(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6808081
(24)【登録日】2020年12月10日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】蚊の誘引方法および誘引装置
(51)【国際特許分類】
A01M 1/02 20060101AFI20201221BHJP
【FI】
A01M1/02 C
A01M1/02 A
A01M1/02 P
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-55065(P2020-55065)
(22)【出願日】2020年3月5日
【審査請求日】2020年3月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520105119
【氏名又は名称】丸島 桃香
(72)【発明者】
【氏名】丸島 桃香
【審査官】
大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】
特開2018−134061(JP,A)
【文献】
特開2018−038314(JP,A)
【文献】
特開平06−000046(JP,A)
【文献】
特表2018−531947(JP,A)
【文献】
実開昭60−44577(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00−1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内の上部に、上下を仕切って配設され、蚊が通過しない網目の網と、
該網に載置され、水分と反応し二酸化炭素ガスを発生させるタブレットと水分がゲル化剤で凝固されたゼリーとを有し、これらタブレットとゼリーとが接触された状態となっている二酸化炭素ガス発生部と、
前記容器内の下部に、上下を仕切って配設され、蚊が通過しない網目の別の網と、
前記容器の側面に、前記網と前記別の網との間に位置して、前記容器の内外を連通して設けられた穴と、
前記容器内の内側面に、前記網と前記別の網との間に位置して、粘着面が内方に向けて取り付けられた粘着テープと、
前記容器内の下部に、前記別の網の下方に位置して配設された熱源と、を備えたことを特徴とする蚊の誘引捕獲装置。
【請求項2】
請求項1に記載された蚊の誘引捕獲装置を用いた蚊の誘引捕獲方法であって、
前記熱源により前記容器全体が暖められて前記容器の外面から放熱された熱、及び前記二酸化炭素ガス発生部にて発生して前記穴から前記容器の外部に放出された二酸化炭素ガスによって、前記容器の外部の蚊を誘引し、
その蚊を前記二酸化炭素ガスで誘引して前記穴を通って前記容器内に進入させ、
前記容器内に進入した蚊に前記熱源による上昇気流を付与し、
その上昇気流によって蚊を前記別の網ではなく前記容器内の内側面に取り付けられた前記粘着テープに止まらせるようにした、ことを特徴とする蚊の誘引捕獲方法。
【請求項3】
前記ゼリーの前記タブレットとの接触面に、前記ゼリーから前記タブレットへ滲み出る水分量を調節するための切れ込みが形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の蚊の誘引捕獲装置。
【請求項4】
前記ゼリーに載置される前記タブレットの形状が、側面視で山型に形成されており、前記タブレットの前記ゼリーとの反応面積が最初は大きく徐々に小さくなっていく、ことを特徴とする請求項1又は3に記載の蚊の誘引捕獲装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蚊を長期的に誘引し捕獲するための蚊の誘引方法および誘引装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、蚊が媒介する感染症は多く報告されており、中でもマラリアは2016年には、世界で年間2億1400万人もの人が発症し約44万人が死に至った。その90%がサハラ以南のアフリカで発生し、犠牲者の多くは5歳以下の子供である。アフリカでは電気の供給量が不足しているため、人体に害がなく電気を使用せず蚊を捕獲できる装置の必要性がある。
【0003】
蚊を駆除する方法としては蚊取り線香や防虫剤、殺虫スプレーなどがある。しかしそれらの製品に含まれるピレスロイドは爬虫類や両生類の生物にとっては神経毒となってしまうため、爬虫類や両生類の近くでは使用できないという問題があった。
【0004】
特許文献1には、ピレスロイドを用いることなく炭酸ガスを発生させて蚊をおびき寄せるようにした蚊取り器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018−38314号公報 蚊取り器
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された蚊取り器においては、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩を主な成分とする錠剤を水やお湯に溶かすことで二酸化炭素(炭酸ガス)を発生させているため(文献1の段落0041参照)急激に反応が進んでしまい、長期間二酸化炭素を安定して発生させることができない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
装置の上部に水分と反応し二酸化炭素ガスを発生させる炭酸タブレットと、蚊のメスが好む吉草酸とを水分を含むゼリーを入れ接触させ、二酸化炭素を発生させる。発生した二酸化炭素ガスは時間が経つにつれ装置の外に広がり蚊をおびき寄せる。なお、ゼリーは、水分がゲル化剤で凝固されたものであり、ゼリーに吉草酸が含まれてもよい。
【0008】
装置の下部に、水分と発熱反応を起こす物質と水を入れ反応させて、熱を発生させてもよい。すなわち、装置の下部に熱源を設けてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は次のような効果を発揮できる。
【0010】
水やお湯ではなく水分を含むゼリーを炭酸タブレットと反応させることで、緩やかに反応が起き、持続的に二酸化炭素ガスを安定して発生させることができる。
【0011】
吉草酸をゼリーに含ませることで、蚊を効果的に誘引することができ、さらに吉草酸特有の匂いが人間には気にならない程度に抑えられる。
【0012】
発生した熱を蚊が感知するため、さらに効果的に蚊を誘引することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る部品Aの説明図であり、(a)は斜視図、(b)は底面図、(c)は側面図、(d)は側断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る部品Bの説明図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る部品Cの説明図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)側面図、(d)は側断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る部品Dの説明図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
【
図5】本発明の一実施形態の係る部品Eの説明図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図、(c)は平面図である。
【
図6】上記の部品A〜Eを組み立てた際の全体の側面図である。
【
図8】タブレットの変形例を示す図であり、(a)は第1変形例、(b)は第2変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照にしながら、本発明の実施形態を説明する。
【0015】
(部品A)
図1、
図7に示すように、部品Aは部品Bを閉じるための蓋であり、円筒a
1と円板とから構成されている。
【0016】
(部品B)
図2、
図7に示すように部品Bは円筒b
2とその底部に設けられた網b
1とを備えており、二酸化炭素ガスの発生源である水分と反応し二酸化炭素を発生させるタブレットb
3と吉草酸を含むゼリーb
4を入れる部品である。二酸化炭素を発生させるタブレットb
3は粉状の重曹とクエン酸を混ぜて固めたものなどが考えられる。ゼリーb
4は水分がゲル化剤で吉草酸とともに凝固されており、吉草酸を含むゼリーの材料は、寒天、ゼラチン、アガー、ペクチン、ガラギーナンなどのゲル化剤が考えられる。反応をさせる際は二酸化炭素を発生させるタブレットb
3を吉草酸を含むゼリーb
4の上に乗せるなど常に接触している状態にする。ゼリーb
4の上面に、タブレットb
3が嵌まる凹部を設け、装置を多少揺すってもタブレットb
3がゼリーb
4から落ちないようにしてもよい。吉草酸を省略してもよい。炭酸タブレットとゼリーは上下逆でもよい。網b
1は日本に主に生息するアカイエカ、ヒトスジシマカ、チカイエカの中で最も小さいヒトスジシマカ(体長4.5mm)が通り抜けられないよう、網目が4.0mmになっている。部品Bの上部の段差部に部品Aが係合される。
なお、各部品A〜Eは、互いに段差部によって係合される。また、
図8(a)に示すように、タブレットb
3の形状を底面より高さが高くしてもよい。これによって、底面からタブレットb
3が消耗しても反応が続き、反応時間を長期間にできる。また、
図8(b)に示すようにタブレットb
3の形状を山形にしてもよい。これによって、最初に二酸化炭素ガスが多く発生し、装置下部に溜まるため蚊を効率を良く誘引できる。また、部品Bの円筒b
2を透明にしてもよい。これにより、タブレットb
3の減少が外部からわかる。
【0017】
(部品C)
図3、
図7が示すように、部品Cは円筒c
5の側面に誘引した蚊が装置内部に入る穴c
1〜c
4が開いている。c
1〜c
4は円筒c
5の側面に等間隔に開いており中心に向かって狭くなっていて、一度装置内に入った蚊が外に出ないようになっている。
【0018】
(部品D)
図4、
図7に示すように、部品Dは円筒d
2とその内側面に貼られた粘着テープd
3と円筒d
2の底部に設けられた網d
1を備えており、装置内に入った蚊を捕獲する部品である。内面には粘着テープd
3が粘着面を内側にして貼られている。蚊が壁面にとまる習性を利用し、装置内に入った蚊を捕獲できる。網d
1は網b
1と同じく網目が4.0mmである。部品Bの網b
1および部品Dの網d
1の網目を蚊が通り抜けできないサイズとすることで、部品Cの穴c
1〜c
4から内部に入った蚊が部品D内に閉じ込められ、粘着テープd
3により適切に捕獲される。また粘着テープd
3の交換を可能にし、使い捨てにしてもよい。
【0019】
(部品E)
図5、
図7に示すように、部品Eは有底円筒状の容器e
1であり、水e
2と水分と発熱反応を起こす物質e
3を入れる部品、すなわち、熱源を収容する部品である。水分と発熱反応を起こす物質e
3は、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化鉄などが考えられる。水e
3の貯蔵部が最下部に位置するので、重心が下方となり安定する。よって、装置の転倒を抑制できる。また、発生した熱が上昇して部品B内のタブレットb
3とゼリーb
4を温めるので反応が適度に促進され、寒い日など反応が鈍い日にはよい。なお、各部品A〜Eを透明剤にして、外部から蚊の捕獲状況がわかるようにしてもよい。
【0020】
以下の構成からなる蚊の誘引装置の作用効果を述べる。
【0021】
水ではなくゼリーb
4の水分が炭酸タブレットb
3と反応するため緩やかに反応し、二酸化炭素ガスを長期間にわたって持続的に安定して発生させることができる。よって、長期間にわたって蚊を捕獲できる。なお、ゼリーb
4の炭酸タブレットb
3との接触面(
図7では上面)に適宜、切れ込みを形成してもよい。切れ込みの深さや数を調節することで切れ込みから滲み出る水分量を変えてタブレットb
3との反応を調節できる。
【0022】
ゼリーb
4に含まれる吉草酸の臭気が穴c
1〜c
4から蚊をおびき寄せることができるが、特有の臭いがあり人間に不快感を与える。しかし吉草酸がゼリーb
4に含まれているため、ゼリーb
4からの匂いの発散を抑えられ人間に不快感を与えない。
【0023】
部品Eの熱源から発生した熱で装置全体が温められ、装置の外側面から放熱されるので熱を感知した蚊を誘引できる。また、熱源によって発生する上昇気流e
4により、蚊が網d
1でなく部品Dの側面の粘着テープd
3にとまり適切に捕獲される。すなわち、熱源は蚊を粘着テープd
3にとまらせるための機能も発揮する。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は二酸化炭素、熱を感知する性質を有する蚊の誘引方法および誘引装置に利用できる。
【符号の説明】
【0025】
a
1 円筒
a
2 円板
b
1 網
b
2 円筒
b
3 炭酸タブレット
b
4 吉草酸を含むゼリー
c
1 穴
c
2 穴
c
3 穴
c
4 穴
c
5 円筒
d
1 網
d
2 円筒
d
3 粘着テープ
e
1 容器
e
2 水
e
3 水分と発熱反応を起こす物質
e
4 上昇気流
【要約】
【課題】蚊をおびき寄せるための二酸化炭素ガスを長期間にわたって安定して発生させることができる蚊の誘引方法および蚊の誘引装置を提供する。
【解決手段】水分と反応し二酸化炭素ガスを発生させるタブレットとゼリーを接触させ、二酸化炭素を発生させ、ゼリーの水分によってタブレットを緩やかに長時間にわたって反応させて蚊をおびき寄せる。
【選択図】
図7