【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例、及び、BX菌糸塊から抽出したBX抽出組成物の製造例を参照しながら更に具体的に説明する。なお、製造例1〜4でバシディオマイセテスXの培養例を、製造例5,6で乾燥例を、製造例7〜11で抽出例を示す。
【0029】
(製造例1)
<菌糸塊からの分離>
(1)培地の調製
下記表1に示す配合で、PSA培地及びPDA培地を調製し、試験管又は三角フラスコに分注した後、シリコセン(又は綿栓)を施しオートクレーブにより121℃20分高圧蒸気滅菌した。その後、試験管の場合は、滅菌後熱いうちに傾斜させてスラント(斜面)培地とし、三角フラスコの場合は、そのまま静置してプレート(平面)培地とした。
【0030】
【表1】
【0031】
(2)菌糸塊からの分離
大きめのBX菌糸塊を手で割り、火炎滅菌したメスを冷却させてからバシディオマイセテスX断面より切片を切断し、火炎滅菌冷却後のピンセットで、(1)のPSA培地及びPDA培地スラントにバシディオマイセテスX切片を植菌した。なお操作は、無菌箱又はクリーンベンチ内の、無菌処理済み条件下で行った。
【0032】
(3)培養
24℃条件下でインキュベーターにおいて培養させたところ、24時間〜48時間後には発菌した。発菌後、24℃条件下で培養を継続すると、14日間でAgar培地上に菌糸が生育した。
【0033】
(製造例2)
<菌糸塊生産のためのおがくず培地による培養>
(1)種菌の培養
おがくず1L、脱脂ぬか15g、ふすま15g及びサンパール(菌糸活性剤・日本製紙製)5gに、水を加えて十分に攪拌し、培地を強く握って水がにじむ程度(湿式含水率70%程度)として、おがくず培地を調製した。この培地を三角フラスコに入れ、シリコセンを施した後、オートクレーブにより121℃40分高圧蒸気滅菌した。滅菌後24時間後に、製造例1のスラントにて培養中のバシディオマイセテスX菌糸を無菌箱内にて無菌操作によっておがくず培地に植菌した。なお、植菌は滅菌三角刀でスラントの一部を切除するようにし、菌糸にダメージを与えないよう行った。また、植菌の密度は、おがくず培地表面積の20%〜30%とした。24℃条件下で培養したところ3日後(遅くとも5日後)に発菌し、30日後には三角フラスコおがくず培地に菌糸が充満した。
【0034】
(2)菌糸塊の発生
(1)と同様にしたおがくず培地を調製し、この培地をポリプロピレン製ビンに入れ、フタをして、オートクレーブにより121℃40分高圧蒸気滅菌した。滅菌後24時間後、無菌処理済みの無菌箱内において無菌操作により、(1)で培養した種菌をポリプロピレン製ビンのおがくず培地に植菌した。なお、植菌の密度は、おがくず培地表面積がほぼ覆われる程度とした。24℃条件下で培養したところ、48時間後に発菌し、60日後にはポリプロピレン製ビン内のおがくず培地全体に菌糸が充満した。更に40〜50日経過すると、ポリプロピレン製ビン内壁に菌糸が展開し、菌糸束を形成、更に培養を継続すると菌糸塊を形成した。
【0035】
(製造例3)
<菌糸塊生産のための液体培地による培養>
1cm角としたジャガイモ200gを精製水を用いて煮沸後20分継続、冷却後、固液分離したジャガイモ浸出液、スクロース20gに蒸留水を全量1Lとなるように加え液体培地を調製した。この液体培地を試験管に各5mlに分注し、シリコセンを施し滅菌(121℃20分高圧蒸気滅菌或いは100℃8時間常圧蒸気滅菌)した。その後、無菌処理済の無菌箱内において無菌操作により、製造例1のスラントにおいて培養中のバシディオマイセテスX切片の下端が接するよう植菌した。24℃条件下で培養したところ、48時間で発菌し、更に培養を継続すると、液体培地に接するように菌糸塊を形成した。
【0036】
(製造例4)
<菌糸塊生産のためのAgar培地による培養>
1cm角としたジャガイモ200gを精製水を用いて煮沸後20分継続、冷却後、固液分離したジャガイモ浸出液、スクロース20g及びAgar1g(0.1%)に蒸留水を全量1Lとなるように加えて、Agar培地を調整した。なお、通常Agar培地は1.5〜2.0(培地1Lに対し、15g〜20g)のAgar添加するが、培養後の菌糸塊と、Agar培地の分離を容易にするため、また液体培地ではバシディオマイセテスXの切片が沈降しやすいため物理的強度を維持する目的で、0.1%添加する事とした。この0.1%Agar培地を試験管に各5mlに分注し、シリコセンを施した後オートクレーブにより121℃20分間高圧蒸気滅菌した。その後、無菌処理済みの無菌箱内において、製造例1のスラントにおいて培養中のBX菌糸塊から切片を切除し、0.1%Agar培地に無菌操作により植菌した。24℃条件下で培養すると、48時間で発菌し更に培養を継続することにより、菌糸塊を形成した。
【0037】
(製造例5)
<バシディオマイセテスX乾燥粉末の製造>
菌糸の細胞壁に損傷を与え、細胞内容物が浸出することを容易にするため、製造例2で得られた生鮮BX菌糸塊を冷凍・凍結させ、凍結しているBX菌糸塊を常温解凍し、ミキサーを用いて破砕したものを乾燥して粉末に加工し、バシディオマイセテスX乾燥粉末(以下、「BX乾燥粉末」という。)とした。
【0038】
(製造例6)
<バシディオマイセテスX抽出組成物乾燥粉末の水抽出による製造>
製造例5で得られたBX乾燥粉末(乾燥重量20g)を計りとり、水100mlを加えた後、適宜撹拌しながら4〜6時間静置培養した。その後、吸引濾過により固形物(以下、「BX抽出残渣」という。)を除いた後に密封、冷蔵庫に保存したものをBX抽出組成物(固形分:8.0%)とした。さらにBX抽出組成物に対して、BX抽出組成物固形分量(kg)と等量のデキストリンを混合した(固形分:14.7%)。最後に−40℃で予備凍結の後、フリーズドライ(以下、「FD」という。)乾燥に供し、バシディオマイセテスX抽出組成物乾燥粉末(以下、「BX抽出物乾燥粉末」という。)とした。
【0039】
(製造例7)
<濃縮BX抽出組成物の煮出しによる製造>
菌糸の細胞壁に損傷を与え、細胞内容物が浸出することを容易にするため、生鮮BX菌糸塊を冷凍・凍結させ、凍結しているBX菌糸塊を常温解凍し、ミキサーを用いて破砕した。破砕BX菌糸塊50gをガラス瓶に入れ、水250mlを加えて蓋を締め、鍋の底にタオルを敷いた上に水を注ぎ、破砕菌糸塊の入ったガラス瓶を置いて加熱・沸騰させ、沸騰してから90分間加熱を継続した。冷却後固液分離し、BX抽出組成物とBX抽出残渣を得た。なお、抽出液のpHは6.3〜6.5であった。
【0040】
得られたBX抽出組成物をビーカーに移し、加熱・蒸発させて濃縮した。BX抽出組成物は淡いベージュ色から褐色を呈するようになり、盛んに発泡をはじめるようになったが、更に蒸発・濃縮を継続した。pH4.9、密度1.25g/cm
3のタール状となった時点で、濃縮を終了させた。この濃縮BX抽出組成物は、醤油様の芳香を発した。なお、この時点における、BX菌糸塊からの濃縮BX抽出組成物の収率は12%であった。BX抽出組成物は冷却するに従い、粘性が非常に高まるため、濃縮終了と同時に保存容器に移し、そのまま冷却後、冷凍・凍結保存した。
【0041】
(製造例8)
<BX抽出組成物の煮出しによる製造>
菌糸の細胞壁に損傷を与え、細胞内容物が浸出することを容易にするため、生鮮BX菌糸塊を冷凍・凍結させた後、凍結しているBX菌糸塊を常温解凍した。
【0042】
この解凍後のBX菌糸塊(湿重量20g)を計りとり、0.5cm角に刻んだものをビーカーに入れ、水100mlを加えてから、90℃で弱く煮沸し、溶液が最初の量の1/2になるまで煮詰めた。その後水を加えて元の用量に戻し、ガーゼでろ過して固形物を除いた後に密封、冷蔵庫に保存したものを製造例8のBX抽出組成物とした。
【0043】
(製造例9)
<BX抽出組成物の高圧処理による製造>
製造例7と同様に処理したBX菌糸塊(湿重量20g)をビニール袋にとり、水100mlを加えた後、減圧脱気して封入した。これを超高圧装置(神戸製鋼製700MPa処理可能タイプ)にセットして、静水圧400MPaで10分間処理し、ガーゼろ過し、冷蔵保存したものを製造例9のBX抽出組成物とした。
【0044】
(製造例10)
<BX抽出組成物の高圧処理による製造>
静水圧600MPaで処理した以外は、製造例9と同様にして製造した組成物を製造例10のBX抽出組成物とした。
【0045】
(製造例11)
<BX抽出組成物の高圧処理による製造>
水100mlの代わりに0.1%KCl水溶液100mlを用いた以外は、製造例8と同様にして製造した組成物を製造例11のBX抽出組成物とした。
【0046】
(実施例1)
菌糸の細胞壁に損傷を与え、細胞内容物が浸出することを容易にするため、製造例2で得られた生鮮BX菌糸塊を冷凍・凍結させ、凍結しているBX菌糸塊を常温解凍し、ミキサーを用いて破砕したものを乾燥して粉末に加工し、バシディオマイセテスX乾燥粉末(以下、「BX乾燥粉末」という。)とした。
【0047】
(実施例2)
製造例5で得られたBX乾燥粉末(乾燥重量4kg)を計りとり、水20Lを加えた後、適宜撹拌しながら4〜6時間静置培養した。その後、吸引濾過により固形物(以下、「BX抽出残渣」という。)を除き、BX抽出組成物17.6kg(固形分:8.0%)を得た。さらにBX抽出組成物に対して、BX抽出組成物固形分量(kg)と等量のデキストリン1.4kgを混合した(固形分:14.7%)。最後に−40℃で予備凍結の後、FD乾燥に供し、バシディオマイセテスX抽出組成物乾燥粉末(以下、「BX抽出物乾燥粉末」という。)とした(粉末出来高例2.51kg)。
【0048】
(実施例3)
製造例6で得られたBX抽出残渣をFD乾燥して粉末に加工し、バシディオマイセテスX抽出残渣乾燥粉末(以下、「BX抽出残渣乾燥粉末」という。)とした。
【0049】
(試験例1)
試験例1では、Wistar系雄性ラット4週齢を用いた。2週間の予備飼育後、下記に示す各試験群に分け、下記表2に示す各飼料を経口摂取させて100日間飼育を行い、各個体の摂餌量及び体重の変化を測定し、その測定結果を
図1及び
図2に示した。即ち、
図1は、平均摂餌量の推移と累積摂餌量の測定結果を示しており、(a)は、1日あたりの平均摂餌量の推移の測定結果を示しており、(b)は、試験期間中における累積摂餌量の測定結果を示している。
図1に示した通り、BX群の試験期間中における摂餌量の推移及び累積摂餌量は、HFHS群と比較してほぼ同等であった。
図2は、試験期間中における平均体重の推移と試験終了時における平均体重の測定結果を示しており、(a)は、各群の試験期間中における平均体重の推移を示しており、(b)は、試験終了時における各群の平均体重の測定結果を示している。
図2では、0.05水準でHFHS群に対してBX群が有意ならば「*」、同様に0.01水準に対しては「**」と表示した。
図2に示した通り、BX群の体重は、HFHS群と比較して有意に減少した。HFHS飼料とBX飼料は同一のカロリーであることから、BX乾燥粉末の摂取により体重増加が抑制されることが明らかになった。
【0050】
試験群(各群 n=9〜10)
Cont.(コントロール)群:AIN−93M飼料
HFHS群:高脂肪高ショ糖飼料
BX(バシディオマイセテスX)群:5%BX乾燥粉末(実施例1)+高脂肪高ショ糖飼料
【0051】
【表2】
【0052】
(試験例2)
試験例2では、試験例1で各個体の摂餌量及び体重の変化を測定した後に、一晩絶食をかけて空腹時の採血を行い生化学検査に供した(各群 n=8)。これらの結果を
図3及び
図4に示した。
図3は空腹時の血漿成分の測定結果を示しており、(a)は中性脂肪濃度を示しており、(b)は総コレステロール濃度を示しており、(c)はHDL−コレステロール濃度を示しており、(d)はLDL−コレステロール濃度を示している。
図3では、0.05水準でCont.群又はHFHS群に対してBX群が有意ならば「*」と表示した。
図3に示すように、BX群では血漿中の中性脂肪濃度がHFHS群よりも低い傾向がみられ、総コレステロール及びLDL−コレステロール濃度ではHFHS群と比較して有意に低下した。その一方で、HDL−コレステロール濃度には、両者に差が見られなかった。つまり、BX群では、高脂肪高ショ糖飼料によるLDL−コレステロールの増加が、実施例1で得られたBX乾燥粉末により、選択的に抑制されたと考えられる。
【0053】
AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)及びLDH(乳酸脱水素酵素)の何れも肝臓組織中に存在し、細胞が傷害されると細胞外へ漏出するため(逸脱酵素)、血漿中のこれらの成分の濃度は肝機能の状態を示す重要な指標となる。
図4は、肝機能に関わる血液生化学検査の結果を示しており、(a)は、血漿中AST濃度の測定結果を示しており、(b)は、血漿中ALT濃度の測定結果を示しており、(c)は血漿中LDH濃度の測定結果を示している。
図4では、0.05水準でHFHS群に対してCont.群又はBX群が有意ならば「*」、同様に0.01水準に対しては「**」と表示した。
図4に示すように、BX群の肝機能パラメータは、HFHS群と比較して有意に減少していた。
【0054】
(試験例3)
試験例3では、試験例2で各試験を行い各個体の体重が回復したことを確認した後に解剖して、内臓脂肪(腸間膜脂肪、精巣上体周囲脂肪、腎臓周囲脂肪)の平均重量の測定を行い(各群 n=6〜9)、結果を
図5に示した。
図5は、内臓脂肪平均重量をそれぞれ測定した結果を示しており、(a)は、腸間膜脂肪の測定結果を示しており、(b)は、精巣上体周囲脂肪の測定結果を示しており、(c)は、腎臓周囲脂肪の測定結果を示しており、(d)は、内臓脂肪として(a)〜(c)の脂肪の合算値の測定結果を示している。
図5では、0.05水準でCont.群に対してBX群が有意ならば、或いは、HFHS群に対してCont.群が有意ならば「*」、同様に0.01水準でHFHS群に対してCont.群又はBX群が有意ならば「**」と表示した。
図5に示すように、BX群の何れの内臓脂肪についてもHFHS群と比較して重量が有意に減少していた。
【0055】
(試験例4)
試験例4では、Wistar系雄性ラット4週齢を用いた。1週間の予備飼育後、下記に示す各試験群に分け、下記表3に示す各飼料を経口摂取させて15週間飼育を行い、各個体の摂餌量及び体重の変化を測定し、その測定結果を
図6〜
図8に示した。即ち、
図6は、累積摂餌量と累積摂取カロリーの測定結果を示しており、(a)は、摂餌試験期間中の累積摂取量の測定結果を示しており、(b)は、摂餌試験期間中の累積摂取カロリーの測定結果を示している。
図7は、体重の推移の測定結果を示しており、(a)は、BX群の体重の推移の測定結果を示しており、(b)は、BX−Ex.群の体重の推移の測定結果を示しており、(c)は、BX−Res.群の体重の推移の測定結果を示している。
図7では、0.05水準でHFHS群に対してBX群又はBX−Ex.群が有意ならば「*」、同様に0.01水準に対しては「**」と表示した。
図8は、摂餌試験終了時における各群の平均体重の測定結果を示している。
図8では、0.05水準でHFHS群に対してBX群又はBX−Ex.群が有意ならば「*」と表示した。
図6(a)に示した通り、累積摂取量ではCont.群が多いが、
図6(b)に示した通り、カロリーに換算するとHFHS群以外はほぼ横ばいであった。また、
図7に示した通り、BX群、BX−Ex.群及びBX−Res.群はHFHS群と比較して体重増加を抑制する傾向がみられ、特にBX群とBX−Ex.群では有意に体重増加を抑制した。また、試験終了時の体重を比較すると、
図8に示した通り、体重増加の抑制効果は、BX−Res.群がやや弱い傾向にあることがわかった。
【0056】
試験群(各群 n=8〜10)
Cont.(コントロール)群:標準飼料(改変AIN−93M)
HFHS群:高脂肪高ショ糖飼料
BX(バシディオマイセテスX)群:5%BX乾燥粉末(実施例1)+高脂肪高ショ糖飼料
BX−Ex.群:5%BX抽出物乾燥粉末(実施例2)+高脂肪高ショ糖飼料
BX−Res.群:5%BX抽出残渣乾燥粉末(実施例3)+高脂肪高ショ糖飼料
【0057】
【表3】
【0058】
(試験例5)
試験例5では、試験例4で各個体の摂餌量及び体重の変化を測定した後に、各個体の糞排泄量及び糞中に含まれる脂質の分析を行った(各群 n=8〜10)。また、これらの試験結果を
図9に示した。
図9は、糞排泄量の測定及び糞含有脂質濃度の測定を行った結果を示しており、(a)は、24時間の糞排泄量の測定結果を示しており、(b)は、糞中の総脂質濃度の測定結果を示しており、(c)は、糞中の中性脂肪濃度の測定結果を示している。
図9では、0.01水準でHFHS群に対してBX−Res.群が有意ならば「**」と表示した。
図9(a)に示した通り、各群の24時間の糞排泄量は差がみられなかった。一方、
図9(b)及び(c)に示した通り、BX−Res.群の糞中に含まれる中性脂肪はHFHS群と比較して有意に高値であり、糞中への中性脂肪の排泄は、主として実施例3で得られたBX抽出残渣乾燥粉末の画分が作用していることがわかった。
【0059】
(試験例6)
試験例6では、試験例5において各個体の糞を採取した後に、解剖を行って内臓脂肪(腸間膜脂肪、精巣上体周囲脂肪、腎臓周囲脂肪)重量の測定を行い(各群 n=8〜10)、結果を
図10に示した。
図10は、内臓脂肪重量をそれぞれ測定した結果を示しており、(a)は、腸間膜脂肪の測定結果を示しており、(b)は、精巣上体周囲脂肪の測定結果を示しており、(c)は、腎臓周囲脂肪の測定結果を示しており、(d)は、内臓脂肪として(a)〜(c)の脂肪の合算値を示している。
図10では、0.05水準でHFHS群に対してBX群又はBX−Ex.群が有意ならば「*」と表示した。
図10に示すように、BX群及びBX−Ex.群において、HFHS群と比較して有意に内臓脂肪の蓄積を抑制していた。一方、BX−Res.群では、HFHS群と比較して内臓脂肪量は減少していたものの、その効果はBX群及びBX−Ex.群と比較して弱いものであった。
【0060】
(試験例7)
試験例7では肝臓の状態を明らかにするため、肝機能に関わる血液生化学検査を行うと共に、試験例6の解剖時に肝臓を採取し、肝臓中の脂質及びコレステロール量の測定を行い(各群 n=8〜10)、その結果を
図11〜
図13に示した。即ち、
図11は、肝機能に関わる血液生化学検査の結果を示しており、(a)は、血漿中AST濃度の測定結果を示しており、(b)は、血漿中ALT濃度の測定結果を示しており、(c)は血漿中LDH濃度の測定結果を示している。
図12は肝臓中の脂質及びコレステロール量の測定結果を示しており、(a)は、肝臓中の総脂質量の測定結果を示しており、(b)は、肝臓中の中性脂肪量の測定結果を示しており、(c)は、肝臓中の総コレステロール量の測定結果を示している。
図12では、0.05水準でHFHS群に対してBX群が有意ならば「*」、0.01水準でHFHS群に対してBX−Ex.群が有意ならば「**」と表示した。
図13は、HE染色(ヘマトキシリン・エオシン染色)を行った肝臓の組織的観察を行った結果であり、(a)はCont.群の肝臓の組織像であり、(b)はHFHS群の肝臓の組織像であり、(c)はBX群の肝臓の組織像であり、(d)は、BX−Ex.群の肝臓の組織像であり、(e)はBX−Res.群の肝臓の組織像である。
【0061】
図11及び
図12に示すように、実施例2で得られたBX抽出物乾燥粉末を経口摂取することによって、肝臓中の中性脂肪及びコレステロールの肝臓への蓄積を抑制し、肝機能の低下を抑制することが明らかになった。また、
図13(a)に示すように、Cont.群は比較的正常に近い細胞であり、細胞全体が赤く染色され、肝細胞の風船状腫大(バルーンニング)は確認されなかった。
図13(b)に示すように、HFHS群は顕著なバルーンニングが確認され、肝細胞内に微細な脂肪滴が集積し、細胞が白っぽく見えた。なお、HE染色においては、脂肪は染色されないため、細胞内の白く抜けている部分が脂肪である。
図13(c)〜(e)に示すように、(c)のBX群と(e)のBX−Res.群で若干脂肪の蓄積やバルーンニングが認められたが、HFHS群と比較すると軽微であった。また、(d)のBX−Ex.群については脂肪肝の所見はほとんど見られず、Cont.群と同程度に肝細胞が正常を保っていた。
【0062】
以上の結果より、BX群、BX−Ex.群及びBX−Res.群の何れも、HFHS飼料によって惹起された肝臓への異常な脂質沈着を抑制し、その効果はエキス(BX−Ex.群)において最も高いということが明らかとなった。
【0063】
以上より、実施例1で得られたBX乾燥粉末を経口摂取することによる作用として、(1)内臓脂肪及び肝臓脂質の減少、(2)肝機能の改善が明らかとなった。
【0064】
また、その作用に寄与する機能性成分について、BX乾燥粉末の分画の効果を調べた結果、実施例2で得られたBX抽出物乾燥粉末を経口摂取することによって、体重の増加を抑制するが、脂質の排泄を促進する作用は弱いことが明らかとなった。その一方で、内臓脂肪の蓄積や肝臓への脂質の蓄積を抑制することが明らかになった。従って、BX抽出物乾燥粉末には、体内代謝の促進効果があると考えられる。
【0065】
一方、実施例3で得られたBX抽出残渣乾燥粉末を経口摂取することによって、体重の増加を抑制し、体外への脂質の排泄量が増加する傾向にあることが明らかとなった。従って、BX抽出残渣乾燥粉末には、食餌由来の脂質の吸収阻害効果があると考えられる。