特許第6808210号(P6808210)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6808210抗肥満用組成物及びこれを用いた抗肥満用サプリメント及び抗肥満用飲料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6808210
(24)【登録日】2020年12月11日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】抗肥満用組成物及びこれを用いた抗肥満用サプリメント及び抗肥満用飲料
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/07 20060101AFI20201221BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20201221BHJP
   A61K 9/06 20060101ALI20201221BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20201221BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20201221BHJP
【FI】
   A61K36/07
   A61P3/04
   A61K9/14
   A61K9/20
   A61K9/16
   A61K9/48
   A61K9/08
   A61K9/06
   A23L2/00 F
   A23L33/135
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-82424(P2016-82424)
(22)【出願日】2016年4月15日
(65)【公開番号】特開2017-190317(P2017-190317A)
(43)【公開日】2017年10月19日
【審査請求日】2019年4月3日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第6回越後白雪茸研究会 平成27年度通常総会、平成27年10月17日 〔刊行物等〕 掲載年月日:平成27年11月13日 掲載アドレス:http://echigoshirayukidake.com/blog/archives/245 :http://echigoshirayukidake.com/blog/wp−content/uploads/2015/11/43d7f402f37f631f665504b884de864c.pdf
【微生物の受託番号】IPOD  FERM BP-10011
(73)【特許権者】
【識別番号】503360159
【氏名又は名称】マイコロジーテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 眞治
(72)【発明者】
【氏名】小西 徹也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 哲男
【審査官】 岩下 直人
(56)【参考文献】
【文献】 再公表特許第2004/097007(JP,A1)
【文献】 再公表特許第2008/129996(JP,A1)
【文献】 特開2011−102286(JP,A)
【文献】 特開2007−332336(JP,A)
【文献】 Biol. Pharm. Bull.,2008年,Vol.31, No.1,p.111-117
【文献】 大城 華,ファム ティ ベトゥ,石井 貴広,多和田 眞吉,2E23p17 ヘンナの抗肥満および抗糖尿病効果,日本農芸化学会2015年度大会講演要旨集(オンライン) Proceedings (online) of the Annual Meeting 2015 Okayama of Japan Society for Bioscience, Biotechnology, and Agrochemistry,公益社団法人日本農芸化学会 JSBBA,2015年
【文献】 Int. J. food Nutr.,2010年,Vol.61, No.7,p.713-721
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/07
A23L 2/52
A23L 33/135
A61K 9/06
A61K 9/08
A61K 9/14
A61K 9/16
A61K 9/20
A61K 9/48
A61P 3/04
MEDLINE/BIOSIS/EMBASE/WPIDS/WPIX/CAplus(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バシディオマイセテスX(Basidiomycetes−X)FERM BP−10011菌糸塊及びその抽出組成物から選択される少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とする抗肥満用組成物。
【請求項2】
粉末、顆粒、錠剤、カプセル、溶液状及びゲル状から選択される何れかの形態であることを特徴とする請求項1に記載の抗肥満用組成物。
【請求項3】
バシディオマイセテスX(Basidiomycetes−X)FERM BP−10011菌糸塊及びその抽出組成物から選択される少なくとも1種を含有する抗肥満用組成物を含むことを特徴とする抗肥満用サプリメント。
【請求項4】
バシディオマイセテスX(Basidiomycetes−X)FERM BP−10011菌糸塊及びその抽出組成物から選択される少なくとも1種を含有する抗肥満用組成物を含むことを特徴とする抗肥満用飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗肥満用組成物及びこれを用いた抗肥満用サプリメント及び抗肥満用飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
古来より、きのこ類は独特の風味や香りを有する食材として汎用されると共に、免疫力の向上、抗菌、体調リズムの調節、老化防止等の生理機能活性化作用等を有するとして漢方薬又はある種の疾患の民間薬としても用いられてきた。また、きのこに関する薬効成分の研究も進歩してきており、抗菌・抗ウイルス作用、強心作用、血糖降下作用、コレステロール低下作用、抗血栓作用、血圧降下作用を示す成分が見出されている。そして、本出願人は、新規なきのこであるバシディオマイセテスX(Basidiomycetes−X)FERM BP−10011の抽出組成物(以下、「BX抽出組成物」という。)について、以前に出願した(特許文献1参照)。BX抽出組成物は、多量の多糖類(β−D−グルカン)が含まれており、抗酸化力が高く、OHラジカル消去活性を有しているため、老化防止等の効能が期待できるものである。また、BX抽出組成物は、免疫調整効果を有しているため、免疫賦活剤等として用いて好適なものである。また、本出願人は、BX抽出組成物を用いた、アトピー性疾患の治療・予防に対して優れた効果を有するアトピー性疾患組成物についても、以前に出願した(特許文献2参照)。
【0003】
ところで、近年、肥満の健康被害に対する国際的な取り組みの中で、日常生活において手軽に摂取可能なサプリメントや飲料等が、肥満予防対策の一つとして注目されている。しかしながら、特許文献1,2には、BX抽出組成物の抗肥満効果については全く記載されておらず、肥満の予防対策については、全く考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2004/097007号パンフレット
【特許文献2】特開2007−109449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情に鑑み、バシディオマイセテスX(Basidiomycetes−X)FERM BP−10011の抽出組成物を用いた抗肥満用組成物及びこれを含有する抗肥満用サプリメント及び抗肥満用飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明の第1の態様は、バシディオマイセテスX(Basidiomycetes−X)FERM BP−10011菌糸塊及びその抽出組成物から選択される少なくとも1種を有効成分として含有することを特徴とする抗肥満用組成物にある。
【0007】
本発明の第2の態様は、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、溶液状及びゲル状から選択される何れかの形態であることを特徴とする第1の態様に記載の抗肥満用組成物にある。
【0008】
本発明の第3の態様は、バシディオマイセテスX(Basidiomycetes−X)FERM BP−10011菌糸塊及びその抽出組成物から選択される少なくとも1種を有効成分として含有する抗肥満用組成物を含むことを特徴とする抗肥満用サプリメントにある。
【0009】
本発明の第4の態様は、バシディオマイセテスX(Basidiomycetes−X)FERM BP−10011菌糸塊及びその抽出組成物から選択される少なくとも1種を有効成分として含有する抗肥満用組成物を含むことを特徴とする抗肥満用飲料にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、バシディオマイセテスX(Basidiomycetes−X)FERM BP−10011を培養した菌糸塊又はその抽出組成物若しくは抽出残渣を含有する抗肥満組成物、又は当該組成物を含有させたサプリメントや飲料等を摂取することにより、肥満を予防及び防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】試験例1の測定結果であり、(a)は1日あたりの平均摂餌量の推移の測定結果であり、(b)は累積摂餌量の測定結果である。
図2】試験例1の測定結果であり、(a)は平均体重の推移の測定結果であり、(b)は試験期間終了時の平均体重の測定結果である。
図3】試験例2の測定結果であり、(a)は血漿中中性脂肪濃度の測定結果であり、(b)は血漿中総コレステロール濃度の測定結果であり、(c)は血漿中HDL−コレステロール濃度の測定結果であり、(d)は血漿中LDL−コレステロール濃度の測定結果である。
図4】試験例2の測定結果であり、(a)は血漿中AST濃度の測定結果を示しており、(b)は血漿中ALT濃度の測定結果を示しており、(c)は血漿中LDH濃度の測定結果を示している。
図5】試験例3の測定結果であり、(a)は腸間膜脂肪の平均重量の測定結果であり、(b)は精巣上体周囲脂肪の平均重量の測定結果であり、(c)は腎臓周囲脂肪の平均重量の測定結果であり、(d)は内臓脂肪の平均重量の測定結果である。
図6】試験例4の測定結果であり、(a)は摂餌試験期間中の累積摂餌量の測定結果を示しており、(b)は摂餌試験期間中の累積摂取カロリーの測定結果を示している。
図7】試験例4の測定結果であり、(a)はBX群の体重の推移の測定結果を示しており、(b)はBX−Ex.群の体重の推移の測定結果を示しており、(c)はBX−Res.群の体重の推移の測定結果を示している。
図8】試験例4の測定結果であり、摂餌試験終了時における各群の平均体重の測定結果である。
図9】試験例5の測定結果であり、(a)は24時間の糞排泄量の測定結果であり、(b)は糞中の総脂質濃度の測定結果であり、(c)は糞中の中性脂肪濃度の測定結果である。
図10】試験例6の測定結果であり、(a)は腸間膜脂肪の重量の測定結果であり、(b)は精巣上体周囲脂肪の重量の測定結果であり、(c)は腎臓周囲脂肪の重量の測定結果であり、(d)は内臓脂肪の重量の測定結果である。
図11】試験例7の測定結果であり、(a)は血漿中AST濃度の測定結果を示しており、(b)は血漿中ALT濃度の測定結果を示しており、(c)は血漿中LDH濃度の測定結果を示している。
図12】試験例7の測定結果であり、(a)は肝臓中の総脂質量の測定結果であり、(b)は肝臓中の中性脂肪量の測定結果であり、(c)は肝臓中の総コレステロール量の測定結果である。
図13】試験例7の肝臓の組織的観察を行った結果であり、(a)はCont.群の肝臓の組織像であり、(b)はHFHS群の肝臓の組織像であり、(c)はBX群の肝臓の組織像であり、(d)はBX−Ex.群の肝臓の組織像であり、(e)はBX−Res.群の肝臓の組織像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の抗肥満組成物は、バシディオマイセテスX(Basidiomycetes−X)を培養した菌糸塊(以下、「BX菌糸塊」という。)、又は、バシディオマイセテスXを培養した菌糸塊の抽出組成物(以下、「BX抽出組成物」という。)若しくは抽出残渣(以下、「BX抽出残渣」という。)を有効成分として含有する。
【0015】
ここで、本発明でいうバシディオマイセテスは、担子菌であり、嘴状突起(クランプ)は観察されるが、担子器形成能を有しないという特性を有しており、他の担子菌と区別される。即ち、培養しても、担子器を形成せずに、菌核(菌糸塊)を形成するだけである。かかるバシディオマイセテスは、菌を自然界から探索した結果得たものであり、単離し、バシディオマイセテスX(Basidiomycetes−X)として独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE) NITE特許生物寄託センター(NITE−IPOD)に寄託した(受託番号:FERM BP−10011)。
【0016】
このバシディオマイセテスXは、分生子を形成しない、即ち、無性世代を有しないものである。例えば、ポテトグルコース寒天培地で培養すると、培養菌糸は、クランプを有し、平滑であるが、分生子を形成せず、子実体を形成しない。コロニー表面の形状色調を観察すると、コロニー内に淡桃色菌糸塊を形成しており、植菌部位から同心円状に生長したコロニー内に複数の菌糸塊を形成した場合、菌糸塊相互は菌糸束により連結される。なお、コロニーの裏面の色調は淡桃色である。また、グルコース・ドライイースト寒天培地で培養すると、培養菌糸はクランプを有し、平滑であるが、分生子を形成せず、子実体を形成しない。コロニー表面の形状色調を観察すると、コロニー内に淡桃〜白色の菌糸塊を形成し、植菌部位を中心とするように厚さ5mm〜6mmの菌糸塊を形成している。なお、コロニーの裏面の色調は、淡桃〜白色である。
【0017】
バシディオマイセテスXの最適生育条件は、例えば、pH5.0〜6.0で、温度22℃〜26℃である。また、生育範囲は、例えば、pH4.0〜7.5で、温度5℃〜30℃である。
【0018】
また、バシディオマイセテスXは、上述したように一般的な方法により培養でき、培養方法は特に限定されるものではないが、例えば、適当な栄養源を添加して滅菌した寒天培地、おがくず培地、液体培地等に、培養済の菌株或いは種菌を無菌的に植菌し、適温条件下で培養することにより、バシディオマイセテスXの菌糸塊を得ることができる。なお、バシディオマイセテスXを培養すると、培養した環境に応じて菌糸塊を形成する。
【0019】
このようなBX菌糸塊を、必要に応じて乾燥し、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、溶液状、ゲル状等にすることにより、本発明の抗肥満組成物となる。
【0020】
また、上記BX菌糸塊から細胞内容物を抽出したBX抽出組成物又はBX抽出残渣を、本発明の抗肥満組成物の有効成分としてもよい。BX菌糸塊からの抽出方法は特に限定されない。例えば、BX菌糸塊から細胞内容物を効率よく抽出するには、好適には、必要に応じてBX菌糸塊を凍結する等して細胞壁に損傷を与えて解凍した後、ミキサー等により破砕し、エキスを抽出する。エキス(BX抽出組成物)の抽出も特に限定されないが、水、低級アルコール等、更には、酸、アルカリ、その他の添加剤を添加した抽出液を用いて常温又は加熱条件下、又は加圧下にて抽出する。一般的には、熱水で煮出して抽出するか、或いは、水又はアルコールやアルカリを添加した水と破砕物を混合した状態で、例えば、100MPa〜700MPa程度、好ましくは、300MPa〜600MPa程度加圧して抽出するのがよい。
【0021】
ここで、抽出方法の一例を説明する。まず、例えば、凍結しているBX菌糸塊を常温解凍し、ミキサーを用いて破砕し、破砕したBX菌糸塊と抽出溶媒である水との割合を、例えば、1:5程度とし、例えば、破砕BX菌糸塊50gをガラス瓶に入れ、水250mlを加えて蓋を締め、これを鍋の底にタオルを敷いた上に水を注ぎ、破砕BX菌糸塊の入ったガラス瓶を置いて加熱・沸騰させる。沸騰してから90分間加熱を継続し、冷却後固液分離し、抽出液(BX抽出組成物)及び残渣(BX抽出残渣)を得る。抽出液のpHは例えば、6.3〜6.5を示す。
【0022】
このように得た抽出液は、必要に応じて濃縮し、BX菌糸塊から抽出したBX抽出組成物とする。なお、エキスの濃縮は特に限定されないが、例えば、以下のように行う。
【0023】
得られた抽出液をビーカーに移し、加熱・蒸発させて濃縮する。このとき、抽出液は淡いベージュ色から褐色を呈するようになり、盛んに発泡をはじめるようになるが、更に蒸発・濃縮を継続し、例えば、pH4.9、密度1.25g/cmのタール状となった時点で、濃縮を終了させる。この濃縮エキスは、醤油様の芳香を発する。なお、この時点における、BX菌糸塊からの濃縮エキスの収率は平均12%である。このように得た濃縮エキスは冷却するに従い、粘性が非常に高まるため、濃縮終了と同時に保存容器に移す必要がある。また、保存容器に移した濃縮エキスは、そのまま冷却後、冷凍・凍結保存とするのが好ましい。
【0024】
このBX菌糸塊から抽出したBX抽出組成物又はBX抽出残渣を、必要に応じて乾燥し、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、溶液状、ゲル状等にしたものが、本発明の抗肥満組成物である。また、BX菌糸塊から抽出したBX抽出組成物又はBX抽出残渣そのものを、本発明の抗肥満組成物としてもよい。なお、抗肥満組成物中の、BX菌糸塊から抽出したBX抽出組成物又はBX抽出残渣の含有割合は、用途に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。
【0025】
本発明の抗肥満組成物は、上記の粉末、顆粒、錠剤、カプセル、溶液状、ゲル状等の形態でサプリメント等の食品に含有することができ、或いは、本発明の抗肥満組成物を飲料に含有することもできる。なお、サプリメント及び飲料中の、BX菌糸塊から抽出したBX抽出組成物又はBX抽出残渣の含有割合は、必要に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。勿論、BX菌糸塊そのものを、上記食品や飲料等に含有することもできる。
【0026】
本発明の抗肥満組成物は、BX菌糸塊、又は、そのBX抽出組成物若しくはBX抽出残渣を有するため、後述する実施例に示すように、肥満を予防及び防止するために用いることができる。これは、BX菌糸塊、BX抽出組成物又はBX抽出残渣が、体内代謝を促進させ、或いは、摂取物由来の脂質の吸収を阻害するように機能するためと推測される。このため、本発明の抗肥満組成物の投与により、肥満を予防及び防止することができる。
【0027】
即ち、本発明の肥満防止方法は、上述した抗肥満組成物を、摂取させることにより肥満を防止するものである。当該方法では、摂取方法に特に制限はなく、肥満の程度や肥満に由来する諸症状等に合わせて有効量を適宜決定し、内服又は外用することができるが、日常生活において手軽に摂取可能であることから、経口摂取させることが好ましい。また、摂取条件としては、例えば、BX菌糸塊を乾燥して粉末化し、打錠して1mg〜1000mg程度、好ましくは200mg〜300mgの錠剤としたものを、1日1回〜3回、好ましくは3回経口摂取する方法が挙げられる。服用期間は特に限定されないが、長期間とすることが好ましく、例えば、1週間以上が好ましく、更に8週間以上が好ましい。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例、及び、BX菌糸塊から抽出したBX抽出組成物の製造例を参照しながら更に具体的に説明する。なお、製造例1〜4でバシディオマイセテスXの培養例を、製造例5,6で乾燥例を、製造例7〜11で抽出例を示す。
【0029】
(製造例1)
<菌糸塊からの分離>
(1)培地の調製
下記表1に示す配合で、PSA培地及びPDA培地を調製し、試験管又は三角フラスコに分注した後、シリコセン(又は綿栓)を施しオートクレーブにより121℃20分高圧蒸気滅菌した。その後、試験管の場合は、滅菌後熱いうちに傾斜させてスラント(斜面)培地とし、三角フラスコの場合は、そのまま静置してプレート(平面)培地とした。
【0030】
【表1】
【0031】
(2)菌糸塊からの分離
大きめのBX菌糸塊を手で割り、火炎滅菌したメスを冷却させてからバシディオマイセテスX断面より切片を切断し、火炎滅菌冷却後のピンセットで、(1)のPSA培地及びPDA培地スラントにバシディオマイセテスX切片を植菌した。なお操作は、無菌箱又はクリーンベンチ内の、無菌処理済み条件下で行った。
【0032】
(3)培養
24℃条件下でインキュベーターにおいて培養させたところ、24時間〜48時間後には発菌した。発菌後、24℃条件下で培養を継続すると、14日間でAgar培地上に菌糸が生育した。
【0033】
(製造例2)
<菌糸塊生産のためのおがくず培地による培養>
(1)種菌の培養
おがくず1L、脱脂ぬか15g、ふすま15g及びサンパール(菌糸活性剤・日本製紙製)5gに、水を加えて十分に攪拌し、培地を強く握って水がにじむ程度(湿式含水率70%程度)として、おがくず培地を調製した。この培地を三角フラスコに入れ、シリコセンを施した後、オートクレーブにより121℃40分高圧蒸気滅菌した。滅菌後24時間後に、製造例1のスラントにて培養中のバシディオマイセテスX菌糸を無菌箱内にて無菌操作によっておがくず培地に植菌した。なお、植菌は滅菌三角刀でスラントの一部を切除するようにし、菌糸にダメージを与えないよう行った。また、植菌の密度は、おがくず培地表面積の20%〜30%とした。24℃条件下で培養したところ3日後(遅くとも5日後)に発菌し、30日後には三角フラスコおがくず培地に菌糸が充満した。
【0034】
(2)菌糸塊の発生
(1)と同様にしたおがくず培地を調製し、この培地をポリプロピレン製ビンに入れ、フタをして、オートクレーブにより121℃40分高圧蒸気滅菌した。滅菌後24時間後、無菌処理済みの無菌箱内において無菌操作により、(1)で培養した種菌をポリプロピレン製ビンのおがくず培地に植菌した。なお、植菌の密度は、おがくず培地表面積がほぼ覆われる程度とした。24℃条件下で培養したところ、48時間後に発菌し、60日後にはポリプロピレン製ビン内のおがくず培地全体に菌糸が充満した。更に40〜50日経過すると、ポリプロピレン製ビン内壁に菌糸が展開し、菌糸束を形成、更に培養を継続すると菌糸塊を形成した。
【0035】
(製造例3)
<菌糸塊生産のための液体培地による培養>
1cm角としたジャガイモ200gを精製水を用いて煮沸後20分継続、冷却後、固液分離したジャガイモ浸出液、スクロース20gに蒸留水を全量1Lとなるように加え液体培地を調製した。この液体培地を試験管に各5mlに分注し、シリコセンを施し滅菌(121℃20分高圧蒸気滅菌或いは100℃8時間常圧蒸気滅菌)した。その後、無菌処理済の無菌箱内において無菌操作により、製造例1のスラントにおいて培養中のバシディオマイセテスX切片の下端が接するよう植菌した。24℃条件下で培養したところ、48時間で発菌し、更に培養を継続すると、液体培地に接するように菌糸塊を形成した。
【0036】
(製造例4)
<菌糸塊生産のためのAgar培地による培養>
1cm角としたジャガイモ200gを精製水を用いて煮沸後20分継続、冷却後、固液分離したジャガイモ浸出液、スクロース20g及びAgar1g(0.1%)に蒸留水を全量1Lとなるように加えて、Agar培地を調整した。なお、通常Agar培地は1.5〜2.0(培地1Lに対し、15g〜20g)のAgar添加するが、培養後の菌糸塊と、Agar培地の分離を容易にするため、また液体培地ではバシディオマイセテスXの切片が沈降しやすいため物理的強度を維持する目的で、0.1%添加する事とした。この0.1%Agar培地を試験管に各5mlに分注し、シリコセンを施した後オートクレーブにより121℃20分間高圧蒸気滅菌した。その後、無菌処理済みの無菌箱内において、製造例1のスラントにおいて培養中のBX菌糸塊から切片を切除し、0.1%Agar培地に無菌操作により植菌した。24℃条件下で培養すると、48時間で発菌し更に培養を継続することにより、菌糸塊を形成した。
【0037】
(製造例5)
<バシディオマイセテスX乾燥粉末の製造>
菌糸の細胞壁に損傷を与え、細胞内容物が浸出することを容易にするため、製造例2で得られた生鮮BX菌糸塊を冷凍・凍結させ、凍結しているBX菌糸塊を常温解凍し、ミキサーを用いて破砕したものを乾燥して粉末に加工し、バシディオマイセテスX乾燥粉末(以下、「BX乾燥粉末」という。)とした。
【0038】
(製造例6)
<バシディオマイセテスX抽出組成物乾燥粉末の水抽出による製造>
製造例5で得られたBX乾燥粉末(乾燥重量20g)を計りとり、水100mlを加えた後、適宜撹拌しながら4〜6時間静置培養した。その後、吸引濾過により固形物(以下、「BX抽出残渣」という。)を除いた後に密封、冷蔵庫に保存したものをBX抽出組成物(固形分:8.0%)とした。さらにBX抽出組成物に対して、BX抽出組成物固形分量(kg)と等量のデキストリンを混合した(固形分:14.7%)。最後に−40℃で予備凍結の後、フリーズドライ(以下、「FD」という。)乾燥に供し、バシディオマイセテスX抽出組成物乾燥粉末(以下、「BX抽出物乾燥粉末」という。)とした。
【0039】
(製造例7)
<濃縮BX抽出組成物の煮出しによる製造>
菌糸の細胞壁に損傷を与え、細胞内容物が浸出することを容易にするため、生鮮BX菌糸塊を冷凍・凍結させ、凍結しているBX菌糸塊を常温解凍し、ミキサーを用いて破砕した。破砕BX菌糸塊50gをガラス瓶に入れ、水250mlを加えて蓋を締め、鍋の底にタオルを敷いた上に水を注ぎ、破砕菌糸塊の入ったガラス瓶を置いて加熱・沸騰させ、沸騰してから90分間加熱を継続した。冷却後固液分離し、BX抽出組成物とBX抽出残渣を得た。なお、抽出液のpHは6.3〜6.5であった。
【0040】
得られたBX抽出組成物をビーカーに移し、加熱・蒸発させて濃縮した。BX抽出組成物は淡いベージュ色から褐色を呈するようになり、盛んに発泡をはじめるようになったが、更に蒸発・濃縮を継続した。pH4.9、密度1.25g/cmのタール状となった時点で、濃縮を終了させた。この濃縮BX抽出組成物は、醤油様の芳香を発した。なお、この時点における、BX菌糸塊からの濃縮BX抽出組成物の収率は12%であった。BX抽出組成物は冷却するに従い、粘性が非常に高まるため、濃縮終了と同時に保存容器に移し、そのまま冷却後、冷凍・凍結保存した。
【0041】
(製造例8)
<BX抽出組成物の煮出しによる製造>
菌糸の細胞壁に損傷を与え、細胞内容物が浸出することを容易にするため、生鮮BX菌糸塊を冷凍・凍結させた後、凍結しているBX菌糸塊を常温解凍した。
【0042】
この解凍後のBX菌糸塊(湿重量20g)を計りとり、0.5cm角に刻んだものをビーカーに入れ、水100mlを加えてから、90℃で弱く煮沸し、溶液が最初の量の1/2になるまで煮詰めた。その後水を加えて元の用量に戻し、ガーゼでろ過して固形物を除いた後に密封、冷蔵庫に保存したものを製造例8のBX抽出組成物とした。
【0043】
(製造例9)
<BX抽出組成物の高圧処理による製造>
製造例7と同様に処理したBX菌糸塊(湿重量20g)をビニール袋にとり、水100mlを加えた後、減圧脱気して封入した。これを超高圧装置(神戸製鋼製700MPa処理可能タイプ)にセットして、静水圧400MPaで10分間処理し、ガーゼろ過し、冷蔵保存したものを製造例9のBX抽出組成物とした。
【0044】
(製造例10)
<BX抽出組成物の高圧処理による製造>
静水圧600MPaで処理した以外は、製造例9と同様にして製造した組成物を製造例10のBX抽出組成物とした。
【0045】
(製造例11)
<BX抽出組成物の高圧処理による製造>
水100mlの代わりに0.1%KCl水溶液100mlを用いた以外は、製造例8と同様にして製造した組成物を製造例11のBX抽出組成物とした。
【0046】
(実施例1)
菌糸の細胞壁に損傷を与え、細胞内容物が浸出することを容易にするため、製造例2で得られた生鮮BX菌糸塊を冷凍・凍結させ、凍結しているBX菌糸塊を常温解凍し、ミキサーを用いて破砕したものを乾燥して粉末に加工し、バシディオマイセテスX乾燥粉末(以下、「BX乾燥粉末」という。)とした。
【0047】
(実施例2)
製造例5で得られたBX乾燥粉末(乾燥重量4kg)を計りとり、水20Lを加えた後、適宜撹拌しながら4〜6時間静置培養した。その後、吸引濾過により固形物(以下、「BX抽出残渣」という。)を除き、BX抽出組成物17.6kg(固形分:8.0%)を得た。さらにBX抽出組成物に対して、BX抽出組成物固形分量(kg)と等量のデキストリン1.4kgを混合した(固形分:14.7%)。最後に−40℃で予備凍結の後、FD乾燥に供し、バシディオマイセテスX抽出組成物乾燥粉末(以下、「BX抽出物乾燥粉末」という。)とした(粉末出来高例2.51kg)。
【0048】
(実施例3)
製造例6で得られたBX抽出残渣をFD乾燥して粉末に加工し、バシディオマイセテスX抽出残渣乾燥粉末(以下、「BX抽出残渣乾燥粉末」という。)とした。
【0049】
(試験例1)
試験例1では、Wistar系雄性ラット4週齢を用いた。2週間の予備飼育後、下記に示す各試験群に分け、下記表2に示す各飼料を経口摂取させて100日間飼育を行い、各個体の摂餌量及び体重の変化を測定し、その測定結果を図1及び図2に示した。即ち、図1は、平均摂餌量の推移と累積摂餌量の測定結果を示しており、(a)は、1日あたりの平均摂餌量の推移の測定結果を示しており、(b)は、試験期間中における累積摂餌量の測定結果を示している。図1に示した通り、BX群の試験期間中における摂餌量の推移及び累積摂餌量は、HFHS群と比較してほぼ同等であった。図2は、試験期間中における平均体重の推移と試験終了時における平均体重の測定結果を示しており、(a)は、各群の試験期間中における平均体重の推移を示しており、(b)は、試験終了時における各群の平均体重の測定結果を示している。図2では、0.05水準でHFHS群に対してBX群が有意ならば「*」、同様に0.01水準に対しては「**」と表示した。図2に示した通り、BX群の体重は、HFHS群と比較して有意に減少した。HFHS飼料とBX飼料は同一のカロリーであることから、BX乾燥粉末の摂取により体重増加が抑制されることが明らかになった。
【0050】
試験群(各群 n=9〜10)
Cont.(コントロール)群:AIN−93M飼料
HFHS群:高脂肪高ショ糖飼料
BX(バシディオマイセテスX)群:5%BX乾燥粉末(実施例1)+高脂肪高ショ糖飼料
【0051】
【表2】
【0052】
(試験例2)
試験例2では、試験例1で各個体の摂餌量及び体重の変化を測定した後に、一晩絶食をかけて空腹時の採血を行い生化学検査に供した(各群 n=8)。これらの結果を図3及び図4に示した。図3は空腹時の血漿成分の測定結果を示しており、(a)は中性脂肪濃度を示しており、(b)は総コレステロール濃度を示しており、(c)はHDL−コレステロール濃度を示しており、(d)はLDL−コレステロール濃度を示している。図3では、0.05水準でCont.群又はHFHS群に対してBX群が有意ならば「*」と表示した。図3に示すように、BX群では血漿中の中性脂肪濃度がHFHS群よりも低い傾向がみられ、総コレステロール及びLDL−コレステロール濃度ではHFHS群と比較して有意に低下した。その一方で、HDL−コレステロール濃度には、両者に差が見られなかった。つまり、BX群では、高脂肪高ショ糖飼料によるLDL−コレステロールの増加が、実施例1で得られたBX乾燥粉末により、選択的に抑制されたと考えられる。
【0053】
AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)及びLDH(乳酸脱水素酵素)の何れも肝臓組織中に存在し、細胞が傷害されると細胞外へ漏出するため(逸脱酵素)、血漿中のこれらの成分の濃度は肝機能の状態を示す重要な指標となる。図4は、肝機能に関わる血液生化学検査の結果を示しており、(a)は、血漿中AST濃度の測定結果を示しており、(b)は、血漿中ALT濃度の測定結果を示しており、(c)は血漿中LDH濃度の測定結果を示している。図4では、0.05水準でHFHS群に対してCont.群又はBX群が有意ならば「*」、同様に0.01水準に対しては「**」と表示した。図4に示すように、BX群の肝機能パラメータは、HFHS群と比較して有意に減少していた。
【0054】
(試験例3)
試験例3では、試験例2で各試験を行い各個体の体重が回復したことを確認した後に解剖して、内臓脂肪(腸間膜脂肪、精巣上体周囲脂肪、腎臓周囲脂肪)の平均重量の測定を行い(各群 n=6〜9)、結果を図5に示した。図5は、内臓脂肪平均重量をそれぞれ測定した結果を示しており、(a)は、腸間膜脂肪の測定結果を示しており、(b)は、精巣上体周囲脂肪の測定結果を示しており、(c)は、腎臓周囲脂肪の測定結果を示しており、(d)は、内臓脂肪として(a)〜(c)の脂肪の合算値の測定結果を示している。図5では、0.05水準でCont.群に対してBX群が有意ならば、或いは、HFHS群に対してCont.群が有意ならば「*」、同様に0.01水準でHFHS群に対してCont.群又はBX群が有意ならば「**」と表示した。図5に示すように、BX群の何れの内臓脂肪についてもHFHS群と比較して重量が有意に減少していた。
【0055】
(試験例4)
試験例4では、Wistar系雄性ラット4週齢を用いた。1週間の予備飼育後、下記に示す各試験群に分け、下記表3に示す各飼料を経口摂取させて15週間飼育を行い、各個体の摂餌量及び体重の変化を測定し、その測定結果を図6図8に示した。即ち、図6は、累積摂餌量と累積摂取カロリーの測定結果を示しており、(a)は、摂餌試験期間中の累積摂取量の測定結果を示しており、(b)は、摂餌試験期間中の累積摂取カロリーの測定結果を示している。図7は、体重の推移の測定結果を示しており、(a)は、BX群の体重の推移の測定結果を示しており、(b)は、BX−Ex.群の体重の推移の測定結果を示しており、(c)は、BX−Res.群の体重の推移の測定結果を示している。図7では、0.05水準でHFHS群に対してBX群又はBX−Ex.群が有意ならば「*」、同様に0.01水準に対しては「**」と表示した。図8は、摂餌試験終了時における各群の平均体重の測定結果を示している。図8では、0.05水準でHFHS群に対してBX群又はBX−Ex.群が有意ならば「*」と表示した。図6(a)に示した通り、累積摂取量ではCont.群が多いが、図6(b)に示した通り、カロリーに換算するとHFHS群以外はほぼ横ばいであった。また、図7に示した通り、BX群、BX−Ex.群及びBX−Res.群はHFHS群と比較して体重増加を抑制する傾向がみられ、特にBX群とBX−Ex.群では有意に体重増加を抑制した。また、試験終了時の体重を比較すると、図8に示した通り、体重増加の抑制効果は、BX−Res.群がやや弱い傾向にあることがわかった。
【0056】
試験群(各群 n=8〜10)
Cont.(コントロール)群:標準飼料(改変AIN−93M)
HFHS群:高脂肪高ショ糖飼料
BX(バシディオマイセテスX)群:5%BX乾燥粉末(実施例1)+高脂肪高ショ糖飼料
BX−Ex.群:5%BX抽出物乾燥粉末(実施例2)+高脂肪高ショ糖飼料
BX−Res.群:5%BX抽出残渣乾燥粉末(実施例3)+高脂肪高ショ糖飼料
【0057】
【表3】
【0058】
(試験例5)
試験例5では、試験例4で各個体の摂餌量及び体重の変化を測定した後に、各個体の糞排泄量及び糞中に含まれる脂質の分析を行った(各群 n=8〜10)。また、これらの試験結果を図9に示した。図9は、糞排泄量の測定及び糞含有脂質濃度の測定を行った結果を示しており、(a)は、24時間の糞排泄量の測定結果を示しており、(b)は、糞中の総脂質濃度の測定結果を示しており、(c)は、糞中の中性脂肪濃度の測定結果を示している。図9では、0.01水準でHFHS群に対してBX−Res.群が有意ならば「**」と表示した。図9(a)に示した通り、各群の24時間の糞排泄量は差がみられなかった。一方、図9(b)及び(c)に示した通り、BX−Res.群の糞中に含まれる中性脂肪はHFHS群と比較して有意に高値であり、糞中への中性脂肪の排泄は、主として実施例3で得られたBX抽出残渣乾燥粉末の画分が作用していることがわかった。
【0059】
(試験例6)
試験例6では、試験例5において各個体の糞を採取した後に、解剖を行って内臓脂肪(腸間膜脂肪、精巣上体周囲脂肪、腎臓周囲脂肪)重量の測定を行い(各群 n=8〜10)、結果を図10に示した。図10は、内臓脂肪重量をそれぞれ測定した結果を示しており、(a)は、腸間膜脂肪の測定結果を示しており、(b)は、精巣上体周囲脂肪の測定結果を示しており、(c)は、腎臓周囲脂肪の測定結果を示しており、(d)は、内臓脂肪として(a)〜(c)の脂肪の合算値を示している。図10では、0.05水準でHFHS群に対してBX群又はBX−Ex.群が有意ならば「*」と表示した。図10に示すように、BX群及びBX−Ex.群において、HFHS群と比較して有意に内臓脂肪の蓄積を抑制していた。一方、BX−Res.群では、HFHS群と比較して内臓脂肪量は減少していたものの、その効果はBX群及びBX−Ex.群と比較して弱いものであった。
【0060】
(試験例7)
試験例7では肝臓の状態を明らかにするため、肝機能に関わる血液生化学検査を行うと共に、試験例6の解剖時に肝臓を採取し、肝臓中の脂質及びコレステロール量の測定を行い(各群 n=8〜10)、その結果を図11図13に示した。即ち、図11は、肝機能に関わる血液生化学検査の結果を示しており、(a)は、血漿中AST濃度の測定結果を示しており、(b)は、血漿中ALT濃度の測定結果を示しており、(c)は血漿中LDH濃度の測定結果を示している。図12は肝臓中の脂質及びコレステロール量の測定結果を示しており、(a)は、肝臓中の総脂質量の測定結果を示しており、(b)は、肝臓中の中性脂肪量の測定結果を示しており、(c)は、肝臓中の総コレステロール量の測定結果を示している。図12では、0.05水準でHFHS群に対してBX群が有意ならば「*」、0.01水準でHFHS群に対してBX−Ex.群が有意ならば「**」と表示した。図13は、HE染色(ヘマトキシリン・エオシン染色)を行った肝臓の組織的観察を行った結果であり、(a)はCont.群の肝臓の組織像であり、(b)はHFHS群の肝臓の組織像であり、(c)はBX群の肝臓の組織像であり、(d)は、BX−Ex.群の肝臓の組織像であり、(e)はBX−Res.群の肝臓の組織像である。
【0061】
図11及び図12に示すように、実施例2で得られたBX抽出物乾燥粉末を経口摂取することによって、肝臓中の中性脂肪及びコレステロールの肝臓への蓄積を抑制し、肝機能の低下を抑制することが明らかになった。また、図13(a)に示すように、Cont.群は比較的正常に近い細胞であり、細胞全体が赤く染色され、肝細胞の風船状腫大(バルーンニング)は確認されなかった。図13(b)に示すように、HFHS群は顕著なバルーンニングが確認され、肝細胞内に微細な脂肪滴が集積し、細胞が白っぽく見えた。なお、HE染色においては、脂肪は染色されないため、細胞内の白く抜けている部分が脂肪である。図13(c)〜(e)に示すように、(c)のBX群と(e)のBX−Res.群で若干脂肪の蓄積やバルーンニングが認められたが、HFHS群と比較すると軽微であった。また、(d)のBX−Ex.群については脂肪肝の所見はほとんど見られず、Cont.群と同程度に肝細胞が正常を保っていた。
【0062】
以上の結果より、BX群、BX−Ex.群及びBX−Res.群の何れも、HFHS飼料によって惹起された肝臓への異常な脂質沈着を抑制し、その効果はエキス(BX−Ex.群)において最も高いということが明らかとなった。
【0063】
以上より、実施例1で得られたBX乾燥粉末を経口摂取することによる作用として、(1)内臓脂肪及び肝臓脂質の減少、(2)肝機能の改善が明らかとなった。
【0064】
また、その作用に寄与する機能性成分について、BX乾燥粉末の分画の効果を調べた結果、実施例2で得られたBX抽出物乾燥粉末を経口摂取することによって、体重の増加を抑制するが、脂質の排泄を促進する作用は弱いことが明らかとなった。その一方で、内臓脂肪の蓄積や肝臓への脂質の蓄積を抑制することが明らかになった。従って、BX抽出物乾燥粉末には、体内代謝の促進効果があると考えられる。
【0065】
一方、実施例3で得られたBX抽出残渣乾燥粉末を経口摂取することによって、体重の増加を抑制し、体外への脂質の排泄量が増加する傾向にあることが明らかとなった。従って、BX抽出残渣乾燥粉末には、食餌由来の脂質の吸収阻害効果があると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の抗肥満組成物は、以上で説明した通り、長期間経口摂取させることによって、抗肥満効果、抗内臓脂肪蓄積効果、肝機能改善効果が期待できる。従って、日常生活で使用可能なサプリメント等の食品や飲料に含有して経口摂取させることにより、高血糖、高血圧、脂質代謝異常等を伴う内臓脂肪型肥満、所謂メタボリックシンドローム(Metabolic syndrome)を惹起する主要な疾患である、内臓脂肪型肥満を抑制すると共に、近年問題となっている、非アルコール性脂肪肝の予防及び防止に有用である。
【受託番号】
【0067】
バシディオマイセテスX(Basidiomycetes−X)FERM BP−10011
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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