(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
現在スマートフォンの普及率と生活浸透度は高く、生活習慣病を予防改善するアプリケーションが多く上市されている。一方、医療機関と院外調剤薬局との情報共有は薬剤アドヒアランスや生活習慣等の内容に関して十分とはいえない。
【0003】
これまでに、例えば、WO2018/159269号公報には、正しいユーザーが正しい薬剤を服薬したことを確実に確認することを目的として、服薬支援ロボット内で、薬包の包材表面に付加された二次元コード等をコードリーダによって読み取り、その読み取られたコードに対応する情報をデータベースから取得し、薬包保持部から取り出された薬包(又は薬包保持部に保持されている薬包)が正しいか否かを確認する服薬支援装置、服薬支援システム、服薬支援方法及びプログラムが開示されている(特許文献1)。
【0004】
しかしながら、上記のような技術では、多くのユーザーが存在するところから、誤りが生じることなくユーザーの正しい薬剤であるかどうかを確認することはできたとしても、その後のユーザー自身が服薬を確実にしたかどうか、さらにはその服薬を習慣化できるかは確認できない。
【0005】
また、非特許文献1には、結核患者が退院した後も自宅(地域で)開業医が処方する抗結核薬を長期間確実に服用しなければならないことが記載されている。それにもかかわらず、それをチェックするシステムがいまだ提供されていない。
【0006】
厚生労働省としても残薬問題や生活習慣病の薬剤投与アドヒアランス(患者さんが積極的に治療方針の決定に参加し、その決定にともなって治療を受けること)の問題が指摘され、それをIoT等で克服することが求められている。
【0007】
薬剤を服用する以上、薬剤の飲み忘れは存在する。それを少なくしようとするシステムの開発は今まで行われてきたが、確実性(100%はない)とそのシステム機器(その複雑さとコスト)のバランス=費用対効果の高い服薬アドヒアランス改善の仕組みは見いだせない。
【0008】
その見いだせていない証拠として地域DOTS(Observed Treatment, Short-course)と薬剤臨床試験の例をあげる。
【0009】
(地域DOTS)
結核に罹患(りかん)した患者は、その根治のために抗結核薬を結核専門医療機関で入院加療が行われた後に、治療継続のため一般医療機関の外来で計画された薬剤を必要な期間確実に服用継続する必要がある。しかし、その確認がいまだ中断リスクにもよるが、外来時、訪問、電話などの連絡という患者の自己申告に頼る方法でしか確認されていない。(週刊日本医事新報2019年10月3週号(No.4982)参照)(非特許文献1)
【0010】
(薬剤臨床治験)
薬剤臨床治験、フェーズ1で健常人に試験的に投薬し有害事象が現れるか現れないかの臨床治験は、採血等の諸検査が頻回にあることも理由のひとつであるが、治験薬を確実に服用していることを担保するため、食事や生活、移動が制限され緩やかな監視がついた施設に研究期間中とどまるシステムはこの20年来変わっていない。これは、確実にその投与プロトコルに基づいた服薬管理をするシステムがないことを意味する。
【0011】
さらに、残薬の問題があり、また患者のライフスタイルも病態もさまざまで、それに合わせて汎用性が高いシステムが必要である。今までは自己申告であったため、このままでは効果判定に疑問が残る。このため、治験にも有用で、最終的には安否確認やインセンティブに応用できるようなシステムが望まれていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、薬剤投与または健康のための行動の確実性を高め、高額な設備を使用せずに運用が可能なシンプルで安価かつ費用対効果に優れ、普及率の向上が見込めるシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、前記課題を解決するべく鋭意研究した結果、スマートフォンの生活習慣病改善アプリケーションにQRコード(登録商標、以下同じ)を使用した薬剤アドヒアランス改善プログラムを実装し、調剤薬局での服薬指導および医療機関と薬局の情報共有に有用な薬剤アドヒアランス向上を含む健康行動の習慣化システムが、前記目的を達成し得ることの知見を得た。
【0015】
本発明は、前記知見に基づきなされたもので、下記の発明を提供するものである。
1.(1)内側にコンピューター端末
としてのスマートフォン又はタブレット端末で読み取り可能な
二次元バーコードが記載され、外側には日付が記載された折りたたみカードと、(2)薬剤又は健康行動のための物材と、が少なくとも封止され、外部から内部の前記薬剤又は物材が視認可能でありかつ前記
二次元バーコードを前記コンピューター端末で読み取れないようになされたパックを、ユーザーに与えて、前記日付の該当日に服薬又は行動するようにするための習慣化システムであって、
前記パックを与えられたユーザーが、該薬剤又は物材の使用時に、前記パックを開封して前記折りたたみカードを開き、内側の前記
二次元バーコードを
ユーザー用の前記コンピューター端末で読み取ることにより、該端末
の画面に
前記服薬又行動の促進に関する文面が表示され、ユーザーが
当該文面を確認した後に、該ユーザーの家族、医局(医療機関)又は薬局その他の関係者
用のコンピューター端末としてのスマートフォン又はタブレット端末へ
、前記ユーザーの名前と前記パックから前記薬剤又は物材を開封したこと及び開封日時を含む情報が発信されることを特徴とする薬剤使用および健康行動習慣化システム。
【0018】
2.前記医局、前記薬局および前記関係者のうちの少なくとも二者が連携して、
当該少なくとも二者それぞれ用の前記スマートフォン又はタブレット端末による前記情報の共有により、前記ユーザーの薬剤使用または健康行動を促進する、請求項
1に記載の薬剤使用および健康行動習慣化システム。
【0019】
3.前記1記載の薬剤使用および健康行動習慣化システムを実行するための情報処理プログラムであって、
ユーザー用のコンピューター
端末としてのスマートフォン又はタブレット端末に、
前記折りたたみカード内側の前記
二次元バーコードを読み取ることで、該当するユーザーの名前
と前記パックから前記薬剤又は物材を開封したこと及び開封日時を含む情報を確認するステップと、
前記の確認ステップに応じて、
ユーザー用の前記コンピュータ
ー端末から前記
情報を
発信可能な状態に移行し、該情報を
前記ユーザーの家族、医局(医療機関)又は薬局その他の関係者用のコンピューター端末としてのスマートフォン又はタブレット端末へ向けて発信するステップと、
を実行させることを特徴とする情報処理プログラム。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、薬剤投与または健康のための行動の確実性を高め、高額な設備を使用せずに運用が可能なシンプルで安価かつ費用対効果に優れ、普及率の向上が見込めるシステムを提供することができる。
【0021】
また、従来のアドヒアランス改善システムのようなIoTのみを使う、多機能化、自己完結しようとするものに対して、本発明のシステムは、シンプルで、わかりやすく、スマートフォンが使えない人に対しても3回のボタンを押すことと内蔵カメラによるスキャンの行為で行動の確認ができ、ユーザー(患者等)の家族や薬局等の病院(医局)以外にも情報共有可能で、参加型である。
【0022】
本発明は、開封したあと本人の意志で確実に服薬・注射等をするところまで確認することができないが(現在微弱電波を利用した服薬確認の方法は存在する)、投与の確実性を高め、かつ費用対効果に優れた手法かつ2次的効果(安否確認)等にも使用できる初めてのシステムである。
【0023】
また、本発明の好適な実施形態によれば、特に、以下の効果も有する。
(1) 錠剤カプセルなどの内服薬だけが対象でなく、冷蔵庫に入った老人性低栄養状態を補うための栄養補助食品やインスリンなどの注射薬を服用・投与・経口摂取したか、血糖測定と内服をしたかも血糖測定器と内服薬を同じ袋にパッキング+折りたたみカードを挿入すれば可能である。
【0024】
(2) 開封して薬を破棄してしまう人には無効であるが、服薬が必要な時間に正しく服用したかどうかリアルタイムに確認でき、服用時間を過ぎても服用・行動した連絡がなければ、服薬・行動したかどうか確認の連絡ができる。
【0025】
(3) 2次元バーコードの印字や印字カードの封入とスキャン、RFIDやNFCカードなどの同梱するシステムの以下のような問題点と限界を解消できる。
外側から見えてしまうと、外側からスキャンできてしまい開封せずスキャンして終了する。注射なども開封しないのでスキャンする動作がないので、打たず次回にまわす人もいる。RFIDや無線システムの場合は混線し、その日の薬の袋を持参し外出先で服用したという信号をおくるためのスキャンをする装備と認証システムをどうするかが問題である。NFC(Suica(登録商標)のカード)システムでは、スマートフォンでスキャンする場合、パッケージをスマートフォンに近づけると認識してしまい運用が難しい。
【0026】
(4) 他のシステムと比較して圧倒的に低コストで運用が可能である。
今日のスマートフォンの普及率はめざましく、安価でシンプルに運用することが可能である。概算ではあるが、習慣化するまでの期間を6カ月と想定すると、システムの運用費を除くとスマートフォンとプリンターがあれば1.5万円ぐらいで運用が可能となる。
2次元バーコードをスキャンでき、電子メールを送ることができるスマートフォンと、スマートフォンを使える患者等ユーザー本人、2次元バーコードの印刷できるプリンターとパッケージを作るためのシーラー(2000円から1万円)、消耗品としてパッケージ用のフィルムとシールプリント用紙(1000円以内/月)は必要となる。
病院やアプリケーションを使用した運用は、印字カードをプリントし患者に配布、パッケージングの補助、免責のある電子メールによる見守り連絡と外来受診時のアドバイスで運用することができる。
【0027】
(5) 服薬支援システムというより、服薬行動のみならず習慣化とアドヒアランス改善、健康維持行動を総合的にサポートし、服薬を含む健康行動の可視化を可能とするシステムである。
服薬アドヒアランスの改善だけでなく、職域で運用すれば、職場ごとに健康行動(栄養補助食品やサプリメントの服用、病院からの薬を服用など)を公平にトレースすることが可能であり、Habit tracker(自分の習慣を日ごとに書きとめるチェックリスト)、職場間のポイントによる競争、インセンティブに使うことが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明について、その好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
本発明の一実施形態に係るシステムは、
図1に示すように、(1)内側にコンピューター端末としてのスマートフォンで読み取り可能な所定の二次元バーコード(QRコード)が記載され、外側には日付が記載された折りたたみカード1(紙面)と、(2)薬剤2と、が少なくとも封入用透明袋3の中に封止されたパック10を、ユーザーに与えて、カード1表面の日付の該当日に服薬するようにするための薬剤使用の習慣化システムである。
【0030】
パック10としては、外部から内部の薬剤2およびカード1表面の日付が視認可能な透明なプラスチック製のポリ袋等の封入用透明袋3が用いられ、カード1の内側記載のQRコードは視認できず、スマートフォンで読み取れないように二つ折りにされて入れられている。
【0031】
そして、
図1の折りたたみカード1と薬剤2が封入されたパック10を与えられたユーザーは、薬剤2を使用する際(カード1表面に記載の日付)に、そのパック10を開封して中から折りたたみカード1と薬剤2を取り出す。その後、
図2に示すように、パック10の封入用透明袋3から薬剤2(本実施形態では散剤11および錠剤12)とともに取り出した折りたたみカード1の内側のQRコードの面を開く。ユーザーは、スマートフォンでこのQRコードをかざす等してスキャンして読み取ることによって表示されたスマートフォン画面の所定の内容を確認する。ユーザーは、スキャンの前後で薬剤2を服用する。その後、ユーザーは、マートフォン画面の送信ボタン等をタッチすることで、自身の家族や、医局(医療機関)、薬局その他の関係者へ所定の情報(具体的には、特定のユーザーがパック10から薬剤2を開封したこと、開封日時等の情報)が電子メール送信される。
【0032】
ここで、送信される電子メール情報については、主として、医師と患者(ユーザー)が服薬確認のやりとりを行っているが、患者本人の了解があれば、(1)患者が服薬しているかどうかの情報、(2)医師のアドバイスの内容、前記(1)(2)のどちらかないしは両方を調剤薬局の薬剤師が何も介入しなくても自動的に情報を入手することができる。要は患者と医師のメールアドレスの送信先にその薬剤師のメールアドレスを追加するのみで情報共有が可能であり、情報の送信先をその逆にしてもよい。他の施設(例えば、保健センター・交通運行管理室等)にも、患者本人の了解が得られることを前提に情報の提供が可能である。つまり、本実施形態に係るシステムによれば、1対1(医師と患者)の単独使用でも、許可を受けた2次利用者(薬剤師や他の施設の担当者)の業務にも有用である。
【0033】
また、情報送信の対象としては、医局又は薬局の他、ユーザーの関係者、具体的には、公的機関を含むユーザーまたはその家族に許可された関係者・諸機関等が挙げられる。
【0034】
なお、本実施形態においては、読み取り可能な前記コードとして二次元バーコードを好ましく使用しているが、これに限定されるものではない。
【0035】
また、本実施形態においては、コンピューター端末として、スマートフォンを好ましく使用しているが、これに限定されず、タブレット端末その他のコンピューターを適宜用いることもできる。
【0036】
本実施形態に係る習慣化システムは、特に、前記医局、前記薬局および前記関係者のうちの少なくとも二者が連携して情報を共有すること等により、ユーザーの薬剤使用または健康行動を促進することが可能となる。
【0037】
次に、本実施形態に係る習慣化システムの使い方、適用方法について説明する。本システムは、大きく3つの部(以下の第1部〜第3部)に分かれている。各部において、いつ、だれが、なにを、どうする、その理由、に着目することが重要である。
【0038】
〔第1部(準備)〕
バーコード印刷 + 薬剤パッケージ化
<方法>
病院から処方された薬剤を、服用スケジュールに合わせて二次元バーコード(QRコード、以下単に「バーコード」ともいう)を内側に印刷し、表に服用の日時を書いた用紙(二つ折りカード型用紙)とともに透明な袋でパッケージ化する。
用紙の大きさや、パッケージの大きさは、利用目的と詰める物などに応じて随時変更可能である。例えば、お薬カレンダーの小ケース(
図5〜
図7参照)や財布に入る大きさなどにすることができる。
【0039】
<留意事項>
バーコード印刷および薬剤パッケージ化に際しては、以下の点に留意すべきである。
(I)バーコードがパッケージ表面から見えないこと。
(II)いつ行動するか示すための日付・日時等を用紙の表に記入していること。
(III)バーコードの印刷内容にオリジナル性があること。
(1)投与される日と日時(投与開始からの日数・朝・昼・夕・寝る前)によりバーコードが異なる。
(2)スマートフォンによりスキャンすることで単に関連Webサイトに誘導するバーコードではなく、所定のアイコン等をクリックすると電子メール(以下、単に「メール」という)の内容がワンアクションで特定のアドレスに送ることができる機能をもつ(ユーザーの利便性優先)。
(3)スキャンした際の送付するメールの内容に、ユーザー本人に「この薬は投与後何日目のいつ飲む薬です」という確認と、習慣化=アドヒアランス改善するためのはげましの言葉や豆知識や家族に連絡をするよう促す文言を挿入できる(状況により変更、削除することもできる)。
【0040】
〔第2部(実行)〕
開封 → スマートフォンによるバーコードスキャン + 文面確認・メール送信
<方法>
投与日時が一致する薬剤パッケージを開封する。裏に印刷されているバーコードを、スキャナー機能(コードリーダ機能)を備えるスマホでスキャン(走査)する。スマートフォンの所定のアプリケーションにより表示されている文面を確認し、メール送付のため文字をタップする。そして、メールが送信される。
【0041】
<留意事項>
・投薬やインスリン投与は、バーコードスキャン+メール送信の前・後のどちらでも良いが、投与した時間と習慣をつけるため投与・内服前の方が好ましい。
・もし朝1回や夕食1回の内服や投薬だけならばスマートフォンを家から持ち出さなくても良い。
メリットはお薬カレンダーにスマートフォン用ポケットを作っておき、アラームをセットしておくとより服薬スキップがなくなり服用習慣が定着する。一方、デメリットとしては、家にいる人であればこれで良いが 徘徊する人である場合常にスマートフォンを携帯し位置情報を発信した方が有用である。
・行動するタイプ=1日3回など外出先で内服しなければならない方はスマートフォンケースと内服薬を入れるケースを携帯することにより1日の中で飲み忘れを回避できる。
【0042】
オリジナル性
状況に応じてその人に合わせて最適なものを提供できる。
スマートフォンと服薬カレンダー携帯用のケースも市販品を流用し、薬を家で服用する人にも持ち出す人にも使える。
その理由は、スマートフォンの機能を利用するが、アラームなどは事前に設定するか必要最小限のアクションしか当該者に求めないこと、複雑な動作(文字入力など)を廃していることとお願いするアクション自体がシンプルであるが、表示される内容が日々異なるため飽きることがないこと、このバランスが良いと考えられる。
【0043】
〔第3部(確認)〕
確認とフォードバック
<方法>
ユーザーがメールを送る。→ 主催者が確認する。→ 確認処理を目的別に行う。
もちろんユーザーの家族のみに送っても構わないが、服薬をしているかどうかについて、医療機関ないしは薬局が把握しておき、ユーザー本人やその家族に適切なアドバイスをすることが重要である。しかし、投薬の時間は 夜間や早朝もあり得るために、ひとりの医師・薬剤師・医療従事者がウオッチすることは過重労働になり得る。このため、セキュリティーの担保された許可されたものしかログインできず、かつ履歴が参照できるメーリングソフトないしはアプリケーションを使用し、ユーザー本人や本人が承諾した家族が見やすい形(カレンダー形式やポイント加算するように現存するソフトウエアに改良を加えた)にすることと必要あれば、確認メールを送る事も可能である。
【0044】
確認メールとしては、例えば、ユーザー(患者)本人や家族から許可を得た(書面が望ましい)投薬していない方(保健センター地域包括機関など公的機関を含む)にその旨の連絡、ポイント加算、はげましのメール、ユーザーに異常があった場合の家族への連絡等が挙げられる。
【0045】
本実施形態の習慣化システムの効果を検証した結果を表1に示す。この検証では、2カ月の介入とその前後2カ月で行動習慣がどのように変化したかを示す。
【表1】
【0046】
なお、表1中の記載は、以下の意味を示す。
丸数字の1〜8:本システムの各ユーザー(表1下段の年齢別、男女別、毎日投薬する人と週1回投薬する人に分類)
Pre: 本システムを適用する前の各ユーザーの服薬状況を2カ月間検証した結果。
(表中の数値は、薬を飲み忘れた回数、以下同じ)
介入:本システムを適用している間の各ユーザーの服薬状況を2カ月間検証した結果。
Post:本システムを適用した後の各ユーザーの服薬状況を2カ月間検証した結果。
【0047】
前記の表1の結果から明らかなように、本発明の習慣化システムを適用することにより、適用前にはユーザー全員に薬の飲み忘れが生じていたのが、適用中(介入欄)では半数以上のユーザーに薬の飲み忘れがなく、適用中に飲み忘れがあるユーザーでも適用前に比べて格段に減っていることがわかる。また、本システムを適用後には、本システムを使用しなくても、多少の飲み忘れがあるユーザーがいるものの、薬の飲み忘れをしない習慣が継続できているユーザーもいる。特に、本システム適用の前と後とを比べると、その違いが一目瞭然である。
【0048】
本システムは一定期間継続して使用して習慣化の効果が見られた場合は終了してもよいが、効果が不十分な場合又はより効果の向上のために使用を続けてもよい。本システムの使用期間又はその再開はユーザー又はその家族が自由に選択でき、医局はそのアシストができる。
【0049】
本発明の他の実施形態としては、前述の実施形態のような薬剤使用の習慣化ではなく、健康行動のための習慣化システムであって、
図3に示すように、(1)内側にコンピューター端末としてのスマートフォンで読み取り可能な所定の二次元バーコード(QRコード)が記載され、外側には日付が記載された折りたたみカード21(紙面)と、(2)注射器22(インスリンGLP-1製剤等の注射剤)と、が少なくとも封入用透明袋23の中に封止されたパック20を、ユーザーに与えて、カード21表面の日付の該当日に注射器によって注射を打つようにするための健康行動習慣化システムである。
【0050】
パック20としては、外部から内部の注射器22およびカード21表面の日付が視認可能な透明なプラスチック製のポリ袋等の封入用透明袋23が用いられ、カード21の内側記載のQRコードは視認できず、スマートフォンで読み取れないように二つ折りにされて入れられている。
【0051】
そして、
図3の折りたたみカード21と注射器22が封入されたパック20を与えられたユーザーは、注射器22を使用する際(カード21表面に記載の日付)に、そのパック20を開封して中から折りたたみカード21と注射器22を取り出す。その後、
図4に示すように、パック20の封入用透明袋23から注射器22とともに取り出した折りたたみカード21の内側のQRコードの面を開く。ユーザーは、スマートフォンでこのQRコードをかざす等してスキャンして読み取ることによって表示されたスマートフォン画面の所定の内容を確認する。ユーザーは、スキャンの前後で注射器22を使用し、必要な注射剤、例えばインスリン等を準備して注射を打つ。その後、ユーザーは、スマートフォン画面の送信ボタン等をタッチすることで、自身の家族や、医局(医療機関)、薬局その他の関係者へ所定の情報(具体的には、特定のユーザーがパック20から注射器22を開封したこと、開封日時等の情報)がメール送信される。
【0052】
次に、スマートフォン生活習慣病改善アプリケーションに、本発明に係るQRコードを使用した薬剤アドヒアランス改善プログラムを実装し、調剤薬局での服薬指導および医療機関と薬局の情報共有に有用か検証した。
【0053】
本プログラムの内容説明と実技を薬剤師に行いアンケート評価を施行した。対象はセキュリティー面で辞退した1薬局を除く5薬局13名の薬剤師、プログラムの特徴である4要素をランク付けし、コンジョイント分析により有用性を解析した。
【0054】
1.薬剤アドヒアランス、2.データ共有、3.ライフスタイル共有、4.アクセス方法の順で有用性が高く、この評価は薬局の設立形式および薬剤師の経験年数に関連性は認めない。
【0055】
自己記入式アンケート結果では、同意された患者個人が自身のデータを持ち、自己の判断で参照可能な医療機関や薬局を選択できるシステムが各薬局で評価される。一方、個人情報の取り扱いに施設間の相違を認めた。
【0056】
本実施形態のシステムは、医療機関や薬局に依存せず居住エリアが変わっても適用可能であり、Personal Health Recordの概念に近い、災害時等にも有用性が期待される。
また、情報データを多職種で共有することで患者個人の健康維持行動が改善した事例がある。2次使用する薬局は1次利用している病院側で言いだせなかった行動習慣阻害要因を薬局で相談し解決、薬剤師が医師にフィードバックすることにより患者の治療内容をより患者の利便性が高いものに変更できた事例を認めた。
【0057】
本発明のさらに他の実施形態として、服薬カレンダーと組み合わせた習慣化システムを説明する。習慣化するにはカレンダーを組み合わせることがわかりやすく、薬の飲み忘れ等も回避でき容易に継続可能となる。
【0058】
本実施形態では、例えば、
図5に示すように、1週間ごとに、縦に曜日、横に週目を表示した服薬カレンダー30(日ごとに取り外し可能な複数のクリア小ケース31、及び下部にある2つのクリアポケット32付きのソフトなボード状のもの)等が好ましく用いられる。これは、日曜日に週一回の注射を打つことを想定した、薬とともに他の物材を使う場合の例である。この服薬カレンダー30の例では、
図6に示すように、1週目の火曜〜木曜日に服薬するべき3日分のパック10(折りたたみカード1および薬剤2入り)がそれぞれ該当する3つのクリア小ケース31に挿入されている。
【0059】
服薬カレンダー30を使用する場合、例えば、
図7に示すように、薬剤入りパック10をクリア小ケース31に入れた状態で、服薬カレンダー30に付いてある面ファスナー、例えば、マジックテープ(登録商標)やベルクロ(登録商標)テープ等の貼着テープ33から取り外し、使用しやすいように持ち運びが可能で、冷蔵庫等で必要な状態にしておくことができる。そして、本システムを適用してパック10を取り出し、ユーザーが開封してカード1のQRコードをスキャンし、薬剤2の服薬等を容易にすることができる。その後は、クリア小ケース31をその裏面にある貼着テープ34によって、もとの位置の貼着テープ33と接触させて取り付けが可能である。
【0060】
図8に示すように、服薬カレンダー30のクリアポケット32を使用する場合、少し大き目の物材入りのパック等を挿入しておくことができる。例えば、
図8は、パック20(折りたたみカード21および注射器22入り)をクリアポケット32に挿入した例である。この例においても、本システムを適用時に、クリアポケット32からパック20を取り出し、ユーザーが開封してカード21のQRコードをスキャンし、注射器22を容易に使用することができる。
【0061】
また、例えば、薬と体重減少予防のためのプロテインドリンクを一緒にパックして、冷蔵庫に入れておいても構わない。
ただし、本発明の習慣化システムにおいては、上記のカレンダーを常に付帯しなくても良い。なぜなら、例えば、毎日夕方に帰り朝早く出勤する家族が母親の昼服用する薬とプロテインドリンクを1日ごとに冷蔵庫に入れておくこともあるからである。
【0062】
前述した実施形態の習慣化システムは、薬剤をパックにしたものを用いたが、本発明は、薬剤だけのパックにとどまらない。例えば、健康行動のために、朝にしたいことをパック内にまとめて封じ込めることもできる。
例えば、薬とインスリンGLP-1製剤など注射等、習慣化したい対象を薬剤以外の生活必需品(鍵や現金や食品)など衛生面とパック可能な大きさに限界があるものの生活に重要性が高ければ高いものを同梱しパックすることはより習慣化が進むため、幅広い適応が可能である。
【0063】
本発明の習慣化システムは、服薬アドヒアランス向上のためのシステムにとどまらず、広く種々の目的に適用できる。例えば、抗結核薬を確実に服用するための確認(監視)と習慣化等にも適用でき、その目的には特に限定されない。
【0064】
本発明の習慣化システムのメリットは、以下に説明する通りである。
(1) 服薬などの習慣は通常3〜6カ月で定着すると言われているので、それまでの間に本システムでモニタリングすることにより習慣が身につく。
【0065】
(2) パックのなかに入れた薬や食品サプリメントを開封し同梱している2次元バーコードをめくってスキャンすることを該当者ができれば、それを家族や医療機関や薬局などがそれをスキャンした時点で覚知ことができる。
よって、開封予定時間になっても開封メールを確認できなければ、服用していないことがわかり、生存確認等の安否確認をかねて連絡することが可能である。またその際にスマートフォン等端末の衛星利用測位システム(GPS)機能をオンにしておけばどこに該当者がいるかもわかる。
またスマートフォンに連絡した際にスマートフォンに該当者が出なければ、スマートフォンを持たずに外出している可能性が高いなど毎日の安否確認に利用が可能である。
【0066】
(3) メールに返事をすることで該当者本人の安心感につなげること、ポイントを返事のメールに配布することにより、本人のインセンティブやモチベーションアップにつながる。
【0067】
(4) 確実に薬を服用している証拠や健康のための行動をしている証拠として使用することができる。また、例えば、臨床治験や抗結核薬を確実にその日に指示された薬を指示通りに服用しているかの証拠になる。
【0068】
本発明の習慣化システムは、応用性が高くわかりやすいので、さまざまな電子機器に実装可能である。
【0069】
本発明はまた、前述した薬剤使用および健康行動習慣化システムを実行するための情報処理プログラムであって、コンピューターに、前記折りたたみカード内側の前記コードを読み取ることで、該当するユーザーの名前および服薬または行動の日付を確認するステップと、前記の確認ステップに応じて、前記コンピューターの端末から前記ユーザーの名前および前記服薬または行動の日付の情報を送信可能な状態に移行し、該情報を送信するステップと、を実行させることを特徴とする情報処理プログラムを提供することができる。
【0070】
前述した実施形態に係る習慣化システムを実行するための情報処理プログラムを使用してユーザーが情報を送信する際のステップを説明する。
図9に示すように、第1のステップでは、折りたたみカードおよび薬剤等を含むパックを与えられたユーザーは、スマートフォンのカメラアイコンをタップする。第2のステップで、カメラを通して写った該カードのQRコードをスキャンして読み取り、「Safariで開く」をタップする。なお、第2のステップのタップで自動に進まない場合は、開いた画面の「メール作成はこちら」をタップする。その後、第3のステップで、メールの内容が表示され、「↑」画面をタップする。これにより、ユーザーは、服薬等の情報を送信するとともに、受信した医局等からの返信メール内容を確認できる。
【0071】
次に、同情報処理プログラムを使用して医局が情報を受信する際のステップを説明する。
図10(上図)に示すように、このステップでは、ユーザーから送信された服薬等の情報メールを受信した医師は、対象ユーザーごとに時系列で表示される送信日時を表示する。この対象ユーザーに返事をするとメールで返信することができる。また、
図10(下図)のように、医師はカレンダーに反映して一覧化し、対象ユーザーと当該カレンダーの情報を共有することも可能である。
【0072】
ユーザーがスマートフォン等のコンピューターの端末において上記の情報処理プログラムを使って習慣化システムを実行すれば、ユーザーが服薬した日にち又は健康のために行動した日にちとそのユーザーの名前の情報を、該ユーザーの家族、医局(医療機関)又は薬局その他のユーザーやその家族から許可された関係者が電子メール等により受信できることなる。
【0073】
この際、例えば、医局では、特定の患者ユーザーからのメールにより当該ユーザーと習慣化することをカレンダーに落とし込み、当該ユーザーに対してメール返信ができるようになる。すなわち、統括する医師は、ユーザー情報をカレンダーに置き換えて、ユーザーに対して「服薬したことのメールを見ました。よく頑張りました。次の回は次の服用日時は〇月〇日でもう少し早い時間に服用しましょう。」等の内容でフィードバックできる。統括医師や薬剤師は数十人といった多数のユーザーを診る必要があるが、特定の一ユーザーの3日前、1週間前の状況も容易に把握・確認できるようになる。医師は、ユーザーが薬を飲んだ日をチェックし、薬を飲んだ人と飲まなかった人を公平に把握できる。セキュリティーを担保すればインターネットに接続可能な場所であれば医局以外の場所での返信が可能であるため緊急時の対応や安否確認また仕事量を分散させることも可能である。また職域の中での健康グループや自助グループ(例えば、アルコール依存症の人等)において、複数のユーザーに対してポイント制やランキングにすることで、服薬の有無が一目瞭然となる。例えば、職域で医師から処方された薬を適切な時間に服用しているか、血糖測定器の測定試験紙をパックすることにより適切な時間に血糖測定をしているか、離れた場所にいるバス会社の運行管理者が認知することも本人が了解すれば可能であり、より安全な深夜バスの運行が可能となる可能性がある。(本出願人はバス会社の産業医活動をしており変則勤務のドライバーの服薬アドヒアランス問題に取り組んでいる)
【0074】
このように、本発明の習慣化システムおよびこれを実行するためのプログラムを活用すれば、ユーザー一人ではできないことでも他のユーザーが頑張っていること、グループダイナミズムによるアプローチで、習慣化をより一層向上できる。
【0075】
従来医師は患者が薬を飲んでいて当然と考えていた(思い込んでいた)が、実は患者にとって服薬行動が日常生活の上でストレスや苦痛であるが医師には言い出せず、薬を飲んでいなかったということがあった(わかってきた)。
出典)平成19年度老人保健事業推進費等補助金「後期高齢者の服薬における問題と薬剤師の在宅患者訪問薬剤管理指導ならびに居宅療養管理指導の効果に関する調査研究」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/sankou_4.pdf
【0076】
医師もこのような状況についていまだ全体像を把握できていない(把握するシステムが存在しない)のが実情である。本発明の習慣化システムによって、いかに服薬や健康行動の習慣化が重要かということを医局の医師等にもわかるようになることが期待される。
【0077】
さらに、本発明の習慣化システムにより医局と薬局がユーザーに関する情報を共有することで相互に情報をフィードバックし、医局側の医師と薬局側の薬剤師との連携も可能となる。このように、本発明の習慣化システムおよびこれを実行するためのプログラムは、シンプルかつ汎用性のあるコミュニケーションツールとして活用可能となる。
【課題】薬剤投与または健康のための行動の確実性を高め、高額な設備を使用せずに運用が可能なシンプルで安価かつ費用対効果に優れ、普及率の向上が見込めるシステムを提供する。
【解決手段】内側にコンピューター端末で読み取り可能な所定のコードが記載され、外側には日付が記載された折りたたみカード1と、薬剤2又は健康行動のための物材と、が少なくとも封止され、外部から内部の薬剤2等が視認可能でかつコードをコンピューター端末で読み取れないようになされた封入用透明袋3を入れたパック10を、ユーザーに与えて、日付の該当日に服薬又は行動するための習慣化システムであって、パック10を与えられたユーザーが、薬剤2等の使用時に、封入用透明袋3を開封して折りたたみカード1を開き、内側のコードをコンピューター端末で読み取り、ユーザーの家族や医局等関係者へ情報を発信する。