(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6808007
(24)【登録日】2020年12月10日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】触媒を製造するための方法及び触媒物品
(51)【国際特許分類】
B01J 35/04 20060101AFI20201221BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20201221BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20201221BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20201221BHJP
B01J 29/76 20060101ALI20201221BHJP
F01N 3/10 20060101ALI20201221BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20201221BHJP
F01N 3/28 20060101ALN20201221BHJP
【FI】
B01J35/04 301C
B01J37/02 301R
B01J37/08
B01J37/00 D
B01J35/04 301N
B01J35/04 301P
B01J29/76 A
F01N3/10 A
F01N3/08 B
!F01N3/28 301P
【請求項の数】31
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2019-223401(P2019-223401)
(22)【出願日】2019年12月11日
(62)【分割の表示】特願2017-505129(P2017-505129)の分割
【原出願日】2015年7月24日
(65)【公開番号】特開2020-78794(P2020-78794A)
(43)【公開日】2020年5月28日
【審査請求日】2020年1月7日
(31)【優先権主張番号】102014215112.0
(32)【優先日】2014年7月31日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】バウアー, ユルゲン
【審査官】
森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2014/0154163(US,A1)
【文献】
特表2011−509826(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02740534(EP,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第02103347(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
B01D 53/86
B01D 53/94
F01N 3/00 − 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック触媒(2)を製造するための方法であって、
a)触媒的に活性な材料の層(5)により囲まれている支持体として触媒的に不活性な細孔成形剤(4)を有する機能粒子(8)を提供し、
b)機能粒子(8)を、更なる無機粒子(10)で処理して触媒組成物(12)を与え、
c)触媒組成物(12)を、熱的に処理してセラミック触媒(2)を形成することにおいて、触媒(2)が、
− 機能粒子(8)中の細孔成形剤(4)により形成され、
− 更なる無機粒子(10)を含むマトリクス(24)中に埋め込まれ、
− 多孔性構造(18)を形成し、かつ
− 機能粒子(8)の層(5)の触媒的に活性な材料を含む活性な界面層(22)により少なくとも部分的に囲まれている、
少なくとも多孔性の触媒的に不活性なセル(20)を含む、セラミック触媒(2)を形成する、方法。
【請求項2】
セラミック触媒(2)が排気ガス処理のためのセラミック触媒(2)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細孔成形剤(4)が、セルが細孔(20)として形成されるように、触媒組成物(12)の熱処理の過程で漏れる有機材料からなる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
細孔成形剤(4)が熱可塑物又はエラストマーを含む有機材料からなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
細孔成形剤(4)が少なくともメソ多孔性を有する無機多孔性材料からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
細孔成形剤(4)がマクロ多孔性を有する無機多孔性材料からなる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
無機多孔性材料が、クレイ鉱物、珪藻土、シリカゲル及び多孔性ガラスから選択される、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
クレイ鉱物がピラードクレイ鉱物である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
触媒的に活性な材料の粉末粒子(6)が細孔成形剤(4)に塗布される、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
粉末粒子(6)が粘着により塗布される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
粉末粒子(6)が粘着により塗布され、かつこの目的のために、有機材料からなっていてもよい細孔成形剤(4)が、それが柔らかくなりかつ粉末粒子(6)が細孔成形剤の表面に付着したままであるように加熱されるか、又は細孔成形剤(4)に接着剤を塗布することにより塗布される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
触媒的に活性な層(5)への触媒的に不活性な細孔成形剤(4)の外部層の変換により、層(5)が形成される、請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
細孔成形剤(4)が10μmから200μmの範囲内の粒径を有する、請求項1から12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
細孔成形剤(4)が30−150μmの範囲内の粒径を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
更なる無機粒子が、工程c)での処理後にセラミックマトリクス(24)を形成するバインダー成分(10)を有する、請求項1から14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
成形体(14)が押出成形により触媒組成物から形成され、かつその後、成形体(14)が熱的に処理される、請求項1から15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
触媒(2)が、熱処理の後に、触媒的に活性な材料を含むウォッシュコートでコーティングされる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
触媒組成物(12)がウォッシュコートとしてモノリス支持体に塗布され、かつその後、このコーティングされた支持体が熱的に処理される、請求項1から16の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
機能粒子(8)の形成のための細孔成形剤(4)への層(5)の塗布、及び触媒組成物(12)の処理が、単一の処理工程で行われる、請求項1から18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
細孔成形剤(4)が乾燥触媒組成物(12)ベースで40体積%から80体積%の範囲内の割合を占める、請求項1から19の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
細孔成形剤(4)が乾燥触媒組成物(12)ベースで50−60体積%の範囲内の割合を占める、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
使用される触媒的に活性な材料が、
− 結晶性モレキュラーシーブ
− 卑金属ベースの触媒システム
− タングステン/セリウム−ベースの触媒システム
− 金属酸化物若しくは混合酸化物
− 卑金属ベースの触媒システム、及び
− 白金族金属(PGM)−ベースのシステム
のいずれか又は組み合わせである、請求項1から21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
結晶性モレキュラーシーブが、(イオン交換)ゼオライトである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
卑金属ベースの触媒システムが、チタンベースのシステムである、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
結晶性モレキュラーシーブが個々の結晶子として存在する、請求項22から24の何れか一項に記載の方法。
【請求項26】
結晶性モレキュラーシーブが、それらの固有のミクロ多孔性に加えて、IUPAC規格により規定される少なくともメソ多孔性を有する、請求項22から25の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
工程b)で触媒組成物中に導入される更なる粒子が、更なる触媒的に活性な材料である、請求項1から26の何れか一項に記載の方法。
【請求項28】
異なる粒径分布の種々の細孔成形剤(4)が使用される、請求項1から27の何れか一項に記載の方法。
【請求項29】
触媒組成物(12)が、層(5)に使用されている触媒的に活性な材料の面で異なる2以上の異なる機能粒子(8)を含み、
− 2以上の異なる触媒的に活性な材料の混合物が層(5)に使用され、かつ/又は
− 異なる触媒的に活性な材料が、混合され触媒組成物(12)を形成する第一及び第二の機能粒子(8)を得るように、個々の細孔成形剤(4)のそれぞれに塗布される、
請求項1から28の何れか一項に記載の方法。
【請求項30】
異なる粉末粒子(6)の混合物が層(5)に使用される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
混合され触媒組成物(12)を形成する第一及び第二の機能粒子(8)を得るように、第一の細孔成形剤(4)に第一の粉末粒子(6a)を塗布すること及び第二の細孔成形剤(4)に第二の粉末粒子(6b)を塗布することにより、異なる触媒的に活性な材料が、個々の細孔成形剤(4)のそれぞれに塗布される、
請求項29又は30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に排気ガス処理のための、触媒物品、及び触媒を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒は、化学反応を促進するために、使用の種々の異なる技術分野で一般的に使用される。特別な場合は、排気ガス処理、例えば、定置型燃焼システム及び移動型燃焼システム、特に自動車両、の双方からの排気ガス中の窒素酸化物レベルの低減である。この文脈では、既知の選択的触媒還元(SCR)が使用される。
【0003】
この方法では、窒素酸化物(NO
x)は、アンモニア及び酸素の存在下で窒素に還元される。種々の触媒タイプ及びシステムは、この反応の促進として原則的に知られている。触媒の既定クラスは、チタン−バナジウム触媒システム(V
2O
5/TiO
2又はV
2O
5/WO
3/TiO
2)に基づく。この種のチタン−バナジウム触媒は、定置型システム及び移動型システムの双方で使用される。特に自動車両における移動型使用のための、最近注目の題目であった更なる触媒のクラスは、結晶性モレキュラーシーブベースの、特には、アルミノケイ酸塩であるゼオライトベースの触媒のそれである。特に、鉄若しくは銅交換モレキュラーシーブと呼ばれ、好ましくはMFI、BEA若しくはCHA格子型を有する、ものである。自動車のアプリケーションについて、銅交換モレキュラーシーブは好ましい。
【0004】
他の排気ガス処理システムは、二酸化炭素への一酸化炭素の酸化、並びに水(蒸気)及び一酸化炭素への未燃炭化水素の酸化(ディーゼル酸化触媒、DOCs、と呼ばれる)、あるいは炭化水素リッチな排気ガス中のNO
xの放出及び還元が後に続くリーンバーン機関からの排気ガスからの窒素酸化物(NO
x)のサイクリック吸着(NO
xトラップと呼ばれ、NO
x吸着触媒、NACs、としても知られる)を含む。自動車両機関が、少なくともおおよそ化学量論的な働きで制御される場合、同時に起こる一酸化炭素及び未燃炭化水素の触媒的酸化並びに窒素酸化物の還元は、三元触媒コンバーターと呼ばれるものにより可能である。
【0005】
自動車両で現在使用される触媒は、主にセラミックハニカム触媒ベースである。作動では、処理される排気ガスは、触媒体中、例えば、押出成形触媒体、のチャネルを通り流れる。ここで、基本的な区別は、全活性押出成形物と呼ばれるものと「ウォッシュコート」と呼ばれるコーティングされた支持体の間でされる。全活性押出成形物では、触媒的に活性な触媒組成物は、押出成形体を形成し、それは、触媒のチャネルウォールが、完全に触媒的に活性な材料から形成されることを意味する。ウォッシュコートでは、触媒的に不活性な押出成形支持体は、実際的に触媒的に活性な材料でコーティングされる。これは、例えば、触媒材料を含有する懸濁液中に押出成形支持体を浸すことにより、もたらされる。
【0006】
原則としては、触媒についての目的は、最大触媒的活性、すなわち、SCR触媒の場合の最大NO
x変換率である。
【0007】
最大触媒的活性のための重要な要素は、処理される排気ガスと触媒的に活性な材料の間の非常に良好な接触である。触媒的変換率は、排気ガスが流れるそれぞれのフローチャネルのウォールにおける近い表面領域での重要な程度に移る。特に、押出成形体の全てが触媒的活性組成物からなる全活性押出成形ハニカム触媒の場合では、この効果は、触媒組成物の比較的大きな体積領域がNO
x変換のために未利用のままであることである。
【0008】
これらの慣習的な触媒と同様に、フィルター効果が触媒効果と組合わされる組合わせ触媒もある。この目的ために、例えば、触媒的に活性化されたウォールフローフィルターと呼ばれるものが使用される。ウォールフローフィルターは、並んだ交差多孔性ウォールを有するハニカム体を有するハニカムフィルターであり、ウォールが、並んだ長手方向に延びる平行な第一及び第二のチャネルを画定する。前記第一のチャネルは、ハニカム体の第一の端部においてふさがれ、前記第二のチャネルは、ハニカム体の第二の端部においてふさがれる。前記第一及び第二のチャネルは、同様あるいは異なる横断面を有してよい。第一及び第二のチャネルが異なる横断面を有する場合、それらは、不均整として言及される。この場合において、第二のチャネルより大きな水力直径を有する第一のチャネルは、第二のチャネルの側面に隣接する。ここで使用の特定の分野は、特に自動車両部門で使用される、触媒化スートフィルター(CSF)のそれである。
【0009】
例えばチタン−バナジウムSCRシステム、と比較して触媒的に活性な成分のためのモレキュラーシーブ、特には、ゼオライト、の使用の場合、触媒のための成形体の製造のための触媒組成物の押出成形はより難しく、それゆえ、より高いバイダー成分の割合が要求される。セラミック触媒組成物の熱的な焼結の過程では、これらのバインダー分画は、最終的な結晶の本質的な安定性及び硬さに重要である焼結ブリッジを形成する。
【0010】
追加的な要素は、銅イオン交換ゼオライトが、例えば、チタン−バナジウムシステムと比較して非常に高価であるということである。
【0011】
ウォッシュコートと比較してより高い触媒的活性は、全活性材料から作製される触媒の場合、特には、全活性押出成形物の場合、に達成される。しかしながら、これは、触媒的に活性な材料の明白に高められた材料投入を伴い達成され、使用される触媒組成物ベースのこの種の全活性触媒は、しばしばウォッシュコートより効率的でない。究極的には、この原因は、物質移動と呼ばれる、触媒的に活性なセルと処理される排気ガスの接触が、触媒的反応のために要求され、かつ排気ガスが、しばしばソリッド触媒ウォールに望ましい程度でしみ込まないことである。このしみ込み又は物質移動を改善するために、触媒のウォールは、典型的には多孔質である。
【0012】
多孔性を形成するための既知の方法は、例えば、触媒組成物に有機成分を導入することでもあり、かつ後の焼結作業でのこれらのバーンアウトは、それゆえEP 2050495 A1から推論され得るように触媒体積内の細孔を形成する。あるいは、多孔性無機フィラー粒子を添加することも可能である。
【発明の概要】
【0013】
このことから、触媒を製造するための方法、及び改善された触媒的効率が達成される触媒を明らかにすることが、本発明の目的である。
【0014】
目的は、本発明の第一の態様に従い、請求項1の特徴を有する触媒を製造するための方法により達成される。この方法では、機能粒子と呼ばれるものが、第一に提供され、これらは触媒的に活性な材料の層を塗布された支持体として、細孔成形剤により形成される。細孔成形剤は、従って、二重機能、すなわち、一方で細孔構造の形成及び他方で触媒内での触媒的に活性な材料の構造化を有する。
【0015】
これらの機能粒子は、その後、触媒的組成物を与えるそれ自体で既知の方法で、更なる無機成分、例えば、バインダー成分又はフィルター等の添加で調製される。
−機能粒子中で細孔成形剤により形成され、
−更に無機粒子を含むマトリクス中に埋め込まれ、
−細孔構造を形成し、かつ
−機能粒子の触媒的に活性な材料の層を含む活性な界面層により少なくとも部分的に囲まれる
多孔性の触媒的に不活性なセル、
を少なくとも含むセラミック体を形成するように、触媒組成物は、最終的に触媒を形成するような熱的処理に供される。
【0016】
これらの少なくとも多孔性のセルは、細孔構造を形成するように互いに結合される。個々のセルは、活性な界面層により画定されたフリー空間(細孔)により形成され、あるいは多孔性材料により部分的に満たされる。少なくとも多孔性のセルは、従って、多孔性材料、又は活性な界面層によりそれぞれ画定された細孔で部分的に満たされたセ熱処理ルである。従って、「細孔構造」は、細孔か多孔性粒子領域のどちらか一方が多孔性構造を形成するように共に結合される多孔性構造を意味すると理解される。この多孔性細孔構造は、それの内表面上の触媒的に活性な材料の界面層、すなわちマトリクスに対する界面面により、少なくとも広い領域上に形成される。
【0017】
熱処理は、より特には、多孔性セラミック構造が全体的に形成されるようなか焼及び/又は焼結作業も同様に含む。多孔性セラミック構造は、おおよそネットワーク又は格子のようであり、ネットワーク又は格子の材料ブリッジがセラミックであり、かつそれらの間の多孔性セルを含む3次元構造を意味すると理解される。活性層の個々の粒子は、従って互いにセラミック的に結合される。
【0018】
本発明の第二の態様に従い、請求項19の通りのこの方法で製造された触媒は、マトリクス中に埋め込まれ、かつこの製造方法のために触媒的に活性な材料の活性な界面層により画定された少なくとも多孔性のセルを有する細孔構造を含む複合構造により特徴付けられる。この触媒的に活性な層は、好ましくは、少なくとも実質的にバインダー成分が無い。触媒的に活性名材料は、好ましくはセラミック的に、すなわち焼結ブリッジの形成を経て、共に結合される。
【0019】
従って、少なくとも多孔性のセルを画定するウォールが(可能な限り)純粋に触媒的に活性な材料の活性な界面層からなることが、この触媒の特徴である。この活性な材料は、従って、バインダー成分が好ましくは無い又は少なくとも実質的に無い。これは、高いバインダー含有量が触媒的に活性な層中に存在するウォッシュコートとこれらの界面層を区別する。なぜなら、これらの材料中で、バインダー成分を含む触媒組成物が塗布され、かつバインダー成分が、焼結作業後の触媒的に活性な材料と共に、支持体構造の表面に外部的にだけ塗布されるコーティングを形成する。ウォッシュコートと対照的に、触媒的に活性な界面層は、従って、触媒の体積内に存在し、かつ細孔構造のウォールを形成する。
【0020】
基本的に、活性な界面層は、バインダー成分が無い又は実質的に無い。製造方法では、しかしながら、活性な層は、界面を、特に、少なくとも重要な度合いまでバインダー成分からなるマトリクスに形成するので、バインダー成分は、例えば、方法のパラメーター(圧力、温度)により、層にも入り得る。製造方法由来の触媒的に活性な材料及びバインダーの成分の混合は、避けられ得なく、かつバインダー成分及び/又は触媒的に活性な材料でのコンタミネーションは、マトリクス中、界面において起こる。「少なくとも実質的にバインダー成分が無い」は、活性な層中のバインダー含有量が、触媒中のバインダー成分の均一分布の場合で存在するであろう仮定のバインダー含有量の10%未満であることを意味すると特に理解される。高密度の触媒的な活性材料が、細孔構造を介して良好な近接性を同時に有する近表面領域中に存在するので、実質的にバインダーが無い活性な境界層は、改善された触媒的活性をすでに達成する。
【0021】
そのうえ、触媒は、触媒的に活性な材料が活性な界面層中でセラミック的に結合されることで特徴付けられる。活性な界面層は、焼結ブリッジを介して−触媒的に活性な材料と処理される排気ガスにより近接可能な細孔構造の間の任意の界面から離れて−互いに結合されたセラミック的に結び付けられた結晶を含み、好ましくはそれらからなる。活性な界面層は、従って、化学的成長又は沈着作業により形成されない。特定の製造方法は、従って、改善された特性を有する触媒の新たなクラスを達成する。同時に、製造方法は、相対的に簡易であり、かつ、特に押出成形触媒のための、慣習的な方法技術に特に統合され得る。機能特性、例えば、それらのサイズ、それらのジオメトリ及びそれらの割合、の選択を通じて、広い範囲内の細孔構造を、簡易な方法で調整することが可能である。
【0022】
このプロセス及び触媒は、特定の触媒的に活性な材料の選択あるいは触媒自体の形態に主として無関係で、全ての触媒タイプに原則的に有用である。好ましくは、使用される触媒的に活性な材料は、排気ガスを処理するための化学的方法、特に選択的触媒的還元に使用される材料である。
【0023】
好ましくは、細孔成形剤は、有機材料、すなわち有機粒子から形成される。有機粒子について、慣習的なポリマー材料、特には、熱可塑物、例えば、ポリスチレン、ポリエチレンあるいはセルロース等を使用することが優先される。熱処理の過程では、活性な界面層により画定された空洞の形態のセルを有する細孔構造が形成されるように、セルが細孔セルの形態を取るように、有機粒子は漏れ出る(バーンアウト)。
【0024】
あるいは、細孔成形剤は、無機細孔材料から形成され得る。使用される細孔成形剤は、従って、無機粒子である。多孔性材料は、これらの粒子が少なくともメソ多孔性及び好ましくはマクロ多孔性を有することをより特には意味すると理解される。IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)規格に従い、メソら構成は、少なくとも2nmから最大50nmの細孔サイズを有する細孔を意味すると理解される。マクロ多孔性は、細孔サイズ>50nmを有する細孔に及ぶ。表現「少なくともメソ多孔性を有する」は、従って、これらの粒子が>2nmの細孔を有する多孔性を有することを意味すると一般的に理解される。粒子は、同時にマクロ多孔性も有してよい。相対的に大きな細孔を有しそのうえ効果的なこの多孔性は、近表面層が、従って、特に全活性押出成形物において、触媒的な働きを得られ得るだけでないような、処理される排気ガスが触媒体積のより深い層中に導かれ得るフローチャネルを有する多孔性構造の−有機細孔成形剤の場合と同様に−最終的な触媒の構成物をもたらす。
【0025】
使用される無機多孔性材料は、適切には、クレイ材料、好ましくは、ピラードクレイ材料と呼ばれるものである。そのようなピラードクレイ材料は、略語PILCによっても知られる。これらのピラードクレイ材料は、互いに離れて間隔をあけられた二次元クレイ層を一般的に特徴とする。間隔をあけることは、例えば、チタン酸化物又はアルミニウム酸化物、からなる無機ピラーによりもたらされる。
【0026】
あるいは、好ましくは、珪藻土が、多孔性無機材料として使用される。無機多孔性材料に使用される更なる選択肢は、シリカゲルあるいは多孔性ガラスである。
【0027】
触媒的に活性な材料の層を形成するために、好ましくは、触媒的に活性な材料の粉末粒子は、細孔成形剤の粒子に塗布される。
【0028】
これは、粉末粒子を、好ましくは付着により、細孔成形剤の粒子に固定することを含む。特に、無機細孔成形剤の場合、これは、付着プロモーター又は接着剤の助剤、例えば、例えば粒子が湿った、接着材、でもたらされる。
【0029】
細孔成形剤としての有機粒子の場合、冷却後粉末粒子が表面にくっつけられたままであり、かつそれらが柔らかくなるように、それらの溶解温度未満だけでなく、特には、それらのガラス転移温度より上で、これらは好ましくは熱される。この方法では、追加の付着プロモーターの使用は、特に、省かれる。
【0030】
最終的に、粉末粒子は、代替的に、静電的又は化学的手法により、有機粒子に塗布もされ得る。
【0031】
好ましくは、粉末粒子は、細孔成形剤に作用する追加の力の支持体で(with the support of)あるいはそれにより、例えば、有機粒子上にそれらを吹き付けることにより、あるいは細孔成形剤を粉末粒子と混合、例えば混練、することにより、細孔成形剤に塗布される。あるいは、細孔成形剤及び粉末粒子は、ふりまぜ機中に共に導入され得る。
【0032】
細孔成形剤の粒子のための個々の粉末粒子のアプリケーションの代替として、初期触媒的に不活性な細孔成形剤の外部層は、触媒的に活性な材料の層を形成する触媒的に活性な層に変換され得る。
【0033】
細孔成形剤の粒子は、ここで好ましくは、少なくともそれらの外部層において、特に、それらのメソ多孔性又はマクロ多孔性粒子形状の維持を伴って、触媒的に活性なゼオライト構造に変換される。触媒的活性は、ここで特に、ゼオライトの場合に慣習の金属イオン交換を通して、特に、Cu又はFeイオンあるいは追加の金属イオン相互作用を通して達成される。「変換」は、従って、粒子の(メソ−マクロスコピックな)形態の維持を伴う化学的変換を意味すると理解される。形成されたフレームワーク構造は、特に、SiO
4/2−AlO
4/2四面体で構成される、ゼオライトの典型的な四面体結晶構造である。全体的にみれば、従って、ゼオライト的フレームワーク構造又はナノ構造を有する粒子は、界面で形成される。
【0034】
ゼオライトへの変換は、原則的に知られる。これのための必要条件は、粒子が、ケイ素酸化物含有及び/又はアルミニウム酸化物材料からなり、それはその後、合成の過程で、温度及び圧力の影響下、構造形成に適切な更なる成分の追加で、望ましいゼオライトミクロ構造に変換される。
【0035】
変換は、ここで、水熱結晶化によってもたらされる。この変換では、それぞれの粒子が、担持された結晶化のための基材として一般的に使用される。珪藻土粒子(珪藻土)の好ましい使用の場合、これらの粒子中に存在するアモルファスSiO
2は、ゼオライト形成のためのケイ素源として使用される。粒子は、ここで、更に成分、特にアルミニウム源、典型的には有機テンプレート又は複数の有機テンプレート、を含む水性反応混合物中に導入される。これらの更なる成分は、従って、望ましいネットワーク形成のための反応物質を構成する。変換及び変形並びにまたミクロ構造形成は、その後、典型的には数日の反応時間で典型的には80から200℃の上昇された温度及び自生圧力における水熱結晶化により、もたらされる。その後、水熱処理の後にこのように得られた結晶材料は、洗浄され、乾燥しかつ、400から800℃の温度においてか焼された。か焼は、有機反応物質(テンプレート)をバーンアウトするのに特に役に立つ。変換は、好ましくは、ゼオライト表面層が形成される近表面領域中にのみもたらされる。
【0036】
変換は、好ましくは、MFI(例えば、ZSM−5)、BEA(例えば、ベータ)、CHA(チャバサイト、特にアルミノケイ酸塩チャバサイト)、AEI(例えば、ALPO 18、しかし好ましくはアルミノケイ酸塩AEI)、ERI(例えば、エリオナイト)又はFER(例えば、フェリエライト)フレームワーク構造を有するゼオライトにまでもたらされる。ゼオライトは、好ましくは、SCR触媒のために好ましい銅で、変換後に鉄又は銅交換もされる。
【0037】
この化学的合成の代替として、変換は、例えば、粒子の近表面領域中への触媒的に活性なサイトの相互作用によってももたらされ得る。ピラードクレイ材料(PILC)の使用の場合、例えば、触媒的に活性なセルは、クレイ層の間の、無機ピラーにより形成されるフリーな空間中に挿入される。この目的について、任意の鉄、銅、マンガンあるいはセリウムが、挿入される。
【0038】
全ての場合で、粉末粒子は、個々の有機粒子がこのように粉末粒子の表面を60%から95%の範囲まで覆うように、個々の有機粒子を囲う、好ましくは実質的に閉じた、層を形成する。有機粒子の表面の全部の範囲が、好ましくは、目的ではなく、範囲は、従って、例えば、表面領域の90%である。これは、触媒的に活性な材料内の個々の触媒的に活性なサイトへの近接性が追加的に改善されるように、焼結作業後に形成する活性な界面層の多孔性を、特に、有利な方法で、達成する。代替的に又は追加的に、バインダー粒子は、その後、焼結作業が粉末粒子へのセラミック結合をもたらすように、フリー領域に浸透し得る。
【0039】
適切な方法では、機能粒子は、10μmから200μmの範囲内の粒径を有する。より特には、粒径は、30−50μmの範囲内である。粒径は、ここで、特定のアプリケーションに、特には触媒体、例えばハニカム触媒、のウォール厚さに依存する。300μmを上回るウォール厚さのために、好ましくは、80−150μmの範囲内の粒径が使用され、かつ300μm以下のウォール厚さのために、好ましくは、30−70μmの範囲内の粒径が使用される。この粒径を通じて、最終的な触媒中の、望ましい、特には適切な、触媒的に不活性なセル、特には形成された細孔、のサイズを確立することが可能である。同様なセルは、最初の細孔成形剤、すなわち、有機又は無機粒子のどちらか、と少なくとも同様なサイズを有する。
【0040】
触媒組成物を製造するために、機能粒子と同様に、セラミック複合物の部分を後に形成する更なる成分が、好ましくは加えられる。より特には、特に、触媒的に活性な材料としてのゼオライトの使用の場合、焼結作業後にセラミック支持体又はマトリクスを形成しかつ必要な機械安定性を確保する、無機、触媒的に不活性な成分は、バインダー成分として加えられる。
【0041】
成形体は、好ましくは、触媒組成物から、特に、押出成形により形成され、かつこれは、後に、熱処理に供される。触媒組成物は、従って、ソリッド全活性体、特に、全活性押出成形物、特に、個々のウォールがこのように触媒組成物から完全に形成されるハニカム、になる。この触媒組成物は、特にはペースト状の、好ましくは押出成形可能な、組成物である。
【0042】
押出成形触媒物品は、ウォッシュコート、ここで記載される触媒を含むウォッシュコートか他の触媒、すなわち、触媒組成物と異なる触媒的に活性な材料、を含むウォッシュコートのどちらか一方、でコーティングされ得る。このように、触媒的に活性名コーティングは、ウォッシュコートにより追加的に塗布される。ウォッシュコートは、触媒的に活性な成分と同様にバインダー成分を含む懸濁液を意味すると一般的に理解される。ウォッシュコートは、例えば、触媒を懸濁液中に浸すこと及びその後それを熱的に処理することにより、塗布される。
【0043】
最終的な、特に押出成形された、触媒への塗布の代替として、上記のように処理された触媒組成物は、それ自体がウォッシュコートとしてモノリス支持体に塗布される。モノリス支持体は、特に、触媒的に不活性な材料、例えば、コーディエライトである。好ましくは、この支持体は、同様に、ハニカム形態の押出成形された支持体である。
【0044】
好ましくは、触媒組成物は、互いに個々の構成要素及び成分の混合で、混合ユニット、特に混練機、の助力で製造される。
【0045】
適切なことには−特には有機粒子が細孔成形剤として使用される−単一の方法工程で、粉末粒子は、第一に有機粒子に塗布され、その後、触媒組成物の個々の成分は、混合される。これは、適切には、同様に、この工程で、触媒組成物からの成形体の同時形成を伴う。この目的について、例えば、(双−スクリュー)押出成形機は、触媒組成物の形成のための更なる成分がその後加えられる前に、粉末粒子と共に有機粒子を上流領域中で供給される。最終的に、押出成形機の端部において、成形体が押出成形により形成される。
【0046】
おおよその機能粒子の割合でもある、細孔成形剤の割合は、適切には、触媒組成物の粉末状の開始状態、すなわち、水又は他の液体が懸濁液又はペースト状の組成物の製造のために加えられる前の、乾燥下での触媒組成物の個々の成分の総体積ベースで約40体積%から80体積%の範囲内である。この相対的に高い細孔成形剤の割合の長所により、高多孔性構造体は、触媒的に活性な界面層に対して高近接性の望ましい特性で製造される。細孔成形剤の割合は、特に、後の焼結工程で望ましい多孔性開細孔セラミック構造の形成が、互いに結合される個々の少なくとも多孔性のセルの個々の活性界面層で保証されるようである。細孔成形剤は、従って、それらが、後の段階において活性な界面層を形成するそれらの触媒的に活性な層を介して互いに結合されるように、互いに隣接されなければならない。
【0047】
多孔性セルのサイズ及び形状は、細孔成形剤のサイズ及び形状により規定され、かつ球状、回転楕円体、オボイド、楕円体、直方体、トンネル状態(円柱、角柱)、スリット等であり得る。
【0048】
これを保証するために、触媒組成物は、機能粒子の間の近しい接触をこのように達成するために、特に、押出成形により、成形体の製造の間、適切に圧力を一定に保たれてもいる。
【0049】
粉末粒子に使用される触媒的に活性な材料は、好ましくは、少なくとも1つの結晶性モレキュラーシーブ、又は2以上の異なる種類の結晶性モレキュラーシーブの組み合わせである。
【0050】
結晶性モレキュラーシーブは、ここで特に、狭義にはゼオライト、特に、結晶性アルミノケイ酸塩を意味すると理解される。更に、結晶性モレキュラーシーブは、the Zeolite Atlas of the Structure Commission of the International Zeolite Association(IZA−Sc)から明白なゼオライトフレームワーク構造を有するがアルミノケイ酸塩ではないモレキュラーシーブを更に意味するとも理解される。より特には、これは、言及されたthe Zeolite Atlas中に同様に列挙されるシリコアルミノリン酸塩(SAPO)あるいはアルミノリン酸塩(ALPO)に関する。
【0051】
ここで使用される触媒的に活性な成分は、特に、CHAフレームワーク構造を有するモレキュラーシーブ、特に、チャバサイト、特に、アルミノケイ酸塩チャバサイト、例えば、SSZ−13又はSAPO−34、AEIフレームワーク構造を有するモレキュラーシーブ、例えば、SSZ−39又はSAPO−18、ERI、MFI、BEA、FAUフレームワーク構造有するモレキュラーシーブ、特に、Yゼオライト、又はAFX若しくはFERフレームワーク構造を有するモレキュラーシーブである。最も好ましいのは、8つのテトラヘドラルアトムズ(tetrahedral atoms)の最大細孔開構造を有する、CHA、AFX及びAEIフレームワーク構造のような小細孔結晶性モレキュラーシーブと呼ばれる。ネットワーク構造が、水の取り込み及び水の放出による格子空間中の無変化を示すので、好ましくは、アルミノケイ酸塩がモレキュラーシーブとして、特に、押出成形された触媒のために、使用される。(ここで使用される専門語は、the Zeolite Atlasで使用される専門語を利用する。)
【0052】
本発明に従う触媒物品の特徴は、参照番号6として
図6中に示されるように、個々の結晶性モレキュラーシーブは、連晶(intergrown)層としてではなく個々の結晶(結晶子)として存在し得る。従って、本発明の第一及び第二の態様の方法及び触媒物品は、そのようなインサイチュ(in situ)成長結晶性モレキュラーシーブが連晶として存在するので、結晶性モレキュラーシーブがインサイチュ表面上で成長する方法と区別される。
【0053】
言及された全てのフレームワーク構造及び材料は、SCR触媒での、本発明に従う触媒的に活性な材料としての使用のために用いられ得る。適切には、モレキュラーシーブは、一般的に、金属活性剤(プロモーター)を含有する。これは、特に、銅、鉄、セリウム又はそれらの混合物である。銅及び/鉄を使用することが優先される。より特には、モレキュラーシーブは、そのような金属イオンで交換されるモレキュラーシーブ、特には、ゼオライトである。金属イオンがフレームワーク構造中に導入された、イオン交換モレキュラーシーブの代替として、これらの金属活性剤は、交換されず、それゆえ、例えば、化合物を含有する溶液でのモレキュラーシーブの含浸の結果として、モレキュラーシーブの個々のチャネル中に「遊離」金属又は金属化合物(例えば、金属酸化物)として効果的に存在することも可能である。他の可能性は、モレキュラーシーブ中のイオン交換金属及び遊離金属化合物の組み合わせである。
【0054】
SCR触媒のような鉄又は好ましくは銅でプロモートされる結晶性モレキュラーシーブを含む触媒物品のために、大いに好ましい結晶性モレキュラーシーブは、それらの固有のミクロ多孔性構造に加えて、上記のIUPAC規格により規定される二次的な細孔システムとして少なくともメソ多孔性を有するそれらである。最も好ましくは、二次的な細孔システムとして少なくともメソ多孔性を有するそのような結晶性モレキュラーシーブは、単結晶(結晶子)として存在する。二次的な細孔システムとして少なくともメソ多孔性を有する結晶性モレキュラーシーブを作製する方法は、アルカリ処理を含み、かつthe Review Article D.P.Serrano et al, Chem.Soc.Rev., 2013, 42, 4004中で議論される。
【0055】
あるいは、モレキュラーシーブとの組み合わせでは、好ましくはSCR触媒として活性な材料は、卑金属ベースの触媒システムを含む。
【0056】
より特には、ここで、システムは、触媒的に活性な成分としてバナジウムを有するチタン−バナジウムベースのシステムである。より特には、異なるチタン−バナジウムシステムが、使用され得る。より特には、二酸化チタン(TiO
2)及び五酸化バナジウム(V
2O
5)の混合物を含む酸化物システムが、使用される。あるいは、チタン−バナジウムシステムは、特にバナジン酸鉄(FeVO
4)及び/又はバナジン酸鉄アルミニウム(Fe
0.8AI
0.2VO
4)を含む触媒的に活性な成分として、バナジウム−鉄化合物を含む。
【0057】
酸化物システムの場合、これらは、特に、チタン−バナジウム−タングステンシステム(V
2O
5/WO
3/TiO
2)、チタン−バナジウム−タングステン−ケイ素システム、チタン−バナジウム−ケイ素システムである。バナジウム−鉄化合物を含む第二の群の場合、これらは、チタン−バナジウム−タングステン−鉄システム、チタン−バナジウム−タングステン−ケイ素−鉄システム又はチタン−バナジウム−ケイ素−鉄システムである。
【0058】
あるいは、卑金属ベースの触媒システム、タングステン酸化物−セリウム酸化物システム又は安定化タングステン酸化物−セリウム酸化物システム(WO
3/CeO
2)は、触媒システムに使用される。
【0059】
安定化タングステン酸化物−セリウム酸化物システムは、例えば、セリウム−ジルコニウム混合酸化物を含むジルコニウム安定化システムである。好ましくは、遷移金属、特に鉄は、そのような支持体材料内に配置される。使用される遷移金属は、Cr、Ce、Mn、Fe、Co、Ni、W及びCuからなる群から特に選択され、かつFe、W、Ce及びCuからなる群から特に選択される。触媒システムは、特にWO 2009/001131の
図3に関連して記載される、特に、Fe−W/CeO
2又はFe−W/CeZrO
2システムである。
【0060】
触媒的に活性な材料のための更なる触媒システムは、貴金属ベースのシステムを含む。
【0061】
PGM−ベースのシステム(白金族金属、特に、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、例えば、Pt/アルミニウム酸化物、又は、例えば、Pt−Pd/アルミニウム酸化物システム、を使用することが優先される。これらは、スルーフローハニカム触媒配置に基づくディーゼル酸化触媒(DOCs)中、又は触媒的に活性化されたスートフィルター(触媒化スートフィルター)中で特に使用される。
【0062】
全てここで記載される触媒的に活性なシステムは、好ましくは自動車両における、排気ガス処理に好ましくは役に立つ。加えて、他の技術分野、例えば、揮発性有機成分を形成する工業方法又は発電プラントのような定置型燃焼プラントからの排気ガスの処理、に他の触媒的に活性なシステムを使用することも可能である。あるいは、触媒は、ペレット、例えば、化学反応の不均化触媒のためのペレット、の形態でも提供され得る。触媒的に活性なシステムは、典型的には、粉末形態で提供され、かつ細孔成形剤に塗布される。
【0063】
相当するように、最終的な触媒中で、セルを画定しかつ多孔性の開細孔セラミック構造を形成する触媒的に活性な界面層は、触媒的に活性な材料として言及された触媒的に活性なシステムの1つを含む。
【0064】
機能粒子に加えて、更なる触媒的に活性な材料は、好ましくは、追加的に触媒組成物中に導入される。この触媒的に活性な材料は、任意選択的に、上記の触媒システムの1つである。チタンベースの触媒システム、特に、V
2O
5/WO
3/TiO
2システムを使用することが優先される。このようにして、それは、従って、触媒的に活性な材料により形成される個々の細孔の近表面領域だけでなくマトリクスもである。この実施例では、従って、マトリクスが、バインダー分画により独占的に形成されない。チタンベースのシステムが全活性押出成形物の製造に適切なので、この種の組み合わせられたシステムは、押出成形により効率的に進行され得る。同時に、これは、特に高い触媒的活性を達成する。機能粒子に使用される触媒的に活性な材料は、好ましくはゼオライトである。
【0065】
機能粒子を用いる特定の製造方法の利点により、特定のアプリケーションと合う種々の可能なデザインは、一般的に触媒に利用可能である。例えば、好ましくは、それらの粒径分布の面で異なる細孔成形剤のための異なる粒子が、使用され得る。この測定を通して、従って、例えば、処理される排気ガスを触媒的に活性なサイトに効果的に通すために、後の工程において生じるであろう開−細孔構造内に、制御された方法で、異なるセルサイズ(細孔経)を設定することが可能である。
【0066】
加えて、好ましい形状では、2以上の異なる機能粒子、特に、異なる触媒的に活性な粉末粒子は、触媒的に活性な層の形成、及びそれゆえの触媒組成物にも使用される。2以上の触媒的に活性な材料の混合物、特に、粉末粒子は、特定の層に使用され得る。結果として、個々のセルの触媒的に活性な界面層は、後の工程において、異なる触媒的に活性な材料を有するだろう。追加的に又は代替的に、異なる触媒的に活性な材料、特に、粉末粒子は、それらの触媒的活性の面で異なる機能粒子の異なる種がこのように提供されるように、個々の細孔成形剤に塗布され得る。従って、第一及び第二の機能粒子を形成するために、第一の触媒的に活性な材料は、第一の細孔成形剤に塗布され、かつ第二の触媒的に活性な材料は、第二の細孔成形剤に塗布される。第一及び第二の細孔成形剤は、ここで、それらの物理組成物の面で同一か異なるかのどちらか一方であってよい。
【0067】
最終的な触媒では、これの効果は、種々のセル中の触媒的に活性な界面層が、異なる触媒的に活性な材料から形成され、かつ/又は異なる触媒的に活性な材料が、特定のセルを画定する触媒的に活性な界面層内に存在することである。異なる触媒的に活性な材料、すなわち、異なる粉末粒子は、適切には、異なる触媒的反応のために最適化された触媒的活性材料である。この測定を通して、触媒的に異なる反応サイトは、従って、局所的な微細構造のレベルにおいてごく近接で提供される。効果的には、マイクロリアクタは、従って提供される。使用される触媒的に活性な材料は、特に、それらが、例えば、2つの連続する化学反応に、最適化されるそのような方法で、互いに合わせられる。従って、異なるマイクロリアクタは、望ましい触媒反応に関して一種のカスケードを形成する。例えば、SCRシステムでは、第一の触媒的に活性な材料は、より低いN
2Oスリッペイジ(slippage)を得るためのN
2Oの分解のために構成される。あるいは、マイクロリアクタクラスは、NO
2の形成のためのデザインであってもよい。異なるマイクロリアクタで構成される適切な「マイクロリアクタ構成」の提供は、NO
xレベルにおける効果的な還元を達成する。
【0068】
加えて、マイクロリアクタのこの構成は、長い炭化水素鎖を、例えば、第一に分解し、その後、変換、例えば、酸化することの可能性ももたらす。
【0069】
目的は、上記の方法により必然的でないが好ましくは製造された触媒を含む請求項19の特徴を有する触媒物品により、本発明の第二の態様と関連して追加的に達成される。方法及び好ましい構成に関して記載された有利な点は、必要な変更を加えて触媒にも適用され得る。好ましい構成は、ここで、独立請求項中に含まれる。
【0070】
触媒物品は:
−触媒からなる押出成形触媒物品、
−触媒からなるハニカム、
−触媒からなるプレート触媒コンバーター、
−触媒からなるペレット、
−触媒からなるウォッシュコートでコーティングされたモノリス支持体、
−ハニカムを含むウォールフローフィルターであって、ハニカムが触媒からなりかつ/又はハニカムが触媒から構成されるウォッシュコートでコーティングされたウォールフローフィルター、
の何れかである成形体である。
【0071】
触媒物品は、このように、異なる形状を一般的に取ってよい。例えば、好ましくは、それは、押出成形触媒、特に、ハニカム触媒である。これは、本発明あるいは他に従う触媒組成物を含むウォッシュコートでコーティングされてよい。塗布されたコーティング、すなわち、触媒的に活性な材料は、押出成形体と同様又は異なってよい。
【0072】
触媒は、ペレットの形状で、又はウォッシュコートでコーティングされたモノリス支持体としてあってもよい。ウォッシュコートは、本発明に従う触媒組成物を、好ましくは含む。後者の場合、ここで記載される活性な界面層を含むコーティングは、好ましくは、押出成形体、特にハニカム、の形態で、あるいは代替的にプレートの形態で、支持体に塗布された。塗布されたコーティングは、押出成形体と同一か異なるかのどちらか一方である。あるいは、プレートは、触媒からもなり、かつこのように、触媒的に活性なソリッド材料から構成されるプレート触媒的コンバーターも形成する。
【0073】
適切にはこの場合、ウォッシュコートでコーティングされるモノリス支持体は、フィルター体の形態をとる。
【0074】
あるいは、触媒、特に、押出成形触媒は、触媒的活性を有するフィルターとして構成される。
【0075】
触媒物品は、特に、作動中に排気ガスが多孔性ウォールを通過するウォールフローフィルターと呼ばれる形態をとる。触媒物品は、ウォールフローフィルターが製造された押出成形ハニカムを含む。あるいは、ウォールフローフィルターは、触媒組成物がウォッシュコートとして塗布された不活性支持体を含んでもよい。
【0076】
触媒物品は、触媒的活性を有するスートフィルターとして構成され得る。
【0077】
触媒は、例えば、特に、追加の触媒コーティングなしの、炭化水素トラップである。それらが、内燃機関の始動段階の間の炭化水素のためのそれらの貯蔵容量のために排気ガス中のHC含有量を制御するので、この種の触媒は、冷始動触媒としても言及される。この種の冷始動触媒は、例えば、WO2012/166868A1に記載される。この種の触媒は、結晶性モレキュラーシーブ、特に、イオン交換ゼオライトと、特に、押出成形ハニカム触媒として構成される。加えて、それは、貴金属、例えば、特にパラジウム(Pd)とこの種のモレキュラーシーブの混合物を好ましくは含有する。貴金属は、卑金属と共にゼオライトに加えられてもよい。調査は、特に鉄無しの、パラジウム含浸された結晶性モレキュラーシーブが、冷始動触媒の望ましい特性を同様に示すことを示す。この種の冷始動触媒は、例えば、比較的低温における高いN
2選択性を有する良好なNOx貯蔵及び変換容量、良好な低温における炭化水素の変換及び貯蔵容量、並びに改善された一酸化炭素酸化活性を示す。
【0078】
例えば、炭化水素トラップの形態の、これらの好ましいコーティングされない押出成形触媒物品の代替として、触媒物品は、例えば、炭化水素トラップの特性を有する、コーティングされた押出成形ハニカム触媒の形態をとる。この押出成形ハニカム触媒は、好ましくは、例えば、H
+の形態及び特に「非金属化」での、すなわち、金属活性剤無しの、結晶性モレキュラーシーブを、好ましくは再び含む。あるいは、結晶性モレキュラーシーブは、パラジウム及び/又は銀を含有する。この種の押出成形ハニカム体は、特に、ディーゼル酸化触媒又は三元触媒コンバーターの形成のための、触媒的に活性なコーティングで提供され、あるいはそれは、ディーゼル酸化触媒と類似の方法で、触媒化スートフィルター(CSF)と呼ばれるものを形成するために、酸化触媒でコーティングされるウォールフローフィルターへとその後変換された。三元触媒コンバーターの例は、WO2011/092517A1中で見られ得、かつ押出成形ディーゼル酸化触媒及び押出成形触媒化スートフィルターの例は、例えば、WO2011/092519中で見られ得る。
【0079】
この触媒は、触媒的に活性な材料のセラミック活性な界面層により画定されたセルを特徴付ける。特定の界面層は、特に、界面を形成する個々の粒子が、セラミックであること、すなわち、焼結ブリッジにより互いに結合されかつこのようにソリッド材料組成物を形成することを意味する、セラミック界面層である。特定の界面層は、好ましくは、追加的に、選択される製造方法のために、少なくとも実質的にバインダー分画がない。従って、活性な界面層では、マトリクスと活性材料の間の界面におけるコンタミネーションを除いて、追加的なバインダー成分無しで、触媒的に活性な材料のみが存在する。
【0080】
好ましくは、個々の活性な界面層は、多孔性セラミック及び開−細孔構造を形成するように互いに結合され得る。個々のセル及びそれらを囲む活性な界面層は、従って、孤立される方法で配置されないが、固有の構造を形成する。多孔性構造は、細孔成形剤により形成された多数の個々の空洞又は高多孔度材料領域がセルウォールにより互いに結合される材料構造を意味すると一般的に理解される。セルウォールは、互いに結合される界面層により形成される。
【0081】
これらの活性な界面層は、良好な物質移動が、意図された触媒反応全体のために保証されるように、好ましくは、多孔性であり、かつ完全には不浸透でない。
【0082】
特定の製造方法は、機械的に安定な支持体構造及びマトリクスを形成するバインダーマトリクスを、セルから離れる触媒的に活性な界面層の側部上に追加的に形成する。全体的にみれば、これは、十分に高い機械的剛度及び特に強度を触媒に与える。従って、活性な界面層のために、焼結され得ないか又はソリッド体を与えるようにだけ不十分に焼結され得る材料を用いることも可能である。
【0083】
マトリクスは、適切には、少なくとも実質的に触媒的に活性な材料がなくてよい。触媒的活性は、従って、触媒的に活性な材料の界面層によってのみ提供される。コンタミネーション効果を通じてのみ、触媒的に活性な材料は、(Only through contamination effects can catalytically active material)触媒的に活性な界面層から、純粋なバインダーマトリクスの形態をとるマトリクス中へ移り得る。「少なくとも実質的に触媒的に活性な材料がない」は、従って、触媒的に活性な成分が、マトリクス中に導入され、界面において、触媒的に活性な界面層となる以上はなることを意味すると理解される。マトリクス中の触媒的に活性な成分の割合は、総体的な触媒内の活性成分の仮定的均一分布の場合、特に、10%以下の割合である。
【0084】
好ましくは、活性な界面層に加えて、触媒的に活性な材料は、マトリクス中にも存在する。この目的のために、追加的な触媒的に活性な材料は、製造の過程で、触媒組成物に加えられる。この追加の触媒的に活性な材料は、好ましくは、活性な界面層中に存在する材料と異なる。
【0085】
細孔成形剤の粒子についての異なるサイズ分布の使用の場合、最終的に、異なるサイズクラスのセル/細孔は、有利な実施で形成される。
【0086】
加えて、好ましくは、活性な界面層を有するセルは、異なる構成において異なる活性サイトを形成する。この目的のために、種々のセルの活性な界面層は、異なる。異なるセルの活性な界面層は、異なる触媒的に活性な材料、すなわち、第一のセルの第一の界面層の触媒的に活性な材料が第二のセルの第二の界面層のそれと異なる、から形成され得る。代替的に又は追加的に、異なる活性な材料は、特定のセルを画定する界面層内に存在し、すなわち、特定のセルの活性な界面層が、2以上の異なる触媒的に活性材料を含有する。
【0087】
細孔で形成された細孔体積は、好ましくは、触媒の総体積ベースで40体積%と80体積%の間の範囲内である。残りのバルク体積は、触媒的に活性な界面層と機械的支持体構造体とバインダーマトリクスにより形成されるマトリクスとの間で分けられる。触媒的に活性な界面層は、残りのバルク体積ベースで約20体積%から80体積%を占める。
【0088】
活性な界面層の層厚さは、好ましくは、0.5から20μmまでの範囲内、特には、1μmから10μmの範囲内である。層厚さは、一般的に、機能粒子の粒径の領域内にあり、かつそれは、実際に、好ましくは、言及した範囲内である。
【0089】
好ましくは、触媒は、SCR触媒であり、すなわち、望ましいNOx除去反応に関する触媒的活性を有する。それは、特に、自動車両中の排気ガス処理のために構成される。
【0090】
本発明のためのSCR触媒として好ましい活性材料は、WO2014/027207中に開示される。これは、例えば、第一の成分及び第二の成分の混合物を含む排気ガス処理のための触媒組成物、を開示する。第一の成分は、アルミノケイ酸塩又は鉄ケイ酸塩モレキュラーシーブであり、かつモレキュラーシーブは、H
+形態であるか、1以上の遷移金属でイオン交換されたかのどちらか一方である。第二の成分は、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、セリウム、ケイ素及びそれらの組合せから選択される金属酸化物支持体上のバナジウム酸化物である。
【0091】
ここで記載される異なる触媒システムは、個々かあるいは組合せでかのどちらか一方で使用される。より特には、結晶性モレキュラーシーブを有するチタン−バナジウムベースのシステムの混合物が、ここで使用される。この種の混合触媒は、第一の成分として、特に、アルミノケイ酸塩、又はH
+形態であるか若しくは1以上の遷移金属、特に鉄、でイオン交換されたかのどちらか一方である鉄ケイ酸塩モレキュラーシーブを含む。この第一の成分は、好ましくは、細孔を画定する活性な界面層中に存在する。第二の成分は、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、セリウム、ケイ素又はそれらの混合物から選択される金属酸化物支持体中のバナジウム酸化物である。より特に、第二の成分の支持体材料は、チタン酸化物である。この第二の成分は、好ましくはバインダーマトリクス中に存在するか、又はそれを形成する(上記WO2014/027207を参照されたい)。
【0092】
目的は、ここで記載される製造方法のための使用あるいはここで記載の触媒のための使用のために、機能粒子により、本発明の第三の態様と関連して追加的に達成される。細孔形成具、特に、有機又は多孔性無機、触媒的に不活性な粒子が、完全又は部分的に塞がれた触媒的に活性な材料の層により囲まれることは、この種の機能粒子の特徴である。
【0093】
この層は、特に、触媒的に活性な材料の粉末粒子からなる粉末層により形成される。ここで粉末粒子は、開始状態で化学的又はセラミック的に互いに結合すること無く、有機粒子の表面上に個々にかつ緩く結合した。これらの機能粒子は、上記の方法のための開始成分として提供される。
【図面の簡単な説明】
【0094】
本発明の実施例は、図への言及を伴い下文で詳細に説明される。
【
図2】異なる機能粒子の使用の例証のための単純化された概略図を示す。
【
図4】押出成形ハニカム触媒のイメージからの詳細を示す。
【
図5】異なる拡大において、
図4中に示されるハニカム触媒を示す。
【
図6】異なる拡大において、
図4中に示されるハニカム触媒を示す。
【発明を実施するための形態】
【0095】
図1に関連して、触媒2の、及び触媒2により形成された触媒物品17の製造は、下文に説明される。触媒物品17は、特に、押出成形SCRハニカム触媒である。しかしながら、この方法の使用は、この種のSCR触媒物品17又は押出成形ハニカム触媒に限定されない。方法の原理は、一般的に、それらの構造の面及びその中で使用される触媒的に活性な材料の面の双方で異なる多種多様の異なる触媒に適用され得る。
【0096】
図1中で示される態様では、第一の工程中で、細孔成形剤として、触媒的に活性な材料の有機粒子4及び粉末粒子6が提供される。この触媒的に活性な材料は、特に、ゼオライト、好ましくは、イオン交換ゼオライト、より特には、銅イオン交換ゼオライトである。個々の粉末粒子は、典型的には、1−10μmの範囲中の粒径を有する。有機粒子4は、例えば、ポリエチレン若しくは他の熱可塑物又はエラストマーからなる、ポリマー粒子、特に、球状粒子等である。
【0097】
次の工程では、機能粒子8が、2つの開始材料から製造される。この目的のために、有機粒子4及び粉末粒子6は、互いに混合され、それらが柔らかくなるように、好ましくは、上記の有機粒子4のガラス転移点まで熱される。結果として、粉末粒子6は、冷却後に有機粒子4の表面にひっつき、かつ粒子4の表面上に少なくとも実質的に連続的な粉末層を形成し、そしてそれは、粒子4の周りに層5を形成する。
【0098】
細孔成形剤として有機粒子4を有するここで記載の機能粒子8の代替として、細孔成形剤として無機多孔性粒子を使用することも可能である。これらの場合も、第一の変形において、層5は、塗布された粉末粒子6により形成される。あるいは、触媒的に活性な材料の層5は、粒子4の表面の触媒的活性によっても形成され得る。
【0099】
全ての場合で、層5は、少なくとも実質的に塞がれた形態であり、かつ好ましくは60%から95%の範囲内の粒子4の適用範囲レベルを有する。
【0100】
次の工程では、機能粒子8は、触媒組成物12の形成のために、更なる成分、特に、バインダー成分10と混合される。これは、例えば、混練作業又は他の混合作業により、特に、熱的作用で、もたらされる。ここで使用されるバインダー成分は、押出成形可能な触媒組成物12の形成のために一般的に用いられるような無機バインダーである。適切なバインダー組成物10は、特に、クレイ、例えば、ベントナイト、耐火性クレイ、カオリンあるいはアルミニウム酸化物、セリウム酸化物のような金属酸化物、あるいはアルミニウム酸化物、ケイ素酸化物又はチタン酸化物ベースのゾルである。要求される場合、これらのバインダー成分10は、更なる有機焼結助剤あるいは支持体要素、例えば、支持体繊維、で補われてよい。これらの追加のバインダー成分10の割合は、例えば、25から35体積%の範囲内である。残りの65−75体積%(乾燥状態ベースで、液体の追加無しで)の触媒組成物12は、従って、機能粒子8により形成される。これらの要素に加えて、有機押出成形助剤も加えられてよい。
【0101】
有機粒子4は、典型的には、約10から最大の200μm、好ましくは、10から最大の100μmの範囲内の粒径を有する。
【0102】
この方法で製造された触媒組成物12は、後に押出成形され、成形体14を形成する。押出成形の過程では、圧力が、触媒組成物12に適用される。これは、それらがそれらの粉末粒子6と相互に接触するように、個々の機能粒子8を互いに対して押す。押出成形後、通常、成形体14は、最終的な触媒2、及びそれゆえのハニカム触媒の形態での触媒物品17も得るように、乾燥し、か焼され、かつ後に焼結される。
【0103】
これは、単に、図式化構造の形態で、
図1中に示される。これから推論され得るように、触媒2は、互いに結合されるいくつかのセルからなる開細孔細孔構造18を有し、そしてそれは、有機細孔成形剤が細孔20として使用される場合に形成される。個々の細孔20は、セルウォールを形成する活性な界面層22により、各場合で画定される。この活性な界面層22は、そのとき互いに焼結される粉末粒子6、すなわち、触媒的に活性な材料により形成される。これらの活性な界面層22は、従って、少なくとも実質的にバインダー成分10がない。細孔20の外方を向く活性な界面層22の側部は、支持体構造及びマトリクスとしてバインダーマトリクス24をこのように形成するバインダー材料に隣接する。細孔構造18は、従って、活性な界面層22により形成された細孔ウォールの各々で、バインダーマトリクス24内に形成された。個々の細孔20の互いの繋がりは、押出成形及び焼結作業において形成され、かつ触媒組成物12中の個々の機能粒子8のごく近接により助力される。触媒組成物12が、高い圧縮の力が及ぼされる混練又は後の押出成形により製造されることは、この文脈で特に有利である。全体的にみれば、従って、開細孔多孔性ウォール構造が形成された。
【0104】
方法は、触媒的に活性な材料としてのゼオライトの使用に関連して
図1の文脈で説明された。しかしながら、ここで記載される方法コンセプトは、ゼオライトの使用に限定されない。基本的な方法工程及び定められたパラメーターは、他の触媒的に活性な材料にも適用され得る。中間段階において製造された機能粒子8は、他の製造方法のために、例えば、押出成形された支持体にその後塗布される懸濁液の形成のために、例えば、ウォッシュコートの形成のためにも追加的に用いられ得る。
【0105】
機能粒子8の提供を通して、触媒2の特性における種々の調節は、基本的な方法で可能である。これをするある方法は、
図2により詳細に例証される。これは、概略的な形態で、それらのコーティングに関して粉末粒子6において異なる3種類の機能粒子8を示す。このように、ある種類の機能粒子8は、第一の種類の粉末粒子6aで構成され、第二の種類は、第二の種類の粉末粒子6bで、かつ第三の種類の機能粒子8は、これらの2つの粉末粒子6a、6bの混合で構成された。最終的な触媒2では、この効果は、細孔20が、異なる活性な界面層22a、22b、22cにより画定されることである。ある場合では、細孔20は、従って、粉末粒子6aの第一の触媒組成物/粉末粒子6bによる第二の触媒組成物により、あるいはこれらの2つの粉末粒子6a、6bの混合物から形成される触媒組成物により画定される。この方法では、異なる触媒サイトが、身近なところで提供される。
【0106】
有機粉末4としてPVC粒状体(granulates)を使用する記載れた方法により製造された触媒2は、慣習的に製造された触媒と比較して触媒効率における明確な改善を示す。触媒的に活性な材料としてのゼオライトベースのSCRハニカム触媒の場合では、そしてそれはここで記載された。以下の表では、窒素酸化物の変換率は、本発明の(an inventive)触媒2について及び比較触媒について温度に対して与えられ:用いられる比較触媒は、アルミノケイ酸塩CHAフレームワーク型構造を有する67体積%の割合の銅イオン交換ゼオライトを有する押出成形ハニカム触媒であった。残りの分画は、触媒的に不活性なバインダー成分10からなる。触媒2は、200cpsi(セル毎平方インチ)のセル密度を有する押出成形ハニカム触媒である。押出成形物は、WO2009/080155に開示された方法を使用して凍結乾燥され、かつ600℃において2時間か焼された。
【0107】
比較に使用された本発明の触媒2は、異なる割合を有するが同様な要素から構成される。従って、ゼオライト含有量は、67体積%から35体積%まで低減した。同時に、バインダー成分の割合は、10体積%から65体積%まで増加した。
【0108】
触媒的活性を確認するために、ハニカム触媒は、120000毎時の空間速度SVにおいて、処理される排気ガスと接触した。排気ガスは、ここで、100ppmのNH
3の追加を伴い、100ppmの割合のNO
x(NO
2基点で)を含有した。触媒出口において、残余窒素酸化物NO
xの割合は、その後、測定され、かつ入口側の排気ガス中の窒素酸化物の割合に対する比率として表され、NO
x変換率を決定する。NO
x変換率は、約180から500℃の範囲の温度において決定された。結果は、以下の表中に示される。
【0109】
表1−異なる温度についてのNO
x変換率及び由来する触媒的活性(触媒の質量により規格化されるNOx変換率として定義される)(条件:NO
x=NH
3=100ppm(NO
2=0ppm);H
2O=7%;O
2=9.3%;SV=120000h
−1)を示す。
【0110】
すぐにわかることとして、触媒的に活性な組成物のより低い割合にも関わらず、この点でほとんど2の因子により、変換率の面で、本発明の触媒2は、実質的に全ての温度範囲内で、比較触媒の変換率を十分に上回る。本発明の触媒2の更なる有利な点は、それの比較的より低い重量である。表中にも示されるように、触媒2は、著しくより良い質量に対する変換率を有する。
【0111】
図3中のSEMイメージは、機能粒子8の実際上の特徴をもう一度示す。ここではっきりと明白なものは、有機粒子4の表面上に塗布されて多かれ少なかれ連続的な層を形成する個々の粉末粒子6である。非被覆表面領域は、最後に形成される活性な界面層22の特定の多孔性を達成するために本質的に望ましい。加えて、これは、開細孔多孔性構造の形成をプロモートする。個々の粉末粒子6は、好ましくは、1層で又は数層での有機粒子4の表面上に付着される。塊の個々の形成がある。
【0112】
図4は、ここで、排気ガスが作動中に流れる長方形フローチャネルを有する押出成形ハニカム触媒2の詳細のイメージを示す。触媒2は、このように、個々のフローチャネルを画定する個々のウォールが触媒組成物12から形成される、全活性押出成形体の形態をとる。
【0113】
図5及び6では、形成する(粗い)細孔構造は、はっきりと明白である。加えて、ここで示されるイメージ中で、どのように個々の細孔20が、開細孔構造が総体的に形成されるように、互いに少なくとも部分的に直接的に結合されるかを、見ることも可能である。はっきりと明白なものは、そのとき互いにセラミック的に結合される個々の粉末粒子6により形成される多孔性活性界面層22もである。
【符号の説明】
【0114】
2 触媒
4 細孔成形剤
5 層
6 粉末粒子
8 機能粒子
10 バインダー成分
12 触媒組成物
14 成形体
17 触媒物品
18 細孔構造
20 セル
22 活性界面層
24 マトリクス