特許第6808227号(P6808227)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6808227
(24)【登録日】2020年12月11日
(45)【発行日】2021年1月6日
(54)【発明の名称】トレー
(51)【国際特許分類】
   B65D 21/032 20060101AFI20201221BHJP
   B65D 1/34 20060101ALI20201221BHJP
【FI】
   B65D21/032
   B65D1/34
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-26783(P2017-26783)
(22)【出願日】2017年2月16日
(65)【公開番号】特開2018-131239(P2018-131239A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2019年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】591006944
【氏名又は名称】三甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】中井 英嗣
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−325976(JP,A)
【文献】 実開昭51−081234(JP,U)
【文献】 実公昭42−015656(JP,Y1)
【文献】 登録実用新案第3069193(JP,U)
【文献】 特開2016−088595(JP,A)
【文献】 特開2002−255275(JP,A)
【文献】 特開2010−280425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 21/032
B65D 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略矩形板状の底壁部と、前記底壁部の各側辺部から上方に延びる側壁部と、前記側壁部の上辺部から外方に延びる上フランジ部とを備え、上方に開口するトレーにおいて、
トレー同士をトレーの開口側を向かい合せにして上下に重ねた場合に、トレー同士の間に隙間を形成することなく、トレー同士を嵌合可能とする嵌合手段を備え、
前記側壁部のうち少なくとも相対する一対の前記側壁部に対応して、当該側壁部から延びる前記上フランジ部は、一般部と、前記一般部よりも前記側壁部からの延出長が短く構成される許容部とを備え、
前記上フランジ部のうち少なくとも前記許容部から下方に延びるスカート部と、
前記上フランジ部の上面よりも下方位置において、前記スカート部から外方に突出する突部とを備え
下側のトレーの前記側壁部の内面と、上側のトレーの前記側壁部の外面とを対向させるようにして、トレー同士を上下に重ねることが可能に構成され、
前記スカート部は、スカート一般部と、前記スカート一般部よりも前記上フランジ部からの延出長が短く構成されるスカート許容部とを備え、
前記スカート許容部のうち前記スカート一般部との連接部位は、前記上フランジ部からの延出長が徐々に変化しているスカート徐変部となっており、
前記突部は、前記スカート徐変部を含む前記スカート許容部の下辺部全体に沿って設けられており、
前記許容部のうち前記一般部との連接部位は、前記側壁部からの延出長が徐々に変化している徐変部となっており、前記突部は、前記スカート部のうち前記徐変部を含む前記許容部の先端部から下方に延びる部位の下辺部全体に沿って、前記スカート部から外方に突出しており、
前記スカート許容部は、前記スカート部のうち前記許容部から下方に延びる部位であって、前記スカート徐変部は、前記スカート部のうち前記徐変部から下方に延びる部位であることを特徴とするトレー。
【請求項2】
略矩形板状の底壁部と、前記底壁部の各側辺部から上方に延びる側壁部と、前記側壁部の上辺部から外方に延びる上フランジ部とを備え、上方に開口するトレーにおいて、
トレー同士をトレーの開口側を向かい合せにして上下に重ねた場合に、トレー同士の間に隙間を形成することなく、トレー同士を嵌合可能とする嵌合手段を備え、
前記側壁部のうち少なくとも相対する一対の前記側壁部に対応して、当該側壁部から延びる前記上フランジ部は、一般部と、前記一般部よりも前記側壁部からの延出長が短く構成される許容部とを備え、
前記上フランジ部のうち少なくとも前記許容部から下方に延びるスカート部と、
前記上フランジ部の上面よりも下方位置において、前記スカート部から外方に突出する突部とを備え、
前記嵌合手段は、前記上フランジ部においてトレーの所定の隅部に対応して設けられた嵌合凸部と、トレー同士を向かい合わせで重ねた場合に、前記嵌合凸部を挿入可能な嵌合凹部とを備え、
前記嵌合凸部は、トレーの隅部のうち所定の隅部と、当該所定の隅部の対角に位置する隅部とに対応して設けられ、
前記嵌合凹部は、前記上フランジ部において前記嵌合凸部が設けられていないトレーの隅部に対応して設けられ、
前記嵌合凸部は、所定の前記側壁部の上辺部から外方に延びる前記上フランジ部と、当該上フランジ部に対して略直交して連結される前記上フランジ部とに跨るようにして平面視略L字状をなし、前記嵌合凸部の両端部には傾斜部が設けられており、
トレーの全周にわたり前記上フランジ部と、前記スカート部とが設けられ、その連結部の全周にわたり面取り部が設けられていることを特徴とするトレー。
【請求項3】
物品を収容した下側のトレーに対し、上側のトレーを向かい合せ、かつ、傾けた姿勢で設置し、前記上フランジ部の所定の一辺同士を当接させる場合に、当該上フランジ部の所定の一辺の長手方向全体において、上側のトレーと、下側のトレーとが略当接していることを特徴とする請求項1又は2に記載のトレー。
【請求項4】
前記スカート部は、前記上フランジ部の先端部から下方に延びるとともに、前記上フランジ部の一方の側端部から他方の側端部にかけて連続して延在し、
前記上フランジ部の前記許容部は、前記上フランジ部の長手方向において前記一般部に挟まれるようにして設けられ、
前記突部は、前記上フランジ部の前記許容部から下方に延びる前記スカート部から外方に突出して設けられ、
前記上フランジ部の前記一般部から下方に延びる前記スカート部の外面は略平坦面とされ、
前記突部の先端部は、前記上フランジ部の前記一般部から下方に延びる前記スカート部の外面と面一、又は、当該外面よりもトレーの内周側に位置することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載のトレー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の搬送等に使用され、物品を載置可能に構成されてなるトレーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空港等で荷物を荷物検査装置によって検査する際に、荷物をトレーに載せて荷物検査装置を通過させることが知られている。また、荷物検査装置は、X線等を用いて検査を行うため、荷物検査装置の入口、及び、出口には、X線等を遮断する短冊状のカーテン(鉛含有素材のカーテン等)が設けられている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5404948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、トレーに載せた荷物を荷物検査装置の入口、及び、出口に通過させる際に、荷物検査装置の入口、及び、出口に設けられたカーテンがトレーに載せた荷物に接触してしまい、荷物が汚れる等の不具合を招くことが懸念される。
【0005】
本発明は、上記例示した問題点等を解決するためになされたものであって、その目的は、収容された物品の保護を比較的簡易に図ることができるトレーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0007】
手段1.略矩形板状の底壁部と、前記底壁部の各側辺部から上方に延びる側壁部と、前記側壁部の上辺部から外方に延びる上フランジ部とを備え、上方に開口するトレーにおいて、
トレー同士をトレーの開口側を向かい合せにして上下に重ねた場合に、トレー同士の間に隙間を形成することなく、トレー同士を嵌合可能とする嵌合手段を備え、
前記側壁部のうち少なくとも相対する一対の前記側壁部に対応して、当該側壁部から延びる前記上フランジ部は、一般部と、前記一般部よりも前記側壁部からの延出長が短く構成される許容部とを備え、
前記上フランジ部のうち少なくとも前記許容部から下方に延びるスカート部と、
前記上フランジ部の上面よりも下方位置において、前記スカート部から外方に突出する突部とを備え
下側のトレーの前記側壁部の内面と、上側のトレーの前記側壁部の外面とを対向させるようにして、トレー同士を上下に重ねることが可能に構成され、
前記スカート部は、スカート一般部と、前記スカート一般部よりも前記上フランジ部からの延出長が短く構成されるスカート許容部とを備え、
前記スカート許容部のうち前記スカート一般部との連接部位は、前記上フランジ部からの延出長が徐々に変化しているスカート徐変部となっており、
前記突部は、前記スカート徐変部を含む前記スカート許容部の下辺部全体に沿って設けられており、
前記許容部のうち前記一般部との連接部位は、前記側壁部からの延出長が徐々に変化している徐変部となっており、前記突部は、前記スカート部のうち前記徐変部を含む前記許容部の先端部から下方に延びる部位の下辺部全体に沿って、前記スカート部から外方に突出しており、
前記スカート許容部は、前記スカート部のうち前記許容部から下方に延びる部位であって、前記スカート徐変部は、前記スカート部のうち前記徐変部から下方に延びる部位であることを特徴とするトレー。
【0008】
手段1によれば、物品を載置したトレ―に対し、同じトレーをもう一つ用意して向かい合わせで重ねる(被せる)ことで、当該上下一対のトレーによって物品を接触不可能に収容することができる。従って、例えば、荷物を荷物検査装置に通す際に荷物を載せる容器として本手段1のトレーを使用することで、荷物検査装置の入口及び出口に設けられたカーテンを通過させる際に、カーテンが荷物に接触して荷物に悪影響を及ぼしてしまう(汚れたり、損傷したりする等)といった事態を回避することができる。また、向かい合わせで上下に重ねられたトレー同士は嵌合状態とされていることから、トレーがカーテンを通過する際に、上側のトレーがカーテンに押圧されて下側のトレーから脱落するといった事態を防止することができる。さらに、同じトレーを2つ用意して、向かい合わせで重ねるだけで、収容された物品の保護を図ることができることから、トレーに載せた物品を保護する状態としたり、保護状態を解除して物品を取出したりする作業をスピーディーに行うことができる。
【0009】
また、トレーには、上フランジ部の上面よりも下方位置においてスカート部から外方に突出する突部が設けられており、トレー同士を向かい合わせで上下に重ねた場合には、上側のトレーの突部と、下側のトレーの突部との間に隙間が形成されることになる。このため、上下に向かい合わせで重ねられたトレーのうち、開口側が下向きとされている上側のトレーを取外す際に、上側のトレーの突部の下側に比較的容易に指を掛けることができ、比較的スムースに上側のトレーを持ち上げることができる。従って、上側のトレーを取外して、下側のトレーに収容されている物品を取出す際の作業性の向上を図ることができる。加えて、許容部に対応する範囲のスカート部から外方に突出する突部に関しては、トレーの内外周方向において、一般部の先端部よりもトレーの外周側に突出させないように構成することができる。この場合、突部が単独で別の部材と衝突する等の事態を抑制することができ、突部の損傷等の抑制を図ることができる。
【0011】
また、スカート部にスカート許容部を設けることによって、例えば、下側のトレーの内側に上側のトレーを比較的深く挿入させるようにして、トレーを開口側が上向きとなる姿勢で積み重ねる(ネスティングする)場合に、上側のトレーのスカート部(スカート許容部)と、下側のトレーの上フランジ部との間に隙間を形成することができる。従って、かかる隙間に指先を挿入して、上側のトレーのスカート部の下辺部、及び、スカート部の裏面側に指を掛けて、上側のトレーを持ち上げることができる。結果として、ネスティングされている複数のトレーのなかから幾つかを持ち上げる際の作業性の向上、及び、トレーをネスティングする際の安全性の向上等を図ることができる。
【0012】
尚、「前記突部は、前記スカート許容部の下辺部から外方に突出して設けられていること」としてもよい。この場合、スカート許容部の下辺部に指を掛けてトレーを持ち上げる際に、突部にも指を掛けることができ、指に当たる接触面積が増える等して、持ち上げ易くすることができる。
【0014】
また、スカート許容部と、スカート一般部との連接部位や、突部の強度を高め、耐久性の向上等を図ることができる。また、スカート徐変部の存在により、スカート部の下辺部や突部に指を掛けてトレーを持ち上げる作業に際して、指を掛ける好適な位置を比較的スムースに把握することができる。
【0015】
また、「前記許容部のうち前記一般部との連接部位は、前記側壁部からの延出長が徐々に変化している徐変部となっており、前記突部は、前記スカート部のうち前記徐変部を含む前記許容部の先端部から下方に延びる部位の下辺部全体に沿って、前記スカート部から外方に突出していること」から、許容部と、一般部との連結部や、突部の強度を高めるとともに、徐変部の先端部から下方に延びるスカート部の裏面側に指を掛け易くなる(スカート部のうち徐変部から下方に延びる部位は、許容部のその他の部位から下方に延びる部位よりも側壁部から外方に離間しており、裏面側に指を掛け易い)。従って、突部の下面に指を掛けてトレーを持ち上げる際に、スカート部の裏面にも比較的スムースに指を掛けることができ、持ち易さの向上を図ることができる。また、「前記スカート許容部は、前記スカート部のうち前記許容部から下方に延びる部位であって、前記スカート徐変部は、前記スカート部のうち前記徐変部から下方に延びる部位であること(側壁部の横幅方向において、許容部と、スカート許容部とが同じ範囲に設けられている)」から、スカート部の下辺部や突部に指を掛けてトレーを持ち上げる作業に際して、指を掛ける好適な位置を比較的スムースに把握することができるといった作用効果がより一層奏される。
【0016】
手段略矩形板状の底壁部と、前記底壁部の各側辺部から上方に延びる側壁部と、前記側壁部の上辺部から外方に延びる上フランジ部とを備え、上方に開口するトレーにおいて、
トレー同士をトレーの開口側を向かい合せにして上下に重ねた場合に、トレー同士の間に隙間を形成することなく、トレー同士を嵌合可能とする嵌合手段を備え、
前記側壁部のうち少なくとも相対する一対の前記側壁部に対応して、当該側壁部から延びる前記上フランジ部は、一般部と、前記一般部よりも前記側壁部からの延出長が短く構成される許容部とを備え、
前記上フランジ部のうち少なくとも前記許容部から下方に延びるスカート部と、
前記上フランジ部の上面よりも下方位置において、前記スカート部から外方に突出する突部とを備え、
前記嵌合手段は、前記上フランジ部においてトレーの所定の隅部に対応して設けられた嵌合凸部と、トレー同士を向かい合わせで重ねた場合に、前記嵌合凸部を挿入可能な嵌合凹部とを備え、
前記嵌合凸部は、トレーの隅部のうち所定の隅部と、当該所定の隅部の対角に位置する隅部とに対応して設けられ、
前記嵌合凹部は、前記上フランジ部において前記嵌合凸部が設けられていないトレーの隅部に対応して設けられ、
前記嵌合凸部は、所定の前記側壁部の上辺部から外方に延びる前記上フランジ部と、当該上フランジ部に対して略直交して連結される前記上フランジ部とに跨るようにして平面視略L字状をなし、前記嵌合凸部の両端部には傾斜部が設けられており、
トレーの全周にわたり前記上フランジ部と、前記スカート部とが設けられ、その連結部の全周にわたり面取り部が設けられていることを特徴とするトレー。
【0017】
例えば、一対のトレーを上下向かい合わせにして重ねることでトレーに収容された物品の保護を図る場合において、収容する物品が比較的大きい場合には、上側のトレーが浮いてしまう場合がある。この場合、上下一対のトレーの間に隙間が形成され、荷物検査装置を通過させる際に、荷物検査装置のカーテンが、前記隙間を介して、トレーに収容されている物品に接触してしまうことが懸念される。
【0018】
この点、トレーに収容した荷物を荷物検査装置に通過させる際に、上側のトレーのうち、トレーの進行方向先頭側の上フランジ部の一辺を、下側のトレーの上フランジ部に当接させるようにして、上側のトレーを斜めに設置することが考えられる。この場合、トレーの進行方向先頭側において、上下のトレーの間に隙間が形成されることを回避することができ、荷物検査装置のカーテンが荷物に接触するといった事態を防止することができる。
【0019】
ところで、上記のように、下側のトレーに対し、上側のトレーを傾けて設置する場合には、上下一対のトレーのうち互いに当接している進行方向先頭側の上フランジ部に設けられた嵌合凸部と嵌合凹部とが嵌合状態を維持する必要がある。しかしながら、嵌合凸部及び嵌合凹部が、上フランジ部の先端部よりもトレーの内周側に設けられる場合、上側のトレーを傾けた姿勢で設置する場合に、前記進行方向先頭側の上フランジ部のうち、嵌合凸部及び嵌合凹部よりも外方(トレーの外周側)に位置する部位同士が当接(干渉)して、嵌合凸部の嵌合凹部への挿入長(掛かり代)が短くなってしまうことが懸念される。
【0020】
この点、手段によれば上フランジ部と、スカート部との連結部において、面取り部が設けられている。このため、上側のトレーを傾けた姿勢で設置する場合に、上下一対のトレーのうち進行方向先頭側の上フランジ部に関して、嵌合凸部と、嵌合凹部とを嵌合させるとともに、上フランジ部のうち嵌合凸部及び嵌合凹部よりもトレーの外周側に位置する部位同士を、極力、嵌合凸部及び嵌合凹部に近い位置で当接させることができる。従って、下側のトレーに対し上側のトレーを傾けて設置しても、上下に当接する上フランジ部において、嵌合凸部の嵌合凹部への掛かり代を十分に確保して、嵌合凸部と嵌合凹部との嵌合状態を安定させることができ、上側のトレーが下側のトレーから脱落するといった事態を防止することができる。
【0022】
また、一対のトレー同士を向かい合せて上下に重ねる場合に、隅部の位置を合わせるだけで、嵌合凸部及び嵌合凹部の位置を厳密に気にしなくても、嵌合凸部と嵌合凹部とを合致させることができる(上下一対のトレーの嵌合凸部と嵌合凸部とが合致し、嵌合凹部と嵌合凹部とが合致してしまうといった事態が回避される)。従って、一対のトレー同士を向かい合せて上下に重ねる際の作業性の向上等を図ることができる。
【0023】
また、一対のトレー同士を向かい合せて上下に重ねる際に、下側のトレーに対して上側のトレーが嵌合位置からずれて載せられた場合、上側のトレーを、下側のトレーの上フランジ部上面に滑らせるようにして、比較的スムースに嵌合位置まで変位させることができる。特に、上記手段のように、上フランジ部と、スカート部との連結部において面取り部を設けることにより、下側のトレーに対して嵌合位置からずれて載せられた上側のトレーをスライドさせて比較的容易に嵌合位置まで変位させるといった作用効果がより一層奏されることとなる。
【0024】
手段.物品を収容した下側のトレーに対し、上側のトレーを向かい合せ、かつ、傾けた姿勢で設置し、前記上フランジ部の所定の一辺同士を当接させる場合に、当該上フランジ部の所定の一辺の長手方向全体において、上側のトレーと、下側のトレーとが略当接していることを特徴とする手段1又は2に記載のトレー。
【0025】
手段によれば、トレーに収容した荷物を荷物検査装置に通過させる場合に、荷物が大きく、一対のトレーを上下向かい合せで重ねると、トレー間に隙間が形成されてしまうような場合であっても、上側のトレーを傾けた姿勢とし、かつ、トレーの進行方向先頭側の上フランジ部の一辺同士を当接させることで、トレーの進行方向先頭側において、上下のトレーの間に荷物検査装置のカーテンが入り込めるような隙間が形成されることをより確実に回避することができる。従って、荷物検査装置のカーテンが荷物に接触することを防止するといった作用効果がより一層奏される。
【0026】
手段.前記スカート部は、前記上フランジ部の先端部から下方に延びるとともに、前記上フランジ部の一方の側端部から他方の側端部にかけて連続して延在し、
前記上フランジ部の前記許容部は、前記上フランジ部の長手方向において前記一般部に挟まれるようにして設けられ、
前記突部は、前記上フランジ部の前記許容部から下方に延びる前記スカート部から外方に突出して設けられ、
前記上フランジ部の前記一般部から下方に延びる前記スカート部の外面は略平坦面とされ、
前記突部の先端部は、前記上フランジ部の前記一般部から下方に延びる前記スカート部の外面と面一、又は、当該外面よりもトレーの内周側に位置することを特徴とする手段1乃至のいずれかに記載のトレー。
【0027】
例えば、上フランジ部の一般部から下方に延びるスカート部が設けられなかったり、当該スカート部の外面よりも突部が外方に突出していたりする場合に、横並びに設置したトレー同士が接触する場合には、突部同士が当接したり、上フランジ部同士が当接したりすることが懸念される。特に、比較的勢いよくトレー同士が接触した場合には、一方のトレーが他方のトレーに乗り上げてしまうおそれがある。
【0028】
この点、手段によれば、横並びに設置したトレー同士が接触する場合に、上フランジ部の一般部から下方に延びるスカート部の略平坦な外面同士を当接させることができる。このため、横並びに設置したトレー同士が接触する場合に、一方のトレーが他方のトレーに乗り上げてしまうといった事態を防止することができる。また、突部の保護を図ることができ、耐久性の向上等を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】トレーの上面側を示す斜視図である。
図2】トレーの上面側を示す部分拡大斜視図である。
図3】トレーの下面側を示す斜視図である。
図4】トレーの平面図である。
図5】トレー同士を向かい合わせで重ねた状態を示す斜視図である。
図6】ネスティングしたトレーの上側にトレーを向かい合わせで重ねた状態を示す斜視図である。
図7図5のA−A線部分拡大断面図である。
図8図5のA−A線断面を含む部分拡大斜視図である。
図9図5のB−B線断面図である。
図10】トレーの上側にトレーを向かい合わせでずれた位置に載せた状態を示す斜視図である。
図11】物品を収容したトレーの上側にトレーを向かい合わせで傾けて設置した状態を示す斜視図である。
図12図11に示す状態のトレー等を示す断面図である。
図13】面取り部が設けられない場合の態様例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1等に示すように、トレー1は、略矩形板状の底壁部2と、底壁部2の相対する一対の長側辺部から上方に延びる長辺側側壁部3と、底壁部2の相対する一対の短側辺部から上方に延びる短辺側側壁部4と、長辺側側壁部3、及び、短辺側側壁部4の上辺部から外方に延びる上フランジ部5とを備え、上方に開口している。また、詳しくは後述するが、本実施形態のトレー1は、トレー1同士をトレー1の開口側を向かい合せにして上下に重ねた場合に、トレー1同士の間に隙間を形成することなく、トレー1同士を嵌合可能とする嵌合手段としての嵌合構造を備えている。
【0031】
つまり、本実施形態におけるトレー1は、例えば、空港等で手荷物を荷物検査装置によって検査する際に手荷物を載せる容器として使用されることが想定されている。さらに、荷物検査装置の入口、及び、出口に設けられたX線等を遮断する短冊状のカーテン(鉛含有素材のカーテン等)が、トレー1に収容された手荷物に接触することを防止するべく、図5に示すように、手荷物を載せたトレー1に対し、同じトレー1をもう一つ用意して向かい合せにして重ねる(被せる)ことで、手荷物の保護を図ることができるように構成されている。尚、本実施形態のトレー1は、ポリプロピレンにより一体的に形成されている。
【0032】
図1図2図4に示すように、上フランジ部5は、一般部6と、一般部6よりも側壁部3、4からの延出長が短く構成される許容部7とを備えている。本実施形態では、許容部7は、各側壁部3、4の横幅方向中央部を含む範囲に設けられ、一般部6は、許容部7の両側方に位置するようにして設けられている。つまり、許容部7は、上フランジ部5の長手方向において一般部6に挟まれるようにして設けられている。さらに、許容部7のうち一般部6との連接部位は、側壁部3、4からの延出長が徐々に変化している徐変部8となっている。
【0033】
また、図1図2に示すように、トレー1は、上フランジ部5の先端部から下方に延びるスカート部9を備えている。本実施形態では、スカート部9が、トレー1の全周にわたり、連続して延在するようにして設けられている。
【0034】
さらに、スカート部9は、スカート一般部10と、スカート一般部10よりも上フランジ部5からの延出長が短く構成されるスカート許容部11とを備えている。本実施形態では、対応する側壁部3、4の横幅方向において、許容部7と、スカート許容部11とが同じ範囲に設けられており、スカート許容部11は、許容部7の先端部から下方に延びている。尚、スカート一般部10の上フランジ部5からの延出長は、側壁部3、4の高さよりも短くなっている。
【0035】
加えて、スカート許容部11のうちスカート一般部10との連接部位は、上フランジ部5からの延出長が徐々に変化しているスカート徐変部12となっている。本実施形態では、徐変部8と、スカート徐変部12とに関しても、対応する側壁部3、4の横幅方向において同じ範囲に設けられており、スカート徐変部12は、徐変部8の先端部から下方に延びている。
【0036】
また、図1図9等に示すように、スカート一般部10の外面は、略平坦面として構成されているとともに、トレー1を水平面に設置した場合に、スカート一般部10の外面が略鉛直方向に延びるように構成されている。加えて、図3等に示すように、スカート部9の裏面と、上フランジ部5の下面と、側壁部3、4の外面との間を連結する補強リブ13が複数箇所に設けられている。
【0037】
さらに、図2図7図8等に示すように、スカート許容部11の下端部から外方に突出する突部14が設けられている。本実施形態の突部14は、スカート徐変部12を含むスカート許容部11の下辺部全体に沿って設けられている。また、図7等に示すように、突部14の先端部は、スカート一般部10の外面と略面一となっており、突部14が、スカート一般部10よりも外方に突出しないように構成されている。
【0038】
また、図1図2等に示すように、トレー1同士を嵌合させる嵌合構造として、上フランジ部5においてトレー1の隅部のうち所定の隅部と、当該所定の隅部の対角に位置する隅部とに対応して設けられた嵌合凸部15と、上フランジ部5において嵌合凸部15が設けられていないトレー1の隅部に対応して設けられ、トレー1同士を向かい合わせで重ねた場合に、嵌合凸部15を挿入可能な嵌合凹部17とを備えている。本実施形態のトレー1は、平面視(及び下面視)で点対称形状として構成されており、さらに、嵌合凸部15、及び、嵌合凹部17を除く構成に関しては、平面視(及び側面視)で線対称形状にもなっている。
【0039】
嵌合凸部15は、長辺側側壁部3の上辺部から外方に延びる上フランジ部5と、短辺側側壁部4の上辺部から外方に延びる上フランジ部5とに跨るようにして平面視略L字状をなしている。本実施形態の嵌合凸部15は、上フランジ部5の一般部6と、一般部6に連続する徐変部8の一部とにかかる範囲に設けられている。さらに、嵌合凸部15の両端部には、略水平方向に延びる上フランジ部5の上面と、略水平方向に延びる嵌合凸部15の上辺部とを連続させる傾斜部16が設けられている。
【0040】
嵌合凹部17は、嵌合凸部15に対応して平面視略L字状をなしている。さらに、図4図9等に示すように、嵌合凹部17は、側壁部3、4、及び、スカート部9から離間して設けられている。つまり、嵌合凹部17よりもトレー1の内周側、及び、嵌合凹部17よりもトレー1の外周側のどちらにも、上フランジ部5が存在するように構成されている。
【0041】
加えて、図1図7図9等に示すように、本実施形態では、上フランジ部5と、スカート部9との連結部を湾曲形状(R形状)とすることで構成された面取り部18が、トレー1の全周にわたり設けられている。尚、本実施形態では、底壁部2と、側壁部3、4との連結部、長辺側側壁部3と、短辺側側壁部4との連結部、各側壁部3、4と、上フランジ部との連結部、及び、トレー1の各隅部におけるスカート部9同士(上フランジ部5の先端縁同士)の連結部についても、R形状に構成されている。
【0042】
また、長辺側側壁部3、及び、短辺側側壁部4は、上方に向けてトレー1の外周側に傾斜して延びており、図6図8(特に、下側の2つのトレー1)に示すように、下側のトレー1の側壁部3、4の内面と、上側のトレー1の側壁部3、4の外面とを対向させるようにして、トレー1同士を開口側が上向きとなる姿勢で上下に重ねること(ネスティング)ができるように構成されている。本実施形態では、上側のトレー1のスカート一般部10に対応して設けられた補強リブ13の下辺部が、下側のトレー1の上フランジ部5の上面に当接するまで、上側のトレー1を下側のトレー1の内側に挿入可能となっている。尚、図9(特に、右側)に示すように、ネスティングに際して、下側のトレー1の嵌合凸部15と対応する部位に設けられる補強リブ13(上フランジ部5のうち嵌合凸部15が設けられた部位の裏面側に設けられる補強リブ13)に関しては、下端部の位置がスカート一般部10の下端部よりも上方に位置しており、ネスティング時に嵌合凸部15との干渉が避けられるようになっている。
【0043】
また、図7図9等に示すように、トレー1同士を向かい合せで上下に重ねた場合、上側のトレー1の上フランジ部5と、下側のトレー1の上フランジ部5とが当接して支持され、上側のトレー1の嵌合凸部15、及び、嵌合凹部17が、下側のトレー1の対応する嵌合凹部17、及び、嵌合凸部15と嵌合状態(嵌合凸部15が嵌合凹部17に挿入された状態)とされるようになっている。さらに、上記のように、嵌合凹部17(及び嵌合凸部15)が設けられた範囲にも、嵌合凹部17(及び嵌合凸部15)よりもトレー1の外周側、及び、トレー1の内周側において上フランジ部5が存在することから、トレー1の全周にわたり、上下一対のトレー1の上フランジ部5同士が当接し、トレー1同士の間に隙間が形成されないように構成されている。
【0044】
さらに、トレー1同士を向かい合わせで上下に重ねる作業に際し、図10に示すように、下側のトレー1に対し、上側のトレー1が、嵌合凸部15と、嵌合凹部17とが嵌合する嵌合位置からずれた位置に載せられた場合、上側のトレー1を、下側のトレー1の上フランジ部5上面に滑らせるようにして、上下のトレー1の隅部の位置を合わせる。このとき、上下一対のトレー1のうち一方のトレー1の嵌合凸部15に対して、他方のトレー1のスカート部9(本例では、スカート部9と上フランジ部5との連結部に設けられた面取り部18)が当接することとなるが、嵌合凸部15の両端部には、傾斜部16が設けられているため、嵌合凸部15が、嵌合凹部17周辺部の面取り部18を相対的に乗り越えて、嵌合凹部17に挿入されるまでの相対変位が比較的スムースに行われるようになっている。
【0045】
また、トレー1に収容する物品(手荷物等)の高さが、トレー1の深さの2倍以上の場合には、物品を収容した下側のトレー1に対し、上側のトレー1を下側のトレー1と平行にして被せようとしても、上側のトレー1が浮いた状態となり、上下のトレー1の間に隙間が形成される。そこで、図11図12に示すように、トレー1に収容する物品19が比較的大きなものである場合には、上下一対のトレー1の上フランジ部5の一辺同士を当接状態とし、当該上フランジ部5の一辺同士の嵌合凸部15と嵌合凹部17とを嵌合状態としつつ、上側のトレー1を傾けた姿勢とする。つまり、荷物検査装置を通過させる際に、トレー1の進行方向先頭側の上フランジ部5同士を当接させることとすれば、荷物検査装置の入口、及び、出口に設けられるカーテンと、トレー1に収容された物品19との接触が回避される。
【0046】
尚、図12に示すように、下側のトレー1に対して上側のトレー1が傾いた姿勢で設置された状態では、上下に当接することとしている上フランジ部5の一辺に関し、面取り部18同士が当接するようになっている。また、上記のように、面取り部18は、トレー1の全周にわたって設けられており、本実施形態では、上側のトレー1が傾いた姿勢で設置された状態において、上下に当接することとしている上フランジ部5の一辺に関し、一般部6に対応して面取り部18同士が当接し、許容部7に対応して面取り部18同士が近接するようになっている。
【0047】
以上詳述したように、本実施形態によれば、物品を載置したトレー1に対し、同じトレー1をもう一つ用意して向かい合わせで重ねる(被せる)ことで、当該上下一対のトレー1によって物品を接触不可能に収容することができる。従って、荷物を荷物検査装置に通す際に荷物を載せる容器としてトレー1を使用することで、荷物検査装置の入口及び出口に設けられたカーテンを通過させる際に、カーテンが荷物に接触して荷物に悪影響を及ぼしてしまう(汚れたり、損傷したりする等)といった事態を回避することができる。また、向かい合わせで上下に重ねられたトレー1同士は嵌合状態とされていることから、トレー1がカーテンを通過する際に、上側のトレー1がカーテンに押圧されて下側のトレー1から脱落するといった事態を防止することができる。さらに、同じトレー1を2つ用意して、向かい合わせで重ねるだけで、収容された物品の保護を図ることができることから、トレー1に載せた物品を保護する状態としたり、保護状態を解除して物品を取出したりする作業をスピーディーに行うことができる。従って、荷物検査装置を用いた荷物検査を、荷物の保護を図りつつ、スムースに行うことができる。
【0048】
また、トレー1には、スカート部9(スカート許容部11)の下端部から外方に突出する突部14が設けられており、トレー1同士を向かい合わせで上下に重ねた状態において、上側のトレー1の突部14と、下側のトレー1の突部14との間に隙間を形成することができる。このため、上下に向かい合わせで重ねられたトレー1のうち、開口側が下向きとされている上側のトレー1を取外す際に、上側のトレー1の突部14の下側に比較的容易に指を掛けることができ、比較的スムースに上側のトレー1を持ち上げることができる。従って、上側のトレー1を取外して、下側のトレー1に収容されている物品を取出す際の作業性の向上を図ることができる。
【0049】
さらに、スカート部9は、スカート一般部10よりも上フランジ部5からの延出長が短く構成されるスカート許容部11を備えている。つまり、本実施形態では、開口側が上向きとなる姿勢でトレー1をネスティングした場合に、上側のトレー1のスカート一般部10の裏面側に設けられた補強リブ13が、下側のトレーの上フランジ部5の上面に当接するようになっている。当該構成において、スカート部9にスカート許容部11が設けられていることによって、トレー1のネスティング状態において、上側のトレー1のスカート許容部11と、下側のトレー1の上フランジ部5との間に隙間を形成することができる。従って、かかる隙間に指先を挿入して、上側のトレー1のスカート部9(スカート許容部11)の下辺部、及び、スカート部9の裏面側に指を掛けて、上側のトレー1を持ち上げることができる。結果として、ネスティングされている複数のトレー1のなかから幾つかを持ち上げる際の作業性の向上、及び、トレー1をネスティングする際の安全性の向上等を図ることができる。
【0050】
また、突部14は、スカート許容部11の下辺部から外方に突出して設けられている。このため、スカート許容部11の下辺部に指を掛けてトレー1を持ち上げる際に、突部14にも指を掛けることができ、指に当たる接触面積が増える等して、持ち上げ易くすることができる。尚、開口側を下向きにしてトレー1をネスティングすることも可能であり、この場合、下側のトレー1のスカート部9(スカート許容部11)と、上側のトレー1の上フランジ部5との間の隙間に指先を挿入し、上側のトレー1の上フランジ部5に指を掛けて、上側のトレー1を持ち上げることとなる。
【0051】
さらに、スカート許容部11のうちスカート一般部10との連接部位は、上フランジ部5からの延出長が徐々に変化しているスカート徐変部12となっており、突部14は、スカート徐変部12を含むスカート許容部11の下辺部全体に沿って設けられている。このため、スカート許容部11と、スカート一般部10との連接部位や、突部14の強度を高め、耐久性の向上等を図ることができる。また、スカート徐変部12の存在により、スカート部9の下辺部や突部14に指を掛けてトレー1を持ち上げる作業に際して、指を掛ける好適な位置を比較的スムースに把握することができる。
【0052】
加えて、許容部7のうち一般部6との連接部位は、側壁部3、4からの延出長が徐々に変化している徐変部8となっており、また、各側壁部3、4の横幅方向において、徐変部8と、スカート徐変部12とが同じ範囲に設けられている(スカート徐変部12は徐変部8の先端部から下方に延びている)。徐変部8の存在により、許容部7と、一般部6との連結部や、突部14の強度を高めるとともに、徐変部8の先端部から下方に延びるスカート部9(スカート徐変部12)の裏面側に指を掛け易くなる(スカート徐変部12は、スカート許容部11のその他の部位よりも側壁部3、4から外方に離間しており、裏面側に指を掛け易い)。従って、突部14の下面に指を掛けてトレー1を持ち上げる際に、スカート部9の裏面にも比較的スムースに指を掛けることができ、持ち易さの向上を図ることができる。加えて、スカート部9の下辺部や突部14に指を掛けてトレー1を持ち上げる際に、指を掛ける好適な位置を探り易くするといった作用効果がより一層奏される。
【0053】
また、例えば、図11に示すように、トレー1に収容する物品19が比較的大きい場合には、トレー1に収容した物品19を荷物検査装置に通過させる際に、上側のトレー1のうち、トレー1の進行方向先頭側の上フランジ部5の一辺を、下側のトレー1の上フランジ部5に当接させるようにして、上側のトレー1を斜めに設置する。この場合、トレー1の進行方向先頭側において、上下のトレー1の間に隙間が形成されることを回避することができ、荷物検査装置のカーテンが物品19に接触するといった事態を防止することができる。
【0054】
ところで、下側のトレー1に対し、上側のトレー1を傾けて設置する場合には、上下一対のトレー1のうち互いに当接している進行方向先頭側の上フランジ部5に設けられた嵌合凸部15と嵌合凹部17とが嵌合状態を維持する必要がある。しかしながら、嵌合凸部15及び嵌合凹部17が、上フランジ部5の先端部よりもトレー1の内周側に設けられる場合、上側のトレー1を傾けた姿勢で設置する場合に、図13に示すように、進行方向先頭側の上フランジ部5のうち、嵌合凸部15及び嵌合凹部17よりも外方(トレー1の外周側)に位置する部位同士が当接(干渉)して、嵌合凸部15の嵌合凹部17への挿入長(掛かり代)が短くなってしまうことが懸念される。
【0055】
この点、本実施形態によれば、上フランジ部5と、スカート部9との連結部において、断面R形状の面取り部18が設けられている。このため、図12に示すように、下側のトレー1に対して上側のトレー1を傾けた姿勢で設置する場合に、上下一対のトレー1のうち進行方向先頭側の上フランジ部5に関して、嵌合凸部15と、嵌合凹部17とを嵌合させるとともに、上フランジ部5のうち嵌合凸部15及び嵌合凹部17よりもトレー1の外周側に位置する部位同士を、極力、嵌合凸部15及び嵌合凹部17に近い位置で当接させることができる。従って、下側のトレー1に対し上側のトレー1を傾けて設置しても、上下に当接する上フランジ部5において、嵌合凸部15の嵌合凹部17への掛かり代を十分に確保して、嵌合凸部15と嵌合凹部17との嵌合状態を安定させることができ、上側のトレー1が下側のトレー1から脱落するといった事態を防止することができる。尚、図13は、面取り部18が設けられない場合の態様例を示す図であるが、便宜上、本実施形態と同じ図面番号を付している。
【0056】
加えて、嵌合凸部15は、上フランジ部5において、トレー1の隅部のうち所定の隅部と、当該所定の隅部の対角に位置する隅部とに対応して設けられ、嵌合凹部17は、上フランジ部5において、嵌合凸部15が設けられていないトレー1の隅部に対応して設けられている。このため、一対のトレー1同士を向かい合せて上下に重ねる場合に、隅部の位置を合わせるだけで、嵌合凸部15及び嵌合凹部17の位置を厳密に気にしなくても、嵌合凸部15と嵌合凹部17とを合致させることができる(上下一対のトレー1の嵌合凸部15と嵌合凸部15とが合致し、嵌合凹部17と嵌合凹部17とが合致してしまうといった事態が回避される)。従って、一対のトレー1同士を向かい合せて上下に重ねる際の作業性の向上等を図ることができる。
【0057】
さらに、嵌合凸部15は、長辺側側壁部3の上辺部から外方に延びる上フランジ部5と、短辺側側壁部4の上辺部から外方に延びる上フランジ部5とに跨るようにして平面視略L字状をなし、嵌合凸部15の両端部には傾斜部16が設けられている。このため、一対のトレー1同士を向かい合せて上下に重ねる際に、下側のトレー1に対して上側のトレー1が嵌合位置からずれて載せられた場合、上側のトレー1を、下側のトレー1の上フランジ部5上面に滑らせるようにして、比較的スムースに嵌合位置まで変位させることができる。特に、上フランジ部5と、スカート部9との連結部において面取り部18が設けられていることにより、下側のトレー1に対して嵌合位置からずれて載せられた上側のトレー1をスライドさせて比較的容易に嵌合位置まで変位させるといった作用効果がより一層奏されることとなる。
【0058】
加えて、物品19を収容した下側のトレー1に対し、上側のトレー1を向かい合せ、かつ、傾けた姿勢で設置し、上フランジ部5の一辺同士を当接させる場合に、当該上フランジ部5の一辺の長手方向全体において、上下一対のトレー1の面取り部18同士が略当接するように構成されている。このため、トレー1に収容した物品19を荷物検査装置に通過させる場合に、物品19が大きく、一対のトレー1を上下向かい合せで重ねると、トレー1間に隙間が形成されてしまうような場合であっても、上側のトレー1を傾けた姿勢とし、かつ、トレー1の進行方向先頭側の上フランジ部5の一辺同士を当接させることで、トレー1の進行方向先頭側において、上下のトレー1の間に荷物検査装置のカーテンが入り込めるような隙間が形成されることをより確実に回避することができる。従って、荷物検査装置のカーテンが物品19に接触することを防止するといった作用効果がより一層奏される。
【0059】
また、スカート部9は、上フランジ部5の先端部から下方に延びるとともに、上フランジ部5の一方の側端部から他方の側端部にかけて連続して延在している。加えて、上フランジ部5の許容部7は、上フランジ部5の長手方向において一般部6に挟まれるようにして設けられ、突部14は、上フランジ部5の許容部7から下方に延びるスカート許容部11の下端部から外方に突出して設けられている。さらに、突部14の先端部は、上フランジ部5の一般部6から下方に延びるスカート一般部10の外面と略面一となっている。従って、突部14は、両側方に位置するスカート一般部10に保護されるような格好となる。結果として、突部14の損傷や変形等を抑制することができ、耐久性の向上を図ることができる。
【0060】
また、例えば、突部14がスカート一般部10よりも外方に突出する場合のように、横並びに設置されたトレー1同士が接触した場合に、突部14同士が当接し、場合によっては、一方が他方に乗り上げてしまうといった事態を回避することができる。さらに、例えば、スカート一般部10を省略した場合のように、横並びに設置されたトレー1同士が接触した場合に、上フランジ部5(一般部6)同士が当接し、場合によっては、一方が他方に乗り上げてしまうといった事態を回避することができる。特に、本実施形態のスカート一般部10の外面は略平坦面とされ、略鉛直方向に延びている。従って、横並びに設置されたトレー1同士が接触した場合に、スカート一般部10同士が当接し、一方が他方に乗り上げるといった事態をより確実に防止することができる。
【0061】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0062】
(a)上記実施形態では、長辺側側壁部3の上辺部から外方に延出する上フランジ部5、及び、短辺側側壁部4の上辺部から外方に延出する上フランジ部5の両方において、許容部7が設けられるように構成されているが、相対する一対の長辺側側壁部3、又は、相対する一対の短辺側側壁部4の一方に対応して許容部7が設けられていることとしてもよい。また、上記実施形態では、上フランジ部5に関し、許容部7の両側方に一般部6が配置されているが、一側方側の一般部6を省略してもよい。さらに、上記実施形態では、スカート部9において、上フランジ部5からの延出長の短いスカート許容部11が設けられ、各側壁部3、4の横幅方向において、スカート許容部11と、許容部7とが同じ範囲に設けられているが、スカート許容部11(スカート徐変部12)の形成範囲と、許容部7(徐変部8)の形成範囲とが一致していなくてもよいし、スカート部9全体を同じ延出長としてもよい。また、上記実施形態では、スカート部9がトレー1の全周に設けられているが、少なくとも許容部7に対応する部位に設けられていればよい。加えて、上フランジ部5の徐変部8や、スカート部9のスカート徐変部12が存在しない構成とすることも可能である。
【0063】
(b)上記実施形態では、嵌合凸部15、及び、嵌合凹部17が、長辺側側壁部3の上辺部から外方に延びる上フランジ部5と、短辺側側壁部4の上辺部から外方に延びる上フランジ部5とに跨るようにして略L字状に構成されているが、特にかかる構成に限定されるものではない。例えば、長辺側側壁部3の上辺部から外方に延びる上フランジ部5、及び、短辺側側壁部4の上辺部から外方に延びる上フランジ部5のうち一方にのみ、嵌合凸部15、及び、嵌合凹部17が設けられることとしてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、上フランジ部5の上面側において、嵌合凸部15がトレー1の所定の隅部とその対角に位置する隅部とに対応して設けられているが、例えば、トレー1の所定の隅部と、その隣の隅部とに対応して嵌合凸部15を設け、嵌合凸部15が設けられていないトレー1の隅部に対応して嵌合凹部17が設けられていることとしてもよい。但し、当該構成を採用する場合、上下一対のトレー1を向かい合わせで重ねる場合に、下側のトレー1の嵌合凸部15及び嵌合凹部17と、上側のトレー1の嵌合凹部17及び嵌合凸部15とが合致しているかを確認する必要があるため、嵌合凸部15及び嵌合凹部17の位置を厳密に気にすることなく重ねることができるように、一対の嵌合凸部15、及び、一対の嵌合凹部17をそれぞれ対角に配置することが望ましい。
【0065】
さらに、嵌合凸部15を、側壁部3、4、又は、スカート部9の一部を上フランジ部5の上方に延長させるような格好で設けたり、嵌合凹部17を、側壁部3、4、又は、スカート部9の一部を凹形状とすることで構成したりすることとしてもよい。但し、トレー1同士を向い合せにして重ねた状態の安定化や、トレー1間の隙間をなくすといった観点からすると、嵌合凸部15及び嵌合凹部17よりもトレー1の内周側、及び、トレー1の外周側のどちらにも上フランジ部5が存在するように構成することが望ましい。
【0066】
(c)上記実施形態では、面取り部18がトレー1の全周にわたって設けられているが、少なくとも嵌合凸部15、及び、嵌合凹部17が設けられた範囲の上フランジ部5と、スカート部9との連結部において設けられていればよい。但し、物品を収容した下側のトレー1に対し、向かい合せ、かつ、傾けた姿勢で上側のトレー1を設置し、上フランジ部5の一辺同士を当接させる場合、当該上フランジ部5の一辺の長手方向全体で隙間なく上下一対のトレー1同士を当接させることができるように、嵌合凸部15、及び、嵌合凹部17のうち少なくとも一方が設けられた上フランジ部5の一側部から他側部にかけて面取り部18が設けられることが望ましい。
【0067】
また、上記実施形態では、面取り部18がR形状とされているが、特にこのような構成に限定されるものではなく、スカート部9の先端部と、上フランジ部5の上端部とを斜めに連結する連結部(傾斜面)によって面取り部が構成されることとしてもよい。
【0068】
(d)上記実施形態では、突部14の先端部が、スカート一般部10の外面と略面一とされているが、スカート一般部10の外面よりもトレー1の内周側に位置していることとしてもよい。さらに、上記実施形態では、突部14がスカート部9の下端部から外方に突出しているが、突部14の形成位置については特に限定されるものではなく、上フランジ部5の上面よりも下方位置であればよい。また、上記実施形態では、スカート部9が上フランジ部5の先端部から下方に延出しているが、先端部近傍から下方に延出するように構成してもよい。
【0069】
(e)上記実施形態では、トレー1はポリプロピレンにより構成されているが、ポリエチレン、PET、ポリアミド等その他の樹脂材料により構成されることとしてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…トレー、2…底壁部、3…長辺側側壁部、4…短辺側側壁部、5…上フランジ部、6…一般部、7…許容部、8…徐変部、9…スカート部、10…スカート一般部、11…スカート許容部、12…スカート徐変部、13…補強リブ、14…突部、15…嵌合凸部、16…傾斜部、17…嵌合凹部、18…面取り部、19…物品。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13