工状態には、加工槽132が実線に示すように下降する。放電加工機100は、加工槽132を昇降させる加工槽駆動装置(図示せず)を備えている。加工槽132が上昇しているとき、前記加工液供給装置から該加工槽132へ加工液が供給される。加工槽駆動装置は、放電加工機100の前記機械制御装置に接続されており、該機械制御装置によってパイプ電極28および加工槽132への加工液の供給が制御される。
【0033】
図示は省略するが、図1の放電加工機100は、Xスライダ106を左右方向に移動させるX軸駆動部と、ラム108を前後方向に移動させるY軸駆動部と、W軸スライダ110を上下方向に移動させるW軸駆動部と、主軸ヘッド112を上下方向に移動させるZ軸駆動部と、軸線CL0を中心に主軸114を回転させる主軸駆動部と、旋回軸CLbを介して傾斜部材124を傾斜させるB軸駆動部と、回転軸CLaを介して回転テーブル126を回転させるA軸駆動部とをそれぞれ有する。
【0034】
X軸駆動部、Y軸駆動部、Z軸駆動部およびW軸駆動部は、例えばボールねじとボールねじを回転駆動するサーボモータにより構成され、主軸駆動部は、例えばスピンドルモータにより構成され、B軸駆動部およびA軸駆動部は、例えばDD(ダイレクトドライブ)サーボモータにより構成されている。これらX軸駆動部、Y軸駆動部、Z軸駆動部、W軸駆動部、主軸駆動部、B軸駆動部およびA軸駆動部は、放電加工機100のNC装置(図示せず)により制御される。こうして、電極ホルダ116と電極ガイド16がワーク130に対してX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に相対移動可能となり、かつB軸方向およびA軸方向に相対移動可能となる。
【0035】
また、ラム108の前面には、W軸スライダ110の上下方向の位置を検出するリニアスケールなどのW軸位置検出器108aが設けられている。W軸位置検出器108aからの信号により、電極ガイド16のW軸位置を検出することができる。更に、W軸スライダ110の前面には、W軸スライダ110に対する主軸ヘッド112の上下方向の位置を検出するリニアスケールなどのZ軸位置検出器110aが設けられている。Z軸位置検出器110aからの信号と、W軸位置検出器108aからの信号とにより、電極ホルダ116の位置、すなわちパイプ電極28の上端部の位置を検出することができる。W軸位置検出器108aおよびZ軸位置検出器110aは、放電加工機100の前記NC装置に接続されており、Z軸駆動部およびW軸駆動部は、W軸位置検出器108aおよびZ軸位置検出器110aからの信号に基づいて制御することができる。
【0036】
更に、放電加工機100は、電極保持装置144、146、148、150、152のフィンガ144a、144b;146a、146b;148a、148b;150a、150b;152a、152bを独立して駆動するフィンガ駆動部(図示せず)を備えている。フィンガ駆動部は、電極ホルダ116の上下方向の位置に基づいて、放電加工機100の前記機械制御装置によって制御される。
【0037】
本実施形態では、W軸スライダ110に対する主軸ヘッド112の昇降により、電極ホルダ116と電極ガイド16との間隔が調整可能となり、パイプ電極28の消耗によるパイプ電極28の長さ変化に拘わらず、加工中、常に電極ホルダ116と電極ガイド16とでパイプ電極28の上下端部を支持することができる。その間、電極ホルダ116と電極保持装置144、146、148、150、152とが干渉しないように、主軸ヘッド112がZ軸に沿って下動するにつれ、まず最上段にある電極保持装置144が開位置に移動し、次いで、その下にある電極保持装置146が開位置に移動するというように、電極保持装置144、146、148、150、152が上から順次に開位置に移動する。このとき、開位置にある電極保持装置144、146、148、150、152と、主軸ヘッド112との干渉もなく、電極ホルダ116は給電子組立体10に最接近するまで下降することができる。
【0038】
なお、図示は省略するが、W軸ガイド組立体140の側方に電極マガジンを設けることができる。電極マガジンには、複数の電極ホルダ116に装着された夫々所定の初期長さを有する交換用の複数のパイプ電極28が保持されており、主軸114と電極マガジンとの間で、不図示の交換手段により電極ホルダ116とともにパイプ電極28を交換可能となっている。電極マガジンに種々の外径のパイプ電極28を準備するようにしてもよい。
【0039】
更に、放電加工機100は、複数の電極ガイド16を格納するためのガイドマガジン(図示せず)を備えることができる。電極ガイド16は、使用するパイプ電極28の外径に適合したサイズが選ばれ、ガイドプレート12、絶縁プレート18、給電ベース20、および、使用するパイプ電極28の外径に適合した形態の給電ブラシ組立体30が一体化された状態で種々用意され、予めガイドマガジンに格納することができる。不図示のガイド交換装置によって、所望の電極ガイド16がチャック160の部分でガイドアーム142との間で着脱交換される。
【0040】
以上、説明したように、本実施形態では、給電ブラシ組立体30、30′をガイドアーム142に取り付けた電極ガイドの直上の所定位置に設けたので、パイプ電極28の長さに拘わらず、給電位置から電極ガイド16の先端までの距離Lが常に一定となる。従って、パイプ電極28とワーク130との間の加工電流が一定となり、加工速度や加工される穴径が変化せず、安定的に細穴加工できるようになる。
【符号の説明】
【0041】
10 給電子組立体
12 ガイドプレート
16 電極ガイド
20 給電ベース
22 給電ブロック
28 パイプ電極
30 給電ブラシ組立体
32 給電ブラシ
34 給電ブラシ
100 放電加工機
112 主軸ヘッド
114 主軸
116 電極ホルダ
118 テーブル
142 ガイドアーム
144 電極保持装置
図1
図2
図3
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