特許第6808025号(P6808025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6808025
(24)【登録日】2020年12月10日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】歯列矯正用ブラケット
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/16 20060101AFI20201221BHJP
   A61C 7/30 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   A61C7/16
   A61C7/30
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-513539(P2019-513539)
(86)(22)【出願日】2018年4月3日
(86)【国際出願番号】JP2018014220
(87)【国際公開番号】WO2018193829
(87)【国際公開日】20181025
【審査請求日】2019年10月15日
(31)【優先権主張番号】特願2017-84009(P2017-84009)
(32)【優先日】2017年4月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】513143755
【氏名又は名称】山田 尋士
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】山田 尋士
【審査官】 和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平3−80851(JP,A)
【文献】 特開2015−128459(JP,A)
【文献】 特開2006−68213(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0157215(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/16
A61C 7/30
A61C 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の歯面に貼付されて、患者の歯列を矯正するために用いられる歯列矯正用ブラケットであって、
裏面が前記歯面に対向するよう配置されるベース部と、
歯列矯正用のアーチワイヤーを収容する溝状のスロットを形成するようそれぞれ間隔を開けて前記ベース部の表面側から前記ベース部の厚み方向に突出する一対の突出部と、
歯列矯正用の結紮部材を掛け止めするためのフック溝を前記ベース部の表面との間で形成するように、前記一対の突出部それぞれの前記厚み方向の端部から前記スロットの延びる方向と垂直であって前記スロットが位置する側とは逆側の外方向へ突出する一対のウイング部と、を含み、
前記フック溝の奥部に位置する前記結紮部材が掛け止められる掛止部は、前記スロットに収容された前記アーチワイヤーよりも前記厚み方向へ離間した位置に設けられており、
前記フック溝は、前記一対のウイング部それぞれの突出端部と前記ベース部の表面との間に形成される開口から前記スロット側に向かって延出しており、前記ベース部側の面における前記開口から前記掛止部までの領域に形成された下向き湾曲状の第2内面を有しており、
前記第2内面は、前記スロットの底面よりも上側に位置して
いることを特徴とする歯列矯正用ブラケット。
【請求項2】
前記結紮部材は、断面円形状のリング部材であり、
前記掛止部は、前記フック溝の奥部に形成された円弧面を有する請求項1に記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項3】
前記フック溝は、前記厚み方向側に傾斜している請求項1に記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項4】
前記フック溝は、
前記ウイング部側に形成され、前記開口から前記掛止部まで直線状に延びる第1内面を有する請求項1に記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項5】
前記第2内面は、前記開口から前記スロット側に向かって前記ベース部の裏面側に傾斜する直線状に延びる傾斜面と、前記傾斜面に連続しており前記掛止部に向かって前記厚み方向側に傾斜する湾曲状に延びる湾曲面と、を有する請求項1に記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項6】
前記スロットの上縁から前記一対のウイング部それぞれの前記突出端部に至る第1外面は、前記上縁側が高く前記突出端部側が低くなるように傾斜しており、
前記ベース部の表面において前記開口から前記外方向の外端部に至る第2外面は、前記開口側が高く前記外端部側が低くなるように傾斜している、請求項3に記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項7】
前記第1外面は、前記突出端部に向かって湾曲しており、前記第2外面は、前記外端部に向かって湾曲している請求項6に記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項8】
前記スロットの延びる方向と垂直な方向において、前記歯列矯正用ブラケットの前記厚み方向側の表面は、前記第1外面と前記第2外面とによって全体的に湾曲した湾曲面を成している請求項7に記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項9】
前記厚み方向に切断した断面において、前記第1外面を構成する円弧の曲率と前記第2外面を構成する円弧の曲率とは同等である請求項8に記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項10】
前記スロットの延びる方向において、前記一対の突出部それぞれの基端部から前記ベース部の端部に至る領域の前記ベース部の表面は、前記基端部側が高く前記端部側が低くなるように傾斜している請求項1に記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項11】
前記ベース部は、前記厚み方向から見た場合に、前記スロットの延びる方向と垂直な方向に長い略楕円状である請求項1に記載の歯列矯正用ブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯列を矯正するために用いられる歯列矯正用ブラケット(以下、単に「ブラケット」ということもある)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
患者の歯列を矯正する方法の一つとして、マルチブラケット法がある。マルチブラケット法は、まず患者の各歯に歯列矯正用ブラケットを一つずつ接着剤にて貼付して固定する。そして、各歯に固定されたそれぞれのブラケットに設けられたスロットに歯列矯正用のアーチワイヤーを取り付け、移動させたい方向の力をアーチワイヤーから歯に加えることにより、歯を移動させる。
【0003】
歯列矯正用ブラケットおよびアーチワイヤーを用いた歯列の矯正に関する技術が、特許文献1および特許文献2に開示されている。
【0004】
特許文献1及び2に記載の各ブラケットは、いずれも、アーチワイヤーを保持するためのスロット(保持溝)と、ループ状の結紮部材を掛け止めするための一対のウイング部と、を備えており、スロットにアーチワイヤーが挿通された状態で、その上からウイング部に結紮部材が掛け止められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−215216号公報
【特許文献2】特開2008−73344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のブラケットは、結紮部材によってアーチワイヤーがスロットの底面側へ押し付けられる構造である。そのため、前記結紮部材がアーチワイヤーに付与する押圧力に起因して、アーチワイヤーとスロット底面との間にフリクション(接触摩擦)が生じる。このため、アーチワイヤーから受ける荷重によってブラケット及び歯が移動する際に、前記フリクションが抵抗となり、アーチワイヤーに沿う方向へブラケット及び歯がスムーズに移動することができないという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載のブラケットは、アーチワイヤーに対する結紮圧を調整可能なように、結紮部材を掛け止めておく補助ウイング部を有している。しかしながら、ウイング部に結紮部材を掛けた後に、更に結紮部材を補助ウイング部に掛け止める必要があり、結紮部材を用いた結紮処置が極めて煩雑である。また、ウイング部に補助ウイング部が設けられているため、ブラケット自体が複雑な形状となり、このため、前記補助ウイング部の先端が患者の口腔の表面に接触して口腔内の粘膜(口腔粘膜)を傷つけてしまい、口腔粘膜が剥がれたり炎症を起こしたりすることがある。また、前記補助ウイング部は、ウイング部から突出した突起状の形状であるため、これに結紮部材が引っ掛けられただけでは、患者が食べ物を噛む際に食べ物から受ける荷重によって、結紮部材が容易に外れてしまうおそれがある。また、前記補助ウイング部は、結紮部材が掛けられたときの荷重に耐え得る剛性が必要であり、そのような剛性を確保可能なサイズに前記補助ウイング部を形成すると、ブラケット自体が大型化する。更に、ブラケットが複雑な形状であるため、ブラケットの製造に用いられる金型が複雑になり、また、製造時の加工工程が増えるおそれもあり、製造コストの面において好ましくない。
【0008】
本発明の目的は、ウイング部に結紮部材を容易に掛け止めることができ、また、一旦掛け止められた結紮部材の脱落を防止することが可能であり、更に、アーチワイヤーに沿って歯が移動する際に生じるフリクションを抑制することが可能な歯列矯正用ブラケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る歯列矯正用ブラケットは、患者の歯面に貼付されて、患者の歯列を矯正するために用いられる。前記歯列矯正用ブラケットは、裏面が前記歯面に対向するよう配置されるベース部と、一対の突出部と、一対のウイング部と、を含む。前記一対の突出部は、歯列矯正用のアーチワイヤーを収容する溝状のスロットを形成するようそれぞれ間隔を開けて前記ベース部の表面側から前記ベース部の厚み方向に突出する。前記一対のウイング部は、歯列矯正用の結紮部材を掛け止めするためのフック溝を前記ベース部の表面との間で形成するように、前記一対の突出部それぞれの前記厚み方向の端部から前記スロットの延びる方向と垂直であって前記スロットが位置する側とは逆側の外方向へ突出する。前記フック溝の奥部に位置する前記結紮部材が掛け止められる掛止部は、前記スロットに収容された前記アーチワイヤーよりも前記厚み方向へ離間した位置に設けられている。
【0010】
このような構成の歯列矯正用ブラケットは、前記掛止部が、前記スロットに収容された前記アーチワイヤーよりも前記厚み方向へ離間した位置に配置されている。そのため、スロットにアーチワイヤーが挿通された状態で、その上から前記一対のウイング部に結紮部材が掛け止められた場合でも、結紮部材がアーチワイヤーに圧接しない。そのため、アーチワイヤーとスロットの底面との間にフリクション(接触摩擦)が生じ難くなり、その結果、アーチワイヤーから受ける荷重によってブラケット及び歯が移動する際に、前記フリクションの抵抗を受けることなく、アーチワイヤーに沿う方向へブラケット及び歯がスムーズに移動することができる。また、一対のウイング部以外に結紮部材を掛け止める部分を設ける必要がないため、簡単な構成で歯列矯正用ブラケットを実現することができる。また、補助ウイング部のような余計な部分が存在しないため、結紮部材を用いた結紮処置を容易に行うことができる。
【0011】
前記結紮部材が、断面円形状のリング部材である場合、前記掛止部は、前記フック溝の奥部に形成された円弧面を有するよう構成してもよい。これにより、前記掛止部において、前記結紮部材を確実に掛け止めておくことができる。
【0012】
前記フック溝は、前記一対のウイング部それぞれの突出端部と前記ベース部の表面との間に形成される開口から前記スロット側に向かって延出し、前記厚み方向側に傾斜していてもよい。これにより、一旦、フック溝に結紮部材が挿通されてウイング部に掛け止められると、確実に前記フック溝に結紮部材が保持され、結紮部材の脱落が防止される。
【0013】
前記フック溝は、前記ウイング部側に形成され、前記開口から前記掛止部まで直線状に延びる第1内面と、前記ベース部側に形成され、前記開口から前記掛止部まで湾曲状に延びる第2内面とにより形成されている。このように構成されているため、前記フック溝は、前記開口から末広がり状に拡大し、その後、前記掛止部に向かって徐々に先細り状に狭くなる。これにより、前記開口から前記フック溝に結紮部材が挿入された際に、前記第1内面及び前記第2内面から受ける接触抵抗が軽減し、その結果、掛止部に向かって結紮部材が円滑に案内可能となる。
【0014】
この場合、例えば、前記第2内面は、前記開口から前記スロットに向かって前記ベース部の裏面側に傾斜する直線状に延びる傾斜面と、前記傾斜面に連続しており前記掛止部に向かって前記厚み方向側に傾斜する湾曲状に延びる湾曲面と、を有する。これにより、前記第2内面の湾曲面に沿って掛止部に結紮部材が円滑に案内可能となる。
【0015】
また、前記スロットの上縁から前記一対のウイング部それぞれの前記突出端部に至る第1外面は、前記上縁側が高く前記突出端部側が低くなるように傾斜する構成にすることができる。更に、前記ベース部の表面において前記開口から前記外方向の外端部に至る第2外面は、前記開口側が高く前記外端部側が低くなるように傾斜する構成にすることができる。これにより、患者が食べ物を食べる際に、この傾斜に沿って歯面側からベース部の端部側、さらには突出部側に向かって食べ物が滑らかに移動するようになる。そうすると、ベース部の周辺に食べかすが残存するおそれを低減することができる。また、食べ物の滑らかな移動により、食べ物を噛むに患者が感じる抵抗を小さくすることができるとともに、食べ物が引っ掛かるおそれを低減することができる。したがって、このような構成の歯列矯正用ブラケットによると、虫歯の発生を抑制することができると共に、歯列を矯正する患者が心地良く食べ物を食べることができる。また、歯列矯正用ブラケットが、患者の口腔粘膜に接触し難くなり、口腔粘膜の損傷を防ぐことができる。
【0016】
また、前記第1外面は、前記突出端部に向かって湾曲しており、前記第2外面は、前記外端部に向かって湾曲していることが好ましい。これにより、より滑らかに食べ物が移動するようになるとともに、食べ物を噛む際の抵抗をより小さくすることができる。
【0017】
また、前記スロットの延びる方向と垂直な方向において、前記歯列矯正用ブラケットの前記厚み方向側の表面は、前記第1外面と前記第2外面とによって全体的に湾曲した湾曲面を成すように構成してもよい。この場合、前記厚み方向に切断した断面において、前記第1外面を構成する円弧の曲率と前記第2外面を構成する円弧の曲率とは同等であることが好ましい。これにより、歯列矯正用ブラケットの表面の全域において、より滑らかに食べ物が移動するようになる。
【0018】
また、前記スロットの延びる方向において、前記一対の突出部それぞれの基端部から前記ベース部の端部に至る領域の前記ベース部の表面は、前記基端部側が高く前記端部側が低くなるように傾斜する構成であってもよい。これにより、スロットの延びる方向においても、より滑らかに食べ物が移動するようになる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ウイング部に結紮部材を容易に掛け止めることができ、また、一旦掛け止められた結紮部材の脱落を防止することが可能であり、更に、アーチワイヤーに沿って歯が移動する際にブラケットに生じるフリクションを抑制することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施形態に係る歯列矯正用ブラケットの斜視図である。
図2図2は、図1に示す歯列矯正用ブラケットの側面図である。
図3図3は、図1に示す歯列矯正用ブラケットの上面図である。
図4図4は、図1に示す歯列矯正用ブラケットの正面図である。
図5図5は、図1に示す歯列矯正用ブラケットの断面図である。
図6図6は、図1に示す歯列矯正用ブラケットを歯に取り付けた状態を示す図である。
図7図7は、図1に示す歯列矯正用ブラケットにおける結紮部材とアーチワイヤーとの位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は本発明を具体化した一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態は適宜変更できる。
【0022】
まず、図1図6を参照して、本発明の実施形態に係る歯列矯正用ブラケット11(以下「ブラケット11」と略称する。)の構成について説明する。ここで、図1は、本発明の実施形態に係るブラケット11の斜視図である。図2は、ブラケット11を横側から見た側面図である。図3は、ブラケット11を上側から見た上面図である。図4は、ブラケット11を横側から見た正面図である。図5は、ブラケット11の断面図である。図6は、ブラケット11を歯41に取り付けた状態を示す図である。図7は、ブラケット11におけるリング45とアーチワイヤー44との位置関係を示す図である。また、図2は、図1図3図4中の矢印IIの方向から見た図に相当する。図3は、図1図2図4中の矢印IIIの方向から見た図に相当する。図4は、図1図2図3中の矢印IVの方向から見た図に相当する。図5は、図3中のV−Vで示す断面で切断した場合の断面図である。なお、理解の容易の観点から、矢印IIおよびその逆で示す方向を横方向、幅方向または短辺方向(いずれも符号D11で表す。)といい、矢印IIIおよびその逆で示す方向を高さ方向、上下方向または板厚方向(いずれも符号D12で表す。)といい、矢印IVおよびその逆で示す方向を縦方向または長辺方向(いずれも符号D13で表す)という。図5は、ブラケット11の横方向D11の中央を通る縦断面である。
【0023】
ブラケット11は、図6に示すように、患者の歯41の表側の歯面42に貼付されて、患者の歯列を矯正するために用いられる。このブラケット11は、歯面42に接着剤43を介して、直接的または間接的に貼付され、固定される。ブラケット11は、歯41に力を加えるためのアーチワイヤー44と、ブラケット11から抜けないようにアーチワイヤー44をブラケット11に保持するための結紮部材(結紮線)としてのリング45(本発明のリング部材の一例)と共に用いられる。ブラケット11の材質としては、金属、セラミック、シリコン、樹脂素材等が選択される。
【0024】
図1に示すように、ブラケット11は、矢印IIIの方向から見て概ね楕円形状のベース部12を備える。具体的には、ベース部12は、縦方向D13が長辺となり、横方向D11が短辺側となっている。ベース部12は、楕円状のうちの長辺方向D13の両端部を真っ直ぐ高さ方向D12に所定の長さ分切り落として、長辺方向D13の両端に平らな端面13a、13bを設けた形状である。この場合、ベース部12の長辺方向D13の両端部は、それぞれの端面13a、13bとなる。ベース部12の長辺方向D13の長さL1、具体的には、一方側の端面13aから他方側の端面13bまでの長さL1(図3参照)は、例えば、5.8mmである。ベース部12の幅となる短辺方向D11の長さL2、具体的には、短辺方向D11の一方側の端部14aから他方側の端部14bまでの長さL2は、例えば、2.8mmである。
【0025】
図2および図5に示すように、ベース部12は、その中央領域が端部領域に対して相対的に上方向に膨出して反るよう、全体的にやや湾曲した形状である。ベース部12のうちの厚み方向D12の一方側の面である裏面15aは、横方向D11から見た場合に、曲率の比較的小さな円弧状となる形状である。具体的には、裏面15aは、例えば、半径20mmの円弧形状である。裏面15aは、患者の歯41の歯面42に接着剤43によって貼り付けられる部分であり、概ね平坦に形成されている。円弧状の裏面15aの曲率については、取り付けられる歯41の歯面42の形状や膨らみ等に応じて適宜選択される。本実施形態では、裏面15aと端面13a、13bとはそれぞれ、やや直角よりも小さい角度で交わるように構成されている。なお、ベース部12のうちの厚み方向D12の他方の面である表面15bは、患者が口を開けた際に第三者から見える面となる。
【0026】
図2図4に示すように、ブラケット11は、ベース部12の表面15b側からそれぞれ突出する一対の柱状の突出部21a、21bを備える。突出部21a、21bは、ベース部12に一体に設けられている。一対の突出部21a、21bはそれぞれ、厚み方向D12に真っ直ぐに延びるように設けられている。一対の突出部21a、21bは、略楕円状のベース部12上において、それぞれ間隔を開けて、長辺方向D13に並ぶように設けられている。
【0027】
一対の突出部21a、21bそれぞれは、ベース部12において、長辺方向D13に間隔を開けて、後述する歯列矯正用のアーチワイヤー44(図6参照)を収容する溝状のスロット22(本発明のスロットの一例)を形成するように設けられている。つまり、ブラケット11は、スロット22を備えている。具体的には、一対の突出部21a、21bのうちのそれぞれに対向する壁面23a、23bによって挟まれた空間によって、スロット22が形成される。スロット22は、横方向D11に延びる形状となっている。本実施形態では、スロット22は、ブラケット11において長辺方向D13の中央に形成されている。また、ブラケット11は、スロット22を境にして、長辺方向D13に対して対称な形状に形成されている。
【0028】
壁面23a、23bは、裏面15aを下方側とした場合に、ベース部12から鉛直上方へ延びている。スロット22の底面23cは、横方向D11に延びる平坦な面であり、壁面23a、23bに対して垂直な面である。スロット22の底面23cに、アーチワイヤー44が配置される(図6参照)。本実施形態では、アーチワイヤー44として、断面形状がスクエアであり、一辺の長さが0.41mmの金属線を用いる。また、スロット22において、裏面15aの中央部から底面23cまでの長さL3は、例えば、0.4mmである。また、スロット22の縦方向D13の幅の長さL4は、アーチワイヤー44の外径に合わせて、例えば0.41mmである。なお、アーチワイヤー44の形状はスクエアに限られず、ラウンド形状やレクタンギュラー形状のものでも採用可能である。
【0029】
一対の突出部21a、21bそれぞれは、横方向D11から見た場合に、突出部21a、21bの対向する壁面23a、23bが平行となるように設けられている。また、一対の突出部21a、21bそれぞれは、横方向D11から見た場合に、スロット22の上縁部の相当する頂部24a、24bが最も高い位置となっている。突出部21aの頂部24aは、スロット22の上縁であり、且つ、壁面23aの上端である。また、突出部21bの頂部24bは、スロット22の上縁であり、且つ、壁面23bの上端である。
【0030】
突出部21a、21bはそれぞれ、横方向D11にも延びるように設けられている。また、スロット22については、いわゆるトルクの角度を0°とした構成である。一方側の突出部21aの高さL5、具体的には、底面23cから突出部21aの突出方向の頂部24aまでの長さL5(図2参照)は、例えば、1.35mmである。他方側の突出部21bの高さも、一方側の突出部21aの高さL5と同じである。一対の突出部21a、21bそれぞれの高さL5は、つまり、スロット22の底面23cからスロット22の上縁部までの溝深さと一致する。
【0031】
また、図3に示すように、突出部21aの幅L6、具体的には、突出部21aの一方側の壁面25aから他方側の壁面25bまでの横方向D11の長さL6は、例えば、1.6mmである。他方側の突出部21bの幅も、一方側の突出部21aの幅L6と同じである。
【0032】
一対の突出部21a、21bのそれぞれにおける表面15b側の上端部26a、26bには、歯列矯正用の結紮部材としてのリング45(図6参照)を掛け止めするための一対のウイング部31a、31bが設けられている。ウイング部31aは突出部21aに一体に設けられており、ウイング部31bは突出部21bに一体に設けられている。つまり、一対のウイング部31a、31bは、ベース部12に一体に設けられている。
【0033】
突出部21aに設けられたウイング部31aは、突出部21aの上端部26aからベース部12の一方側の端面13aに向かって延びるように突出して設けられている。突出部21bに設けられたウイング部31bは、突出部21bの上端部26bからベース部12の他方側の端面13bに向かって延びるように設けられている。すなわち、ブラケット11は、一対の突出部21a、21bのそれぞれの上端部26a、26bからスロット22の延びる方向と垂直な方向であってスロット22が位置する側とは逆側の外方向(長辺方向D13の外側)へ突出し、リング45を掛け止めするための一対のウイング部31a、31bを含む構成である。
【0034】
図1及び図2に示すように、突出部21a及びウイング部31aの上側の表面33a(本発明の第1外面の一例)は、突出部21a及びウイング部31aそれぞれに共通する外面である。表面33aは、スロット22の上縁である頂部24aからウイング部31aの突出端部37aに至っている。表面33aは、図2に示すように、頂部24aが高く、突出端部37aが低くなるように、長辺方向D13の外方側へ向けて傾斜している。詳細には、表面33aは、頂部24aから突出端部37aに至って所定の曲率で湾曲する湾曲面である。同様に、突出部21b及びウイング部31bの上側の表面33b(本発明の第1外面の一例)は、突出部21b及びウイング部31bそれぞれに共通する外面である。表面33bは、スロット22の上縁である頂部24bからウイング部31bの突出端部37bに至っている。表面33bは、図2に示すように、頂部24bが高く、突出端部37bが低くなるように、長辺方向D13の外方側へ向けて傾斜している。詳細には、表面33bは、頂部24bから突出端部37bに至って、表面33aと同じ曲率で湾曲する湾曲面である。すなわち、ブラケット11は、スロット22の上縁から突出端部37a、37bそれぞれに向かって湾曲する表面33a、33bを含む構成である。なお、ベース部12の端面13a側に位置するウイング部31aの突出端部37aは、上側から見た場合に緩やかに横方向D11に湾曲している。また、突出端部37bについても、上側から見た場合に緩やかに横方向D11に湾曲している。
【0035】
本実施形態では、図1及び図2に示すように、一対のウイング部31a、31bそれぞれは、ベース部12の表面15bとの間にフック溝36a、36b(本発明のフック溝の一例)を形成するようにブラケット11に設けられている。つまり、ブラケット11は、フック溝36a、36bを備えている。フック溝36a、36bには、結紮部材としての断面円形状のリング45(図6参照)が挿入される。
【0036】
フック溝36aは、ウイング部31aの裏面35a(本発明の第1内面の一例)と、突出部21aに近い側のベース部12の表面18a(本発明の第2内面の一例)と、によって形成される溝状の空間である。なお、表面18aは、表面15bの一部であって、ウイング部31aの裏面35aと対向する面である。フック溝36aは、ウイング部31aの突出端部37aとベース部12の表面15bとの間に形成される開口38aからスロット22側へ向かって延出している。また、フック溝36aは、開口38aからスロット22側へ向かって、斜め上方へ傾斜した形状に形成されている。
【0037】
また、フック溝36bは、長辺方向D13に対してフック溝36aと対称な形状に形成されている。つまり、フック溝36bは、ウイング部31bの裏面35b(本発明の第1内面の一例)と、突出部21bに近い側のベース部12の表面18b(本発明の第2内面の一例)と、によって形成される溝状の空間である。なお、表面18bは、表面15bの一部であって、ウイング部31bの裏面35bと対向する面である。フック溝36bは、ウイング部31bの突出端部37bとベース部12の表面15bとの間に形成される開口38bからスロット22側へ向かって延出している。また、フック溝36bは、開口38bからスロット22側へ向かって、斜め上方へ傾斜した形状に形成されている。フック溝36a,36bそれぞれは、横方向D11に延びる形状となっている。
【0038】
開口38a、38bそれぞれは、リング45がフック溝36a、36bに挿通されるときの入口となる部分である。開口38a、38bそれぞれの幅は、リング45が挿通可能なサイズに形成されている。例えば、リング45として後述のリガチャーワイヤーが用いられる場合は、開口38a、38bそれぞれの幅は、リガチャーワイヤーの直径よりも若干大きいサイズに形成されている。また、リング45として後述の矯正用ゴムが用いられる場合は、結紮時に伸ばされたことにより外径が一時的に小さくなった状態の矯正用ゴムが挿通可能なサイズに形成されている。本実施形態では、開口38a、38bそれぞれの幅は、例えば、0.234mmである。
【0039】
フック溝36a、36bには、リング45が挿入されて、その奥部に配置される。具体的には、フック溝36aの奥部に、横方向D11から見て円弧形状の円弧面を有する掛止部28aが設けられており、また、同様に、フック溝36bの奥部にも、円弧形状の円弧面を有する掛止部28bが設けられている。掛止部28aは、突出部21aにおける長辺方向D13の外方側の側面に形成されており、掛止部28bは、突出部21bにおける長辺方向D13の外方側の側面に形成されている。長辺方向D13において、掛止部28aの円弧面から掛止部28bの円弧面までの長さL7(図2参照)は、例えば、2.1mmである。
【0040】
リング45は、スロット22にアーチワイヤー44が挿入された状態で、フック溝36a、36bに挿入されることにより、一対のウイング部31a、31bに引っ掛けられるようにして取り付けられる。リング45は、例えば、金属線からなるリガチャーワイヤー、あるいはNBRやシリコンゴムなどの弾性部材からなる輪ゴム状の矯正用ゴム(モジュールとも称されている。)などである。リング45が前記リガチャーワイヤーである場合は、前記リガチャーワイヤーの結紮時に、前記リガチャーワイヤーが一対のウイング部31a、31bに引っ掛けられた後にフック溝36a、36bに挿入され、その後、タイイングプライヤーなどによって前記リガチャーワイヤーが引っ張られることで、フック溝36a、36bの傾斜に沿って前記リガチャーワイヤーがフック溝36a、36bの奥部へ案内される。これにより、前記リガチャーワイヤーが掛止部28a、28bに配置されて掛け止められる。また、リング45が前記矯正用ゴムである場合は、前記矯正用ゴムが伸ばされた状態で一対のウイング部31a、31bに引っ掛けられると、前記矯正用ゴムが元に戻ろうとする弾性部材の復元力によって、前記矯正用ゴムはフック溝36a、36bの傾斜に沿ってフック溝36a、36bの奥部へ案内される。これにより、前記矯正用ゴムが掛止部28a、28bに配置されて掛け止められる。
【0041】
本実施形態では、直径が0.2mm〜0.3mmのリング45が用いられる。具体的には、リング45として、直径が0.2mmの前記リガチャーワイヤー、あるいは直径が0.3mmの前記矯正用ゴムが用いられる。この場合、掛止部28a、28bそれぞれの円弧面は、リング45の半径と同じ半径、またはリング45の半径よりも若干大きい半径に形成されている。具体的には、掛止部28a、28bの円弧面は、半径0.15mmの円弧形状に形成されている。
【0042】
フック溝36aにおいて、ウイング部31aの裏面35aは、開口38aから掛止部28aまで斜め上方へ概ね直線状に延びる平坦面である。一方、ベース部12の表面18aは、開口38aから掛止部28aまでの領域に、下向き円弧状に湾曲した湾曲状の面を有する。具体的には、表面18aは、開口38a側の傾斜面18a1と、フック溝36aの奥側の湾曲面18a2とに区分けされる。傾斜面18a1は、開口38aからスロット22側に向かって斜め下方(ベース部12の裏面15a側)に傾斜する概ね直線状の平面である。一方、湾曲面18a2は、傾斜面18a1に連続しており、掛止部28aに向かって上方側(厚み方向D12側)に傾斜する湾曲状に延びる面である。この湾曲面18a2は、例えば、半径0.5mmの円弧形状である。なお、傾斜面18a1から湾曲面18a2に至る境界部は、滑らかに連なっている。
【0043】
フック溝36bにおいても、フック溝36aと同様に、ウイング部31bの裏面35bは、開口38bから掛止部28bまで斜め上方へ概ね直線状に延びる平坦面である。ベース部12の表面18bは、開口38bから掛止部28bまでの領域に、下向き円弧状に湾曲した湾曲状の面を有する。具体的には、表面18bは、開口38b側の傾斜面18b1と、フック溝36bの奥側の湾曲面18b2とに区分けされる。傾斜面18b1は、開口38bからスロット22側に向かって斜め下方(ベース部12の裏面15a側)に傾斜する概ね直線状の平面である。一方、湾曲面18b2は、傾斜面18b1に連続しており、掛止部28bに向かって上方側(厚み方向D12側)に傾斜する湾曲状に延びる面である。この湾曲面18b2は、例えば、半径0.5mmの円弧形状である。なお、傾斜面18b1から湾曲面18b2に至る境界部は、滑らかに連なっている。
【0044】
なお、表面18a、掛止部28aの円弧面、および裏面35aは滑らかに連なるように設けられている。同様に、表面18b、掛止部28bの円弧面、および裏面35bも滑らかに連なるように設けられている。また、他の表面15b同士の連続する部分についても、滑らかに連なっている構成である。
【0045】
本実施形態では、図7に示すように、掛止部28aは、スロット22の奥部の底面23cに収容されたアーチワイヤー44よりも厚み方向D12の上方向へ離間した位置に設けられている。また、掛止部28bも、底面23cに収容されたアーチワイヤー44よりも厚み方向D12の上方向へ離間した位置に設けられている。具体的には、スロット22に収容されたアーチワイヤー44の上端面と、掛止部28a,28bに配置されたリング45の下側面との間に、微小な隙間Δtの余裕ができるような位置に掛止部28a,28bそれぞれが設けられている。本実施形態では、リング45として、直径が0.3mmの前記矯正用ゴムが用いられた場合に、前記隙間Δtが0.04mmとなるように、掛止部28a,28bの位置が定められている。
【0046】
このように、掛止部28a,28bそれぞれが、スロット22に収容されたアーチワイヤー44よりも厚み方向D12へ離間した位置に配置されているため、スロット22にアーチワイヤー44が挿通された状態で、その上から一対のウイング部31a、31bにリング45が掛け止められて、リング45がフック溝36a、36bそれぞれの掛止部28a,28bに配置された場合でも、リング45がアーチワイヤー44に圧接しない。そのため、アーチワイヤー44とスロット22の底面23cとの間に、リング45の圧接力に伴うフリクション(接触摩擦)が生じ難くなり、その結果、アーチワイヤー44から受ける荷重によってブラケット11及び歯41が移動する際に、前記フリクションの抵抗を受けることなく、アーチワイヤー44に沿う方向へブラケット11及び歯41がスムーズに移動することができる。また、一対のウイング部31a、31b以外にリング45を掛け止める部分を設ける必要がないため、簡単な構成でブラケット11を実現することができる。また、従来ブラケットが備える補助ウイング部のような余計な部分が存在しないため、リング45を用いた結紮処置を容易に行うことができる。
【0047】
また、フック溝36a、36bが開口38a、38bからスロット22側に向かって延出ており、厚み方向D12の上方側に傾斜する溝状に形成されているため、一旦、フック溝36a、36bにリング45が掛け止められると、リング45は、リング45に生じるテンションによってフック溝36a、36bの奥部へ自ずと移動して、掛止部28a、28bに配置される。これにより、リング45は、フック溝36a、36bの奥部に保持されるため、フック溝36a、36からリング45が脱落することが防止される。特に、フック溝36a、36bそれぞれに、斜め下方に傾斜する傾斜面18a1,18b1が設けられているため、結紮時に開口38a、38bからフック溝36a、36b内にリング45を容易に挿入することができる。そして、更に、フック溝36a、36bそれぞれに、掛止部28a、28bに向かって斜め上方へ傾斜する湾曲状の傾斜面である湾曲面18a2、18b2が設けられているため、フック溝36a、36bに挿入されたリング45は、リング45に生じたテンションによって、湾曲面18a2、18b2に沿って掛止部28a、28bまで円滑に案内される。
【0048】
図2に示すように、ベース部12の表面15bにおいて、開口38a、38bそれぞれから長辺方向D13の外方側に位置する端面13a、13b(本発明の外端部の一例)それぞれに至る部分には、傾斜面19a、19b(本発明の第2外面の一例)が設けられている。開口38aから端面13aに至る傾斜面19aは、開口38a側が高く、端面13a側が低くなるように斜め下方へ傾斜している。具体的には、傾斜面19aは、端面13aに向かって斜め下方へ湾曲している。同様に、開口38bから端面13bに至る傾斜面19bは、開口38b側が高く、端面13b側が低くなるように斜め下方へ傾斜している。具体的には、傾斜面19bは、端面13bに向かって斜め下方へ湾曲している。
【0049】
本実施形態では、図5に示すように、ブラケット11を厚み方向D12に切断した断面において、表面33a、33bを構成する円弧の曲率と、傾斜面19a、19bを構成する円弧の曲率とは、同等であるように構成されている。具体的には、図5に示すように、表面33a、表面33b、傾斜面19a、傾斜面19bは、いずれも、同じ半径Rの円弧に一致するように湾曲状に形成されている。
【0050】
また、図4に示すように、スロット22の延びる横方向D11において、一対の突出部21a、21bそれぞれの基端部39a、39bからベース部12の横方向D11側の端部14a、14bに至る領域に傾斜面20a,20bが設けられている。傾斜面20a,20bそれぞれは、基端部39a、39b側が高く、端部14a、14b側が低くなるように傾斜しており、具体的には、端部14a、14bに向かって斜め下方へ湾曲している。
【0051】
上述したようにブラケット11が構成されているため、ブラケット11を歯面42に貼付し、アーチワイヤー44等の矯正器具を取り付けた場合において、患者が食べ物を食べる際に噛み砕かれた食べ物は、傾斜面19a、19bの傾斜に沿って歯面42側からベース部12の端面13a、13b側、さらには突出部21a、21b側に向かって食べ物が滑らかに移動するようになる。そうすると、食べかすがブラケット11の周辺に残存するおそれが大きく低減される。なお、図6に示すように、ブラケット11は、ベース部12の両端面13a、13b側に、接着剤43がはみ出すようにして歯面42に貼付される。そのため、端面13a、13bの外方側に食べかすが残存するおそれがより低減される。
【0052】
また、ブラケット11のベース部12の表面15bは、傾斜面19a、19bを有するため、ブラケット11が患者の口腔粘膜に接触し難い。また、ブラケット11の上側の外側面を構成する傾斜面19a、表面33a、表面33b、傾斜面19bは、全体的に湾曲した湾曲面であるため、患者の口腔粘膜にブラケット11が接触しても口腔粘膜を傷つけにくくなり、口腔粘膜の損傷を防止できる。また、このように全体的に湾曲した形状であるため、患者は、食べ物を食べる際に、抵抗をほとんど感じることなく噛み切ることができる。すなわち、食べ物の滑らかな移動により、食べ物を噛み切る際に感じる抵抗を小さくすることができると共に、食べ物が引っ掛かるおそれを低減することができる。したがって、このような構成のブラケット11によると、虫歯の発生を抑制することができると共に、歯列を矯正する患者が心地良く食べ物を食べることができる。
【0053】
表面33a、表面33b、傾斜面19a、傾斜面19bを構成する円弧の曲率は、同等であるため、表面33a、33bから傾斜面19a、19bを介して歯面42に至るまで、より滑らかに食べ物が移動するようになると共に、食べ物を噛み切る際の抵抗をより小さくすることができる。
【0054】
また、この場合、ベース部12は、略楕円状であるため、ベース部12の横側においても、より滑らかに食べ物が移動するようになる。したがって、虫歯の発生をより抑制することができると共に、歯列を矯正する患者がより心地良く食べ物を食べることができる。
【0055】
なお、上述の実施形態において、ブラケット11に設けられるスロット22については、いわゆるトルクの角度を0°とした構成であったが、これに限らず、スロット22において、数°のトルクの角度を設ける構成としてもよい。
【0056】
また、上述の実施形態においては、ブラケット11のベース部12の裏面15aについては、円弧状となるよう構成することとしたが、これに限らず、ベース部12の裏面15aについては、平らな面であってもよい。
【0057】
また、上述の実施形態においては、傾斜面19a、19b、傾斜面20a、20bは、外方側に向かって湾曲する湾曲面とすることとしたが、これに限らず、テーパ状に傾斜した面、すなわち、平らな面で傾斜面を構成することにしてもよい。
【0058】
また、上述の実施形態においては、ベース部12は、略楕円状であるよう構成することとしたが、これに限らず、例えば、ベース部12は、厚み方向D12から見た場合に、矩形状や正方形状等の多角形状であるよう構成してもよいし、他の形状であっても構わない。
【0059】
また、上述の実施形態においては、ブラケット11を歯41の表面側に貼付することとしたが、もちろんこれに限らず、歯41の裏側に貼付する場合についても適用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7