特許第6808204号(P6808204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6808204マスクシート、部分めっき材の製造方法及び部分めっき方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6808204
(24)【登録日】2020年12月11日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】マスクシート、部分めっき材の製造方法及び部分めっき方法
(51)【国際特許分類】
   C25D 5/02 20060101AFI20201221BHJP
   C25D 7/06 20060101ALI20201221BHJP
   C23C 18/52 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   C25D5/02 H
   C25D7/06 H
   C23C18/52 B
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-528771(P2019-528771)
(86)(22)【出願日】2019年5月27日
(86)【国際出願番号】JP2019020953
(87)【国際公開番号】WO2020059211
(87)【国際公開日】20200326
【審査請求日】2020年6月24日
(31)【優先権主張番号】特願2018-174066(P2018-174066)
(32)【優先日】2018年9月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518332712
【氏名又は名称】株式会社東和企画
(74)【代理人】
【識別番号】100139996
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 洋子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 昌弘
【審査官】 大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭50−027810(JP,B1)
【文献】 特開2014−080652(JP,A)
【文献】 特開平11−012783(JP,A)
【文献】 特開昭54−069145(JP,A)
【文献】 特開昭59−041490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 5/02
C23C 18/52
C25D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスク層と当該マスク層上に形成される保護層とを有するマスクシートの製造方法であって、
前記マスク層と前記保護層とを貼り合わせた後に前記マスク層及び前記保護層に帯状の被めっき材にめっき膜を形成する位置に対応する複数の開口部を形成する製造方法であり、
前記複数の開口部は同一形状及び異なる形状のいずれであってもよく、
前記保護層は前記帯状の被めっき材に前記マスク層を貼付すると同時若しくはその後に前記マスク層から剥離されるマスクシートの製造方法。
【請求項2】
マスク層と当該マスク層上に形成される第1の保護層と前記マスク層の前記保護層が形成される面と反対の面に形成される第2の保護層を有するマスクシートの製造方法であって、
前記マスク層と前記第1の保護層とを貼り合わせた後に前記マスク層及び前記第1の保護層に帯状の被めっき材にめっき膜を形成する位置に対応する複数の開口部を形成する製造方法であり、
前記複数の開口部は同一形状及び異なる形状のいずれであってもよく、
前記第2の保護層は前記帯状の被めっき材に前記マスク層を貼付すると同時若しくはその前に前記マスク層から剥離され、前記第1の保護層は前記帯状の被めっき材に前記マスク層を貼付すると同時若しくはその後に前記マスク層から剥離されるマスクシートの製造方法。
【請求項3】
前記帯状の被めっき材の少なくとも一方の面の任意の位置に請求項1または請求項2に記載された製造方法により製造されたマスクシートのマスク層を貼付する工程と、
前記帯状の被めっき材の少なくとも前記マスク層を貼付する面にめっき膜を形成する工程と、
前記マスク層を剥離する工程とを有する部分めっき材の製造方法であって、
前記マスク層の複数の開口部に対応する位置に形成される前記めっき膜は1層以上であり、
前記めっき膜を形成する工程において、前記帯状の被めっき材を長手方向に連続送りすることにより連続して前記帯状の被めっき材に前記めっき膜を形成する部分めっき材の製造方法。
【請求項4】
前記複数の開口部に対応する位置に形成される前記めっき膜を構成する金属は同一の金属及び異なる金属のいずれであってもよい請求項3に記載の部分めっき材の製造方法。
【請求項5】
前記複数の開口部に対応する位置に形成される前記めっき膜は2層以上であり、
前記めっき膜の各層を構成する金属は同一の金属及び異なる金属のいずれであってもよい請求項3または請求項4に記載の部分めっき材の製造方法。
【請求項6】
更に前記マスク層の複数の開口部のうち任意の開口部上に第2のマスクシートを貼付する工程と、
前記帯状の被めっき材の少なくとも前記第2のマスクシートを貼付する面にめっき膜を形成する工程と、
前記第2のマスクシートを剥離する工程とを有し、
前記第2のマスクシートを貼付する工程と、前記帯状の被めっき材の少なくとも前記第2のマスクシートを貼付する面にめっき膜を形成する工程と、前記第2のマスクシートを剥離する工程とを各々1回以上行う請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の部分めっき材の製造方法。
【請求項7】
前記帯状の被めっき材の少なくとも前記第2のマスクシートを貼付する面にめっき膜を形成する工程において、前記帯状の被めっき材を長手方向に連続送りすることにより連続して前記帯状の被めっき材に前記めっき膜を形成する請求項6に記載の部分めっき材の製造方法。
【請求項8】
帯状の被めっき材の少なくとも一方の面の任意の位置に請求項1または請求項2に記載された製造方法により製造されたマスクシートのマスク層を貼付する工程と、
前記帯状の被めっき材の少なくとも前記マスク層を貼付する面にめっき膜を形成する工程と、
前記マスク層を剥離する工程とを有する部分めっき方法であって、
前記複数の開口部に対応する位置に形成される前記めっき膜は1層以上であり、
前記めっき膜を形成する工程において、前記帯状の被めっき材を長手方向に連続送りすることにより連続して前記帯状の被めっき材に前記めっき膜を形成する部分めっき方法。
【請求項9】
前記複数の開口部に対応する位置に形成される前記めっき膜を構成する金属は同一の金属及び異なる金属のいずれであってもよい請求項8に記載の部分めっき方法。
【請求項10】
前記複数の開口部に対応する位置に形成される前記めっき膜は2層以上であり、
前記めっき膜の各層を構成する金属は同一の金属及び異なる金属のいずれであってもよい請求項8または請求項9に記載の部分めっき方法。
【請求項11】
更に前記マスク層の複数の開口部のうち任意の開口部上に第2のマスクシートを貼付する工程と、
前記帯状の被めっき材の少なくとも前記第2のマスクシートを貼付する面にめっき膜を形成する工程と、
前記第2のマスクシートを剥離する工程とを有し、
前記第2のマスクシートを貼付する工程と、前記帯状の被めっき材の少なくとも前記第2のマスクシートを貼付する面にめっき膜を形成する工程と、前記第2のマスクシートを剥離する工程とを各々1回以上行う請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の部分めっき方法。
【請求項12】
前記帯状の被めっき材の少なくとも前記第2のマスクシートを貼付する面にめっき膜を形成する工程において、前記帯状の被めっき材を長手方向に連続送りすることにより連続して前記帯状の被めっき材に前記めっき膜を形成する請求項11に記載の部分めっき方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクシート、部分めっき材の製造方法及び部分めっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置のリードフレーム等の電子機器用部品の製造においては、被めっき材の表面の所望の位置にめっき膜を形成する方法として、めっき膜を形成する位置が長手方向にストライプ状となるように帯状の被めっき材の表面にマスクシート(マスキングテープ)を貼付し、これにめっきを施す方法が広く用いられている。この方法により作成された部分めっき材は、パンチング加工等で不要部分が除去され、所望の形状に加工された電子機器用部品となる。
このような所謂ストライプめっき法においては、部分めっき材の表面のうち、パンチング加工等で除去される部分にもめっき膜が形成される。そのため、形成されためっき膜のうち一部は無駄なものとなってしまう。特にめっき膜の形成に高価な貴金属を使用する場合、本来必要な部分以外にもめっき膜を形成することとなるため、コストが嵩む虞がある。
またこの除去された部分をリサイクルする場合であっても、被めっき材とめっき膜とは異なる金属(元素)が使用されることが多く、そのため上記除去部分は「合金」として取り扱われ、市場的価値は大幅に低下する。
【0003】
被めっき材の表面の必要な部分にのみめっき膜を形成するその他の方法としては、例えばブラシめっき法やスパージャーめっき法が挙げられる。しかし、これらの方法は位置合わせが難しく、被めっき材の表面のうち、所望の位置からずれた場所にめっき膜を形成してしまう虞がある。またこれらの方法では、特に形状が微細なめっき膜や、密度の高い(めっき膜同士の間隔が狭い)めっき膜の形成は難しい。
【0004】
上記問題を解決する方法として、例えば長手方向に基準孔を形成した長尺金属条体の表面に、基準孔に対応して所定間隔で形成されたマスキングテ−プ基準孔とめっきすべき形状のパターンめっき孔を有するマスキングテ−プを密着させめっきを行う方法であって、両者の基準孔をそれぞれセンサで検出して両の基準孔が一致するように長尺金属条体とマスキングテ−プとの相対的送り速度を調節する方法(特許文献1参照)や、めっき膜を形成しない部分に無端環状マスクベルトを密着させてマスクする方法(特許文献2及び3参照)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−183390号公報
【特許文献2】特開2008−056958号公報
【特許文献3】特開2011−026654号公報
【0006】
特許文献1に開示の方法は、ドラムめっき方式を前提としており、長尺金属条体とマスキングテープの基準孔を検出するセンサ及び両者の相対的送り速度を調節するセンサを取り付けなければならない。そのため、既に使用者が保有しているめっき装置を利用することができず、経済的ではない。
また特許文献2及び3に開示の方法では、形成するめっき膜の大きさ、形状及び間隔等が異なる度にマスクベルトを変更しなければならず、手間と費用がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記課題を解決するものであり、既に使用者が保有するめっき装置を利用することができ、また位置合わせの精度が高く、容易に大きさ、形状及び間隔等が異なるめっき膜を形成できるマスクシート、部分めっき材の製造方法及び部分めっき方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のマスクシートは、マスク層と当該マスク層上に形成される保護層とを有し、前記マスク層は帯状の被めっき材にめっき膜を形成する位置に対応する複数の開口部を有し、前記複数の開口部は同一形状及び異なる形状のいずれであってもよく、前記保護層は前記帯状の被めっき材に前記マスク層を貼付すると同時若しくはその後に前記マスク層から剥離される。
【0009】
また本発明のマスクシートは、マスク層と当該マスク層上に形成される第1の保護層と前記マスク層の前記保護層が形成される面と反対の面に形成される第2の保護層を有し、前記マスク層は帯状の被めっき材にめっき膜を形成する位置に対応する複数の開口部を有し、前記複数の開口部は同一形状及び異なる形状のいずれであってもよく、前記第2の保護層は前記帯状の被めっき材に前記マスク層を貼付すると同時若しくはその前に前記マスク層から剥離され、前記第1の保護層は前記帯状の被めっき材に前記マスク層を貼付すると同時若しくはその後に前記マスク層から剥離される。
【0010】
本発明の部分めっき材の製造方法は、前記帯状の被めっき材の少なくとも一方の面の任意の位置に前記マスクシートのマスク層を貼付する工程と、前記帯状の被めっき材の少なくとも前記マスク層を貼付する面にめっき膜を形成する工程と、前記マスク層を剥離する工程とを有し、前記マスク層の複数の開口部に対応する位置に形成される前記めっき膜は1層以上であり、前記めっき膜を形成する工程において、前記帯状の被めっき材を長手方向に連続送りすることにより連続して前記帯状の被めっき材に前記めっき膜を形成する。
【0011】
前記複数の開口部に対応する位置に形成される前記めっき膜を構成する金属は、同一の金属及び異なる金属のいずれであってもよい。
【0012】
前記複数の開口部に対応する位置に形成される前記めっき膜は2層以上であり、前記めっき膜の各層を構成する金属は同一の金属及び異なる金属のいずれであってもよい。
【0013】
本発明の部分めっき材の製造方法は、更に前記マスク層の複数の開口部のうち任意の開口部上に第2のマスクシートを貼付する工程と、前記帯状の被めっき材の少なくとも前記第2のマスクシートを貼付する面にめっき膜を形成する工程と、前記第2のマスクシートを剥離する工程とを有し、前記第2のマスクシートを貼付する工程と、前記帯状の被めっき材の少なくとも前記第2のマスクシートを貼付する面にめっき膜を形成する工程と、前記第2のマスクシートを剥離する工程とを各々1回以上行うようにしてもよい。
【0014】
前記帯状の被めっき材の少なくとも前記第2のマスクシートを貼付する面にめっき膜を形成する工程において、前記帯状の被めっき材を長手方向に連続送りすることにより連続して前記帯状の被めっき材に前記めっき膜を形成するようにしてもよい。
【0015】
本発明の部分めっき方法は、帯状の被めっき材の少なくとも一方の面の任意の位置に前記マスク層を貼付する工程と、前記帯状の被めっき材の少なくとも前記マスク層を貼付する面にめっき膜を形成する工程と、前記マスク層を剥離する工程とを有し、前記複数の開口部に対応する位置に形成される前記めっき膜は1層以上であり、前記めっき膜を形成する工程において、前記帯状の被めっき材を長手方向に連続送りすることにより連続して前記帯状の被めっき材に前記めっき膜を形成する。
【0016】
前記複数の開口部に対応する位置に形成される前記めっき膜を構成する金属は同一の金属及び異なる金属のいずれであってもよい。
【0017】
前記複数の開口部に対応する位置に形成される前記めっき膜は2層以上であり、前記めっき膜の各層を構成する金属は同一の金属及び異なる金属のいずれであってもよい。
【0018】
本発明の部分めっき方法は、更に前記マスクシートの複数の開口部のうち任意の開口部上に第2のマスクシートを貼付する工程と、前記帯状の被めっき材の少なくとも前記第2のマスクシートを貼付する面にめっき膜を形成する工程と、前記第2のマスクシートを剥離する工程とを有し、前記第2のマスクシートを貼付する工程と、前記帯状の被めっき材の少なくとも前記第2のマスクシートを貼付する面にめっき膜を形成する工程と、前記第2のマスクシートを剥離する工程とを各々1回以上行うようにしてもよい。
【0019】
前記帯状の被めっき材の少なくとも前記第2のマスクシートを貼付する面にめっき膜を形成する工程において、前記帯状の被めっき材を長手方向に連続送りすることにより連続して前記帯状の被めっき材に前記めっき膜を形成するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のマスクシート、部分めっき材の製造方法及び部分めっき方法は、既に使用者が保有するめっき装置を利用することができ、また位置合わせの精度が高く、容易に大きさ、形状及び間隔等が異なるめっき膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態(第1の実施形態)に係るマスクシートの一部を表す模式図(断面図)である。
図2】本発明の一実施形態(第1の実施形態)に係るマスクシートの一部を表す模式図(平面図)である。
図3】本発明の一実施形態(第1の実施形態)に係るマスクシートの一部を表す模式図(斜視図)である。
図4】本発明の一実施形態(第1の実施形態)の変形例に係るマスクシートの一部を表す模式図(平面図)である。
図5】本発明の他の実施形態(第2の実施形態)に係るマスクシートの一部を表す模式図(断面図)である。
図6】本発明の他の実施形態(第2の実施形態)に係るマスクシートの一部を表す模式図(平面図)である。
図7】本発明の他の実施形態(第2の実施形態)に係るマスクシートの一部を表す模式図(斜視図)である。
図8】本発明の一実施形態(第1の実施形態)に係る部分めっき材の製造方法に関し、帯状の被めっき材にマスク層を貼付した状態の一部を表す模式図(斜視図)である。
図9】本発明の一実施形態(第1の実施形態)に係る部分めっき材の製造方法により製造された部分めっき材の一部を表す模式図(斜視図)である。
図10】本発明の他の実施形態(第2の実施形態)に係る部分めっき材の製造方法に関し、マスク層及び第2のマスクシートを貼付された帯状の被めっき材を表す模式図(平面図)である。
図11】本発明の他の実施形態(第2の実施形態)に係る部分めっき材の製造方造により製造された部分めっき材の一部を表す模式図(平面図)である。
図12】本発明の他の実施形態(第2の実施形態)に係る部分めっき材の製造方法の変形例に関し、マスク層及び第2のマスクシートを貼付された帯状の被めっき材を表す模式図(平面図)である。
図13】本発明の他の実施形態(第2の実施形態)に係る部分めっき材の製造方法の変形例に関し、第1回目のめっき膜の形成後の帯状の被めっき材を表す模式図(平面図)である。
図14】本発明の他の実施形態(第2の実施形態)に係る部分めっき材の製造方法の変形例に関し、第2回目のめっき膜の形成後の帯状の被めっき材を表す模式図(平面図)である。
図15】本発明の他の実施形態(第2の実施形態)に係る部分めっき材の製造方法の変形例により製造された部分めっき材を表す模式図(平面図)である。
図16】本発明の他の実施形態(第3の実施形態)に係る部分めっき材の製造方法に関し、マスク層1010を貼付された帯状の被めっき材を表す模式図(平面図)である。
図17】本発明の他の実施形態(第3の実施形態)に係る部分めっき材の製造方法に関し、めっき膜1210(ニッケル及び金の2)を形成し、マスク層1110を貼付した帯状の被めっき材を表す模式図(平面図)である。
図18】本発明の他の実施形態(第3の実施形態)に係る部分めっき材の製造方法により製造された部分めっき材を表す模式図(平面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のマスクシート、部分めっき材の製造方法及び部分めっき方法の一実施形態について詳細に説明する。なお、本発明が以下の実施形態に限定されるものではないことはもとよりである。
【0023】
1.マスクシート
<第1の実施形態>
本実施形態に係るマスクシートの構成について、図1から図3を用いて説明する。
【0024】
図1に表すように、本実施形態に係るマスクシート100は、マスク層110とマスク層110上に形成される保護層120とを有する。
【0025】
マスク層110は、例えば樹脂等の可撓性を有する材料からなり、フィルム状の樹脂であることが好ましい。当該樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂及びこれらの変性樹脂等が挙げられる。これらは単独でまたは複数を組み合わせて使用することができる。
【0026】
マスク層110の厚みは適宜調整し得るが、例えば30μm以上150μm以下であることが好ましい。より好ましいその厚みは、例えば30μm以上100μm以下であり、40μm以上80μm以下が特に好ましい。
なお、マスク層110の大きさ(幅及び長さ)は、後述する帯状の被めっき材の大きさ(幅及び長さ)に合わせて調整することができる。
【0027】
また図2及び図3に表すように、マスク層110は、帯状の被めっき材にめっき膜を形成する位置に対応する複数の開口部130を有する。
本実施形態においては、マスク層110に形成される開口部130の形状は同一形状(丸状)であるが、形成するめっき膜の形状に合わせてそれぞれを異なる形状にしてもよく、一部を同一形状にしてもよい。
また開口部130は、図4に表すように、各々異なる形状を有する開口部130a,130b,130c,130dを1単位とし、これを繰り返すように形成されてもよい。
このように、開口部130の形状、大きさ、数及び間隔等は用途に応じて適宜変更可能である。
【0028】
なお、本実施形態においてはマスク層110に位置決め孔140を形成したが、位置決め孔の形成は任意であって、本発明には図4のようにマスク層110に位置決め孔を形成していないマスクシートも当然含まれる。
【0029】
保護層120は、例えば樹脂等の可撓性を有する材料からなり、フィルム状の樹脂であることが好ましい。当該樹脂としては、例えばポリエチレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂及びこれらの変性樹脂等が挙げられる。これらは単独でまたは複数を組み合わせて使用することができる。
【0030】
保護層120の厚みは適宜調整し得るが、例えば30μm以上150μm以下であることが好ましい。より好ましいその厚みは、例えば30μm以上100μm以下であり、40μm以上80μm以下が特に好ましい。
なお、保護層120の大きさ(幅及び長さ)は、マスク層110の大きさ(幅及び長さ)に合わせて調整することができる。
【0031】
なお、図2及び図3に表すようにマスクシート100には、保護層120にも開口部を形成したが、保護層120への開口部の形成は任意であって、本発明には保護層120に開口部を形成していないマスクシートも当然含まれる。
【0032】
更に本実施形態においては保護層120にも位置決め孔を形成したが、当該位置決め孔の形成は任意であって、本発明には保護層120に位置決め孔を形成していないマスクシートも当然含まれる。
【0033】
本実施形態のマスクシートは、例えば、以下の方法により作製される。
【0034】
まず、樹脂フィルムからなり、一方の面に粘着剤からなる第1の粘着層を有する保護層120を、マスク層110の片面に、第1の粘着層がマスク層110の表面に接するよう、これを貼り合わせる。
なお、マスク層110の他の面(保護層120と接していない面)には粘着剤からなる第2の粘着層を形成してもよい。後述するように、帯状の被めっき材にマスク層110を貼付する際には、当該帯状の被めっき材の少なくとも一方の面に第2の粘着層が接するようにマスク層110を貼付し得る。
【0035】
マスク層110への開口部130の形成は、例えばマスク層110にフィルムカッター等を用いて開口部130を形成し、その後、開口部130が形成されたマスク層110と保護層120を貼り合わせてもよい。
またマスク層110と保護層120とを貼り合わせた後に、フィルムカッターを用いてマスク層110に開口部130を形成してもよい。この場合、保護層120も貫通するようにマスク層110に開口部130を形成してもよく、またマスク層110にのみ開口部130が形成されるよう、保護層120の形成されていない面側から加工を行ってもよい。
工程や作業の簡素化の面から、マスク層110と保護層120とを貼り合わせた後、保護層120も貫通するようにマスク層110に開口部130を形成する方法が好ましく用いられる。
【0036】
マスクシート100においては、保護層120は帯状の被めっき材にマスク層110を貼付するのと同時若しくはその後にマスク層110から剥離される。このようにすることで、マスクシート100はマスク層110の開口部130の形状を保持しつつ、マスク層110を帯状の被めっき材に貼付することができる。
【0037】
即ち、帯状の被めっき材にマスク層110を貼付する際、マスク層110には特に長手方向への引張応力が発生し易い。そしてマスク層110は開口部130を有しているため延伸し易く、更にこの引張応力によりマスク層110が延伸してしまうと開口部130の形状が変形してしまい、帯状の被めっき材に所望の形状のめっき膜を形成できなくなったり、所望の位置にめっき膜を形成できなくなってしまう虞がある。
【0038】
特にマスク層110を連続して帯状の被めっき材へ貼付する装置を使用する場合、マスク層110には大きな力(張力)がかかり得る。
また帯状の被めっき材へのめっき膜の形成には、当該帯状の被めっき材を長手方向に連続送りすることにより連続してめっき膜を形成する装置(連続めっき装置)を使用することが一般的である。そしてマスク層110は、例えば帯状の被めっき材を連続めっき装置にて長手方向に連続する過程で当該帯状の被めっき材に貼付することもできる。しかしこの場合もマスク層110には大きな力(張力)がかかり得る。
【0039】
しかしながらマスクシート100は、上述の通り、マスク層110を帯状の被めっき材に貼付する際または貼付した後に保護層120をマスク層110から剥離するため、保護層120がマスク層110における引張応力による延伸を抑制することができ、開口部130の変形を抑制することができる。
【0040】
このように、マスクシート100はマスク層110の延伸や開口部130の変形を抑制し得ることから、帯状の被めっき材に形成するめっき膜の形状、位置の精度を向上することができる。
【0041】
なお、マスクシート100は、帯状であることが好ましい。またその短手方向の幅は帯状の被めっき材と同じ、若しくはそれよりも短いことが好ましい。
【0042】
<第2の実施形態>
本実施形態に係るマスクシートの構成について、図5から図7を用いて説明する。
【0043】
図5に表すように、本実施形態に係るマスクシート200は、マスク層210と、マスク層210上に形成される第1の保護層220と、マスク層210の保護層220が形成される面と反対の面に形成される第2の保護層230を有する。
【0044】
マスク層210は、マスク層110と同様の構成とすることができる。
【0045】
マスク層210の厚みは適宜調整し得るが、例えば30μm以上150μm以下であることが好ましい。より好ましいその厚みは、例えば30μm以上100μm以下であり、40μm以上80μm以下が特に好ましい。
なお、マスク層210の大きさ(幅及び長さ)は、後述する帯状の被めっき材の大きさ(幅及び長さ)に合わせて調整することができる。
【0046】
また図6及び図7に表すように、マスク層210は、帯状の被めっき材にめっき膜を形成する位置に対応する複数の開口部240を有する。
本実施形態においては、マスク層210に形成される開口部240の形状は同一形状(丸状)であるが、形成するめっき膜の形状に合わせてそれぞれを異なる形状にしてもよく、一部を同一形状にしてもよい。
また開口部240は、第1の実施形態の変形例における開口部130と同様に、各々異なる形状を有する開口部を1単位とし、これを繰り返すように形成されてもよい。
このように、開口部240の形状、大きさ、数及び間隔等は用途に応じて適宜変更可能である。
【0047】
なお、本実施形態においてはマスク層210に位置決め孔250を形成したが、位置決め孔の形成は任意であって、本発明にはマスク層210に位置決め孔を形成していないマスクシートも当然含まれる。
【0048】
第1の保護層220は、保護層120と同様の構成とすることができる。
【0049】
第1の保護層220の厚みは適宜調整し得るが、例えば30μm以上150μm以下であることが好ましい。より好ましいその厚みは、例えば30μm以上100μm以下であり、40μm以上80μm以下が特に好ましい。
なお、第1の保護層220の大きさ(幅及び長さ)は、マスク層210の大きさ(幅及び長さ)に合わせて調整することができる。
【0050】
なお、図6及び図7にも表すようにマスクシート200は、第1の保護層220にも開口部を形成したが、第1の保護層220への開口部の形成は任意であって、本発明には第1の保護層220に開口部を形成していないマスクシートも当然含まれる。
【0051】
更に本実施形態においては第1の保護層220にも位置決め孔を形成したが、当該位置決め孔の形成は任意であって、本発明には第1の保護層220に位置決め孔を形成していないマスクシートも当然含まれる。
【0052】
第2の保護層230は、保護層120及び第1の保護層210と同様の構成とすることができる。
【0053】
第2の保護層230の厚みは適宜調整し得るが、例えば30μm以上150μm以下であることが好ましい。より好ましいその厚みは、例えば30μm以上100μm以下であり、40μm以上80μm以下が特に好ましい。
なお、第2の保護層230の大きさ(幅及び長さ)は、マスク層210の大きさ(幅及び長さ)に合わせて調整することができる。
【0054】
なお、図6及び図7にも表すようにマスクシート200は、第2の保護層230にも開口部を形成したが、第2の保護層230への開口部の形成は任意であって、本発明には第2の保護層230に開口部を形成していないマスクシートも当然含まれる。
【0055】
更に本実施形態においては第2の保護層230にも位置決め孔を形成したが、当該位置決め孔の形成は任意であって、本発明には第2の保護層230に位置決め孔を形成していないマスクシートも当然含まれる。
【0056】
本実施形態のマスクシートは、例えば、以下の方法により作製される。
【0057】
まず、樹脂フィルムからなり、一方の面に粘着剤からなる第1の粘着層を有する保護層220を、マスク層210の片面に、第1の粘着層がマスク層210の表面に接するよう、これを貼り合わせる。
【0058】
またマスク層210の他の面(第1の保護層220と接していない面)には粘着剤からなる第2の粘着層が形成されており、第2の接着層が第2の保護層230の一方の面に接するように、これにマスク層210を貼り合わせる。
そして帯状の被めっき材にマスク層210を貼付する際には、当該帯状の被めっき材の少なくとも一方の面に第2の粘着層が接するようにマスク層210を貼付し得る。
【0059】
なお、第1の保護層220と第2の保護層230をそれぞれマスク層210い貼り合わせるタイミングは適宜変更でき、両方を同時に、若しくはいずれかを先にマスク層210に貼り合わせることができる。
【0060】
マスク層210への開口部240の形成は、例えばマスク層210にフィルムカッター等を用いて開口部240を形成し、その後、開口部240が形成されたマスク層210と第1の保護層220と第2の保護層230とを貼り合わせてもよい。
またマスク層210と、第1の保護層220及び第2の保護層230の少なくとも一方を貼り合わせた後に、フィルムカッターを用いてマスク層210に開口部240を形成してもよい。この場合、少なくとも第1の保護層220も貫通するようにマスク層210に開口部240を形成してもよい。
工程や作業の簡素化の面から、マスク層210と第1の保護層220及び第2の保護層230とを貼り合わせた後、少なくとも第1の保護層220も貫通するようにマスク層210に開口部240を形成する方法が好ましく用いられる。このようにすることで、開口部240を形成する際のマスク層210の切り損じ(ミスカット)を抑制することができ、精度の高い開口部240を形成することができる。
【0061】
本実施形態のマスクシートにおいては、第2の保護層230は帯状の被めっき材にマスク層210を貼付するのと同時若しくはその前にマスク層210から剥離される。
【0062】
また第1の保護層220は帯状の被めっき材にマスク層210を貼付するのと同時若しくはその後にマスク層210から剥離される。このようにすることで、マスク層210は、開口部240の形状を保持しつつ、マスク層210を帯状の被めっき材に貼付することができる。
【0063】
即ち、帯状の被めっき材にマスク層210を貼付する際、マスク層210には、特に長手方向への引張応力が発生し易い。そしてマスク層210は開口部240を有しているため延伸し易く、更にこの引っ張応力によりマスク層210が延伸してしまうと開口部240の形状が変形してしまい、帯状の被めっき材に所望の形状のめっき膜を形成できなくなったり、所望の位置にめっき膜を形成できなくなってしまう虞がある。
【0064】
特にマスク層210を連続して帯状の被めっき材へ貼付する装置を使用する場合、マスク層210には大きな力(張力)がかかり得る。
また帯状の被めっき材へのめっき膜の形成には、当該帯状の被めっき材を長手方向に連続送りすることにより連続してめっき膜を形成する装置(連続めっき装置)を使用することが一般的である。そしてマスク層210は、例えば帯状の被めっき材を連続めっき装置にて長手方向に連続する過程で当該帯状の被めっき材に貼付することもできる。しかしこの場合もマスク層210には大きな力(張力)がかかり得る。
【0065】
しかしながらマスクシート200は、上述の通り、マスク層210を帯状の被めっき材に貼付する際または貼付した後に第1の保護層220をマスク層210から剥離するため、第1の保護層220がマスク層210における引張応力による延伸を抑制することができ、開口部240の変形を抑制することができる。
【0066】
このように、マスクシート200はマスク層210の延伸や開口部240の変形を抑制し得ることから、帯状の被めっき材に形成するめっき膜の形状、位置の精度を向上することができる。
【0067】
なお、マスクシート200は、帯状であることが好ましい。またその短手方向の幅は帯状の被めっき材と同じ、若しくはそれよりも短いことが好ましい。
【0068】
2.部分めっき材の製造方法
<第1の実施形態>
本実施形態に係る部分めっき材の製造方法で使用する被めっき材は、帯状のものが好ましく用いられる。当該帯状の被めっき材の材質は特に限定はされず、銅、鉄及びステンレス等を適宜使用することができる。
なお、前記帯状の被めっき材には、予め下地めっきを施しておいてもよく、マスクシートのマスク層と位置合わせをするための位置決め孔を形成しておいてもよい。
【0069】
なお本実施形態においては、マスク層を前記帯状の被めっき材の任意の位置に貼付することができる。即ち、マスク層は前記帯状の被めっき材の全体を覆うように貼付してもよく、前記帯状の被めっき材の一部分を覆うように貼付してもよい。
【0070】
本実施形態の部分めっき材の製造方法においては、先ず、前記帯状の被めっき材の少なくとも一方の面にマスク層を貼付する。当該マスク層を貼付する前記帯状の被めっき材の面は任意に選択され、片面であっても両面であってもいずれでもよい。
また、前記帯状の被めっき材と前記マスク層とは、前記帯状の被めっき材に形成された位置決め孔と、前記マスク層に形成された位置決め孔とが合致するように貼付することができる。なお両者に位置決め孔を形成しない場合、例えば前記帯状の被めっき材と前記マスク層の初端と、当該マスク層の初端から最も近い位置にある前記開口部の位置とを、形成するめっき膜が所望の間隔及び位置等となるように位置決めし、これに合わせて前記マスク層を前記帯状の被めっき材の表面に貼付するようにしてもよい。
【0071】
なお、本実施形態においては、前記マスク層の前記帯状の被めっき材への貼付位置調整を画像センサを使用した寸法検査により行うことができる。
このような位置調整は、パイロットを用いて行うことが多いが、パイロットを使用すると工程が複雑であり、またパイロットを引き上げる際にパイロットがパイロット穴にひっかかるというリスクもある。しかし上述のような画像センサを使用した寸法検査を用いた位置調整であれば、複雑な工程を省略でき、部分めっき材の製造に要する時間及びコスト等を低減することができる。
【0072】
以下、前記マスク層を貼付された前記帯状の被めっき材の一実施形態を図8を用いて説明する。
図8に表すように、帯状の被めっき材300の上面にマスク層110が貼付されている。マスク層110は複数の開口部130を有しているため、帯状の被めっき材300のうち、開口部130に対応する部分にのみ、めっき膜を形成することができる。
なお、本実施形態においては、マスク層110に形成される開口部130の形状は同一形状(丸状)であるが、形成するめっき膜の形状に合わせてそれぞれを異なる形状にしてもよく、一部を同一形状にしてもよい。
【0073】
そして、マスク層110が貼付された帯状の被めっき材300にめっき膜を形成する。当該めっき膜の形成に使用する装置としては、前記帯状の被めっき材を長手方向に連続送りすることにより連続してめっき膜を形成し得るものであればいずれも好適に使用することができる。まためっき方法としても、めっき層に浸漬する方法、スプレーを噴射する方法、無電解めっきを施す方法のいずれも好適に用いることができる。
このように、本実施形態の部分めっき材の製造方法は、めっき膜の形成方法を選ぶことなく、被めっき材の必要な位置にめっき膜を形成することができるため、既に使用者が保有するめっき装置を利用することができ、非常に経済的である。
【0074】
またマスク層110の開口部130の大きさ、形状及び間隔等を変更すれば、形成するめっき膜の大きさ、形状及び間隔等を容易に変更することができる。即ち、例えば図4に開示されるように異なる形状の開口部130a,130b,130c,130dを有するマスク層110を有するマスクシート100のように、それぞれ異なった形状、大きさ及び間隔の各開口部を有するマスク層110を有するマスクシート100を使用することにより、この各開口部に対応するそれぞれ異なった形状、大きさ及び間隔のめっき膜を部分的に前記被めっき材の表面に形成することができる。
このように、本実施形態の部分めっき材の製造方法は、マスク層の開口部の形状等を変更するだけで、めっき膜の形状等を適宜変更でき、また例えばマスク層に形成される開口部の形状等を途中から変更する、その一部のみを変更することが容易に行えるため、試作品や小ロットの部品生産に好適に使用することができる。
【0075】
また本実施形態においては、前記複数の開口部に対応する位置に形成される前記めっき膜を1層以上とすることができる。
前記めっき膜を複数層(多層めっき)とする方法としては、例えばマスク層110を貼付した帯状の被めっき材300へのめっき膜の形成工程を複数回行う方法が挙げられる。この際、各層を形成するめっき膜を構成する金属は、同じであってもよく、また異なるものであってもよい。即ち、例えば第1層目のめっき膜をニッケルを用いて形成し、第2層目のめっき膜を金を用いて形成し得る。なお、第1層目のめっき膜と第2層目のめっき膜は、連続して形成することができる。
このように、本実施形態の部分めっき材の製造方法は、複数層のめっき膜を容易に且つ連続的に精度高く形成することができる。
【0076】
更には上述の通り、本実施形態においては、マスク層110を帯状の被めっき材300の任意の位置に貼付することができる。そのため、例えば帯状の被めっき材300の一部にマスク層110を貼付し、それ以外の部分に開口部を有さないマスクシートを貼付してニッケルからなるめっき膜を形成し、その後、前記開口部を有さないマスクシートを剥離し、その部分に別の開口部を有するマスク層(図示せず)を貼付して更に銀からなるめっき膜を形成する工程を行うことができる。このようにして製造された部分めっき材は、一部のめっき膜を第1層目がニッケルめっき膜で第2層目が銀めっき膜の多層めっき膜とし、他の一部のめっき層を銀めっき膜の単層めっき膜とすることができる。
このように、帯状の被めっき材300の表面に貼付するマスク層110は、帯状の被めっき材300の全てを覆う必要はなく、また連続的に貼付されていなくともよく、更には複数のマスク層(を有するマスクシート)を使用することもできる。
【0077】
そして所望のめっき膜を形成し、帯状の被めっき材300からマスク層110(または他のマスクシート、他のマスク層)を剥離する。
【0078】
なお、本実施形態においては、マスク層110に位置決め孔140を形成したが、これを形成していないマスク層110を用いてもよい。
【0079】
図8に表したマスク層110を貼付された帯状の被めっき材300に前記めっき膜を形成することにより製造された部分めっき材400を図9を用いて説明する。
【0080】
図9に表すように、部分めっき材400の上面には、マスク層110の複数の開口部130に対応する部分にのみ、めっき膜410が形成されている。
なお、このめっき膜410は、それぞれ同一の金属から形成されてもよく、異なる金属から形成されていてもよい。
また、めっき膜410は、それぞれ1層であっても複数層であってもよく、更にはめっき膜410のうち、複数層であるものの各層を構成する金属は同一であってもよく、異なる金属であってもよい。
【0081】
本実施形態においては、帯状の被めっき材300(部分めっき材400)の片面にめっき膜410を形成したが、その両面に同様のめっき膜を形成してもよいことはもちろんである。
【0082】
また上述と同様の手順にて、本実施形態に係る部分めっき方法を行うことができる。
【0083】
<第2の実施形態>
本実施形態に係る部分めっき材の製造方法で使用する帯状の被めっき材及びマスク層は、第1の実施形態に使用するものと同様のものであっても、異なるものであっても、いずれをも使用することができる。
【0084】
本実施形態の部分めっき材の製造方法においては、先ず、前記帯状の被めっき材の少なくとも一方の面にマスク層を貼付する。当該マスク層を貼付する前記帯状の被めっき材の面は任意に選択され、片面であっても両面であってもいずれでもよい。
なお、前記帯状の被めっき材とマスク層の貼付及び位置決め等は、第1の実施形態と同様の方法にて行うことができる。
【0085】
そして、本実施形態においては、前記マスク層の複数の開口部のうち、任意の開口部上に第2のマスクシートを貼付する。
前記第2のマスクシートは、帯状のものが好ましく用いられる。当該第2のマスクシートは、マスク層110,210、保護層120、第1の保護層220及び第2の保護層230と同様の構成とすることができる。
また前記第2のマスクシートは粘着剤からなる粘着層を有している。なお、前記第2のマスクシートの厚みは適宜変更し得る。
更には前記粘着層を形成する材質も特に限定されず、前記第2のマスクシートと前記マスク層とを密着でき、且つめっき膜を形成した後は剥離し得るものであれば適宜使用することができる。
前記第2のマスクシートの短手方向の幅は、前記マスク層の任意の開口部を覆うことができればよく、適宜調整し得る。
【0086】
また前記第2のマスクシートは、前記マスク層の複数の開口部のうち、任意の開口部上を覆うことができれば、前記開口部を有していても有していなくてもいずれでもよい。更には、前記マスク層の任意の開口部は、任意の位置を覆われていればよく、全体が覆われていなくともよい。
なお、前記第2のマスクシートに開口部を形成する場合、前記帯状の被めっき材、前記マスク層と位置合わせをするための位置決め孔を形成しておいてもよい。
【0087】
前記マスク層及び前記第2のマスクシートを貼付された前記帯状の被めっき材の一実施形態を図10を用いて説明する。
図10に表すように、帯状の被めっき材300の上面にマスク層110が貼付されている。マスク層110は複数の開口部130a,130b,130c,130dを有している。そしてマスク層110の開口部130a,130d上に第2のマスクシート500が貼付されている。
【0088】
そして、マスク層110及び第2のマスクシート500が貼付された帯状の被めっき材300にめっき膜を形成する。当該めっき膜の形成に使用する装置やめっき方法は、第1の実施形態と同様の装置及び方法を使用することができる。
【0089】
次に第2のマスクシート500を剥離し、第2のマスクシート500を剥離した帯状の被めっき材300に再度めっき膜を形成する。このめっき膜の形成には、上述のめっき装置及びめっき方法を使用することができる。なお、当該めっき膜の形成においては、先に形成されためっき膜を構成する金属とは別の金属を用いることが好ましい。即ち、例えば第1回目のめっき膜の形成においてはニッケルを使用し、第2回目のめっき膜の形成においては金を使用することができる。
【0090】
次いで、マスク層110を剥離する。
【0091】
このようにして製造された部分めっき材600は、図11に表すように、例えば一部のめっき膜を第1層目がニッケルめっき膜で第2層目が金めっき膜の多層めっき膜とし、他の一部のめっき層を金めっき膜の単層めっき膜とすることができる。
即ち、図11のめっき膜610a,610dを第1層目がニッケルめっき膜で第2層目が金めっき膜の多層めっき膜とし、めっき膜610b,610cを金めっき膜の単層めっき膜とすることができる。
【0092】
なお第2回目のめっき膜形成工程後、マスク層110を剥離する前に更に別の金属を用いて第3回目のめっき膜形成工程を行ってもよい。
【0093】
また本実施形態においては、第2のマスクシート500を貼付する工程と、帯状の被めっき材300の第2のマスクシート500を貼付する面にめっき膜を形成する工程と、第2のマスクシート500を剥離する工程とを各々複数回行うようにしてもよい。
即ち、例えばマスク層110の複数の開口部130a,130b,130c,130dのうち、任意の開口部上に第2のマスクシート500を貼付し、マスク層110及び第2のマスクシート500が貼付された帯状の被めっき材300にめっき膜を形成し、第2のマスクシート500を剥離した後、更に別の第2のマスクシート(図示せず)をマスク層110の複数の開口部のうち、任意の開口部上に貼付する。そして帯状の被めっき材300に再度めっき膜を形成する。
なお、その後別の第2のマスクシートを剥離し、更に帯状の被めっき材300にめっき膜を形成するようにしてもよい。
このように、本実施形態の部分めっき材の製造方法は、第2のマスクシート500及び他の第2のマスクシートを使用することにより、容易に且つ従来のめっき装置及びめっき方法を用いて、帯状の被めっき材300の任意の位置に、任意の金属で、且つ任意の層数のめっき膜を形成することができる。
【0094】
また上述の通り、第2のマスクシート500にも開口部を形成することができるため、例えば第1層目のめっき膜上にこれよりもやや小さい形状若しくは異なる形状の第2層目のめっき膜を形成することも可能である。
この場合、マスク層110及び第2のマスクシート500の開口部の形状等を変更するだけで、めっき膜の形状等を適宜変更でき、また例えばマスク層110及び/または第2のマスクシート500に形成される開口部の形状等を途中から変更する、その一部のみを変更することが容易に行えるため、試作品や小ロットの部品生産に好適に使用することができる。
【0095】
本実施形態においては、帯状の被めっき材300(部分めっき材600)の片面にめっき膜610a,610b,610c,610dを形成したが、その両面に同様のめっき膜を形成してもよいことはもちろんである。
【0096】
また上述と同様の手順にて、本実施形態に係る部分めっき方法を行うことができる。
【0097】
<第2の実施形態の変形例>
第2の実施形態に係る部分めっき材の製造方法の変形例を図12から図15を用いて説明する。本変形例では、複数の第2のマスクシートをマスク層の複数の開口部のうち、任意の開口部上に貼付することができる。
【0098】
まず、図12に表すように、複数の開口部730a,730b,730c,730d,730eを有しているマスク層710を帯状の被めっき材300の上面に貼付し、マスク層710の開口部730a,730d上に第2のマスクシート500を、且つ、マスク層710の開口部730b,730e上に第2のマスクシート800を貼付する。
なお、マスク層710は、マスク層110,210と同様の構成とすることができる。また第2のマスクシート800は、第2のマスクシート500と同様の構成とすることができる。
また、本実施形態においては、マスク層710に位置決め孔を形成していないが、適宜位置決め孔を形成しているマスク層710を用いてもよい。第2のマスクシート500,800も同様である。
【0099】
そして、帯状の被めっき材300上にマスク層710が、またマスク層710上に第2のマスクシート500,800が貼付された状態で、帯状の被めっき材300に例えば銅を用いてめっき膜を形成する。
この時点で、図13に表すように、帯状の被めっき材300のうち、開口部730cに対応する位置には、めっき膜910c(銅の単層)が形成されることとなる。なお、第2のマスクシート500,800に付着しているめっきについては図示していない。
【0100】
次に第2のマスクシート500を剥離し、第2のマスクシート500を剥離した帯状の被めっき材300に例えばニッケルを用いてめっき膜を形成する。
この時点で、図14に表すように、帯状の被めっき材300のうち開口部730cに対応する位置に形成されためっき膜910cは銅とニッケルの2層のめっき膜となり、また開口部730a,730dに対応する位置にはめっき膜910a,910d(ニッケルの単層)が形成されることとなる。なお、第2のマスクシート800に付着しているめっきについては図示していない。
【0101】
そして第2のマスクシート800を剥離し、第2のマスクシート800を剥離した帯状の被めっき材300に例えば金を用いてめっき膜を形成する。
【0102】
次いで、マスク層710を剥離する。
【0103】
本変形例にて製造された部分めっき材900においては、図15に表すように、めっき膜910cは銅、ニッケル及び金の3層となり、めっき膜910a、910dはニッケル及び金の2層となり、更に開口部730b,730eに対応する位置にはめっき膜910b,910e(金の単層)が形成されることとなる。
【0104】
このように、本変形例では、第1回目、第2回目及び第3回目のめっき膜形成工程において、それぞれ異なる金属を用いたが、3回とも同じ金属、または少なくともいずれかを違う金属とすることもできる。
このように、本変形例においては、容易に部分めっき材のめっき膜の構成金属を変更することができる。
【0105】
また上述と同様の手順にて、本変形例に係る部分めっき方法を行うことができる。
【0106】
<第3の実施形態>
本実施形態に係る部分めっき材の製造方法で使用する帯状の被めっき材及びマスク層は、第1の実施形態及び第2の実施形態に使用するものと同様のものであっても、異なるものであっても、いずれをも使用することができる。
【0107】
本実施形態に係る部分めっき材の製造方法を図16から図18を用いて説明する。
【0108】
まず図16に表すように、帯状の被めっき材300の少なくとも一方の面に複数の開口部1030を有するマスク層1010を貼付する。マスク層1010を貼付する帯状の被めっき材300の面は任意に選択され、片面であっても両面であってもいずれでもよい。
なお、帯状の被めっき材300とマスク層1010の貼付及び位置決め等は、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の方法にて行うことができる。本実施形態においては、帯状の被めっき材300の面全体を覆うように貼付される。
またマスク層1010は、マスク層110,210,710と同様の構成とすることができる。
なお本実施形態においては、マスク層1010に位置決め孔を形成していないが、適宜位置決め孔を形成しているマスク層1010を用いてもよい。
【0109】
そして、マスク層1010が貼付された帯状の被めっき材300にめっき膜を形成する。当該めっき膜の形成に使用する装置やめっき方法は、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の装置及び方法を使用することができる。本実施形態においては、例えばニッケルを用いてめっき膜を形成する。
また更に、帯状の被めっき材300にめっき膜を形成する。本実施形態においては、例えば金を用いてめっき膜を形成する。
【0110】
そしてマスク層1010を剥離する。
【0111】
この時点で、図17に表すように、帯状の被めっき材300のうち、開口部1030に対応する位置には、めっき膜1210(ニッケルと金めっきの2層)が形成されることとなる。
【0112】
次いで、帯状の被めっき材300に開口部1130を有するマスク層1110を貼付する。
なお、帯状の被めっき材300とマスク層1110の貼付及び位置決め等は、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の方法にて行うことができる。本実施形態においては、帯状の被めっき材300の面全体を覆うように貼付される。
またマスク層1110は、マスク層110,210,710,1010と同様の構成とすることができる。
なお本実施形態においては、マスク層1110に位置決め孔を形成していないが、適宜位置決め孔を形成しているマスク層1110を用いてもよい。
【0113】
そして、マスク層1110を貼付した帯状の被めっき材300に再度めっき膜を形成する。このめっき膜の形成には、上述のめっき装置及びめっき方法を使用することができる。本実施形態においては、例えば銅を用いてめっき膜を形成する。
また更に、帯状の被めっき材300にめっき膜を形成する。本実施形態においては、例えば錫を用いてめっき膜を形成する。
【0114】
次いでマスク層1110を剥離する。
【0115】
本実施形態にて製造された部分めっき材1200においては、図18に表すように、めっき膜1210はニッケル及び金の2層であり、開口部1130に対応する位置にはめっき膜1220(銅と錫の2層)が形成されることとなる。
【0116】
このように、本実施形態の部分めっき材の製造方法は、マスク層1010,1110を使用することにより、容易に且つ従来のめっき装置及びめっき方法を用いて、帯状の被めっき材300の任意の位置に、任意の金属で、且つ任意の層数のめっき膜を形成することができる。
【0117】
また上述の通り、第2のマスクシート500にも開口部を形成することができるため、例えば第1層目のめっき膜上にこれよりもやや小さい形状若しくは異なる形状の第2層目のめっき膜を形成することも可能である。
この場合、マスク層1010,1110の開口部の形状等を変更するだけで、めっき膜の形状等を適宜変更でき、また例えばマスク層1010,1110に形成される開口部の形状等を途中から変更する、その一部のみを変更することが容易に行えるため、試作品や小ロットの部品生産に好適に使用することができる。
【0118】
本実施形態においては、帯状の被めっき材300(部分めっき材1200)の片面にめっき膜1210,1220を形成したが、その両面に同様のめっき膜を形成してもよいことはもちろんである。
【0119】
また上述と同様の手順にて、本実施形態に係る部分めっき方法を行うことができる。
【符号の説明】
【0120】
マスクシート … 100,200
マスク層 … 110,210,710,1010,1110
保護層 … 120
第1の保護層 … 220
第2の保護層 … 230
開口部 … 130,130a,130b,130c,130d,240,730a,730b,730c,730d,730e,1030,1130
位置決め孔 … 140,250
帯状の被めっき材 … 300
部分めっき材 … 400,600,900,1200
めっき膜 … 410,610a,610b,610c,610d,910a,910b,910c,910d,910e,1210,1220
第2のマスクシート … 500,800

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